JP2005119957A - 赤外線非透過性酸化亜鉛系粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 Zn化合物と、3価および/または4価をとり得る金属元素(Md)の化合物とを、Mdの含有量が、ZnとMdとを合計した金属成分の総原子数に対するMdの原子数の比で0.1〜20%になる割合で含む溶液(S)を加熱して、ZnおよびMdを金属成分としX線回折学的に酸化亜鉛結晶性を示す酸化亜鉛系粒子を析出させる。溶液(S)中に、1価または2価の金属元素Maの化合物を、溶液(S)に含まれるMd化合物のMdに対するMa化合物のMaの原子比(Ma/Md)で、0.00001≦Ma/Md<1の範囲で含有する。溶液(S)が、Znに対するモル比で1.90倍以上8倍以下のモノカルボン酸化合物と、Zn化合物の酸化亜鉛換算重量に対して1〜30倍量のアルコールとを含有する。
【選択図】 なし
Description
従来知られている多くの赤外線遮蔽材料のうちで、特開平8−253317号公報で提案されている、酸化亜鉛系の微粒子に少量のIII B族金属またはIVB族金属元素をドーピングしたものは、酸化亜鉛微粒子本来の紫外線遮蔽性、可視光透過性と、ドーピングによる効果として赤外線遮蔽性と導電性を示すため、これらの特性を生かした種々の用途への応用が期待されている。
(1) Zn化合物と、3価および/または4価をとり得る金属元素(Md)の化合物とを、金属元素Mdの含有量が、Znと金属元素Mdとを合計した金属成分の総原子数に対するMdの原子数の比で表して0.1〜20%になる割合で含有する溶液(S)を加熱することにより、ZnおよびMdを金属成分としX線回折学的に酸化亜鉛結晶性を示す酸化亜鉛系粒子を析出させる赤外線非透過性酸化亜鉛系微粒子の製造方法において、
溶液(S)中に、1価または2価の金属元素Maの化合物を、溶液(S)に含まれるMd化合物のMdに対するMa化合物のMaの原子比(Ma/Md)で、
0.00001≦Ma/Md<1
の範囲で含有し、
さらに、溶液(S)が、Znに対するモル比で1.90倍以上8倍以下のモノカルボン酸化合物と、Zn化合物の酸化亜鉛換算重量に対して1〜30倍量のアルコールとを含有する
ことを特徴とする赤外線非透過性酸化亜鉛系粒子の製造方法。
(2) 前記(1)に記載の方法で、前記金属成分を供給するZn化合物、Md化合物、Ma化合物の少なくともいずれか一種が、前記モノカルボン酸化合物となるモノカルボン酸塩である赤外線非透過性酸化亜鉛系粒子の製造方法。
酸化亜鉛系粒子は、Znと3価および/または4価をとり得る金属元素(Md)を金属成分とする。Mdの含有量は、該金属成分の総原子数に対するMdの原子数の比で表して0.1〜20%であることが好ましく、より好ましくは1〜10%、さらに好ましくは3〜8%である。前記範囲を上回ると組成、結晶サイズ等の均一性に富む微粒子となりにくく、前記範囲を下回ると熱線をはじめとする赤外線遮蔽性が不十分となる。
添加元素であるMdとしては、B,Al,Ga,In,Tl,C,Si,Ge,Sn,Pb等のIII B族元素およびIVB族元素の他、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Rv、Os、Rh、Ir、La、Ce、Sb等が挙げられ、これらの中でガリウム、タリウム、インジウム、アルミニウムが最も好ましい。
酸化亜鉛系粒子の一次粒子の粒径としては、可視光波長域の光に対する透過性、赤外線遮断性に優れる点で、Wilson法を用いて求めた結晶子径Dwが1〜50nm(0.001〜0.05μm)であることが好ましい。塗料中に含有される場合には、特にこれらの1次粒子が2次凝集せずに分散していることが好ましい。
酸化亜鉛系粒子の分散粒径Ddは、透明感が高く、組成物に添加したときに得られる組成物の色相に実質的に影響を与えない点、赤外線の遮断効率の点から1μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。特に0.05μm以下が好ましい。透明性と赤外線遮断性の点から単分散性が高いことが好ましい。単分散性は、結晶子径DwとDdとの比R(Dd/Dw)で定義され、Rが4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、さらに2以下、特に1.5以下が好ましい。
酸化亜鉛系粒子が、ポリマーがマトリックスを構成し、このマトリックス中に粒子が分散している形態のもの(ポリマー複合体粒子)も含まれる。該粒子が中空状であると光拡散透過性に優れるものとなる。該粒子における酸化亜鉛系粒子の含有量は特に限定されないが、酸化亜鉛換算で複合体粒子全量に対し1〜90重量%の範囲であることが望ましい。
酸化亜鉛系粒子は、塗料用樹脂との相溶性、塗料中、溶媒中での分散性、分散安定性、酸化亜鉛との光触媒活性低減による耐候性付与などの目的で、表面修飾剤で処理されてなるものが好ましい。
また、酸化亜鉛系粒子は、結晶性酸化亜鉛に特有の回折ピークである、格子面(100)、(002)、(101)に回折ピークを示すことが好ましく、以下の結晶子パラメータを満たすことが好ましい。
