JP2005094169A - 無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】 通信局が不必要な送信停止期間を設けることなく、効率的にマルチチャネル自律分散型の無線ネットワークを形成する。
【解決手段】 通信局は、隣接局から受信したビーコンに記載されている近隣装置情報を見て、該当する次隣接局のビーコン送信チャネルが自局の送信予定チャネルと一致するのかどうかを判断する。これらのチャネルが一致する場合には次隣接局用の送信停止期間を設けて、送信を延期する。これにより、隣接局の次隣接局からのビーコン受信の妨害を避けるとともに、不必要な送信停止期間を設けることが無くなり、スループットが向上する。
【選択図】 図17
【解決手段】 通信局は、隣接局から受信したビーコンに記載されている近隣装置情報を見て、該当する次隣接局のビーコン送信チャネルが自局の送信予定チャネルと一致するのかどうかを判断する。これらのチャネルが一致する場合には次隣接局用の送信停止期間を設けて、送信を延期する。これにより、隣接局の次隣接局からのビーコン受信の妨害を避けるとともに、不必要な送信停止期間を設けることが無くなり、スループットが向上する。
【選択図】 図17
Description
本発明は、無線LAN(Local Area Network)のように複数の無線局間で相互に通信を行なう無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、制御局となる装置を特に配置せずにアドホック(Ad−hoc)通信により無線ネットワークが構築される無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。
さらに詳しくは、本発明は、複数のチャネルが用意されている通信環境下において、近隣の無線システムが干渉し合うことなく特定の制御局の介在なしに自律分散型の無線ネットワークを形成する無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに係り、特に、各通信局が周辺局の干渉を回避してマルチチャネル自律分散型の無線ネットワークを形成する無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムに関する。
有線方式によるLAN配線からユーザを解放するシステムとして、無線LANが注目されている。無線LANによれば、オフィスなどの作業空間において、有線ケーブルの大半を省略することができるので、パーソナル・コンピュータ(PC)などの通信端末を比較的容易に移動させることができる。近年では、無線LANシステムの高速化、低価格化に伴い、その需要が著しく増加してきている。特に最近では、人の身の回りに存在する複数の電子機器間で小規模な無線ネットワークを構築して情報通信を行なうために、パーソナル・エリア・ネットワーク(PAN)の導入が検討されている。例えば、2.4GHz帯や、5GHz帯など、監督官庁の免許が不要な周波数帯域を利用して、異なった無線通信システム並びに無線通信装置が規定されている。
無線ネットワークに関する標準的な規格の1つにIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11(例えば、非特許文献1を参照のこと)や、HiperLAN/2(例えば、非特許文献2又は非特許文献3を参照のこと)やIEEE302.15.3、Bluetooth通信などを挙げることができる。IEEE802.11規格については、無線通信方式や使用する周波数帯域の違いなどにより、IEEE802.11a規格、IEEE802.11b規格…などの各種無線通信方式が存在する。
無線技術を用いてローカル・エリア・ネットワークを構成するために、エリア内に「アクセス・ポイント」又は「コーディネータ」と呼ばれる制御局となる装置を1台設けて、この制御局の統括的な制御下でネットワークを形成する方法が一般的に用いられている。
アクセス・ポイントを配置した無線ネットワークでは、ある通信装置から情報伝送を行なう場合に、まずその情報伝送に必要な帯域をアクセス・ポイントに予約して、他の通信装置における情報伝送と衝突が生じないように伝送路の利用を行なうという、帯域予約に基づくアクセス制御方法が広く採用されている。すなわち、アクセス・ポイントを配置することによって、無線ネットワーク内の通信装置が互いに同期をとるという同期的な無線通信を行なう。
