JP2005100668A - 多層絶縁電線の製造方法およびその製造方法で作製された多層絶縁電線 - Google Patents

多層絶縁電線の製造方法およびその製造方法で作製された多層絶縁電線 Download PDF

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Abstract

【課題】
本発明の課題は、エナメル被覆同等の被覆効果を有し、かつ、薄く(5μm以下)、かつ、はんだ処理性が良好である多層絶縁電線の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
上記課題は、導体の外周にウレタン系樹脂からなる被覆層を形成させ、該被覆層の外周に少なくとも第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を順に押出被覆にて形成させる多層絶縁電線の製造方法において、前記被覆層を形成させる手段が電着であることを特徴とする多層絶縁電線の製造方法で解決される。
【選択図】図1

Description

本発明は、多層絶縁電線の製造方法、特には、スイッチング電源方式の変圧器に使用する多層絶縁電線の製造方法に関する。
機器の電源についてはスイッチング素子を用い、入力電圧を高周波化することでトランスの巻き数を減らしてトランスを小型化するスイッチング電源方式が主流となっている。スイッチング電源方式とは、例えば、特開2000−253657号公報に開示されているものである。このスイッチング電源のトランスには近年、三層絶縁電線が用いられている。従来はエナメル線の1次側と2次側の間に層間テープやバリアーが挿入され小型化の妨げとなっていたが、三層絶縁電線を用いることで小型化が容易となった。三層絶縁電線とは、スイッチング電源の安全規格IEC60950に規定される以下の項目をクリアさせるために開発されたものである。
(1)エナメル皮膜は絶縁物とみなさない。
(2)1次、2次巻線の間には0.4mm以上の絶縁物若しくはIEC規格(International Electrotechnical Communication Standard)に規定する強化絶縁を入れる。(3)強化絶縁は三層以上の絶縁物で、かつ任意の二層で規定の耐電圧試験に合格する。
三層絶縁電線は導体の上に絶縁性樹脂を三層に押し出し被覆したものである。絶縁性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スルホン系樹脂が主に用いられる。一般的に導体上に数十ミクロンの皮膜を三層押出し被覆するが、導体上にキズや銅紛などによる凹凸があるため、押出皮膜が均一にならない、皮膜が破れる、皮膜厚さにムラがあるなどの問題が生じたので、現状では、導体としてエナメルを被覆したもの(導体にエナメル塗布し焼付けたもの)を用い表面が平滑となったエナメル皮膜上に絶縁層を押出被覆することで解決している。しかしながら、エナメル皮膜厚さは多層絶縁電線全体の外径を抑えるため数ミクロン程度(具体的には3μm〜5μm)であることが望ましいのであるが、エナメル被覆で5μm以下の薄い層を均一に形成することは困難であった。例えば、3μm〜5μmの被覆厚を目標にエナメル被覆した場合、被覆がされている箇所、されていない箇所(ピンホール)が存在するので、その外周に絶縁層を設けても、耐電圧特性が不十分であるという不具合があり、また、導体外周全体にエナメル被覆が形成されるように被覆厚を大きくして被覆した場合でも、長手方向で被覆厚さが不均一であるため(外観凸凹であるため)、その後、エナメル被覆外周に被覆される絶縁層にもその凸凹が影響し、多層絶縁電線の外観自体が凸凹したものとなる問題があった。また、導体との被覆層との密着性についても現状のエナメル被覆の密着力以上のものが望まれている。そういった背景のもと、エナメル被覆で形成された被覆層を有する多層絶縁電線を用いることで、変圧器の小型化するには限界があった。例えば、エナメル被覆の導体に絶縁層を押出被覆した多層絶縁電線の技術としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3が開示されている。
