車両の制動を行なう為のディスクブレーキとして従来から、種々の構造のものが知られている。又、パーキング機構付のディスクブレーキも、例えば特許文献1〜4に記載されている様に、従来から各種提案され、更には実際に使用されている。図11〜13は、このうちの特許文献1に記載されたパーキング機構付ディスクブレーキを示している。車輪と共に回転するロータ1の両側に1対のパッド2a、2bを、サポート3に支持した状態で配置している。又、このサポート3にキャリパ4を、上記ロータ1の軸方向に変位自在に支持している。そして、このキャリパ4のインナ側(車両への組み付け状態で幅方向中央側で、図12の右側)の内部に設けたシリンダ孔5内に嵌装したピストン6と、このキャリパ4のアウタ側(車両への組み付け状態で幅方向外側で、図12の左側)に設けた爪部7とにより上記両パッド2a、2bを、上記ロータ1の軸方向両側から挟持している。
又、パーキング機構を構成する為のロッド8を、上記キャリパ4の、上記シリンダ孔5の奥端を仕切るシリンダ底部9を液密に貫通してこのシリンダ孔5外に突出する状態で設けている。上記ロッド8は、上記ロータ1に近付く方向への軸方向移動に伴って、上記ピストン6を介してインナ側のパッド2aを上記ロータ1のインナ側面に押圧する。図示の例では、このピストン6と上記ロッド8のロータ1側部分とを、複数の部品を組み合わせて成る間隙調整機構10を介して結合する事により、上記両パッド2a、2bのライニング11、11の摩耗に拘らず、パーキング機構の非作動時に於ける、このライニング11、11と上記ロータ1の側面との間の間隙が一定に保たれる様にしている。
更に、上記キャリパ4のシリンダ底部9外側(図12の右側)に固定したアンカ部材12と上記ロッド8との間に、このロッド8を上記ピストン6に向け押し付ける為のカム機構13を設けている。このカム機構13を構成する為、上記アンカ部材12に上記ロッド8と同心に設けた円孔14に、カム部材15に設けた回転軸部16を、回転自在に挿通している。そして、このカム部材15のロータ側端部に設けたカム板部17と上記アンカ部材12との間に、複数個のボール18、18を挟持している。上記カム板部17と上記アンカ部材12との互いに対向する面で上記各ボール18、18を挟持した部分には、軸方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化するカム溝19a、19bを形成している。更に、上記回転軸部16のうちで上記アンカ部材12から反ロータ側に突出した部分に、パーキングレバー20の基端部を結合固定している。
上述の様に構成するパーキング機構付ディスクブレーキの場合、サービスブレーキ(走行している車両を減速若しくは停止させる為のブレーキ)の使用時には、前記シリンダ孔5内への圧油の送り込みにより、このシリンダ孔5から上記ピストン6を突出させる。この結果、このピストン6がインナ側のパッド2aを前記ロータ1のインナ側面に押し付けると同時に、上記キャリパ4が前記サポート3に対しインナ側に変位する。そして、このキャリパ4の爪部7が、アウタ側のパッド2bを上記ロータ1のアウタ側面に押し付ける。この結果、このロータ1が1対のパッド2a、2bにより両側から強く挟持されて、制動が行なわれる。
これに対して、パーキングブレーキ時には、パーキングケーブル21を引っ張る事により、上記パーキングレバー20を介して前記カム部材15を回動させる。この結果、上記各ボール18、18が、転動しつつ上記各カム溝19a、19bの浅い部分に移動し、これら各カム溝19a、19bを形成した、上記カム板部17と上記アンカ部材12との互いに対向する面同士の間隔を広げる。そして、このカム板部17がロータ側に変位して、このカム板部17が前記ロッド8を介して上記ピストン6をロータ側に押す。この結果、上記シリンダ孔5内に圧油を送り込んだ場合と同様に、上記ロータ1が1対の上記パッド2a、2bにより両側から強く挟持されて、制動が行なわれる。
又、図14は、特許文献2に記載されたパーキング機構付ディスクブレーキを示している。この従来構造の第2例の場合、キャリパ4aに結合固定したアンカ部材12aとピストン6aとの間に、間隙調整機構10aとトグル機構22とを、互いに直列に配置している。このトグル機構22は、伸長に伴って上記ピストン6aを、上記間隙調整機構10aを介してロータ1に向け押圧し、制動を行なわせる。この様なトグル機構22は、互いに突き合わせた1対のリンク腕23a、23bのうちの一方(図14の左方)のリンク腕23aにパーキングレバー20aの基端部を結合し、このパーキングレバー20aにより、上記1対のリンク23a、23bの反対側端部同士の距離を拡縮する様にしている。尚、上記パーキングレバー20aの基端部を上記リンク腕23aに対し結合している結合軸は、揺動及び図14の上下方向に変位自在である。