ところが、アクセス・ポイントが存在する無線通信システムで、送信側と受信側の通信装置間で非同期通信を行なう場合には、必ずアクセス・ポイントを介した無線通信が必要になるため、伝送路の利用効率が半減してしまうという問題がある。
これに対し、無線ネットワークを構成する他の方法として、端末同士が直接非同期的に無線通信を行なう「アドホック(Ad−hoc)通信」が考案されている。とりわけ近隣に位置する比較的少数のクライアントで構成される小規模無線ネットワークにおいては、特定のアクセス・ポイントを利用せずに、任意の端末同士が直接非同期の無線通信を行なうことができるアドホック通信が適当であると思料される。
例えば、IEEE802.11系の無線LANシステムでは、制御局を配さなくとも自律分散的にピア・ツウ・ピア(Peer to Peer)で動作するアドホック・モードが用意されている。この動作モード下では、ビーコン送信時間になると各端末がランダムな期間をカウントし、その期間が終わるまでに他の端末のビーコンを受信しなかった場合に、自分がビーコンを送信する。
一方、パーソナル・コンピュータ(PC)などの情報機器が普及し、オフィス内に多数の機器が混在する作業環境下では、通信局が散乱し、複数のネットワークが重なり合って構築されていることが想定される。このような状況下では、単一チャネルを使用した無線ネットワークの場合、通信中に他のシステムが割り込んできたり、干渉などにより通信品質が低下したりしても、事態を修復する余地はない。
このため、従来の無線ネットワーク・システムでは、他のネットワークとの共存のために周波数チャネルを複数用意しておき、アクセス・ポイントとなる無線通信装置において利用する周波数チャネルを1つ選択して動作を開始する方法が一般に採用されている。例えば、IEEE802.11hなどの標準規格では、チャネルを動的に変更する仕組み(DFS:Dynamic Frequency Select)が検討されている。
このようなマルチチャネル通信方式によれば、通信中に他のシステムが割り込んできたり、干渉などにより通信品質が低下したりしたときに、利用する周波数チャネルを切り替えることにより、ネットワーク動作を維持し、他のネットワークとの共存を実現することができる。
ここで、アドホック・モード下では、ビーコン送信時間になると各端末がランダムな期間をカウントし、その期間が終わるまでに他の端末のビーコンを受信しなかった場合に、自分がビーコンを送信するようになっている(前述)。
しかしながら、このような仕組みでは隠れ端末問題は解決できない。すなわち、他のビーコンとして受信できるのは隣接局のみであり、次隣接局のビーコンは受信できない。このため、自局と次隣接局が同時にビーコンを送信する可能性がある。すなわち、中間にいる隣接局にとってはビーコンが衝突してしまう結果として、どちらのビーコンも受信することができない。
また、衝突を回避し通信品質を向上させる手段としてRTS/CTS方式を採用することができる。この通信方式では、データ送信元の通信局は送信要求パケットRTSを送信し、データ送信先の通信局から確認通知パケットCTSを受信したことに応答してデータ送信を開始する。そして、これらRTS又はCTSを受信した周辺局は、RTS/CTS手続に基づくデータ伝送が行なわれると予想される期間だけ自局の送信停止期間を設定することにより、衝突を回避するようにする。
しかしながら、マルチチャネル通信環境下では、データ送信元の通信局がデータ送信先の通信局のビーコン送信チャネルに移行してデータ送信動作を行なう場合、データ送信先の通信局にとって隠れ端末となる周辺局が移行先のチャネルが干渉チャネルとなっている場合には、移行先のチャネルで送信するRTS信号を聞きとれないといった、固有の隠れ端末問題が生じる。
ここで、次隣接局のビーコン受信予定の有無に関する情報を、周辺局間で知らせ合うシステムを考える。ところがこのような仕組みを導入しても、次隣接局のビーコン自身は受信できないため、ビーコンが実際にはいつ送信されたのか、ビーコン送信後にチャネル変更をするのかどうかなどの情報は判らない。
そこで、ビーコン送信に続くデータ送信の衝突も避けるためには、予想できる限り最も遅いCTS信号の送信時間までキャリア・センスを続ける必要がある。それでも信号が無い場合に初めて、データ部分は誰とも衝突する可能性が無かったことが検出されることになる。
このように、次隣接局のビーコンの後には最大限の時間の送信停止期間を設けなければならない。他方、隣接ビーコンでも同じ長さの送信停止期間を設けてしまうと、必要以上に長く送信が止まってしまい、スループットが下がってしまう。ビーコン送信時刻でも、ビーコンのチャネルやデータのチャネルを考慮すると送信の停止が必要でない場合もあり、常に同じ長さの送信停止期間を設けるのは効率的ではない。