そして、Wilson法を用いて求めた、結晶子の大きさをDw、格子歪みをAwとするとき、1≦Dw≦100(nm)、かつ、0≦Aw≦1(%)を満足することが好ましい。より好ましくは5≦Dw≦30(nm)、かつ0≦Aw≦0.5(%)の範囲である。Dwが小さすぎると紫外線吸収性および赤外線非透過性が低下し、大きすぎると可視光に対する透明性が低下する。Dwは赤外線非透過性の点からは結晶子が大きい方が好ましく、可視光透過性の点からは小さい方が好ましい。Dwが5〜30nmの範囲が両性能のバランスがとれる点で好ましいのである。Dwが前記範囲にある場合に、透明性、赤外線遮断性、紫外線吸収性に優れたものとなる。Awが前記範囲にあるときには、Mdがよりモノメリックに含有されているためと考えられるが、赤外線遮断性能が最も高くなる。
形状の具体例としては、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、(六角)板状等の薄片状などが例示されるが、結晶子形態が上述の範囲にあることが好ましい。
酸化亜鉛系粒子は、カルボン酸のカルボキシル残基を、ZnOに対する重量比で0.01〜5%含有することが好ましい。0.1〜3%含有することがより好ましい。カルボキシル基が粒子表面に存在することで、2次凝集が抑えられ、塗料としたときに透明性が高くなる。一方、カルボキシル基が多すぎると、赤外線遮断性能が低下する。カルボキシル基量が前記範囲にあるときに単分散性と赤外線遮断性能の両方に優れたものとなる。また、酸化亜鉛系粒子は炭酸基をZnOに対する重量比で好ましくは3%以下の範囲で含有していてもよい。
本発明にかかる酸化亜鉛系粒子の製造方法について説明する。
本発明において用いられるZn化合物としては、金属亜鉛(亜鉛末)、酸化亜鉛(亜鉛華等)、水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、置換基があってもよいモノ−またはジ−カルボン酸塩(たとえば、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛 乳酸亜鉛、酒石酸亜鉛およびナフテン酸亜鉛)、亜鉛の(アルキル)アルコキシド類、β−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ケトエステル、ケトアルコール、アミノアルコール、グリコール、キノリン等の亜鉛のキレート化合物等の有機亜鉛化合物からなる群のうちから選ばれた少なくとも1つが好ましい。これらのZn化合物を用いるときは脱塩工程が不要となり、脱塩工程が必要な塩化亜鉛、硝酸亜鉛または硫酸亜鉛を使用するときに比べて工程が少なくなる。これらのZn化合物を用いると、不純物Hの含有量が少ない又はない、赤外線遮断性に優れる粒子が得られる。中でも、金属亜鉛(亜鉛末)、酸化亜鉛(亜鉛華)、水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛および酢酸亜鉛は、安価で取扱いが容易な点で好ましい。酸化亜鉛、水酸化亜鉛および酢酸亜鉛は、加熱過程に於ける酸化亜鉛の結晶の生成反応を阻害するような不純物を実質的に含まず、しかも、結晶と粒子との大きさと形状を制御しやすいので、さらに好ましい。特に気相法(フランス法、アメリカ法)で作られる酸化亜鉛が好ましい。気相法の酸化亜鉛は安価に入手できるばかりかモノカルボン酸の種類を任意に選択できることに加えて、これらの原料を用いることにより形状または粒子径等の制御された微粒子が特に得られ易く、不純物Hを含んでいるとしても極めて少ないので、特に好ましい。
Zn化合物、Md化合物、Ma化合物の少なくともいずれか一種がモノカルボン酸塩である場合、後述のモノカルボン酸を別途加えなくても溶液(S)はモノカルボン酸を含むものとみなされる。
モノカルボン酸化合物とは、分子内にカルボキシル基を1個だけ有する化合物である。該化合物の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸(飽和モノカルボン酸);アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸(不飽和モノカルボン酸);シクロヘキサンカルボン酸等の環式飽和モノカルボン酸類;安息香酸、フェニル酢酸、トルイル酸等の芳香族モノカルボン酸;無水酢酸等の上記モノカルボン酸の無水物;トリフルオロ酢酸、モノクロル酢酸、o−クロロ安息香酸等のハロゲン含有モノカルボン酸;乳酸などである。これらのモノカルボン酸化合物は単独で使用してもよいし、2以上併用してもよい。
モノカルボン酸化合物は、Md化合物のMdに対してモル比で50〜200倍が好ましい。また、Znに対するモル比で1.90倍以上8倍以下が好ましい。単分散性に優れ、IRカット性能に優れる粒子が得られやすいためである。
