JP2005105470A - ポリケトン繊維およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【構成】 エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素、珪素化合物を反応させて得られるポリケトンから構成されたことを特徴とするポリケトン繊維。
【効果】 本発明のポリケトン繊維は、力学特性、熱安定性、とりわけ長期耐熱特性に優れており、種々の産業用繊維として有用である。また、本発明のポリケトン繊維は溶融紡糸によって製造することができるので、生産性に優れ、かつ製造コストが低い等の経済性が高い。具体的な用途としては、特に補強分野がよく、タイヤコード、ベルト、ホース、ロープ、重布、コンクリート補強剤、土木資材、電子材料用基板等用いることができる。
【選択図】 選択図なし。

Description

本発明は、ポリケトン繊維およびその製造方法に関する。更に詳しくは、力学特性および熱安定性に優れた、溶融成形によるポリケトン繊維およびその製造方法に関するものである。
一酸化炭素と、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和化合物とが共重合したポリケトンは既に知られている。特に、一酸化炭素とエチレンとが完全交互共重合した化学式(1)に示すポリケトン(ポリ(1−オキソトリメチレン)、以下、ECO、と略記する)は、高度の力学特性、耐摩耗性、耐薬品性およびガスバリア性が高いことから、さまざまな用途に展開が可能な材料である。特に、繊維形態として用いた場合、その優れた力学特性、寸法安定性、接着性等の特性を生かし、タイヤコード、ベルト、ホース等のゴム補強材、コンクリート補強材等の産業資材用途に有用である。
Figure 2005105470
しかしながら、工業的にECOを製糸する方法としては、湿式紡糸しか用いることはできない。この理由は、ECOは一旦溶融すると熱架橋反応が起こるため、長時間安定して溶融紡糸することができないからである。溶融紡糸が可能になれば、高い生産性で安価にポリケトン繊維が製造できる可能性があるが、従来技術の範囲では未だ完成されていない。
例えば、ECOにプロピレンを数モル共重合して、融点を260℃(ECOの融点)から数十℃低下させて熱架橋反応速度を低下させることにより、溶融成形性を付与する方法が試みられている(特許文献1)。
しかしながら、短時間の溶融であっても、ごくわずかであるが熱架橋が進行し、数時間溶融紡糸を行うと、押出機内部で炭化物の溜まりが顕著となり、糸切れ、毛羽が多発して連続紡糸が不可能となる。このようなアルケン共重合法による融点低下法では、ポリケトンに工業的に使用できる溶融紡糸性を付与することはできない。
更に、物性面についても、プロピレンを共重合させたポリケトンは問題がある。このようなポリケトン繊維は長期熱安定性が悪く、例えば、150℃で十数時間維持すると、強度が大幅に低下する。この理由は明らかでないが、おそらくプロピレン部分に由来する3級炭素がラジカル発生源となり、この部分から熱架橋を伴う熱分解反応が起こるためと推定される。
また、熱安定剤を用いてポリケトンの溶融成形性を高める技術はいくつが知られている。例えば、特許文献2には、ヒドロキシアパタイトの使用、特許文献3には、フェノール性ジカルボキシレート、フェノール性ジカルボキシアミン類またはフェノール性ホスファイト類の使用、特許文献4には、ヒンダートフェノール系安定剤の使用が記載されている。しかしながら、これらの技術によると、高温下での強度低下を抑えられるものの、溶融成形性を付与できるほどの効果はなく、工業生産に耐えうる溶融成形性とは程遠いものであった。
特開昭62−53332号公報 米国特許第5066701号明細書 欧州特許出願公開第289077号明細書 欧州特許出願公開第326223号明細書
本発明の課題は、力学特性および熱安定性に優れた、溶融成形によるポリケトン繊維、およびその製造方法の確立であり、より具体的には、珪素化合物を反応させたポリケトンの溶融紡糸技術の確立である。
本発明者らは、上記の課題を達成するために、溶融成形が可能なポリケトンを詳細に検討した。その結果、ECOの分子骨格に珪素原子を導入すると、導入量はごく少量であっても融点が低下し、しかも溶融紡糸性を付与できることを見いだした。更に、このポリマーの紡糸条件を種々検討した結果、優れた力学特性および熱安定性を有するポリケトン繊維が得られることを見いだした。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および珪素化合物を反応させて得られるポリケトンから構成されていることを特徴とするポリケトン繊維。
(2) 繰り返し単位の90モル%以上、100モル%未満が、1−オキソトリメチレン単位であり、繰り返し単位の10モル%以下が、水素原子の一部が珪素原子を有する基で置換された1−オキソトリメチレン単位であることを特徴とする(1)に記載のポリケトン繊維。
(3) 強度が、0.5cN/dtex以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリケトン繊維。
(4) 繊維が、未延伸糸、部分延伸糸、延伸糸、短繊維、トウ、撚糸および仮撚糸から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載のポリケトン繊維。
(5) (1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリケトン繊維から構成された、織物、編物、不織布およびコードから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする繊維加工品。
(6) エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および珪素化合物を反応させて得られるポリケトンを溶融させて紡糸口金から吐出させ、一旦巻き取って、または巻き取ることなく、延伸することを特徴とするポリケトン繊維の製造方法。
