JP2005125532A - 多層溶融樹脂塊及び該多層溶融樹脂塊から圧縮成形されたブロー成形用多層予備成形物並びに多層容器 - Google Patents

Abstract

【課題】 多層圧縮成形物の層分布を中間樹脂層が内外樹脂層内に完全に位置し、且つ周方向に均一に分布した状態の多層圧縮成形物を得ることができる多層溶融樹脂塊を得る。
【解決手段】 多層圧縮成形物を形成するための多層溶融樹脂塊１において、中間層樹脂３が、内外層を構成する内外樹脂２内に下側に偏心して内封され、該中間層樹脂３の下端から多層溶融樹脂塊１の下端までの距離ｔが多層溶融樹脂塊全長の１０％以下で、且つｙ（中間層樹脂傘部長さ）≧Ｌ（中間層樹脂中央部長さ）、及び１＞ｄ_ｏ（周方向における中間層樹脂最大外径）／Ｄ（周方向における多層溶融樹脂塊外径）≧０．５で、凹型形状となるように、多層溶融樹脂塊内での中間層樹脂３の形状を制御する。
【選択図】 図１

Description

本発明は、多層溶融樹脂塊及び該多層溶融樹脂塊から圧縮成形されたブロー成形用多層予備成形物並びに多層容器に関する。

従来、多層の延伸ブロー成形合成樹脂ボトル等の多層合成樹脂容器が広く流通しており、内部にガスバリヤ性等に優れた樹脂層を配置したもの、又はリサイクル樹脂層を配置可能にしたもの（特許文献１参照）等、多層にすることによって、１層の樹脂容器では実現できない機能を有する容器を得ることができる。このような容器のガスバリヤ性樹脂やリサイクル樹脂等で構成される中間樹脂層は、容器内外面に露出することなく、内外樹脂層内に内封されていることが要求される。この要求を満たすために、本発明者らは、中間樹脂層（ガスバリヤ性樹脂）が内外層樹脂中に下側に偏心した状態で内封された多層溶融樹脂塊を押出成形で製造し、この多層溶融樹脂塊をキャビティ型に供給し、コア型で圧縮することにより、ブロー成形用多層成形物としての多層プリフォームを製造することを提案した（特許文献２）。前記方法で製造された多層溶融樹脂塊は、多層溶融樹脂塊中に中間層樹脂が下側に偏心した状態で含まれているため、コア型で圧縮するとコア型が最初に係合する多層溶融樹脂塊の上部には内外層樹脂のみが存在し、コア型による押圧により、内外層樹脂がキャビティ型に沿って上方及び下方に流動する。最後に中間層樹脂を含む部分がコア型で押圧され、口部及び首部が内外層樹脂のみで形成され、しかも胴部及び底部では中間層樹脂が内外層間に内封されたプリフォームが、ゲート部のない状態で形成されることになる。

このようにして得られたプリフォームは、内外層及び中間樹脂層が全周に亘って均一の厚さを有していることが理想であるが、まれに中間樹脂層の肉厚が過度に薄い部分や切れている部分あるいは過度に厚くなっている部分、さらには中間樹脂層が最内外層面に露出している部分が存在することが観察される。その結果、例えば、中間樹脂層に肉厚が過度に薄い部分や切れている部分が存在すると、適性なガスバリヤ性が得られないなど、中間樹脂層に求められる機能が十分に発揮されない問題が生じる。また、中間樹脂層が最内層面に露出すると、中間樹脂層に内容液が直接接触して内容液に好ましくない影響を与えるとか、あるいは中間樹脂層が内容品の水分を吸収してバリヤー性が劣化するなどの問題が生じる恐れがある。このような問題点を解決するためには、多層プリフォームの層分布を中間樹脂層が内外樹脂層内に完全に位置し、且つ周方向に均一に分布していることが必要であるが、従来プリフォームのそのような層分布を安定して得る方法は確立されていない。

