JP2005101590A - 光増幅用ファイバ、光増幅モジュール、光通信システム及び光増幅方法 - Google Patents

光増幅用ファイバ、光増幅モジュール、光通信システム及び光増幅方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高密度化された複数信号チャネルを含む多重化信号光の伝送においても信号チャネル間の非線形相互作用が効果的に低減するとともに曲げロスをも効果的に低減し得る光増幅用ファイバ等を提供する。
【解決手段】 光増幅モジュール1は、入力コネクタ11から出力コネクタ12へ至る信号光伝搬経路上に順に配置された、光アイソレータ21、WDMカプラ31、Er添加光ファイバ(EDF)51、WDMカプラ32及び光アイソレータ22を備えるとともに、さらに、WDMカプラ31に接続された励起光源41、及び、WDMカプラ32に接続された励起光源42を備える。EDF51は、波長1607nmにおいて、基底モードに対するモードフィールド径(MFD)が10μm以上であり、基底モードに対するMAC値(=MFD/カットオフ波長)が6.8以下である。
【選択図】 図1

Description

この発明は、光を増幅し得る光増幅用ファイバ、この光増幅用ファイバを含む光増幅モジュール、この光増幅モジュールを含む光通信システム、及びこの光増幅モジュールを利用した光増幅方法に関するものである。
光通信システムに要求される伝送容量は増大しつつあり、現在主流となっている波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)光伝送における信号チャネル数は増大を余儀なくされている。然るに、従来どおりのチャネル間隔(波長間隔)のまま、チャネル数を増大させれば、必要となる信号波長帯域幅が広がってしまい、現時点で使用可能な光増幅技術であるEr添加光ファイバ増幅器(EDFA: Erbium-Doped Fiber Amplifier)の光増幅帯域をも上回ってしまう可能性がある。一方、チャネル間隔を、従来のITUグリッドの100GHzから50GHzへ、更には25GHzへと半減させて、信号光を高密度化することは、光増幅帯域の幅は従来通りで、伝送容量を増大させるという観点からは、望ましいアプローチである。
ただし、信号光を高密度化する場合、四光波混合(FWM: Four-Wave-Mixing)に代表される信号チャネル間の非線形相互作用が増強されて、信号品質が劣化することが懸念される。FWMにおける共役波の発生効率ηは以下の式(1)で近似され、チャネル間隔Δλが半減した場合には、発生効率ηは16倍(デシベル換算で12dB)にもなると予想される。
Figure 2005101590
ここで、αは、伝送用ファイバの場合は吸収係数であり、光増幅用ファイバの場合は単位長さ当りの吸収条長積ピークである。例えばEr添加光ファイバ(EDF: Erbium-Doped Fiber)の場合、αは、Er添加濃度、Er添加領域と信号光モードフィールドとの重なり、ならびに、ガラス組成により決まるErイオンの吸収断面積により決定される。さらに、MFD(Mode Field Diameter)は信号光の基底モードに対するモードフィールド径であり、Dは波長分散であり、Δλはチャネル間隔である。なお、Δλのみは信号光源側の設定に依存するパラメータであるので、純粋にEDFの特性を比較するため、便宜的に以下の式(2)に示されたηを導入する。
Figure 2005101590
上記式(1)(または、上記式(2))中でΔλと同じ次数を有するのはMFDのみであり、MFDの拡大がηの低減には最も有効である。この現象は、伝送用ファイバのみならず中継器として利用されるEDFA(Erbium-Doped Fiber Amplifier)などの光ファイバ増幅器の内部でも発生することが指摘されている。この傾向は、特に長尺のEDFを必要とするLバンドEDFAの内部で顕著である。
上記(1)式中のη(または、上記式(2)中のη)を低減するための、最も単純で他のパラメータと独立した手法は、特許文献2の実施例1又は3のように、Er濃度を高めることである。しかしながら、Er濃度が高くなり過ぎると、Erイオン同士がエネルギーの授受を行い光増幅に関与しなくなる現象(いわゆる濃度消光)が顕在化して、励起効率が劣化する。
上記式(1)中のη(または、上記式(2)中のη)を低減するための他の手法として、特許文献1又は特許文献2には、コア径を増大させること、Er添加領域の直径を拡大すること、MFDを拡大すること、屈折率プロファイルを工夫して波長分散を大きくすること等が提案されている。
加えて、非特許文献1には、マルチモード光増幅用ファイバへのシングルモード信号光入力に、複雑なレンズ系により構成されたモードコンバータを利用する技術が開示されている。このマルチモード光増幅用ファイバにおける基底モード光の伝搬可能な長さは、高次モードへの結合効率が1/eとなる長さに設定され、このように緩い基準でも伝搬可能な長さは3m程度である。また、特許文献3におけるマルチモード光増幅用ファイバにおける基底モード光の伝搬可能長さは、精々1.1mである。
特許第3228374号公報 特開2000−31571号公報 米国特許第5,818,630号 M.E. Fermann, "Single-mode excitation of multimode fibers with ultrafast pulses", Optics Letters, Vol. 23, No. 1, p. 52, 1998 T. Mizuochi, et al., OFC96, Tech. Dig., WF2, 1996
発明者らは、従来の光増幅用ファイバについて検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、上記式(1)から明らかなように、チャネル間隔Δλと同じ次数を有するのはMFDのみであり、MFDの拡大がηの低減には最も有効である。然るに、上記特許文献1及び特許文献2において、MFDを拡大した構成は、特許文献1の実施例2及び特許文献2の実施例3のみである。これは、MFDを拡大して、かつ上記全ての従来技術のようにカットオフ波長をすべての信号光波長より短く保とうとすれば、MAC値(=MFD/カットオフ波長)の増大につながり、曲げロスの増加が顕在化してしまうためである。
