JP2005110607A - 高血圧性心肥大素因の検査方法 - Google Patents

高血圧性心肥大素因の検査方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高血圧性心肥大素因を遺伝子多型に基づき検査する方法や予防方法を提供する。
【解決手段】被検者のゲノムDNAにおける、IGF-IR遺伝子における高血圧性心肥大素因と関連する多型のジェノタイプに基づいて、心肥大素因の有無が判定される。たとえば次の多型が心肥大素因のマーカーとして有用であることが示された。IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位のSNPs、IGF-IR遺伝子の275124位のSNPsこのようにIGF-1受容体遺伝子の多型に基づく検査によって、高血圧症の患者における心肥大素因の有無を判定し、心肥大のリスクを予測することができる。ハイリスク群を特定し、生活習慣の指導や投薬によって、心肥大を効果的に予防することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は高血圧性心肥大素因の検査方法に関する。
高血圧による臓器障害のひとつである心肥大は、その進行とともに拡張障害や不整脈の増加などを来たし、高血圧患者における独立した予後規定因子ともなっている。しかしながら、高血圧の程度および罹病期間と心肥大の程度が一致しないことも日常臨床上しばしばみられ、血行力学的負荷のみならず、神経体液性因子や遺伝的素因の関与が推測される。すなわち、心肥大の形成には多くの神経体液性因子が関与すると考えられ、これら因子の遺伝子多型、あるいはその受容体遺伝子多型が心肥大の程度を一部規定している可能性がある。
心肥大と関連性を有する神経体液性因子としては、レニンーアンジオテンシン系因子、アルドステロン、成長ホルモン、インスリン、インスリン様成長因子1(IGF−1)などが挙げられる。実際に、これら体液性因子のうちの一つ、アンジオテンシン変換酵素のI/D多型と心肥大との関係についての報告(非特許文献1、2)がこれまでみられている。しかし、その他の因子の遺伝子多型と心肥大との関連についてはまだ明確なものはない。高血圧性心肥大に関係する新規遺伝子多型の発見は、高血圧性臓器障害を予知、予見する新しい遺伝子診断につながると考えられる。
Schunkert H et al. Association between a deletion polymorphism of the angiotensin-converting enzyme gene and left ventricular hypertrophy. N Engl J Med 1994; 330: 1634-1638 Iwai N et al. DD genotype of the angiotensin-converting enzyme gene is a risk factor for left ventricular hypertrophy. Circulation 1994; 90: 2622-2628
そこで、本願発明者らは、強い心筋肥大作用を有し、心肥大の発症、進展に深く関わると考えられるインスリン様増殖因子(IGF)-1に着目し、本態性高血圧患者を対象にIGF-1、その受容体(IGF-1受容体)遺伝子の多型と心肥大、心形態変化との関連の有無を解析することを第一の課題とする。そして、この解析結果より心肥大や心形態変化と関連性を有する新規な多型を同定し、これに基づいて高血圧性心肥大素因の検査方法を提供することを第二の課題とする。
本願発明者らは上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、心肥大と関連性を有する多型をIGF-1受容体遺伝子のゲノム配列上に発見し、これに基づいて高血圧性心肥大素因の検査方法を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示す高血圧性心肥大素因の検査方法を提供する。
〔1〕次の工程を含む、高血圧性心肥大素因の検査方法。
(a)被検者が有する、IGF-IR遺伝子における高血圧性心肥大素因と関連する多型のジェノタイプを決定する工程、および
(b)(a)で決定されたジェノタイプに基づいて、被検者の高血圧性心肥大素因を予測する工程
〔2〕多型が1塩基多型である、請求項1に記載の検査方法。
〔3〕IGF-IR遺伝子の多型が、IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基および/またはIGF-IR遺伝子の275124位の塩基の多型である、請求項2に記載の検査方法。
〔4〕IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基の多型が、CとTであり、そのジェノタイプがCCの場合に心肥大素因を有すると予測される請求項3に記載の検査方法。
〔5〕IGF-IR遺伝子の275124位の塩基の多型が、AとCであり、そのジェノタイプがAAの場合に求心性心変化素因を有すると予測される請求項3に記載の検査方法。
〔6〕以下の(a)〜(c)の工程を含む、請求項1に記載の検査方法。
(a)被検者の生体試料からゲノムDNAを採取する工程
(b)IGF-IR遺伝子における塩基部位であって、IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基および/またはIGF-IR遺伝子の275124位の塩基のジェノタイプを決定する工程
(c)IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基の多型が、CとTであり、そのジェノタイプがCCの場合に心肥大素因を有すると、またIGF-IR遺伝子の275124位の塩基の多型が、AとCであり、そのジェノタイプがAAの場合に求心性心変化素因を有すると予測する工程
〔7〕IGF-IR遺伝子における高血圧性心肥大素因と関連する多型部位を含む領域を合成するためのプライマーを含む、高血圧性心肥大素因検査用のプライマー。
〔8〕多型部位が、IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基および/またはIGF-IR遺伝子の275124位の塩基の多型である請求項7に記載のプライマー。
〔9〕IGF-IR遺伝子における高血圧性心肥大素因と関連する多型部位を含む領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む、高血圧性心肥大素因検査用のプローブ。
〔10〕多型部位が、IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基および/またはIGF-IR遺伝子の275124位の塩基である請求項9に記載のプローブ。
本願発明者らは、高血圧患者において、神経体液性因子であるIGF-1受容体遺伝子上に心肥大と関連性がある多型が存在することを明らかにした。特に、本願発明者らは、肥大心が形成される過程の求心性心変化の素因に関連する多型を上記IGF-1の受容体遺伝子上に見出している。そのため、そして、これらIGF-1受容体遺伝子上の多型に基づけば、高血圧患者が心肥大素因、求心性心変化の素因を有するかを判定することが可能となる。
従来、心肥大の予測因子としては、肥満(BMI値)、高血圧などが用いられているが、上記IGF-1受容体遺伝子の多型をこれらと組み合わせて、あるいは、単独で用いることにより、心肥大素因を早期に判定することが可能となる。特に、高血圧患者においては、心肥大の予測因子の一つ「高血圧」という因子を有しているため、このような高血圧患者において、新たな心肥大予測因子として、IGF-1受容体遺伝子の多型の有無を組み合わせることにより心肥大素因の判定精度を高めることができる。心肥大素因を早期に判定することを可能にすることにより、高血圧患者において、心肥大への進行を防止し、低減することが可能となる。
本発明は、高血圧性心肥大素因の検査方法を提供する。本発明の検査方法には、少なくとも、次の(a)、(b)工程が含まれる。(a)被検者が有する、IGF-IR遺伝子における高血圧性心肥大素因と関連する多型のジェノタイプを決定する工程、(b)(a)で決定されたジェノタイプに基づいて、被検者の高血圧性心肥大素因を予測する工程である。