又、特許文献3に記載されたパーキング機構付ディスクブレーキの場合には、キャリパの一部でピストンの底部に対向する部分に回転自在に支持したカムに設けた凹溝と、アジャストスクリュの一端面に設けた凹部との間に、リンクを設けている。このリンクの両端部は、半球面状に形成している。パーキングブレーキの作動時には、操作レバーを操作する事により上記カムを回転させ、このカムにより上記ピストンを、上記リンクと間隙調整機構とを介してロータに向け押圧する。又、上記アジャストスクリュの一端寄り部分に設けた鍔部の径方向反対側2個所位置に形成した1対の凸部を、上記キャリパの一部で上記ピストンの底部と対向する部分に形成した1対の凹溝に係合させている。この構成により、上記アジャストスクリュが、上記キャリパ内で回転する事を防止している。
又、特許文献4に記載された構造の場合には、上記特許文献3に記載された構造と同様の構造で、カム軸の軸方向中間部に、このカム軸の中心軸に対し偏心した状態で小径の円柱部を設ける事によりカム部を構成しており、このカム部と、アジャストスクリュの端部に設けた凹部との間に、リンクを設けている。又、このリンクの先端部に設けた山形の突部をこの凹部に係合させると共に、このリンクの基端部に設けた凹溝を上記カム部に係合させている。
更に、非特許文献1には、増力機構として使用される各種トグル機構の構造が記載されている。但し、上記非特許文献1の記載は、トグル機構を簡易型のプレス装置に使用する事を主としている。
又、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1〜4及び非特許文献1の他に、特許文献5がある。
上述の様なパーキング機構付ディスクブレーキのうち、図11〜13に示した、特許文献1に記載された構造の場合、十分に制動力を確保する為には各カム溝19a、19bの傾斜を緩やかにするか、パーキングレバー20の長さ寸法を大きくする必要がある。但し、前者の構造を採用すると、必要とされるこのパーキングレバー20の回転角(レバー回転角)が大きくなる。反対に、後者の構造を採用すると、このパーキングレバー20の先端部の変位長さが長くなる。この為、何れの構造を採用した場合でも、パーキングケーブルのストロークが長くなってしまうと言う問題がある。この点を改善する為に、各カム溝19a、19bの傾斜を、パーキング機構の作動初期段階で、パッドとロータとの間の隙間を埋める状態で各ボール18、18が当接する部分の角度は急にし、作動終期段階でパッドがロータを強く狭持する際に上記各ボールが当接する部分の角度は緩やかになる様に、傾斜角度を円周方向に2段階変化させる場合がある。但し、上記各カム溝19a、19bに関しては、複数個のボール18、18が同時に転動しなければならない為、高い精度の加工が必要になる。しかも、パッドとロータとの間の隙間が設定よりも小さくなると、各カム溝19a、19bの傾斜が未だ急な部分に上記各ボール18、18が存在する状態で、強く狭持する必要が生じてしまい、十分な制動力を得るのが困難になってしまう。
これに対して、図14に示した、特許文献2に記載された様な、トグル機構22によりピストン6aを押圧する構造の場合、このトグル機構22の使用角度を適切に規制すれば、このトグル機構22と、パーキングレバー20aとの2段構造によりレバー比が高くなり、制動力を確保し易い。但し、上記特許文献2に記載された構造の場合には、パーキングレバー20aとリンク腕23bとの接点が、フローティング状態で安定せず、しかも、パーキングケーブルからの捻り力によるパーキングレバー20aの変位も発生する為、安定した制動力を得る事が難しい。
又、特許文献2に記載された構造の場合、キャリパ4aの奥端部(図14の右端部)にハウジング24を結合する際に、このハウジング24をこのキャリパ4aに、簡単に組み付ける事を考慮してはいない。即ち、特許文献2に記載された構造の場合には、このパーキング機構付ディスクブレーキを組み立てた状態で上記アジャストスクリュ25に、ばね26により反ロータ側に向く弾力を付与している。そして、この弾力に基づき、このアジャストスクリュ25と前記一方のリンク腕23aとが常に十分な当接圧で当接し合う様にしている。しかし、このアジャストスクリュ25は、上記キャリパ4a側に設けられており、このキャリパ4aに上記ハウジング24を結合する際には、このアジャストスクリュ25が、上記ばね26の弾力に基づいて、上記キャリパ4a内から飛び出す傾向になる。この為、上記アジャストスクリュ25がこのキャリパ4a内から飛び出す事を防止しつつ、このキャリパ4aに上記ハウジング24を組み付ける必要がある。この様にしてパーキング機構付ディスクブレーキを組み立てる作業は手間を要し、このパーキング機構付ディスクブレーキの製造コストが嵩む原因となる。
