JP2005106533A - 核酸応答性ゲル - Google Patents
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Abstract
【課題】核酸に応答する核酸応答性ゲルを提供すること。
【解決手段】網目構造体からなるゲルであって、網目構造体を構成する高分子化合物に一本鎖核酸が結合により固定化されており、かつ一本鎖核酸が固定化されている高分子化合物の少なくとも一部は網目構造体の内部に存在するゲル。網目構造体を構成する高分子化合物は、有機高分子化合物であることができ、一本鎖核酸はDNA、RNA、またはPNAであることができる。このゲルに、被検体核酸を含浸させ、前記ゲルに固定化されている一本鎖核酸と前記被検体核酸のハイブリダイゼーションの有無を前記ゲルの体積の変化で検出する核酸の検出方法。
【選択図】 図1
【解決手段】網目構造体からなるゲルであって、網目構造体を構成する高分子化合物に一本鎖核酸が結合により固定化されており、かつ一本鎖核酸が固定化されている高分子化合物の少なくとも一部は網目構造体の内部に存在するゲル。網目構造体を構成する高分子化合物は、有機高分子化合物であることができ、一本鎖核酸はDNA、RNA、またはPNAであることができる。このゲルに、被検体核酸を含浸させ、前記ゲルに固定化されている一本鎖核酸と前記被検体核酸のハイブリダイゼーションの有無を前記ゲルの体積の変化で検出する核酸の検出方法。
【選択図】 図1
Description
本発明は、核酸応答性ゲルに関する。本発明の核酸応答性ゲルは、様々な医療分野における幅広い応用可能性を秘めた新しいインテリジェントマテリアルになる新材料である。この発明により、「ゲルの体積変化特性(センシング機能)や物質保持特性(リザーバー機能)を最大限に利用した遺伝子センシングデバイス及び遺伝子治療用薬物キャリヤー」の実現が可能となると考えられる。
同じ症状を示す患者に同じ薬を投与しても、高い効果が発揮される場合がある一方で、副作用が生じる場合もある事が近年問題となっている。これは、個人の遺伝子タイプによって薬への感受性が異なる事が原因である。従って、患者がどの遺伝子タイプに分類されるかを医者が簡単に把握する事ができれば、副作用が強い薬の投与は避けられるはずである。この様な、個人ごとに最適な治療法を提供する「テイラーメイド医療」が実現するためには、遺伝子一塩基多型(SNPs)に代表される遺伝子タイプの個体差を、迅速かつ簡便に同定する事ができる医療環境の整備が必要不可欠である。
また、2000〜3000件もの食中毒が毎年発生している。これらの食中毒の原因細菌を特定する際には、患者の便をソルビトール添加寒天培地で培養する等、数日掛かる検査工程が必要とされている。しかし、より迅速に原因細菌を特定するためには、その遺伝子タイプを迅速かつ簡便に同定する必要がある。
一方、近年注目されているドラッグデリバリーシステム(DDS)を実現するためには、ガン腫瘍近傍に送達された薬物キャリヤーが、位置特異的に薬物を放出する技術の確立が不可欠である。この薬物放出を促すシグナルとしては、現在はpHや温度等の単純な環境的要因のみが検討されている。しかし、より複雑なガン腫瘍特有のシグナルに応答するキャリヤーの開発が、より正確なDDSを実現する事は間違いない。
この様に、「標的遺伝子を特異的に検出する(あるいは標的遺伝子に特異的に応答する)技術」の確立が、遺伝子診断、遺伝子検査、遺伝子治療等の医療分野において大きな進歩をもたらす事は明らかであり、様々な技術が現在までに提案されている。例えば、遺伝子を特異的に検出するために提案されているDNAチップは、操作手順が煩雑であり、非特異的な応答を示してしまう問題点がある。一方、従来のDDSにおいては、加温をシグナルとして標的ガン腫瘍近傍において薬物を放出する方法も検討されているが、部位特異的な加温が困難であるという問題点がある。
本発明者らは、遺伝子を特異的に検出するため、あるいはDDSに有効な手段として「標的遺伝子の特異的な検出(あるいは標的遺伝子に対する特異的な応答)」を可能とする材料の提供に取り組んでいる。ところが、核酸に応答性を示すゲルは知られていなかった。
[分子応答性ゲル]
単純なシグナル(pHや温度等)に応答する環境応答性ゲルの報告は数多くある。しかし、分子そのものに応答するゲルの報告は少ない。従来報告されている分子応答性ゲルは、「分子に応答して内部環境が変化し、結果として体積が変化するゲル」及び「分子に応答して構造そのものが変化して体積が変化するゲル」の二種類に大別される。
単純なシグナル(pHや温度等)に応答する環境応答性ゲルの報告は数多くある。しかし、分子そのものに応答するゲルの報告は少ない。従来報告されている分子応答性ゲルは、「分子に応答して内部環境が変化し、結果として体積が変化するゲル」及び「分子に応答して構造そのものが変化して体積が変化するゲル」の二種類に大別される。
前者としては、N,N'-ジエチルアミノエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート及びアクリルアミドが形成するゲル内にグルコースオキシダーゼを固定化したゲル(Ishihara et al., Polymer J., 16, 625-631 (1984)(非特許文献1)等の、グルコースセンサーやグルコース特異的インシュリン放出膜への応用を指向したゲルが従来より報告されている。グルコースがゲル内に拡散すると、ゲルに固定化されたグルコースオキシダーゼの触媒作用によって、グルコースがグルコン酸に変換される。その結果、ゲル内の微小環境におけるpHが低下し、ゲルが膨潤する。グルコースによるゲル内微小環境変化を利用したグルコースオキシダーゼ固定化ゲルの報告は、現在も数多く報告されている(例えば、Soppimathらによる総説Drug Dev. Ind. Pharm., 28, 957-974(2002)(非特許文献2)を参照)。しかしこの原理を遺伝子検出に応用するのは困難である。
