JP2004226949A - ピアノのアクション - Google Patents
ピアノのアクション Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004226949A JP2004226949A JP2003158571A JP2003158571A JP2004226949A JP 2004226949 A JP2004226949 A JP 2004226949A JP 2003158571 A JP2003158571 A JP 2003158571A JP 2003158571 A JP2003158571 A JP 2003158571A JP 2004226949 A JP2004226949 A JP 2004226949A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- hammer
- action
- shank
- carbon fiber
- piano
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Landscapes
- Electrophonic Musical Instruments (AREA)
Abstract
【課題】アクション部品の軽量性および高剛性を両立させるとともに、アクションのばらつきを低減することができるピアノのアクションを提供する。
【解決手段】鍵2の押鍵に伴って作動し、ハンマー3を回動させることにより、打弦を行わせるピアノのアクション1であって、アクション1が互いに連結された複数のアクション部品4、5、6を含み、複数のアクション部品4、5、6の少なくとも1つが、少なくとも一部を断面コ字状に折り曲げた炭素繊維シートで構成されている。また、ハンマー3が、中空筒状の炭素繊維で構成され、両端部にねじ部14b、14bが形成されたハンマーシャンク14と、ハンマーシャンク14の一方のねじ部14bにねじ込まれたハンマーヘッド15と、ハンマーシャンク14の他方のねじ部14bにねじ込まれるとともに、シャンクフレンジ16に回動自在に支持される連結部材14aと、を備える。
【選択図】 図2
【解決手段】鍵2の押鍵に伴って作動し、ハンマー3を回動させることにより、打弦を行わせるピアノのアクション1であって、アクション1が互いに連結された複数のアクション部品4、5、6を含み、複数のアクション部品4、5、6の少なくとも1つが、少なくとも一部を断面コ字状に折り曲げた炭素繊維シートで構成されている。また、ハンマー3が、中空筒状の炭素繊維で構成され、両端部にねじ部14b、14bが形成されたハンマーシャンク14と、ハンマーシャンク14の一方のねじ部14bにねじ込まれたハンマーヘッド15と、ハンマーシャンク14の他方のねじ部14bにねじ込まれるとともに、シャンクフレンジ16に回動自在に支持される連結部材14aと、を備える。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを回動させることにより、打弦を行わせるピアノのアクションに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のアクションとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この従来技術は、アクションのうちのハンマーに関するものであり、そのハンマーシャンクが、木材から成る中実の芯材と、その外周面の少なくとも一部を被覆する炭素繊維強化合成樹脂と、から構成されている。それにより、ハンマーシャンクの比重を保ちながら、その曲げ剛性の向上を図るようにしている。
【0003】
また、図9は、従来の一般的なグランドピアノのアクションを示している。このアクション51は、回動自在のハンマー53、ウィッペン54、レペティションレバー55およびジャック56などを備えている。ハンマー53は、前後方向に延びるハンマーシャンク64と、その先端部(後端部)に取り付けたハンマーヘッド15などで構成されており、ハンマーシャンク64の基端部(前端部)において、ハンマーシャンクレール23にねじ止めしたシャンクフレンジ66に、回動自在に取り付けられている。
【0004】
ウィッペン54は、ウィッペンレール22にねじ止めしたウィッペンフレンジ74に回動自在に取り付けられるとともに、鍵2の後部に載置されている。また、レペティションレバー55およびジャック56は、ウィッペン54に回動自在に取り付けられるとともに、レペティションスプリング7によって復帰方向(同図の反時計方向)に付勢されている。上記の構成要素のうち、ハンマーシャンク64は中実の木材で構成されている。また、ウィッペン54、レペティションレバー55およびジャック56は、木材または合成樹脂で構成されている。さらに、シャンクフレンジ66およびウィッペンフレンジ74も、木材や合成樹脂などで構成されている。
【0005】
レペティションレバー55の前部には、上下方向に貫通するジャック案内孔55aが形成されており、このジャック案内孔55aの付近に、シャンクローラ8を介してハンマー53のハンマーシャンク64が載置されている。一方、ジャック56は、L字状に形成されており、上下方向に延びるハンマー突上げ部の先端部が、レペティションレバー55のジャック案内孔55aに、これに沿って移動自在に係合している。
【0006】
さらに、鍵2の後端部にはバックチェック80が設けられている。このバックチェック80は、鍵2に立設されたワイヤー31と、その先端部にねじ込まれた、木材などから成るバックチェック本体82と、その前面に順に貼り付けられたフェルト33および皮革シート34で構成されている。また、鍵2の前部には、鍵重り(図示せず)が取り付けられており、この鍵重りとアクション51との重さのバランスによって、鍵2のタッチ重さが調整される。
【0007】
図9に示す離鍵状態から鍵2が押鍵されると、ウィッペン54が突き上げられることにより回動し、レペティションレバー55およびジャック56がウィッペン54と一緒に上方に移動する。これに伴い、レペティションレバー55が、シャンクローラ8を摺動させながらこれを介してハンマー53を押し上げ、上方に回動させる。次いで、レペティションレバー55がドロップスクリュー9に係合することにより、ジャック56がシャンクローラ8を介してハンマー53を突き上げる。その後、ハンマー53が、上方の弦Sを打弦する直前まで回動した時点で、ジャック56が、レギュレーティングボタン10に係合することによって回動し、シャンクローラ8から抜ける。これにより、ハンマー53は、ジャック56および鍵2との連結を解かれ、自由回動状態で弦Sを打弦する。
【0008】
打弦の後、ハンマー53は下方に自由回動し、バックチェック80の前面に係止されることによって、それ以上の下方への回動が阻止される。また、その後に鍵2が離鍵され、ある程度まで戻されたタイミングで、レペティションレバー55が作動し始め、レペティションスプリング7のばね力で反時計方向に復帰回動することによって、シャンクローラ8を摺動させながら押し上げる。これにより、ジャック56が、レペティションスプリング7のばね力で反時計方向に復帰回動し、もとの位置に戻ることによって、鍵2が完全に戻らなくても、次の打弦を行うことが可能になり、同じ弦Sをハンマー53で連打できるので、同じ鍵2を連続して速く叩く、トリルのような連打奏法を行うことが可能になる。
【0009】
【特許文献1】