溶液(S)中に、Maの化合物を、溶液(S)に含まれるMd化合物のMdに対するMa化合物のMaの原子比(Ma/Md)で1未満の範囲で含有させることにより、前述のようなMaを含む酸化亜鉛系粒子を容易に得ることができる。Maを共存させることで、金属Md量(亜鉛に対する添加比)にかかわらず、単分散性に優れる微粒子が得られる効果がある。さらに、製法上、Md化合物、Zn化合物を含有する溶液(S)を得るために必要な溶媒の量を少なくすることができ、したがって、経済的に優れた条件下で目的とする酸化亜鉛系粒子が得られる。
[1] 予め、Ma化合物、Md化合物を溶媒中で均一溶解し、得られた溶液(Sa)と、亜鉛化合物または亜鉛化合物を含有する液(溶液でも懸濁液でもよい)を混合し、Ma、Md、亜鉛を含有する溶液(S)を得る方法
[2] 予め、Ma化合物、Md化合物、および亜鉛化合物の一部を溶媒中で均一溶解し、得られた溶液(Sb)と、残りの亜鉛化合物または亜鉛化合物を含有する液(溶液でも懸濁液でもよい)を混合し、Ma、Md、亜鉛を含有する溶液(S)を得る方法
が挙げられる。上記の溶液(Sa、Sb)を得るために、通常50℃以上で加熱することができ、リフラックスする温度で加熱することが好ましい。また、Sa、Sbで用いる好適な溶媒としては、前述したモノカルボン酸、該モノカルボン酸の無水物、水、前述したアルコールなどの1種または2種以上の混合物が挙げられる。
溶液(S)が、炭酸塩を、溶液(S)に含まれるZn化合物のZnに対するCO3のモル数比で0.001〜5%の範囲で含むことにより、光触媒活性の抑制された粒子を得ることもできる。
酸化亜鉛系粒子の用途について説明する。
酸化亜鉛系粒子は、得られた分散液から分散媒を除去することにより、粉末として用いることもできる。
酸化亜鉛系粒子は、樹脂の可塑剤または可塑剤含有溶液中に、分散してなる可塑剤分散体として使用することができる。可塑剤分散体とは、酸化亜鉛系粒子と可塑剤とを少なくとも含むものであり、必要に応じて樹脂や溶媒成分を含むことができる。該粒子と可塑剤とは合計量が可塑剤分散体に対して50〜100重量%であることが好ましく、可塑剤に対する粒子の割合が重量比で0.01〜5であることが好ましい。
上述した可塑剤分散体は、可塑剤本来の目的である、高分子物質の加工性を改良したり、可撓性を付与したりする目的を兼ねて、酸化亜鉛系粒子を含有する樹脂組成物や成形体、あるいは塗料組成物や塗工品を製造する際の粒子原料として使用することができる。すなわち、酸化亜鉛系粒子を含有する塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、メタクリル酸樹脂、アセテートセルロース系、ニトロセルロース系、ポリスチレン系、酢酸ビニル樹脂系、ポリビニルブチラール系等の樹脂組成物、これらを加工してなるシート、フィルム等の成形体、あるいはこれらの樹脂成分をバインダー成分とした塗料組成物および該塗料組成物を成膜してなる塗工品を製造する際に、粒子および可塑剤原料の一部または全部として使用することができる。また、リン酸エステル系可塑剤を含む可塑剤分散体は上述した樹脂成形体や塗工品に難燃性も同時に付与できるものである。
溶媒としては、水、アルコール類、ケトン類、脂肪族及び芳香族のカルボン酸エステル類、エーテル類、エーテルエステル類、脂肪族及び芳香族の炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類のほか、鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油等が挙げられる。
汎用性の点から好ましい溶媒は、常圧に於ける沸点が40℃〜250℃である、アルコール類、脂肪族及び芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、芳香族及び脂肪族カルボン酸エステル類、ケトン類、(環状)エーテル類、エーテルエステル類、水から選ばれる1種または2種以上の混合溶媒である。さらに、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、水、からなる群から選ばれる1種または2種以上の混合溶媒を少なくとも含有する溶媒分散体は、各種塗料系に使用できるので、特に好ましい。
このような溶媒分散体は、可塑剤分散体と同様、酸化亜鉛系粒子を含有する樹脂組成物や成形体、あるいは塗料組成物や塗工品を製造する際の粒子原料として使用することができる。
上記した酸化亜鉛系粒子は塗料組成物中に分散して使用することができる。塗料組成物は、例えば、前述の可塑剤分散体や溶媒分散体から製造することができる。
塗料組成物の組成は、酸化亜鉛系粒子の他に、これらを結合し被膜を形成しうるいわゆるバインダー成分および溶媒成分を含有する。
バインダーとしては、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル系;(メタ)アクリルウレタン系;(メタ)アクリルシリコーン系;アルキルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン系;塩化ビニル系;塩化ビニリデン系;メラミン系;ウレタン系;スチレン系;アルキド系;フェノール系;エポキシ系;ポリエステル系;ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂などの熱可塑性もしくは熱硬化性、湿気硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性等の硬化性合成樹脂、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの合成ゴムもしくは天然ゴムなどの有機系バインダー、シリカゾル、アルカリ珪酸塩、シリコンアルコキシドおよびそれらの(加水分解)縮合物、リン酸塩等の無機系バインダなど従来公知のバインダーが使用できる。