一方、薄い層を形成させる手段の一つとしては、電着による被覆層の形成方法が挙げられるが、特許文献4に開示されているような電着で形成される被覆層(エポキシ変性アクリル樹脂からなる被覆層)は、はんだ処理性が悪く、非常に高い温度(450℃以上)に設定したはんだ槽を用意しなければ、電着で形成した被覆層が除去できず、はんだ付けを要する部分以外の絶縁層が熱劣化するという虞が介在していた。つまり、薄い被覆層が形成されるものの、はんだ処理性が乏しいという問題があった。
特開平06−139827号公報 特開平06−139828号公報 特開平06−139829号公報 特公平07−120491号公報
本発明が解決しようとする課題は、上記したとおりであってエナメル被覆同等の被覆効果を有し、かつ、薄く(5μm以下)、かつ、はんだ処理性が良好である多層絶縁電線の製造方法を提供することである。
上記課題は、
(1)導体の外周にウレタン系樹脂からなる被覆層を形成させ、該被覆層の外周に少なくとも第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を順に押出被覆にて形成させる多層絶縁電線の製造方法において、前記被覆層を形成させる手段が電着であることを特徴とする多層絶縁電線の製造方法。
(2)さらに、前記被覆層と前記第1絶縁層の間にディッピングによってオーバーコート層を形成させることを特徴とする(1)に記載の多層絶縁電線の製造方法。
(3)オーバーコート層がポリエステル系樹脂からなることを特徴とする(2)に記載の多層絶縁電線の製造方法。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法で作製されたことを特徴とする多層絶縁電線。
(5)スイッチング電源方式の変圧器に使用されることを特徴とする(4)に記載の多層絶縁電線。
本発明の多層絶縁電線の製造方法またはその製造方法によって作製された多層絶縁電線によれば、変圧器の小型化が可能となり(被覆層を薄くすることが可能となり)、かつ、はんだ処理性が良好な多層絶縁電線を提供することができる。
本発明の多層絶縁電線の製造方法を図面を参照しながら説明する。図1または図2は、本発明の多層絶縁電線の製造方法を模式的に表す図である。まず、図1について説明する。本発明に使用される導体1は、公知のものを適用すれば良く、例えば銅線、銅合金線、銅メッキ線等が適用される。線径は、使用される変圧器によるが、直径0.1mm〜2.0mmのものを使用すれば良い。
次に導体1の外周に形成させる被覆層は、電着槽2に導体を連続的に浸漬させて電着させる。この電着槽2には、本発明の多層絶縁電線に適した電着が施されるように濃度調整がなされた水分散ワニスが充填されている。本発明に使用される水分散ワニスには、ウレタン系樹脂を分散させたエマルジョンタイプのものを適用すれば良く、例えば、エーテル系、エステル系、カーボネート系などいずれも使用可能である。ただし、ハンダ処理性のため架橋材は含まないものを用いることが好ましい。例えば、市販品としては、第一工業製薬製のスーパーフレックスが挙げられ、適宜それを濃度調整して用いれば良い。
ウレタン系樹脂は、後述する第1絶縁層またはオーバーコート層との相溶性(密着性)、および、はんだ処理性に優れているという点で好ましい。ウレタン系樹脂としては、公知のポリイソシアネート類とポリオール類とを触媒や充填剤とともに反応させて得ることのできるものを適用すれば良い。ポリイソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサンメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソサネート、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、等の有機ポリイソシアネートまたは、それらの化合物が挙げられ、その中でも、貯蔵安定性という点で、水添化キシリレンジイソシアネートに代表される脂環族ポリイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートに代表される3級イソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートが好ましい。また、ポリオール類としては、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリチオエーテル、ポリアセタール、ポリブタジエン、ポリシロキサン、アクリル、フェノールレジン、エポキシ、ポリカーボネート等が挙げられ、中でも、耐熱性、機械的特性の点から、ポリカーボネートが好ましい。