(7) エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および珪素化合物を反応させて得られるポリケトンを溶融させて紡糸口金から吐出させ、その後、巻き取ることを特徴とするポリケトン繊維の製造方法。
本発明のポリケトン繊維は、力学特性、熱安定性、とりわけ長期耐熱特性に優れており、種々の産業用繊維として有用である。また、本発明のポリケトン繊維は、溶融紡糸法によって製造することができるので、生産性に優れ、かつ、製造コストが低い等の経済性が高い。
本発明のポリケトン繊維を構成するポリマーは、エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および珪素化合物を反応させて得られるポリケトンである。
エチレン性不飽和化合物とは、二重結合を有する化合物であり、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン等のアルケニル芳香族化合物、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン等の環状オレフィン、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;エチルアクリレート、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル、酢酸ビニル等を挙げることができる。これらの一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物由来の繰り返し単位は、単独または複数種の混合物であってもよい。これらの中で、得られるポリケトンの力学物性および耐熱性が優れる点でエチレンが好ましい。
珪素化合物としては、例えば、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエチルビニルシラン、ビニル(トリフルオロメチル)ジメチルシラン、トリエトキシビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、ビニルテトラメチルジシロキサン、ビニルペンタメチルジリロキサン、ビニルフェニルメチルシラン、トリメチルシロキシビニルジメチルカルビノール、ビニルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、ジビニルテトラメチルジシラン、アリルジメチルシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリメトキシシラン、トリエチルシラノール、t−ブチルジメチルシラノール、トリフェニルシラノール、トリス(トリメチルシロキシ)シラノール、ポリシロキサン等々、ビニル基や水酸基、カルボキシル基、メタクリロキシ基、アリール基等の構造を含む種々の珪素化合物を使用することができる。
本発明のポリケトン繊維を構成するポリマーは、上で説明したエチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および珪素化合物を反応させて得られるポリケトンである。ここで「反応させ」とは、各モノマー同士を共有結合で結びつけることを意味し、具体的には共重合、高分子反応等で反応させることである。
本発明のポリケトン繊維を構成するポリケトンにおいて、珪素化合物の含有量には制限はないが、全繰り返し単位に対する、珪素原子を有する繰り返し単位のモル比が0.00001〜10であることが好ましい。本発明の効果は、極少量の珪素化合物が反応することにより現れるが、前記モル比が0.00001未満では、充分な効果が得られない場合がある。また、珪素化合物があまり多く反応すると、ポリケトンが本来有する機械的・熱的特性を発揮できない場合があるため、10以下であることが好ましく、より好ましくは0.0001〜5、最も好ましくは0.0005〜2である。
ポリケトン中の珪素元素の含量も制限はないが、珪素元素重量/繊維重量×100の重量%が0.001〜50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.001〜20重量%、更に好ましくは0.001〜5重量%、最も好ましくは、0.001〜1重量%である。
最も好ましい上記ポリケトンの構造としては、繰り返し単位として1−オキソトリメチレンを主たる構造とし、残りの繰り返し単位が一酸化炭素と珪素化合物とが反応した繰り返し単位からなるポリケトンである。一酸化炭素と珪素化合物とが反応した繰り返し単位としては、化学式(2)に示す構造が本発明の目的を達成する上で好ましい。
Figure 2005105470
(ここで、R1、Rは、水素原子または炭素数1〜30の有機基を示し、これらは同じであっても異なっていてもよい。A、Bは、いずれか一方または両方が、化学式(3)で示す珪素元素含有基である。AとBは同じであっても異なってもよい。また、A,Bのいずれかのみが化学式(3)で示す珪素元素含有基の場合、残りの一方はR1である。)
−SiR (3)
(ここで、Rは、水素原子または炭素数1〜30の有機基、Xは、反応性基を有する炭素数1〜30の有機基、Yは、化学式(4)に示す珪素元素含有基を示す。R、X、Yは、それぞれが複数個存在する時、同一構造でも、異なってもよい。m、n、pは、0〜3、かつ、m+n+p=3である。)
Figure 2005105470
(ここで、D、D、D、D、Dは、同じでも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜30の有機基、またはSi−O−を有する有機基である。qは、0以上の整数である。)
R、R、Rは、水素原子または炭素数1〜30の有機基であり、水素原子、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、プロピル、プロポキシ、ブチル、シクロヘキシル、ヘキシル、オクチル、フェニル、ベンジル、ナフチル、等の炭化水素基およびアルキルアルコキシ等のアルコキシ炭化水素基を表す。これらの構造は、分岐していても直鎖状であってもよい。得られるポリケトンポリマーの熱安定性の観点からは、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ構造が好ましい。