これらのバインダーは単独または2種以上を混合して使用される。
上述した中でも、比較的低温で成膜、乾燥でき耐候性、耐久性に優れる点で、(メタ)アクリル系;(メタ)アクリルウレタン系;(メタ)アクリルシリコーン系;純シリコーン樹脂;シリコーンアルキド樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等の変性シリコーン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂が好ましく、これらのうち少なくとも1種をバインダー全量の50wt%以上とすることが好ましい。
溶媒としては、特に限定されず、塗料組成物の使用目的、バインダーの種類などに応じて適宜選択される。例えば、アルコール類、脂肪族及び芳香族カルボン酸エステル類、ケトン類、エーテル類、エーテルエステル類、脂肪族及び芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等の有機系溶剤;水;鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油等が例示され、必要に応じて2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
上述の塗料を、基材に塗布し、硬化・架橋等の目的で必要に応じて、加熱、電子線照射等を行うことによって、赤外線非透過性の膜が形成された塗装品を得ることができる。塗装品には、合わせガラスの中間膜の如く2枚のガラスに膜が挟まれているものも含まれる。
塗料を用いて、目的とする基材や素子などの上に直接膜を形成してもよいし、膜を予め基材上に形成して成型体としてから目的とする素子などと組み合わせてもよい。基材の片面または両面に膜を形成することができる。基材としては、樹脂成形品、ガラス、紙などを用いることができる。基材に用いる樹脂成形品の形態としては、フィルム状、シート状、繊維状などが例示される。
樹脂の材質は任意のものが使用できる。フィルムやシートとしては、LDPE、HDPE、アモルファスポリエチレン、OPP(延伸ポリプロピレン)、CPP(結晶化ポリプロピレン)等のポリプロピレン、ポリイソブチレンなどのポリオレフィン系;EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)系;ポリスチレン系;軟質又は硬質ポリ塩化ビニル;EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)系;PVA系(ビニロン系);PVDC系(ポリ塩化ビニリデン);ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系;ポリカーボネート系;ポリウレタン系;ポリアミド系;ポリイミド系;ポリアクリロニトリル系;ポリサルフォン系;ポリエーテルサルフォン系;ポリフェニレンサルファイド系;ポリアリレート系;ポリエーテルイミド系;アラミド系;(メタ)アクリル系;ポリエーテルエーテルケトン系;テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン・ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂等の各種フィル卯やシート(板を含む)が例示される。
また、廃棄処理問題から、生分解性に対する要求に応えるものとして、生分解性樹脂を基材として用いることは今後ますます重要になる。このような場合、例えば、ポリ−3−ハイドロキシ酪酸エステル、キチン・キトサン系、ポリアミノ酸系、セルロース系、ポリカプロラクトン系、アルギン酸系、ポリビニルアルコール系、脂肪族ポリエステル系、糖類系、ポリウレタン系、ポリエーテル系などの生分解性プラスチックを基材として用いることが好ましい。
また、ガスバリア性が要求される食品包装用途などには、EVA系、EVOH系、PVDC系、PVA系などが使用しうる。
また、繊維として用いる場合、例えば、木綿、麻、絹、羊毛、コラーゲン繊維等の天然繊維、再生セルロース繊維、ナイロン−6、ナイロン−66等の脂肪族ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエチレン繊維、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリオキシメチレン繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリイミド系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール等の複素環状高分子系繊維、PMMA等のアクリル繊維などの合成繊維に適用しうる。