前記したポリイソシアネート類およびポリオール類を触媒とともに反応させて得られるウレタンプレポリマーを乳化してウレタンエマルジョンとする。乳化は外部活性剤の添加による強制乳化型、ウレタン樹脂に親水基または親水セグメントを付与し、自己分散させる自己乳化型があり、いずれの手法でもよい。親水性セグメントとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシオクチルフェニルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、ポリイソシアネート類、ポリオール類、親水性セグメントの配合比は、ポリイソシアネート類100重量部に対して、ポリオール類50重量部〜1000重量部、親水性セグメント1重量部〜500重量部である。
本発明の多層絶縁電線を製造する場合の水分散ワニスの濃度は、0.5重量%〜3重量%が好ましく、特には、安定して均一な薄膜形成ができるという点で 1重量%〜1.5重量%であるのがより好ましい。0.5重量%未満であると安定して均一で、かつ薄い被覆層を得ることができなくなる傾向になり、3重量%より高い濃度で電着を行うと、フリーディップ(電着以外で表面に付着する水分散ワニス)による水分散ワニスの付着量が増大し、薄い被覆層を得られなくなるという傾向になる。つまり、水分散ワニスの濃度を0.5重量%〜3重量%という特定の濃度にすることで水分散ワニスの粘度を抑制し、電着以外での導体表面への付着をできるだけ抑制し、かつ、充分な作用効果を得るだけの被覆層のみを電着により形成させることが可能となる。上記した作用効果を発現する被覆層の厚さとしては、1μm〜5μmが好ましく、特には3μm〜4μmが好ましい。1μm未満であると、導体表面にある凹凸、傷などが起因する絶縁不良を充分に抑制できない傾向にあり、5μmより厚くなると、電着に要する時間がかかり生産効率が悪くなり、得られる多層絶縁電線の外径が大きくなるので、変圧器の小型化が望めなくなる傾向にある。
本発明の電着の条件としては、D.C.電圧は、7V〜35V、好ましくは、10V〜20V、電着時間は、0.03秒〜15秒、好ましくは、0.05秒〜10秒である。電着時の水分散ワニスの温度は、15℃〜40℃、好ましくは、10℃〜35℃に管理すれば良い。その際、D.C.荷電にA.C.荷電を重畳させても良い。
電着工程に引続き導体外周に電着された被覆層の乾燥工程(図示せず)、焼付け工程(図示せず)は、被覆層中の過剰な溶剤や水を蒸発除去させるために行う工程である。乾燥工程は、一般的に40℃〜200℃、好ましくは、60℃〜150℃である。乾燥工程で高温(150℃〜300℃、好ましくは、200℃〜250℃)にすることで、余剰の水分散ワニスを除去の促進と導体上の電着樹脂の塗膜均一化(平滑化)を同時に行っても良い。
引続いて、導体の外周に被覆層が形成されたものを押出機3に挿入し、被覆層の外周に第1絶縁層を押出被覆させる。ここで、第1絶縁層としては、従来より多層絶縁電線に適用されていた公知の樹脂組成物を用いれば良く、具体的には、前記したウレタン樹脂からなる被覆層、または、後述するオーバーコート層との相溶性(密着性)が良いという点で、熱可塑性の直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体とからなる混合樹脂または熱可塑性ポリアミド樹脂を適用することが好ましい。
第1絶縁層に直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体とからなる混合樹脂を適用する場合、熱可塑性直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体との混合割合は、熱可塑性直鎖ポリエステル樹脂100重量部に対し、エチレン系共重合体は5〜45重量部の範囲にすることが好ましく、エチレン系共重合体の混合割合が5重量部未満の場合は、熱可塑性直鎖ポリエステル樹脂の結晶化抑制効果は小さくなり、そのため、コイリング時に絶縁層表面に微小クラックが発生する、いわゆるクレージング現象が多発すると同時に、絶縁層の経時劣化が進んで絶縁破壊電圧の著しい低下を引き起こすようになる。また、混合割合が45重量部を越えると、絶縁層の耐熱性は著しく劣化する傾向にある。してしまう。より好ましい熱可塑性直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体との混合割合は、熱可塑性直鎖ポリエステル樹脂100重量部に対し、エチレン系共重合体は10〜20重量部である。