Xとしては、例えば、メチルアクリレート基、アクリレート基、エポキシ基(グリシジル基)、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、ビニル基、アセチレン基、カルボニル基、ジカルボニル基、酸無水物基、アルデヒド基、イソシアネート基、メルカプト基、アルキルメルカプト基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヨード基、ホルムアミド基、アセトアミド基、シアノ基、アミド基、イミド基、水酸基、オキサゾリン基等の反応性基およびこれらの基が炭化水素基に置換した置換アルキル、置換アルケニル基等が挙げられる。
、D、D、D、Dとしては、水素原子、炭素数1〜30の有機基、または−Si−O−を有する有機基であり、この場合−Si−O−結合が連続的に結合してよい。なお、−Si−O−結合において、珪素原子の残りの2つの結合は、水素原子や上記の炭素数1〜30の有機基が結合することが好ましい。また末端の酸素原子にも水素原子や上記の炭素数1〜30の有機基が結合することが好ましい。
化学式(3)で示される具体的な珪素元素含有基としては、例えば、トリメチルシラン基、トリメトキシシラン基、トリエチルシラン基、トリフルオロメチルジメチルシラン基、トリエトキシシラン基、メトキシジメチルシラン基、テトラメチルジシロキサン基、ペンタメチルジリロキサン基、フェニルメチルシラン基、トリメチルシロキシジメチルカルビノール基、メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン基、ビニルテトラメチルジシロキサン基、ビニルテトラメチルジシラン基、アリルジメチルシラン基、アリルジメトキシシラン基、アリルトリメチルシラン基、アリルトリメトキシシラン基、トリエチルシラノール基、t−ブチルジメチルシラノール基、トリフェニルシラノール基、トリス(トリメチルシロキシ)シラノール基、ポリシロキサン等々、ビニル基や水酸基、カルボキシル基、メタクリロキシ基、アリール基等の構造を含む珪素元素含有基である。
1−オキソトリメチレン単位と化学式(2)の繰り返し単位はどのように結合していてもよく、ランダム共重合、ブロック共重合、枝分かれ共重合であってもよい。
本発明のポリケトン繊維を構成するポリケトンの極限粘度には制限はないが、好ましくは0.1〜10dl/g、より好ましくは、力学物性が優れることとと溶融紡糸性の観点から0.4〜2.5dl/gである。
本発明のポリケトンの製造方法には制限はないが、例えば、オートクレーブ等の反応容器の中で、エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および珪素化合物を反応させる方法が好ましい。
反応に溶剤を用いてもよい。プロトン性の溶剤としては、水、炭素数1〜10のヒドロキシル基含有化合物等が挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;m−クレゾール等のフェノール類を挙げることができる。非プロトン性溶剤としては、炭素数3〜20の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸メチル等のエステル類、γ―ブチロラクトン、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
反応活性の点からは、プロトン性化合物が好ましく、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられる。得られるポリケトンの分子量が高くできると言う点からは、非プロトン性化合物が好ましく、ヘキサン、アセトンが挙げられる。珪素化合物を効率的に反応する点からは、トルエン、ヘキサン、オクタン等が好ましい。これらの量に制限はないが、珪素化合物と均一に混ざり合う量が好ましい。
プロトン性および非プロトン性化合物を単独で用いてもよいが、これらの化合物の中から選ばれた2種以上の溶剤を同時に用いてもよい。また、気相反応の場合のように、溶剤を用いなくてもよい。
本発明に使用するポリケトンを製造するための原料としては、一酸化炭素と、種々のエチレン性不飽和化合物を使用可能である。一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物の反応容器内での割合は、(一酸化炭素/エチレン性不飽和化合物)のモル比が10/1〜1/10であることが好ましく、より好ましくは5/1〜1/5である。
反応に際して、一酸化炭素とエチレン性不飽和化合物の添加方法には制限はなく、予め、両者を混合してから添加してもよく、それぞれ別の供給ラインから添加してもよい。また、原料として用いる珪素化合物も反応過程の任意の段階で仕込むことができる。
ポリケトンの製造に際して、触媒の存在下で反応させてもよい。触媒としては、有機金属錯体触媒またはラジカル開始剤が用いられる。
有機金属錯体触媒は、周期律表 (IUPAC無機化学命名法改訂版、1989)の(a)第9族、第10族または第11族遷移金属化合物、および(b)第15族の原子を有する配位子からなるものである。更に、(a)第9族、第10族または第11族遷移金属化合物、および(b)第15族の原子を有する配位子に、第3成分として(c)酸の陰イオンを加えてもよい。
(a)成分中の第9族遷移金属化合物の例としては、コバルトまたはルテニウムの錯体、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩、スルホン酸塩等を挙げることができ、その具体例としては酢酸コバルト、コバルトアセチルアセテート、酢酸ルテニウム、トリフルオロ酢酸ルテニウム、ルテニウムアセチルアセテート、トリフルオロメタンスルホン酸ルテニウム等をあげることができる。
第10族遷移金属化合物の例としては、ニッケルまたはパラジウムの錯体、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩、スルホン酸塩等を挙げることができ、その具体例としては、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトネート、塩化パラジウム、ビス(N,N−ジエチルカーバメート)ビス(ジエチルアミノ)パラジウム、硫酸パラジウム等を挙げることができる。