特開昭51−130391号公報(第3図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、図9に示す従来のアクション51では、ウィッペン54、レペティションレバー55、ジャック56やハンマーシャンク64などのアクション部品として、木材が用いられている。これは、これらのアクション部品は、打鍵エネルギーを弦Sに伝達するための回動部品として用いられることから、軽量でかつ剛性が高いことが好ましいのに対し、木材は、比較的軽量であるとともに、軽量でありながら剛性が高く、アクション部品に適しているからである。しかし、その一方で、木材は、均質性に乏しく、異方性を有するため、重量および剛性などの特性のばらつきが大きいとともに、残留応力によるねじれなどの変形が生じやすいという欠点がある。また、乾湿に対する寸法安定性が低く、それによるねじれなどの変形も生じやすい。このため、組立時や長年の使用に伴い、アクションのばらつきが生じやすく、これを調整するための煩雑な調整作業が必要になってしまう。
【0011】
このため、木材の代わりに金属や合成樹脂で構成したアクション部品も、従来知られている。しかし、これらの金属や合成樹脂は、木材と比較して一般に、重量を同等にすると剛性が低くなり、逆に剛性を同等にすると重量が重くなるため、軽量でかつ高剛性であるという木材の利点が得られなくなってしまう。また、前述した従来技術は、ハンマーシャンクの芯材が中実の木材で構成されているので、その軽量化を十分に達成できないとともに、木材の外周面の少なくとも一部を炭素繊維強化合成樹脂で被覆するにすぎないので、木材の前述した欠点を十分に解消することはできない。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、アクション部品の軽量性および高剛性を両立させることができるとともに、アクションのばらつきを低減することができるピアノのアクションを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを回動させることにより、打弦を行わせるピアノのアクションであって、アクションが互いに連結された複数のアクション部品を含み、複数のアクション部品の少なくとも1つが、少なくとも一部を断面コ字状に折り曲げた炭素繊維シートで構成されていることを特徴とする。
【0014】
このピアノのアクションによれば、これを構成する複数のアクション部品の少なくとも1つが、炭素繊維シートで構成され、この炭素繊維シートは、所定の形状を有するよう、その少なくとも一部が断面コ字状に折り曲げられている。このように構成されたアクション部品は、基本的には、折り曲げた炭素繊維シートによって中空状に形成されているので、比較的軽量であり、また、炭素繊維を素材としているので、軽量でありながら高い剛性を有する。したがって、木材で構成した場合と同様、アクション部品に要求される軽量性および高剛性という条件を十分に満たすことができる。また、アクション部品が炭素繊維で構成されるので、その剛性や重量などの特性のばらつきが小さいとともに、高い寸法安定性および保形性を有する。その結果、アクションのばらつきを低減でき、その調整作業を省略または簡略化することができる。
【0015】
また、前記目的を達成するため、請求項2に係る発明は、鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを回動させることにより、打弦を行わせるピアノのアクションであって、ハンマーが、中空筒状の炭素繊維で構成され、両端部にねじ部がそれぞれ形成されたハンマーシャンクと、ハンマーシャンクの一方のねじ部にねじ込まれたハンマーヘッドと、ハンマーシャンクの他方のねじ部にねじ込まれるとともに、シャンクフレンジに回動自在に支持される連結部材と、を備えることを特徴とする。
【0016】
このピアノのアクションによれば、そのハンマーのハンマーシャンクが、中空筒状の炭素繊維で構成されるので、ハンマーシャンクに要求される軽量性および高剛性という条件を十分に満たすことができるとともに、ハンマーシャンクの剛性や重量などの特性のばらつきを低減できるとともに、高い寸法安定性および保形性を確保することができる。また、ハンマーシャンクの両端部にあらかじめ形成したねじ部に、ハンマーヘッドおよび連結部材がそれぞれねじ込まれ、取り付けられるので、これらの取付作業を、接着剤などを用いることなく容易に行えるとともに、取付後におけるこれらの部品とハンマーシャンクとの位置関係の調整も容易に行うことができる。また、ハンマーシャンクを中空筒状に形成しても、これを連結部材を介してシャンクフレンジに支障なく支持させることができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明は、請求項2のピアノのアクションにおいて、連結部材が合成樹脂で構成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、連結部材が、合成樹脂で構成されていて、乾湿などに対する寸法安定性や保形性に優れているので、これを木材で構成した場合の、乾湿による連結部材の伸縮やハンマーシャンクの緩みなどの不具合を、確実に回避することができる。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項2のピアノのアクションにおいて、連結部材が炭素繊維を含有した合成樹脂で構成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、連結部材を合成樹脂で構成することによる、上述した請求項3の発明の利点をそのまま得ることができる。これに加えて、この合成樹脂が炭素繊維を含有することによって、連結部材を補強し、ハンマーシャンク全体の剛性をさらに高めることができ、それにより、ハンマーシャンクに要求される軽量性および高剛性という条件をさらに十分に満たすことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるグランドピアノのアクション1を示している。
このアクション1は、すでに説明した従来のアクション51と比較し、基本的な構成は同じで、ハンマー3、ウィッペン4、レペティションレバー5およびジャック6などの構成が異なるので、同じ構成の部品については同じ符号を用いて説明を行うものとする。
【0022】
このアクション1は、鍵2を載置する筬(図示せず)の左右端部にそれぞれ設けたブラケット21(図1に一方のみ図示)に取り付けられている。左右のブラケット21、21間には、ウィッペンレール22およびハンマーシャンクレール23が渡されており、このウィッペンレール22にねじ止めした各ウィッペンフレンジ24に、ウィッペン4の後端部が回動自在に取り付けられている。
【0023】
図2に示すように、各ウィッペン4は、図9の従来のウィッペン54と同じ所定の側面形状を有しており、すなわち、前後方向に延びる本体部4aと、本体部4aの下側のヒール部4bと、本体部4aの中央部から上方に延びる鉛直部4cを一体に備えている。また、ウィッペン4は、炭素繊維シートを折り曲げることにより、その全体が上方が開放した断面コ字状に形成されている。このようなウィッペン4の加工は、炭素繊維シートを所定の形状に切断した後にコ字状に折り曲げることによって、あるいは折曲げ後に所定の形状に切断することによって、容易に行うことが可能である。また、ウィッペン4の左右の壁部には、本体部4aの前後の端部と鉛直部4cの上端部および中央部に、ジャック6、ウィッペンフレンジ24、レペティションレバー5およびレペティションスプリング7をそれぞれ取り付けるための取付孔4d、4e、4f、4gが、互いに対向するように形成されている。以上の構成のウィッペン4は、対応する鍵2の上面後部に設けられたキャプスタンボタン25に、ヒール部4bを介して載っている。
