JP2005099609A - ピアノのハンマーシャンク - Google Patents
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Abstract
【課題】 保形性および寸法安定性に優れるとともに、軽量で、十分に高い剛性を有し、それにより、ハンマーの安定した動作と豊かな音量を確保することができるピアノのハンマーシャンクを提供する。
【解決手段】 ハンマーヘッド3とともにハンマー1を構成し、鍵10の押鍵に伴って回動するピアノのハンマーシャンク2であって、長繊維法で成形された、補強用の長繊維を含有する熱可塑性樹脂の成形品で構成されている。また、ハンマーシャンク2は、重量を軽減するための肉盗み部2cを有する。さらに、補強用の長繊維は炭素繊維で構成され、熱可塑性樹脂はABS樹脂で構成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 ハンマーヘッド3とともにハンマー1を構成し、鍵10の押鍵に伴って回動するピアノのハンマーシャンク2であって、長繊維法で成形された、補強用の長繊維を含有する熱可塑性樹脂の成形品で構成されている。また、ハンマーシャンク2は、重量を軽減するための肉盗み部2cを有する。さらに、補強用の長繊維は炭素繊維で構成され、熱可塑性樹脂はABS樹脂で構成されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、アコースティックピアノなどにおいて、ハンマーヘッドとともにハンマーを構成し、鍵の押鍵に伴って回動するピアノのハンマーシャンクに関する。
図6は、グランドピアノのハンマー51、およびこれを支持するシャンクフレンジ54を示しており、これらは鍵10(図7参照)ごとに設けられている。ハンマー51は、ハンマーシャンク52およびハンマーヘッド53などで構成されている。ハンマーシャンク52は、従来一般に、木材で構成されている。これは、木材が入手が容易で、加工性が良いとともに、軽量でありながら、剛性が高いという利点を有するためである。ハンマーシャンク52は、細長い棒状に形成されており、その後端部にハンマーヘッド53が設けられている。また、ハンマーシャンク52の前端部には、二股状に分岐した2つの腕部52a,52aが形成されており、これらの腕部52a,52aは、互いに平行に前方に延びている。
シャンクフレンジ54は、ハンマーシャンク52と同じ理由から、従来一般に、木材で構成されている。シャンクフレンジ54は、断面が矩形状に形成されており、フレンジねじ7を介して、ハンマーシャンクレール12に固定されている(図7参照)。シャンクフレンジ54の後端部には、所定の幅の係合部54aが後方に突出するように形成されており、この係合部54aが、ハンマーシャンク52の腕部52a,52aの間に係合している。また、腕部52a,52aおよび係合部54aにはピン5が通されており、ハンマーシャンク52は、このピン5を介して、シャンクフレンジ54に、水平軸線回りに回動自在に支持されている。
また、シャンクフレンジ54の係合部54aの両側面は、互いに平行に形成されており、ハンマーシャンク52の腕部52a,52aの内側面に、若干のクリアランスをもって対向している。さらに、ハンマーシャンク52の下面の前端部には、円柱状のシャンクローラ6が取り付けられており、ハンマーシャンク52は、このシャンクローラ6を介して、アクション8のレペティションレバー9(図7参照)に載置されている。
以上の構成により、鍵10の押鍵に伴い、ハンマーシャンク52が、シャンクローラ6を介してアクション8のジャック11で突き上げられることによって、ハンマーシャンク52およびハンマーヘッド53が一体に上方に回動し、ハンマーヘッド53が弦Sを打弦することによって、ピアノの発音が行われる(図7参照)。また、これらの回動時、ハンマーシャンク52が、腕部52a,52aおよび係合部54aで案内されることにより、ハンマーシャンク52は、左右にぶれることなく回動する。
また、従来の他のハンマーシャンクとして、特許文献1に開示されたものが知られている。このハンマーシャンクは、断面が矩形状の細長い棒状に形成されている。ハンマーシャンクの前端部には、従来のハンマーシャンクと同様に、二股状に分岐した2つの腕部が互いに平行に前方に延びるように設けられている。ハンマーシャンクは、木材で構成されており、その上面および下面が炭素繊維で被覆されている。具体的には、複数の炭素繊維を、ハンマーシャンクの長さ方向に沿って延び、かつ幅方向に並ぶように配置するとともに、複数のガラス繊維をこれと直交する方向に配置することによって、これらを織物状に形成する。そして、このような織物状の炭素繊維をエポキシ樹脂を用いて接着することによって、ハンマーシャンクの上面および下面が織物状の炭素繊維によって被覆されており、それにより、木材のみで構成された場合よりも高い剛性を得るようにしている。