後者としては、ホスト-ゲスト相互作用が内部構造に組み込まれたゲルが従来より報告されている。フリーの標的ゲスト分子がゲル内を拡散すると、ゲル内に固定化したホスト分子は、同じくゲル内に固定化されたゲスト分子よりも、フリーのゲスト分子とより強固な相互作用を形成する。その結果、ゲルの内部構造に組み込まれたホスト-ゲスト間相互作用が崩壊し、ゲルが膨潤する。架橋点に分子認識機構を組み込んだ分子応答性ゲルは、現在までにグルコース(Miyata et al., Macromol. Chem. Phys., 197, 1135-1146 (1996)(非特許文献3))や抗原(Miyata et al., Nature, 399, 766-769 (1999)(非特許文献4))等に応答性を示す事が報告されている。しかし、架橋点に分子応答機構を組み込んだ場合、標的分子に応答したゲルの体積変化は10%程度が限界である。
また、いずれの手法に関しても、遺伝情報を司る分子(DNAやRNA)に応答するゲルは現在報告されていない。
また、いずれの手法に関しても、遺伝情報を司る分子(DNAやRNA)に応答するゲルは現在報告されていない。
[核酸含有ゲル]
現在までに、「『二本鎖核酸(末端以外の特に限定しない部位)』が『網目構造中』に『固定化されている』ゲル」は既に報告されている(Umeno et al., Anal. Chim. Acta, 365, 101-108 (1998)(非特許文献5))。この報告においては、ビニル化二本鎖DNAがアクリルアミド及び架橋剤と共重合する事によって、DNAが網目構造内に固定化されたゲルが合成される。得られたDNA固定化ゲルによって、様々なDNA結合性物質を捕捉する事が可能になる。この手法においては、DNAの二本の塩基鎖を不可逆に結合させるDNA結合性ビニル化ソラレンが、DNA全体(末端以外の特に限定しない部位)に分布して導入され、その結果得られた「全体がビニル化された」DNAが、ゲル内に固定化されている。このゲルでは、二本の塩基鎖が不可逆的に結合されてしまうため、DNAの塩基認識能は完全に消失しており、核酸に対する応答性は無い。
現在までに、「『二本鎖核酸(末端以外の特に限定しない部位)』が『網目構造中』に『固定化されている』ゲル」は既に報告されている(Umeno et al., Anal. Chim. Acta, 365, 101-108 (1998)(非特許文献5))。この報告においては、ビニル化二本鎖DNAがアクリルアミド及び架橋剤と共重合する事によって、DNAが網目構造内に固定化されたゲルが合成される。得られたDNA固定化ゲルによって、様々なDNA結合性物質を捕捉する事が可能になる。この手法においては、DNAの二本の塩基鎖を不可逆に結合させるDNA結合性ビニル化ソラレンが、DNA全体(末端以外の特に限定しない部位)に分布して導入され、その結果得られた「全体がビニル化された」DNAが、ゲル内に固定化されている。このゲルでは、二本の塩基鎖が不可逆的に結合されてしまうため、DNAの塩基認識能は完全に消失しており、核酸に対する応答性は無い。
また一方、「『一本鎖(あるいは二本鎖)核酸』が『網目構造中』に『存在している』ゲル」も報告されている。例えば、ゲル電気泳動でDNAを泳動分離する報告例は数限りなく報告されている。この「DNAが泳動している状態」の全体像は「一本鎖核酸が、網目構造中に存在している(即ち、固定化はされていない)ゲル」と考える事が可能である。しかし、網目構造中に固定化されていない核酸はゲルの分子応答性に寄与しない事は、本明細書の実施例(即ち、一般的なアクリルアミドゲルに標的DNAを添加しても応答を示さない、という実験結果)からも明らかである。
さらに、「『一本鎖』核酸が『表面』に『固定化されている』ゲル」も報告されている。例えば、一本鎖DNAを固定化したDNAチップの固定化担体としては、ガラス、シリコン、セラミック、金属等の他にも、寒天、アクリルアミドなどのゲルを用いる事が可能である(例:特開2003-102499号公報(特許文献1))。これらの報告例においては、DNAは担体表面に固定化されており、その担体は「固体基板」の役割を果たすのみである。従って、これらの報告例においては、固体基板が標的DNAに応答して何らかの動きを示す機構は組み込まれておらず、実際に標的DNAを添加しても全く応答は示さない。
Ishihara et al., Polymer J., 16, 625-631 (1984) Soppimathらによる総説Drug Dev. Ind. Pharm., 28, 957-974(2002) Miyata et al., Macromol. Chem. Phys., 197, 1135-1146 (1996) M iyata et al., Nature, 399, 766-769 (1999) Umeno et al., Anal. Chim. Acta, 365, 101-108 (1998) 特開2003-102499号公報