特開２００３−３９５３１号公報 特開２００３−３３９６４号公報

本発明は、上記実情に鑑み創案されたものであって、多層溶融樹脂塊を圧縮成形して多層圧縮成形物を得る製造方法において、多層圧縮成形物の層分布を中間樹脂層が内外樹脂層内に完全に位置し、且つ周方向に均一に分布した状態の多層圧縮成形物を得ることを目的とし、より詳しくはそのような多層圧縮成形物を得ることができる多層溶融樹脂塊を得ることを目的とするものである。

上記課題を解決するために、本発明者は種々研究した結果、樹脂塊を圧縮成形して得られるブロー成形用多層予備成形物の層分布は、多層溶融樹脂塊の中間層樹脂の多層溶融樹脂塊内における形状に左右されることを知見し、さらに研究した結果、上記層分布を得るための中間層樹脂の最適形状を見出し、本発明に到達したものである。

即ち、本発明の多層溶融樹脂塊は、圧縮成形により多層圧縮成形物を得るための多層溶融樹脂塊であって、該多層溶融樹脂塊の中間樹脂層を構成する中間層樹脂が、内外層を構成する内外層樹脂内に下側に偏心して内封され、且つ前記中間層樹脂の形状が凹型であることを特徴とするものである。

前記中間層樹脂は、その下端から多層溶融樹脂塊の下端までの距離が多層溶融樹脂塊全長の１０％以下であることが望ましい。また、前記中間層樹脂の形状は、より具体的には、ｙ（中間層樹脂傘部長さ）≧Ｌ（中間層樹脂中央部長さ）であり、且つ１＞ｄ_ｏ（周方向における中間層樹脂最大外径）／Ｄ（周方向における多層溶融樹脂塊外径）≧０．５であることが望ましい。このような形状からなる多層溶融樹脂塊を圧縮成形することによって、周方向に層分布が略均一な多層成形物及びブロー成形用多層予備成形物を得ることができる。そして、該ブロー成形用多層予備成形物を、二軸延伸成形することによって、多層圧縮成形物の層分布を中間樹脂層が内外樹脂層内に完全に位置し、且つ周方向にほぼ均一に分布し、中間樹脂層が内周面に露出するようなことのない、高品質の多層ボトル等のブロー成形多層容器を得ることができる。なお、上記用語中、「下側」及び「下端」は、溶融樹脂塊を、雌型（キャビティ型）に落とし込む場合を基準にした場合の表現であり、上に雌型、下に雄型（コア型）を配置した場合には、下に凹型で上側に位置することになるので、上記用語は便宜上用いたものであり、必ずしも物理的に下側及び下端を意味するものではない。

以上のように本発明によれば、ほぼ均一な層厚分布を有し、且つ最内層厚みを確保した多層成形物及びブロー成形用多層予備成形物が成形可能な多層溶融樹脂塊を得ることができる。したがって、本発明によって得られた多層溶融樹脂塊により得られたブロー成形用多層予備成形物は周方向に層分布が略均一であり、該ブロー成形用多層予備成形物を、二軸延伸成形することによって、中間樹脂層が内外樹脂層内に位置し、且つ周方向にほぼ均一に分布し、中間樹脂層が内周面に露出するようなことのない、高品質の多層ボトル等のブロー成形多層容器を得ることができる。

以下、本発明を図１及び図２に示す実施形態により詳細に説明する。
図１は、本発明に係る多層溶融樹脂塊の基本原理を示す模式図であり、この多層溶融樹脂塊１は、内外層樹脂２内に例えばガスバリヤ性に優れた樹脂で構成される中間層樹脂３が埋設して構成され、前記特許文献１に記載されているような溶融樹脂押出供給装置によって得ることができる。該多層溶融樹脂塊は、下部がやや外側に丸みがかって膨らんだほぼ円柱状外形を呈し、内外層樹脂内にその下方部寄りに中間層樹脂が埋設した状態で位置している。内外層樹脂内の中間層樹脂の配置及び形状は、後述するように多層圧縮プリフォームの層分布を制御するのに、重要な影響を及ぼすものである。本実施形態では、多層圧縮プリフォームの層分布が最内層厚さを確保しつつ周方向に均一となるように制御することを可能とするため、中間層樹脂３は、多層溶融樹脂塊内の長手方向下方に位置し、全体として中央部が窪んでいて、周囲が傘状に上方に延びている凹形状を呈するように構成している。