また、上記特許文献3及び非特許文献1に示されたマルチモード光増幅用ファイバのコア径、45〜50μmと大き過ぎるため、Lバンド信号光に対する増幅利得を十分に稼ぐ程度の長さが確保できない。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、光周波数間隔が25GHz以下に高密度化された複数信号チャネルを含む信号光(複数信号チャネルが多重化された多重化信号光)であっても信号チャネル間の非線形相互作用を低減することができかつ曲げロスをも低減することができる構造を備えた光増幅用ファイバ、光増幅モジュール、光通信システム及び光増幅方法を提供することを目的としている。
この発明に係る光増幅用ファイバは、光を増幅し得る光ファイバであって、光増幅帯域の最長波長(Lバンドの信号増幅を想定しているため1607nm)における諸特性として、基底モードに対して10μm以上のモードフィールド径と、基底モードに対して6.8以下のMAC値を有する。このような構成により、この光増幅用ファイバは、信号チャネルが高密度化された多重化信号光が伝搬する場合であっても、信号チャネル間の非線形相互作用を効果的に低減することができ、かつ、曲げロスをも効果的に低減することができる。
この発明に係る光増幅用ファイバは、モードフィールド径より大きく、かつモードフィールド径の2倍より小さい直径のEr添加領域を備えるのが好ましい。この場合、吸収条長積が高く、励起効率の悪化が抑制される。また、コア部分の直径も、モードフィールド径より大きく、かつモードフィールド径の2倍より小さいのが好ましい。この場合、曲げ損失に強く、モードフィールド径を大きくすることが可能になる。
この発明に係る光増幅用ファイバは、光増幅帯域全体において、伝搬可能な横モードの数が2以上40以下であるマルチモード光増幅用ファイバであるのが好ましい。この場合、十分に非線形相互作用を低減することができ、かつ、実装時に不都合を生じない。
上述のような構造を備えた光増幅用ファイバは、入力端から入力された信号光を増幅し、増幅された信号光を出力端から出力する光増幅モジュール(この発明に係る光増幅モジュール)への適用が可能である。この場合、光増幅モジュールは、入力端と出力端との間に位置する信号光の伝搬経路の少なくとも一部を構成する第1光増幅用ファイバとして、上述のような構造を備えた光増幅用ファイバ(この発明に係る光増幅用ファイバ)を備える。光増幅モジュールでは、この第1光増幅用ファイバ内において信号光が増幅されるので、信号チャネル間の非線形相互作用が効果的に低減され得る。
この発明に係る光増幅モジュールは、入力端と出力端との間に位置する信号光の伝搬経路の少なくとも一部を構成し、基底モード光に対して光増幅帯域の最短波長(波長1607nm)より短いカットオフ波長を有する第2光増幅用ファイバをさらに備えるのが好ましい。この第2光増幅用ファイバは、上記第1光増幅用ファイバの光入射端側に配置されるのがよい。この場合、第1及び第2光増幅用ファイバ双方により信号光が増幅されるので、信号チャネル間の非線形相互作用が効果的に低減されるとともに、励起効率の劣化が効果的に抑制され得る。また、この発明に係る光増幅モジュールは、第2光増幅用ファイバとして2つの光ファイバが、第1光増幅用ファイバの光入射端側及び光出射端側の双方に配置された構成であってもよい。この場合、さらに、雑音指数の劣化が効果的に抑制され得る。
この発明に係る光増幅モジュールにおいて、上記第1光増幅用ファイバはEr添加光ファイバであってもよい。また、上記第2光増幅用ファイバもEr添加光ファイバであってもよい。この場合には優れた励起効率が得られる。
この発明に係る光増幅モジュールにおいて、上記第1光増幅用ファイバにおけるコア領域は、中心から径方向に所定距離離れた位置が最大となる屈折率プロファイルを有するのが好ましい。この場合、上記第1光増幅用ファイバのモードフィールド径が拡大されて、信号チャネル間の非線形相互作用が十分に低減され得る。また、この発明に係る光増幅モジュールは、上記第1光増幅用ファイバと第2光増幅用ファイバとの間に配置された接続用ファイバを備えてもよい。この接続用ファイバのコア領域は、第1光増幅用ファイバのコア径と同程度の外径を有するとともに、中心において最大となる屈折率プロファイルを有するのが好ましい。この場合には融着接続損失が低減され得る。
この発明に係る光増幅モジュールは、上記第1光増幅用ファイバの光入射端及び光出射端の少なくとも一方側に融着接続されたシングルモードファイバをさらに備えてもよい。この場合、融着接続による接続損失は、0.3dB以下であるのが好ましい。加えて、これら第1光増幅用ファイバとシングルモードファイバとの接続損失の変化は、−5〜+65℃の温度範囲において0.2dB以下であるのが好ましい。
この発明に係る光増幅モジュールにおいて、上記第1光増幅用ファイバと上記シングルモードファイバは、加熱時間と過熱パワーとの積がシングルモードファイバ同士が融着接続される際の加熱時間と加熱パワーの積と同じになるかそれよりも小さくなる条件で融着接続されるのが好ましい。具体的に上記第1光増幅用ファイバと上記シングルモードファイバとを融着接続する際の加熱時間は、実用的な単純構成を実現可能にするとともに製造を容易にするため、シングルモードファイバ同士が融着接続される際の加熱時間の2/3程度であるのが好ましい。
また、この発明に係る光増幅モジュールにおいて、上記第1光増幅用ファイバと上記シングルモードファイバの融着接続部分で発生するクロストークは、電力比で一箇所当たり0.6%以下であるのが好ましい。また、上記シングルモードファイバとして、2つの光ファイバが第1光増幅用ファイバの光入射端と光出射端のそれぞれに融着接続された構成において、第1光増幅用ファイバの光入射端において高次モードに変換される一方で光出射端において基底モードに変換される光成分と、基底モードのまま第1光増幅用ファイバを伝搬する光成分とのクロストークは、電力比で45dB以上であるのが好ましい。
一方、この発明に係る光増幅モジュールにおいて、上記第1光増幅用ファイバは、Lバンド利得を稼ぐのに十分な長さを有するのが好ましい。具体的に上記第1光増幅用ファイバは、320dBの吸収条長積に相当する長さを有するのが好ましい。また、この発明に係る光増幅モジュールにおいて、上記第1光増幅用ファイバは、単位長当たり17.2dB/m以上の吸収条長積ピークを有するのが好ましい。