第11族遷移金属化合物の例としては、銅または銀の錯体、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩、スルホン酸塩等を挙げることができ、その具体例としては、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、銅アセチルアセトネート、酢酸銀、トリフルオロ酢酸銀、銀アセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホン酸銀等を挙げることができる。
これらの中で、安価で経済的に好ましい遷移金属化合物(a)は、ニッケルおよび銅化合物であり、ポリケトンの収量および分子量の面から好ましい遷移金属化合物(a)はパラジウム化合物である。これらは単独または数種類を混合して用いることもできる。
配位子とは、化学大辞典7縮刷版第16刷(1974)共立出版 p.4で定義されているように、錯体中で中心原子に直接結合している原子を含む原子団のことである。本発明においては、周期律表第15族の原子を有する配位子を用いることが必要である。その例として、ピリジン等の窒素の一座配位子;トリフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン等のリン一座配位子;トリフェニルアルシン等の砒素一座配位子;トリフェニルアンチモニイ等のアンチモン一座配位子;2, 2’−ビピリジル、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジル、2,2’−ビ−4−ピコリン、2,2’−ビ キノリン等の窒素ニ座配位子;1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス{ジ(2−メチル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−イソプロピル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)シクロヘキサン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス{(ジフェニルホスフィノ)メチル}ベンゼン、1,2−ビス[{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼン、1,2−ビス[{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2−ヒドロキシ−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、2,2−ジメチル− 1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン等のリン二座配位子等を挙げることができる。これらは単独で用いても、複数種を同時に混合して用いてもより。
これらの中で好ましい配位子は、リン二座配位子である。特に珪素化合物との反応性およびポリケトンの収量の面から好ましいリンニ座配位子は1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、および1,2−ビス[{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼンであり、ポリケトンの分子量という面からは、2−ヒドロキシ−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、および2,2−ジメチル−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパンである。
有機溶剤を必要とせず、安全であるという面からは、水溶性の1,3−ビス{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}プロパン、および1,2−ビス[{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼンが好ましい。合成が容易で大量に入手が可能であり、経済面において好ましいものは1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンおよび1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンである。
触媒として、前記の遷移金属化合物および前記の周期律表第15族元素の原子を有する配位子に加えることのできる、(c)酸の陰イオンの例としては、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のpKaが4以下の有機酸の陰イオン;過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸、テトロフルオロ硼酸、ヘキサフルオロリン酸、フルオロ硅酸等のpKaが4以下の無機酸の陰イオン;トリスペンタフルオロフェニルボラン、トリスフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の硼素化合物の陰イオンを挙げることができる。これらは単独または複数種を混合しても使用できる。これらの中で好ましい酸の陰イオンは、ポリマーの収量と分子量の両方の観点から、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸である。pKaとは、酸の解離定数をKaとしたときのpKa=−log10Kaで定義される数値で、値が小さいほど酸として強い。
触媒として用いる遷移金属化合物(a)の使用量は、選ばれるエチレン性不飽和化合物および珪素化合物の種類、その他の重合条件によってその好適な値が異なるため、一概にその範囲を定めることはできないが、好ましくは、反応帯域の容量1リットル当り0.01〜10000マイクロモル、より好ましくは0.1〜1000マイクロモルである。反応帯域の容量とは、反応器の液相の容量をいう。
