JP2005111629A - 研磨工具およびこれを用いた研磨装置ならびに研磨方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来のEEM法では、研磨工具の寸法形状精度やその表面あらさなどを厳しく管理し、被加工物に対する研磨工具の相対位置を制御する必要がある。
【解決手段】 凸光学面16と対向する研磨端面23を有し、この研磨端面23で囲まれた緩衝室24を画成する拡散ヘッド19と、この拡散ヘッド19に形成されて緩衝室24内に加工液を導く加工液導入通路25と、拡散ヘッド19が取り付けられるヘッドホルダ26と、このヘッドホルダ26が当接する球面座27を介してヘッドホルダ26を支持するホルダブラケット28と、球面座27にヘッドホルダ26を付勢する永久磁石29と、ホルダブラケット28を凸光学面16に沿って移動させるヘッド送り手段と、ホルダブラケット28を凸光学面16側に付勢するヘッド押圧手段と、ヘッドホルダ26に連結されて加工液導入通路25から緩衝室24内に加工液を供給する加工液供給手段とを具える。
【選択図】 図2

Description

本発明は、被加工物の加工面に対して加工液中に含まれる微粒子を軽く接触させ、これらの相互作用過程で被加工物を構成する材料の除去を行うための研磨工具およびこれを用いた研磨装置ならびに研磨方法に関する。
被加工物の表面に微粒子を軽く接触させ、これらの相互作用過程で被加工物を構成する材料の除去を行う加工法は、EEM(Elastic Emission Machining)として知られている。このEEMは、被加工物の表面に加工変質層を形成することなく、その表面を原子,分子のオーダーで除去することができるため、特に高精度な加工が要求される特殊な光学面などの仕上げ研磨や、半導体などの機能性材料の表面加工などに応用されている。より具体的には、平均粒径が0.5μm以下の微粒子、すなわち遊離砥粒を含む加工液を被加工物の表面に沿って流動させ、この加工液中に含まれる遊離砥粒と被加工物の加工面とを軽く接触させることにより、被加工物の表面を原子,分子のオーダーで除去するものである。
研磨工具を使用しない簡易な方法として、先端面が軸線に対して傾斜した状態の加工液供給管をその先端面が加工液中に浸漬された被加工物の加工面と平行となるように接近させ、この状態で加工液供給管から被加工物の加工面に向けて加工液を吐出させ、これによって被加工物に沿って一定方向に加工液を流動させ、被加工物と加工液供給管の先端面との相対位置をずらしてゆくことにより、被加工物の加工面全域を研磨加工する方法が知られている。
また、特許文献1には、レンズや反射鏡などの光学部品の加工において、ポリウレタン球を研磨工具として用い、この弾性を持った研磨工具を被加工物の加工面に対して近接状態で駆動回転することにより、被加工物の加工面と研磨工具との間に介在する加工液を連れ回りさせ、被加工物の表面を研磨加工するようにした方法が開示されている。
このような研磨装置の一例を図6に示す。すなわち、この研磨装置は、一対の軸受1を介して加工ヘッド2に回転自在に保持された回転軸3の先端部に締結部材4を用いてコア5を固定し、このコア5に輪郭形状が球形となるポリウレタンなどで形成された弾性体6を一体的に設け、カップリング7を介して加工ヘッド2に取り付けられたモータ8に回転軸3の後端部を連結し、このモータ8を作動することにより、図示しない加工液を貯溜した加工タンク内で弾性体6を高速回転させ、加工タンク内で治具9に保持された被加工物Wの表面に沿って加工液を流動させるようにしている。
被加工物Wの表面とこれに近接する弾性体6の外周面との間隔は、通常、数マイクロメートル以下に設定する必要がある。このため、弾性体6の真球度はこの最小間隔よりも小さな誤差に設定しなければならず、アルミニウムやSUSなどで形成されたコア5の外周面にポリウレタン樹脂を一体的に成形した後、研削などの機械加工によって輪郭形状を正確な真球に加工した弾性体6を得るようにしている。