この発明に係る光通信システムは、上述のような構造を備えた光増幅モジュールが信号光伝送経路上に配置された構成を備える。そして、互いに隣接する2チャネルの光周波数間隔が25GHz以下である複数チャネルの信号光は、上記光伝送経路を伝搬する途中、この光増幅モジュールにより増幅される。この光通信システムは、光周波数利用効率が高く、信号光チャネル間の非線形相互作用が低減される。
なお、この発明に係る光増幅方法は、上述のような構造を備えた光増幅モジュールを利用し、互いに波長が異なる複数チャネルの信号を増幅するための光増幅方法であって、第1光増幅用ファイバへの総信号光入力パワーを+10dBm以上になるように設定する。この場合、信号チャネル間の非線形相互作用が効果的に低減されるとともに励起効率の劣化が効果的に抑制され得る。
この発明によれば、高密度化された複数信号チャネルを含む多重化光の伝送であっても信号チャネル間の非線形相互作用が効果的に低減されるとともに、曲げロスも効果的に低減され得る。
以下、この発明に係る光増幅用ファイバ、光増幅モジュール、光通信システムおよび光増幅方法の各実施形態を、図1〜図23を用いて詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、この発明に係る光増幅モジュールの第1実施形態の構成を示す図である。この図1において、第1実施形態に係る光増幅モジュール1は、入力端である入力コネクタ11を介して入力されたCバンド又はLバンドの信号光(複数信号チャネルが多重化された多重化信号光)を増幅し、増幅された信号光を出力端である出力コネクタ12介して外部(伝送用ファイバ)へ出力する。この光増幅ジュール1は、入力コネクタ11から出力コネクタ12へ至る信号光伝搬経路上に順に配置された、光アイソレータ21、WDMカプラ31、Er添加光ファイバ(EDF)51、WDMカプラ32及び光アイソレータ22を備える。また、この光増幅モジュール1は、WDMカプラ31に接続された励起光源41、及び、WDMカプラ32に接続された励起光源42も備えている。EDF51の両端は、接続端子としてのシングルモードファイバ81、82に融着接続されている。なお、図中の矢印A、Bは、EDF51とシングルモードファイバ81、82の融着接続部分を示す。
光アイソレータ21は、入力コネクタ11からWDMカプラ31へ向かう順方向には光を通過させるが、逆方向には光を通過させない。WDMカプラ31は、光アイソレータ21から到達した信号光をEDF51へ出力するとともに、励起光源41から到達した励起光もEDF51へ出力する。WDMカプラ32は、EDF51から到達した信号光を光アイソレータ22へ出力するとともに、励起光源42から到達した励起光もEDF51へ出力する。光アイソレータ22は、WDMカプラ32から入力コネクタ12へ向かう順方向には光を通過させるが、逆方向には光を通過させない。また、励起光源41、42それぞれは、EDF51に添加されたErイオンを励起し得る波長(0.98μm又は1.48μm)の励起光を出力する。
EDF51は、石英ガラスを主成分とし、コア領域にEr元素が添加された光ファイバであって、WDMカプラ31、32から励起光が供給されることで、WDMカプラ31から到達した信号光を増幅する。増幅された信号光はWDMカプラ32へ出力される。具体的に、EDF51は、光増幅帯域全体において、伝搬可能な横モードの数が2以上40以下のマルチモード光ファイバであるのが好ましい。
この光増幅モジュール1において、励起光源41から出力された励起光はWDMカプラ21を経てEDF51に順方向に供給され、励起光源42から出力された励起光はWDMカプラ22を経てEDF51に逆方向に供給される。入力コネクタ11から入力された信号光は、光アイソレータ21、WDMカプラ31を順に通過して、EDF51に到達し、このEDF51において増幅される。EDF51において増幅された信号光は、WDMカプラ32、光アイソレータ22を順に通過して、出力コネクタ12から外部へ出力される。
特に、この第1実施形態に係るEDF51は、光増幅帯域の最長波長すなわち波長1607nmの諸特性として、基底モード光に対して10μm以上のモードフィールド径(MFD)と、基底モード光に対して6.8以下のMAC値(=MFD/カットオフ波長)を有する。このような構成により、EDF51は、光周波数間隔が25GHz以下に高密度化された複数信号チャネルを含む多重化信号光が伝送される場合であっても、信号チャネル間の非線形相互作用を効果的に低減するとともに、曲げロスも効果的に低減する。また、EDF51におけるコア領域の直径は、モードフィールド径より大きく、モードフィールド径の2倍より小さいのが好ましい。
次に、EDF51の具体例について比較例とともに説明する。図2は、このEDF51として用意されたEDF(タイプA、B)と比較例であるEDF(タイプC)の諸元を纏めた表である。図2の表に示されたタイプA〜CそれぞれのEDFは、略ステップインデックス型の屈折率プロファイルを有する。ただし、タイプCのEDFは比較例ではあるが、Er濃度及び基底モード光に対するカットオフ波長が最適化されており、従来のEDFと比較してFWM発生効率が低減されている。
タイプA、BのEDFは、基底モード光に対するカットオフ波長が信号光波長域より長く、原理的に伝搬可能なモード数が20〜30以上に及んでいる。然るに、接続部分において著しい軸ずれ等が生じない限り、高次モードの励振の証左である接続損失は発生せず、通常のシングルモードファイバとの接続損失が常に0.3dB以下であった。融着部分を含めて、タイプA、BのEDFをヒートサイクル(HC)に投入しても、利得及び雑音指数(NF:Noise Figure)に異常は生じなかった。これは、Er自体の蛍光・吸収特性の温度依存性により、利得は高温ほど劣化するが、雑音指数特性の変化は概ね測定誤差である±0.1dBの範囲内で、有意な劣化は見られない。HC終了後(再び25℃としたとき)には利得もヒートサイクル前の値に回復するので、融着接続損失の劣化はないことによる(非特許文献2参照)。