配位子(b)の使用量も制限されるものではないが、遷移金属化合物1モル当たり、好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは1〜5モルである。
酸の陰イオン(c)の使用量は、パラジウム化合物1モル当たり、好ましくは0.1〜1000モル、より好ましくは1〜100モル、最も好ましくは3〜10である。
触媒は、前記の遷移金属化合物および前記の周期律表第15族元素の原子を有する配位子、更に、好ましくは酸の陰イオンを混合することによって生成する。触媒組成物の使用法の制限はないが、予め、各成分の混合物からなる触媒組成物を調製してから反応容器内に添加することが好ましい。触媒組成物を調製する場合には、先ず遷移金属化合物および配位子を混合し、次いで酸を混合することが好ましい。触媒組成物の調製に用いる溶媒は、アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等の非プロトン性有機溶媒であってもよい。
また、前記の遷移金属化合物および前記の周期律表第15族元素の原子を有する配位子および(c)3成分からなる触媒に、ベンゾキノン、ナフトキノン等の酸化剤を添加してもよい。これらキノン類の添加量は、遷移金属化合物1モル当たり、好ましくは1〜1000モル、より好ましくは10〜200モルである。キノン類の添加は、触媒組成物に添加してから反応容器に添加する方法、重合溶剤に添加する方法のいずれであってもよく、必要に応じて、反応中に反応容器内に連続的に添加してもよい。
一方、ラジカル開始剤を触媒とする場合、ペルオキシジカーボネート系、ペルオキシエステル系、ジアシルペルオキシド系またはアゾ系開始剤を用いることができる。
ここで、それぞれの系には、一分子中に−O−O−結合または−N=N−結合を一個含むモノラジカル型開始剤、一分子中に−O−O−結合または−N=N−結合を二個含むバイラジカル型開始剤、一分子中に−O−O−結合または−N=N−結合を三個以上含むポリマー型開始剤が含まれる。
モノラジカル型開始剤としては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカ−ボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ヘキシルペルオキシネオヘキサネート、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル、2,2’−アオゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4’−ジメチルバレロニトリル)が挙げられる。
バイラジカル型開始剤としては、例えば、(α,α’−ビス−ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチルー2,5−ビス(2−エチルヘキシルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ヘキサンを用いることができる。
ポリマー型開始剤としては、例えば、ポリペルオキシジカーボネート等を用いることができる。
ラジカル開始剤を触媒として用いるとき、希釈剤として、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、オクタン、ベンゼン等の炭化水素、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル等の炭酸エステル類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、1、3−ジオキソラン等の環状エーテル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類の1種以上を使用することができる。これらの中で好ましい重合希釈剤は、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、1,4−ジオキサンである。
本発明のポリケトン繊維を構成するポリケトンの製造において、珪素元素の含量を増加させることが可能である。一般に知られるシリコーンの製法と同様に、既に合成されたポリケトンと、オルガノハロゲンシランまたはオルガノアルコキシシランの加水分解反応により、オルガノポリシロキサン構造をポリケトンに導入して、珪素元素の含量を増加させることができる。
加水分解反応に用いるオルガノハロゲンシランとしては、例えば、トリメチルモノクロルシラン、トリメチルモノブロモシラン、トリエチルモノクロルシラン、トリプロピルモノクロルシラン等のトリアルキルモノハロゲンシラン化合物、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロモシラン、ジエチルジクロルシラン等のジアルキルジハロゲンシラン化合物、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロモシラン、エチルトリクロルシラン等のアルキルトリハロゲンシラン化合物等が挙げられる。
オルガノアルコキシシランとしては、例えば、トリメチルモノヒドロキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、トリメチルモノエトキシシラン、トリエチルモノメトキシシラン、トリプロピルモノメトキシシラン等のトリアルキルモノアルコキシシラン化合物、ジメチルジヒドロキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン化合物や、メトルトリヒドロキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
この反応は、常温で、空気中の水分の存在下で進行するが、少量の水、酸またはアルカリを加えてもよい。また、加熱してもよく、ジ−n−ラウリルジブチルスズ等のスズ触媒を用いてもよい。
反応温度は50〜300℃であることが好ましく、70〜200℃がより好ましい。重合温度が50℃未満では、珪素化合物との反応が難しくなり、反応温度が300℃を越えると、反応活性が高くなって、生産性は高くなるが、得られるポリケトンの分子量が極端に低くななる等、機械的・熱的特性を十分に発揮することができない場合がある。