ここで「高血圧性心肥大素因」とは、高血圧に伴って心肥大に進展する可能性のある素因を意味する。また心肥大に進展する過程において、左室重量の増加を必ずしも伴わない心室壁の肥厚(求心性心変化)、さらに重症化すると左室重量の増加を伴う求心性および遠心性心肥大へと移行することが知られているが、本願発明における「高血圧性心肥大素因」とは心肥大素因の他、心肥大に至らない求心性心変化素因も含まれる。なお、前者の「心肥大」には左室重量の増加を伴う求心性心肥大、遠心性心肥大の双方が含まれる
また、ここで「高血圧性」としているのは、本発明の検査方法は高血圧に伴う心肥大を予測することを目的とするためである。また、「高血圧性」とは、被検者が現実に高血圧症を発症している場合のみならず、他の検査(たとえば、遺伝子多型に基づく検査)などにより、高血圧素因を有する場合も含めることができる。但し、後者の高血圧素因については、被検者が本発明の検査が実施される時点でその素因を有することが判明していなくてもよく、本発明の検査により高血圧性心肥大素因を有すると判定された後に、高血圧素因を有すると判定される場合も含めることができる。
「IGF-IR遺伝子」はインスリン様成長因子−1の受容体遺伝子であり、本願発明者らによって本遺伝子上に心肥大と関連性がある多型が見出された。本発明において、「遺伝子」とはアミノ酸配列をコードする構造遺伝子に加え、構造遺伝子の転写に必要な発現制御領域を含む。すなわち、「遺伝子」は、構造遺伝子に限定されずプロモータやオペレータなどの制御機能をもつ領域を含む。更に構造遺伝子は、エキソンとイントロンによって構成される。したがって、「IGF-IR遺伝子」とは、IGF-IR構造遺伝子のみならず、IGF-IR構造遺伝子の発現に必要な制御領域をも含む。実際に、本願発明者らは、IGF-IR遺伝子のプロモータ領域、イントロン内と本遺伝子座の広範な範囲で高血圧性心肥大素因と関連性を有する多型を見出している。
多型とは、遺伝学的には、人口中1%以上の頻度で存在している1遺伝子におけるある塩基の変化と一般的に定義される。しかしながら、本発明の「多型」はこの定義に制限されず、1%未満の塩基の変化であっても本発明の「多型」に含まれる。本発明における多型の種類としては、例えば、一塩基多型(SNPs)から数十塩基が欠失、置換あるいは挿入されている多型等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
上述の通り、本願発明者らにより、IGF-IR遺伝子上に高血圧性心肥大素因と関連性を有する多型の存在が見出されている。当業者は、本願発明の知見に基づいて、IGF-IR遺伝子上の高血圧性心肥大素因と関連する多型を明らかにすることができる。たとえば、高血圧患者において、心肥大に進行している患者における多型の頻度を解析し、有意性を有する多型を、心肥大素因の指標として選択することができる。
本発明において心肥大と関連するIGF-IR遺伝子上の多型は望ましくは1塩基多型(SNPs)である。SNPsは、ヒトゲノム上に、1000塩基に1つの割合で存在すると考えられている。したがって、およそ313kbからなるIGF-IR遺伝子座には、理論的には300以上のSNPsが存在していると考えられる。これらのSNPsから、連鎖解析によって心肥大との関連性を有するSNPsを見出すことができる。
本発明における好ましい多型として、IGF-IR遺伝子のプロモータ領域内-328番目の塩基、該遺伝子座の275124位における多型を示すことができる。IGF-IR遺伝子には、プロモータ領域内-328番目に多型(C/T)を有しており、ジェノタイプがCCである場合に心肥大素因を有することを明らかにした。
また、IGF−IR遺伝子座の275124位にも多型(A/C)を有しており、そのジェノタイプがAAの場合に求心性心変化素因を有することを明らかにした。これら塩基の部位を示す数字は、ゲノムにおける転写開始点を1とした場合の数字である。なお、IGF-IR遺伝子のゲノム全長配列は配列番号:1に示すが、この配列はすでにデータバンクに登録され(GeneBank accession# NT_035325)、このNT_035325の塩基配列上の塩基番号631008から944008に位置している。配列番号:1において翻訳開始点は3541に相当する。したがって、多型部位として示した−328と275124は、配列番号:1の塩基配列においてはそれぞれ3213および278664に位置する。
被検者が有する「ジェノタイプの決定」は、まず一例を挙げれば、被検者のIGF-IR遺伝子座の塩基配列を明らかにすることにより実施することができる。ジェノタイピングを行うためには、被検者からDNA試料を調製する。DNA試料は、例えば被検者の生体試料から抽出した染色体DNAを基に調製することができる。生体試料としては、末梢血白血球、皮膚、口腔粘膜等の組織または細胞、涙、唾液、尿、糞便、および毛髪等を利用することができる。ここで調製されたDNA試料を用いてIGF-IR遺伝子における心肥大と関連する多型を有する部位の塩基配列を決定する。より具体的には、本発明者らが見出した心肥大と関連する多型C−328T、A275124Cのジェノタイピングは、当該領域の塩基配列を決定し、いずれの塩基であるかを確認する。ゲノムは1対の染色体によって構成されているので、多型部位のそれぞれについて、ホモかヘテロであるかを決定する。本発明においては、−328がCであるアレルをホモで有するとき、被検者は心肥大素因を有すると判定され、A275124CがAであるアレルをホモで有するとき、求心性心変化素因を有すると判定される。
更に、ハプロタイプブロックのようにこれら多型と連鎖不平衡の関係を有するタグとなる多型に基づいて、間接的にこれらジェノタイプを決定することができる。ハプロタイプブロックは、連鎖不平衡の関係にある一群の多型を示す用語である。ハプロタイプを構成する多型は、高い確率で連鎖して遺伝する。したがって、本発明者らが見出した心肥大と関連する多型C−328T、あるいはA275124Cとともにハプロタイプブロックを構成する他の多型を指標として、C−328T、あるいはA275124Cのジェノタイプを決定することもできる。ゲノム解析の結果に基づいて、ハプロタイプ地図の整備が進んでいる。この解析の成果に基づいて、C−328T、あるいはA275124Cを含むハプロタイプブロックを同定し、当該ブロック内の他の多型に基づいて、本発明におけるジェノタイピングを実施することもできる。
このようにIGF-IR遺伝子における心肥大素因と関連する多型のジェノタイプが決定されると、次に、心肥大素因に関連する多型として同定されたジェノタイプと比較され、高血圧性心肥大素因を有するか否かが予測される。ここで、高血圧性心肥大素因を有すると予測された被検者は、心肥大へ進行するハイリスク群として、投薬、生活習慣の改善などの予防手段により心肥大への進行を防止または遅延させることが可能となる。
上記ジェノタイプを決定する手法として、直接、高血圧性心肥大素因に関連する多型部位の塩基配列を決定する方法を例示したが、直接塩基配列を決定する方法以外の代替方法が公知である。PCR法を応用した解析方法としては、TaqMan PCR法、AcycroPrimer法、蛍光磁気ビーズ法、1分子蛍光分析システムの利用、およびMALDI-TOF/MS法等を利用することができる。またPCRに依存しないジェノタイピングのための方法としては、Invader法やRCA法が知られている。更にDNAアレイを使ってジェノタイプを決定することもできる。以下にこれらの方法について簡単に述べる。ここに述べた方法は、いずれも本発明におけるジェノタイピングに応用できる。
[TaqMan PCR法]
TaqMan PCR法の原理は次のとおりである。TaqMan PCR法は、アレルを含む領域を増幅することができるプライマーセットと、TaqManプローブを利用した解析方法である。TaqManプローブは、このプライマーセットによって増幅されるアレルを含む領域にハイブリダイズするように設計されている。