さらに、特許文献2には、レンズや反射鏡などの光学部品の加工において、内部に気体を封入した弾性薄膜部材を研磨工具として用い、この研磨工具を被加工物の加工面に対して近接状態で駆動回転することにより、被加工物の加工面と研磨工具との間に介在する加工液を連れ回りさせるようにした方法が開示されている。この場合、研磨工具は、加工されるべき光学部品の光学面形状に適した曲率半径となるように、弾性薄膜部材の内部に逆止め弁を介して気体を密封し、その内部圧力によって研磨工具の輪郭形状を保持するようにしている。
特開平9−85613号公報 特開平9−85614号公報
加工液中に浸漬された被加工物に対し、これに近接する加工液供給管の先端から加工液を吐出することによって被加工物の表面を研磨加工する方法では、被加工物の表面と加工液供給管の先端との間に介在する加工液によって、加工液供給管から吐出される加工液が被加工物の表面に達する前に、その運動エネルギーが急激に低下してしまうため、その加工領域が狭いことと相俟って加工効率が極めて悪い。しかも、加工液供給管から吐出される加工液の吐出速度を極めて大きく設定する必要がある上、その反力に抗して被加工物の表面に対して加工液供給管の先端面の距離を一定に保持しなければならず、そのための駆動機構が大型となって制御機構が複雑となってしまう傾向を有する。
ポリウレタンなどの弾性体6を研磨工具として用いた特許文献1に開示された方法において、加工時における被加工物Wと弾性体6との間隔を数マイクロメートル以下に設定しなければならないことを考慮すると、弾性体6の真球度やその表面あらさ、ならびに弾性体6に対する回転軸3の同心度を加工時における被加工物Wと弾性体6との間隔よりも高精度に加工する必要があり、弾性変形可能なポリウレタンの性質上、弾性体6の形状精度を保証することが困難である。しかも、加工液中で弾性体6が高速回転すると、特に被加工物Wと弾性体6と間の領域に介在する加工液の圧力が高まるが、この圧力は被加工物Wの表面の曲率によって大きく変化することとなる。この結果、被加工物Wの表面に急激な形状変化がある場合、加工液の圧力が急激に低下して弾性体6が被加工物Wの表面に接触してしまう危険性が生ずる。しかも、弾性体6の弾性変形が被加工物Wの全域に亙って均一とはならず、加工後の被加工物Wの表面あらさを一定に保つことができなくなる可能性もあった。
内部に気体を封入した弾性薄膜部材を研磨工具として用いる特許文献2に開示された方法では、弾性工具本体部とする研磨工具においては、封入気体の圧力を予め設定することで研磨工具を一定の曲率半径に保つことを想定しているため、被加工物の加工面が球面の場合には、その曲率半径に対応して研磨工具の曲率半径を設定することで、最適な加工が可能となる。
しかしながら、被加工物の加工面が非球面や自由曲面の場合には、このような研磨工具を用いて高精度な加工を行うことは極めて困難となる。特に、局部的な曲率半径が100mm前後から数メートルに及ぶ複雑な非球面や、その非球面量、つまり基準となる球面からのオフセット量も数百マイクロメートルに及ぶようなものを加工の対象とした場合、従来のような一定の曲率半径を持った研磨工具を用いて加工を行うと、局所的に加工能率が低下してしまう箇所が発生するため、被加工物の加工面全域に亙って均一にサブナノメートルの表面あらさに加工することが実質的に困難である。このような不具合は、特許文献1に開示されたポリウレタンなどの弾性体6を研磨工具として使用する場合も同様に存在する。
(発明の目的)
本発明の目的は、研磨工具の寸法形状精度やその表面あらさなどを厳しく管理したり、被加工物に対する研磨工具の相対位置を制御する必要なく、非球面や自由曲面を持った被加工物をEEM法によって均一な表面あらさに加工し得る研磨工具およびこれを用いた研磨装置ならびに研磨方法を提供することにある。
本発明の第1の形態は、被加工物の加工面と対向する環状の研磨端面を有し、前記加工面との間にこの研磨端面で囲まれた緩衝室を画成するカップ形の拡散ヘッドと、先端がこの拡散ヘッドの前記緩衝室に臨むように当該拡散ヘッドに形成されて前記緩衝室内に加工液を導くための加工液導入通路と、前記拡散ヘッドが取り付けられる円形のヘッドホルダと、このヘッドホルダの外周端縁部が当接する球面座を有し、この球面座を介して前記ヘッドホルダを支持するためのホルダブラケットと、このホルダブラケットの前記球面座に前記ヘッドホルダの外周端縁部を付勢する付勢手段とを具えたことを特徴とする研磨工具にある。