反応時間は1〜24時間が好ましく、より好ましくは1.5〜10時間、最も好ましくは2〜6時間である。反応時間が1時間未満では、残触媒量が多くなり、特別な触媒除去工程が必要となる。一方、反応時間が24時間を越えると、得られるポリケトンの分子量分散度が広がり、優れた機械的・熱的特性を発揮できなくなる場合がある。
本発明のポリケトン繊維は、ポリケトンを、好ましくは溶融紡糸して得られる。製造条件、用途によって様々な高次構造、形態が可能である。溶融紡糸以外に、湿式紡糸法、乾式紡糸法等の方法によって製造してもよい。
繊維の種類としては、マルチフィラメントおよびモノフィラメントのいずれでもよい。未延伸糸、部分延伸糸(半延伸糸とも言われる、いわゆるPOY)、延伸糸、短繊維、トウ、撚糸、仮撚糸等、任意の種類が含まれる。また、スパンボンド、スパンレース、マイクロウエブ、フラッシュ紡糸不織布等の不織布であってもよい。
繊維の繊度には制限はなく、用途を考慮すると、通常、単糸繊度としては、マルチフィラメントの場合は0.001〜10dtex、モノフィラメントの場合は10〜100000dtexである。総繊度としては、マルチフィラメントの場合は5〜500dtex、好ましくは10〜250dtexである。
繊維の断面形状は、用途に応じて任意の形態をとることが可能であり、丸形の他、例えば、三角型、四角型、おにぎり型、W型、C型、ドッグボーン型等の異形糸が挙げられ、中実繊維であっても中空繊維であってもよい。
繊維の物性は用途に応じて任意に設定することができる。
強度は、延伸糸の場合、極限粘度と延伸倍率によっても異なるが、少なくとも0.5cN/dtex以上、通常、2.5cN/dtex以上である。伸度は、任意の値に設定することが可能であり、通常は4〜200%であり、例えば、延伸糸では4〜50%、部分延伸糸では5〜150%である。
本発明のポリケトン繊維の構造についても制限はなく、用途に応じて任意に設計できる。例えば、結晶化度は、通常、0〜80%、延伸糸の場合、好ましくは20〜80%、半延伸糸の場合は、好ましくは10〜60%である。結晶配向度は0〜99%である。
本発明のポリケトン繊維に、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、界面活性剤等が含まれていてもよい。
本発明のポリケトン繊維は、エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および珪素化合物を反応させて得られるポリケトンを、好ましくは100ppm以下の水分量まで乾燥させたポリケトンを溶融させて、紡糸口金から吐出させ、その後、一旦巻き取って、または巻き取ることなく、更には必要に応じて延伸することにより製造することができる。
延伸糸の製造方法には、一旦未延伸糸を巻き取った後に延伸を行う通常法と、未延伸糸を巻き取ることなく延伸する直延法がある。また、部分延伸糸の製造方法では、紡口より押し出されたポリマーを高速で巻き取る方法がある。
以下、通常法について例を挙げて説明する。
本発明において、ポリマーを溶融紡糸する際の紡糸温度は、ポリマーの融点+10〜50℃の範囲が好ましい。紡糸温度がこれより低いと、製造条件によっては、温度が低過ぎて安定した溶融状態になり難く、得られた繊維の斑が大きくなり、また満足し得る強度、伸度を示さなくなる場合がある。紡糸温度がこれより高いと、熱架橋が激しくなり、長時間安定して紡糸できない他、熱架橋物が繊維に入り込み、毛羽や糸切れの原因となる場合がある。
糸の巻取速度の制限はないが、通常、3500m/min以下、好ましくは2500m/min以下、より好ましくは2000m/min以下である。巻取速度が3500m/minを越えると、巻き取る前に結晶化が進み過ぎ、延伸工程で延伸倍率を上げることができないために分子を配向させることができず、十分な糸強度や弾性回復率を得ることができなかったり、捲き締まりが起こり、ボビン等が巻取機より抜けなくなる場合がある。延伸時の延伸倍率は、好ましくは2〜15倍、より好ましくは2〜12倍である。
延伸の際の温度は、延伸ゾーンでは好ましくは30〜80℃、より好ましくは35〜70℃、最も好ましくは40℃〜65℃である。延伸ゾーンの温度が30℃未満では、延伸の際に糸切れが多発し、連続して繊維を得ることができない場合がある。また80℃を越えると、延伸ロール等の加熱ゾーン対する繊維の滑り性が悪化するため単糸切れが多発し、糸の毛羽が増加する場合がある。また、ポリマーどうしがすり抜けて、十分な配向がかからなくなり弾性回復率が低下する場合がある。
繊維構造の経時変化を避けるために、延伸後の熱処理を行うことが好ましい。この熱処理は、通常、90〜200℃であり、好ましくは100〜190℃、より好ましくは110〜180℃である。熱処理温度が90℃未満では、繊維の結晶化が十分に起こらず、弾性回復性が悪化する場合がある。また、200℃を越えると、繊維が熱処理ゾーンで切れて、延伸することができない場合がある。
次に、直延法について例を挙げて説明する。
紡口より押出した溶融マルチフィラメントを、紡口直下に設けた30〜200℃の雰囲気温度に保持した、長さ2〜80cmの保温領域を通過させて急激な冷却を抑制した後、この溶融マルチフィラメントを急冷して固体マルチフィラメントに変え、40〜70℃に加熱した第一ロールで300〜5000m/min巻き付ける。次に、巻き取ることなく100〜200℃に加熱した第二ロールに巻き付け、第一ロールと第一ロールより速度を速めた第二ロールの間で1.5〜3倍に延伸した後、第二ロールよりも低速で巻取機を用いて巻き取る。
紡糸過程において、必要に応じて、交絡処理、油剤処理等を行ってもよい。紡糸速度300〜3000m/minで一度巻き取った未延伸糸を、上記の第一ロール、第二ロールを通して巻き取ってもよい。巻取に関しては、巻き締まりを抑制するために、リラックス比(巻取速度/第二ロール速度)を0.80〜0.99程度、好ましくは0.9〜0.97に設定する。