International Standard ISO/IEC 8802−11:1999(E) ANSI/IEEE Std 802.11, 1999 Edition, Part11:Wireless LAN Medium Access Control(MAC) and Physical Layer(PHY) Specifications
ETSI Standard ETSI TS 101 761−1 V1.3.1 Broadband Radio Access Networks(BRAN); HIPERLAN Type 2; Data Link Control(DLC) Layer; Part1: Basic Data Transport Functions
ETSI TS 101 761−2 V1.3.1 Broadband Radio Access Networks(BRAN); HIPERLAN Type 2; Data Link Control(DLC) Layer; Part2: Radio Link Control(RLC) sublayer
本発明の目的は、複数のチャネルが用意されている通信環境下において、近隣の無線システムが干渉し合うことなく特定の制御局の介在なしに自律分散型の無線ネットワークを形成することができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、各通信局が周辺局の干渉を回避してマルチチャネル自律分散型の無線ネットワークを形成することができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、各通信局が、周辺局からのデータ送信が予想される場合に送信停止期間を設けて衝突を回避することによりマルチチャネル自律分散型の無線ネットワークを形成することができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、通信局が不必要な送信停止期間を設けることなく、効率的にマルチチャネル自律分散型の無線ネットワークを形成することができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することにある。
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、複数のチャネルが用意されている通信環境下において、制御局を配置せずに複数の無線通信装置に自律分散的にネットワークを形成する無線通信システムであって、
各通信局は、周辺局の送信予定時刻において、該周辺局が隣接局又は次隣接局のいずれであるか、並びに該周辺局の送信時の使用チャネルに応じて送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする無線通信システムである。
各通信局は、周辺局の送信予定時刻において、該周辺局が隣接局又は次隣接局のいずれであるか、並びに該周辺局の送信時の使用チャネルに応じて送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする無線通信システムである。
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
ここで、各通信局は、周辺局のビーコン送信チャネル及びビーコン送信タイミングに関する近隣装置情報をビーコン信号に含めて送信する。すなわち、ビーコン情報を報知することにより、近隣(すなわち通信範囲内)の他の通信局に自己の存在を知らしめるとともに、ネットワーク構成を通知する。また、ある通信局の通信範囲に新規に参入する通信局は、ビーコン信号を受信することにより、通信範囲に突入したことを検知するとともに、ビーコンに記載されている情報を解読することによりネットワーク構成を知ることができる。
また、各通信局は、周辺局のビーコン送信チャネル及びビーコン送信タイミングに関する近隣装置情報をビーコン信号に含めて送信するようにする。
このような場合、通信局は、周辺局からのビーコンの受信予定時刻においてビーコンを実際に聞くことができたかどうかに応じて、当該ビーコンの送信元が隣接局又は次隣接局のいずれであるかを判別することができる。すなわち、隣接局からのビーコン信号であれば、どの時刻でビーコンを受信しているかが分かる。一方、受信予定のビーコンが自局には聞こえない送信位置である場合には、それが次隣接すなわち自局にとって隠れ端末のビーコンであると分かる。