Ishihara et al., Polymer J., 16, 625-631 (1984) Soppimathらによる総説Drug Dev. Ind. Pharm., 28, 957-974(2002) Miyata et al., Macromol. Chem. Phys., 197, 1135-1146 (1996) M iyata et al., Nature, 399, 766-769 (1999) Umeno et al., Anal. Chim. Acta, 365, 101-108 (1998)
この様に、核酸含有ゲルが標的核酸に応答を示した報告例は皆無であり、仮に、現在までに報告がある上記の各種核酸含有ゲルに標的核酸を添加しても、何も応答を示さない事は明らかである。
そこで、本発明は、核酸に応答する核酸応答性ゲルを提供することを目的とする。
そこで、本発明は、核酸に応答する核酸応答性ゲルを提供することを目的とする。
[請求項1]網目構造体からなるゲルであって、網目構造体を構成する高分子化合物に一本鎖核酸が結合により固定化されており、かつ一本鎖核酸が固定化されている高分子化合物の少なくとも一部は網目構造体の内部に存在することを特徴とするゲル。
[請求項2]網目構造体を構成する高分子化合物が有機高分子化合物である請求項1に記載のゲル。
[請求項3]有機高分子化合物が、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N'-ジメチルアクリルアミド、及びN-ビニルピロリドンから成る群から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーを含むモノマーから得られるポリマーである請求項2に記載のゲル。
[請求項4]一本鎖核酸がDNA、RNA、またはPNAである請求項1〜3のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項5]一本鎖核酸の末端が高分子化合物に固定化されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項6]一本鎖核酸は、共有結合またはイオン結合により高分子化合物に固定化されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項7]一本鎖核酸は、塩基数が1〜60の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項8]網目構造体以外のゲルの構成成分が水又は有機溶媒である請求項1〜7のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項9]一本鎖核酸の含有量が、ゲルの主鎖を形成するモノマー成分に対して0.01mol%〜1mol%の範囲である請求項1〜8のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項10]核酸応答性を示す請求項1〜9のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項11]請求項1〜10のいずれか1項に記載のゲルに、被検体核酸を含浸させ、前記ゲルに固定化されている一本鎖核酸と前記被検体核酸のハイブリダイゼーションの有無を前記ゲルの体積の変化で検出することを特徴とする核酸の検出方法。
[請求項12]ゲル体積の変化を実体顕微鏡で検出する請求項11に記載の方法。
[請求項2]網目構造体を構成する高分子化合物が有機高分子化合物である請求項1に記載のゲル。
[請求項3]有機高分子化合物が、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N'-ジメチルアクリルアミド、及びN-ビニルピロリドンから成る群から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーを含むモノマーから得られるポリマーである請求項2に記載のゲル。
[請求項4]一本鎖核酸がDNA、RNA、またはPNAである請求項1〜3のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項5]一本鎖核酸の末端が高分子化合物に固定化されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項6]一本鎖核酸は、共有結合またはイオン結合により高分子化合物に固定化されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項7]一本鎖核酸は、塩基数が1〜60の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項8]網目構造体以外のゲルの構成成分が水又は有機溶媒である請求項1〜7のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項9]一本鎖核酸の含有量が、ゲルの主鎖を形成するモノマー成分に対して0.01mol%〜1mol%の範囲である請求項1〜8のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項10]核酸応答性を示す請求項1〜9のいずれか1項に記載のゲル。
[請求項11]請求項1〜10のいずれか1項に記載のゲルに、被検体核酸を含浸させ、前記ゲルに固定化されている一本鎖核酸と前記被検体核酸のハイブリダイゼーションの有無を前記ゲルの体積の変化で検出することを特徴とする核酸の検出方法。
[請求項12]ゲル体積の変化を実体顕微鏡で検出する請求項11に記載の方法。
本発明によれば、核酸に応答する核酸応答性ゲルを提供することができ、このゲルを用いることで、プローブ核酸とターゲット核酸のハイブリダイゼーションの有無を検知することができる。