本発明の第1の形態による研磨工具において、拡散ヘッドは、その先端部の径方向外側に環状のリップ部を有し、このリップ部が拡散ヘッドの研磨端面を形成するものであってよい。
拡散ヘッドの少なくとも研磨端面の部分を可撓性を有する弾性部材にて形成することができる。
拡散ヘッドをヘッドホルダに対し加工液導入通路を中心として回転自在に取り付け、加工液が加工液導入通路を通過する際に拡散ヘッドに回転力を与えるための螺旋溝を加工液導入通路の内周面に形成するようにしてもよい。
付勢手段は、ホルダブラケットに近接するようにヘッドホルダに装着される永久磁石を有することができる。
本発明の第2の形態は、被加工物の加工面と対向する環状の研磨端面を有し、前記加工面との間にこの研磨端面で囲まれた緩衝室を画成するカップ形の拡散ヘッドと、先端がこの拡散ヘッドの前記緩衝室に臨むように当該拡散ヘッドに形成されて前記緩衝室内に加工液を導くための加工液導入通路と、前記拡散ヘッドが取り付けられる円形のヘッドホルダと、このヘッドホルダの外周端縁部が当接する球面座を有し、この球面座を介して前記ヘッドホルダを支持するためのホルダブラケットと、このホルダブラケットの前記球面座に前記ヘッドホルダの外周端縁部を付勢する付勢手段と、前記ホルダブラケットを介して前記拡散ヘッドを前記被加工物の加工面に沿って移動させるヘッド送り手段と、前記ホルダブラケットを介して前記拡散ヘッドを前記加工面側に付勢するヘッド押圧手段と、前記加工液導入通路に連通するように前記ヘッドホルダに連結され、前記加工液導入通路を介して前記緩衝室内に加工液を供給するための加工液供給手段とを具えたことを特徴とする研磨装置にある。
本発明においては、ヘッド押圧手段によって拡散ヘッドの研磨端面を被加工物の加工面に対して適当な圧力で押し付け、この状態にて加工液供給手段によって加工液を加工液導入通路を介して緩衝室内に供給すると、被加工物の加工面に対する拡散ヘッドの押し付け力に抗して過剰に供給される加工液が拡散ヘッドの研磨端面と被加工物の加工面との隙間から拡散ヘッドの外側に排出され、研磨ヘッドの研磨端面が被加工物の加工面に対して非接触状態に保持される。この状態にてヘッド送り手段を作動して被加工物の加工面に沿って拡散ヘッドを移動させる。加工液が拡散ヘッドの研磨端面と被加工物の加工面との間を通過する際、絞り効果によってその流速および液圧が高められ、特に研削ヘッドの研磨端面と対向する被加工物の加工面の部分が効率良く研磨される。
拡散ヘッドを支持するヘッドホルダは、その外周端縁部が付勢手段によってホルダブラケットの球面座に付勢されており、被加工物の加工面の傾斜や曲率に応じて拡散ヘッドはヘッドホルダと共にホルダブラケットの球面座に対して任意の角度に首振り運動し、被加工物の加工面と研磨ヘッドの研磨端面との隙間が一定に保持される。
本発明の第2の形態による研磨装置において、拡散ヘッドをヘッドホルダに対し加工液導入通路を中心として回転自在に取り付け、加工液導入通路を中心として拡散ヘッドを駆動回転させるヘッド回転駆動手段をさらに具えることができる。
本発明の第3の形態は、被加工物の加工面との間に緩衝室を画成するカップ形の拡散ヘッドをその先端の研磨端面が前記加工面と対向するように配するステップと、前記緩衝室内に加工液を供給するステップと、前記拡散ヘッドの研磨端面を前記加工面側に付勢することにより、前記緩衝室内に供給された加工液を前記拡散ヘッドの研磨端面と前記加工面との隙間から排出させ、これに伴って前記拡散ヘッドの研磨端面に近接する前記加工面の部分を研磨するステップとを具えたことを特徴とする研磨方法にある。
本発明の第3の形態による研磨方法において、加工液が遊離砥粒を含む懸濁液であってよい。
拡散ヘッドをその軸線回りに駆動回転させるステップや、あるいは拡散ヘッドを前記加工面に沿って移動させるステップをさらに具えることができる。
