JP2005177944A - 研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 前記従来技術の有する被加工物表面近傍での流速の低減に伴う砥粒の搬送速度の低減という問題点を解消し、被加工物表面を高精度にかつ高能率に仕上げ加工することが可能な研磨方法を提供することにある。
【解決手段】 砥粒より粒径の大きな母粒子を研磨液中に混在させ、研磨工具近傍の大きな流速で搬送される母粒子が被加工物表面近傍の小さな流速で搬送されている砥粒を押すことにより、EEM加工に必要な砥粒の搬送速度を得る。
【選択図】 図5
【解決手段】 砥粒より粒径の大きな母粒子を研磨液中に混在させ、研磨工具近傍の大きな流速で搬送される母粒子が被加工物表面近傍の小さな流速で搬送されている砥粒を押すことにより、EEM加工に必要な砥粒の搬送速度を得る。
【選択図】 図5
Description
本発明は、半導体、ガラス、セラミックス、金属単体または金属酸化物の単結晶等の硬脆材料の表面を研磨加工する研磨方法に関するものである。特に、研磨工具を被加工物に対し非接触で、研磨砥粒を被加工物に衝突させることで、被加工物の微少な領域にエネルギーを与え、原子単位の除去を行い加工を進行させる方法であるところのいわゆるEEM(Elastic Emission Machining)に基づく研磨方法に関するものである。
従来、自由曲面を有する光学素子の仕上げ加工に用いられる研磨方法としては、EEM(Elastic Emission Machining)が高品位な表面粗さを得る手段として知られている。
EEMは、球型の弾性工具やノズル型の工具を用いて砥粒を被研磨対象物表面に搬送し、砥粒と被工物表面物質との物理・化学作用により被加工物表面の分子を原子レベルで除去する加工法であり、加工変質層のほとんどない加工法として注目される技術である。
EEM加工は、例えば特許文献1に開示されている。
特公平2−25745号公報
弾性球工具(以下、研磨工具とする。)の連れ回り効果により砥粒を被加工物表面に搬送して除去加工をおこなうEEM加工方式の除去能率は、砥粒の搬送速度に依存する。研磨工具と被加工物表面間の任意の隙間(流体潤滑膜)中を流れる加工液は、任意の速度勾配をもっているため、砥粒の搬送速度は速度勾配と砥粒径により決定される。図6は、研磨液14中における砥粒141の搬送速度を速度ベクトルで表したものである。56は研磨工具と被加工物表面との隙間(流体潤滑膜)、57は研磨液の速度勾配ベクトル、58、69は速度ベクトルである。研磨液14中において、被加工物1表面から任意の隙間56を維持しつつ、研磨工具2を高速に回転させた場合、研磨工具2による研磨液14の連れ回り効果により研磨液14の流れが生じる。研磨工具2の表面近傍における研磨液14の流速は、研磨工具2の周速度とほぼ同等である一方、被加工物1表面近傍での研磨液14の流速はほぼゼロである。境界条件より、研磨工具2と被加工物1表面との隙間56を流れる研磨液14は、任意の速度勾配57を有する。EEM加工に作用する被加工物1表面近傍に存在する砥粒141は、速度勾配57の速度ベクトルが小さい領域での流速により搬送されるため、砥粒141自体の速度ベクトル69は研磨工具2の速度ベクトル58に対して非常に小さい。従って、EEM加工における除去能率も小さくなってしまう。
このように、球型の研磨工具による研磨液の連れ回り効果により生じる流速は研磨工具表面から離れるに従って減少し、被加工物表面近傍での流速はほぼゼロである。従って、球型の研磨工具と被加工物表面間を流れる流速は任意の速度勾配をもち、EEM加工反応に用いられる被加工物表面近傍の砥粒は、流体潤滑膜厚に対して粒径が十分に小さいため、加工液の速度勾配ベクトルにおいて被加工物表面近傍の非常に小さい流速でのみ搬送される。従って、EEM加工反応を生じるのに十分な砥粒の搬送速度を得るのが困難であり、加工速度が非常に遅く、被加工物によっては数日を要するという事例も知られている。また、被加工物近傍での流速を補うために研磨工具をより高速に回転させる方法も考えられるが、加工液の飛散の問題やエネルギー効率の悪さが挙げられる。