【0024】
ウィッペン4を支持するウィッペンフレンジ24もまた、炭素繊維シートで構成されており、図3に示すように、本体部24aと、本体部24aの上端部に折曲げ形成された断面コ字状の取付部24bとを一体に備えている。本体部24aの中央には孔24cが形成されており、ウィッペンフレンジ24は、この孔24cを介して、ウィッペンレール22にねじ止めされている。また、取付部24bの上部には、上方に開放する切欠24dが形成され、左右の壁部には、取付孔24e、24eが互いに対向するように形成されている。ウィッペン4は、その後端部を切欠24dに通した状態で、取付孔24e、24eを介して取付部24bに回動自在に取り付けられている。
【0025】
レペティションレバー5もまた、炭素繊維シートで構成されており、図4に示すように、前後方向に延びる細長い本体部5aと、本体部5aの前側に連なる摺接部5bと、本体部5aの中央部に折曲げ形成された断面コ字状の取付部5cを一体に備えている。摺接部5bは、本体部5aよりも幅が広く、前側で折り返されており、折り返された上下の部分に、前後方向に延びるジャック案内孔5d、5dが形成されている。また、取付部5cの左右の壁部には、取付孔5e、5e(1つのみ図示)が互いに対向するように形成されている。レペティションレバー5は、その取付部5cがウィッペン4の鉛直部4cの左右の壁部間に係合した状態で、取付孔5eおよびウィッペン4の前述した取付孔4gを介して、ウィッペン4に回動自在に取り付けられている。
【0026】
また、図1に示すように、摺接部5bの上面には、ジャック案内孔5dよりも前側の位置に、レバースキン29が貼り付けられている。さらに、本体部5aの後端部には、レバースクリュー27が進退自在に螺合しており、その下端部にレバーボタン28が一体に設けられている。また、レペティションレバー5は、ウィッペン4に取付孔4gを介して取り付けたレペティションスプリング7によって、復帰方向(図1の反時計方向)に付勢されている。
【0027】
ジャック6もまた、炭素繊維シートで構成されており、図5に示すように、上下方向に延びるハンマー突上げ部6aと、その下端部から前方に延びるレギュレーティングボタン当接部6bから、L字状に形成されており、その角部が折曲げ形成された断面コ字状の取付部6cになっている。また、ハンマー突上げ部6aの上端部は、カール状に折り返され、レペティションレバー5のジャック案内孔5dに前後方向に移動自在に係合するとともに、離鍵状態においてはシャンクローラ8と微小な間隔を存して対向している。また、レギュレーティングボタン当接部6bの先端部は、後述するレギュレーティングボタン10に支障なく係合できるよう、上方に凸に曲げられている。さらに、ジャック6は、上述したレペティションスプリング7によって、復帰方向(図1の反時計方向)に付勢されている。
【0028】
また、ジャック6のハンマー突上げ部6aの中間部には、ボタン取付孔6dが形成されており、このボタン取付孔6dに、ジャックボタンスクリュー11が進退自在に螺合している。ジャックボタンスクリュー11の先端部には、ジャックボタン12が一体に設けられており、このジャックボタン12は、離鍵状態では、ウィッペン4に立設されたスプーン13に当接している。このジャックボタンスクリュー11を回すことによって、離鍵状態におけるジャック6の角度位置が調整される。
【0029】
さらに、鍵2の後端部にはバックチェック30が設けられている。このバックチェック30は、鍵2に立設されたワイヤー31と、その先端部にねじ込まれたバックチェック本体32を備えている。図6に示すように、このバックチェック本体32もまた、所定の側面形状に折曲げ形成した炭素繊維シートで構成されており、その前面に、フェルト33および皮革シート34が順に貼り付けられている。また、バックチェック本体32の下壁には、ワイヤー31をねじ込むためのねじ孔32aが形成されている。
【0030】
一方、図7に示すように、ハンマー3は、前後方向に延びるハンマーシャンク14と、その先端部に取り付けたハンマーヘッド15と、ハンマーシャンク14の基端部に取り付けた連結部材14aで構成されている。ハンマーシャンク14は、中空筒状の炭素繊維で構成されており、その両端部にねじ部14b、14bが形成されている。なお、このような中空筒状の炭素繊維は、炭素繊維シートを丸め、その両端を接合することによって、容易に作製することができる。また、そのようにして形成されたハンマーシャンク14は、その見かけ比重が例えば0.24〜0.27で、非常に軽量であるとともに、高い剛性を有する。ハンマーヘッド15は、ハンマーウッド15aと、その先端部に巻き付けられたハンマーフェルト15bで構成され、ハンマーウッド15aに形成された孔15cに、ハンマーシャンク14の一方のねじ部14bをねじ込むことによって、ハンマーシャンク14に進退自在に取り付けられている。
【0031】
また、連結部材14aは、ABSなどの合成樹脂で構成されており、その後部にあらかじめ形成したねじ孔14cを、ハンマーシャンク14の他方のねじ部14bにねじ込むことによって、ハンマーシャンク14に進退自在に取り付けられている。連結部材14aの前部は左右に二股に分岐しており、この二股部に取付孔14d、14dが互いに対向するように形成されている。ハンマーシャンク14は、これらの取付孔14dを介して、ハンマーシャンクレール23にねじ止めしたシャンクフレンジ16に、回動自在に取り付けられている。ハンマーシャンク14の下面の所定位置には、円柱状のシャンクローラ8が取り付けられており、このシャンクローラ8は、レペティションレバー5の摺接部5bに摺接している。
【0032】
上記のシャンクフレンジ16もまた、炭素繊維シートで構成されており、図8に示すように、前後方向に延びる本体部16aと、本体部16aの前後の端部にそれぞれ折曲げ形成された断面コ字状の嵌合部16bおよび取付部16cを一体に備えている。本体部16aには孔16dが形成されており、シャンクフレンジ16は、嵌合部16bがハンマーシャンクレール23に嵌合した状態で、孔16dを介してハンマーシャンクレール23にねじ止めされている。また、取付部16cの左右の壁部には、取付孔16e、16e(1つのみ図示)が互いに対向するように形成されている。ハンマーシャンク14は、連結部材14aの二股部が取付部16cに係合した状態で、連結部材14aの取付孔14dおよび上記の取付孔16eを介して、シャンクフレンジ16に回動自在に取り付けられている。また、シャンクフレンジ16にはねじ孔16fが形成されており、このねじ孔16fにドロップスクリュー9が進退自在にねじ込まれ、レバースキン29を貼り付けたレペティションレバー5の前端部と所定の間隔をもって対向している。
【0033】
また、ハンマーシャンクレール23の下面には、レギュレーティングレール17がねじ止めされ、このレギュレーティングレール17の下面に、レギュレーティングボタン10が進退自在にねじ込まれていて、ジャック6のレギュレーティングボタン当接部6bの前端部と所定の間隔をもって対向している。
【0034】
以上の構成のアクション1の動作は、前述したアクション51の動作と基本的に同じである。すなわち、図1の離鍵状態から鍵2が押鍵されると、レペティションレバー5およびジャック6がウィッペン4と一緒に上方に移動し、この移動に伴い、レペティションレバー5が、シャンクローラ8を摺動させながらハンマー3を押し上げ、上方に回動させる。次いで、レペティションレバー5がドロップスクリュー9に係合することにより、ジャック6がハンマー3を突き上げる。