本発明の研磨工具によると、被加工物の加工面と対向する環状の研磨端面を有し、加工面との間にこの研磨端面で囲まれた緩衝室を画成するカップ形の拡散ヘッドと、先端がこの拡散ヘッドの緩衝室に臨むように当該拡散ヘッドに形成されて緩衝室内に加工液を導くための加工液導入通路と、拡散ヘッドが取り付けられる円形のヘッドホルダと、このヘッドホルダの外周端縁部が当接する球面座を有し、この球面座を介してヘッドホルダを支持するためのホルダブラケットと、このホルダブラケットの球面座にヘッドホルダの外周端縁部を付勢する付勢手段とを具えているので、緩衝室内に供給される加工液が拡散ヘッドの研磨端面と被加工物の加工面との間を通過する際に絞り効果によってその流速が高められ、しかも被加工物の加工面と拡散ヘッドの研磨端面との間に形成される隙間が力学的なバランスによって自動的に均一な間隔に保持される結果、被加工物の加工面が任意の曲面であっても高精度な研磨加工を効率良く行うことが可能となる。
拡散ヘッドの先端部の径方向外側に拡散ヘッドの研磨端面として機能する環状のリップ部を形成した場合には、リップ部全体を被加工物に対する加工領域とすることができるため、さらに効率の良い研磨加工が可能となる。
拡散ヘッドの少なくとも研磨端面の部分を可撓性を有する弾性部材にて形成した場合には、研磨端面の部分の摩耗を軽減することができる上、仮に被加工物の加工面と研磨端面とが接触した場合であっても、非加工物の加工面に損傷を与える可能性をより軽減することができる。
拡散ヘッドをヘッドホルダに対し加工液導入通路を中心として回転自在に取り付けると共に加工液導入通路の内周面に拡散ヘッドに回転力を与えるための螺旋溝を形成した場合には、研磨加工中に拡散ヘッドを回転させることが可能となり、さらに効率の良い研磨加工が可能となる。
付勢手段がホルダブラケットに近接するようにヘッドホルダに装着される永久磁石を有する場合には、ヘッドホルダの外周端縁部をホルダブラケットの球面座に確実に当接させることができ、信頼性の高い安定した研磨加工を行うことができる。
本発明の研磨装置によると、被加工物の加工面と対向する環状の研磨端面を有し、加工面との間にこの研磨端面で囲まれた緩衝室を画成するカップ形の拡散ヘッドと、先端がこの拡散ヘッドの緩衝室に臨むように当該拡散ヘッドに形成されて緩衝室内に加工液を導くための加工液導入通路と、拡散ヘッドが取り付けられる円形のヘッドホルダと、このヘッドホルダの外周端縁部が当接する球面座を有し、この球面座を介してヘッドホルダを支持するためのホルダブラケットと、このホルダブラケットの球面座にヘッドホルダの外周端縁部を付勢する付勢手段と、ホルダブラケットを介して拡散ヘッドを被加工物の加工面に沿って移動させるヘッド送り手段と、ホルダブラケットを介して拡散ヘッドを加工面側に付勢するヘッド押圧手段と、加工液導入通路に連通するようにヘッドホルダに連結され、加工液導入通路を介して緩衝室内に加工液を供給するための加工液供給手段とを具えているので、緩衝室内に供給される加工液が拡散ヘッドの研磨端面と被加工物の加工面との間を通過する際に絞り効果によってその流速が高められ、被加工物の加工面が任意の曲面であっても高精度な研磨加工を効率良く行うことが可能となる。しかも、被加工物の加工面と拡散ヘッドの研磨端面との間に形成される隙間が力学的なバランスによって自動的に均一な間隔に保持される結果、被加工物の加工面に対して拡散ヘッドの相対位置を制御する必要がなくなり、研磨装置をより安価に製造することができる。
拡散ヘッドをヘッドホルダに対し加工液導入通路を中心として回転自在に取り付け、さらに加工液導入通路を中心として拡散ヘッドを駆動回転させるヘッド回転駆動手段を具えた場合には、拡散ヘッドを回転させながら研磨加工を行うことが可能となり、被加工物の加工面をさらに効率良く研磨することができる。
本発明の研磨方法によると、被加工物の加工面との間に緩衝室を画成するカップ形の拡散ヘッドをその先端の研磨端面が加工面と対向するように配し、緩衝室内に加工液を供給し、拡散ヘッドの研磨端面を加工面側に付勢することにより、緩衝室内に供給された加工液を拡散ヘッドの研磨端面と加工面との隙間から排出させ、これに伴って拡散ヘッドの研磨端面に近接する加工面の部分を研磨するようにしたので、砥粒懸濁液の流体圧により拡散ヘッドが浮上するので、弾性回転工具のように真球度、回転軸の同軸度、工具表面あらさを高精度に管理、製作する必要がなく流体圧を受ける領域が広いために確実に被加工面から拡散ヘッドが浮上でき拡散ヘッドの接触による表面あらさの低下の防止が可能となる。