図3は、タイプBのEDF(長さ4.8m)の温度−5℃、25℃、65℃及びHC後(25℃)それぞれでの利得特性を示すグラフである。また、図4は、タイプBのEDF(長さ4.8m)の温度−5℃、25℃、65℃及びHC後(25℃)それぞれでの雑音指数特性を示すグラフである。これらグラフは、タイプBのEDFの光入力端側と光出力端側のそれぞれに通常のシングルモードファイバを直接融着接続し、1.48μm波長帯、200mWの励起光で双方向励起したときの測定結果であり、EDF温度は、25℃、−5℃、65℃、25℃の順に設定される(ヒートサイクル)。ただし、更にコア径を拡大して伝搬モード数が200以上となるEDFでは、顕著な接続損失が観測された。以上から、マルチモードEDFであっても、伝搬モード数が40以下のEDFであれば、基底モードの信号光の増幅に支障が無いことが見出せた。すなわち、−5℃〜65℃のHC後も利得の変化量は0.4dB以内である。測定対象の融着部分は光入射端と光出射端の2箇所存在するため、一箇所当たりの0.2dB以下である。なお、図3及び図4において、利得が温度に依存して変化しているように見えるのは、EDF自体の特性として利得が温度変化に依存しているためである。
さらに、図5は、タイプBのEDF(長さ25.2m)の温度−5℃、25℃、65℃及びHC後(25℃)それぞれでのLバンドにおける利得特性を示すグラフである。また、図6は、タイプBのEDF(長さ25.2m)の温度−5℃、25℃、65℃及びHC後(25℃)それぞれでのLバンドにおける雑音指数特性を示すグラフである。これらグラフも、タイプBのEDFの光入力端側と光出力端側のそれぞれに通常のシングルモードファイバを直接融着接続し、1.48μm波長帯、200mWの励起光で双方向励起したときの測定結果であり、EDF温度は、25℃、−5℃、65℃、25℃の順に設定される。HCの過程においても、利得、雑音指数特性にはリップルは生じず(なお、EDFの増幅特性自体に温度依存性があるため利得傾斜は変化する)、HC後に利得、雑音指数特性とも0.15dBp−p以下の変化しか生じなかった。したがって、Lバンドにおいても、シングルモードファイバとタイプBのEDFとの間の融着は、温度に依存せず高い信頼性が得られることが分かる。
なお、上述の「高次モードが発生していない事実」の傍証として、10Gbit/s−NRZ信号を、図2に示されたタイプBのEDFを、吸収条長積=約570dB相当の長さ(約18.2m)だけ用いたEDFA(図1に示された光増幅モジュール1)で増幅した場合とそうでない場合(つまりバックトゥバック)のビットエラーレート(BER)を測定した。図7(a)は、測定系の構成を示す図である。この測定系において、信号光源は、波長1581.2nmの光を出力する分布帰還形レーザ130(DFB−LD)と、パルスパターン生成器110から発生したパルスパターンに従ってDFB−LD130からのレーザ光変調する外部変調器140で構成されている。被測定対象であるEDFA(光モジュール1)から出力された光は、可変減衰器150を介して10Gbps光受信器160で受信され、制御システム100におけるエラー検出器120によりBERが測定される。図8には、BER測定結果が示されている。なお、PRBSは31段、EDFA1の入/出力パワーはそれぞれ−3/+15dBm(つまり動作利得=18dB)である。
図8から分かるように、増幅していない場合(バックトゥバックの場合)と比較して、EDFAを通過させたことによるBERの劣化は殆ど生じていない。なお、BERの測定の際に、併せてジッタを評価したが、ピークトゥピークで、EDFA挿入前が18.7psであったのに対し、EDFA挿入後は17.3psと、こちらも殆ど有意な差がなく劣化は観測されなかった。
融着接続部A、B、若しくはEDF伝搬の過程において基底モードから高次モードに結合した光成分が生じたとして、そのクロストークをXとすると、伝送品質に影響を与えるのは、EDFの光出射端で再び基底モードに結合する光成分なので、パワーペナルティP(dB)は、以下の式(3)で与えられる。
Figure 2005101590
上記式(3)から分るように、Pは明らかに測定誤差限界(通常0.1dB程度)以下であり、ここからXを求めると−45dB以下であることが分かる。
また、高次モード光の励振が融着接続部でのみ発生する場合、EDFの光入射端で基底モードから高次モードに結合し、そして光出射端で高次モードの一部が基底モードに再び戻った光成分がクロストーク成分となるので、接続箇所一箇所当りのクロストークは、最悪でも−22.5dB(=0.6%)となっていることが分かる。
一方、EDF内部でのみクロストークが発生する場合、上記特許文献3に示されたように、EDFが長いほどにクロストークは大きくなるが、18.2mもの長さに渡って発生するクロストークが−45dB以下であることが分かる。なお、後述する図10からも分かるように、EDFがあまりに短いと励起効率の観点から不利である。信号入力が+10dBmであったとしても、EDFには、Lバンド平坦化利得に換算して10dB以上の吸収条長積に相当する長さが望ましい。そして、後述するように、吸収条長積=570dBがLバンド平坦化利得=18dBに相当する。したがって、上記Lバンド平坦化利得≧10dBに相当する吸収条長積は320dBであることが分かる。
なお、吸収条長積=320dBを満たすEDFの長さがあまり長過ぎてはクロストークが悪化する恐れがある。上述の測定結果から少なくとも18.2mでは通信品質上の悪影響は無視できる。したがって、EDFとしての単位長当り吸収条長積ピーク(α1.53)は320/18.2=17.2dB/m以上であることが好ましい。
仮に、上記非特許文献1に示されたように1/eの割合で結合が生じてしまった場合、甚大なパワーペナルティが発生することが分かる。すなわち、この非特許文献1の基準は、信号品質が要求される用途ではあまりに緩すぎて役に立たない。
特質すべきは、EDF51は、上記特許文献3及び非特許文献1のように複雑なレンズ系を要するOptical Imaging Systemが不要で、通常のシングルモードファイバ81、82との直接融着接続で、良好なクロストークが実現できる点である。EDF51の場合、図2のタイプA、BのEDFのようにMFDが通常のシングルモードファイバに近いので、こうした簡便で実用的な接続が可能となる。むしろ、通常のシングルモードファイバ同士を融着する条件以上に、加熱時間を短くした方が良好な融着損失が得られる。タイプBのEDFにおける最適な融着条件を図7(b)に示す。ただし、融着機は住友電気工業製Type35SEを使用した。この例では、融着はアーク放電によって行なっている。放電時間が短いので、放電棒の減価償却をも抑えることが可能である。なお、融着機は放電によるものばかりではなく、フィラメントによる加熱を利用したものも存在する。この例でも過熱時間が短くなるので、フィラメント部分の寿命を延長できるというメリットがある。また、図7(b)の融着条件は、タイプAとシングルモードファイバとの融着接続の場合にも当てはまる。