その後、ハンマー3が、上方に張られた弦Sを打弦する直前まで回動した時点で、ジャック6が、レギュレーティングボタン10に係合することによって回動し、ジャック6がシャンクローラ8から抜ける。これにより、ハンマー3は、ジャック6および鍵2との連結を解かれ、自由回動状態で弦Sを打弦する。
【0035】
打弦の後、下方に自由回動したハンマー3は、バックチェック50の前面に係止されることによって、それ以上の下方への回動が阻止される。その後、鍵2が離鍵され、ある程度の深さまで戻されると、レペティションスプリング7により、レペティションレバー5が反時計方向に復帰回動し、レペティションレバー5の摺接部5bがシャンクローラ8を摺動させながらこれを押し上げる。これにより、ジャック6が、レペティションスプリング7のばね力によって、反時計方向に復帰回動し、もとの位置に戻ることによって、鍵2が完全に戻らなくても、次の打弦を確実に行うことが可能になる。
【0036】
以上のように、本実施形態のアクション1によれば、アクション部品としてのウィッペン4、レペティションレバー5およびジャック6が、その全体または一部を断面コ字状に折曲げ形成した炭素繊維シートで構成されているので、木材で構成した従来の場合と同様、回動するアクション部品に特に要求される軽量性および高剛性という条件を十分に満たすことができる。また、これらのアクション部品は、炭素繊維で構成されることから、剛性や重量などの特性のばらつきが小さく、また、高い寸法安定性および保形性を有する。その結果、アクション1のばらつきを低減でき、その調整作業を省略または簡略化することができる。
【0037】
また、このアクション1では、ハンマー3のハンマーシャンク14が中空筒状の炭素繊維で構成されるので、ハンマーシャンク14に要求される軽量性および高剛性という条件を十分に満たすことができるとともに、ハンマーシャンク14の剛性や重量などの特性のばらつきを低減できるとともに、高い寸法安定性および保形性を確保することができる。さらに、ハンマーシャンク14の両端部に形成したねじ部14b、14bに、ハンマーヘッド15のハンマーウッド15aおよび連結部材14aをねじ込んで取り付けるので、これらの取付作業を、接着剤を用いることなく容易に行えるとともに、取付後におけるこれらの部品とハンマーシャンク14との位置関係の調整も容易に行うことができる。また、ハンマーシャンク14を中空筒状に形成しても、これを連結部材14aを介してシャンクフレンジ16に支障なく支持させることができる。さらに、連結部材14aが、ABSなどの合成樹脂で構成されていて、寸法安定性や保形性に優れているので、これを木材で構成した場合の、乾湿による連結部材の伸縮やハンマーシャンクの緩みなどの不具合を、確実に回避することができる。
【0038】
なお、この連結部材14aを、炭素繊維を含有した合成樹脂で構成してもよい。これにより、連結部材14aが炭素繊維で補強されることによって、ハンマーシャンク14全体の剛性をさらに高めることができ、したがって、ハンマーシャンク14に要求される軽量性および高剛性という条件をさらに十分に満たすことができる。
【0039】
また、このアクション1では、ウィッペンフレンジ24、シャンクフレンジ16、およびバックチェック30のバックチェック本体32もまた、折曲げ形成した炭素繊維シートで構成されている。したがって、これらの不動のアクション部品もまた、軽量性、高剛性、特性の均一性、寸法安定性および保形性などを有するので、ウィッペン4およびハンマーシャンク14の支持やハンマー3の係止をしっかりと確実に行えるとともに、アクション1の軽量化やばらつきの低減に寄与することができる。
【0040】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、アクション部品のうち、ウィッペン4、レペティションレバー5およびジャック6などを折り曲げた炭素繊維シートで構成しているが、実施形態で示した以外のアクション部品をそのように構成してもよい。また、実施形態は、グランドピアノのアクションの例であるが、本発明は、アップライトピアノのアクションのウィッペンやジャックなどにも適用することが可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明のグランドピアノのアクションは、アクション部品の軽量性および高剛性を両立させることができるとともに、アクションのばらつきを低減することができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したグランドピアノのアクションを含む鍵盤装置の側面図である。
【図2】ウィッペンの(a)斜視図および(b)線IIb−IIbに沿う断面図である。
【図3】ウィッペンフレンジの斜視図である。
【図4】レペティションレバーの(a)平面図および(b)側面図である。
【図5】ジャックの側面図である。
【図6】バックチェックのワイヤーを除く側面図である。
【図7】(a)ハンマーの分解側面図および(b)連結部材の平面図である。
【図8】シャンクフレンジの(a)側面図および(b)平面図である。
【図9】従来のグランドピアノのアクションを含む鍵盤装置の側面図である。
【符号の説明】
1 アクション
2 鍵
3 ハンマー
4 ウィッペン(アクション部品)
5 レペティションレバー(アクション部品)
6 ジャック(アクション部品)
14 ハンマーシャンク
14a 連結部材
14b ねじ部
16 シャンクフレンジ(アクション部品)
24 ウィッペンフレンジ(アクション部品)
S 弦
【発明の属する技術分野】
本発明は、鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを回動させることにより、打弦を行わせるピアノのアクションに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のアクションとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この従来技術は、アクションのうちのハンマーに関するものであり、そのハンマーシャンクが、木材から成る中実の芯材と、その外周面の少なくとも一部を被覆する炭素繊維強化合成樹脂と、から構成されている。それにより、ハンマーシャンクの比重を保ちながら、その曲げ剛性の向上を図るようにしている。
【0003】
また、図9は、従来の一般的なグランドピアノのアクションを示している。このアクション51は、回動自在のハンマー53、ウィッペン54、レペティションレバー55およびジャック56などを備えている。ハンマー53は、前後方向に延びるハンマーシャンク64と、その先端部(後端部)に取り付けたハンマーヘッド15などで構成されており、ハンマーシャンク64の基端部(前端部)において、ハンマーシャンクレール23にねじ止めしたシャンクフレンジ66に、回動自在に取り付けられている。
【0004】
ウィッペン54は、ウィッペンレール22にねじ止めしたウィッペンフレンジ74に回動自在に取り付けられるとともに、鍵2の後部に載置されている。また、レペティションレバー55およびジャック56は、ウィッペン54に回動自在に取り付けられるとともに、レペティションスプリング7によって復帰方向(同図の反時計方向)に付勢されている。上記の構成要素のうち、ハンマーシャンク64は中実の木材で構成されている。また、ウィッペン54、レペティションレバー55およびジャック56は、木材または合成樹脂で構成されている。さらに、シャンクフレンジ66およびウィッペンフレンジ74も、木材や合成樹脂などで構成されている。