第二ロールの速度は延伸倍率によって決定されるが、通常、600〜6000m/minである。第一ロールと第二ロール間での延伸倍率は、通常、1.3〜15倍、好ましくは2〜12倍である。第一ロールの温度は、通常、40〜100℃、好ましくは50〜90℃である。この範囲で延伸しやすい状況を作り出すことができる。第二ロールで熱セットを行うが温度としては120〜160℃である。
次に、部分延伸糸の好ましい製造法を示す。
部分延伸糸は、エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および珪素化合物を反応させて得られるポリケトンを溶融させて紡糸口金から吐出させ、その後、巻き取ることにより製造できる。
部分延伸糸の好ましい製造法としては、紡口より押出した溶融マルチフィラメントを急冷して固体マルチフィラメントに変え、巻き取る前にマルチフィラメントを(ポリマーのガラス転移点+20)℃以下に急冷した後、2800〜5000m/minで巻き取る方法が挙げられる。
これらの各条件の詳細は直延法での説明と同じである。巻き取る前には、必要に応じてロール等を用いて巻取機前の張力を制御することが好ましく、この時の張力は、通常、0.1〜0.4cN/dtex、好ましくは0.1〜0.25cN/dtexである。
以上の各紡糸過程においては、任意の段階で油剤付与、交絡付与等を行うことができる。
こうして得られたポリケトン繊維は、公知の方法で短繊維とすることも、仮撚することも可能である。また、公知の方法により製織、製編等を行うこともできる。
[実施例]
本発明を実施例により具体的に説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例に用いた有機溶媒は、有機合成用に脱水されたものを、反応前に乾燥窒素気流下で硫酸マグネシウムにより更に脱水させて得られる完全乾燥溶媒である。水は金属等の不純物を含まない蒸留水を用いた。硫酸としては、試薬特級96質量%硫酸を用いた。
本発明に用いられる各測定値の測定方法は次のとおりである。
(1)極限粘度([η])
極限粘度[η]は、下式により求められる値である。
[η]=lim(T−t)/(t・C)
C→0
式中、tおよびTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノールおよびヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流下時間、Cは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
(2)ポリケトン中の元素量
珪素元素量は、高周波プラズマ発光分光分析により、公知の方法を用いて測定する。繊維の元素分析においては、分析前に予め油剤を除去する。
(3)融点と結晶化度
試料5mgを窒素雰囲気下でアルミニウムパンに封入し、パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1(商標)を用いて、200ミリリットル/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で測定を行う。観察された吸発熱曲線において、200℃〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークのピークトップ点を融点とする。
結晶化度は、吸発熱曲線において200℃〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークの面積から計算される熱量ΔH(J/g)より下記式により算出する。
結晶化度 = ΔH/225 × 100 (%)
(4)繊維力学物性(強度、伸度)
JIS−L−1013に準じて測定を行う。
[実施例1]
酢酸パラジウム2.5ミリモル、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン3.0ミリモル、硫酸12.5ミリモル、1,4−ベンゾキノン25ミリモル、イソプロパノール225リットル、およびトリメトキシビニルシラン25リットルを、窒素置換した撹拌機付ステンレス製のオートクレーブに投入した。オートクレーブを密閉後、25℃、2.0MPaで3回窒素置換を行った。
内容物を撹拌しながら加温し、内温が100℃に達した時点で一酸化炭素とエチレンの等モル混合気体を8.0MPaになるまで加えた。その後、エチレンと一酸化炭素の等モル混合気体を連続的に供給して内圧と内温を保ちながら、2時間撹拌を続けた。冷却後、オートクレーブ内気体をパージし、内容物を取り出した。反応溶液を濾過し、水で3回、イソプロパノールで3回洗浄後、減圧乾燥し、重合体3.8kgを得た。
得られたポリケトンの極限粘度は1.2dl/gであった。このポリケトンを解析した結果、珪素含量は0.2重量%、結晶化度は33%、融点は222℃であった。得られたポリケトンは、1−オキソトリメチレン単位と化学式(5)に示す珪素原子を有する繰り返し単位(0.42モル%)がランダムに共重合したポリマーであった。
Figure 2005105470
得られたポリケトンを乾燥させた後、直径0.23mmの36個の孔の開いた一重配列の36個の孔を持つ紡口を用い、紡糸温度265℃、紡糸速度300m/minで紡糸して未延伸糸を作成した。次いで、得られた未延伸糸をホットロール50℃、ホットプレート140℃、延伸倍率3.0倍、延伸速度50m/minで延撚を行い、56cN/36fの延伸糸を得た。
得られた延伸糸の強度は4.7cN/dtex、伸度は27%、極限粘度は1.3dl/g、結晶化度は45%であった。繊維中の珪素元素量もポリマーと同等であった。
得られたポリケトン繊維を2500T/mの撚糸を行い、密度が経緯共55本/2.54cm、目付が80g/mの強靱な平織物を作成した。また、得られたポリケトン繊維を用いて、編物(ゲージ28G)を作成した。
[実施例2]
実施例1で得られたポリマーを定法により乾燥し、水分を50ppmにした後、265℃で溶融させ、直径0.23mmの36個の孔を持つ紡口を通して押し出した。押し出された溶融マルチフィラメントは、長さ5cm、温度100℃の保温領域を通過後、風速0.4m/minの風を当てて急冷し、固体マルチフィラメントに変えた。