タイプA、BのようなMFDを拡大したEDFにおいて、次に懸念されるのは、パワー変換効率(PCE: Power Conversion Efficiency)の悪化である。すなわち、励起光及び信号光のいずれも、モードフィールドが広がるので、単位面積当りの光パワー、すなわち、光強度が低下してしまう。ただし、PCEは、EDF内部の反転分布、信号光入出力レベル、励起方式(順方向、逆方向、双方向)といった種々の動作条件の影響を受ける。最も汎用的な条件を考えると、まずWDM信号増幅においては、利得平坦度の維持が重要となる。すなわち、反転分布は常に一定とすることが望ましい。また、PCEに優れるのは1.48μm帯励起であり、かつ最も多く使われるのはPCE及び雑音指数特性の双方を良好とする双方向励起方式である。
以上を勘案して、順方向及び逆方向の間の励起パワー配分を1:1に保つとともに、反転分布も常に利得偏差最小となるように保った状態で、EDFの長さ(利得(dB)の大きさと比例)及び信号入力パワーを変えながらPCEが測定された。通常のシングルモードEDFにおいて、PCEの長さへの依存性は、Cバンドにおいては殆ど不変である一方、Lバンドでは信号入力パワーに大きく依存することが知られている。然るに、タイプBのEDFのPCEを測定したところ、図9及び図10に示されたとおり、CバンドでもLバンドでも、信号入力パワーに対する顕著な依存性が観測された。これは光強度が低下することにより、吸収から増幅に転じる閾値励起パワーが増大するためであると考えられる。図9は、タイプB、CそれぞれのEDFについてのCバンドにおける利得とPCEとの関係を示すグラフである。また、図10は、タイプB、CそれぞれのEDFについてのLバンドにおける利得とPCEとの関係を示すグラフである。
すなわち、信号入力パワーが大きいほどPCEは改善されるが、当然無限に改善される訳はなく、ある程度以上の信号入力パワーでPCE改善も飽和する。図9を見ると、信号入力パワーが+12dBmであるときは、タイプBのEDFといえども、従来のタイプCのEDFと遜色ないPCEを示す。すなわち、信号入力パワーが高い動作条件に選択的に使用する限りは、MFDが拡大されたこの発明の実施形態に係るEDFを使用しても、PCEの劣化は最小限に抑えられると考えられる。図10のLバンドでのPCEは、信号入力パワーが+12dBmであるときのタイプBのEDFは、信号入力パワーが+5dBmであるときのタイプCのEDFより20%程度低いが、信号入力パワーが増加すると共に劣化量が軽減されることは確かである。
図1に示されたように、第1実施形態に係るマルチモードEDF51は、信号入力パワーが元々高い動作条件(好ましくは+10dBm以上)で、単独で使用されてもよい。あるいは、図11及び図12それぞれに示されたように、EDF51は、その光入射端側で他のEDF61により信号入力パワーを或る程度のレベル(好ましくは+10dBm以上)まで高めて、その後に信号光が注入されてもよい(この発明に係る光増幅方法)。
なお、図7は、この発明に係る光増幅モジュールの第2実施形態の構成を示す図である。この第2実施形態に係る光増幅モジュール2は、WDMカプラ31とEDF51との間に配置された他のEDF61を備える点で第1実施形態と相違する。EDF61は、石英ガラスを主成分とし、コア領域にEr元素が添加された光ファイバであって、WDMカプラ31、32から励起光が供給されることで、WDMカプラ31から到達した信号光を増幅してEDF51へ出力する。また、EDF61は、基底モード光に対して光増幅帯域の最短波長(波長1607nm)より短いカットオフ波長を有しており、光増幅帯域においてシングルモードである。なお、図11において、矢印Aは接続端子であるシングルモードファイバ81とEDF61との融着接続部分を示し、矢印BはEDF61とEDF51の融着接続部分を示し、矢印CはEDF51と接続端子であるシングルモードファイバ82との融着接続部分を示す。
この第2実施形態に係る光増幅モジュール2において、励起光源41から出力された励起光は、WDMカプラ21を介してEDF61及びEDF51に順方向に供給され、励起光源42から出力された励起光はWDMカプラ22を介してEDF51及びEDF61に逆方向に供給される。入力コネクタ11に信号光が入力されると、その信号光は、光アイソレータ21及びWDMカプラ31を順次通過し、EDF61及びEDF51において増幅される。増幅された信号光は、WDMカプラ32及び光アイソレータ22を順次通過して出力コネクタ12から外部へ出力される。
図12は、この発明に係る光増幅モジュールの第3実施形態の構成を示す図である。この第3実施形態に係る光増幅モジュール3は、EDF51の光入射端側及び光出射端側の双方にEDF61、62が配置されている点で、上述の第2実施形態と異なる。特にEDF62は、石英ガラスを主成分とし、コア領域にEr元素が添加された光ファイバであって、WDMカプラ31、32から励起光が供給されることで、EDF51から到達した信号光を増幅する。そして、光増幅した信号光はこのEDF62からWDMカプラ32へ出力される。また、EDF62は、EDF61と同様に、基底モード光に対して光増幅帯域の最短波長(波長1607nm)より短いカットオフ波長を有しており、光増幅帯域においてシングルモードである。
この第3実施形態に係る光増幅モジュール3において、励起光源41から出力された励起光はWDMカプラ21を介してEDF61、EDF51及びEDF62に順方向に供給され、励起光源42から出力された励起光はWDMカプラ22を介してEDF62、EDF51及びEDF61に逆方向に供給される。入力端11に信号光が入力されると、その信号光は、光アイソレータ21及びWDMカプラ31を順に通過して、EDF61、EDF51及びEDF62において増幅される。この光増幅された信号光は、WDMカプラ32及び光アイソレータ22を順に通過して、出力コネクタ12から外部へ出力される。
上述の第2及び第3実施形態のような、マルチモードEDFとシングルモードEDFとの複合構成において、PCEと非線形性抑圧とのトレードオフを追及する場合、より出力コネクタ12側に位置するEDFの性質がPCEにより大きく影響するので、PCEが低い非線形抑圧EDFを出力端側に使用することは望ましくない。PCEの改善を目指すには、図12に示されたような3分割構成が望ましい。