本発明のゲルは、網目構造体からなるゲルであって、網目構造体を構成する高分子化合物に一本鎖核酸が共有結合により固定化されており、かつ一本鎖核酸が固定化されている高分子化合物の少なくとも一部は網目構造体の内部に存在することを特徴とする。
即ち、本発明のゲルは、高分子化合物(ゲル)が骨格を形成し、生体高分子(核酸)が分子認識を行うという二つの機能を複合化(コンジュゲート)した、新しいインテリジェントマテリアルである「核酸(DNAやRNA)応答性コンジュゲートゲル」である。この核酸応答性コンジュゲートゲルの網目構造には、プローブとなる一本鎖核酸がその末端において固定化されている。
本発明においてゲルとは、三次元網目構造を水で膨潤させたハイドロゲルや、有機溶媒で膨潤させたオルガノゲルのいずれの形態でも可能であるが、DNAの安定性という観点からはハイドロゲルが望ましい。また、移動時等にゲルは乾燥状態にする事ができるが、応答性を示すためには使用時に水や溶媒で膨潤させる。平衡状態まで膨潤させた場合のゲルの含水率(含溶媒率)はほぼ一義的に決まる。但し、応答性を高めるという観点からは、モノマーや架橋剤濃度が低く、柔らかいゲルであることが望ましく、平衡状態まで膨潤させたときの含水率(含溶媒率)が高いゲルであることが望ましく、含水率(含溶媒率)は、例えば、約80〜95%の範囲であることが望ましい。
ゲルの網目構造体を構成する高分子化合物は、有機高分子化合物であり、より具体的には合成有機高分子化合物である。合成有機高分子化合物を構成するモノマー成分は、例えば、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N'-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン等の中の一種類以上のビニルモノマーであることができ、ゲルを構成する事が可能であれば、いかなるモノマーでも良い。ゲルを構成する事が可能である、とは、モノマーと架橋剤が重合され、三次元の網目構造が形成される、という意味である。
合成有機高分子化合物は、例えば、ポリアクリルアミド、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド等のホモポリマー、ポリエトキシエチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルビニルエーテル等のコポリマーを挙げることができる。また、コポリマーはランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー等である事が出来る。主鎖を形成する合成有機高分子化合物の分子量は、ゲルが形成される程度に大きければ良いが、例えば1万〜50万程度とすることができる。
さらに、上記モノマー成分に加えて、架橋剤を用いることもできる。架橋剤の種類は問わないが、例えば、例えば、N,N'-メチレンビスアクリルアミドを挙げることができる。ゲルを合成する際のモノマー及び架橋剤については、ゲルが形成すればその濃度は問わない。しかし応答性を高めるためには、架橋剤濃度は低い方が良い。架橋剤濃度は、例えば、主鎖を形成するモノマーに対して、0.1wt%〜1wt%とすることができる。
また、網目構造体を構成する高分子化合物に固定化される一本鎖核酸は、即ち、プローブとなる核酸は、例えば、DNA、RNA,またはPNA等の人工核酸全般(核酸分子内の糖-リン酸ジエステル骨格を、エステル、アミド等のより安定な骨格に変換した基質アナログ全般)を挙げることができる。
プローブとして用いる一本鎖核酸は、共有結合やイオン結合等、何らかの結合を介してゲルの網目構造内部に固定化されていれば良い。但し、プローブDNAの挙動がマクロな変化へと変換されやすいという観点からは、共有結合が好ましい。
またゲルの構成成分に結合さえしていれば、プローブとなる一本鎖核酸はゲル内にどのような形態で存在していても良い。例えば、ゲルを構成する主鎖に完全に固定化された状態(図1 (a))、ゲルの第二成分としてのポリマーと結合した「核酸-ポリマーコンジュゲート」としてゲル内に存在している状態(図1(b)、つまり半相互浸透ネットワーク(semi-IPN)型ゲル)、あるいはゲルの第二成分としての核酸-ポリマーコンジュゲート自身がさらに網目構造を形成している状態(図1(c)。つまり相互浸透ネットワーク(full-IPN)型ゲル)、等が例として挙げる事ができる。尚、図中、●は架橋点である。
一本鎖核酸を網目構造内部の高分子化合物に共有結合させたゲルは、以下の方法で製造することができる。
末端をビニル化した一本鎖核酸とアクリルアミドと共重合して複合体を得る。得られた複合体を精製し、さらにその複合体溶液にアクリルアミドを添加して重合すれば、一本鎖核酸が網目構造内に共有結合によって固定化されたsemi-IPN型アクリルアミドゲルが容易に合成される。末端をビニル化した一本鎖核酸は、例えば、以下の方法で調製できる。
まず始めに、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミドを溶解したジクロロメタンと、メタクリル酸、N-ヒドロキシスクシンイミド、4-ジメチルアミノピリジン及びピリジンを溶解したジクロロメタンを、氷冷下で混合し、その後反応液を精製することによって、メタクリロイルオキシスクシンイミドが得られる。そして、末端をアミノ化された一本鎖核酸 (一般的に市販) とメタクリロイルオキシスクシンイミドを水溶液中で混合することによって、末端がビニル化された一本鎖核酸が得られる。