一方、加工能率を向上させる別の方法としては、粒径の大きな砥粒を用いる方法が考えられる。しかし、粒径の大きな砥粒や凝集した微細砥粒は、被加工物表面に傷を発生させる原因であり、表面粗さ精度を劣化させる可能性が高い。
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する被加工物表面近傍での流速の低減に伴う砥粒の搬送速度の低減という問題点を解消し、被加工物表面を高精度にかつ高能率に仕上げ加工することが可能な研磨方法を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明の研磨方法において、砥粒と母粒子とからなる研磨液に被加工物を浸し、研磨工具を前記被加工物表面に対して任意の隙間をもって非接触な状態を維持しながら高速回転し、それに誘発される前記研磨液の流れにより前記研磨液中の母粒子に流速を与え、該母粒子を前記研磨液中の砥粒に作用させて該砥粒を前記被加工物に衝突させ、被加工物の表面を研磨することを特徴とする。
本発明では、微細砥粒より粒径の大きな母粒子を研磨液中に混在させ、研磨工具近傍の大きな流速で搬送される母粒子が被加工物表面近傍の小さな流速で搬送されている微細砥粒を押すことにより、被加工物表面近傍での微細砥粒の搬送速度の低下を抑制し、研磨工具の周速度を極端に上昇させることなく、EEM加工に必要な砥粒の搬送速度を得ることができる。従って、EEM加工において、研磨工具の周速度を上昇させることなく、除去能率を向上させることが可能である。
以下、本発明の実施の形態について、図1から図5を参照して説明する。
まず本発明の研磨方法について説明する。図1は、本発明の研磨方法を実施するための研磨装置の一例を示したものであり、図1に示すように、定盤5の上面には、被加工物1を走査するための公知のXYテーブル6が備えられ、定盤5にY方向に往復移動自在に設けられたYテーブルと7と該Yテーブルに設けられたボールナット(不図示)に螺合されたボールねじ軸(不図示)と、第1ブラケット18を介して定盤5に固定された、その出力軸が前記ボールねじ軸(不図示)に一体的に連結されたY軸モータ8と、前記Yテーブル7に矢印X方向(Y方向に対して垂直方向)に往復移動自在に設けられたXテーブル9と、該Xテーブル9に設けられたボールナット(不図示)に螺合されたボールねじ軸19bと、第2ブラケット20を介してYテーブル7に固定された、その出力軸10aがカップリング21を介して前記ボールねじ軸19bに一体的に連結されたX軸モータ10等で構成されている。
この構成を有するXYテーブル6は、Y軸モータ8の起動に伴ない、前記ボールねじが正転、逆転することにより、Yテーブル7は定盤5に対してY方向に往復移動し、また、X軸モータ10の起動に伴ない、ボールねじ軸19bが正転、逆転することにより、Xテーブル9はYテーブルに対して矢印X方向に往復移動し、被加工物1を所定位置に位置決めできるものである。この際、Xテーブル9およびYテーブル7の各移動位置は、それぞれYテーブル7および定盤5に取付けられたX軸位置検出器42aおよびY軸位置検出器42bでそれぞれ検出され、各移動位置の検出値は制御装置(不図示)にそれぞれ入力される。
前記Xテーブル9の上面にはθテーブル(加工台)12が不図示の回転駆動手段を介して装着されており、該回転駆動手段によりθ方向に正転、逆転される構成となっている。また、θテーブル(加工台)12は、その上面に被加工物1が取付けられる構成となっているとともに、桶体15を有している。この桶体15は被加工物1を囲み、内部に研磨液14を受容できるように構成されている。
前記定盤5には、公知の工具姿勢制御機構(不図示)が支持されており、この工具姿勢制御機構に研磨ヘッド17の円柱部材29が嵌挿固定され、該研磨ヘッド17は、前記XYテーブル6の上方に位置している。空気圧シリンダ26内にはピストン28が摺動自在に嵌め込まれ、空気圧シリンダ26内のピストン28により区画された上方室および下方室は、それぞれ第1および第2電磁圧力制御弁30の開度ひいては前記上方室内の空気圧力は制御装置(不図示)によって制御され、第2電磁圧力制御弁31の開度は前記制御装置によって一定に保持されている。