加工液が遊離砥粒を含む懸濁液の場合、被加工物の研磨に伴って発生する熱変形を抑制してさらに高精度な研磨を効率良く行うことが可能となる。
拡散ヘッドをその軸線回りに駆動回転させた場合、被加工物の加工面と拡散ヘッドの研磨端面との間に形成される隙間がその全周に亙ってより均一化されてさらに高精度な研磨が可能となる上、被加工物の加工面をさらに効率良く研磨することができる。
拡散ヘッドを被加工物の加工面に沿って移動させた場合、被加工物が大きなものであっても、その加工面全域を効率良くかつ均一な精度で研磨することができる。
本発明による研磨装置および研磨工具の実施形態について、図1〜図5を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能であり、従って本発明の精神に帰属する他の技術にも当然応用することができる。
本実施形態による研磨装置の外観を図1に示し、その主要部を抽出拡大して図2に示す。すなわち、一対のコラム11,12が相隔てて突設されたベッド13上には、一対のコラム11,12の間に位置し、これら一対のコラム11,12の対向方向に対して直交する水平な方向(図1中、紙面に対して垂直な方向)に駆動される加工テーブル14が設けられ、この加工テーブル14上には、図示しない治具を介して被加工物であるメニスカス凸レンズ15がその凸光学面16を上に向けた状態で固定される。両端部が一対のコラム11,12に連結され、これら一対のコラム11,12に沿って昇降駆動されるクロスレール17には、このクロスレール17に沿って一対のコラム11,12の対向方向に駆動されるサドル18が取り付けられている。従って、加工テーブル14,サドル18などが本発明におけるヘッド送り手段として機能している。メニスカス凸レンズ15の凸光学面16を研磨するための拡散ヘッド19は、ボイスコイルの原理を利用した微動装置20と一般的なアクチュエータなどを用いた粗動装置21とを介してサドル18に吊り下げられた状態となっており、これら微動装置20および粗動装置21が本発明におけるヘッド押圧手段として機能している。
本実施形態における研磨工具22の部分の断面構造を図3に示す。すなわち、本実施形態における研磨工具22は、メニスカス凸レンズ15の凸光学面16と対向する環状の研磨端面23を有し、凸光学面16との間にこの研磨端面23で囲まれた緩衝室24を画成するカップ形の拡散ヘッド19と、先端がこの拡散ヘッド19の緩衝室24に臨むように拡散ヘッド19に形成されて緩衝室24内に極めて微小な遊離砥粒を分散状態で含む加工液を導くための加工液導入通路25と、拡散ヘッド19が取り付けられる円形のヘッドホルダ26と、このヘッドホルダ26の外周端縁部が当接する球面座27を有し、この球面座27を介してヘッドホルダ26を支持するためのホルダブラケット28と、ホルダブラケット28に近接するようにヘッドホルダ26に装着されてホルダブラケット28の球面座27にヘッドホルダ26の外周端縁部を付勢する本発明の付勢手段としての永久磁石29とを具えている。
拡散ヘッド19の加工液導入通路25の基端とヘッドホルダ26との間にはチャンバ30が形成されており、このチャンバ30内に図示しない加工液供給源から加工液供給管31を介して加工液が圧送されるようになっている。つまり、これらチャンバ30や加工液供給管31などが本発明における加工液供給手段として機能している。骨格部分がアルミニウムにて形成された拡散ヘッド19は、その先端部の径方向外側に環状のリップ部32を有し、このリップ部32が拡散ヘッド19の研磨端面23を形成し、この拡散ヘッド19の緩衝室24に臨む側は、可撓性を有するシリコンゴム製の弾性部材33にて形成されている。この拡散ヘッド19は、ヘッドホルダ26に対し加工液導入通路25を中心として軸受34を介し回転自在に取り付けられ、加工液が加工液導入通路25を通過する際に拡散ヘッド19に回転力を与えるための多条ねじ状をなす螺旋溝35が加工液導入通路25の内周面に形成されている。つまり、チャンバ30内に圧送された加工液が加工液導入通路25から緩衝室24へと流れ込む際に、加工液の流動方向に対して加工液導入通路25の内周面に形成された螺旋溝35の壁が傾いているため、その反力により拡散ヘッド19は螺旋溝35の螺旋の方向と逆方向にヘッドホルダ26に対して回転するようになっている。
