本発明の製造方法によって製造される配線基板は、例えば、図1に示すように絶縁層1に貫通孔3が設けられており、この貫通孔3には、絶縁層1の両面を電気的に接続する貫通導体5が設けられている。そして、貫通導体5が取り囲んで形成する空間には埋め込み樹脂7が充填されている。また、絶縁層1の両面には、金属箔9とめっき層11とからなる配線導体13が形成されている。
絶縁層1は、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂を含浸させた厚みが0.2〜0.8mmの平板である。
この絶縁層1は、その厚みを0.2mm以上とすることで、絶縁層1および金属箔9を貫通して複数の貫通孔3を形成したり、あるいは絶縁層1の上下両面に配線導体13を形成したり、さらには穴埋め樹脂7を形成する際等に印加される熱や外力等の影響により、発生する配線基板の反り、変形を抑制することができ、配線基板に要求される平坦度を確保することができる。また、絶縁基板1の厚みを0.8mm以下とすることで、貫通孔3の内部に貫通導体5を形成するときに、貫通孔3の内壁にめっき液を浸入させやすくなり、貫通導体5を良好に形成することできる。したがって、絶縁層1の厚みは0.2〜0.8mmの範囲が好ましい。
なお、絶縁層1は、ガラスクロスに含浸させるエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂中にシリカやアルミナあるいはアラミド樹脂等から成るフィラーをガラスクロス部分と樹脂部分とでレーザ光の透過度が略同等となる程度に含有させておけば、絶縁層1と金属箔9との積層体である絶縁樹脂板にレーザ光で貫通孔3を穿孔する際に、貫通孔3を略均一な大きさで良好に形成することが可能となる。したがって、絶縁層1のガラスクロスに含浸させるエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂中にはシリカやアルミナあるいはアラミド樹脂等から成るフィラーをガラスクロス部分と樹脂部分とでレーザ光の透過度が略同等となるように含有させておくことが好ましい。
また、ガラスクロスを含まない絶縁層1であってもよく、また、液晶ポリマーからなる絶縁層1を用いて熱膨張係数を適宜調整することもできる。また、あるいは、これらの絶縁層1を複数の種類用いて、熱膨張係数や強度などの特性を調整することも可能である。
また、絶縁層1の上下両面に被着された配線導体13は、例えば、厚みが3〜18μmの銅箔9に銅めっき等のめっき層11を被着させてなり、配線基板に搭載される電子部品(図示せず)の電極を外部電気回路基板の配線導体(図示せず)に電気的に接続するための導電路の一部として機能し、上面側の配線導体層13には、電子部品の電極が半田等の導電性接合部材を介して接続される電子部品接続パッドおよびこの電子部品接続パッドから引き回される配線パターン等が形成されており、下面側の配線導体層13には、外部電気回路基板の配線導体に半田等の導電性接合部材を介して接続される外部接続パッド等が形成されている。
なお、配線導体13を構成する銅箔9は、その厚みを5μm以上とすることで、配線導体13に貫通孔3を形成した後に無電解銅めっきの前処理として行なわれるマイクロエッチング時に銅箔9がエッチングされて銅箔9のピンホールまたは銅箔9の欠損を生じず、銅箔9への銅めっき11の付き周り性や密着力が十分確保できる。他方、20μm以下とすることで、銅箔9に銅めっき等のめっき層11を良好に形成することができる。したがって配線導体13を構成する銅箔9の厚みは5〜20μm、最適には10〜15μmの範囲とすることが望ましい。
また、配線導体13は、これらを構成する銅箔9とそれに被着しためっき層11との合計の厚みが8μm未満であると、配線導体13の電気抵抗が高いものとなり、他方、30μmを超えると、配線導体13を高密度の配線パターンに形成することが困難となる。したがって、配線導体13を構成する銅箔9とこの銅箔9に被着しためっき層11との合計の厚みは、8〜30μmの範囲が好ましい。