又、特許文献3、4に記載された構造の場合には、アジャストスクリュと、リンクと、カム等とを含む構成各部材を、単一の部材であるキャリパ内に設けている。この為、例えば、サービスブレーキ時でのピストンのロータに対する押圧力を車両の種類に応じて異ならせる為に、このピストン及びシリンダ孔の直径を変える場合に、上記キャリパを総て新設する必要が生じて、コストが嵩む原因となる。又、ピストンと、アジャストスクリュと、リンクと、ばねとを含む多くの構成部材を、上記キャリパの内側に片側のみから組み付ける必要がある為、パーキング機構付ディスクブレーキの組立作業が面倒になり、このパーキング機構付ディスクブレーキのコストが更に嵩む原因となる。
又、特許文献5に記載された構造の場合には、キャリパの奥端部に別体の部材であるブーツを外嵌固定すると共に、このブーツの内側に軸受部とカムとリンクとを設けており、パーキング機構としてはシンプル化されている。但し、上記特許文献5に記載された構造の場合には、キャリパとブーツとの間から水等の異物が入り込むと言う懸念が拭いされていない。
又、非特許文献1には各種トグル機構が記載されているが、このうちの適切なトグル機構を改良して他の構成部品と適切に組み合わせ、実用的なパーキング機構付ディスクブレーキを得る事に就いては示唆されていない。
特開2001−12518号公報
特開2001−20983号公報
特開平10−153227号公報
実開平4−105228号公報
特公昭50−32375号公報
芦葉清三郎著「機械運動機構」技報堂出版株式会社、1957年10月15日、p.133〜139
図1〜10は、本発明の実施例1を示している。車輪と共に回転するロータ1の両側に1対のパッド2a、2bを、サポート3aに支持した状態で配置している。又、キャリパ4bに固定した1対のガイドピン27、27を上記サポート3aに設けた1対のガイド部28、28に摺動自在に挿入する事により上記キャリパ4bを、上記ロータ1の軸方向に変位自在に支持している。このキャリパ4bは、このロータ1の外周を跨ぐ状態で配置している。そして、このキャリパ4bのインナ側(図1〜3、5、10の右側)の内部に、上記ロータ1の軸方向に設けたシリンダ孔5a内に摺動自在に嵌合したピストン6bと、上記キャリパ4bのアウタ側(図1〜3、5、10の左側)に設けた爪部7aとにより上記両パッド2a、2bを、上記ロータ1の軸方向両側から挟持している。又、上記ピストン6bは、中空円筒状のリングピストン29の内側に有底円筒状のプラグピストン30を組み合わせて一体に結合して成る。
サービスブレーキの使用時には、上記シリンダ孔5a内への圧油の送り込みにより、このシリンダ孔5aから上記ピストン6bを突出させる。この結果、このピストン6bがインナ側のパッド2aを前記ロータ1のインナ側面に押し付けると同時に、上記各ガイドピン27、27と上記各ガイド部28、28との摺動に基づき、上記キャリパ4bが前記サポート3aに対しインナ側に変位する。そして、このキャリパ4bの爪部7aが、アウタ側のパッド2bを上記ロータ1のアウタ側面に押し付ける。この結果、このロータ1が1対のパッド2a、2bにより両側から強く挟持されて、制動が行なわれる。
上述の様なディスクブレーキにパーキングブレーキ機構を設ける為、本例の場合には、上記キャリパ4bのシリンダ底壁部70にハウジング31を、それぞれが締結部材である1対のボルト32、32により結合固定している。このハウジング31は、ロータ側に開口した孔部33を備えた有底筒状で、この孔部33の底部を断面略半円形としている。又、このハウジング31のロータ側端部の外周面の径方向反対側2個所位置に、それぞれが外径側に突出する1対の取付部34、34を形成すると共に、これら各取付部34、34に軸方向に貫通する通孔35、35を形成している。又、上記ハウジング31の一部に、上記孔部33の中心軸に対し直交する方向の第二の孔部36を、この孔部33の奥部に通じさせる状態で形成すると共に、この第二の孔部36の軸方向一端を、上記ハウジング31の片側面(図1、3、8、10の表側面、図2の下側面、図4の左側面)に開口させている。又、本例の場合には、キャリパ底壁部70の外端面(図5、10の右端面)で、このキャリパ底壁部70の中心部に形成した通孔71の開口周辺部に円筒状凸部83を、この通孔71と同心に設けている。そして、この円筒状凸部83を、上記ハウジング31の孔部33の開口端部にがたつきなく内嵌自在としている。