また、チャネル・アクセス時の衝突を回避し、通信品質を保つために、RTS/CTS通信様式を採用することができる。この場合、各通信局は、自局のビーコン送信直後に優先送信期間を得て、データ送信先に対して送信要求パケットRTSを送信し、データ送信先の通信局から確認通知パケットCTSを受信したことに応答してデータ送信を開始する。
このような場合、通信局は、隣接局からのRTS信号を受信後、データ送信先からのCTS信号を受信しなければ、隣接局からビーコンを受信した後からCTSの受信予定時刻までを送信停止期間に設定することができる。すなわち、RTS信号の直後に返信されるCTSが聞こえた場合には、データ部の衝突の可能性があることから、CTS信号中で規定されている送信時間だけ送信を停止しなければならない。一方、RTS信号の直後に返信されるCTSが聞こえなければ、データ部の衝突の可能性は無いことが判り、送信を開始しても良い。
また、通信局は、次隣接局のビーコン受信予定に合わせて、ビーコン受信予定時刻にランダム・バックオフの最大時間とRTS/CTS手続きの所要時間を含んだ最大限の送信停止期間を設定しなければならない。次隣接局からデータが送信される場合、ビーコン受信を待機する側の通信局は、実際にビーコンは受信できないので、データ部との衝突を回避するための送信停止期間として最大値を見積もる必要があるからである。
また、通信局は、次隣接局のビーコン受信予定時において、当該次隣接局のビーコン送信予定チャネルが自局のデータ送信予定チャネルと一致するかどうかに応じて送信停止期間を設定するようにする。これらのチャネルが一致する場合には、次隣接局用の送信停止期間を設けて、送信を延期する。これにより、隣接局の次隣接局からのビーコン受信の妨害を避けるとともに、不必要な送信停止期間を設けることが無くなり、スループットが向上する。
また、各通信局が自局のビーコン送信直後に優先送信期間を得たときに、ビーコン送信チャネルからチャネルを変更してデータ送信を行なうことを許容するようにしてもよい。
このような場合、各通信局は、自局及び/又は周辺局がビーコン送信チャネルからチャネルを変更してデータ送信を行なう可能性を記述したデータ・チャネル変更可能性情報を互いに通知し合うようにする。通信局は、隣接局からの受信ビーコンに含まれているデータ・チャネル変更可能性情報を参照して、自局にとって次隣接局のビーコン送信位置でのデータ・チャネルが変更される可能性を検知することができる。
そして、通信局は、データ・チャネル変更可能性のある次隣接局のビーコン受信予定に合わせて、ビーコン受信予定時刻にランダム・バックオフの最大時間とRTS/CTS手続きの所要時間を含んだ最大限の送信停止期間を設定するようにする。
通信局は、データ・チャネルの変更可能性が指示されているビーコン送信時刻では、自局が隠れ端末となって隣接局の受信に干渉を与える可能性があるので、最大限の送信停止期間を設定し、隣接局からのCTSを受信する可能性が無くなる時間まで送信を待機する。
一方、データ・チャネルの変更可能性のない次隣接局のビーコン送信予定時刻では、そのビーコン送信チャネルが自局のデータ送信チャネルと異なるのであれば、データ送信時に衝突する可能性が無いので、送信停止期間を設定する必要がない。
このようにして、データ送信チャネルを変更する可能性の有無を示す情報を隣接局に報知することで、場合によっては送信停止期間を無くすことができる。この結果、データ送信可能時間が増えて、システム全体のスループットが向上する。
また、本発明の第2の側面は、複数のチャネルが用意されている無線通信環境下で自律分散的に動作するための無線通信処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ化毒形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、
自局の送信信号の送信チャネルを設定する通信チャネル設定ステップと、
周辺局の送信予定時刻において、該周辺局が隣接局又は次隣接局のいずれであるか、並びに該周辺局の送信時の使用チャネルに応じて送信停止期間を設定しながら、前記通信チャネル設定ステップにより設定されたチャネル上での通信動作を制御する制御ステップと、
を具備することを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
自局の送信信号の送信チャネルを設定する通信チャネル設定ステップと、
周辺局の送信予定時刻において、該周辺局が隣接局又は次隣接局のいずれであるか、並びに該周辺局の送信時の使用チャネルに応じて送信停止期間を設定しながら、前記通信チャネル設定ステップにより設定されたチャネル上での通信動作を制御する制御ステップと、