また、第1絶縁層に熱可塑性ポリアミド樹脂を適用する場合、例えば、4−ナイロン,6−ナイロン,10−ナイロン,11−ナイロン,12−ナイロン,4,6−ナイロン,6,6−ナイロン,6,10−ナイロン,6,12−ナイロン、またはそれらの共重合ナイロン(いずれも、デュポン社製の商品名)をあげることができる。
また、これらポリアミド樹脂に、例えば、エチレン−メタアクリル酸共重合体,エチレン−アクリル酸共重合体,ポリエチレン,前記した熱可塑性直鎖ポリエステル樹脂,ポリウレタン系樹脂などの1種または2種以上を混和してもよい。この場合、混和の割合は、ポリアミド樹脂100重量部に対し3〜50重量部であることが好ましい。
これらの素材のうち、4,6−ナイロンは、他のナイロンに比べて、融点が20〜30℃高い290℃程度であるため、コイル使用時における熱変形を起こしにくく、1層目の絶縁層の素材としては好適である。2層目,3層目の各絶縁層の素材である混和樹脂は、後述する熱可塑性の直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体とを必須成分とする。
引続いて第2絶縁層を押出機4で、第1絶縁層の外周に被覆する。第2絶縁層としては、絶縁層に適用されている公知の材料を使用すればよく、例えば、上述した第1絶縁層が直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体とからなる混合樹脂の場合、第2絶縁層は第1絶縁層と同じ混合樹脂または熱可塑性ポリアミド樹脂を適用すれば良い。特には、第1絶縁層と異なる熱可塑性ポリアミド樹脂を使用することにより、第1絶縁層と第2絶縁層とが異種材料で構成されるため界面剥離が容易にできるという利点を有する。
また、第1絶縁層が熱可塑性ポリアミド樹脂の場合、第2絶縁層としては、直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体とからなる混合樹脂が、第1絶縁層と第2絶縁層との界面剥離が容易にできると言う点で特に好ましい。
引続き、第3絶縁層を押出機5で第2絶縁層の外周に被覆することで、多層絶縁電線6aを得ることができる。第3絶縁層としては、絶縁層に適用されている公知の材料を使用すればよく、例えば、上述した第1絶縁層が直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体とからなる混合樹脂で、第2絶縁層は第1絶縁層と同じ混合樹脂である場合、第3絶縁層としては、第1絶縁層、第2絶縁層と同じ混合樹脂を適用すればよい。また、第1絶縁層が直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体とからなる混合樹脂で、第2絶縁層は熱可塑性ポリアミド樹脂である場合、第3絶縁層としては、第1絶縁層と同じ混合樹脂(直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体とからなる混合樹脂)を適用すればよい。特には、各絶縁層との界面剥離が容易に行えるという点で、第1絶縁層が直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体とからなる混合樹脂で、第2絶縁層は熱可塑性ポリアミド樹脂、第3絶縁層として、第1絶縁層と同じ混合樹脂を適用することが好ましい。