又、上記キャリパ4bのシリンダ側壁端部には、上記ハウジング31を介して、ケーブル案内板37を結合固定している。このケーブル案内板37は、鋼板等の金属板に打ち抜き加工及び塑性加工を施す等により造ったもので、基板部38と、この基板部38の幅方向一端縁(図1〜3、5、10の左端縁)の長さ方向(図1、3〜5、10の上下方向、図2の表裏方向)両端部から直角に折り曲げる状態で連続した1対の取付板部39、39と、この基板部38の幅方向他端寄り部分(図1〜3、5、10の右端寄り部分)で長さ方向一端縁(図1、3〜5、10の下端縁、図2の裏側端縁)から直角に折り曲げる状態で連続した案内部40とを備える。この案内部40の先端部には巾着状若しくはΩ形の切り欠き63を形成しており、この切り欠き63が、後述するパーキングケーブルを案内するガイド部としての役目を有する。そして、上記各取付板部39、39に設けた通孔41、41と、上記ハウジング31に設けた各取付部34、34の通孔35、35とに挿通した上記各ボルト32、32の雄ねじ部を、前記キャリパ4bのシリンダ側壁端部に設けた1対のねじ孔42、42に螺合し、更に緊締している。この構成により、上記キャリパ4bに、上記ケーブル案内板37とハウジング31とが、それぞれ結合固定される。
又、本例の場合には、図5〜6に示す様に、上記ハウジング31の底部と前記ピストン6bの内部との間に、トグル機構22aと間隙調整機構10bとを、この底部の側から順番に、互いに直列に配置している。このうちの間隙調整機構10bは、アジャストスクリュ25a、アジャストナット43、ばねホルダ44、スラストベアリング45等により構成されるもので、前記各パッド2a、2bのライニング11、11の摩耗に伴って伸張する。そして、パーキング機構の非作動状態でのこれら各パッド2a、2bのライニング11、11と前記ロータ1の側面との間の間隙が過大になる事を防止する。又、前記プラグピストン30及びリングピストン29の外周面と、前記シリンダ孔5aの内周面との間にシール部材48a、48bを、それぞれ設けている。上記プラグピストン30と、間隙調整機構10bのうちでアジャストスクリュ25aを除く各構成部材とを組み合わせたものは、間隙調整機構10bの部分組立品(サブアッセンブリ)となる。
一方、前記トグル機構22aは、カム軸49と、リンク50とを備え、伸張に伴って前記ピストン6bを、上記間隙調整機構10bを介して、前記ロータ1のインナ側に向け押圧する。この様なトグル機構22aの伸縮は、パーキングレバー20bの揺動に基づいて行なわれる。この為に本例の場合には、このパーキングレバー20bの基端部に、前記カム軸49を結合固定している。このカム軸49は、図7に示す様に、基端部(図7の下端部)に雄ねじ部51を、先端寄り部分(図7の上端寄り部分)に円柱部52を、中間部に、この円柱部52の外径よりも外径が小さくなった小径段部53を、それぞれ形成している。そして、上記円柱部52の中間部で円周方向片半部を除去する事により、この中間部を、円周方向一端に凸部である突条部54(図5、6、9)を形成したカム部55としている。図示の例の場合には、このカム部55の断面形状をほぼ半円としている。又、この突条部54の外周面の断面形状を円弧形としている。
又、本例の場合には、上記カム部55の外周面で、上記突条部54の外周面の両端縁から連続する部分に、この突条部54の外周面の曲率半径よりも大きな曲率半径を有する第一、第二の曲面部56、57を設けている。このうちの第一の曲面部56は、上記円柱部52で上記カム部55から外れた部分の外周面と同一の円筒面上に位置している。又、上記第二の曲面部57は、上記カム部55を設ける為に形成した凹部の底面を構成する部分で、このカム部55と反対側に曲率中心を有する。そして、上記突条部54の外周面の両端縁と上記第一、第二の曲面部56、57とを滑らかに連続させている。即ち、この突条部54を構成する円弧の両端と、これら第一、第二の曲面部56、57を構成する円弧の端とを、微分可能に連続させている。
この様なカム軸49は、前記円柱部52を前記ハウジング31に設けた第二の孔部36に挿通すると共に、前記小径段部53及び雄ねじ部51を、このハウジング31の片側面から突出させている。又、上記円柱部52の外周面と上記第二の孔部36の内周面との間にニードル軸受58を設けている。このニードル軸受58の中心軸は、前記ピストン6bの摺動方向に対し直交する方向に存在する。そして、このニードル軸受58により、上記ハウジング31に上記カム軸49を、上記ピストン6bの摺動方向に対し直交する方向に存在する中心軸を中心とする回転自在に支持している。