TaqManプローブのTmに近い条件で標的塩基配列にハイブリダイズさせれば、1塩基の相違によってTaqManプローブのハイブリダイズ効率は著しく低下する。TaqManプローブの存在下でPCR法を行うと、プライマーからの伸長反応は、いずれハイブリダイズしたTaqManプローブに到達する。このときDNAポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性によって、TaqManプローブはその5'末端から分解される。TaqManプローブをレポーター色素とクエンチャーで標識しておけば、TaqManプローブの分解を、蛍光シグナルの変化として追跡することができる。つまり、TaqManプローブの分解が起きれば、レポーター色素が遊離してクエンチャーとの距離が離れることによって蛍光シグナルが生成する。1塩基の相違のためにTaqManプローブのハイブリダイズが低下すればTaqManプローブの分解が進まず蛍光シグナルは生成されない。
多型に対応するTaqManプローブをデザインし、更に各プローブの分解によって異なるシグナルが生成されるようにすれば、同時にジェノタイプを判定することもできる。たとえば、レポーター色素として、あるアレルのアレルAのTaqManプローブに6-carboxy-fluorescein(FAM)を、アレルBのプローブにVICを用いる。プローブが分解されない状態では、クエンチャーによってレポーター色素の蛍光シグナル生成は抑制されている。各プローブが対応するアレルにハイブリダイズすれば、ハイブリダイズに応じた蛍光シグナルが観察される。すなわち、FAMまたはVICのいずれかのシグナルが他方よりも強い場合には、アレルAまたはアレルBのホモであることが明らかになる。他方、アレルをヘテロで有する場合には、両者のシグナルがほぼ同じレベルで検出されることになる。TaqMan PCR法の利用によって、ゲル上での分離のような時間のかかる工程無しで、ゲノムを解析対象としてPCRとジェノタイピングを同時に行うことができる。そのため、TaqMan PCR法は、大量の被検者のジェノタイピング方法として有用である。
[Acyclo Prime法]
PCR法を利用したジェノタイピング方法として、Acyclo Prime法も実用化されている。Acyclo Prime法では、ゲノム増幅用のプライマー1組と、SNPs検出用の1つのプライマーを用いる。まず、ゲノムのSNPsを含む領域をPCRで増幅する。この工程は、通常のゲノムPCRと同じである。次に、得られたPCR産物に対して、SNPs検出用のプライマーをアニールさせ、伸長反応を行う。SNPs検出用のプライマーは、検出対象となっているSNPsに隣接する領域にアニールするようにデザインされている。
このとき、伸長反応のためのヌクレオチド基質として、蛍光偏光色素でラベルし、かつ3'-OHをブロックしたヌクレオチド誘導体(ターミネータ)を用いる。その結果、SNPsに相当する位置の塩基に相補的な塩基が1塩基だけ取りこまれて伸長反応が停止する。ヌクレオチド誘導体のプライマーへの取りこみは、分子量の増大による蛍光偏光(Fluorescence polarization;FP)の増加によって検出することができる。蛍光偏光色素に波長の異なる2種類のラベルを用いれば、特定のSNPsが2種類の塩基のうちのいずれであるのかを特定することができる。蛍光偏光のレベルは定量することができるので、1度の解析でアレルがホモかヘテロかを判定することもできる。
[MALDI-TOF/MS法]
PCR産物をMALDI-TOF/MSで解析することによってジェノタイプを解析することもできる。MALDI-TOF/MSは、分子量をきわめて正確に知ることができるため、蛋白質のアミノ酸配列や、DNAの塩基配列のわずかな相違を明瞭に識別することができる解析手法として様々な分野で利用されている。MALDI-TOF/MSによるジェノタイピングのためには、まず解析対象であるアレルを含む領域をPCRで増幅する。次いで増幅産物を単離してMALDI-TOF/MSによってその分子量を測定する。アレルの塩基配列は予めわかっているので、分子量に基づいて増幅産物の塩基配列は一義的に決定される。
MALDI-TOF/MSを利用したジェノタイピングには、PCR産物の分離工程などが必要となる。しかし標識プライマーや標識プローブを使わないで、正確なジェノタイピングが期待できる。また複数の場所の多型の同時検出にも応用することができる。
[IIs型制限酵素を利用したSNPs特異的な標識方法]
PCR法を利用した更に高速でジェノタイピングが可能な方法も報告されている。たとえば、IIs型制限酵素を利用してSNPsのジェノタイピングが行われている。この方法においては、PCRにあたり、IIs型制限酵素の認識配列を有するプライマーが用いられる。遺伝子組み換えに利用される一般的な制限酵素(II型)は、特定の塩基配列を認識して、その塩基配列中の特定部位を切断する。これに対してIIs型の制限酵素は、特定の塩基配列を認識して、認識塩基配列から離れた部位を切断する。酵素によって、認識配列と切断個所の間の塩基数は決まっている。したがって、この塩基数の分だけ離れた位置にIIs型制限酵素の認識配列を含むプライマーがアニールするようにすれば、IIs型制限酵素によってちょうどSNPsの部位で増幅産物を切断することができる。
IIs型制限酵素で切断された増幅産物の末端には、SNPsの塩基を含む付着末端(conhesive end)が形成される。ここで、増幅産物の付着末端に対応する塩基配列からなるアダプターをライゲーションする。アダプターは、SNPsに対応する塩基を含む異なる塩基配列からなり、それぞれ異なる蛍光色素で標識しておくことができる。最終的に、増幅産物はSNPs部位の塩基に対応する蛍光色素で標識される。
前記IIs型制限酵素認識配列を含むプライマーに、捕捉プライマー(capture primer)を組み合せてPCR法を行えば、増幅産物は蛍光標識されるとともに、捕捉プライマーを利用して固相化することができる。たとえばビオチン標識プライマーを捕捉プライマーとして用いれば、増幅産物はアビジン結合ビーズに捕捉することができる。こうして捕捉された増幅産物の蛍光色素を追跡することにより、ジェノタイプを決定することができる。
[磁気蛍光ビーズを使った多重化SNPsタイピング]
複数のアレルを単一の反応系で並行して解析することができる技術も公知である。複数のアレルを並行して解析することは、多重化と呼ばれている。一般に蛍光シグナルを利用したタイピング方法では、多重化のために異なる蛍光波長を有する蛍光成分が必要である。しかし実際の解析に利用することができる蛍光成分は、それほど多くない。これに対して、樹脂等に複数種の蛍光成分を混合した場合には、限られた種類の蛍光成分であっても、相互に識別可能な多様な蛍光シグナルを得ることができる。更に、樹脂中に磁気で吸着される成分を加えれば蛍光を発するとともに、磁気によって分離可能なビーズとすることができる。このような磁気蛍光ビーズを利用した、多重化SNPsタイピングが考え出された(バイオサイエンスとバイオインダストリー, Vol.60 No.12, 821-824)。
磁気蛍光ビーズを利用した多重化SNPsタイピングにおいては、各アレルの多型部位に相補的な塩基を末端に有するプローブが磁気蛍光ビーズに固定化される。各アレルにそれぞれ固有の蛍光シグナルを有する磁気蛍光ビーズが対応するように、両者は組み合せられる。一方、磁気蛍光ビーズに固定されたプローブが相補配列にハイブリダイズしたときに、当該アレル上で隣接する領域に相補的な塩基配列を有する蛍光標識オリゴDNAを調製する。
アレルを含む領域を非対称PCRによって増幅し、上記の磁気蛍光ビーズ固定化プローブと蛍光標識オリゴDNAをハイブリダイズさせ、更に両者をライゲーションする。磁気蛍光ビーズ固定化プローブの末端が、SNPsに相補的な塩基配列であった場合には効率的にライゲーションされる。逆にもしも多型のために末端の塩基が異なれば、両者のライゲーション効率は低下する。その結果、各磁気蛍光ビーズには、試料が当該磁気蛍光ビーズに相補的なジェノタイプであった場合に限り、蛍光標識オリゴDNAが結合する。
磁気によって磁気蛍光ビーズを回収し、更に各磁気蛍光ビーズ上の蛍光標識オリゴDNAの存在を検出することにより、ジェノタイプが決定される。磁気蛍光ビーズは、フローサイトメーターでビーズ毎に蛍光シグナルを解析できるので、多種類の磁気蛍光ビーズが混合されていてもシグナルの分離は容易である。つまり、多種類のSNPsを単一の反応容器で並行して解析する「多重化」が達成される。
[Invader法]