また、第1絶縁層が熱可塑性ポリアミド樹脂で、第2絶縁層が直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体とからなる混合樹脂の場合、第3絶縁層としては、第1絶縁層と同じ材料(熱可塑性ポリアミド樹脂)を適用してもよいし、第2絶縁層と同じ材料(直鎖ポリエステル樹脂とエチレン系共重合体とからなる樹脂混合物)を適用しても良い。また、第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層とも熱可塑性ポリアミド樹脂を適用することで、耐外傷性を向上させる利点があるが、可とう性が低下する傾向にあるので、適宜、使用環境、使用状態に応じて、各絶縁層を選択することが好ましい。また、各絶縁層の厚さは適宜、決めればよいが、好ましくは、第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層あわせて、100μm以下が好ましく、さらには、絶縁層の合計厚さが、100μm以下であって、第2絶縁層の厚さが他の絶縁層よりも厚いことがより好ましい。
更には、各層の押出被覆が終了した時点で、それぞれの押出被覆層の表面を、例えば水冷または空冷のような方法で100℃以下に冷却したのち、次の押出被覆層を形成すると、各層間の剥離性が向上するので好ましい。冷却手段としては、空冷方式、水冷方式があるが、表面に異物(水など)の付着がない点で空冷方式が好ましい。
次に、別の本発明の多層絶縁電線の製造方法を図2で説明する。図1では、導体に被覆層、第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を連続で被覆させる製造方法であった。図2に示す製造工程は、被覆層を設けてた後、一端、ボビン10に巻取り、その後、改めて各絶縁層を被覆するといった工程を有するものである。
図2に示されている電着工程(電着槽2、後の乾燥、焼付け工程(図示せず))、各絶縁層の押出被覆工程(押出機3、4、5)は上述の通りであるが、被覆層を形成させた線(以下、被覆線7という)をボビンに巻取った場合、被覆線7同士が接着する(ブロッキング現象)という現象が起こるので、それを抑制するために被覆層の外周にオーバーコート層を設けることが好ましい。
オーバーコート層の形成方法を図2を用いて説明する。オーバーコート層は、電着工程を経て、導体1の外周に被覆層が形成された被覆線7を図2に示す適当なオーバーコート材が充填してるオーバーコート槽8に浸漬させて、被覆層外周にオーバーコート層を形成させる。この時、形成させる手段は、公知の手段を適用すればよい。オーバーコート槽内の温度は、5℃〜40℃、特には15℃〜30℃に管理されており、5℃より低い温度であると、粘度が高くなるので、薄い層を形成することが容易でなくなる傾向にあり、40℃より高いとオーバーコート材のワニス濃度の変動が大きくなるので、再現性よくオーバーコート層を得ることが困難になる傾向にある。その後、乾燥、焼付け工程(図示せず)を行った後、オーバーコート層が被覆層の外周に形成された線(以下、オーバーコート線9という)をボビン10に巻取ればよい。乾燥、焼付け温度条件などは公知の条件で実施すればよく、例えば、150℃〜300℃に保持された雰囲気中に連続的に通過させればよい。
オーバーコート層に適用される材料としては、ボビンに巻取った後に、隣接する線同士が接着しない(ブロッキング現象を発生させない)ものであればよく、かつ前述した被覆層、第1絶縁層との塗れ性に優れた材料であればよい。具体的には、ポリエステル系樹脂を適用すればよい。ポリエステル系樹脂をワニス濃度2重量%〜5重量%に希釈したもの(特には3重量%〜4重量%)を使用することで、オーバーコート層の厚さが、0.5μm〜3μm、特には1μm〜2μmという薄い層を得ることが可能となるので好ましい。
オーバーコート層は、ブロッキング現象を防止するために設ける層であるので、上述した被覆層のように長手方向に均一でかつ全体に被覆されていなくてもよいので、ディッピングのような公知の方法を薄い層厚の形成手段として適用することができる。
その後、ボビンに巻取られたオーバーコート線9を繰り出して、オーバーコート層の外周に順に上述した第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層をそれぞれ押出被覆し、多層絶縁電線6bを得ることができる。また、図2では、被覆層、オーバーコート層を形成させた後、一端、ボビンに巻き取っているが、被覆層、オーバーコート層、第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を連続的に形成させても問題ない。