末端をビニル化した一本鎖核酸とアクリルアミドと共重合して複合体を得る。得られた複合体を精製し、さらにその複合体溶液にアクリルアミドを添加して重合すれば、一本鎖核酸が網目構造内に共有結合によって固定化されたsemi-IPN型アクリルアミドゲルが容易に合成される。末端をビニル化した一本鎖核酸は、例えば、以下の方法で調製できる。
まず始めに、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミドを溶解したジクロロメタンと、メタクリル酸、N-ヒドロキシスクシンイミド、4-ジメチルアミノピリジン及びピリジンを溶解したジクロロメタンを、氷冷下で混合し、その後反応液を精製することによって、メタクリロイルオキシスクシンイミドが得られる。そして、末端をアミノ化された一本鎖核酸 (一般的に市販) とメタクリロイルオキシスクシンイミドを水溶液中で混合することによって、末端がビニル化された一本鎖核酸が得られる。
上記アクリルアミドを他のモノマーに変更することで、アクリルアミドゲル以外のsemi-IPN型ゲルを調製することができる。
末端をビニル化した一本鎖核酸、アクリルアミド、及び架橋剤を重合することによって、ゲルを構成する主鎖に一本鎖核酸が完全に固定化されたゲルが合成される。また、そのゲルにさらにアクリルアミド及び架橋剤を添加し、重合することによって、ゲルの第二成分としての核酸-ポリマーコンジュゲート自身がさらに網目構造を形成しているfull-IPN型ゲルが合成される。これらのアクリルアミドを他のモノマーに変更することで、アクリルアミドゲル以外のDNA含有ゲルを調製することができる。
ゲルの網目構造に固定化される一本鎖核酸は、特に制限はないが、例えば、塩基数が1〜60の範囲、好ましくは6〜30の範囲であることができる。
末端をビニル化した一本鎖核酸、アクリルアミド、及び架橋剤を重合することによって、ゲルを構成する主鎖に一本鎖核酸が完全に固定化されたゲルが合成される。また、そのゲルにさらにアクリルアミド及び架橋剤を添加し、重合することによって、ゲルの第二成分としての核酸-ポリマーコンジュゲート自身がさらに網目構造を形成しているfull-IPN型ゲルが合成される。これらのアクリルアミドを他のモノマーに変更することで、アクリルアミドゲル以外のDNA含有ゲルを調製することができる。
ゲルの網目構造に固定化される一本鎖核酸は、特に制限はないが、例えば、塩基数が1〜60の範囲、好ましくは6〜30の範囲であることができる。
さらにゲルの網目構造に固定化する一本鎖核酸、例えば、DNA含有量は特に限定されない。しかし、核酸応答性を高めるためには、一本鎖核酸、例えば、DNA含有量は高い方が良く、例えば、主鎖を形成するモノマー成分に対して、0.01mol%〜1mol%の範囲であることが適当である。
ゲルの網目構造に固定化する一本鎖核酸量は、上記semi-IPN型アクリルアミドゲルの製造方法においては、末端をビニル化した一本鎖核酸とアクリルアミドとの共重合割合、及びその後の複合体とアクリルアミドとの重合割合を調整することで適宜変化させることができる。
ゲルの網目構造に固定化する一本鎖核酸量は、上記semi-IPN型アクリルアミドゲルの製造方法においては、末端をビニル化した一本鎖核酸とアクリルアミドとの共重合割合、及びその後の複合体とアクリルアミドとの重合割合を調整することで適宜変化させることができる。
[核酸応答性]
上記本発明のゲルは、核酸応答性を示す。本発明において核酸応答性とは、核酸塩基対形成に伴う水の排除機構に基づく物である。このゲルの核酸応答性について以下に詳説する。
上記本発明のゲルは、核酸応答性を示す。本発明において核酸応答性とは、核酸塩基対形成に伴う水の排除機構に基づく物である。このゲルの核酸応答性について以下に詳説する。
ゲル内を拡散してきた標的(ターゲット)核酸は、ゲル内に固定化されたプローブ核酸と相補的な塩基配列を有する場合には、塩基対を形成する。その結果、ゲルは収縮する。この現象は、塩基対を形成した核酸が一本鎖の状態と比較して強く脱水するため、水分子がゲル外部へ排除され、結果としてゲルが収縮した事に主に起因すると考えられる。しかし、標的(ターゲット)核酸が相補的な塩基配列を有しない場合には、塩基対を形成せず、体積変化は起こらない。
また、この現象により、従来は困難であった「標的遺伝子の特異的な検出(あるいは標的遺伝子に対する特異的な応答)」という特性を持つ新しいインテリジェントマテリアルが実現される。本発明のゲルは、その架橋点には分子認識機構が存在せず、標的分子に対するプローブ分子がゲルの構成成分として組み込まれている。この様な「全く新しい構造的特徴を有するゲル」が、「標的分子に対して迅速な応答を示している」点が本発明の大きな特徴である。
[核酸の検出方法]
本発明の核酸の検出方法は、上記本発明のゲルに、被検体核酸を含浸させ、前記ゲルに固定化されている一本鎖核酸と前記被検体核酸のハイブリダイゼーションの有無を前記ゲルの体積の変化で検出することを特徴とするものである。被検体核酸、即ち、ゲルに固定化されたプローブとなる一本鎖核酸が塩基対を形成する標的核酸は、二本鎖、三本鎖を問わない。標的となる核酸としては、DNA、RNA,またはPNA等の人工核酸全般(核酸分子内の糖−リン酸ジエステル骨格を、エステル、アミド等のより安定な骨格に変換した基質アナログ全般)を用いる事が可能である。
本発明の核酸の検出方法は、上記本発明のゲルに、被検体核酸を含浸させ、前記ゲルに固定化されている一本鎖核酸と前記被検体核酸のハイブリダイゼーションの有無を前記ゲルの体積の変化で検出することを特徴とするものである。被検体核酸、即ち、ゲルに固定化されたプローブとなる一本鎖核酸が塩基対を形成する標的核酸は、二本鎖、三本鎖を問わない。標的となる核酸としては、DNA、RNA,またはPNA等の人工核酸全般(核酸分子内の糖−リン酸ジエステル骨格を、エステル、アミド等のより安定な骨格に変換した基質アナログ全般)を用いる事が可能である。