また、絶縁樹脂板を貫通して直径が75〜130μmの貫通孔3が形成されることが望ましく、この貫通孔3の内壁に金属メッキを施すことにより貫通導体5が形成される。貫通孔3は、貫通導体5を絶縁層1の上面から下面にかけて導出させるための導出路を提供するためのものであり、レーザ加工により穿孔されている。
この貫通孔3は、その直径が絶縁層1の断面の略中央部においては75〜115μmで略同じ大きさであり、絶縁層1の開口部で90〜130μmとなるように外側に向かって拡径させておくことが好ましい。
そして、このように貫通孔3の孔径を75〜130μmと微細にした場合には、貫通孔3の大きさが小さくなるため、貫通導体5を高密度で配置することができ、極めて高密度な配線を有する配線基板を得ることができる。
また、貫通孔3は、その直径が外側に向かって広がっていることにより、貫通孔3の内部にめっき金属を被着させて貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔3の内部に良好に入り込み、その結果、貫通孔3内に貫通導体5を良好に被着・形成することができる。なお、貫通孔3の直径が75μm以上の場合、貫通孔3の内部にめっき金属を充填して貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔3の内部に良好に入り込み貫通孔3の内部にめっき金属を被着させて貫通導体5を良好に形成することが可能となり、他方、130μm以下の場合、貫通導体5および配線導体13を高密度で配置することが可能となる。したがって、貫通孔3の直径は、75〜130μmの範囲が好ましい。
さらに、貫通孔3の開口部における直径が絶縁層1の厚み方向の略中央部における直径よりも10μm以上大きい場合には、貫通孔3の内部にめっき金属を充填して貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔3の内部に良好に入り込み、貫通孔3内に貫通導体5を良好に被着・形成することが可能となり、また、貫通孔3の開口部における直径が絶縁樹脂板の厚み方向の略中央部における直径よりも大きく、その差が50μm以下の場合には、そのような形状を有する貫通孔3を安定して形成することが可能となる。したがって、貫通孔3の開口部における直径は、絶縁層1の厚み方向の略中央部における直径よりも10〜50μm大きいことが好ましい。
また、貫通孔3内に被着・形成された貫通導体5は銅めっき等のめっき金属から成り、絶縁層1を挟んで上下に位置する配線導体13同士を互いに電気的に接続する接続導体として機能する。そして、貫通孔3が上述したように外側に向けて拡径する形状となっていることから、貫通孔3内にめっき層5を被着させることにより良好に被着・形成されている。
次に、図1に示した配線基板を製造する本発明の配線基板の製造方法について、図2(a)〜図5(g)を用いて詳細に説明する。なお、本実施例においても、直径が75〜130μmと微細な貫通孔3を有するとともに、厚みが0.2〜0.8mmの薄型の配線基板を製造する場合の例を示している。
まず、図2(a)に示すように、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等の樹脂を含浸させた厚みが0.2〜0.8mmの絶縁層1の両面に厚みが5〜20μmの金属箔9である銅箔9が被着形成された両面銅張板である絶縁樹脂板15を準備する。