以下に、本発明を実施例をもってさらに説明する。
(実施例1)
線径が0.5mmの銅導体にウレタン樹脂を以下の条件で電着させ、250℃で乾燥、焼付けで被覆層を形成させた(被覆層:1μm)後、第1絶縁層として、熱可塑性ポリアミド樹脂を押出被覆し(30μm)、被覆後の表面温度が85℃になるまで空冷させ、第2絶縁層として、直鎖ポリエステル樹脂(E)とエチレン系共重合体(F)とからなる混合樹脂((E)100重量部に対し、(F)15重量部)を押出被覆し(40μm)、表面温度が85℃になるまで空冷し、第3絶縁層として、第2絶縁層と同じ材料を押出被覆し(30μm)多層絶縁電線を得た。
電着条件:
ポリイソシアネート類 :水添化キシリレンジイソシアネート
ポリオール類 :ポリカーボネイト
ワニス濃度 :1.5重量%
電圧DC :10V
ワニス温度 :30℃
(実施例2)
線径が0.5mmの銅導体にウレタン樹脂を以下の条件で電着させ、250℃で乾燥、焼付けて被覆層を形成させた(被覆層:3μm)後、第1絶縁層として、熱可塑性ポリアミド樹脂を押出被覆し(30μm)、被覆後の表面温度が85℃になるまで空冷させ、第2絶縁層として、直鎖ポリエステル樹脂(E)とエチレン系共重合体(F)とからなる混合樹脂((E)100重量部に対し、(F)15重量部)を押出被覆し(40μm)、表面温度が85℃になるまで空冷し、第3絶縁層として、第2絶縁層と同じ材料を押出被覆し(30μm)多層絶縁電線を得た。
電着条件:
ポリイソシアネート類 :水添化キシリレンジイソシアネート
ポリオール類 :ポリカーボネイト
ワニス濃度 :1.5重量%
電圧DC :20V
ワニス温度 :30℃
(実施例3)
線径が0.5mmの銅導体にウレタン樹脂を以下の条件で電着させ、250℃で乾燥、焼付けて被覆層を形成させた(被覆層:5μm)後、第1絶縁層として、熱可塑性ポリアミド樹脂を押出被覆し(30μm)、被覆後の表面温度が85℃になるまで空冷させ、第2絶縁層として、直鎖ポリエステル樹脂(E)とエチレン系共重合体(F)とからなる混合樹脂((E)100重量部に対し、(F)15重量部)を押出被覆し(40μm)、表面温度が85℃になるまで空冷し、第3絶縁層として、第2絶縁層と同じ材料を押出被覆し(30μm)多層絶縁電線を得た。
電着条件:
ポリイソシアネート類 :水添化キシリレンジイソシアネート
ポリオール類 :ポリカーボネイト
ワニス濃度 :1.5重量%
電圧DC :35V
ワニス温度 :30℃
(実施例4)
線径が0.5mmの銅導体にウレタン樹脂を以下の条件で電着させ、250℃で乾燥、焼付けで被覆層を形成させ(被覆層:3μm)、その外周にポリエステル系樹脂を以下のディッピング条件で行い200℃の乾燥、焼付けでオーバーコート層を形成させた(オーバーコート層:1μm)。その後、一端ボビンに巻取った後、第1絶縁層として、熱可塑性ポリアミド樹脂を押出被覆し(30μm)、被覆後の表面温度が85℃になるまで空冷させ、第2絶縁層として、直鎖ポリエステル樹脂(E)とエチレン系共重合体(F)とからなる混合樹脂((E)100重量部に対し、(F)15重量部)を押出被覆し(40μm)、表面温度が85℃になるまで空冷し、第3絶縁層として、第2絶縁層と同じ材料を押出被覆し(30μm)多層絶縁電線を得た。
電着条件:
ポリイソシアネート類 :水添化キシリレンジイソシアネート
ポリオール類 :ポリカーボネイト
ワニス濃度 :1.5重量%
電圧DC :20V
ワニス温度 :30℃
ディッピング条件:
ワニス濃度 :3重量%
温度 :30℃
(実施例5)
線径が0.5mmの銅導体にウレタン樹脂を以下の条件で電着させ、250℃で乾燥、焼付けで被覆層を形成させ(被覆層:5μm)、その外周にポリエステル系樹脂を以下のディッピング条件で行い200℃の乾燥、焼付けでオーバーコート層を形成させた(オーバーコート層:1μm)。その後、一端ボビンに巻取った後、第1絶縁層として、熱可塑性ポリアミド樹脂を押出被覆し(30μm)、被覆後の表面温度が85℃になるまで空冷させ、第2絶縁層として、直鎖ポリエステル樹脂(E)とエチレン系共重合体(F)とからなる混合樹脂((E)100重量部に、(F)15重量部)を押出被覆し(40μm)、表面温度が85℃になるまで空冷し、第3絶縁層として、第2絶縁層と同じ材料を押出被覆し(30μm)多層絶縁電線を得た。