ゲルが応答性を示す条件としては、ゲル内のプローブ核酸と標的核酸が、相補性の場合に二本鎖を形成する条件であれば、塩の濃度や種類、緩衝液の濃度や種類、温度、標的核酸濃度等は問わない。即ち、公知の一般的なハイブリダイゼーション条件で良い。具体的には、例えば、塩:100mM MgCl2、緩衝液:10mMTris-HCl (pH7.4)、温度:20℃、標的核酸濃度:0.1mMであることができる。
本発明の核酸の検出方法では、プローブ一本鎖核酸と被検体核酸のハイブリダイゼーションの有無をゲル体積の変化を測定することで検知することができるが、ゲル体積の変化は、例えば、実体顕微鏡を用いる観察により検出することができる。
以下本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
1) 使用試薬
DNA(5'-GCTGGTGGC-3'、 H2N-5'-GCCACCAGC-3')はシグマジェノシスジャパン株式会社(北海道)よりHPLC精製グレード品として購入した。購入したDNAはまず滅菌水に溶解し、260nmにおける吸光度を測定した後、最近接塩基対法に基づいて算出した吸光係数より濃度を算出した。その他の試薬は全て市販の特級試薬を用いた。
1) 使用試薬
DNA(5'-GCTGGTGGC-3'、 H2N-5'-GCCACCAGC-3')はシグマジェノシスジャパン株式会社(北海道)よりHPLC精製グレード品として購入した。購入したDNAはまず滅菌水に溶解し、260nmにおける吸光度を測定した後、最近接塩基対法に基づいて算出した吸光係数より濃度を算出した。その他の試薬は全て市販の特級試薬を用いた。
2) メタクリロイルオキシスクシンイミドの合成
1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(14.5g)をジクロロメタン(40mL)に添加した溶液(溶液A)、及びメタクリル酸(4.03g)、N-ヒドロキシスクシンイミド(5.22g)、4-ジメチルアミノピリジン(2.80g)及びピリジン(10mL)をジクロロメタン(40mL)に溶解した混合溶液(溶液B)を調製した。氷浴下で溶液Bに溶液Aを滴下し、得られた白濁溶液を濾過した。その後濾液の脱水、酢酸エチル添加、濾過(濾液回収)、エバポレーションを3回繰り返す事によってメタクリロイルオキシスクシンイミドを得た。
1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(14.5g)をジクロロメタン(40mL)に添加した溶液(溶液A)、及びメタクリル酸(4.03g)、N-ヒドロキシスクシンイミド(5.22g)、4-ジメチルアミノピリジン(2.80g)及びピリジン(10mL)をジクロロメタン(40mL)に溶解した混合溶液(溶液B)を調製した。氷浴下で溶液Bに溶液Aを滴下し、得られた白濁溶液を濾過した。その後濾液の脱水、酢酸エチル添加、濾過(濾液回収)、エバポレーションを3回繰り返す事によってメタクリロイルオキシスクシンイミドを得た。
3) ビニル化DNAの合成
上記で得られたメタクリロイルオキシスクシンイミド(32.5μmol)を溶解したジメチルスルホキシド(150μL)と、H2N-5'-GCCACCAGC-3'(0.65μmol)を溶解した炭酸二ナトリウム/炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5、650μL)を25℃で18時間混合した。得られた混合溶液をHPLC(逆相カラム、0.1Mトリエチルアミン-氷酢酸:100→73%、アセトニトリル:0→27%、30分)によって分取し、凍結乾燥する事によって5'末端がビニル化されたDNAを得た。
上記で得られたメタクリロイルオキシスクシンイミド(32.5μmol)を溶解したジメチルスルホキシド(150μL)と、H2N-5'-GCCACCAGC-3'(0.65μmol)を溶解した炭酸二ナトリウム/炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5、650μL)を25℃で18時間混合した。得られた混合溶液をHPLC(逆相カラム、0.1Mトリエチルアミン-氷酢酸:100→73%、アセトニトリル:0→27%、30分)によって分取し、凍結乾燥する事によって5'末端がビニル化されたDNAを得た。
4) DNA-ポリアクリルアミドコンジュゲートの合成
所望の最終濃度になるように5'末端ビニル化DNA及びアクリルアミド(AAm)のストック溶液を混合し、10分間窒素を添加した。DNAの最終モル分率は、0.31mol%である。その後、過硫酸アンモニウム(APS、最終濃度:3mM)及びN,N,N ',N '-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED、最終濃度:6mM))を添加し、窒素雰囲気下において重合反応を開始した。反応温度は20℃、反応時間は18℃である。反応終了後、重合溶液をゲル濾過し、高分子量成分が含まれる分取フラクションを透析し、凍結乾燥する事によって、DNA-ポリアクリルアミドコンジュゲートを得た。ここで、モノマーはアクリルアミド及びビニル化DNAのみであること、ポリアクリルアミドの260nmにおける吸光度は0であること、ゲル濾過で分取した高分子量成分は260nmにおいて非常に高い吸光度を持つことから、得られた物質はポリアクリルアミドにDNAが組み込まれた高分子量物質、すなわちDNA-ポリアクリルアミドコンジュゲートであった。