塗料組成物を塗布・成膜した後、耐水性、耐溶剤性、耐酸、耐アルカリ等の耐薬品性、耐擦傷性などの点から、熱硬化(室温硬化を含む)、湿気硬化、紫外線硬化、電子線硬化などの硬化方法で硬化膜とすることが好ましい。
得られた膜の可視光域の透過率は高ければよく、透明ガラスのごとくかかる透過率が高くヘイズが実質的にないいわゆる透明体から、すりガラスのごとくヘイズは高いが全光線透過率の高い即ち優れた拡散透過性を有するものまで可能である。紫外線・赤外線カットフィルムや合わせガラスのガラス中間膜等で応用する場合、可視光透過率は70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。ヘイズは、透明性が高いという点から10%以下が好ましく、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。可視光透過率、ヘイズ値は市販の濁度計で測定することができる。
さらに、上記に加えて、基材が、板、シート、フィルム状の樹脂成形体あるいはガラスである場合、塗工品の可視光透過率が80%以上、ヘイズが10%以下であることが好ましく、可視光透過率が85%以上、ヘイズが5%以下であることが更に好ましい。
上記した酸化亜鉛系粒子は、樹脂組成物中に分散して使用することができる。樹脂組成物の組成は、酸化亜鉛系粒子と、これが分散された連続相を形成しうる樹脂とを含む。酸化亜鉛系粒子と樹脂の総重量に対して酸化亜鉛系粒子を0.1〜99重量%、樹脂を99.9〜1重量%の割合で含むことが好ましい。樹脂としては、塗工品の基材として例示したもの(フィルム、シート、繊維)を使用できる。
樹脂組成物から得られる樹脂成形品については、成形品の可視光透過率と、該粒子を含有しない以外は同様にして製造された成形品の可視光透過率との差が±30%以下が好ましく、より好ましくは±20%以下、特に好ましくは±10%以下であり、粒子含有成形品のヘイズと粒子無しの成形品のヘイズとの差が±10%以下が好ましく、より好ましくは±3%以下、特に好ましくは±1%以下である。しかも、粒子含有成形品の可視光透過率が80%以上、ヘイズが10%以下、更に好ましくは可視光透過率が85%以上、ヘイズが5%以下を満足するものは、透明性に優れる樹脂成形品として有用であり、本発明で容易に得られる。
このようにして得られた膜、塗工品、成型品の用途としては、赤外線非透過性、紫外線吸収性、帯電防止性、導電性が求められる用途が挙げられる。
具体的には、紫外線からの内容物の保護、紫外線による印刷物やカラーフィルターなど各種材料の退色・変質・劣化の防止、紫外線からの人体の保護などを目的とした紫外線の遮断、冷房時の室内温度上昇の抑制、暖房時に於ける室内の保温等を目的とした赤外線の遮断などを必要とする種々の分野、さらに静電気障害の防止、プラスチック、紙、布等の導電性付与など帯電防止、導電化などを必要とする種々の分野で有用である。
また、日射による温度上昇が材質の劣化や性能の変動あるいは低下をひきおこすような材料、たとえば窒化ガリウム系等の発光ダイオードやシリコン系太陽電池の保護膜としても使用することができる。
農業用フィルムの構成としては、基材フィルムの少なくとも片面に、酸化亜鉛系粒子含有塗膜が設けられた赤外線非透過性フィルムとすることができる。さらに、フィルムの可視光透過性能が使用時において低下する原因となる、水滴、霧の付着、ちりやほこりなどによる汚染などを防止するために、防滴性、防霧性、防塵性などの処理またはこれらの機能を有する塗膜または層をフィルムの片面または両面に形成することが好ましい。また、従来よりグリーンハウスの保温性を高める目的で、日射時に赤外線を吸収し夜間時に赤外線を放射する機能を有するシリカ、珪酸塩などのシリカ系化合物、ハイドロキシ炭酸アルカリアルミニウムやハイドロタルサイト類などの複水酸化物系化合物などの保温剤として知られる粒子を基材フィルムに添加したものを基材として使用すること、また、これらの粒子を赤外線非透過性の膜中あるいはこれらの粒子を含有する層を設けることもできる。また、耐擦傷性や耐酸性雨対策等の耐候性など、耐久性を付与する目的で、ハードコート性の保護膜が設けられていることが好ましい。
また、前記した熱線吸収色素、前記リン酸基含有ポリマー等の熱線を選択的に吸収しうる材料を含有する膜を設けてもよく、また、これらの材料を酸化亜鉛系粒子を含有する膜中に含有せしめてもよい。
バインダーとしては、前記した中の耐候性、耐久性に優れるバインダー及びその硬化方法のものが好ましく使用できる。
また、酸化亜鉛系粒子を含む塗料組成物から得られた膜、塗工品、成型品の用途の他の具体例としては、ステルスバーコーター等バーコータ材料にも有用な塗料、フィルム等を挙げることができる。さらに、クリーンルームや自動車等の車両用窓、衣料、各種CRT、LCD等の各種ディスプレーの画面、タッチパネル等の帯電防止化、ファクシミリ用記録紙等の静電記録紙等の導電化などにも利用できる。