を具備することを特徴とするコンピュータ・プログラムである。
本発明の第2の側面に係るコンピュータ・プログラムは、コンピュータ・システム上で所定の処理を実現するようにコンピュータ可読形式で記述されたコンピュータ・プログラムを定義したものである。換言すれば、本発明の第2の側面に係るコンピュータ・プログラムをコンピュータ・システムにインストールすることによってコンピュータ・システム上では協働的作用が発揮され、無線通信装置として動作する。このような無線通信装置を複数起動して無線ネットワークを構築することによって、本発明の第1の側面に係る無線通信システムと同様の作用効果を得ることができる。
本発明によれば、複数のチャネルが用意されている通信環境下において、近隣の無線システムが干渉し合うことなく特定の制御局の介在なしに自律分散型の無線ネットワークを形成することができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
また、本発明によれば、各通信局が周辺局の干渉を回避してマルチチャネル自律分散型の無線ネットワークを形成することができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
また、本発明によれば、各通信局が、周辺局からのデータ送信が予想される場合に送信停止期間を設けて衝突を回避することによりマルチチャネル自律分散型の無線ネットワークを形成することができる、優れた無線通信システム、無線通信装置及び無線通信方法、並びにコンピュータ・プログラムを提供することができる。
本発明によれば、マルチチャネル自律分散型の通信環境下で、各通信局は、データ送信の衝突を回避するために、必要以上に長い送信停止期間を設ける必要がなくなり、伝送フレーム周期中で送信可能な時間が増えることにより、システム全体のスループットが向上する。
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
A.システム構成
本発明において想定している通信の伝搬路は無線であり、且つ複数の周波数チャネルからなる伝送媒体を用いて、複数の通信局間でネットワークを構築する。また、本発明で想定している通信は蓄積交換型のトラヒックであり、パケット単位で情報が転送される。
本発明において想定している通信の伝搬路は無線であり、且つ複数の周波数チャネルからなる伝送媒体を用いて、複数の通信局間でネットワークを構築する。また、本発明で想定している通信は蓄積交換型のトラヒックであり、パケット単位で情報が転送される。
本発明に係る無線ネットワーク・システムは、コーディネータを配置しない自律分散型のシステム構成であり、緩やかな時分割多重アクセス構造を持った伝送(MAC)フレームにより複数のチャネルを効果的に利用した伝送制御が行なわれる。また、各通信局は、CSMA(Carrier Sense Multiple Access:キャリア検出多重接続)に基づくアクセス手順に従い直接非同期的に情報を伝送するアドホック通信を行なうこともできる。
このように制御局を特に配置しない無線通信システムでは、各通信局は適宜選択されるビーコン送信チャネル上でビーコン情報を報知することにより、近隣(すなわち通信範囲内)の他の通信局に自己の存在を知らしめるとともに、ネットワーク構成を通知する。また、ある通信局の通信範囲に新規に参入する通信局は、ビーコン信号を受信することにより、通信範囲に突入したことを検知するとともに、ビーコンに記載されている情報を解読することによりネットワーク構成を知ることができる。また、通信局は伝送フレーム周期の先頭でビーコンを送信するので、各通信局が利用する各チャネルにおける伝送フレーム周期はビーコン間隔によって定義される。
自律分散型の無線通信システムでは、例えば衝突を回避し通信品質を向上させる手段としてRTS/CTS方式を採用し、RTS又はCTSを受信した周辺局は、RTS/CTS手続に基づくデータ伝送が行なわれると予想される期間だけ自局の送信停止期間を設定することにより、衝突を回避することができる。ところが、マルチチャネル自律分散型ネットワークの場合、固有の隠れ端末問題が生じる。このとき、最大限の時間の送信停止期間を設けた場合、必要以上に長く送信が止まってしまい、スループットが下がってしまう。
そこで、本実施形態では、ビーコンのチャネルやデータのチャネルを考慮し、送信停止期間を効率的に設けることで、ネットワークの運用を効率化し、スループットの向上を実現するようにした。この仕組みの詳細については後述に譲る。