所望の最終濃度になるように5'末端ビニル化DNA及びアクリルアミド(AAm)のストック溶液を混合し、10分間窒素を添加した。DNAの最終モル分率は、0.31mol%である。その後、過硫酸アンモニウム(APS、最終濃度:3mM)及びN,N,N ',N '-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED、最終濃度:6mM))を添加し、窒素雰囲気下において重合反応を開始した。反応温度は20℃、反応時間は18℃である。反応終了後、重合溶液をゲル濾過し、高分子量成分が含まれる分取フラクションを透析し、凍結乾燥する事によって、DNA-ポリアクリルアミドコンジュゲートを得た。ここで、モノマーはアクリルアミド及びビニル化DNAのみであること、ポリアクリルアミドの260nmにおける吸光度は0であること、ゲル濾過で分取した高分子量成分は260nmにおいて非常に高い吸光度を持つことから、得られた物質はポリアクリルアミドにDNAが組み込まれた高分子量物質、すなわちDNA-ポリアクリルアミドコンジュゲートであった。
5) semi-IPN型DNAコンジュゲートハイドロゲルの合成
20mM Tris緩衝液(pH7.4)によって調製したDNA-ポリアクリルアミドコンジュゲート(0.7mM)、AAm(反応体積の10wt%)及びN,N'-メチレンビスアクリルアミド(AAmに対して0.5wt%)の混合溶液に、過硫酸アンモニウム(最終濃度:8mM)及びN,N,N ',N '-テトラメチルエチレンジアミン(最終濃度:80mM)を添加し、窒素雰囲気下において重合する事によって、DNAコンジュゲートハイドロゲルを合成した(反応温度:20℃、反応時間:24h、反応体積:20μL)。反応終了後、得られたゲルを純水中において充分に浸漬することによって、未反応DNA及び重合開始剤をゲル内より除去した。得られたゲルを水中に浸漬しても、高分子量成分は溶出していないことはゲル濾過により明らかであったので、DNA-ポリアクリルアミドコンジュゲートはゲルの中に完全に保持されていると言える。
20mM Tris緩衝液(pH7.4)によって調製したDNA-ポリアクリルアミドコンジュゲート(0.7mM)、AAm(反応体積の10wt%)及びN,N'-メチレンビスアクリルアミド(AAmに対して0.5wt%)の混合溶液に、過硫酸アンモニウム(最終濃度:8mM)及びN,N,N ',N '-テトラメチルエチレンジアミン(最終濃度:80mM)を添加し、窒素雰囲気下において重合する事によって、DNAコンジュゲートハイドロゲルを合成した(反応温度:20℃、反応時間:24h、反応体積:20μL)。反応終了後、得られたゲルを純水中において充分に浸漬することによって、未反応DNA及び重合開始剤をゲル内より除去した。得られたゲルを水中に浸漬しても、高分子量成分は溶出していないことはゲル濾過により明らかであったので、DNA-ポリアクリルアミドコンジュゲートはゲルの中に完全に保持されていると言える。
6) DNAコンジュゲートハイドロゲルのDNAに対する応答性の測定
精製したゲルを10mM Tris-HCl (pH 7.4)/100mM MgCl2緩衝液中において数日間浸漬し、平衡膨潤させた。その後、0.1mMの標的DNA (5'-GCTGGTGGC -3')を含む10mM Tris-HCl (pH 7.4)/100mM MgCl2緩衝液(1.6mL)中にゲルを浸漬し、その膨潤度の時間変化を20℃で光学顕微鏡にて測定した。
精製したゲルを10mM Tris-HCl (pH 7.4)/100mM MgCl2緩衝液中において数日間浸漬し、平衡膨潤させた。その後、0.1mMの標的DNA (5'-GCTGGTGGC -3')を含む10mM Tris-HCl (pH 7.4)/100mM MgCl2緩衝液(1.6mL)中にゲルを浸漬し、その膨潤度の時間変化を20℃で光学顕微鏡にて測定した。
7) ポリアクリルアミドハイドロゲルの合成、及びそのDNAに対する応答性の測定
比較のため、DNA-ポリアクリルアミドコンジュゲートを含まないハイドロゲル(=ポリアクリルアミドハイドロゲル)を同様の条件によって調製・精製し、標的DNAを含む緩衝液中における膨潤度変化を同様の手順に従い測定した。
比較のため、DNA-ポリアクリルアミドコンジュゲートを含まないハイドロゲル(=ポリアクリルアミドハイドロゲル)を同様の条件によって調製・精製し、標的DNAを含む緩衝液中における膨潤度変化を同様の手順に従い測定した。
8) DNAコンジュゲートハイドロゲルのDNAに対する応答性の測定結果
緩衝液中において平衡膨潤させたDNAコンジュゲートハイドロゲル及びポリアクリルアミドハイドロゲルを、約10倍量の標的DNAを含む緩衝液に浸漬させ、その膨潤度の時間変化を測定した。その結果、ポリアクリルアミドハイドロゲル(B)はほとんど応答を示さないが、DNAコンジュゲートハイドロゲル(A)は20%程度その体積が収縮する事を見出した(図 2)。この現象は、二本鎖を形成したDNAが一本鎖の状態と比較して強く脱水するため、水分子がゲル外部へ排除され、結果としてゲルが収縮した事に主に起因すると考えられる。
緩衝液中において平衡膨潤させたDNAコンジュゲートハイドロゲル及びポリアクリルアミドハイドロゲルを、約10倍量の標的DNAを含む緩衝液に浸漬させ、その膨潤度の時間変化を測定した。その結果、ポリアクリルアミドハイドロゲル(B)はほとんど応答を示さないが、DNAコンジュゲートハイドロゲル(A)は20%程度その体積が収縮する事を見出した(図 2)。この現象は、二本鎖を形成したDNAが一本鎖の状態と比較して強く脱水するため、水分子がゲル外部へ排除され、結果としてゲルが収縮した事に主に起因すると考えられる。