より詳細には、内外樹脂層２内での前記中間層樹脂３の配置位置と形状は、図１において次の条件を満たしていることが必要である。
（Ａ）中間層樹脂３の下端から多層溶融樹脂塊１の下端までの距離ｔが多層溶融樹脂塊全長Ｚの１０％以下、即ちｔ／Ｚ≦０．１であること、
（Ｂ）中間層樹脂傘部長さｙは中央部長さＬよりも大きく、ｙ≧Ｌであること、
（Ｃ）周方向における中間層樹脂最大外径ｄ_ｏは、周方向における多層溶融樹脂塊外径Ｄの５０％以上、即ち１＞ｄ_ｏ／Ｄ≧０．５であること、及び
（Ｄ）周方向における中間層樹脂最大内径ｄ_ｉは、周方向における多層溶融樹脂塊外径Ｄの５０％以上、即ち１＞ｄ_ｉ／Ｄ≧０．５であること。

このような形状からなる多層溶融樹脂塊を圧縮成形することによって、胴部及び底部において周方向に層分布が略均一な多層成形物及びブロー成形用多層予備成形物を得ることができる。そして、該ブロー成形用多層予備成形物を、二軸延伸成形することによって、多層圧縮成形物の層分布を中間樹脂層が内外樹脂層内に完全に位置し、且つ周方向に均一に分布し、中間樹脂層が内周面に露出するようなことのない、高品質の多層ボトル等のブロー成形多層容器を得ることができる。なお、上記条件のうち、（Ｄ）は必ずしも必要な条件ではないが、そのような条件を満たしているのが望ましい。上記条件のうち、ｔ／Ｚ＞０．１であると、中間層が上方に行き、均一な中間層を確保することが困難であり、また、１＞ｄ_ｏ／Ｄ≧０．５及び１＞ｄ_ｉ／Ｄ≧０．５の範囲外であると、圧縮成形時に中間層の層厚が不安定になり均一な層分布の成形物が得られない。

上記多層溶融樹脂塊は、例えば図２又は図３に示すような押出装置によって次のようにして形成できる。
図２に示す多層溶融樹脂塊の押出装置１０は、内外層樹脂を溶融混練するための押出機１１ａと中間層樹脂を溶融混練するための押出機１１ｂおよび中間層切断用樹脂を溶融混練するための押出機１１ｃとを備えている。これらの押出機が接続されるダイ１３には内外層樹脂通路１４ａ、中間層樹脂通路１４ｂ、および中間層切断用樹脂通路１４ｃが設けられており、これらの各樹脂通路１４ａ、１４ｂ、１４ｃは押出通路１５で合流するようになっている。押出機１１ｂと中間層樹脂通路１４ｂの間、および押出機１１ｃと中間層切断用樹脂通路１４ｃの間にはそれぞれ間欠加圧機構１６ｂ、１６ｃが設けられており、中間層樹脂を間欠的に押し出し、さらにタイミングを計って中間層切断用樹脂を間欠的に押し出して中間層を完全に切断することができる。その場合、中間層切断樹脂を内外層樹脂と同一の材質の樹脂を採用することにより、中間層樹脂が内外樹脂層に覆われ、間欠的に中間層樹脂が存在する連続状の溶融樹脂がダイリップ１７から押出され、それを中間層樹脂が存在しない個所で切断することにより、中間層樹脂が内外層樹脂中に内封された多層溶融樹脂塊を形成することができる。