永久磁石29と対向するホルダブラケット28の内底面36は、球面座27の曲率中心と同心の凹球面にて形成され、ホルダブラケット28に対して拡散ヘッド19が傾斜した状態になっても、永久磁石29とホルダブラケット28の内底面36との間隔が一定に保持されるようになっている。このため、球面座27に対するヘッドホルダ26の外周端縁部の吸着力を常に一定に保つことが可能であり、ホルダブラケット28に対して拡散ヘッド19を円滑に傾けることができる。
研磨状態において、拡散ヘッド19の研磨端面23を凸光学面16に対し所定の圧力で押し付けた場合、緩衝室24内には加工液が供給されるため、凸光学面16と拡散ヘッド19の研磨端面23との間には拡散ヘッド19の外側に加工液を排出するための微小な隙間(本実施形態では5μm)37が形成される。この場合、凸光学面16と拡散ヘッド19の研磨端面23との間の隙間37に介在する加工液の流速が上昇すると共にその圧力も上昇し、特に拡散ヘッド19の研磨端面23と対向状態にある凸光学面16の部分の研磨が行われる。同時に、研磨端面23の全周に亙って圧力分布が均一となるように凸光学面16と拡散ヘッド19の研磨端面23との間の隙間37の間隔が自動的に矯正され、微動装置20および粗動装置21による研磨工具22の昇降方向に対して凸光学面16が傾斜していても、ホルダブラケット28に対して拡散ヘッド19が自動的に傾斜することとなり、研磨端面23が凸光学面16に接触するような不具合は発生しない。
本実施形態では、研磨端面23の外径が30mm,内径が20mmに設定されているため、その加工領域は5mmの幅の環状をなす。また、加工液が毎秒50mの割合の流速で加工液供給管31内を流れるようにチャンバ30へと圧送し、チャンバ30内での加工液の圧力を32MPaに保持しており、拡散ヘッド19は、毎分2000回転の割合で回転するようになっている。
このようにして、加工テーブル14とサドル18とを移動させつつ微動装置20および粗動装置21を作動させることにより、メニスカス凸レンズ15の凸光学面16に倣って研磨工具22を移動させ、凸光学面16の全域を研磨する。
上述した実施例では、メニスカス凸レンズ15の凸光学面16を研磨するようにしたが、凹光学面や非球面,自由曲面などを加工面として選択することも可能である。
このような本発明による研磨装置の他の実施形態の外観を図4に示し、その研磨工具22の部分を図5に抽出拡大して示すが、先の実施例と同一機能を有する部材にはこれと同一符号を記すに止め、重複する説明は省略するものとする。すなわち、本実施形態における被加工物はメニスカス凹レンズ38であり、その凹光学面39が加工面として選択されている。この場合においても、凹光学面39と研磨工具22の拡散ヘッド19の研磨端面23との間には微小な隙間37が自動的に画成され、環状の加工領域が形成されることとなる。
本発明による研磨装置をメニスカス凸レンズの凸光学面の研磨に応用した一実施形態の外観を模式的に表す正面図である。 図1に示した研磨装置の主要部を抽出した拡大図である。 図2に示した実施形態における研磨工具の部分の抽出拡大断面図である。 被加工物がメニスカス凹レンズの場合における図1に示した研磨装置の外観を模式的に表す正面図である。 図1に示した研磨装置における研磨工具の部分の抽出拡大断面図である。 従来の研磨装置を用いた被加工物に対する研磨状態を模式的に表す概念図である。
符号の説明
11,12 コラム
13 ベッド
14 加工テーブル
15 メニスカス凸レンズ
16 凸光学面
17 クロスレール
18 サドル
19 拡散ヘッド
20 微動装置
21 粗動装置
22 研磨工具
23 研磨端面
24 緩衝室
25 加工液導入通路
26 ヘッドホルダ
27 球面座
28 ホルダブラケット
29 永久磁石
30 チャンバ
31 加工液供給管
32 リップ部
33 弾性部材
34 軸受
35 螺旋溝
36 内底面
37 隙間
38 メニスカス凹レンズ
39 凹光学面

Claims (11)