PCR法に依存しないジェノタイピングのための方法も実用化されている。たとえばInvader法では、アレルプローブ、インベーダープローブ、およびFRETプローブの3種類のオリゴヌクレオチドと、cleavaseと呼ばれる特殊なヌクレアーゼのみで、ジェノタイピングを実現している。これらのプローブのうち標識が必要なのはFRETプローブのみである。アレルプローブは、検出すべきアレルに隣接する領域にハイブリダイズするようにデザインされる。アレルプローブの5'側には、ハイブリダイズに無関係な塩基配列からなるフラップが連結されている。アレルプローブは多型部位の3'側にハイブリダイズし、多型部位の上でフラップに連結する構造を有する。
一方、インベーダープローブは、多型部位の5'側にハイブリダイズする塩基配列からなっている。インベーダープローブの塩基配列は、ハイブリダイズによって3'末端が多型部位に相当するようにデザインされている。インベーダープローブにおける多型部位に相当する位置の塩基は任意で良い。つまり、多型部位を挟んでインベーダープローブとアレルプローブとが隣接してハイブリダイズするように両者の塩基配列はデザインされている。
多型部位がアレルプローブの塩基配列に相補的な塩基であった場合には、インベーダープローブとアレルプローブの両者がアレルにハイブリダイズすると、アレルプローブの多型部位に相当する塩基にインベーダープローブが侵入(invasion)した構造が形成される。cleavaseは、このようにして形成された侵入構造を形成したオリゴヌクレオチドのうち、侵入された側の鎖を切断する。切断は侵入構造の上で起きるので、結果としてアレルプローブのフラップが切り離されることになる。一方、もしも多型部位の塩基がアレルプローブの塩基に相補的でなかった場合には、多型部位におけるインベーダープローブとアレルプローブの競合は無く、侵入構造は形成されない。したがってcleavaseによるフラップの切断が起こらない。
FRETプローブは、こうして切り離されたフラップを検出するためのプローブである。FRETプローブは5'末端側に自己相補配列を有し、3'末端側に1本鎖部分が配置されたヘアピンループを構成している。FRETプローブの3'末端側に配置された1本鎖部分は、フラップに相補的な塩基配列からなっていて、ここにフラップがハイブリダイズすることができる。フラップがFRETプローブにハイブリダイズすると、FRETプローブの自己相補配列の5'末端部分にフラップの3'末端が侵入した構造が形成されるように両者の塩基配列がデザインされている。cleavaseは侵入構造を認識して切断する。FRETプローブのcleavaseによって切断される部分を挟んで、TaqMan PCRと同様のレポーター色素とクエンチャーで標識しておけば、FRETプローブの切断を蛍光シグナルの変化として検知することができる。
なお、理論的には、フラップは切断されない状態でもFRETプローブにハイブリダイズするはずである。しかし実際には、切断されたフラップとアレルプローブの状態で存在しているフラップとでは、FRETに対する結合効率に大きな差が有る。そのため、FRETプローブを利用して、切断されたフラップを特異的に検出することは可能である。
Invader法に基づいてジェノタイプを決定するためには、アレルAとアレルBのそれぞれに相補的な塩基配列を含む、2種類のアレルプローブを用意すれば良い。このとき両者のフラップの塩基配列は異なる塩基配列とする。フラップを検出するためのFRETプローブも2種類を用意し、それぞれのレポーター色素を識別可能なものとしておけば、TacMan PCR法と同様の考えかたによって、ジェノタイプを解析することができる。
Invader法の利点は、標識の必要なオリゴヌクレオチドがFRETプローブのみであることである。FRETプローブは検出対象の塩基配列とは無関係に、同一のオリゴヌクレオチドを利用することができる。したがって、大量生産が可能である。一方アレルプローブとインベーダープローブは標識する必要が無いので、けっきょくジェノタイピングのための試薬を安価に製造することができる。
[RCA法]
PCR法に依存しないジェノタイピングのための方法として、RCA法を挙げることができる。鎖置換作用を有するDNAポリメラーゼが、環状の1本鎖DNAを鋳型として、長い相補鎖を合成する反応に基づくDNAの増幅方法が、Rolling Circle Amplification(RCA)法である(Lizardri PM et al.,Nature Genetics 19, 225, 1998)。RCA法においては、環状DNAにアニールして相補鎖合成を開始するプライマーと、このプライマーによって生成する長い相補鎖にアニールする第2のプライマーを利用して、増幅反応を構成している。
RCA法には、鎖置換作用を有するDNAポリメラーゼが利用されている。そのため、相補鎖合成によって2本鎖となった部分は、より5'側にアニールした別のプライマーから開始した相補鎖合成反応によって置換される。たとえば環状DNAを鋳型とする相補鎖合成反応は、1周分では終了しない。先に合成した相補鎖を置換しながら相補鎖合成は継続し、長い1本鎖DNAが生成される。一方、環状DNAを鋳型として生成した長い1本鎖DNAには、第2のプライマーがアニールして相補鎖合成が開始する。RCA法において生成される1本鎖DNAは、環状のDNAを鋳型としていることから、その塩基配列は同じ塩基配列の繰り返しである。したがって、長い1本鎖の連続的な生成は、第2のプライマーの連続的なアニールをもたらす。その結果、変性工程を経ることなく、プライマーがアニールすることができる1本鎖部分が連続的に生成される。こうして、DNAの増幅が達成される。
RCA法に必要な環状1本鎖DNAがSNPsの塩基に応じて生成されれば、RCA法を利用してSNPsをタイピングすることができる。そのために、直鎖状で1本鎖のパドロックプローブが利用される。パドロックプローブは、5'末端と3'末端に検出すべきSNPsの両側に相補的な塩基配列を有している。これらの塩基配列は、バックボーンと呼ばれる特殊な塩基配列からなる部分で連結されている。SNPs部分がパドロックプローブの末端に相補的な塩基配列であれば、アレルにハイブリダイズしたパドロックプローブの末端をDNAリガーゼによってライゲーションすることができる。その結果、直鎖状のパドロックプローブが環状化され、RCA法の反応がトリガーされる。DNAリガーゼの反応は、ライゲーションすべき末端部分が完全に相補的でない場合には反応効率が著しく低下する。したがって、ライゲーションの有無をRCA法で確認することによって、SNPsのジェノタイピングが可能である。
RCA法は、DNAを増幅することはできるが、そのままではシグナルを生成しない。また増幅の有無のみを指標とするのでは、アレル毎に反応を行わなければジェノタイプを決定することができない。これらの点をジェノタイピング用に改良した方法が公知である。たとえばモレキュラービーコンを利用して、RCA法に基づいて1チューブでジェノタイピングを行うことができる。モレキュラービーコンは、TaqMan法と同様に、蛍光色素とクエンチャーを利用したシグナル生成用プローブである。モレキュラービーコンの5'末端と3'末端は相補的な塩基配列で構成されており、単独ではヘアピン構造を形成する。両端付近を蛍光色素とクエンチャーで標識しておけば、ヘアピン構造を形成している状態では蛍光シグナルが検出できない。モレキュラービーコンの一部を、RCA法の増幅産物に相補的な塩基配列としておけば、モレキュラービーコンはRCA法の増幅産物にハイブリダイズする。ハイブリダイズによってヘアピン構造が解消されるため、蛍光シグナルが生成される。
モレキュラービーコンの利点は、パドロックプローブのバックボーン部分の塩基配列を利用することによって、検出対象とは無関係にモレキュラービーコンの塩基配列を共通にできる点である。アレル毎にバックボーンの塩基配列を変え、蛍光波長が異なる2種類のモレキュラービーコンを組み合せれば、1チューブでジェノタイピングが可能である。蛍光標識プローブの合成コストは高いので、測定対象に関わらず共通のプローブを利用できることは、経済的なメリットである。
[1分子蛍光分析システム(Single molecule fluorescence spectroscopy)]