前述したように、ハンマーシャンク52の材料としては従来一般に、軽量性と高剛性を併せ持つ木材が用いられている。特に、ハンマーシャンク52の場合には、これに取り付けられたハンマーヘッド53が弦Sの打弦部材として機能するため、鍵10が強打されたときにも、押鍵エネルギーを弦Sに十分に伝達し、それにより、豊かな音量が得られるよう、高い剛性が要求される。また、音量を確保するためには、ハンマーの回動速度を高くすることが好ましく、そのために軽量性が要求される。
しかし、その一方で、天然の素材である木材は、均質性に乏しいため、剛性や重量がばらつくとともに、残留した応力などにより反りやねじれなどの変形が発生しやすいという欠点を有する。また、木材は、乾湿による寸法変化が大きいので、図7に示すハンマーシャンク52に用いられた場合には、ハンマーシャンク52の腕部52a,52aとシャンクフレンジ54の係合部54aとの間のクリアランスが、乾湿に応じて比較的大きく変化する。特に、このハンマーシャンク52では、前述した理由から、この間のクリアランスがもともと狭く設定されているので、その変化量が大きいと、ハンマーシャンク52がシャンクフレンジ54に対して、緩くなったり、きつくなったりする。以上のような自身の変形やシャンクフレンジ54の係合部54aとのクリアランスの変化によって、鍵10の押鍵強さに応じたハンマー51の回動速度が安定して得られないおそれがある。
一方、特許文献1に開示されたハンマーシャンクは、木材が炭素繊維で被覆されているので、木材のみで構成されたハンマーシャンクと比較して、高い剛性を得ることができる。しかし、このハンマーシャンクは、その上面および下面のみを炭素繊維で被覆するにすぎず、それ以外のハンマーシャンクの大部分は木材のままなので、それにより得られる剛性には限界がある。また、このハンマーシャンクは、その大部分が木材で構成されているので、この木材部分は、上述した木材のみで構成されたハンマーシャンクと同様、均質性に乏しいため、剛性および重量のばらつきや変形などによる不具合を完全に解消することは困難である。その結果、鍵の押鍵強さに応じたハンマーの回動速度が安定して得られないおそれがある。また、ハンマーシャンクの上面および下面に炭素繊維を被覆しているので、その分、ハンマーシャンクの加工に手間がかかるため、組立工数が増加し、それにより、製造コストが増大する。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、保形性および寸法安定性に優れるとともに、軽量で、十分に高い剛性を有し、それにより、ハンマーの安定した動作と豊かな音量を確保することができるピアノのハンマーシャンクを提供することを目的とする。
この目的を達成するため、請求項1による発明は、ハンマーヘッドとともにハンマーを構成し、鍵の押鍵に伴って回動するピアノのハンマーシャンクであって、長繊維法で成形された、補強用の長繊維を含有する熱可塑性樹脂の成形品で構成されていることを特徴とする。
上記の構成における長繊維法とは、熱可塑性樹脂で被覆した同じ長さの繊維状の強化材を含むペレットを射出成形することによって、成形品を得るものである。この長繊維法によれば、成形品中に、例えば0.5mm以上の長さを有する比較的長い繊維状の強化材が含有される。したがって、本発明のハンマーシャンクは、比較的長い補強用の長繊維を含有することにより、非常に高い剛性が得られ、木材と同等またはそれ以上の十分な剛性を得ることができる。その結果、鍵が押鍵されたときのハンマーシャンクのたわみを抑制でき、押鍵エネルギーがハンマーから弦に効率良く伝達されることによって、豊かな音量を得ることができる。また、長繊維法で成形された成形品は、保形性や寸法安定性に優れているので、木材の場合と比較して、ハンマーシャンク自身の反りおよびねじれなどの変形および乾湿による伸縮を、非常に小さく抑制することができる。以上により、ハンマーの安定した動作を確保することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のピアノのハンマーシャンクにおいて、重量を軽減するための肉盗み部を有することを特徴とする。