前記ピストン28には、ピストンロッド27を介してくの字形状のモータ取付部材25が一体的に取付けられており、該モータ取付部材25の自由端部には工具回転用の駆動モータ32が固着されている。本実施例の球状体の研磨工具2は、接着剤等によって工具回転軸24の一端に固着されており、この工具回転軸24の他端は前記駆動モータ23の出力軸(不図示)の軸端に一体的に連結されている。前記研磨工具2はポリウレタン樹脂で形成され、研磨工具2の中心は前記空気圧シリンダ26の軸線上に位置している。上述した空気圧シリンダ26、ピストン28および研磨工具2等により研磨ヘッド17が構成されている。
次に、以上のように構成された研磨装置を用いた本発明の研磨方法について述べる。
予め図2中の矢印で示すように、被加工物1の加工面1aに対する研磨工具2の走査パターンを決め、該走査パターン上に多数の加工点1nを定めておく。そして、加工面1aの形状を正確に計測し、加工面1aの各加工点1nの曲率半径rをそれぞれ求め、走査パターンや走査速度等の走査用プログラムと、前記計測結果に基づく工具姿勢用プログラムとをそれぞれ制御装置に入力する。
まず被加工物1を加工台12の上面所定部位に位置決めし固定して、研磨工具2を被加工物1の初めに研磨すべき加工点1bの真上に位置決めする。
前記制御装置は、前記走査プログラムに従って、X軸モータ10およびY軸モータ8に所定の電気量を出力指示し、研磨工具が順次加工点の真上に位置するようにXYテーブルを駆動する。また前記工具姿勢制御機構によって研磨工具2の各加工点への押圧方向は各加工点の法線方向とそれぞれ一致するように制御される。走査開始と同時に研磨工具2を回転させ、さらに所定の研磨荷重に対応する電気量を第1電磁圧力制御弁30のソレノイドに出力することにより、空気圧シリンダ26の上方室内の空気圧力によって研磨工具2は下降し、加工点の所定上方位置まで近接し、この状態で強制回転する研磨工具2は前記空気圧力による前記研磨荷重で加工点に向けて押圧される。
その結果、研磨工具2と加工点との間を研磨液14が流動して動圧が発生することで、研磨工具2と加工点との間の微少な隙間を研磨液14が流体軸受的に流れ、この研磨液14中の微細粉末砥粒が加工点に衝突することで被加工物は研磨される。本発明の研磨方法に用いる研磨液については後に詳述するが、本発明の研磨方法に用いる研磨液においては、研磨液中に砥粒および砥粒よりも粒径の大きな母粒子が混在しており、比重の小さい母粒子は研磨工具近傍で研磨工具の周速度に近い流速により搬送される。微細砥粒は前記母粒子に押されることにより母粒子と同等の速度で移動することが可能となるため、研磨工具の周速度を極端に上昇させることなく、加工に必要な砥粒の搬送速度を得ることができ除去能率を向上させることが可能である。
研磨工具2の被加工物1に対する走査が進行して、走査パターンに沿って加工面1aの研磨が行われ、研磨工具2が最後の加工点1dに達して研磨が終了すると、加工台12の移動動作や研磨工具2の回転が停止する。最後に被加工物1を加工台12より取外す。
図3は、本発明による研磨方法に用いる研磨液の基本的な態様を示したものである。図3において、1は被加工物、2は球型の研磨工具、14は研磨液、141は砥粒、142は母粒子である。また図4に基本的な機構を示し、さらに図5は図4の研磨工具2と被加工物1表面とに介在する研磨液14の状態を拡大したものであり、研磨液14は、液中に砥粒141と母粒子142を分散させたものである。研磨液14中で研磨工具2を高速回転させ、研磨工具2での研磨液14の連れ回り効果により砥粒141及び母粒子142を被加工物2の表面に搬送する。
研磨液14は、被加工物1の材料物質と化学的に反応し、原子単位で除去加工を行える反応性の微粒子(ここでは砥粒141とする。)と母粒子142を精製水又は純水中に分散させたものである。砥粒141には、一般的には金属酸化物の微粒子が用いられ、例えば、酸化セリウム微粒子を精製液中に分散させたものであり、その粒径は、0.01μm〜2μm程度である。