【0005】
レペティションレバー55の前部には、上下方向に貫通するジャック案内孔55aが形成されており、このジャック案内孔55aの付近に、シャンクローラ8を介してハンマー53のハンマーシャンク64が載置されている。一方、ジャック56は、L字状に形成されており、上下方向に延びるハンマー突上げ部の先端部が、レペティションレバー55のジャック案内孔55aに、これに沿って移動自在に係合している。
【0006】
さらに、鍵2の後端部にはバックチェック80が設けられている。このバックチェック80は、鍵2に立設されたワイヤー31と、その先端部にねじ込まれた、木材などから成るバックチェック本体82と、その前面に順に貼り付けられたフェルト33および皮革シート34で構成されている。また、鍵2の前部には、鍵重り(図示せず)が取り付けられており、この鍵重りとアクション51との重さのバランスによって、鍵2のタッチ重さが調整される。
【0007】
図9に示す離鍵状態から鍵2が押鍵されると、ウィッペン54が突き上げられることにより回動し、レペティションレバー55およびジャック56がウィッペン54と一緒に上方に移動する。これに伴い、レペティションレバー55が、シャンクローラ8を摺動させながらこれを介してハンマー53を押し上げ、上方に回動させる。次いで、レペティションレバー55がドロップスクリュー9に係合することにより、ジャック56がシャンクローラ8を介してハンマー53を突き上げる。その後、ハンマー53が、上方の弦Sを打弦する直前まで回動した時点で、ジャック56が、レギュレーティングボタン10に係合することによって回動し、シャンクローラ8から抜ける。これにより、ハンマー53は、ジャック56および鍵2との連結を解かれ、自由回動状態で弦Sを打弦する。
【0008】
打弦の後、ハンマー53は下方に自由回動し、バックチェック80の前面に係止されることによって、それ以上の下方への回動が阻止される。また、その後に鍵2が離鍵され、ある程度まで戻されたタイミングで、レペティションレバー55が作動し始め、レペティションスプリング7のばね力で反時計方向に復帰回動することによって、シャンクローラ8を摺動させながら押し上げる。これにより、ジャック56が、レペティションスプリング7のばね力で反時計方向に復帰回動し、もとの位置に戻ることによって、鍵2が完全に戻らなくても、次の打弦を行うことが可能になり、同じ弦Sをハンマー53で連打できるので、同じ鍵2を連続して速く叩く、トリルのような連打奏法を行うことが可能になる。
【0009】
【特許文献1】
特開昭51−130391号公報(第3図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、図9に示す従来のアクション51では、ウィッペン54、レペティションレバー55、ジャック56やハンマーシャンク64などのアクション部品として、木材が用いられている。これは、これらのアクション部品は、打鍵エネルギーを弦Sに伝達するための回動部品として用いられることから、軽量でかつ剛性が高いことが好ましいのに対し、木材は、比較的軽量であるとともに、軽量でありながら剛性が高く、アクション部品に適しているからである。しかし、その一方で、木材は、均質性に乏しく、異方性を有するため、重量および剛性などの特性のばらつきが大きいとともに、残留応力によるねじれなどの変形が生じやすいという欠点がある。また、乾湿に対する寸法安定性が低く、それによるねじれなどの変形も生じやすい。このため、組立時や長年の使用に伴い、アクションのばらつきが生じやすく、これを調整するための煩雑な調整作業が必要になってしまう。
【0011】
このため、木材の代わりに金属や合成樹脂で構成したアクション部品も、従来知られている。しかし、これらの金属や合成樹脂は、木材と比較して一般に、重量を同等にすると剛性が低くなり、逆に剛性を同等にすると重量が重くなるため、軽量でかつ高剛性であるという木材の利点が得られなくなってしまう。また、前述した従来技術は、ハンマーシャンクの芯材が中実の木材で構成されているので、その軽量化を十分に達成できないとともに、木材の外周面の少なくとも一部を炭素繊維強化合成樹脂で被覆するにすぎないので、木材の前述した欠点を十分に解消することはできない。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、アクション部品の軽量性および高剛性を両立させることができるとともに、アクションのばらつきを低減することができるピアノのアクションを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを回動させることにより、打弦を行わせるピアノのアクションであって、アクションが互いに連結された複数のアクション部品を含み、複数のアクション部品の少なくとも1つが、少なくとも一部を断面コ字状に折り曲げた炭素繊維シートで構成されていることを特徴とする。
【0014】
このピアノのアクションによれば、これを構成する複数のアクション部品の少なくとも1つが、炭素繊維シートで構成され、この炭素繊維シートは、所定の形状を有するよう、その少なくとも一部が断面コ字状に折り曲げられている。このように構成されたアクション部品は、基本的には、折り曲げた炭素繊維シートによって中空状に形成されているので、比較的軽量であり、また、炭素繊維を素材としているので、軽量でありながら高い剛性を有する。したがって、木材で構成した場合と同様、アクション部品に要求される軽量性および高剛性という条件を十分に満たすことができる。また、アクション部品が炭素繊維で構成されるので、その剛性や重量などの特性のばらつきが小さいとともに、高い寸法安定性および保形性を有する。その結果、アクションのばらつきを低減でき、その調整作業を省略または簡略化することができる。
【0015】
また、前記目的を達成するため、請求項2に係る発明は、鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを回動させることにより、打弦を行わせるピアノのアクションであって、ハンマーが、中空筒状の炭素繊維で構成され、両端部にねじ部がそれぞれ形成されたハンマーシャンクと、ハンマーシャンクの一方のねじ部にねじ込まれたハンマーヘッドと、ハンマーシャンクの他方のねじ部にねじ込まれるとともに、シャンクフレンジに回動自在に支持される連結部材と、を備えることを特徴とする。
【0016】