又、上記小径段部53の円周方向一部に平坦部60(図7)を形成している。そして、前記パーキングレバー20bの基端部に形成した、内周面を欠円筒面とした図示しない孔部に、上記小径段部53を、この孔部に設けた平坦部に上記小径段部53の平坦部60を係合させつつ内嵌している。又、上記パーキングレバー20bの片面から突出した上記カム軸49の雄ねじ部51にナット59を螺合し、更に緊締している。この構成により、上記カム軸49の基端部に上記パーキングレバー20bの基端部を結合固定すると共に、上記ハウジング31にこのパーキングレバー20bを、上記カム軸49の中心軸をその中心とする揺動変位を自在に支持している。
上記パーキングレバー20bは、鋼板等の金属板に打ち抜き加工及び塑性加工を施す等により造ったもので、この金属板を折り曲げた後、その一部をU字形に折り返す事により、先端部に互いに平行な1対の支持板部61、61を形成している。そして、これら両支持板部61、61の互いに整合する部分に、U字形の切り欠き62、62を形成している。車両への組み付け状態ではこれら両切り欠き62、62に、前記ケーブル案内板37の切り欠き63内を挿通した、図示しないパーキングケーブルの端部に固定した係止駒を係止する。駐車の際にこのパーキングケーブルを引っ張ると、上記パーキングレバー20bが、上記カム軸49の中心軸を中心として図1、3の時計方向に揺動し、前記トグル機構22aを伸張させる。
又、上記パーキングレバー20bの片側で前記ナット59の周囲には、捩りコイルばね64を設けている。又、この捩りコイルばね64の両端を、前記ハウジング31の外周面に固定した係止ピン65と、上記パーキングレバー20bの基端部に一体形成した係止突部66とに係止している。この構成により、上記パーキングケーブルへの引っ張り動作を解除した状態で、上記パーキングレバー20bが、図1〜5に示した非作動時の状態に復帰する様にしている。
一方、前記アジャストスクリュ25aは、基端面(図5、6の右端面)に凹溝67を、先端部(図5の左端部)の外周面に雄ねじ部68を、それぞれ設けている。このうちの凹溝67は、断面略V字形で、その厚さ方向両端が上記アジャストスクリュ25aの外周面に達している。又、このアジャストスクリュ25aの基端部外周面でこの凹溝67を両側から挟む径方向反対側2個所位置に、1対の鍔部69、69を形成している。そして、前記キャリパ4bのシリンダ底壁部70の中心部に形成した通孔71に、上記アジャストスクリュ25aの中間部に設けた円柱部72を挿通すると共に、前記ハウジング31に設けた孔部33内に、上記キャリパ4b外に突出したアジャストスクリュ25aの基端部を挿入している。尚、このアジャストスクリュ25aに設けた上記各鍔部69、69は、上記孔部33内でのこのアジャストスクリュ25aを案内支持する役目を有する。又、このアジャストスクリュ25aに設けた円柱部72の外周面と上記シリンダ側壁部に形成した通孔71の内周面との間に設けたOリング73により、これら円柱部72の外周面と通孔71の内周面を油密にシールしている。
又、上記孔部33の開口端部内周面に係止溝74を全周に亙り形成すると共に、この係止溝74に欠円環状の止め輪75を係止している。そして、この止め輪75と上記各鍔部69、69の側面との間に、弾性部材である圧縮コイルばね76を設ける事により、上記アジャストスクリュ25aに、上記孔部33の奥端に向かう方向の弾力を付与している。
又、上記アジャストスクリュ25aの基端面に設けた凹溝67と、前記カム軸49に設けたカム部55との間に、前記リンク50を設けている。このリンク50は、鋼等の金属を異型押し出し成形する等により造ったもので、厚さ方向(図5、6、9の表裏方向)に関して断面形状が変化しない柱状としている。又、このリンク50の基端部(図5、6、9の右端部)の外周面に、厚さ方向全長に亙る凹溝77を設けている。又、上記リンク50の先端部(図5、6、9の左端部)に断面円弧形の凸部である突条部78を、このリンク50の厚さ方向全長に亙り設けている。又、このリンク50の先端寄り部分の外周面で上記突条部78の外周面の両端縁から1対の平面部79a、79bを、滑らかに連続させている。
又、上記アジャストスクリュ25aに設けた凹溝67の底部に上記リンク50の先端部に設けた突条部78を、このリンク50の基端部に設けた凹溝77に前記カム部55に設けた突条部54を、それぞれ突き当てている。そして、上記リンク50を、上記凹溝67とこの突条部54とに係合させている。又、本例の場合には、上記カム部55を設けたカム軸49の半径をr49(図6)とした場合に、上記カム部55に設けた突条部54の外周面の断面形状である円弧の曲率中心を、このカム軸49の中心軸xから0.7r49以上離れた部分に位置させている。
又、上記アジャストスクリュ25aに設けた凹溝67は、底部に設けた断面円弧形の曲面部80と、この曲面部80の両端縁から滑らかに連続した1対の平面部81、81とにより構成している。又、これら1対の平面部81、81同士がなす角度α1 (度)を、上記リンク50の先端寄り部分外周面に設けた1対の平面部79a、79b同士がなす角度