この構成によれば、肉盗み部によってハンマーシャンクが軽量化されるので、それにより、ハンマーの回動速度が高められることによって、さらに豊かな音量を得ることができる。また、上述したように、本発明では、補強用の長繊維によって剛性が高められるので、肉盗み部により断面が減少しても、所要の剛性を確保することが可能である。このように、所要の剛性を確保しながら、軽量化を最大限に図ることができる。また、ハンマーシャンクは樹脂の成形品で構成されるので、そのような肉盗み部を、成形時に容易にかつ精度良く形成することができる。
また、請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のピアノのハンマーシャンクにおいて、長繊維が炭素繊維であることを特徴とする。
一般に、炭素繊維は、他の補強用の長繊維、例えばガラス繊維よりも導電性が高い。したがって、上記のように、炭素繊維を補強用の長繊維として用いることにより、ハンマーシャンクの導電性が高められることによって、その帯電を防止することができる。それにより、ハンマーシャンクおよびその周辺へのほこりなどの付着を抑制でき、したがって、ハンマーの動作および外観を良好に維持することができる。
また、請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のピアノのハンマーシャンクにおいて、熱可塑性樹脂がABS樹脂であることを特徴とする。
ハンマーシャンクには一般に、ハンマーヘッドやシャンクローラなどの他の部品が取り付けられる。一方、ABS樹脂は、熱可塑性樹脂の中では、比較的高い接着性を有する。したがって、ハンマーシャンクを構成する熱可塑性樹脂として、ABS樹脂を用いることにより、ハンマーシャンクへのシャンクローラなどの他の部品の取り付けを、接着によって容易に行うことができ、その組立性を向上させることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を、詳細に説明する。なお、以下の説明では、グランドピアノを演奏者から見た場合の手前側(図3の右側)を「前」、奥側(図3の左側)を「後」とし、さらに鍵10の並び方向を「左右方向」として、説明を行うものとする。まず、図1を参照しながら、ハンマー1およびシャンクフレンジ4の構成について説明する。同図に示すように、ハンマー1は、ハンマーシャンク2およびハンマーヘッド3などで構成されている。
ハンマーシャンク2は、本実施形態では、長繊維法で成形された熱可塑性樹脂の成形品で構成されており、例えば、以下に述べるようなペレットを用いた射出成形によって成形されている。このペレットは、炭素繊維で構成されたロービングを、所定の張力を加えた状態で揃えながら、ゴム状重合体を含む熱可塑性樹脂である、例えばABS樹脂を押出機で押し出したもので被覆することによって成形される。このような成形方法により、ペレットの成形時に炭素繊維のロービングが折れることがなく、成形されたペレット中にこれと等しい長さの炭素繊維を含有させることができる。本実施形態では、ペレットの長さは5〜15mmに設定されており、それにより、このペレットを用いて射出成形されたハンマーシャンクには、0.5〜2mmの長さの炭素繊維が含有される。
図1に示すように、ハンマーシャンク2は、前後方向に延び、所定の径Dを有する断面円形状の本体部2aと、本体部2aの前端部から互いに平行に前方に延びる二股状の一対の腕部2b,2bを一体に備えている。図2に示すように、本体部2aの中央部には、断面円形の中空部2c(肉盗み部)が長さ方向に延びるように形成されている。このような構成により、本体部2aは、断面一定の細長い円筒状に形成されている。なお、中空部2cは、ハンマーシャンク2を射出成形する際、金型内にピンを挿入した状態で射出を行い、金型内に充填されたABS樹脂が冷却された後に、ピンを引き抜くことによって形成することが可能である。
一対の腕部2b,2bには、側方に貫通する孔(1つのみ図示)2d,2dが直線状に並ぶように形成され、これらの孔2d,2dに、ブッシングクロス(図示せず)を介してピン5が取り付けられている。一対の腕部2b,2bの下面の後端部には、孔2d,2dよりも後ろ側に、ハンマーシャンク2の長さ方向と直交する方向(左右方向)に溝2eが成形されており、この溝2eに、シャンクローラ芯14が下方に突出するように取り付けられている。そして、このシャンクローラ芯14の突出部を前後から覆うように円柱状のシャンクローラ6が取り付けられている。