また、母粒子142は、砥粒141の2倍〜200倍程度の大きさであり、比重は水よりも小さく、研磨液14中では研磨工具2の近傍に存在して被加工物1の表面には接触しない。母粒子142の形状は、仮に被加工物1の表面に接触しても、被加工物1の表面に傷といった塑性破壊、脆性破壊を生じない球型の形状をしていることが望ましい。同様に被加工物1の表面に傷を付けないという理由から、母粒子142の材質は、高分子のゲルのように非常に柔らかい材質や、被加工物1の物質に対して化学的に反応しないスチレンのような材質が挙げられる。
さらに、研磨工具2と被加工物1の表面との隙間56を位置制御により10μm程度に設定した場合、砥粒141の大きさは隙間56に対して10分の1以下が理想であり、0.01μm〜1μm程度の砥粒141を使用する。また、母粒子142は隙間56より僅かに小さい粒子径が理想であるため、スチレンボールの場合は5〜8μm程度のものを使用する。但し、ゲルボールを母粒子142として使用する場合は、母粒子142の接触による被加工物表面への傷の発生を考慮する必要がないため、10μm程度の隙間56と同等の大きさの粒子径でも問題ない。
図5は、母粒子142を研磨液14中に混在させた場合の、研磨液14中における砥粒141の搬送速度を速度ベクトルで表したものである。母粒子142は、研磨液14の速度勾配57において、研磨工具2近傍の比較的速度ベクトルの大きい領域の流速により搬送されるため、比較的大きな速度ベクトル60を有する。速度ベクトル60で移動する母粒子142は、被加工物1表面近傍に存在する砥粒141に接触し、砥粒141を押すことにより砥粒141の搬送を補助する。その結果、砥粒141は母粒子142の搬送速度、速度ベクトル60とほぼ同等の速度ベクトル61で被加工物1の表面近傍を移動しながらEEM加工をおこなう。
以上説明したように、本発明の研磨方法に用いる研磨液においては、研磨液中に砥粒および砥粒よりも粒径の大きな母粒子が混在しており、比重の小さい母粒子は研磨工具近傍で研磨工具の周速度に近い流速により搬送される。微細砥粒は前記母粒子に押されることにより母粒子と同等の速度で移動することが可能となるため、研磨工具の周速度を極端に上昇させることなく、加工に必要な砥粒の搬送速度を得ることができ除去能率を向上させることが可能である。
1 被加工物
2 研磨工具
14 研磨液
141 砥粒
142 母粒子
2 研磨工具
14 研磨液
141 砥粒
142 母粒子
Claims (7)
- 砥粒と母粒子とからなる研磨液に被加工物を浸し、研磨工具を前記被加工物表面に対して任意の隙間をもって非接触な状態を維持しながら高速回転し、それに誘発される前記研磨液の流れにより前記研磨液中の母粒子に流速を与え、該母粒子を前記研磨液中の砥粒に作用させて該砥粒を前記被加工物に衝突させ、被加工物の表面を研磨することを特徴とする研磨方法。
- 前記砥粒は、前記隙間に対して十分に小さな粒子径であることを特徴とする請求項1記載の研磨方法。
- 前記母粒子の比重は水よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の研磨方法。
- 前記母粒子は、前記被加工物表面の物質とは化学的な反応を生じないことを特徴とする請求項1記載の研磨方法。
- 前記母粒子は、ゲルであることを特徴とする請求項4記載の研磨方法。
- 前記母粒子は、スチレンであることを特徴とする請求項4記載の研磨方法。
- 前記母粒子は、前記砥粒に対して十分大きいことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の研磨方法。
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---|---|---|---|
JP2003424741A JP2005177944A (ja) | 2003-12-22 | 2003-12-22 | 研磨方法 |
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-
2003
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