図13は、EDF51としてタイプAのEDFが適用された第1実施形態に係る光増幅モジュール1の信号光出力スペルトルである。図14は、EDF51としてタイプBのEDFが適用された第1実施形態に係る光増幅モジュール1の信号光出力スペルトルである。図15は、EDF51としてタイプBのEDFが適用されるとともにEDF61としてタイプCのEDFが適用された第2実施形態に係る光増幅モジュール2(2分割構成)の信号光出力スペルトルである。さらに、図16は、EDF51としてタイプBのEDFが適用されるとともにEDF61、62としてタイプCのEDFが適用された第3実施形態に係る光増幅モジュール3(3分割構成)の信号光出力スペルトルである。なお、図17は、比較例としてタイプCのEDFが適用された光増幅モジュール(第1実施形態に係る光増幅モジュール1と同じ構成)の信号光出力スペルトルである。
図13〜図17それぞれでは、吸収条長積は570dBに設定され、順方向及び逆方向それぞれの励起パワーの比が1:1に設定された状態で双方向励起される。励起光波長は1.48μm帯であり、入力コネクタ11への総信号入力パワーは+10dBmであり、出力コネクタ12からの総信号出力パワーは+28dBmである。2分割構成(図11、図15)におけるタイプCのEDF61の長さは10mであり、3分割構成(図12、図16)におけるタイプCのEDF61、62それぞれの長はそれぞれ5mである。信号チャネルは16チャネルとし、各信号チャネル波長は1574.6nm、1578.7nm、1579.6nm、1582.8nm、1585.3nm、1586.2nm、1587.88nm、1588.76nm、1590.4nm、1592.16nm、1595.48nm、1598.08nm、1599.72nm、1601.4nm、1604.9nm、1607.56nmである。
図18は、図13〜図17それぞれに示された信号光出力スペルトルにおけるFWMクロストーク(信号レベルとその近傍の共役波のレベル差)と所要励起パワーとの関係を示すグラフである。タイプCのEDFと比べ、タイプBのEDFの所要励起パワーは0.4dB程度高く、タイプCのEDFの所要励起パワーは0.7dB程度高い。2分割構成での所要励起パワー増加分は僅かに0.2dB程度で、3分割構成に至っては励起パワーの有意差はない。また、3分割構成でのFWMクロストークは劣化するが、それでもタイプCのEDF単体の場合と比較すれば6dB以上の改善が得られる。以上の結果から、タイプBのEDFを用いれば、タイプCのEDFの場合と比較して、所用励起パワーの増加を0.4dBに抑えつつ、10dBを超えるFWMクロストークの改善が得られることが分かる。なお、タイプCのEDFは、従来のEDFと比べれば、ηが2.5dB程度抑圧されているので、Δλ半減の効果を相殺する12dB以上のη抑圧が実現できている。
また、マルチモードEDFとシングルモードEDFとの複合構成をとることにより、ある程度、設計に自由度が得られ、用途に応じてPCEとFWMクロストークとのトレードオフを見出すことも可能である。なお、3分割構成のようにEDFの分割数が増えると、EDF間の接続損失が問題となる。図13〜図18の結果を得た際の実験では通常の融着接続が行われたが、このままでは融着接続部分においてモードフィールド径の乖離が存在するので、融着接続部分を加熱してモードフィールド径の差を縮小するTEC(Thermally Expanded Core)接続などの適用がより好ましい。
図18を見ると、タイプAのEDFが使用された場合、PCEは間違いなく劣化しているが、FWMクロストークは、タイプBのEDFと比較して殆ど変っていない。この結果は、図2の表に示されたモードフィールド径(MFD)の計算結果と矛盾する。そこで、タイプA〜CそれぞれのEDFのモードフィールドを数値計算により求めた。図19は、タイプA〜CそれぞれのEDFのモードフィールド及びEr添加領域を示すグラフである。この図19中において横方向の矢印はコア径を表す。また、図20は、タイプA〜CそれぞれのEDFの屈折率プロファイルである。中央付近が著しく凸形となった屈折率プロファイルを有するタイプAのEDFは、モード広がりを余り示さず、コア径が大きいにも関わらず、モードフィールド径が寧ろタイプBのEDFより小さくなってしまった。この結果は、図18に見られるタイプAのEDFとタイプBのEDFとでFWM抑圧比に大差なかったという事実からも裏付けられる。
なお、モードフィールドが狭い筈のタイプAのEDFのPCEがタイプBのEDFより劣悪である理由は、図19から明らかなように、タイプAのEDFではEr添加領域がモードフィールド径(僅か9μm程度)より大幅に広く、直径18.4μmのコア領域全体に及んでいることにある。要するに、タイプAのEDFではEr添加領域とモードフィールド径との間に略2倍もの差がある訳で、ここまでEr添加領域の方が広いと、Er添加領域と信号光モードフィールドとの重なりの増大によるαの向上という観点からも無意味である。そもそもコア領域から7μm以上離れた領域ではErは単なる吸収体としてしか作用しない。これがタイプAのEDFが低いPCEを示した理由である。
以上から、この発明に係る光増幅用ファイバとしてのEDFの屈折率プロファイルは、図21中の実線で示されたように、屈折率が最大となる位置がファイバコアの中心から径方向に所定距離離れた部分になる方が、モードフィールド制御の観点からは、望ましいことが分かる。この時のモードフィールド予想値が図19中の曲線Dとして示されている。
石英系ファイバの場合、GeやAl等の添加物の濃度が高いほど屈折率が高くなるので、Ge又はAlの添加濃度は、コア中心から径方向に所定距離離れた位置でピークとなることが好ましい。コア中心において屈折率が極小となるなら更によい。その一方、Erの添加領域は、タイプAのEDFのようなPCEの劣化を招かぬように、モードフィールドと過不足なく重畳されていることが好ましい。すなわち、タイプAのEDFの結果から明らかなように、Er添加領域径は、信号光に対するモードフィールド径の2倍を超えない方がよい。PCEの観点のみから考えれば、Erはコア中心のみ部分的に添加された方が好ましいが、この場合、αの値の低減を招く可能性がある。部分添加とまでしなくとも、図21中に点線で示されたような凸形状のEr添加濃度プロファイルとすればPCE改善には有用である。こうしたEr添加とともに行われるGe又はAlの選択的な添加は、コアを何層かに分けてスス付けするMCVD法などで実現可能である。添加物の供給は、液浸でもよいが、気相で行った方が制御性は優れている。