1fL(femtoliter)という微小領域の蛍光分析を可能とするシステムが実用化されている。このシステムを用いれば、蛍光標識プライマーの伸長を、並進拡散時間(translational diffusion time)の増大として検出することができる。タイピングの対象となるアレルに対してそれぞれ相補的な塩基配列を有するプライマーを用意する。各プライマーには、それぞれ識別可能な蛍光標識を結合しておく。このプライマーを使ってPCRを行い、増幅産物を蛍光相関分析法(Fluorescence Correlation Spectroscopy)によって蛍光測定する。サンプルがプライマーに相補的な塩基配列を有していれば、PCRによってプライマーは伸長する。伸長したプライマーは分子が大きくなるために、蛍光の揺らぎを生じる。この蛍光の揺らぎが並進拡散時間(translational diffusion time)の増大として検出される。プライマーに相補的な塩基配列がサンプル中に含まれなければ、PCRの増幅産物が生成しないので、蛍光変化は起きない。
具体的には、2つのアレルAとBに対して、それぞれ異なる蛍光標識を有するプライマーを用いて、同じ反応液中でPCRを行う。増幅産物の蛍光測定において、AまたはBのいずれか一方の蛍光シグナルの変化が観察されれば、いずれかのホモ、両方の蛍光シグナルが変化すればヘテロであることが確認できる(PharmaGenomics, July/August 46-48, 2003)。正確で迅速な解析方法として評価されている。
これらの方法はいずれも多量のサンプルを高速にジェノタイピングするために開発された方法である。MALDI-TOF/MSを除けば、いずれの方法にも何らかの形で標識プローブなどを用意する必要がある。これに対して、標識プローブなどに頼らないジェノタイピングも古くから行われている。このような方法の一つとして、例えば、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用した方法やPCR-RFLP法等が挙げられる。
RFLPは、制限酵素の認識部位の変異、あるいは制限酵素処理によって生じるDNA断片内における塩基の挿入または欠失が、制限酵素処理後に生じる断片の大きさの変化として検出できることを利用している。検出対象となる多型を含む塩基配列を認識する制限酵素が存在すれば、RFLPの原理によって多型部位の塩基を知ることができる。
標識プローブを必要としない方法として、DNAの二次構造の変化を指標として塩基の違いを検出する方法も公知である。PCR-SSCPでは、1本鎖DNAの二次構造がその塩基配列の相違を反映することを利用している(Cloning and polymerase chain reaction-single-strand conformation polymorphism analysis of anonymous Alu repeats on chromosome 11. Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.、Detection of p53 gene mutations in human brain tumors by single-strand conformation polymorphism analysis of polymerase chain reaction products. Oncogene. 1991 Aug 1; 6(8): 1313-1318.、Multiple fluorescence-based PCR-SSCP analysis with postlabeling.、PCR Methods Appl. 1995 Apr 1; 4(5): 275-282.)。PCR-SSCP法は、PCR産物を1本鎖DNAに解離させ、非変性ゲル上で分離する工程により実施される。ゲル上の移動度は、1本鎖DNAの二次構造によって変動するので、もしも多型部位における塩基の相違があれば、移動度の違いとして検出することができる。
その他、標識プローブを必要としない方法として、例えば、変性剤濃度勾配ゲル(denaturant gradient gel electrophoresis: DGGE法)等を例示することができる。DGGE法は、変性剤の濃度勾配のあるポリアクリルアミドゲル中で、DNA断片の混合物を泳動し、それぞれの不安定性の違いによってDNA断片を分離する方法である。ミスマッチのある不安定なDNA断片が、ゲル中のある変性剤濃度の部分まで移動すると、ミスマッチ周辺のDNA配列はその不安定さのために、部分的に1本鎖へと解離する。部分的に解離したDNA断片の移動度は、非常に遅くなり、解離部分のない完全な二本鎖DNAの移動度と差がつくことから、両者を分離することができる。
具体的には、まずPCR法等によってSNPs部位を含む領域を増幅する。増幅産物に、塩基配列がわかっているプローブDNAをハイブリダイズさせて2本鎖とする。これを尿素などの変性剤の濃度が移動するに従って徐々に高くなっているポリアクリルアミドゲル中で電気泳動し、対照と比較する。プローブDNAとのハイブリダイズによってミスマッチを生じたDNA断片では、より低い変性剤濃度位置でDNA断片が一本鎖になり、極端に移動速度が遅くなる。こうして生じた移動度の差を検出することによりミスマッチの有無を検出することができる。
更にDNAアレイを使ってジェノタイプを決定することもできる(細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」,秀潤社,2000.4/20発行,pp97-103「オリゴDNAチップによるSNPの解析」,梶江慎一 )。DNAアレイは、同一平面上に配置した多数のプローブに対してサンプルDNA(あるいはRNA)をハイブリダイズさせ、当該平面をスキャンすることによって、各プローブに対するハイブリダイズが検出される。多くのプローブに対する反応を同時に観察することができることから、たとえば、多数のSNPsを同時に解析するには、DNAアレイは有用である。
一般にDNAアレイは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成されている。通常これらのDNAは非透過性(non- porous)の基板の表層にプリントされる。基板の表層は、一般的にはガラスであるが、透過性(porous)の膜、例えばニトロセルロースメンブレムを使用することもできる。
本発明において、ヌクレオチドの固定(アレイ)方法として、Affymetrix社開発によるオリゴヌクレオチドを基本としたアレイが例示できる。オリゴヌクレオチドのアレイにおいて、オリゴヌクレオチドは通常インサイチュ(in situ)で合成される。例えば、photolithographicの技術(Affymetrix社)、および化学物質を固定させるためのインクジェット(Rosetta Inpharmatics社)技術等によるオリゴヌクレオチドのインサイチュ合成法が既に知られており、いずれの技術も本発明の基板の作製に利用することができる。
オリゴヌクレオチドは、検出すべきSNPsを含む領域に相補的な塩基配列で構成される。基板に結合させるヌクレオチドプローブの長さは、オリゴヌクレオチドを固定する場合は、通常10〜100ベースであり、好ましくは10〜50ベースであり、さらに好ましくは15〜25ベースである。更に、一般にDNAアレイ法においては、クロスハイブリダイゼーション(非特異的ハイブリダイゼーション)による誤差を避けるために、ミスマッチ(MM)プローブが用いられる。ミスマッチプローブは、標的塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとのペアを構成している。ミスマッチプローブに対して、完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドはパーフェクトマッチ(PM)プローブと呼ばれる。データ解析の過程で、ミスマッチプローブで観察されたシグナルを消去することによって、クロスハイブリダイゼーションの影響を小さくすることができる。