また、他の具体例としては、太陽電池、各種ディスプレー、タッチパネル、光学素子、光学センサーなどで使用される透明導電膜を形成するための塗料の成分として、あるいは、スパッタリング用燒結体原料粒子としても有用である。
Aの場合、例えば、光電変換素子が絶縁基板上に金属電極、シリコン層、透明電極を重畳形成してなる場合は、透明電極表面上に、あるいは透明電極上に透明な中間層を介して赤外線非透過膜を形成することができる。あるいは、光電変換素子が、ガラス等の透明基板上に、透明電極、無定形シリコン層、金属電極を重畳形成してなる場合は、透明基板上に赤外線非透過膜を形成してもよいし、透明基板と透明電極の中間層として赤外線非透過膜を形成してもよい。
さらに、酸化亜鉛系粒子を含む塗料組成物から得られた膜、塗工品、成型品の用途の他の具体例としては、テントが挙げられる。テントの表面に赤外線非透過性かつ紫外線吸収性の膜を設けることにより、熱線カットによる内部の温度上昇等の抑制ができ、紫外線カットによるテントの耐久性の向上が可能となる。
バインダーとしては、上記農業用フィルムと同様のものを使用しうる。
本実施例における評価等は次の手法により行った。
1.微粒子の評価
<粉末試料の作製法>
得られた分散体中の微粒子を遠心分離操作によって分離した後、メタノールによる洗浄、さらにアセトンによる洗浄を充分行った後、30℃で1日真空乾燥し、さらに80℃にて1日真空乾燥し、揮発成分を完全に除去して微粒子の粉末を得、これを粉末試料とした。
<カルボキシル基含有量>
粉末試料1gを0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液に混合し、3日間撹拌した後、遠心分離操作によって得た上澄みをイオンクロマト分析することによって測定した。
<結晶性>
粉末X線回折により評価した。
<結晶子径Ds(hkl)、Dw、格子歪Aw>
粉末試料の粉末X線回折測定を行い求めた。
Dw、Aw:Wilson法を用いて求めた結晶子の大きさ及び格子歪
<平均分散粒径Dd>
酸化亜鉛系粒子を含む分散液を必要に応じて塗料溶媒で希釈して、動的光散乱方式による粒子径アナライザー(野崎産業(株)製NICOMP Mode1370)を用いて重量基準の平均粒子径を求め、これを平均分散粒径とした。
<微粒子組成>
粉末試料の金属成分の組成は、蛍光X線分析、原子吸光分析、プラズマ発光分析、重量分析および元素分析などにより求めた。
<分散体の微粒子濃度>
分散体の一部を100℃において溶媒等の揮発成分を完全に除去し得るまで真空乾燥することにより乾燥粉末を得、これを空気中、500℃で1時間加熱したときの残分を金属酸化物として、金属酸化物分の分散体に対する重量分率を求め、この値を分散体中の微粒子濃度(金属酸化物換算濃度)とした。
<単分散性>
分散体のDd/Dwについて、以下の評価基準に従って評価した。
2≦Dd/Dw<4 :△
1.5≦Dd/Dw<2 :○
Dd/Dw<1.5 :◎
<成膜したときの可視光に対する透明性>
濁度計(日本電色工業(株)製NDH−1001 DP)によりヘイズを測定した。なお、以下の各実施例で示されるヘイズのデータは、特に断りのない場合は、成膜品の値である。膜そのものの値を示す場合の測定方法ならびに算出方法を以下に示す。
[2] 基材のヘイズを測定し、これをHO (%)とする
[3] 基材に膜を形成したもののヘイズを測定しこれをHS (%)とする。
[4] 膜のヘイズを下式により算出する。
H(%)=HS −HO (%)
なお、HS ≦HOの場合は、H=0(%)とした。
膜そのもののヘイズについて、以下の評価基準に従って評価した。
1%未満 :○
1%以上3%未満:△
3%以上 :×
赤外線カット性能および紫外線カット性能の有無は、積分球付属装置((株)島津製作所製ISR−3100)を試料室にとりつけてなる自記分光光度計((株)島津製作所製UV−3100)により、照射波長2500〜200nmにおける各波長光に対する透過率を測定評価することにより行った。得られた分光透過曲線から以下のように評価した。
<赤外線カット性能>
酸化亜鉛換算で塗布量が12g/m2 のときのΔT(%)=T0.6 −T1.5 について以下の評価基準に従って評価した。
40%以上50%未満:△
50%以上60%未満:○
60%以上 :◎
なお、実施例1および2における粒子自体の透明性及び赤外線カット性能の評価については、粒子をアクリル樹脂バインダー((株)日本触媒製、アロセットューダヴルS5161)と粒子/バインダー比=50/50(重量比)、固形分濃度30重量%となるように調製し、これをPETフィルムに塗布、乾燥することによって得られたフィルムを評価した。
<紫外線カット性>
酸化亜鉛換算で塗布量が10g/m2 のときの370nmにおける透過率T0.37(%)について以下の評価基準に従って評価した。
T0.37>10(%) :×
2.塗工品、組成物の光学的特性(透明性、紫外線カット性、赤外線カット性) 基本的に粒子の光学的特性評価方法に準じる。
赤外線カット性能としては、ΔT=T0.6 −T1.5 について以下の評価基準に従って評価した。
20%以上40%未満:A
40%以上60%未満:B
60%以上 :C