図３に示す多層溶融樹脂塊の押出装置２０は、図２に示す押出装置と同様に内外層樹脂の押出機と中間層樹脂の押出機および中間層切断用樹脂の押出機とを備え、ダイにはそれらの押出機に連通する内外層樹脂通路２１ａ、中間層樹脂通路２１ｂ、および中間層切断用樹脂通路２１ｃが設けられており、これらの各樹脂通路は押出通路２２で合流するようになっている。この実施形態の押出装置２０では、図２に示す実施形態の間欠加圧機構に代えて、中間層樹脂通路２１ｂ、および中間層切断用樹脂通路２１ｃにそれぞれの出口を開閉するバルブ機構２３ｂ、２３ｃが設けられている。これらのバルブ機構２３ｂ、２３ｃは独立して作動可能であり、図３（ａ）〜（ｄ）は、それぞれのバルブの開、閉の組合せ形態を示している。バルブ機構２３ｂにより中間層樹脂通路２１ｂの押出口を間欠的に開くことにより中間層樹脂が間欠的に押し出され、さらにタイミングを計ってバルブ機構２３ｃを作動させ、中間層切断用樹脂を間欠的に押し出すことにより、中間層樹脂が内外樹脂層に覆われ、かつ内外層樹脂中に内封された多層溶融樹脂塊を形成する。

図２と図３に示すそれぞれの押出装置において、内外層樹脂と中間層切断用樹脂とを同一の材質で構成し、多層溶融樹脂塊の押出工程で、間欠的に押出される中間層樹脂と中間層切断用樹脂の押出タイミングを調整することによって、多層溶融樹脂塊中の中間層樹脂の形状を制御することができる。例えば、中間層樹脂と中間層切断用樹脂を同時吐出すると中間層樹脂が凸型となり、逐次吐出すると中間層樹脂が凹型となる。

実施例
図２に示す押出装置で、各層の材質が下記の樹脂からなる材料により、図４（ａ）に示すように中間層樹脂３１が凹型形状になっている下記の各寸法を有する多層溶融樹脂塊３０を得た。得られた多層溶融樹脂塊を圧縮成形してボトル成形用の有底プリフォームとし、図５に示すように、その首下から軸方向下方に１０ｍｍ間隔に断面を切断して、その周方向の最内層、中間層、最外層の厚みを測定して、層分布を調べた。その結果を図６〜図８に示す。なお、図６は首下３０ｍｍと５０ｍｍ位置の円周方向における最内層の厚さの分布を示し、図７は首下３０ｍｍと５０ｍｍ位置の円周方向の中間層厚さの分布を示している。そして、図８は軸方向１０ｍｍ間隔での最内層、中間層、最外層の厚さの変化を示し、各位置での層厚さは、その高さ位置での円周方向厚さの平均値で示している。

多層溶融樹脂塊の材質
内外層樹脂： ポリエチレンテレフタレート（ＩＶ＝０．８２）
中間層樹脂： リサイクルポリエステル樹脂（ＰＣＲ）（よのペットリサイク ル株式会社製）
中間層切断用樹脂： ポリエチレンテレフタレート（ＩＶ＝０．８２）
樹脂塊の寸法
多層溶融樹脂塊全長 Ｚ： ６６ｍｍ
中間層樹脂傘部長さ ｙ： ５２ｍｍ
中間層樹脂中央部長さ Ｌ： ９．４ｍｍ
下端から中間層樹脂下端までの距離 ｔ： ２．１ｍｍ
多層溶融樹脂塊外径 Ｄ： ２２．９ｍｍ
中間層樹脂上端外径 ｄ_ｏ：１７．７ｍｍ

比較例
実施例と同様な樹脂構成で、実施例と同様な押出装置により、中間層樹脂が図４（ｂ）に示すように、凸型になっている多層溶融樹脂塊３４を得、それにより、実施例と同様な位置の各層の厚さ分布を測定した。その結果を前記実施例と共に、図６、図７及び図９に示す。

以上の結果、最内層の厚さ分布は、図６で明らかように、実施例の場合は、首下３０ｍｍで０．８ｍｍ以上、首下５０ｍｍで０．６ｍｍ以上の最内層厚さを確保しており、しかも円周方向のバラツキも少ない。これに対して、比較例の場合は、首下３０ｍｍで０．５５ｍｍ、首下５０ｍｍで０．４５ｍｍしかないところもあり、十分な最内層厚さが確保できてなく、しかも円周方向のバラツキも大きい。また、同様に中間層の場合も、図７に示すように、実施例では首下３０ｍｍ、５０ｍｍ何れの場合も中間層厚さの円周方向のバラツキが少なく、全周に亘ってほぼ均一な厚さになっているのに対し、比較例の場合は円周方向での中間層厚さのバラツキが大きいことが分かる。