また、ハンマーシャンク2の後端部には、これと直交するようにハンマーヘッド3が設けられている。ハンマーヘッド3は、木材などで構成されたハンマーウッド3aと、その先端部を包むように順に巻かれたアンダーフェルト3bおよびトップフェルト3cで構成されている。
シャンクフレンジ4は、木材または合成樹脂で構成されている。図1に示すように、シャンクフレンジ4は、断面がほぼ矩形の細長い本体部4aと、その背面の中央部から後方に突出する係合部4bを一体に有している。係合部4bは、所定の幅を有し、その両側面が互いに平行に形成されており、ハンマーシャンク2の腕部2b,2bの間に、若干のクリアランスをもって係合している。また、係合部4bには、孔(図示せず)が側方に貫通するように形成されている。そして、この孔にピン5が通されることによって、ハンマーシャンク2は、このピン5を介してシャンクフレンジ4に、水平軸線回りに回動自在に支持されている。
また、本体部4aの中央部には、シャンクフレンジ4を後述するハンマーシャンクレール12に取り付けるための取付孔4cが、上下方向に貫通するように形成されている。さらに、本体部4aと係合部4bとの境界部付近には、上下方向に貫通するねじ孔4dが形成されており、このねじ孔4dに、後述するレペティションレバー9の上方への回動を規制するためのドロップスクリュー13が、下方から進退自在にねじ込まれている。
次に、鍵10の押鍵に伴ってハンマー1を回動させるアクション8の構成を、図3を参照して説明する。アクション8は、多数の鍵10(1つのみ図示)ごとに設けられている。同図に示すように、アクション8は、前後方向に延びる回動自在のウィッペン15と、ウィッペン15に回動自在に取り付けられたレペティションレバー9およびジャック11を備えており、左右のブラケット16,16(一方のみ図示)の間に取り付けられている。左右のブラケット16,16は、鍵10を載置する筬(図示せず)の左右端部にそれぞれ固定され、それらの間にウィッペンレール17が渡されていて、このウィッペンレール17にねじ止めした各ウィッペンフレンジ18に、ウィッペン15の後端部が回動自在に取り付けられている。各ウィッペン15は、対応する鍵10の上面後部に設けられたキャプスタンボタン19に、ウィッペンヒール20を介して載っている。
また、左右のブラケット16,16の間には、ハンマーシャンクレール12が渡されている。このハンマーシャンクレール12には、多数のねじ穴(図示せず)が左右方向に並ぶように形成されており、シャンクフレンジ4は、その取付孔4cに通したフレンジねじ7を、ハンマーシャンクレール12のねじ穴にねじ込み、締め付けることによって、ハンマーシャンクレール12に固定されている。
レペティションレバー9は、断面が矩形状で、斜め前上がりに前後方向に延びており、その中央部において、ウィッペン15に回動自在に取り付けられている。レペティションレバー9の後端部には、レバースクリュー21が上下方向に貫通した状態で進退自在に螺合しており、その下端部にレバーボタン22が一体に設けられている。また、レペティションレバー9は、ウィッペン15に取り付けたレペティションスプリング23によって、復帰方向(図3の反時計方向)に付勢されている。以上の構成により、鍵10の離鍵状態では、レペティションレバー9は、レペティションスプリング23のばね力により復帰側に回動していて、レバーボタン22がウィッペン15の上面に当接しているとともに、レバースクリュー21を回すことによって、離鍵状態におけるレペティションレバー9の角度を調整することが可能である。
レペティションレバー9の前部の所定位置には、上下方向に貫通するジャック案内孔9aが形成されている。このレペティションレバー9の上面のジャック案内孔9a付近に、ハンマー1がシャンクローラ6を介して載置されている。また、レペティションレバー9の上面の前端部には、レバースキン24が貼り付けられており、ドロップスクリュー13に対向している。この構成により、ドロップスクリュー13を回し、その下方への突出量を調整することによって、これにレペティションレバー9が当接するレットオフ位置を調整することが可能である。
ジャック11は、上下方向に延びる断面矩形のハンマー突上げ部11aと、その下端部から後方にほぼ直角に延びるレギュレーティングボタン当接部11bとから、L字状に形成されており、その角部においてウィッペン15の前端部に回動自在に取り付けられている。ハンマー突上げ部11aの上端部は、レペティションレバー9のジャック案内孔9aに、前後方向に移動自在に係合するとともに、離鍵状態においてはシャンクローラ6と微小な間隔を存して対向している。また、ジャック11は、レペティションレバー9を付勢するレペティションスプリング23によって、復帰方向(図3の反時計方向)に付勢されている。