遺伝子診断、遺伝子検査、遺伝子治療等の医療分野において「標的遺伝子を特異的に検出する(あるいは標的遺伝子に特異的に応答する)技術」の確立が求められている。本発明では、次世代型インテリジェントマテリアルとして注目されている「あるシグナルに応答して体積が変化するゲル」に注目し、従来全く報告が無かった「核酸(DNAやRNA)に応答する分子応答性ゲル」の開発に成功した。この発明により、「ゲルの体積変化特性(センシング機能)や物質保持特性(リザーバー機能)を最大限に利用した遺伝子センシングデバイス及び遺伝子治療用薬物キャリヤー」の実現が可能となると考えられる。つまり、この核酸応答性ゲルは、様々な医療分野における幅広い応用可能性を秘めた新しいインテリジェントマテリアルになる新材料である。
Claims (12)
- 網目構造体からなるゲルであって、網目構造体を構成する高分子化合物に一本鎖核酸が結合により固定化されており、かつ一本鎖核酸が固定化されている高分子化合物の少なくとも一部は網目構造体の内部に存在することを特徴とするゲル。
- 網目構造体を構成する高分子化合物が有機高分子化合物である請求項1に記載のゲル。
- 有機高分子化合物が、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N'-ジメチルアクリルアミド、及びN-ビニルピロリドンから成る群から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーを含むモノマーから得られるポリマーである請求項2に記載のゲル。
- 一本鎖核酸がDNA、RNA、またはPNAである請求項1〜3のいずれか1項に記載のゲル。
- 一本鎖核酸の末端が高分子化合物に固定化されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のゲル。
- 一本鎖核酸は、共有結合またはイオン結合により高分子化合物に固定化されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のゲル。
- 一本鎖核酸は、塩基数が1〜60の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載のゲル。
- 網目構造体以外のゲルの構成成分が水又は有機溶媒である請求項1〜7のいずれか1項に記載のゲル。
- 一本鎖核酸の含有量が、ゲルの主鎖を形成するモノマー成分に対して0.01mol%〜1mol%の範囲である請求項1〜8のいずれか1項に記載のゲル。
- 核酸応答性を示す請求項1〜9のいずれか1項に記載のゲル。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載のゲルに、被検体核酸を含浸させ、前記ゲルに固定化されている一本鎖核酸と前記被検体核酸のハイブリダイゼーションの有無を前記ゲルの体積の変化で検出することを特徴とする核酸の検出方法。
- ゲル体積の変化を実体顕微鏡で検出する請求項11に記載の方法。
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---|---|---|---|---|
JP2007244374A (ja) * | 2006-01-13 | 2007-09-27 | Japan Science & Technology Agency | 核酸応答性ゲルおよびその製造方法ならびにその利用 |
WO2008084571A1 (ja) * | 2007-01-12 | 2008-07-17 | Japan Science And Technology Agency | 核酸応答性ゲルおよびその製造方法ならびにその利用 |
US8586372B2 (en) | 2007-05-07 | 2013-11-19 | A School Corporation Kansai University | Molecule-responsive gel particles, method of production of the same, and use thereof |
US8846412B2 (en) | 2011-02-28 | 2014-09-30 | Japan Science And Technology Agency | Multiple substances-responsive gel, method for producing same, and utilization of same |
JP2014210915A (ja) * | 2013-04-01 | 2014-11-13 | 独立行政法人産業技術総合研究所 | 強酸を必要としない新規な自励振動ゲル |
JPWO2013024821A1 (ja) * | 2011-08-12 | 2015-03-05 | 国立大学法人 筑波大学 | 並列反応用懸濁液、並列反応方法およびスクリーニング方法 |
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-
2003
- 2003-09-29 JP JP2003338191A patent/JP2005106533A/ja active Pending
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