なお、絶縁層1は、その厚みを0.2mm以上とすることで、絶縁層1および銅箔9を貫通して複数の貫通孔3を形成したり、さらには穴埋め樹脂7を形成する際等に印加される熱や外力等の影響で配線基板に反りや変形が発生して配線基板に要求される平坦度を確保できなくなってしまう危険性を小さくすることができ、また、その厚みを0.8mm以下とすることで、後述するように貫通孔3の内壁にめっきを被着して貫通導体5を形成するとき、貫通孔3内にめっき液が浸入しにくくなり、貫通導体5に断線が発生しやすくなるということがない。したがって、厚みが0.2〜0.8mmの絶縁樹脂板15を用いることが好ましい。
また、銅箔9は、その厚みを5μm以上とすることで、貫通孔3形成後のめっきの前処理として行なわれるマイクロエッチング時に銅箔9がエッチングされて銅箔9にピンホールまたは欠損を生じず、銅箔9へのめっきの付き周り性や密着力を強くすることができる。
また、銅箔9の厚みを20μm以下とすることで、貫通孔3をレーザ加工により穿孔する場合に、直径が75〜130μmの貫通孔3を安定して形成することが可能となる。したがって、5〜20μmの厚みの銅箔9を用いることが望ましい。
このような銅箔9は、例えば、絶縁層1の上下全面に厚みが8〜40μm程度の銅箔9を貼着するとともに、この銅箔9を硫酸−過酸化水素水などの銅エッチング液で膜厚が均一となるようにエッチングし、厚みが5〜20μmとなるように加工して形成される。
次に、図2(b)に示すように、レーザ加工により絶縁樹脂板15を貫通する直径が75〜130μmで、絶縁層1の表層において外側に向けて拡径する貫通孔3を穿孔する。
なお、この場合、貫通孔3の内壁にはレーザ加工に伴なって厚みが数μm以下程度の炭化層17が形成される。
このように、貫通孔3の直径を75〜130μmと微細とした場合には、貫通導体5および配線導体13を形成する際に貫通導体5および配線導体13を高密度で配置することができ、それにより高密度な配線基板を得ることができる。また、貫通孔3の孔径が外側に向かって広がっていることから、貫通孔3の内部にめっき金属を充填して貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔3の内部に良好に入り込み、その結果、貫通孔3内に貫通導体5を良好に形成することができる。
なお、貫通孔3の孔径が75μm以上の場合、貫通孔3の内層にめっき金属を被着して貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔3の内部に良好に入り込み、貫通孔3の内部に貫通導体5を良好に形成することが可能となり、他方、130μm以下では、貫通導体5および配線導体13を高密度で配置することが可能となる。したがって、貫通孔3の直径は、75〜130μmの範囲が好ましい。
また、貫通孔3の開口部における直径が、絶縁層1の厚み方向の略中央部における直径よりも10μm以上大きい場合には、貫通孔3の内層にめっき金属を被着して貫通導体5を形成する際に、貫通導体5を形成するためのめっき液が貫通孔3の内部に良好に入り込み貫通孔3の内部に貫通導体5を良好に形成することが可能となり、また、貫通孔3の開口部における直径が絶縁層1の厚み方向の略中央部における直径よりも50μmを超えない範囲で大きい場合には、そのような形状を有する貫通孔3を安定して形成することが可能となる。したがって、貫通孔3の開口部における直径は、絶縁層1の略中央部における直径よりも10〜50μm程度大きくしておくことが好ましい。
なお、絶縁層1および銅箔9に貫通孔3を形成するには、銅箔9上に例えばレーザ光のエネルギーを良好に吸収する黒色もしくは黒色に近い色を有する樹脂から成るレーザ加工用シートを貼着し、このレーザ加工用シートの上から炭酸ガスレーザ光を照射する方法、もしくは銅箔9の表面を算術平均粗さRaで0.2〜2μmの範囲で表面を粗化した後、その銅箔9に酸化雰囲気150℃で30分程度の熱処理を施し、その表面をレーザ光のエネルギーを良好に吸収する黒色もしくは黒色に近い色を有する色として炭酸ガスレーザ光を照射する方法のどちらかの方法を使用し、8〜30mJの出力の炭酸ガスレーザ光を40〜240μ秒のパルス幅で所定の位置に照射して貫通孔3を穿孔する方法が採用される。