α2 (度)よりも少し大きくしている(α1 >α2 )。又、本例の場合には、これら角度α1 、α2 を、α1 −α2 <20度の関係を満たす様に規制している。又、上記凹溝67の曲面部80の曲率半径r1 (mm)を、上記リンク50の突条部78の外周面の曲率半径r2 (mm)よりも僅かに大きくしている(r1 >r2 )。更に、本例の場合には、上記曲面部80の曲率半径r1 と突条部78の外周面の曲率半径r2 とを、r1 −r2 <1.0mmの関係を満たす様に規制している。そして、上記凹溝67を構成する各平面部81、81に、上記リンク50に設けた各平面部79a、79bを突き当て自在としている。従って、このリンク50は、上記凹溝67内で、所定の角度の範囲(α1 −α2 )での揺動変位が自在となる。又、この凹溝67に設けた各平面部81、81に上記リンク50に設けた各平面部79a、79bを突き当てる事により、前記パーキングレバー20bの揺動変位を規制する。
又、本例の場合には、前記アジャストスクリュ25aの基端部に設けた鍔部69、69のアウタ側側面よりも前記ロータ1側に、上記リンク50の先端部を突き当てる為の凹溝67の底部を位置させている。そして、前記ハウジング31に前記ニードル軸受58とカム軸49とリンク50とアジャストスクリュ25aとを含む部材をハウジング側組立品82として組み付け、前記キャリパ4bに保持している。
上述の様な本例のパーキング機構付ディスクブレーキを製造する場合には、上記キャリパ4bに上記ハウジング31を結合する以前の状態で、このハウジング31に、上記ニードル軸受58、カム軸49、リンク50、アジャストスクリュ25a、圧縮コイルばね76、止め輪75を含む部材を組み付けて、ハウジング側組立品82とする。又、上記カム軸49の基端部に設けた雄ねじ部51に螺合したナット59により、このカム軸49の小径段部53にその基端部を外嵌した上記パーキングレバー20bを、このカム軸49に結合すると共に、このナット59の周囲に配置した捩りコイルばね64の両端を、係止ピン65と上記パーキングレバー20bとに係止する。又、前記キャリパ4bに、このキャリパ4b側の各部材を組み付ける。次いで、図10に示す様に、このキャリパ4bに上記ハウジング側組立品82を、前記ケーブル案内板37と共に、1対のボルト32、32により結合固定する。又、この際、上記キャリパ4bの外端面に設けた円筒状凸部83を、上記ハウジング31の一端面(図1〜3、5、6、8〜10の左端面)に設けた孔部33の開口端部に、がたつきなく内嵌する。本例の場合には、この孔部33が、請求項2に記載した凹部に相当する。その後、前記サポート3a(図1〜5)に設けたガイド部28、28(図1〜3)に、上記キャリパ4b側に設けたガイドピン27、27を摺動自在に挿通した状態で、上記サポート3aに、上記キャリパ4bと、上記ハウジング側組立品82と、上記ケーブル案内板37とを組み付ける。
前述の様に構成し、上述の様な製造方法により組み立てる本例のパーキング機構付ディスクブレーキの場合、駐車時に制動力を発生させる際には、運転席に設置した操作レバーにより図示しないパーキングケーブルを引っ張り、前記パーキングレバー20bを図1、3、5の時計方向に揺動させる。この結果、このパーキングレバー20bの基端部に結合されたカム軸49が、ハウジング31に設けた第二の孔部36の内側で、図5、6の時計方向に回転する。そして、このカム軸49の中心軸と、このカム軸49に設けたカム部55に対するリンク50の基端部に設けた凹溝77の突き当て部と、アジャストスクリュ25aに設けた凹溝67に対するこのリンク50の先端部の突条部78の突き当て部との配列状態を、パーキング機構の非作動状態よりも直線に近くする。この結果、上記リンク50の先端と、上記カム軸49の中心軸との距離が拡がり、このリンク50の先端が上記アジャストスクリュ25aを介して前記ピストン6bを、前記ロータ1の側面に向け押し付ける。そして、このピストン6b及び上記キャリパ4bによりそれぞれ押圧される前記1対のパッド2a、2bが、上記ロータ1を両側から強く挟持し、上記制動力が発生する。
カム軸49とリンク50とを備えたトグル機構22aは、上記パーキングレバー20bの揺動に基づく上記各パッド2a、2bを押圧する作動初期はストロークが大きく(レバー比が小さく)、これら各パッド2a、2bとロータ1との間の隙間を効率良く縮める事ができる。そして、作動の進行に伴ってレバー比が増大し、上記各パッド2a、2bにより上記ロータ1を押圧する力が増大する特性を有する。更に、パーキングレバー20bとトグル機構22aとの2段構造に基づき、レバー回転角が小さいまま、レバー比を高く設定する事が可能となる。この為、大きな制動力を安定して発生させられて、パーキングケーブルのストロークを短くできる。この場合、上記レバー比は、このパーキングケーブルを引っ張る力に対する、上記ピストン6bを押す力に相当し、レバー比=パーキングレバー比×トグル機構リンク比で表される。