もっとも、図21中の実線で示されたような屈折率プロファイルの場合、シングルモードファイバとの融着において、高次モード光が励振し易くなる。そのために融着時には端面のカットの許容角などに注意が必要である。こうした問題を避けるために、図22に示されるような光モジュール4を構成すればよい。
図22は、この発明に係る光増幅モジュールの第4実施形態の構成を示す図である。この第4実施形態に係る光増幅モジュール4は、EDF51の光入射端側に接続用ファイバ71を備えるとともに、EDF51の光出射端側に接続用ファイバ72を備える点、第1実施形態と異なる。EDF51は、図21中の実線で示されたような凹形状の屈折率プロファイルを有する。接続用ファイバ71、72は、図21中の点線で示されたような凸形状の屈折率プロファイルを有するマルチモード光ファイバである。接続用ファイバ71は、WDM31に接続された接続端子としてのシングルモードファイバ81とEDF51との間にバッファとして挿入されている。また、接続用ファイバ72は、WDM32に接続されたシングルモードファイバ82とEDF51との間にバッファとして挿入されている。接続用ファイバ71、72及びEDF51それぞれのコア径は略等しいことが好ましい。なお、接続用ファイバ71、72は、特に光増幅用ファイバである必要はないが、光増幅用ファイバであった方が、通常ファイバから光増幅用ファイバに到達するまでの挿入損が軽減されるのでより好ましい。
以上のような構造を有する光増幅モジュール1〜4は、光通信システムに適用可能であり、この光増幅モジュールにより多重化信号光が増幅される。図23は、この発明に係る光通信システムの構成を示す図である。すなわち、光通信システムは、光送信器200と光受信器300との間に配置された伝送用ファイバ410、420で構成される信号光伝送経路上に中継器として光増幅モジュール400(上述のような光増幅モジュール1〜4に相当)が配置された構成を有する。なお、伝送される複数信号チャネルを含む多重化信号光は、隣接する2チャネルの光周波数間隔が25GHz以下であるのが好ましい。このような場合であっても、光増幅モジュールにおけるFWM発生が抑制されて、高品質の信号光伝送が可能である。
この発明は、上述のような実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述の実施形態に係る光増幅用ファイバにおけるホストガラスは石英系ガラスであるが、例えばテルライトガラスやBi系ガラスなどであってもよい。テルライトガラスやBi系ガラスがホストガラスとして適用された場合、非線形性は高いものの、Erの濃度消光抑圧には有効である。また、増幅も必ずしもErイオンによってではなく、その他の希土類元素(例えばTm、Pr等)や遷移金属元素(例えばBi、Cr等)であってもよい。こうした新組成の光増幅用ファイバは、往々にして製造が困難で、必ずしもシングルモード構造を実現することが容易ではない。しかしながら、この発明のようにマルチモード構造を許容することで、ここで述べられたような新組成による光増幅用ファイバの製造も容易になる。
産業上の利用分野
この発明に係る光増幅用ファイバは、例えば周波数間隔25GHz以下に高密度化された複数信号チャネルを含む多重化信号光の伝送する光通信システムにおいて、信号チャネル間の非線形相互作用が効果的に低減するとともに曲げロスをも効果的に低減し得る光増幅モジュールへ適用され得る。
この発明に係る光増幅モジュールの第1実施形態の構成を示す図である。 この発明に係る光増幅用ファイバとして用意されたEDF(タイプA、B)とその比較例であるEDF(タイプC)それぞれのEDFの諸元を纏めた表である。 タイプBのEDF(長さ4.8m)の温度−5℃、25℃、65℃及びHC後(25℃)それぞれでのCバンドにおける利得特性を示すグラフである。 タイプBのEDF(長さ4.8m)の温度−5℃、25℃、65℃及びHC後(25℃)それぞれでのCバンドにおける雑音指数特性を示すグラフである。 タイプBのEDF(長さ25.2m)の温度−5℃、25℃、65℃及びHC後(25℃)それぞれでのLバンドにおける利得特性を示すグラフである。 タイプBのEDF(長さ25.2m)の温度−5℃、25℃、65℃及びHC後(25℃)それぞれでのLバンドにおける雑音指数特性を示すグラフである。 BERを測定するための測定系の構成を示す図及び光ファイバの融着条件を示す表である。 図7に示された測定系の測定結果として、受信光パワーに対するBERの関係を示すグラフである。 タイプB、CそれぞれのEDFについてのCバンドにおける利得とPCEとの関係を示すグラフである。 タイプB、CそれぞれのEDFについてのLバンドにおける利得とPCEとの関係を示すグラフである。 この発明に係る光増幅モジュールの第2実施形態の構成を示す図である。 この発明に係る光増幅モジュールの第3実施形態の構成を示す図である。 タイプAのEDFが適用された光増幅モジュールの信号光出力スペルトルである。 タイプBのEDFが適用された光増幅モジュールの信号光出力スペルトルである。 タイプC、BのEDFが適用された光増幅モジュールの信号光出力スペルトルである。 タイプC、BのEDFが適用された光増幅モジュールの信号光出力スペルトルである。 タイプCのEDFが適用された光増幅モジュールの信号光出力スペルトルである。 図13〜図17それぞれに示された信号光出力スペルトルにおけるFWMクロストーク(信号レベルとその近傍の共役波のレベル差)と所要励起パワーとの関係を示すグラフである。 タイプA〜CそれぞれのEDFのモードフィールド及びEr添加領域を示すグラフである。 タイプA〜CそれぞれのEDFの屈折率プロファイルである。 EDFの屈折率プロファイルである。 この発明に係る光増幅モジュールの第4実施形態の構成を示す図である。 この発明に係る光通信システムの構成を示す図である。
符号の説明
1〜4、400…光増幅モジュール
11…入力コネクタ
12…出力コネクタ
21、22…光アイソレータ
31、32…WDMカプラ
41、42…励起光源
51、61、62…EDF(光増幅用ファイバ)
71、72…接続用ファイバ
81,82…シングルモードファイバ(接続端子)
200…光送信器
300…光受信器
410、420…伝送用光ファイバ。

Claims (24)