また、プリフォームの軸方向首下１０ｍｍ間隔ごとの最内層、中間層及び最外層の厚さ分布は、実施例の場合、各高さ毎にみれば層分布の厚さのバラツキはあるが、最も重要である中間層および最内層のバラツキは少なく、しかも両層とも０．６ｍｍ以上の厚さを確保しているので、前記のような問題点を生じる恐れは少ない。これに対し、比較例の場合は、図９に示すように、特に中間層と最内層のバラツキが大きく、しかも最内層の厚さが特に下方部においては０．６ｍｍ以下となっており、十分な厚さが確保されていない。以上の実施例により本発明の多層溶融樹脂塊は、多層成形物の均一な層厚さと必要な層厚さを確保するのに、非常に有効な方法であることが確認できた。

したがって、本発明の多層溶融樹脂塊を圧縮成形して得たプリフォームをブロー成形して得たボトル等の容器は、中間層が容器内面に露出する恐れがないので、中間層に内容液が直接接触して内容液に好ましくない影響を与えるとか、あるいは中間層が内容品の水分を吸収してバリヤー性が劣化するなどの問題が生じる恐れのない容器を得ることができる。

本発明の多層溶融樹脂塊の概念を示す模式図である。 多層溶融樹脂塊を押出形成する押出装置の一実施形態を示す断面模式図である。 多層溶融樹脂塊を押出形成する押出装置の他の実施形態を示す断面模式図である。 （ａ）は本発明の実施例に係る多層溶融樹脂塊の断面図、（ｂ）は比較例の多層溶融樹脂塊の断面図である。 ブロー成形用プリフォームの正面断面図であり、首下からの寸法位置を示している。 実施例及び比較例における最内層厚さの円周方向厚さのバラツキを示すグラフである。 実施例及び比較例における中間層厚さの円周方向厚さのバラツキを示すグラフである。 実施例のプリフォームにおける軸方向高さ位置の各層厚の変化を示すグラフである。 比較例のプリフォームにおける軸方向高さ位置の各層厚の変化を示すグラフである。

符号の説明

１、３０、３４ 多層溶融樹脂塊
２ 内外層樹脂
３、３１ 中間層樹脂
１０、２０ 押出装置
１１ａ〜１１ｃ 押出機
１３ ダイ
１４ａ、２１ａ 内外層樹脂通路
１４ｂ、２１ｂ 中間層樹脂通路
１４ｃ、２１ｃ 中間層切断用樹脂通路
１５、２２ 押出通路
１６ｂ、１６ｃ 間欠加圧機構
２３ｂ、２３ｃ バブル機構
３３ 多層溶融樹脂塊

Claims (5)

1. 圧縮成形により多層圧縮成形物を得るための多層溶融樹脂塊であって、該多層溶融樹脂塊の中間樹脂層を構成する中間層樹脂が、内外層を構成する内外層樹脂内に下側に偏心して内封され、且つ前記中間層樹脂の形状が凹型であることを特徴とする多層溶融樹脂塊。
2. 前記中間層樹脂は、その下端から多層溶融樹脂塊の下端までの距離が多層溶融樹脂塊全長の１０％以下である請求項１に記載の多層溶融樹脂塊。
3. 前記中間層樹脂の形状は、ｙ（中間層樹脂傘部長さ）≧Ｌ（中間層樹脂中央部長さ）であり、且つ１＞ｄ_ｏ（周方向における中間層樹脂最大外径）／Ｄ（周方向における多層溶融樹脂塊外径）≧０．５である請求項１又は２に記載の多層溶融樹脂塊。
4. 請求項１〜３何れかに記載の多層溶融樹脂塊を圧縮成形して得られたことを特徴とする多層成形物及びブロー成形用多層予備成形物。
5. 請求項４に記載のブロー成形用多層予備成形物を、二軸延伸成形することによって得られたことを特徴とする多層容器。

Images