分光特性については、積分球付属装置((株)島津製作所製ISR−3100)を試料室にとりつけてなる自記分光光度計((株)島津製作所製UV−3100)により、照射波長2500〜200nmにおける各波長光に対する透過率を測定評価した。
〔実施例1〕
撹拌機、滴下口、温度計、開閉制御可能な留出ガス出口、窒素ガス導入口を備えた、20Lのガラス製反応器中で、酢酸2600重量部、イオン交換水1855重量部、酸化亜鉛(フランス法酸化亜鉛)488重量部、水酸化インジウム(酸化インジウム含有量78.5重量%)53重量部、炭酸ナトリウム0.318重量部からなる混合物を、100℃で2時間加熱することにより均一溶液を得た後、2−ブトキシエタノール10000重量部を添加混合することにより、均一溶液(S1)を得た。
分散体(D1)は、結晶子径12nmの微粒子が分散粒径14nmで分散したものであり、分散体(D1)中の微粒子は、In含有量がZnに対する原子比で5%、アセトキシ基が酸化亜鉛に対する重量比で3重量%の割合で結合してなるものであった。また極めて分散性に優れるものであった。
〔比較例1(1)〕
実施例1において炭酸ナトリウムを用いない以外は実施例1と同様にして均一溶液(S’1)を得、分散体(D’1)を得た。
〔比較例1(2)〕
実施例1において炭酸ナトリウムを用いず、酢酸量、水量をそれぞれ表1に示す量とした以外は実施例1と同様にして均一溶液(S’2)を得、分散体(D’2)を得た。
実施例1において、表3と4に示す原料を使用した以外は、実施例1と同様にして均一溶液S2(1)を得、同様に170℃に加熱することによって、分散体D2(1)を得た。
〔実施例2(2)〕
実施例1において、表3と4に示す原料を使用し、反応器の材質をハステロイ製とした以外は、実施例1と同様にして均一溶液S2(2)を得、次に、留出ガス出口を開の状態で、窒素ガスを流しながら、溶液S2(2)を昇温し、溶液中の揮発成分の一部を留出させながら、内温を170℃まで加熱昇温し2時間保持することにより、ZnO結晶性粒子が分散してなる紺色の分散体(D2(2)−a)を得た。さらに、留出ガス出口を閉の状態に切り替え、引き続き昇温し、220℃で20時間加熱を行うことによって、分散体D2(2)を得た。
〔実施例2(3)〕
実施例2(2)において、表3に示す原料を用い、また予め水酸化インジウム、酢酸リチウムを酢酸と水の混合溶媒中に均一に溶解させた後、酢酸亜鉛と2−ブトキシエタノールを混合することによって得られた均一溶液(S3)を、実施例2(2)と同様にして加熱することによって、酸化亜鉛結晶性の粒子を分散含有する分散体(D2(3)−a)を得た。実施例2(2)と加熱処理条件を250℃5時間とする以外は同様にして、分散体D2(3)を得た。
〔実施例2(4)、(5)〕
耐圧100kgf/cm2 のハステロイ製オートクレーブ容器内に、表4に示す組成比となるよう、酢酸亜鉛、金属Md化合物、金属Ma化合物、溶媒を仕込んだ後、撹拌することによって、半透明溶液S2(4)、(5)を得、内部の雰囲気ガス組成が酸素濃度0.02%以下となるまで窒素ガスで充分にパージした後、密閉状態で撹拌しながら、加熱昇温し、190℃で10時間加熱処理を行うことにより、青色の分散体D2(4)、(5)を得た。
〔比較例2(1)〜(5)〕
実施例2(1)〜(5)において、金属Maの化合物を使用しない以外は、各実施例と同様の反応装置、反応操作を行うことにより、それぞれ分散体D2’(1)〜(5)を得た。
各実施例および比較例で得られた分散体の単分散性、結晶子径Dw、Ds(002)/Ds(100)、赤外線カット性能、紫外線カット性能の評価結果を表5、6に示す。
実施例2(3)において得られた分散体D2(3)を撹拌しながら、表7に示す表面処理剤をそれぞれ酸化物に対して表7に示す量となるよう添加し、表7に示す条件下で処理することによって粒子表面が表面処理されてなる粒子の分散体を得た。
次に、各分散体をエバポレータを用いて減圧加熱濃縮することによって、酸化物濃度25〜30重量%の濃縮分散体を得た。
該濃縮分散体に酸化物濃度が5重量%となるようにIPAを添加した後、遠心分離することによって得たウエットな沈降物に、表7に示す溶媒を添加し、サンドミルによって分散処理を施すことによって各種溶媒分散体を得た。
実施例2(1)において、均一溶液S2(1)を得た後、昇温し170℃で加熱することによって分散体を得る際、加熱過程でアクリルシリコーンポリマー(鐘淵化学製ゼムラックYC5920)を酸化物に対して3重量%添加する以外は、実施例2(1)と同様にして分散体を得、該分散体をエバポレータで酸化物濃度60重量%まで減圧加熱濃縮した後、キシレンを添加することにより、キシレン分散体を得た。得られたキシレン分散体D3(4)は、結晶子径Dwが8nm、分散粒径Ddが11nmの単分散性に優れる分散体であった。
〔実施例3(5)〕
実施例2(3)において得られた分散体D2(3)を、エバポレータを用いて減圧加熱濃縮することによって、酸化物濃度60重量%の濃縮分散体を得た。
〔実施例3(6)〕