次に、この固体マルチフィラメントを、50℃に加熱した回転速度1840m/minの第一ロールと、140℃に加熱した回転速度4600m/minの第二ロール間を通して熱延伸と熱セットを行い、その後、25℃の回転速度4600m/minの第三ロールに巻き付け急冷し、4300m/minで巻き取った。
得られた延伸糸の強度は4.5cN/dtex、伸度は29%、極限粘度は1.3dl/g、結晶化度は44%であった。繊維中の珪素元素量もポリマーと同等であった。
[実施例3]
実施例1のポリマーを定法により乾燥し、水分を50ppmにした後、285℃で溶融させ、直径0.23mmの36個の孔を持つ紡口を通して押し出した。押し出された溶融マルチフィラメントは、長さ5cm、温度100℃の保温領域を通過後、風速0.4m/minの風を当てて急冷し、固体マルチフィラメントに変えた。この固体マルチフィラメントを、20℃に加熱した回転速度3000m/minの第一ロールに通した後、3000m/minで巻き取った。
得られた部分延伸糸の強度は2.4cN/dtex、伸度は58%、極限粘度は1.3dl/g、結晶化度は27%であった。繊維中の珪素元素量もポリマーと同等であった。
[実施例4]
実施例1における、イソプロパノール225リットル、トリメトキシビニルシラン25リットルを、トリメトキシビニルシランのみ250リットルとした以外は、実施例1と同様な操作をおこなったところ、2.7kgの重合体を得た。
[η]は2.7dl/gであった。このポリケトンを解析した結果、珪素含量は0.5重量%、結晶化度は35%、融点は230℃であった。また、化学構造は得られたポリケトンは、1−オキソトリメチレン単位と化学式(5)に示す珪素原子を有する繰り返し単位(0.99モル%)がランダムに共重合したポリマーであった。
Figure 2005105470
得られたポリケトンを乾燥させた後、直径0.23mmの36個の孔の開いた一重配列の36個の孔を持つ紡口を用い、紡糸温度250℃、紡糸速度300m/minで紡糸して未延伸糸を作成した。次いで、得られた未延伸糸をホットロール50℃、ホットプレート140℃、延伸倍率3.0倍、延伸速度50m/minで延撚を行い、56cN/36fの延伸糸を得た。
得られた延伸糸の強度は5.0cN/dtex、伸度は30%、極限粘度は2.7dl/g、結晶化度は45%であった。繊維中の珪素元素量もポリマーと同等であった。
[実施例5]
実施例1における、トリメトキシビニルシラン25リットルを、トリメチルビニルシラン25リットルと、イソプロパノール225リットルをn−ヘキサン225リットルとした以外は、実施例1と同様な操作を行ったところ、1.9kgの重合体を得た。
得られたポリケトンの極限粘度は1.3dl/gであった。このポリケトンを解析した結果、珪素含量は0.08重量%、結晶化度は40%、融点は240℃であった。得られたポリケトンは、1−オキソトリメチレン単位と化学式(5)に示す珪素原子を有する繰り返し単位(0.003モル%)がランダムに共重合したポリマーであった。
Figure 2005105470
得られたポリケトンを乾燥させた後、直径0.23mmの36個の孔の開いた一重配列の36個の孔を持つ紡口を用い、紡糸温度265℃、紡糸速度300m/minで紡糸して未延伸糸を作成した。次いで、得られた未延伸糸をホットロール50℃、ホットプレート140℃、延伸倍率3.0倍、延伸速度50m/minで延撚を行い、56cN/36fの延伸糸を得た。
得られた延伸糸の強度は4.6cN/dtex、伸度は30%、極限粘度は1.3dl/g、結晶化度は45%であった。繊維中の珪素元素量もポリマーと同等であった。
[比較例1]
プロピレンを7モル%共重合した、極限粘度1.8dl/gのECO(珪素元素量は0%)を実施例と同様にして溶融紡糸し、強度が5.3cN/dtex、伸度が25%、極限粘度が1.9dl/g、結晶化度が45%の延伸糸を得た。この延伸糸を150℃、窒素中で30時間保持したところ、黒く着色し強度が処理前の60%まで低下した。一方、実施例1の繊維を同様に加熱処理したところ、強度は90%保持した。
本発明のポリケトン繊維は、特に補強材分野に適しており、タイヤコード、ベルト、ホース、ロープ、重布、コンクリート等の補強剤、土木資材、電子材料用基板等用いることができる。

Claims (7)

  1. エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および珪素化合物を反応させて得られるポリケトンから構成されていることを特徴とするポリケトン繊維。
  2. 繰り返し単位の90モル%以上、100モル%未満が、1−オキソトリメチレン単位であり、繰り返し単位の10モル%以下が、水素原子の一部が珪素原子を有する基で置換された1−オキソトリメチレン単位であることを特徴とする請求項1記載のポリケトン繊維。
  3. 強度が、0.5cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1または2記載のポリケトン繊維。
  4. 繊維が、未延伸糸、部分延伸糸、延伸糸、短繊維、トウ、撚糸および仮撚糸から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリケトン繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリケトン繊維から構成された、織物、編物、不織布およびコードから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする繊維加工品。
  6. エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および珪素化合物を反応させて得られるポリケトンを溶融させて紡糸口金から吐出させ、一旦巻き取って、または巻き取ることなく、延伸することを特徴とするポリケトン繊維の製造方法。
  7. エチレン性不飽和化合物、一酸化炭素および珪素化合物を反応させて得られるポリケトンを溶融させて紡糸口金から吐出させ、その後、巻き取ることを特徴とするポリケトン繊維の製造方法。
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