このとき、炭酸ガスレーザ光の出力を8mJ以上とすることで、貫通孔3を十分な大きさに穿孔することが可能となる。また、30mJ以下とすることで絶縁層1における貫通孔3の孔径を精度よく形成することができる。したがって、照射する炭酸ガスレーザ光は、その出力が8〜30mJでパルス幅が40〜240μ秒の範囲ですることが好ましい。
なお、貫通孔3を上下両面側に向けて拡径する形状とするには、レーザ加工により穿孔する場合、レーザ光の1パルス当たりのエネルギーやショット数を調整すればよい。
例えば、まず、図6(a)に要部拡大断面図で示すように、出力が8〜30mJでパルス幅が40〜500μ秒の数パルスのレーザ光を照射して銅箔9および絶縁層1を貫通し、絶縁層1の上面側で上下両面側に向けて拡径する形状の貫通孔3を形成する。このとき絶縁層1の上面側ではレーザ光のエネルギーが下面側より多く印加されるので、貫通孔3は絶縁層1の上面側で外側に向けて拡径する形状となる。また、銅箔9は絶縁層1よりも穿孔されにくいので、貫通孔3はその直径が銅箔9の部位において絶縁層1の部位よりも小さく、銅箔9が貫通孔3の内側に突き出た形状となる。
次に、図6(b)に要部拡大断面図に示すように、さらに数パルスのレーザ光を照射する。それにより照射されたレーザ光の一部が絶縁層1の下面側において貫通孔3の内側に突き出た銅箔9で反射されて絶縁層1の下面側をえぐるので、貫通孔3は絶縁層1の上下で上下両面側に向けて拡径する形状となる。
さらに、絶縁層1の下面側の銅箔9をレーザーにより除去することで、図6(c)に示すように絶縁樹脂板15に絶縁層1の上下で上下両面側に向けて拡径し、上下の穴経が略同じとなる貫通孔3を形成することができる。
例えば、厚みが0.4mmのガラス−エポキシ板から成る絶縁層1の上下面に厚みが10μmの銅箔9が被着された絶縁樹脂板15に炭酸ガスレーザを用いて貫通孔3を形成する場合には、レーザの1パルス当たりのパルス幅を40〜240μ秒、エネルギー値を8〜30mJ、ショット数3〜10にすればよい。このとき、レーザ光照射のショット数が少なすぎると貫通孔3の下面側を外側に向けて良好に拡径することができなくなり、ショット数が多すぎると貫通孔3の下面側の径が大きくなりすぎてしまう。
また、このレーザ条件とすることで後述する貫通孔3に突出した金属箔9の突出幅を30μm以内に抑えることができる。
また、炭酸ガスレーザを用いて、レーザ加工の条件をパルス幅40〜240μs、出力8〜30mJ、ショット数3〜10ショットとすることにより、貫通孔3に突出した金属箔9の突出幅を30μm以内に抑えるとともに絶縁樹脂板15に貫通孔3を安定して形成することが可能となる。
すなわち、パルス幅を240μs以下とすることで銅箔9を安定して開口できるのである。また、出力を8mJ以上とすることで、絶縁樹脂板15の裏面まで安定して穿孔することができる。また、ショット数を3ショット以上とすることで、レーザ光が絶縁樹脂板15の裏面まで届くため、絶縁樹脂板15の裏面まで安定して穿孔することができる。また、10ショット以下の場合も同様に良好に開口でき、10ショットを超える場合のようにエネルギーが大きすぎて絶縁樹脂板15に形成した貫通孔3が大きくなりすぎてしまい微細な配線の形成ができないということがない。
なお、図6では、炭化層17は省略した。
そして、図3(c)に示すように、以上のようにして作製した貫通孔3を設けた絶縁樹脂板15の、貫通孔3に突き出た銅箔9をマイクロエッチングして、その内側に突き出た部位を除去することにより、上下両面側に向けて拡径し、銅箔9の突出のない貫通孔3を形成することができる。なお、このマイクロエッチングには、硫酸と過酸化水素水との混合溶液または塩化第二銅水溶液または塩化第二鉄水溶液からなるエッチング液が好適に用いられる。