このピアノのアクションによれば、そのハンマーのハンマーシャンクが、中空筒状の炭素繊維で構成されるので、ハンマーシャンクに要求される軽量性および高剛性という条件を十分に満たすことができるとともに、ハンマーシャンクの剛性や重量などの特性のばらつきを低減できるとともに、高い寸法安定性および保形性を確保することができる。また、ハンマーシャンクの両端部にあらかじめ形成したねじ部に、ハンマーヘッドおよび連結部材がそれぞれねじ込まれ、取り付けられるので、これらの取付作業を、接着剤などを用いることなく容易に行えるとともに、取付後におけるこれらの部品とハンマーシャンクとの位置関係の調整も容易に行うことができる。また、ハンマーシャンクを中空筒状に形成しても、これを連結部材を介してシャンクフレンジに支障なく支持させることができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明は、請求項2のピアノのアクションにおいて、連結部材が合成樹脂で構成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、連結部材が、合成樹脂で構成されていて、乾湿などに対する寸法安定性や保形性に優れているので、これを木材で構成した場合の、乾湿による連結部材の伸縮やハンマーシャンクの緩みなどの不具合を、確実に回避することができる。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項2のピアノのアクションにおいて、連結部材が炭素繊維を含有した合成樹脂で構成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、連結部材を合成樹脂で構成することによる、上述した請求項3の発明の利点をそのまま得ることができる。これに加えて、この合成樹脂が炭素繊維を含有することによって、連結部材を補強し、ハンマーシャンク全体の剛性をさらに高めることができ、それにより、ハンマーシャンクに要求される軽量性および高剛性という条件をさらに十分に満たすことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるグランドピアノのアクション1を示している。
このアクション1は、すでに説明した従来のアクション51と比較し、基本的な構成は同じで、ハンマー3、ウィッペン4、レペティションレバー5およびジャック6などの構成が異なるので、同じ構成の部品については同じ符号を用いて説明を行うものとする。
【0022】
このアクション1は、鍵2を載置する筬(図示せず)の左右端部にそれぞれ設けたブラケット21(図1に一方のみ図示)に取り付けられている。左右のブラケット21、21間には、ウィッペンレール22およびハンマーシャンクレール23が渡されており、このウィッペンレール22にねじ止めした各ウィッペンフレンジ24に、ウィッペン4の後端部が回動自在に取り付けられている。
【0023】
図2に示すように、各ウィッペン4は、図9の従来のウィッペン54と同じ所定の側面形状を有しており、すなわち、前後方向に延びる本体部4aと、本体部4aの下側のヒール部4bと、本体部4aの中央部から上方に延びる鉛直部4cを一体に備えている。また、ウィッペン4は、炭素繊維シートを折り曲げることにより、その全体が上方が開放した断面コ字状に形成されている。このようなウィッペン4の加工は、炭素繊維シートを所定の形状に切断した後にコ字状に折り曲げることによって、あるいは折曲げ後に所定の形状に切断することによって、容易に行うことが可能である。また、ウィッペン4の左右の壁部には、本体部4aの前後の端部と鉛直部4cの上端部および中央部に、ジャック6、ウィッペンフレンジ24、レペティションレバー5およびレペティションスプリング7をそれぞれ取り付けるための取付孔4d、4e、4f、4gが、互いに対向するように形成されている。以上の構成のウィッペン4は、対応する鍵2の上面後部に設けられたキャプスタンボタン25に、ヒール部4bを介して載っている。
【0024】
ウィッペン4を支持するウィッペンフレンジ24もまた、炭素繊維シートで構成されており、図3に示すように、本体部24aと、本体部24aの上端部に折曲げ形成された断面コ字状の取付部24bとを一体に備えている。本体部24aの中央には孔24cが形成されており、ウィッペンフレンジ24は、この孔24cを介して、ウィッペンレール22にねじ止めされている。また、取付部24bの上部には、上方に開放する切欠24dが形成され、左右の壁部には、取付孔24e、24eが互いに対向するように形成されている。ウィッペン4は、その後端部を切欠24dに通した状態で、取付孔24e、24eを介して取付部24bに回動自在に取り付けられている。
【0025】
レペティションレバー5もまた、炭素繊維シートで構成されており、図4に示すように、前後方向に延びる細長い本体部5aと、本体部5aの前側に連なる摺接部5bと、本体部5aの中央部に折曲げ形成された断面コ字状の取付部5cを一体に備えている。摺接部5bは、本体部5aよりも幅が広く、前側で折り返されており、折り返された上下の部分に、前後方向に延びるジャック案内孔5d、5dが形成されている。また、取付部5cの左右の壁部には、取付孔5e、5e(1つのみ図示)が互いに対向するように形成されている。レペティションレバー5は、その取付部5cがウィッペン4の鉛直部4cの左右の壁部間に係合した状態で、取付孔5eおよびウィッペン4の前述した取付孔4gを介して、ウィッペン4に回動自在に取り付けられている。
【0026】
また、図1に示すように、摺接部5bの上面には、ジャック案内孔5dよりも前側の位置に、レバースキン29が貼り付けられている。さらに、本体部5aの後端部には、レバースクリュー27が進退自在に螺合しており、その下端部にレバーボタン28が一体に設けられている。また、レペティションレバー5は、ウィッペン4に取付孔4gを介して取り付けたレペティションスプリング7によって、復帰方向(図1の反時計方向)に付勢されている。
【0027】
ジャック6もまた、炭素繊維シートで構成されており、図5に示すように、上下方向に延びるハンマー突上げ部6aと、その下端部から前方に延びるレギュレーティングボタン当接部6bから、L字状に形成されており、その角部が折曲げ形成された断面コ字状の取付部6cになっている。また、ハンマー突上げ部6aの上端部は、カール状に折り返され、レペティションレバー5のジャック案内孔5dに前後方向に移動自在に係合するとともに、離鍵状態においてはシャンクローラ8と微小な間隔を存して対向している。また、レギュレーティングボタン当接部6bの先端部は、後述するレギュレーティングボタン10に支障なく係合できるよう、上方に凸に曲げられている。さらに、ジャック6は、上述したレペティションスプリング7によって、復帰方向(図1の反時計方向)に付勢されている。
【0028】
また、ジャック6のハンマー突上げ部6aの中間部には、ボタン取付孔6dが形成されており、このボタン取付孔6dに、ジャックボタンスクリュー11が進退自在に螺合している。ジャックボタンスクリュー11の先端部には、ジャックボタン12が一体に設けられており、このジャックボタン12は、離鍵状態では、ウィッペン4に立設されたスプーン13に当接している。このジャックボタンスクリュー11を回すことによって、離鍵状態におけるジャック6の角度位置が調整される。
【0029】
さらに、鍵2の後端部にはバックチェック30が設けられている。このバックチェック30は、鍵2に立設されたワイヤー31と、その先端部にねじ込まれたバックチェック本体32を備えている。図6に示すように、このバックチェック本体32もまた、所定の側面形状に折曲げ形成した炭素繊維シートで構成されており、その前面に、フェルト33および皮革シート34が順に貼り付けられている。また、バックチェック本体32の下壁には、ワイヤー31をねじ込むためのねじ孔32aが形成されている。
【0030】
一方、図7に示すように、ハンマー3は、前後方向に延びるハンマーシャンク14と、その先端部に取り付けたハンマーヘッド15と、ハンマーシャンク14の基端部に取り付けた連結部材14aで構成されている。ハンマーシャンク14は、中空筒状の炭素繊維で構成されており、その両端部にねじ部14b、14bが形成されている。なお、このような中空筒状の炭素繊維は、炭素繊維シートを丸め、その両端を接合することによって、容易に作製することができる。また、そのようにして形成されたハンマーシャンク14は、その見かけ比重が例えば0.24〜0.27で、非常に軽量であるとともに、高い剛性を有する。ハンマーヘッド15は、ハンマーウッド15aと、その先端部に巻き付けられたハンマーフェルト15bで構成され、ハンマーウッド15aに形成された孔15cに、ハンマーシャンク14の一方のねじ部14bをねじ込むことによって、ハンマーシャンク14に進退自在に取り付けられている。