DNAアレイ法によるジェノタイピングのための試料は、被検者から採取された生物学的試料をもとに当業者に周知の方法で調製することができる。生物学的試料は特に限定されない。例えば被検者の末梢血白血球、皮膚、口腔粘膜等の組織または細胞、涙、唾液、尿、糞便または毛髪から抽出した染色体DNAから、DNA試料を調製することができる。判定すべきSNPsを含む領域を増幅するためのプライマーを用いて、染色体DNAの特定の領域が増幅される。このとき、マルチプレックスPCR法によって複数の領域を同時に増幅することができる。マルチプレックスPCR法とは、複数組のプライマーセットを、同じ反応液中で用いるPCR法である。複数のSNPsを解析するときには、マルチプレックスPCR法が有用である。
一般にDNAアレイ法においては、PCR法によってDNA試料を増幅するとともに、増幅産物が標識される。増幅産物の標識には、標識を付したプライマーが利用される。たとえば、まずSNPsを含む領域に特異的なプライマーセットによるPCR法でゲノムDNAを増幅する。次に、ビオチンラベルしたプライマーを使ったラベリングPCR法によって、ビオチンラベルされたDNAを合成する。こうして合成されたビオチンラベルDNAを、チップ上のオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの反応液および反応条件は、基板に固定するヌクレオチドプローブの長さや反応温度等の条件に応じて、適宜調整することができる。当業者は、適切なハイブリダイゼーションの条件をデザインすることができる。ハイブリダイズしたDNAを検出するために、蛍光色素で標識したアビジンが添加される。アレイをスキャナで解析し、蛍光を指標としてハイブリダイズの有無を確認する。
上記の方法以外にも、特定部位の塩基を検出するために、アレル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法が利用できる。アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)は、検出すべきSNPsが存在する領域にハイブリダイズする塩基配列で構成される。ASOを試料DNAにハイブリダイズさせるとき、多型によってSNPs部位にミスマッチが生じるとハイブリッド形成の効率が低下する。ミスマッチは、サザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法等によって検出することができる。また、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法によって、ミスマッチを検出することもできる。
本発明はまた、上記検査方法のためのプローブまたはプライマーを提供する。上述したジェノタイプの解析方法では、上記多型配列に又はその近傍の配列にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドをプライマーやプローブとして用いることが多い。したがって、当該多型部位の塩基を明らかにするためのプローブあるいはプライマーは、本発明の検査方法に重要な要素であり、有用である。
プライマーは、多型部位を含むDNAを鋳型として、多型部位を含むように相補鎖合成を開始し得るように設計される。プライマーの長さは15〜100範囲であり、一般に15〜50、通常15〜30である。プライマーがハイブリダイズする領域と多型部位との間隔は、任意である。両者の間隔は、多型部位の塩基の解析手法に応じて、好適な塩基数を選択することができる。また、多型部位上にプライマーがハイブリダイズするようにプライマーを設計してもよい。この場合、心肥大素因を有すると判定される多型の配列のみハイブリダイズし、心肥大素因を有していないと判断される他の多型上にはハイブリダイズしない(あるいは、ハイブリダイズし難い)配列に設計してもよい。
また、プライマーを構成する塩基配列は、配列番号:1に示したIGF-IR遺伝子の配列に基づいて選択することができる。ただし、本発明のプライマーは、鋳型と完全に相補する配列に限定されず、また、相補的な配列に適宜変更を加えてもよい。例えば、配列を変更する場合を例示すれば、ゲノムの塩基配列に相補的な塩基配列に、任意の塩基配列を付加することである。ここで付加する配列としては、IIs型制限酵素の認識配列などが挙げられる。IIs型制限酵素の認識配列を付加することにより、IIs型制限酵素を利用した多型解析のプライマーとして使用し得る。
また、本発明のプライマーは物理的に修飾したものも含まれる。物理的な修飾の例としては、同位元素による標識、蛍光物質による標識、ビオチンまたはジゴキシンなどの結合親和性物質による標識などが挙げられる。こうした標識プライマーは各種のジェノタイピング方法において有用となる。
また、本発明のプローブは、多型部位を含む領域の塩基配列を有するポリヌクレオチドとハイブリダイズし得るように設計される。より具体的には、プローブの塩基配列中に多型部位を含むプローブは本発明のプローブとして好ましい。あるいは、多型部位における塩基の解析方法によっては、プローブの末端が多型部位に隣接する塩基に対応するように、デザインされる場合もある。したがって、プローブ自身の塩基配列には多型部位が含まれないが、多型部位に隣接する領域に相補的な塩基配列を含むプローブも、本発明における望ましいプローブとして示すことができる。
また、ハプロタイプブロック解析によりジェノタイプを決定するためのプローブは、高血圧性心肥大素因に関連を有する多型配列あるはそれと隣接する配列にはハイブリダイズしなくとも、タグ多型を検出し得るように、タグ多型配列あるいはタグ多型に隣接する配列にハイブリダイズし得るようなプローブも本発明に含まれる。本発明のプローブには、プライマーと同様に、鋳型と完全に相補する配列に限定されず、塩基配列の改変、塩基配列の付加、あるいは修飾が許される。たとえばInvader法に用いるプローブは、フラップを構成するゲノムとは無関係な塩基配列が付加される。このようなプローブも、多型部位を含む領域にハイブリダイズする限り、本発明のプローブに含まれる。本発明のプローブを構成する塩基配列は、配列番号:1に記載のIGF-IR遺伝子座の塩基配列をもとに、解析方法に応じてデザインすることができる。なお、プローブの長さは、上記DNAアレイ法の説明で記載した長さとほぼ同様であり、15〜100の範囲内であり、一般には15〜50、通常は15〜30である。
上記プライマーおよびプローブの合成は、当業者において用いられている任意の方法によって合成することができる。修飾プライマー、修飾プローブの合成においては、蛍光色素やビオチンなどで修飾されたヌクレオチド誘導体を利用してオリゴヌクレオチドに任意の修飾を導入することは公知である。また、合成されたオリゴヌクレオチドに、蛍光色素などを結合する方法も公知である。これらオリゴヌクレオチドの修飾は市販のキットなどを用いて行うこともできる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
本態性高血圧患者における遺伝子解析による心肥大素因の同定
遺伝子解析に対するインフォームドコンセントの得られた本態性高血圧患者808例(男性445例、女性363例、平均年齢65±10歳)を対象とした。心エコーにて、心肥大の指標である左室重量係数と、求心性心形態変化の指標である相対壁肥厚度を計測し、左室重量係数>=125 g/m2を心肥大、相対壁肥厚度≧0.45を求心性変化ありとし、上記対象を「心肥大あり」群または「心肥大なし」群に、また、「求心性心変化あり」群または「求心性心変化なし」群に分類した。
一部の対象のゲノムDNA試料を用い、IGF-1およびIGF-1受容体遺伝子の全塩基配列を決定し、多型解析した。ここで同定された一塩基多型のうち主要なものを全症例でタイピングした。同定された多型はIGF-1遺伝子上に2箇所、IGF-1受容体遺伝子上に12箇所であった。これら多型が心肥大、求心性心変化との関連性を有しているかを、心肥大「あり」群、「なし」群間での有意差、あるいは求心性心変化「あり」群、「なし」群間での有意差を基に解析した。その結果、IGF-1遺伝子上の多型はいずれも心肥大との関連を示さなかった。一方、IGF-1受容体遺伝子ではプロモーター領域のC/T多型(C-328T)が心肥大と、イントロン13のA/C多型(A275124C)が求心性心変化とそれぞれ有意に関連していた(表1-A, B)。アレル頻度でみてもC-328T ではCアレルと心肥大が、A275124CではAアレルと求心性心変化が有意に関係していた(表1-C, D)。