又、上記トグル機構22aの特性として、上記パーキングケーブルのストローク量が少ない場合には、上記カム軸49の中心軸と、上記リンク50のカム部55に対する突き当て部と、このリンク50の上記アジャストスクリュ25aに対する突き当て部との配列状態が大きく折れ曲がっているので、リンク比が小さく、上記リンク50の先端部が上記ピストン6bを押圧する力が小さい代わりに、上記ピストン6bの変位量を多くできる。この事は、上記パーキングケーブルを引っ張る事による、パーキングブレーキの作動初期段階では、上記パーキングケーブルのストローク量に対して、上記ピストン6bの変位量を多くして、前記ロータ1とライニング11との間の隙間を早く埋められる事を意味する。
これに対して、上記パーキングケーブルのストローク量が多くなると、上記カム軸49の中心軸と、上記各突き当て部との配列状態が直線に近い状態となるので、上記リンク比が大きくなり、上記ピストン6bの変位量が少なくなる代わりに、上記リンク50の先端部がこのピストン6bを押圧する力が大きくなる。この事は、上記パーキングケーブルを引く事による、パーキングブレーキの作動終期段階では、このパーキングケーブルの引き力に対する、上記ピストン6bを押圧する力を大きくできる事を意味する。
上述の様に本例のパーキング機構付ディスクブレーキの場合には、パーキングブレーキの作動初期段階では上記ピストン6bの変位量を多くし、同じく終期段階ではこのピストン6bを押圧する力を大きくする。しかも、本例の場合には、キャリパ4bに固定したハウジング31に対し、パーキングレバー20bに結合したカム軸49を、ニードル軸受58により回転自在に支持している為、このカム軸49のカム部55とリンク50との当接部での、こじりによる摩擦を生じにくくできる。更に、前記パーキングレバー20bと前記トグル機構22aとの2段構成の為、レバー比が高い。この為、大きな制動力を安定して発生させる事ができ、上記パーキングケーブルのストロークを短くできる。
又、上記トグル機構22aの各構成部材を組み付けるハウジング31と、ピストン6b等を組み付けるキャリパ4bとを別部材としている為、キャリパの内側にピストン及びトグル機構の構成部材を含む部材を、キャリパの片側のみから組み付ける場合と異なり、パーキング機構付ディスクブレーキの組立作業を容易に行なえる。特に、キャリパ4bに設けた通孔71の内径を大きくする事なく、リンク50を組み付けられるので、このリンク50の形状の自由度の向上を図れる。又、パーキング機構付ディスクブレーキを製造する場合に、上記ハウジング31側の各部材を、ハウジング側組立品82として容易に取り扱える。しかも、本例の場合には、上記ハウジング31に設けられた孔部33の内周面に係止した止め輪75と上記アジャストスクリュ25aとの間に設けた圧縮コイルばね76により、このアジャストスクリュ25aに上記孔部33の奥端に向かう方向の弾力を付与している。この為、上記ハウジング31側の各部材を、ハウジング側組立品82として組み立てる事ができる。
更に、本例の場合には、キャリパに軸部材を組み付けた後に、このキャリパ内からこの軸部材が弾性部材の弾力により飛び出す事を防止しつつ、このキャリパにハウジングを結合固定すると言った、面倒な作業を行なう必要がなくなる。この為、パーキング機構付ディスクブレーキの組立作業をより容易に行なえて、このパーキング機構付ディスクブレーキのコストを低減できる。又、車両の種類に応じてピストン6b及びシリンダ孔5aの直径を異ならせる場合でも、上記キャリパ4b側の部材のみを新設すれば良く、上記ハウジング側組立品82を、上記ピストン6b及びシリンダ孔5aの直径の違いに拘らず共通化できる。この為、パーキング機構付ディスクブレーキのコストをより低減できる。又、上記キャリパ4bのシリンダ底壁部70の外端面に設けた円筒状凸部83を、上記ハウジング31に設けた孔部33の開口端部にがたつきなく内嵌している。この為、このキャリパ4bとハウジング側組立品82との組み付け位置精度を高くする事ができ、ピストン6bに結合したアジャストスクリュ25aの摺動を、より円滑に行なえる。又、上記ハウジング31により、上記キャリパ4bのシリンダ底壁部70に形成した通孔71の内周面とアジャストスクリュ25aの外周面との間を通じて、塵芥、水分等の異物がこのキャリパ4b内に侵入する事をより有効に防止できる。