以下に説明する各通信局での処理は、基本的に、本発明に係るアドホック・ネットワークに参入するすべての通信局で実行される処理である。但し、場合によっては、ネットワークを構成するすべての通信局が、以下に説明する処理を実行するとは限らない。
図1には、本発明の一実施形態に係る無線通信システムを構成する通信装置の配置例を示している。この無線通信システムでは、特定の制御極を配置せず、各通信装置が自律分散的に動作し、アドホック・ネットワークが形成されている。同図では、通信装置#0から通信装置#6までが、同一空間上に分布している様子を表わしている。
また、同図において各通信装置の通信範囲を破線で示してあり、その範囲内にある他の通信装置と互いに通信ができるのみならず、自己の送信した信号が干渉する範囲として定義される。すなわち、通信装置#0は近隣にある通信装置#1、#4、と通信可能な範囲にあり、通信装置#1は近隣にある通信装置#0、#2、#4、と通信可能な範囲にあり、通信装置#2は近隣にある通信装置#1、#3、#6、と通信可能な範囲にあり、通信装置#3は近隣にある通信装置#2、と通信可能な範囲にあり、通信装置#4は近隣にある通信装置#0、#1、#5、と通信可能な範囲にあり、通信装置#5は近隣にある通信装置#4、と通信可能な範囲にあり、通信装置#6は近隣にある通信装置#2、と通信可能な範囲にある。
ある特定の通信装置間で通信を行なう場合、通信相手となる一方の通信装置からは聞くことができるが他方の通信装置からは聞くことができない通信装置、すなわち「隠れ端末」が存在する。
図2には、本発明の一実施形態に係る無線ネットワークにおいて通信局として動作する無線通信装置100の機能構成を模式的に示している。図示の無線通信装置100は、複数のチャネルが用意されている通信環境下において、同じ無線システム内では効果的にチャネル・アクセスを行なうことにより、他の無線システムと干渉し合うことなく自律分散的なネットワークを形成することができる。
図示の通り、無線通信装置100は、インターフェース101と、データ・バッファ102と、中央制御部103と、ビーコン生成部104と、無線送信部106と、タイミング制御部107と、チャネル設定部108と、アンテナ109と、無線受信部110と、ビーコン解析部112と、情報記憶部113とで構成される。
インターフェース101は、この無線通信装置100に接続される外部機器(例えば、パーソナル・コンピュータ(図示しない)など)との間で各種情報の交換を行なう。
データ・バッファ102は、インターフェース101経由で接続される機器から送られてきたデータや、無線伝送路経由で受信したデータをインターフェース101経由で送出する前に一時的に格納しておくために使用される。
中央制御部103は、無線通信装置100における一連の情報送信並びに受信処理の管理と伝送路のアクセス制御(マルチチャネルにおけるスキャン設定やチャネル設定など)を一元的に行なう。
ビーコン生成部104は、近隣にある無線通信装置との間で周期的に交換されるビーコン信号を生成する。無線通信装置100が無線ネットワークを運用するためには、各チャネルにおける自己のビーコン送信スロット位置や、各チャネルにおける自己の受信スロット位置、各チャネルにおける近隣の通信装置からのビーコン受信スロット位置、各チャネルにおける自己のスキャン動作周期などを規定する。これらの情報は、情報記憶部113に格納されるとともに、ビーコン信号の中に記載して周囲の無線通信装置に報知する。ビーコン信号の構成については後述する。無線通信装置100は、伝送フレーム周期の先頭でビーコンを送信するので、無線通信装置100が利用する各チャネルにおける伝送フレーム周期はビーコン間隔によって定義されることになる。
無線送信部106は、データ・バッファ102に一時格納されているデータやビーコン信号を無線送信するために、所定の変調処理を行なう。
アンテナ109は、他の無線通信装置宛に信号を選択された周波数チャネル上で無線送信し、あるいは他の無線通信装置から送られる信号を収集する。本実施形態では、単一のアンテナを備え、送受信をともに並行しては行なえないものとする。また、同時刻に複数の周波数チャネルをハンドルすることはできないものとする。