上記心肥大、求心性心変化と関連性を有していた多型(それぞれプロモーター領域のC/T多型(C-328T)、イントロン13のA/C多型(A275124C))の各領域を解析するためのPCR条件およびシークエンス条件は次のとおりである。
C-328T解析のためのPCRおよびシークエンシング:PCRには各対象者から採取したゲノムDNA(20ng)とし、全量20μlの反応系で実施した。PCR用プライマーは配列番号:2(Forwardプライマー:cattttgactccgcgtttctg)、配列番号:3(Reverseプライマー:gacggagaaagagaaaagccct)を用い、反応系に最終濃度として各500nM添加した。また、酵素は500GC-rich PCR system(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を用いた。PCRの反応条件は、反応サイクルに入る前に変性(95℃、3分)させた後、変性(98℃/15秒)→アニーリング(56℃/30秒)→伸長(72℃/1分)の反応サイクルを30サイクル繰り返した。増幅産物は、PCRProduct Pre-Sequencing Kit(USB Corporation, Cleveland, OH)を用いて精製し、シークエンス反応に用いた。
シークエンス用プライマーは上記PCRプライマーの一つ(配列番号:2)を用いた。反応はBigDye Terminator Cycle Seqencing Ready Reaction Kit v2.0 (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて実施した。反応後の配列決定にはシークエンサーABI PRISM 3700 Genetic Analyzer (Applied Biosystems)を使用した。
A275124C解析のためのPCRおよびシークエンシング:上記C-328T解析のためのPCRおよびシークエンシングと次の点を除き同様の方法、条件で実施した。PCR用プライマーは配列番号:4(Forwardプライマー:tttggttaaagcttttgggtgtg)、配列番号:5(Reverseプライマー:aagctggccaactccattttaac)を用い、反応系に最終濃度として各250nM添加した。また、酵素はFast Start Taq DNA polymerase(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を用いた。PCRの反応条件は最初の変性が95℃、4分にて、また、サイクル中の変性は95℃/30秒とした。シークエンス用プライマーはagatcaggcagctggagtcc(配列番号:6)を用いた。
上記全症例のジェノタイピングは、TaqManPCR法により実施した。TaqManPCR法は、TaqMan反応試薬(TaqMan Universal PCR Master Mix, No UNG (Applied Biosystems)を用い、後述する、いずれかのプローブ100nMおよびプライマー各800nM存在下で行った。反応条件は、反応酵素の活性化と鋳型DNAの変性ステップ(95℃/10 分)後、DNA変性ステップ(92℃/15秒)→アニーリングおよび伸長反応ステップ(58℃/1 分)のサイクルを40サイクル行った。TaqMan用PCRプライマーおよびプローブは次の通りである。C-328Tジェノタイピング用のプライマーとして、GATCTTGCGAACTGCGTCG(配列番号:7)、TTTTCAAACCCGGAGAGGC(配列番号:8)を用いた。また、C-328Tジェノタイピング用プローブは、Cアレル解析用のプローブとして、Fam- TGCAGTTTTCCCCCCT-MGB(配列番号:9)を用い、Tアレル解析用のプローブとして、Vic-TTGCAGTTTTTCCCCCT-MGB(配列番号:10)を用いた。すなわち、Cアレル解析にはレポーター色素としてFamを、クエンチャーにMGBを用い、一方、Cアレル解析用にはレポーター色素としてVicを、クエンチャーにMGBを用いて、同時にCアレル、Tアレルを解析し、Cホモ、Tホモ、C/Tへテロのいずれであるかを同定した。
TaqManPCR法によるA275124Cのジェノタイピングは、次の点を除き、上記C-328Tジェノタイピングと同様の方法で行った。A275124Cジェノタイピング用PCRプライマーとして、AAGACAGCCATGAACACTCGG(配列番号:11)、TCCAGGCCAAAAGTAAGGCTT(配列番号:12)を用いた。Aアレルを解析するためのプローブとしてFam-CACGTTTCTTCTCCCT-MGB(配列番号:13)を用い、Cアレルを解析するためのプローブとしてVic-ACGTTTCGTCTCCCT−MGB(配列番号:14)を用い、同時にAアレル、Cアレルを解析し、Aホモ、Cホモ、A/Cへテロのいずれであるかを同定した。
表1 IGF-1受容体遺伝子2多型と心肥大、求心性心変化との関連
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(A) C-328T各多型頻度と心肥大との関連(カイ2乗検定)
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CC CT TT 合計
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心肥大なし 367 (86%) 56 (13%) 4 (1%) 427
心肥大あり 335 (91%) 32 (9%) 0 (0%) 367
合計 702 (88%) 88 (11%) 4 (1%) 794
--------------------------------------------------
カイ2乗値 7.513、P値 0.023
--------------------------------------------------
(B) A275124C各多型頻度と求心性心変化との関連(カイ2乗検定)
----------------------------------------------------
AA AC CC 合計
----------------------------------------------------
求心性変化なし 211 (56%) 139 (37%) 27 (7%) 377
求心性変化あり 268 (63%) 143 (33%) 16 (4%) 427
合計 479 (60%) 282 (35%) 43 (5%) 804
----------------------------------------------------
カイ2乗値 6.570、P値 0.037
----------------------------------------------------
(C) C-328T各アレル頻度と心肥大との関連(カイ2乗検定)
----------------------------------------
Cアレル Tアレル 合計
----------------------------------------
心肥大なし 790 (93%) 64 (7%) 854
心肥大あり 702 (96%) 32 (4%) 734
合計 1492 (94%) 96 (6%) 1588
----------------------------------------
オッズ比 1.777、95%信頼限界 1.149-2.749
カイ2乗値 6.828、P値 0.009
----------------------------------------
(D) A275124C各アレル頻度と求心性心変化との関連(カイ2乗検定)
-------------------------------------------
Aアレル Cアレル 合計
-------------------------------------------
求心性変化なし 561 (74%) 193 (26%) 754
求心性変化あり 679 (80%) 175 (20%) 854
合計 1240 (77%) 368 (23%) 1608
-------------------------------------------