  1. 被加工物の加工面と対向する環状の研磨端面を有し、前記加工面との間にこの研磨端面で囲まれた緩衝室を画成するカップ形の拡散ヘッドと、
    先端がこの拡散ヘッドの前記緩衝室に臨むように当該拡散ヘッドに形成されて前記緩衝室内に加工液を導くための加工液導入通路と、
    前記拡散ヘッドが取り付けられる円形のヘッドホルダと、
    このヘッドホルダの外周端縁部が当接する球面座を有し、この球面座を介して前記ヘッドホルダを支持するためのホルダブラケットと、
    このホルダブラケットの前記球面座に前記ヘッドホルダの外周端縁部を付勢する付勢手段と
    を具えたことを特徴とする研磨工具。
  2. 前記拡散ヘッドは、その先端部の径方向外側に環状のリップ部を有し、このリップ部が前記拡散ヘッドの前記研磨端面を形成していることを特徴とする請求項1に記載の研磨工具。
  3. 前記拡散ヘッドの少なくとも前記研磨端面の部分が可撓性を有する弾性部材にて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研磨工具。
  4. 前記拡散ヘッドは、前記ヘッドホルダに対し前記加工液導入通路を中心として回転自在に取り付けられ、さらに加工液が前記加工液導入通路を通過する際に当該拡散ヘッドに回転力を与えるための螺旋溝を前記加工液導入通路の内周面に有することを特徴とする請求項1に記載の研磨工具。
  5. 前記付勢手段は、前記ホルダブラケットに近接するように前記ヘッドホルダに装着される永久磁石を有することを特徴とする請求項1に記載の研磨工具。
  6. 被加工物の加工面と対向する環状の研磨端面を有し、前記加工面との間にこの研磨端面で囲まれた緩衝室を画成するカップ形の拡散ヘッドと、
    先端がこの拡散ヘッドの前記緩衝室に臨むように当該拡散ヘッドに形成されて前記緩衝室内に加工液を導くための加工液導入通路と、
    前記拡散ヘッドが取り付けられる円形のヘッドホルダと、
    このヘッドホルダの外周端縁部が当接する球面座を有し、この球面座を介して前記ヘッドホルダを支持するためのホルダブラケットと、
    このホルダブラケットの前記球面座に前記ヘッドホルダの外周端縁部を付勢する付勢手段と、
    前記ホルダブラケットを介して前記拡散ヘッドを前記被加工物の加工面に沿って移動させるヘッド送り手段と、
    前記ホルダブラケットを介して前記拡散ヘッドを前記加工面側に付勢するヘッド押圧手段と、
    前記加工液導入通路に連通するように前記ヘッドホルダに連結され、前記加工液導入通路を介して前記緩衝室内に加工液を供給するための加工液供給手段と
    を具えたことを特徴とする研磨装置。
  7. 前記拡散ヘッドは、前記ヘッドホルダに対し前記加工液導入通路を中心として回転自在に取り付けられ、前記加工液導入通路を中心として前記拡散ヘッドを駆動回転させるヘッド回転駆動手段をさらに具えたことを特徴とする請求項6に記載の研磨装置。
  8. 被加工物の加工面との間に緩衝室を画成するカップ形の拡散ヘッドをその先端の研磨端面が前記加工面と対向するように配するステップと、
    前記緩衝室内に加工液を供給するステップと、
    前記拡散ヘッドの研磨端面を前記加工面側に付勢することにより、前記緩衝室内に供給された加工液を前記拡散ヘッドの研磨端面と前記加工面との隙間から排出させ、これに伴って前記拡散ヘッドの研磨端面に近接する前記加工面の部分を研磨するステップと
    を具えたことを特徴とする研磨方法。
  9. 加工液が遊離砥粒を含む懸濁液であることを特徴とする請求項8に記載の研磨方法。
  10. 前記拡散ヘッドをその軸線回りに駆動回転させるステップをさらに具えたことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の研磨方法。
  11. 前記拡散ヘッドを前記加工面に沿って移動させるステップをさらに具えたことを特徴とする請求項8から請求項10の何れかに記載の研磨方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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