【0031】
また、連結部材14aは、ABSなどの合成樹脂で構成されており、その後部にあらかじめ形成したねじ孔14cを、ハンマーシャンク14の他方のねじ部14bにねじ込むことによって、ハンマーシャンク14に進退自在に取り付けられている。連結部材14aの前部は左右に二股に分岐しており、この二股部に取付孔14d、14dが互いに対向するように形成されている。ハンマーシャンク14は、これらの取付孔14dを介して、ハンマーシャンクレール23にねじ止めしたシャンクフレンジ16に、回動自在に取り付けられている。ハンマーシャンク14の下面の所定位置には、円柱状のシャンクローラ8が取り付けられており、このシャンクローラ8は、レペティションレバー5の摺接部5bに摺接している。
【0032】
上記のシャンクフレンジ16もまた、炭素繊維シートで構成されており、図8に示すように、前後方向に延びる本体部16aと、本体部16aの前後の端部にそれぞれ折曲げ形成された断面コ字状の嵌合部16bおよび取付部16cを一体に備えている。本体部16aには孔16dが形成されており、シャンクフレンジ16は、嵌合部16bがハンマーシャンクレール23に嵌合した状態で、孔16dを介してハンマーシャンクレール23にねじ止めされている。また、取付部16cの左右の壁部には、取付孔16e、16e(1つのみ図示)が互いに対向するように形成されている。ハンマーシャンク14は、連結部材14aの二股部が取付部16cに係合した状態で、連結部材14aの取付孔14dおよび上記の取付孔16eを介して、シャンクフレンジ16に回動自在に取り付けられている。また、シャンクフレンジ16にはねじ孔16fが形成されており、このねじ孔16fにドロップスクリュー9が進退自在にねじ込まれ、レバースキン29を貼り付けたレペティションレバー5の前端部と所定の間隔をもって対向している。
【0033】
また、ハンマーシャンクレール23の下面には、レギュレーティングレール17がねじ止めされ、このレギュレーティングレール17の下面に、レギュレーティングボタン10が進退自在にねじ込まれていて、ジャック6のレギュレーティングボタン当接部6bの前端部と所定の間隔をもって対向している。
【0034】
以上の構成のアクション1の動作は、前述したアクション51の動作と基本的に同じである。すなわち、図1の離鍵状態から鍵2が押鍵されると、レペティションレバー5およびジャック6がウィッペン4と一緒に上方に移動し、この移動に伴い、レペティションレバー5が、シャンクローラ8を摺動させながらハンマー3を押し上げ、上方に回動させる。次いで、レペティションレバー5がドロップスクリュー9に係合することにより、ジャック6がハンマー3を突き上げる。
その後、ハンマー3が、上方に張られた弦Sを打弦する直前まで回動した時点で、ジャック6が、レギュレーティングボタン10に係合することによって回動し、ジャック6がシャンクローラ8から抜ける。これにより、ハンマー3は、ジャック6および鍵2との連結を解かれ、自由回動状態で弦Sを打弦する。
【0035】
打弦の後、下方に自由回動したハンマー3は、バックチェック50の前面に係止されることによって、それ以上の下方への回動が阻止される。その後、鍵2が離鍵され、ある程度の深さまで戻されると、レペティションスプリング7により、レペティションレバー5が反時計方向に復帰回動し、レペティションレバー5の摺接部5bがシャンクローラ8を摺動させながらこれを押し上げる。これにより、ジャック6が、レペティションスプリング7のばね力によって、反時計方向に復帰回動し、もとの位置に戻ることによって、鍵2が完全に戻らなくても、次の打弦を確実に行うことが可能になる。
【0036】
以上のように、本実施形態のアクション1によれば、アクション部品としてのウィッペン4、レペティションレバー5およびジャック6が、その全体または一部を断面コ字状に折曲げ形成した炭素繊維シートで構成されているので、木材で構成した従来の場合と同様、回動するアクション部品に特に要求される軽量性および高剛性という条件を十分に満たすことができる。また、これらのアクション部品は、炭素繊維で構成されることから、剛性や重量などの特性のばらつきが小さく、また、高い寸法安定性および保形性を有する。その結果、アクション1のばらつきを低減でき、その調整作業を省略または簡略化することができる。
【0037】
また、このアクション1では、ハンマー3のハンマーシャンク14が中空筒状の炭素繊維で構成されるので、ハンマーシャンク14に要求される軽量性および高剛性という条件を十分に満たすことができるとともに、ハンマーシャンク14の剛性や重量などの特性のばらつきを低減できるとともに、高い寸法安定性および保形性を確保することができる。さらに、ハンマーシャンク14の両端部に形成したねじ部14b、14bに、ハンマーヘッド15のハンマーウッド15aおよび連結部材14aをねじ込んで取り付けるので、これらの取付作業を、接着剤を用いることなく容易に行えるとともに、取付後におけるこれらの部品とハンマーシャンク14との位置関係の調整も容易に行うことができる。また、ハンマーシャンク14を中空筒状に形成しても、これを連結部材14aを介してシャンクフレンジ16に支障なく支持させることができる。さらに、連結部材14aが、ABSなどの合成樹脂で構成されていて、寸法安定性や保形性に優れているので、これを木材で構成した場合の、乾湿による連結部材の伸縮やハンマーシャンクの緩みなどの不具合を、確実に回避することができる。
【0038】
なお、この連結部材14aを、炭素繊維を含有した合成樹脂で構成してもよい。これにより、連結部材14aが炭素繊維で補強されることによって、ハンマーシャンク14全体の剛性をさらに高めることができ、したがって、ハンマーシャンク14に要求される軽量性および高剛性という条件をさらに十分に満たすことができる。
【0039】
また、このアクション1では、ウィッペンフレンジ24、シャンクフレンジ16、およびバックチェック30のバックチェック本体32もまた、折曲げ形成した炭素繊維シートで構成されている。したがって、これらの不動のアクション部品もまた、軽量性、高剛性、特性の均一性、寸法安定性および保形性などを有するので、ウィッペン4およびハンマーシャンク14の支持やハンマー3の係止をしっかりと確実に行えるとともに、アクション1の軽量化やばらつきの低減に寄与することができる。
【0040】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、アクション部品のうち、ウィッペン4、レペティションレバー5およびジャック6などを折り曲げた炭素繊維シートで構成しているが、実施形態で示した以外のアクション部品をそのように構成してもよい。また、実施形態は、グランドピアノのアクションの例であるが、本発明は、アップライトピアノのアクションのウィッペンやジャックなどにも適用することが可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明のグランドピアノのアクションは、アクション部品の軽量性および高剛性を両立させることができるとともに、アクションのばらつきを低減することができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したグランドピアノのアクションを含む鍵盤装置の側面図である。