又、本例の場合には、前記カム軸49に設けた円柱部52の中間部で前記ハウジング31に設けた孔部33の底部に位置する部分の円周方向片半部を除去する事により、その円周方向一端に突条部54を形成したカム部55を備える。そして、前記リンク50の基端部に設けた凹溝77をこの突条部54に突き当てている。又、上記カム部55の外周面でこの突条部54の両端縁から連続する部分に、この突条部54の外周面の曲率半径よりも大きな曲率半径を有する第一、第二の曲面部56、57を設けている。この為、カム部に設けた凹部にリンクの基端部に設けた凸部を突き当てる構造の場合と異なり、カム部55に対するリンク50の突き当て部を、ピストン6bの軸方向に関してロータ1側で、且つ、このピストン6bの中心軸からの直径方向の距離が大きくなる側に位置させる事ができ、設計の自由度の向上を図れる。又、上記リンク50の長さを短くでき、このリンク50の強度を確保し易くなる。又、前述の特許文献4に記載された従来構造の様に、カム部をカム軸に対し偏心する状態で設けた円柱部とする場合と異なり、カム部55に設けた突条部54の外周面の曲率半径を小さくする場合でも、このカム部55の強度を十分に確保できる。更に、このカム部55に対する上記リンク50の突き当て部を、上記ピストン6bの中心軸からの直径方向の距離がより大きくなる部分に位置させる事ができる。
更に、本例の場合には、上記アジャストスクリュ25aの基端面に、断面円弧形の底部を有する凹溝67を設けると共に、この凹溝67の底部を構成する曲面部80の両端縁から連続した部分に1対の平面部81、81を設けている。そして、これら各平面部81、81に上記リンク50の基端寄り部分の側面を突き当てる事により、パーキングレバー20bの揺動変位を規制している。この為、トグル機構22aの構成部材と別の部材や、このトグル機構22a部とは別の部分に変位阻止手段を設ける事なく、パーキングレバー20bの揺動変位を規制でき、上記パーキング機構付ディスクブレーキの更なるコスト低減を図れる。又、上記パーキングレバー20bの揺動変位を規制できる為、レバー比が過度に高くなる事を防止でき、パーキングケーブルの引き力に対する、上記ピストン6bの押圧力が過大になる事を防止できる。
又、本例の場合には、上記カム部55に設けた突条部54に上記リンク50の基端部に設けた凹溝77を、上記アジャストスクリュ25aに設けた凹溝67に上記リンク50の先端部に設けた突条部78を、それぞれ係合させている。又、このリンク50を、上記カム軸49の軸方向と同方向である厚さ方向に関して、断面形状が変化しない柱状としている。この為、前述した特許文献3に記載された構造の場合と異なり、上記アジャストスクリュ25aと、前記キャリパ4b及びハウジング31との間に、このアジャストスクリュ25aの回転を規制する為の特別な構造を設ける事なく、このアジャストスクリュ25aの回り止めを図れる。従って、パーキング機構付ディスクブレーキのコストをより低減できる。
又、本例の場合には、前記アジャストスクリュ25aの基端部に設けた鍔部69、69のアウタ側側面よりも前記ロータ1側に、上記リンク50の先端部を突き当てる為の凹溝67の底部を位置させている。この為、上記カム軸49の中心軸とロータ1との間の長さを小さくでき、パーキング機構付ディスクブレーキの、このロータ1の軸方向に関する長さを小さくできる。又、上記鍔部69、69のアウタ側側面よりもロータ1側に、上記凹溝67の底部を位置させている為、上記アジャストスクリュ25aに結合したピストン6bとシリンダ孔5aとの摺動部と、上記鍔部69、69とハウジング31との摺動部との間に、上記凹溝67の底部を位置させる事ができる。この為、上記リンク50の先端が上記アジャストスクリュ25aを押圧する場合に、このアジャストスクリュ25aがこじられにくくなり、このアジャストスクリュ25aを、上記キャリパ4b及びハウジング31に対し円滑に摺動させる事ができる。
尚、本発明で、キャリパ4bとハウジング31とにそれぞれ設ける、これら両部材4b、31を結合する為のねじ孔42、42とボルト挿通用の通孔35、35との位置は、任意に設定する事ができる。即ち、これらねじ孔42、42と通孔35、35との位置は、上記キャリパ4b及びハウジング31の鉛直方向両端部の2個所位置とする構造に限定するものではなく、鉛直方向に対するキャリパ4bの取り付け角度や、パーキングレバー20bの引き方向に応じて任意に変える事ができる。特に、本発明の場合には、上記キャリパ4bとハウジング31とを別部材としている為、このキャリパ4bに設けるねじ孔42、42の位置をシリンダ孔5aの周囲で変えた場合でも、このハウジング31に設ける通孔35、35の位置を変更する事なく、上記キャリパ4bにこのハウジング31を結合する事が可能になる。