また、ジャック11のハンマー突上げ部11aの中間部には、ジャック11の角度位置を調整するためのジャックボタンスクリュー25が、前後方向に貫通した状態で進退自在に螺合している。ジャックボタンスクリュー25の先端部には、ジャックボタン26が一体に設けられており、このジャックボタン26は、離鍵状態では、ウィッペン15に立設されたスプーン27に当接している。したがって、このジャックボタンスクリュー25を回すことによって、離鍵状態におけるジャック11の角度位置を調整することが可能である。
一方、ハンマーシャンクレール12の下面には、レギュレーティングレール28がねじ止めされており、このレギュレーティングレール28の下面に、ジャック11の上方への回動を規制するレギュレーティングボタン29が進退自在に螺合していて、ジャック11のレギュレーティングボタン当接部11bの前端部と所定の間隔をもって対向している。
以上の構成のアクション8によれば、図3に示す離鍵状態から鍵10が押鍵されると、ウィッペン15が、キャプスタンボタン19を介して突き上げられることにより、上方に回動するとともに、ウィッペン15に取り付けたレペティションレバー9およびジャック11も上方に回動する。これに伴い、まず、レペティションレバー9がシャンクローラ6を揺動させながらこれを介してハンマー1のハンマーシャンク2を押し上げることにより、ハンマーシャンク2が腕部2b,2bおよび係合部4bに案内されながら上方に回動する。次いで、レペティションレバー9がドロップスクリュー13に係合することにより、その回動が阻止されることで、ジャック11がシャンクローラ6を介してハンマーシャンク2を突き上げる。その後、ハンマーシャンク2およびこれと一体のハンマーヘッド3が、上方に張られた弦Sを打弦する直前まで回動した時点で、ジャック11が、レギュレーティングボタン29に係合し、その回動が阻止されることによって、シャンクローラ6から抜ける。これにより、ハンマーシャンク2およびハンマーヘッド3は、アクション8および鍵10との連結を解かれ、自由回動状態となり、ハンマーヘッド3が弦Sを打弦することによって、発音が行われる。
図4は、本発明の第2実施形態によるピアノのハンマー41をシャンクフレンジ4とともに示している。本実施形態は、上述した第1実施形態と比較し、ハンマーシャンク42の本体部42aの構成が異なる。すなわち、第1実施形態では、ハンマーシャンク2の本体部2aに、肉盗み部として、中央に長さ方向に延びる中空部2cが形成されている。これに対し、この第2実施形態では、ハンマーシャンク42の本体部42aに、肉盗み部として、上面および下面に凹部42cが形成されている。
ハンマーシャンク42は、第1実施形態と同様、長繊維法で成形されたABS樹脂の成形品で構成されており、前後方向に延びる棒状の本体部42aと、本体部42aの前端部から互いに平行に前方に延びる腕部42b,42bを一体に備えている。本体部42aには、図5に示すように、その上面および下面の中央部に、長さ方向に沿って連続的に延びる凹部42cが形成されており、それにより本体部42aは、一定のH形の断面を有している。また、ハンマーシャンク42の後端部には、第1実施形態と同様、これと直交するようにハンマーヘッド3が設けられている。
以上のように、本実施形態によれば、ハンマーシャンク2,42が、長繊維法で成形されたABS樹脂の成形品で構成され、0.5〜2mmの比較的長い炭素繊維を補強用の長繊維として含有するので、非常に高い剛性が得られ、木材と同等またはそれ以上の十分な剛性を得ることができる。その結果、鍵10が押鍵されたときのハンマーシャンク2,42のたわみを抑制でき、押鍵エネルギーがハンマー1,41から弦Sに効率良く伝達されることによって、豊かな音量を得ることができる。また、長繊維法で成形された成形品は、保形性や寸法安定性に優れているので、木材の場合と比較して、ハンマーシャンク2,42自身の反りおよびねじれなどの変形および乾湿による伸縮を、非常に小さく抑制することができる。以上により、ハンマー1,41の安定した動作を確保することができる。