  1. 光を増幅し得る光ファイバであって、波長1607nmの諸特性として、基底モード光に対して10μm以上のモードフィールド径と、基底モード光に対して6.8以下のMAC値を有する光増幅用ファイバ。
  2. 前記モードフィールド径より大きく、かつ前記モードフィールド径の2倍より小さい直径のEr添加領域を備えたことを特徴とする請求項1記載の光増幅用ファイバ。
  3. 前記モードフィールド径より大きく、かつ前記モードフィールド径の2倍より小さい直径のコア領域を備えたことを特徴とする請求項1記載の光増幅用ファイバ。
  4. 前記光増幅用ファイバの光増幅帯域全体において、前記光増幅用ファイバの光入射端での伝搬可能な横モードの数は2以上40以下であることを特徴とする請求項1記載の光増幅用ファイバ。
  5. 入力端から入力された信号光を増幅し、増幅された信号光を出力端から出力する光増幅モジュールであって、
    前記入力端と前記出力端との間に位置する前記信号光の伝搬経路の少なくとも一部を構成する第1光増幅用ファイバとして、請求項1〜4のいずれか1項記載の光増幅用ファイバを備えた光増幅モジュール。
  6. 前記入力端と前記出力端との間に位置する前記信号光の伝搬経路の少なくとも一部を構成し、基底モード光に対して波長1607nmよりも短いカットオフ波長を有する第2光増幅用ファイバをさらに備えたことを特徴とする請求項5記載の光増幅モジュール。
  7. 前記第2光増幅用ファイバは、前記第1光増幅用ファイバの光入射端側に配置されたことを特徴とする請求項6記載の光増幅モジュール。
  8. 前記第2光増幅用ファイバは、前記第1光増幅用ファイバの光入射端側及び光出射端側に配置されたことを特徴とする請求項6記載の光増幅モジュール。
  9. 前記第1光増幅用ファイバは、Er添加光ファイバであることを特徴とする請求項5記載の光増幅モジュール。
  10. 前記第2光増幅用ファイバは、Er添加光ファイバであることを特徴とする請求項6記載の光増幅モジュール。
  11. 前記第1光増幅用ファイバにおけるコア領域は、中心から径方向に所定距離離れた位置で屈折率が最大となる屈折率プロファイルを有することを特徴とする請求項5記載の光増幅モジュール。
  12. 前記第1光増幅用ファイバと前記第2光増幅用ファイバとの間に接続される接続用ファイバを備え、前記接続用ファイバのコア領域は、前記第1光増幅用ファイバのコア径と同程度の外径を有するとともに、中心において屈折率が最大値となる屈折率プロファイルを有することを特徴とする請求項11記載の光増幅モジュール。
  13. 入力端から入力された信号光を増幅し、増幅された信号光を出力端から出力する光増幅モジュールであって、
    前記入力端と前記出力端との間に位置する前記信号光の伝搬経路の少なくとも一部を構成する第1光増幅用ファイバとして、請求項1〜4のいずれか1項記載の光増幅用ファイバを備えるとともに、
    前記第1光増幅用ファイバの光入射端及び光出射端の少なくとも一方側に融着接続されたシングルモードファイバを備えた光増幅モジュール。
  14. 前記第1光増幅用ファイバと前記シングルモードファイバは、0.3dB以下の接続損失で融着接続されていることを特長とする請求項13記載の光増幅モジュール。
  15. 前記第1光増幅用ファイバと前記シングルモードファイバとの接続損失の変化は、−5〜+65℃の温度範囲において0.2dB以下である請求項13記載の光増幅モジュール。
  16. 前記第1光増幅用ファイバと前記シングルモードファイバは、加熱時間と過熱パワーとの積がシングルモードファイバ同士が融着接続される際の加熱時間と加熱パワーの積と同じになるかそれよりも小さくなる条件で融着接続されることを特徴とする請求項13記載の光増幅モジュール。
  17. 前記第1光増幅用ファイバと前記シングルモードファイバとを融着接続する際の加熱時間は、シングルモードファイバ同士が融着接続される際の加熱時間の2/3程度であることを特徴とする請求項16記載の光増幅モジュール。
  18. 前記第1光増幅用ファイバと前記シングルモードファイバの融着接続部分で発生するクロストークは、電力比で一箇所当たり0.6%以下であることを特徴とする請求項13記載の光増幅モジュール。
  19. 前記シングルモードファイバとして、2つの光ファイバが前記第1光増幅用ファイバの光入射端と光出射端のそれぞれに融着接続され、
    前記第1光増幅用ファイバの光入射端において高次モードに変換される一方で光出射端において基底モードに変換される光成分と、基底モードのまま前記第1光増幅用ファイバを伝搬する光成分とのクロストークは、電力比で45dB以上であることを特徴とする請求項13記載の光増幅モジュール。
  20. 入力端から入力された信号光を増幅し、増幅された信号光を出力端から出力する光増幅モジュールであって、
    前記入力端と前記出力端との間に位置する前記信号光の伝搬経路の少なくとも一部を構成する第1光増幅用ファイバとして、請求項1〜4のいずれか1項記載の光増幅用ファイバを備え、
    前記第1光増幅用ファイバは、Lバンド利得を稼ぐのに十分な長さを有する光増幅モジュール。
  21. 前記第1光増幅用ファイバは、320dBの吸収条長積に相当する長さを有することを特徴とする請求項20記載の光増幅モジュール。
  22. 入力端から入力された信号光を増幅し、増幅された信号光を出力端から出力する光増幅モジュールであって、
    前記入力端と前記出力端との間に位置する前記信号光の伝搬経路の少なくとも一部を構成する第1光増幅用ファイバとして、請求項1〜4のいずれか1項記載の光増幅用ファイバを備え、
    前記第1光増幅用ファイバは、単位長当たり17.2dB/m以上の吸収条長積ピークを有する光増幅モジュール。
  23. 互い隣接するチャネルの光周波数間隔が25GHz以下である複数チャネルの信号光を前記信号光伝送経路を介して伝送する光通信システムであって、
    請求項5〜24のいずれか1項記載の光増幅モジュールを備えた光通信システム。
  24. 請求項5〜24のいずれか1項記載の光増幅モジュールを利用して信号光を増幅させる光増幅方法であって、
    前記光増幅モジュールにおける前記第1光増幅用ファイバへの総信号光入力パワーを、+10dBm以上になるように設定している光増幅方法。
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