無線受信部110は、所定の時間に他の無線通信装置から送られてきた情報やビーコンなどの信号を受信処理する。無線送信部106及び無線受信部110における無線送受信方式は、例えば無線LANに適用可能な、比較的近距離の通信に適した各種の通信方式を適用することができる。具体的には、UWB(Ultra Wide Band)方式、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式、CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)方式などを採用することができる。
チャネル設定部108は、マルチチャネル方式の無線信号を実際に送受信する際における利用チャネルを選択する。
タイミング制御部107は、チャネル設定部108において設定されたチャネル上で無線信号を送信並びに受信するためのタイミングの制御を行なう。例えば、ビーコン送信チャネルにおける伝送フレーム周期の先頭における自己のビーコン送信タイミングや、各チャネルにおける他の通信装置からのビーコン受信タイミング、他の通信装置とのデータ送受信タイミング、並びに各チャネルにおけるスキャン動作周期などを制御する。
ビーコン解析部112は、隣接局から受信できたビーコン信号を解析し、近隣の無線通信装置の存在などを解析する。例えば、隣接局のビーコンの受信タイミングや初期チャネル情報、近隣ビーコン受信タイミングなどの情報は近隣装置情報として情報記憶部113に格納される。
情報記憶部113は、中央制御部103において実行される一連のアクセス制御動作などの実行手順命令(スキャン設定やチャネル設定などを行なうプログラム)や、他の通信局のビーコン送信タイミングや、近隣装置情報などを蓄えておく。
B.チャネル上でのアクセス動作
本実施形態では、通信局として動作する無線通信装置100は、複数のチャネルが用意され、特定の制御局を配置しない通信環境下で、緩やかな時分割多重アクセス構造を持った伝送(MAC)フレームにより複数のチャネルを効果的に利用した伝送制御、又はCSMA/CAに基づくランダム・アクセスなどの通信動作を行なう。
本実施形態では、通信局として動作する無線通信装置100は、複数のチャネルが用意され、特定の制御局を配置しない通信環境下で、緩やかな時分割多重アクセス構造を持った伝送(MAC)フレームにより複数のチャネルを効果的に利用した伝送制御、又はCSMA/CAに基づくランダム・アクセスなどの通信動作を行なう。
各通信局は、特定のチャネル上で所定の時間間隔でビーコン情報を報知することにより、近隣(すなわち通信範囲内)の他の通信局に自己の存在を知らしめるとともに、ネットワーク構成を通知する。また、ある通信局の通信範囲に新規に参入する通信局は、ビーコン信号を受信することにより、通信範囲に突入したことを検知するとともに、ビーコンに記載されている情報を解読することによりネットワーク構成を知ることができる。ビーコン送信チャネルはチャネル設定部108により設定される。
本実施形態に係る各通信局のビーコン送信手順について、図3を参照しながら説明する。但し、ここではまず単一チャネル上で各通信局のビーコンが配置されている場合について説明する。
ビーコンで送信される情報が100バイトであるとすると、送信に要する時間は18マイクロ秒となる。40ミリ秒に1回の送信なので、通信局毎のビーコンのメディア占有率は2222分の1と十分小さい。
各通信局は、周辺で発信されるビーコンを聞きながら、ゆるやかに同期する。新規に通信局が現われた場合、新規通信局は既存の通信局のビーコン送信タイミングと衝突しないように、自分のビーコン送信タイミングを設定する。
周辺に通信局がいない場合、通信局01は適当なタイミングでビーコンを送信し始めることができる。ビーコンの送信間隔は40ミリ秒である(前述)。図2中の最上段に示す例では、B01が通信局01から送信されるビーコンを示している。
以降、通信範囲内に新規に参入する通信局は、既存のビーコン配置と衝突しないように、自己のビーコン送信タイミングを設定する。このとき、各通信局はビーコン送信の直後に優先利用領域(TGP)を獲得することから、1つのチャネル上では各通信局のビーコン送信タイミングは密集しているよりも伝送フレーム周期内で均等に分散している方が伝送効率上より好ましい。したがって、本実施形態では、基本的に自身が聞こえる範囲でビーコン間隔が最も長い時間帯のほぼ真中でビーコンの送信を開始するようにしている。
例えば、図3中の最上段に示すように、通信局01のみが存在するチャネル上において、新たな通信局02が現われたとする。このとき、通信局02は、通信局01からのビーコンを受信することによりその存在とビーコン位置を認識し、図3の第2段目に示すように、通信局01のビーコン間隔のほぼ真中に自己のビーコン送信タイミングを設定して、ビーコンの送信を開始する。