実施例3(1)で得られた分散体D3(1)100重量部に、フタル酸ジ− エチルヘキシル60重量部を添加混合した後、減圧加熱濃縮することによって、粒子濃度(酸化物換算)20重量%の粘稠なフタル酸ジ−2エチルヘキシル分散体D3(6)を得た。該分散体は、分散粒径Ddが17nmの単分散性に優れる分散体であった。
〔実施例4(1)〜(5)〕
実施例3(1)〜(4)で得られた各種分散体を用いて、表8に示す組成で塗料を作製した。各塗料を表9に示す基材に塗布し、表9に示す硬化条件で乾燥することによって各種酸化亜鉛径粒子が分散含有された塗膜及び塗工品を得た。
実施例4(3)で得られた塗工フィルム(フィルムA)ならびに基材として用いたフッ素樹脂フィルム(フィルムB)の各フィルムについて図2に示す装置を用いて断熱効果を測定した。環境条件はいずれのフィルムの場合も同じ温度20℃、相対湿度50%の雰囲気であった。ランプ照射後10分後、ブラックパネル温度計の温度がフィルムBの場合は44℃であるのに対し、フィルムAの場合は30℃であった。
実施例3(5)で得られた分散体100重量部とアクリルエマルション50重量部を混合することにより、塗料を作製し、該塗料にポリエステル繊維を浸漬して乾燥することにより微粒子目付量10g/m2 のポリエステル繊維を得た。得られた繊維は紫外線および熱線を吸収し、透明感にも優れるものであった。
〔実施例5(1)〕
実施例3(6)で得られた分散体D3(6)50重量部とポリ塩化ビニル樹脂100重量部を160℃にて溶融混合し、PVCコンパウンドを製造した。該コンパウンドを用いて押し出し成形することにより微粒子の分散含有された厚さ50μmの塩化ビニルフィルムを得た。得られたフィルムは、可視光に対する透明性に優れ、しかも紫外線および赤外線を有効に遮蔽するものであった。得られたフィルムの物性を表10に示す。
実施例3(3)で得られたトルエン分散体D3(3)とアクリル系バインダー樹脂溶液を粒子/樹脂=6/4(重量比)で混合し、バーコーターでガラスに塗工した後、80℃2分間熱風乾燥することにより透明な塗工ガラスを得た。該ガラスの可視光透過率、日射透過率、熱線透過率、紫外線透過率、およびヘイズを表11に示す。
なお、ヘイズ値は、前記した方法(濁度計による測定値)によって測定した値であり、これ以外の各透過率の値は以下のようにして求めた。
前記した積分球附属装置を試料室に取り付けてなる自記分光光度計により、340〜1800nmの範囲で各波長光に対する透過率を測定した。測定結果に基づき、以下のようにして求めた。
(各波長光における係数Dλ・Vλは付表1の値を使用)に従って求めた。
日射透過率:JIS R3106-1985 の4.3に記載の測定方法、4.4に記載の計算方法
(各波長光における係数Eλ・Δλは付表2の値を使用)に従って求めた。
熱線透過率:波長800〜1800nmの光の透過率に対し、日射透過率の場合の計算方法を適用して、下記式に従って求めた。各波長光における係数Eλ・Δλは付表2の値を使用した。
紫外線透過率:波長340〜380nmの光の透過率に対し、日射透過率の場合の計算方法を適用して、下記式に従って求めた。各波長光における係数Eλ・Δλは付表2の値を使用した。
基材のガラスに対しても同様に求めた。
分光透過率曲線を図1に示す。
実施例3(1)〜(3)で得られた分散体D3(1)〜D3(3)を、表12に示すバインダーを混合した後、撹拌することによって塗料C7(1)〜C7(3)を得た。
次に、予め、金の櫛形電極を蒸着したパイレックス(登録商標)ガラス上に、各塗料を用いてスピンコータにより成膜し、常温乾燥後、50℃で加熱乾燥することによって、それぞれ乾燥膜を得た。
得られた膜は厚み0.5μmであった。
各乾燥膜を表12に示す温湿度条件下で遮光状態で1時間放置した後、ケスレー社製エレクトロメータ617型を用いて、同条件下における表面抵抗値を測定(印加電圧0.1V)した結果を表12に示す。
2:サンプル支持台
3:フィルム
4:光源(ランプ)
Claims (2)
- Zn化合物と、3価および/または4価をとり得る金属元素(Md)の化合物とを、金属元素Mdの含有量が、Znと金属元素Mdとを合計した金属成分の総原子数に対するMdの原子数の比で表して0.1〜20%になる割合で含有する溶液(S)を加熱することにより、ZnおよびMdを金属成分としX線回折学的に酸化亜鉛結晶性を示す酸化亜鉛系粒子を析出させる赤外線非透過性酸化亜鉛系微粒子の製造方法において、
溶液(S)中に、1価または2価の金属元素Maの化合物を、溶液(S)に含まれるMd化合物のMdに対するMa化合物のMaの原子比(Ma/Md)で、
0.00001≦Ma/Md<1
の範囲で含有し、
さらに、溶液(S)が、Znに対するモル比で1.90倍以上8倍以下のモノカルボン酸化合物と、Zn化合物の酸化亜鉛換算重量に対して1〜30倍量のアルコールとを含有する
ことを特徴とする赤外線非透過性酸化亜鉛系粒子の製造方法。 - 前記金属成分を供給するZn化合物、Md化合物、Ma化合物の少なくともいずれか一種が、前記モノカルボン酸化合物となるモノカルボン酸塩である
請求項1に記載の赤外線非透過性酸化亜鉛系粒子の製造方法。
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