オッズ比 1.335、95%信頼限界 1.057-1.685
カイ2乗値 5.913、P値 0.015
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C-328TのCC、CT+TT型およびA275124CのAA、AC+CC型間で各々2群比較すると、いずれの多型間でも年齢、性別、高血圧歴、BMI、収縮期および拡張期血圧のいずれにも差を認めなかったが、C-328Tでは左室重量係数がCC群で有意に高値、A275124Cでは相対壁肥厚度がAA群で高値傾向であった(表2)。多変量解析では、C-328TのCC型が心肥大の、A275124CのAA型が求心性心変化のそれぞれ独立規定因子となっていた(表3)。
表2 IGF-1受容体遺伝子各多型間での臨床背景、心肥大指標の比較
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(A) C-328TのCCとCT+TT間での臨床背景、心肥大各指標の比較(t検定)
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CC (88%) CT+TT (12%) P値
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年齢 (歳) 65±10 63±11 0.079
性別 (男性の割合) 55% 55% 0.950
高血圧歴 (年) 18±11 17±11 0.203
BMI (kg/m2) 24.4±3.4 24.0±3.3 0.278
収縮期血圧 (mmHg) 146±19 143±19 0.151
拡張期血圧 (mmHg) 85±13 83±14 0.274
左室重量係数 (kg/m2) 130±39 119±28 0.008
相対壁肥厚度 0.466±0.087 0.456±0.084 0.296
------------------------------------------------------
(B) A275124CのAAとAC+CC間での臨床背景、心肥大各指標の比較(t検定)
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AA (60%) AC+CC (40%) P値
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年齢 (歳) 66±10 65±11 0.209
性別 (男性の割合) 55% 55% 0.848
高血圧歴 (年) 18±11 18±11 0.776
BMI (kg/m2) 24.4±3.3 24.4±3.5 0.859
収縮期血圧 (mmHg) 145±18 146±20 0.418
拡張期血圧 (mmHg) 84±13 86±14 0.097
左室重量係数 (kg/m2) 130±37 127±40 0.305
相対壁肥厚度 0.469±0.086 0.458±0.086 0.056
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表3 IGF-1受容体遺伝子各多型の心肥大規定独立性の解析
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(A) C-328T CC型と左室重量係数(ロジスティック回帰)
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カイ2乗値 P値
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年齢 4.757 0.029
性別 21.028 <0.001
BMI 7.067 0.008
収縮期血圧 7.659 0.006
拡張期血圧 6.668 0.010
Promoter-C/T CC型 4.453 0.035
-----------------------------------
(B) A275124C AA型と相対壁肥厚度(ロジスティック回帰)
-----------------------------------
カイ2乗値 P値
-----------------------------------
年齢 4.263 0.039
性別 5.765 0.016
BMI 17.437 <0.001
収縮期血圧 2.788 0.095
拡張期血圧 2.161 0.142
Intron13-A/C AA型 4.181 0.041
===================================
上述の通り、本発明によりIGF-1受容体上の新規遺伝子多型であるC-328TおよびA275124Cが明らかになった。C-328Tは、本態性高血圧症の心肥大と、A275124Cは、本態性高血圧症の求心性心形態変化と関連していた。これらの心肥大関連遺伝子多型を高血圧患者に対する遺伝子診断として応用することにより、心肥大という高血圧性臓器障害のリスクを予測することができる。一般に、高血圧性臓器障害のような多因子性の疾患のリスク予測は難しいとされている。したがって、高血圧のような環境因子に加えて、心肥大の遺伝的なハイリスク群を明らかにできることは、リスク予測においてきわめて有用な情報を提供することを意味している。

Claims (10)

  1. 次の工程を含む、高血圧性心肥大素因の検査方法。
    (a) 被検者が有する、IGF-IR遺伝子における高血圧性心肥大素因と関連する多型のジェノタイプを決定する工程、および
    (b) (a)で決定されたジェノタイプに基づいて、被検者の高血圧性心肥大素因を予測する工程
  2. 多型が1塩基多型である、請求項1に記載の検査方法。
  3. IGF-IR遺伝子の多型が、IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基および/またはIGF-IR遺伝子の275124位の塩基の多型である、請求項2に記載の検査方法。
  4. IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基の多型が、CとTであり、そのジェノタイプがCCの場合に心肥大素因を有すると予測される請求項3に記載の検査方法。
  5. IGF-IR遺伝子の275124位の塩基の多型が、AとCであり、そのジェノタイプがAAの場合に求心性心変化素因を有すると予測される請求項3に記載の検査方法。
  6. 以下の(a)〜(c)の工程を含む、請求項1に記載の検査方法。
    (a) 被検者の生体試料からゲノムDNAを採取する工程
    (b) IGF-IR遺伝子における塩基部位であって、IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基および/またはIGF-IR遺伝子の275124位の塩基のジェノタイプを決定する工程
    (c) IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基の多型が、CとTであり、そのジェノタイプがCCの場合に心肥大素因を有すると、またIGF-IR遺伝子の275124位の塩基の多型が、AとCであり、そのジェノタイプがAAの場合に求心性心変化素因を有すると予測する工程
  7. IGF-IR遺伝子における高血圧性心肥大素因と関連する多型部位を含む領域を合成するためのプライマーを含む、高血圧性心肥大素因検査用のプライマー。
  8. 多型部位が、IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基および/またはIGF-IR遺伝子の275124位の塩基の多型である請求項7に記載のプライマー。
  9. IGF-IR遺伝子における高血圧性心肥大素因と関連する多型部位を含む領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む、高血圧性心肥大素因検査用のプローブ。
  10. 多型部位が、IGF-IR遺伝子のプロモーター領域の−328位の塩基および/またはIGF-IR遺伝子の275124位の塩基である請求項9に記載のプローブ。
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