電着条件:
ポリイソシアネート類 :水添化キシリレンジイソシアネート
ポリオール類 :ポリカーボネイト
ワニス濃度 :1.5重量%
電圧DC :35V
ワニス温度 :30℃
ディッピング条件:
ワニス濃度 :3重量%
温度 :30℃
(比較例1)
線径が0.5mmの銅導体にウレタン樹脂を複数回ディッピング、300℃で乾燥、焼付けを繰り返して被覆層(エナメル被覆層)を形成させ(被覆層:10μm)、その後、エナメル被覆層の外周に実施例1と同じ第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を押出被覆させて、多層絶縁電線を得た。
(比較例2)
線径が0.5mmの銅導体にウレタン樹脂を1回ディッピング、300℃で乾燥、焼付けで被覆層(エナメル被覆層)を形成させ(被覆層:3μm)、その後、エナメル被覆層の外周に実施例1と同じ第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を押出被覆させて、多層絶縁電線を得た。
(比較例3)
線径が0.5mmの銅導体にアクリル樹脂を以下の条件で電着させ、250℃で乾燥、焼付けで被覆層を形成させた(被覆層:3μm)後、被覆層の外周に実施例1と同じ第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を押出被覆させて、多層絶縁電線を得た。
電着条件:
ワニス濃度 :1.5%
電圧DC :20V
ワニス温度 :30℃
(外径寸法)
被覆層を形成した被覆線の外径をマイクロメーターで5箇所測定し、その平均値が0.514mm以下であると○と評価し、0.514mmより大きく0.520mm未満を△、0.520以上を×と評価した。
(外観)
得られた多層絶縁電線の外観を目視により凹凸有無を確認し、凹凸が確認されなかったものを○と評価し、凹凸が確認されたものを×と評価した。
(ピンホール数の測定)
JIS C 3003に準拠して試験電圧5Vで行い。被覆層形成後の被覆線に対し、ピンホール数が1mあたり100個以下のものを○とし、100個を越えたもの、または、連続的に発生したものを×と評価した。
(はんだ処理性)
得られた多層絶縁電線の端部をはんだ浴(400℃保持)に浸漬させ、3秒以内に端部表面にはんだ処理がなされたものを○と評価し、端部表面に異物が付着してるものを×と評価した。
以上の評価結果を表1に示す。
Figure 2005100668
本発明の多層絶縁電線の製造方法から得られる多層絶縁電線は、従来から使用されている変圧器、特にはスイッチング電源方式の変圧器に使用される多層絶縁電線として使用される。
本発明の多層絶縁電線の製造方法の1例を示す模式図である(オーバーコート層なし)。 本発明の多層絶縁電線の製造方法の1例を示す模式図である(オーバーコート層あり)。
符号の説明
1 導体
2 電着槽
3、4、5 押出機
6a、6b 多層絶縁電線
7 被覆線
8 オーバーコート槽
9 オーバーコート線
10 ボビン

Claims (5)

  1. 導体の外周にウレタン系樹脂からなる被覆層を形成させ、該被覆層の外周に少なくとも第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を順に押出被覆にて形成させる多層絶縁電線の製造方法において、前記被覆層を形成させる手段が電着であることを特徴とする多層絶縁電線の製造方法。
  2. さらに、前記被覆層と前記第1絶縁層の間にディッピングによってオーバーコート層を形成させることを特徴とする請求項1に記載の多層絶縁電線の製造方法。
  3. オーバーコート層がポリエステル系樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載の多層絶縁電線の製造方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の製造方法で作製されたことを特徴とする多層絶縁電線。
  5. スイッチング電源方式の変圧器に使用されることを特徴とする請求項4に記載の多層絶縁電線。

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