【図2】ウィッペンの(a)斜視図および(b)線IIb−IIbに沿う断面図である。
【図3】ウィッペンフレンジの斜視図である。
【図4】レペティションレバーの(a)平面図および(b)側面図である。
【図5】ジャックの側面図である。
【図6】バックチェックのワイヤーを除く側面図である。
【図7】(a)ハンマーの分解側面図および(b)連結部材の平面図である。
【図8】シャンクフレンジの(a)側面図および(b)平面図である。
【図9】従来のグランドピアノのアクションを含む鍵盤装置の側面図である。
【符号の説明】
1 アクション
2 鍵
3 ハンマー
4 ウィッペン(アクション部品)
5 レペティションレバー(アクション部品)
6 ジャック(アクション部品)
14 ハンマーシャンク
14a 連結部材
14b ねじ部
16 シャンクフレンジ(アクション部品)
24 ウィッペンフレンジ(アクション部品)
S 弦
Claims (4)
- 鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを回動させることにより、打弦を行わせるピアノのアクションであって、
当該アクションが互いに連結された複数のアクション部品を含み、
当該複数のアクション部品の少なくとも1つが、少なくとも一部を断面コ字状に折り曲げた炭素繊維シートで構成されていることを特徴とするピアノのアクション。 - 鍵の押鍵に伴って作動し、ハンマーを回動させることにより、打弦を行わせるピアノのアクションであって、
前記ハンマーが、
中空筒状の炭素繊維で構成され、両端部にねじ部がそれぞれ形成されたハンマーシャンクと、
当該ハンマーシャンクの一方の前記ねじ部にねじ込まれたハンマーヘッドと、前記ハンマーシャンクの他方の前記ねじ部にねじ込まれるとともに、シャンクフレンジに回動自在に支持される連結部材と、を備えることを特徴とするピアノのアクション。 - 前記連結部材が合成樹脂で構成されていることを特徴とする、請求項2に記載のピアノのアクション。
- 前記連結部材が炭素繊維を含有した合成樹脂で構成されていることを特徴とする、請求項2に記載のピアノのアクション。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003158571A JP2004226949A (ja) | 2002-11-28 | 2003-06-03 | ピアノのアクション |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002346182 | 2002-11-28 | ||
JP2003158571A JP2004226949A (ja) | 2002-11-28 | 2003-06-03 | ピアノのアクション |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004226949A true JP2004226949A (ja) | 2004-08-12 |
Family
ID=32910918
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003158571A Withdrawn JP2004226949A (ja) | 2002-11-28 | 2003-06-03 | ピアノのアクション |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004226949A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7678977B2 (en) * | 2003-10-14 | 2010-03-16 | Kabushiki Kaisha Kawai Gakki Seisakusho | Repetition lever of grand piano |
CN110335573A (zh) * | 2018-03-28 | 2019-10-15 | 株式会社河合乐器制作所 | 三角钢琴的动作机构 |
-
2003
- 2003-06-03 JP JP2003158571A patent/JP2004226949A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7678977B2 (en) * | 2003-10-14 | 2010-03-16 | Kabushiki Kaisha Kawai Gakki Seisakusho | Repetition lever of grand piano |
CN110335573A (zh) * | 2018-03-28 | 2019-10-15 | 株式会社河合乐器制作所 | 三角钢琴的动作机构 |
CN110335573B (zh) * | 2018-03-28 | 2023-08-29 | 株式会社河合乐器制作所 | 三角钢琴的动作机构 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5298534B2 (ja) | アクション機構 | |
JP2001331172A (ja) | 鍵盤楽器のジャック脱進調整装置、鍵盤楽器の消音装置および鍵盤楽器 | |
JP5488985B2 (ja) | アップライトピアノ型アクション | |
US10134371B2 (en) | Stroke adjustment device for keyboard instrument | |
JP2007108661A (ja) | アップライトピアノのアクション | |
JP2004226949A (ja) | ピアノのアクション | |
JP4621492B2 (ja) | ピアノのハンマー装置 | |
WO2000062277A1 (fr) | Instrument musical a clavier | |
US11037533B2 (en) | Upright keyboard instrument | |
JP2008090167A (ja) | 鍵盤楽器の鍵 | |
JP2006243294A (ja) | アップライトピアノのハンマー | |
JP2008102253A (ja) | 鍵盤楽器の回動体支持構造 | |
JP2021131516A (ja) | 鍵盤楽器のソステヌート機構、鍵盤楽器 | |
JP3301547B2 (ja) | 鍵盤式音板打楽器の打撃機構 | |
JP4429690B2 (ja) | ピアノのハンマー | |
JP4769445B2 (ja) | アップライトピアノのアクション | |
CN110335573B (zh) | 三角钢琴的动作机构 | |
JP2007155964A (ja) | アップライトピアノのアクション | |
JP3920234B2 (ja) | グランド型ピアノのウィッペン | |
JP2008090169A (ja) | アップライトピアノのアクション | |
WO2013108382A1 (ja) | アップライトピアノのダンパー装置 | |
JP2008102209A (ja) | アップライトピアノのアクション | |
JP5020522B2 (ja) | アップライトピアノのジャック静止装置 | |
JP2004101953A (ja) | グランドピアノのアクション | |
JP4030899B2 (ja) | ピアノのウィッペン |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060905 |