次に、貫通孔3の軸長方向に液体を流通させて貫通孔3の内壁に形成された炭化層17を除去することにより、図3(d)に示す炭化層17が除去された絶縁樹脂板15が得られる。
なお、具体的に貫通孔3に液体を流通させる方法としては、例えば、図7(a)に示すように、絶縁樹脂板15の貫通孔3が略垂直となるように絶縁樹脂板15を洗浄装置20に固定し、絶縁樹脂板15の上方に液体19を供給して、貫通孔3に液体19を流通させる方法を例示できる。
また、他の方法として、例えば、図7(b)に示すように、洗浄装置20内に固定した絶縁樹脂板15に対して、液体19を吐出する吐出口21を有するノズル23aを配置し、絶縁樹脂板15の貫通孔3に向けて液体19を吐出して、貫通孔3に液体19を流通させる方法を例示できる。なお、図7(b)では液体19は省略した。
また、図7(a)、(b)では、液体19の供給管、排出管、並びに循環装置については図示しなかったが、これらを適宜用いてもよいことは当然である。また、液体19の循環流路にフィルターを配置し、炭化層17に起因する塵を除去し、液体19を浄化しながら処理を行うことが望ましい。
また、絶縁樹脂板15を固定せず、洗浄装置20内を連続して移動させることが、生産性、コストの面で望ましい。また、あるいはノズル23を絶縁樹脂板15に対して移動させるなどしてもよい。
また、液体19を貫通孔3に流通させる際は、5〜60MPaの圧力とすることが望ましく、この範囲の圧力はレーザ加工に伴う熱変質層である炭化層17を除去するのに十分な圧力であり、液圧が強すぎて絶縁樹脂板15の銅箔9がはがれてしまうなどして絶縁樹脂板15を破壊してしまうことがない。さらに圧力を20〜40MPaの範囲とすることで、短時間で洗浄処理を行うことができる。
なお、このときの液圧はポンプ(図示せず)とノズル23の間に設置された液圧計(図示せず)を用いて測定する。ポンプとノズル23の間に設置された液圧計で測定することによりノズル23より噴出する液体19の圧力を測定することができ、液圧計の測定値をもとにポンプの設定値を調整することで液圧の調整を行う。
また、液体19を貫通孔3に流通させる際は、図7(b)に示すように絶縁樹脂板15の両面に液体19を供給可能なノズル23a、23bを配置するなどして、異なる方向から交互に液体19を貫通孔3に流通させることが望ましい。このように交互に液体19を流通させることにより、短時間で小さい液圧で炭化層17をむら無く除去することが可能となる。また、液体19を貫通孔3に交互に流通させる仕様としては1分以上の一定時間1方向から流通させて後、反対面側より流通させる方法のほか、所定の時間をおいて、例えば、1秒から10秒の短時間の間隔で流通方向を変える方法がある。貫通孔3内のレーザ加工に伴う熱変質層である炭化層17を除去するためには1秒から10秒の短時間の間隔で流通させる方向を変える方法のほうがより短時間で炭化層17を除去することができることから好ましい。
また、液体19を貫通孔3に流通させる際は、断続的に液体19を流通させることが望ましく、連続的に行うよりも炭化層17をはく離除去しやすくなる。液体19を貫通孔3に断続的に流通させる仕様としては、例えば、1秒から10秒の一定の時間液体19を流通させた後、0.1秒から2秒の液体19の流通を止める期間を設け、その後に1秒から10秒の一定の時間液体19を流通させる仕様が例示できる。また、液体19を流通させる方向を変更する方法を組み合わせることがより効果的である。