また、本実施形態では、ハンマーシャンク2,42は、肉盗み部として中空部2cおよび凹部42cをそれぞれ有しているので、その分、ハンマーシャンク2,42を軽量化でき、それにより、ハンマー1,41の回動速度が高められることによって、さらに豊かな音量を得ることができる。また、上述したように本実施形態のハンマーシャンク2,42は、補強用の長繊維によって剛性が高められるので、肉盗み部として中空部2cおよび凹部42cにより断面がそれぞれ減少しても、所要の剛性を確保することが可能である。このように、所要の剛性を確保しながら、軽量化を最大限に図ることができる。また、ハンマーシャンク2,42は長繊維法で成形されたABS樹脂の成形品で構成されるので、そのような肉盗み部として中空部2cおよび凹部42cを、成形時に容易にかつ精度良く形成することができる。
さらに、本実施形態では、ハンマーシャンク2,42に含有される補強用の長繊維として、炭素繊維を用いているので、ハンマーシャンク2,42の導電性が高められることによって、その帯電を防止することができる。それにより、ハンマーシャンク2,42およびその周辺へのほこりなどの付着を抑制でき、したがって、ハンマー1,41の動作および外観を良好に維持することができる。
さらには、本実施形態では、ハンマーシャンク2,42を構成する熱可塑性樹脂として、ABS樹脂を用いているので、ハンマーシャンク2,42へのシャンクローラ6などの他の部品の取付を、接着によって容易に行うことができ、その組立性を向上させることができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態は、熱可塑性樹脂としてABS樹脂を、補強用の長繊維として炭素繊維をそれぞれ用いた例であるが、他の適当な材料を用いることが可能であり、例えば、後者については、ガラス繊維を採用してもよい。また、第1実施形態では、ハンマーシャンク2を円筒状に形成しているが、これに代えて、断面が矩形などの多角形に形成された中空状のものを採用してもよい。また、実施形態では、ハンマー1,41を軽量化するために、ハンマーシャンク2,42は肉盗み部として中空部2cおよび凹部42cをそれぞれ有しているが、剛性を優先する場合には、これらの肉盗み部を省略してもよい。
さらに、実施形態は、本発明をグランドピアノのハンマーシャンクに適用した例であるが、本発明を、他のタイプのピアノ、例えばハンマーを有するグランド型電子ピアノや自動演奏ピアノのハンマーシャンク、さらには、アップライトピアノのハンマーシャンクに適用してもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部を適宜、変更することが可能である。
1 ハンマー
2 ハンマーシャンク
2c 中空部(肉盗み部)
3 ハンマーヘッド
10 鍵
41 ハンマー
42 ハンマーシャンク
42c 凹部(肉盗み部)
2 ハンマーシャンク
2c 中空部(肉盗み部)
3 ハンマーヘッド
10 鍵
41 ハンマー
42 ハンマーシャンク
42c 凹部(肉盗み部)
Claims (4)
- ハンマーヘッドとともにハンマーを構成し、鍵の押鍵に伴って回動するピアノのハンマーシャンクであって、
長繊維法で成形された、補強用の長繊維を含有する熱可塑性樹脂の成形品で構成されていることを特徴とするピアノのハンマーシャンク。 - 重量を軽減するための肉盗み部を有することを特徴とする、請求項1に記載のピアノのハンマーシャンク。
- 前記長繊維が炭素繊維であることを特徴とする、請求項1または2に記載のピアノのハンマーシャンク。
- 前記熱可塑性樹脂がABS樹脂であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のピアノのハンマーシャンク。
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Legal Events
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060831 |
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A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20091013 |
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A02 | Decision of refusal |
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