また、さらに液体19を貫通孔3に流通させる際は、液圧を変化させることが望ましく、液圧を経時的に変化させ、強弱をつけることで炭化層17のはく離除去性をあげることができる。液体19を貫通孔3に流通させる際の液圧を変化させる仕様としては1秒から10秒の一定の時間、液体19を1〜40MPaの圧力で流通させたさせた後に0.1秒から2秒の間0.05〜0.1MPaの比較的弱い圧力で流通させる方法を例示できる。この時、比較的弱い液圧の流通時間を強い液圧の流通時間より短くしたり、強い液圧の値を20〜40MPaの範囲とするとより効果的である。この時の液圧変化についてはポンプの制御システムのプログラミングを行うことにより設定する。なお、液圧を連続して変化させてもよいことはいうまでもない。また、この液圧は液体19の流量と言い換えてもよく、液体19の流量を変化させて洗浄を行っても同様の効果が得られることはいうまでもない。
また、液体19を貫通孔3に流通させる際に液体19に気泡を含有させることが望ましい。液体19に気泡を含有させることで、液体19中の気泡が貫通孔3の炭化層17に接触する際に気泡がはじけるバブリング効果により、炭化層17の除去効果がさらに高くなる。液体19中に含有させる気泡の大きさは120μm以下にすることが望ましく、さらに70μm以下であれば、効果的である。
また、液体19を貫通孔3に流通させている間、液体19に超音波振動をかけることが望ましく、さらに、炭化層17の除去効果を向上させることができる。
また、液体19に砥粒を含有させることが望ましく、砥粒を含有させることに液体19の炭化層17除去能力を向上させることができる。砥粒として無機フィラーを用いると、一般的に水などからなる液体19よりも比重が大きいために、より強い衝撃を与えることができるため、洗浄時間を短縮できる。特に、アルミナやシリカは硬度が高いため、さらに効果的である。
また、無機フィラーと比較して柔らかな有機フィラーを砥粒として用いた場合には、目標物にぶつかった際の衝撃は与えるものの、その衝撃を有機フィラー自体が吸収するため、絶縁樹脂板15への衝突の際のダメージを抑えることができる。
また、さらに、無機フィラーと有機フィラーの混合物を砥粒として用いることで、炭化層17に十分な衝撃を与えることができるとともに、絶縁樹脂板15へのダメージを低減することが可能となる。また、これらの配合比率を適宜調整することで、対象となる絶縁樹脂板15の性質や貫通孔3の大きさに応じた液体19を調製することができる。
なお、液体19の流動性を維持するためにこれらの砥粒の配合比率は10体積%以下とすることが望ましい。なお、所望により、界面活性剤などの砥粒の分散性を向上させるものを用いてもよい。
また、砥粒が小さすぎると2次凝集がおきやすく、大きすぎると、衝撃が大きくなりすぎたり、貫通孔3を塞ぐおそれがあるため、砥粒の大きさはその最大粒径が0.5〜50μmであることが望ましい。
また、液体19は安価で取り扱いの容易な水を主成分とすることが望ましく、さらに、防錆剤を含有させて、絶縁樹脂板15の金属の酸化を防止することが望ましい。この防錆剤としてはイミダゾール系化合物を用いた表面処理剤を使用することが望ましい。
以上説明した方法を適宜選択、組み合わせるなどして、絶縁樹脂板15を洗浄した後、図4(e)に示すように、炭化層17が除去された貫通孔3の内部に無電解めっき銅めっき11a(図示せず)および電解銅めっき11b(図示せず)を順次析出させて貫通孔3に貫通導体5を形成するとともに、銅箔9の表面に厚みが1〜3μmの無電解銅めっき11aおよび厚みが20〜30μmの電解銅めっき11bを順次析出させて、めっき層11を形成する。このとき、貫通孔3の内壁から炭化層17が除去されていることから貫通孔3の内壁で炭化層17を起点にして貫通導体5が剥離するようなことが無く、貫通孔3の内壁に対し、貫通導体5を強固に被着することができる。
なお、無電解銅めっき11aを析出させるには、例えば、塩化アンモニウム系酢酸パラジウムを含有するパラジウム活性液を使用して貫通孔3内面および銅箔9の表面にパラジウム触媒を付着させるとともに、その上に硫酸銅系の無電解銅めっき液を用いて無電解銅めっき11aを被着させればよい。このとき、貫通孔3は、絶縁樹脂板15の開口部において外側に向けて拡径していることから、貫通孔3内に無電解銅めっき液が良好に浸入し、その結果、貫通孔3内面および銅箔9の表面に無電解銅めっきを略均一な厚みに良好に被着させることができる。
また、電解銅めっき11bを被着させるための電解銅めっき液としては、例えば、硫酸銅系の電解銅めっき液を用いればよい。このとき、貫通孔3は、絶縁樹脂板15の開口部において外側に向けて拡径していることから、貫通孔3内に電解銅めっき液が良好に浸入し、その結果、貫通孔3内を電解銅めっきで良好に充填することができる。
次に、図4(f)に示すように貫通孔3の内部に穴埋め樹脂7を埋め込みし、硬化させた後に銅箔9および穴埋め樹脂7表面を研磨し平坦化する。
最後に、図5(g)に示すように、従来周知のサブトラクト法、セミアディティブ法などにより配線導体13を形成する。かくして、本発明の配線基板の製造方法によれば、貫通孔3内の炭化層17を容易に除去することができるため、貫通導体5に断線が発生することなく、極めて高密度な配線が可能な配線基板を得ることができる。またその上にビルドアップ樹脂層およびビルドアップ配線層を積層してビルドアップ配線基板を製作したとしてもビルドアップ樹脂層に貫通孔3内からのクラックが発生することのない配線基板を得ることができる。
また、貫通孔3内の付着物や塵なども同様に除去できることは当然である。
なお、上述の実施例では貫通孔3の直径が75〜130μm、厚みが0.2〜0.8mmの配線基板を例にとって示したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
本発明の配線基板の製造方法を評価するために、サンプルを作製し、次の評価を行なった。
主面に厚み10μmの銅箔9を具備する全体の厚みが0.4mmの絶縁樹脂板15に炭酸ガスレーザにより貫通孔3を形成した。なお、炭酸ガスレーザの穿孔条件はパルス幅が160μsで出力が20mJでショット数を6ショットとした。
なお、作製した貫通孔3の直径は90μmとした。
このようにして作製した貫通孔3を有する絶縁樹脂板15を、図5(b)に示す洗浄装置20にセットし、表1に示す条件で、液体19の組成や、液圧、流通方向、気泡の有無などを変化させ、5分間洗浄した。
そして、液体19流通後の外観確認、めっき前の銅箔9表面の酸化の状態およびめっき後の外観の状態を確認した。
なお、ここで記載した液圧とは、ポンプ(図示せず)とノズル23との間に設置された液圧計により測定したものである。このようにポンプとノズルの間に設置された液圧計で液圧を測定することによりノズルより噴出する液体19の圧力を測定することができ、液圧計の測定値をもとにポンプの設定値を調整することで液圧の調整を行うことができる。
表1に洗浄条件と上記した絶縁樹脂板15の評価結果を示す。
本発明の範囲外である絶縁樹脂板15の両面から同時に液体19を吹き付けた従来の絶縁樹脂板15の洗浄方法を用いた試料No.1、2では、液圧を0.1、1MPaと変化させたが液圧にかかわらず、無電解めっき後の外観に、炭化層17の残存に起因するめっき異常が認められた。
一方、本発明の試料No.3〜37では、一部の試料にめっき後の外観検査において若干の銅粒が認められたものの、実用上問題のないレベルであり、配線基板の歩留まりを格段に向上させられることが判った。
以下に、本発明の製造方法で作製した試料について詳細に説明する。
メック社製の防錆剤CA−5330Aを0.1質量%含有する液体19を液圧を変化させて、一方向から流通させた試料No.3〜10のうち、液圧が5MPa未満で、1、3MPaの試料No.3、4では、実用上問題はないものの、無電解めっき後に貫通孔3に3μm以下の大きさの銅粒が確認された。
また、液圧が60MPaを超えて70MPaである試料No.10では、実用上問題はないものの、一部の試料で若干の銅箔の剥離が発生した。
一方、液圧が5〜60MPaの範囲の試料No.5〜9では、全ての項目において全く異常が認められなかった。
また、液圧を1MPaとし、一方向のみから液体19を流通させた試料No.3では、微細ながら銅粒が確認されたのに対して、同じく液圧を1MPaとし、液体19の流通方向を交互に変化させた試料No.11では、いずれの項目においても全く異常が認められず、液体19の流通方向を交互に変化させることで、貫通孔3内の炭化層17除去効果が高くなることが判った。
また、液圧を1MPaとし、5秒の流通停止時間を設けて、断続的に一方向のみから液体19を流通させた試料No.12でも、いずれの項目においても全く異常が認められず、液体19を断続的に流通させることで、貫通孔3内の炭化層17除去効果が高くなることが判った。
また、5秒間で液圧を1から40MPaまで経時的に変化させ、さらに40MPaから1MPaまで経時的に変化させるサイクルを繰り返して液体19を流通させた試料No.13でも、いずれの項目においても全く異常が認められず、液体19の液圧を変化させて流通させることで、貫通孔3内の炭化層17除去効果が高くなることが判った。
また、吐出口21の形状を気泡が入るようにして、液体19に気泡を導入し、液圧を1MPaとし、一方向のみから液体19を流通させた試料No.14においても、いずれの項目においても全く異常が認められず、液体19に気泡を導入して流通させることで、貫通孔3内の炭化層17除去効果が高くなることが判った。
また、ノズル23内に超音波振動子を装着し、超音波振動子を振動させながら、液圧を1MPaとし、一方向のみから液体19を流通させた試料No.15においても、いずれの項目においても全く異常が認められず、液体19に超音波振動を与えながら流通させることで、貫通孔3内の炭化層17除去効果が高くなることが判った。
試料No.16〜22では、無機フィラーとして平均粒径5μm、最大粒径20μmのAl2O3粉末を液体19に10体積%添加して作製した砥粒入り液体19を、液圧を変化させて貫通孔3に一方向から流通させた。
液圧が5MPa未満の試料No.16、17においても、無機フィラーを液体19に添加することで、炭化層17の残存に起因するめっき異常の発生は無くなった。また、試料No.16、17に加えて、液圧が5〜30MPaの試料No.18、19においても、全ての評価項目において全く異常が認められなかった。
しかしながら、無機フィラー入りの液体19では、洗浄効果が高くなった一方で、液圧が50MPa以上の試料No.20〜22で、製品の品質に影響はない程度ではあるものの、一部の銅箔が剥離した。
また、エポキシを主成分とする有機フィラーを平均粒径5μmの球状粒子に加工した有機フィラーを砥粒として10体積%、液体19に添加して、液圧を変化させて洗浄処理を行った試料No.23〜29では、液圧が70MPaの試料No.29で、若干の銅箔剥離が確認されたものの、製品には影響がなかった。また、液圧が60MPa以下の試料No.23〜28では、全ての評価項目において全く異常が認められず、有機フィラーを添加しなかった場合に比べ、良好な結果が得られる液圧の範囲が広くなった。
また、Al2O3粉末とエポキシを主成分とする有機フィラーをそれぞれ、5体積%、液体19に添加して、液圧を変化させた試料No.30〜36でも、ほぼ、有機フィラーを用いた場合と同様の結果が得られ、砥粒を用いない場合よりも良好な結果が得られる液圧の範囲が広くなった。
以上、説明した試料では、液体として水を用い、防錆剤を添加して評価した。これに対して、防錆剤を添加せずに洗浄処理を行った試料No.37では、めっき前の銅箔の表面が若干酸化することが判った。ただし、非常に薄い膜であるために、めっきは正常に形成された。