さらに、新たな通信局03が現われたとする。このとき、通信局03は、通信局01並びに通信局02のそれぞれから送信されるビーコンの少なくとも一方を受信し、これら既存の通信局の存在を認識する。そして、図3の第3段に示すように、通信局01及び通信局02から送信されるビーコン間隔のほぼ真中のタイミングで送信を開始する。
以下、同様のアルゴリズムに従って近隣で通信局が新規参入する度に、ビーコン間隔が狭まっていく。例えば、図3の最下段に示すように、次に現われる通信局04は、通信局02及び通信局01それぞれが設定したビーコン間隔のほぼ真中のタイミングでビーコン送信タイミングを設定し、さらにその次に現われる通信局05は、通信局02及び通信局04それぞれが設定したビーコン間隔のほぼ真中のタイミングでビーコン送信タイミングを設定する。
但し、帯域(伝送フレーム周期)内がビーコンで溢れないように、最小のビーコン間隔Bminを規定しておき、Bmin内に2以上のビーコン送信タイミングを配置することを許容しない。例えば、40ミリ秒の伝送フレーム周期でミニマムのビーコン間隔Bminを2.5ミリ秒に規定した場合、電波の届く範囲内では最大で16台の通信局までしか収容できないことになる。
図4には、1チャネル上におけるビーコン送信タイミングの一例を示している。但し、同図に示す例では、40ミリ秒からなる伝送フレーム周期における時間の経過を、円環上で時針が右回りで運針する時計のように表している。
図4に示す例では、通信局0から通信局Fまでの合計16台の通信局がネットワークのノードとして構成されている。図3を参照しながら説明したように、既存の通信局が設定したビーコン間隔のほぼ真中のタイミングで新規参入局のビーコン送信タイミングを順次設定していくというアルゴリズムに従って、ビーコン配置が行なわれたものとする。Bminを2.5ミリ秒と規定した場合には、これ以上の通信局は該ネットワークに参入できない。
IEEE802.11方式などの場合と同様に、本実施形態においても複数のパケット間隔を定義する。ここでのパケット間隔の定義を、図5を参照して説明する。ここでのパケット間隔は、Short Inter Frame Space(SIFS)とLong Inter Frame Space(LIFS)を定義する。より高いプライオリティが与えられたパケットに限りSIFSのパケット間隔で送信を許容し、それ以外のパケットは(LIFS+ランダムに値を得るランダム・バックオフ)のパケット間隔だけメディアがクリアであることを確認した後に送信を許容する。ランダム・バックオフ値の計算方法は既存技術で知られている方法を適用する。
さらに本実施形態においては、上述したパケット間隔である「SIFS」と「LIFS+バックオフ」の他、「LIFS」と「FIFS+バックオフ」(FIFS:Far Inter Frame Space)を定義する。通常は「SIFS」と「LIFS+バックオフ」のパケット間隔を適用するが、ある通信局に送信の優先権が与えられている時間帯においては、他局は「FIFS+バックオフ」のパケット間隔を用い、優先権が与えられている局はSIFSあるいはLIFSでのパケット間隔を用いるというものである。
各通信局はビーコンを一定間隔で送信しているが、ビーコンを送信した後しばらくの間は、該ビーコンを送信した局に送信の優先権を与えられる。図6には、ビーコン送信局に優先権が与えられる様子を示している。本明細書では、この優先区間をTransmission Guaranteed Period(TGP)と定義する。また、TGP以外の区間をFairly Access Period(FAP)と定義され、通信局間ではCSMA/CA方式により通信が行なわれる。図7には、伝送フレーム周期(T_SF)の構成を示している。同図に示すように、各通信局からのビーコンの送信に続いて、そのビーコンを送信した通信局のTGPが割り当てられ、TGPの長さ分だけ時間が経過するとFAPになり、次の通信局からのビーコンの送信でFAPが終わる。なお、ここではビーコンの送信直後からTGPが開始する例を示したが、これには限定されるものではなく、例えば、ビーコンの送信時刻から相対位置(時刻)でTGPの開始時刻を設定してもよい。
ここで、1チャネル上のパケット間隔について再度考察すると、下記のようになる。各通信局は、FAPにおいてはLIFS+バックオフの間隔での送信を行なう。また、ビーコン並び自局のTGP内でのパケットの送信に関しては、SIFS間隔での送信を許容する。また、自局のTGP内でのパケットの送信に関してはLIFSの間隔での送信をも許容する。さらに、他局のTGP内でのパケットの送信に関してはFIFS+バックオフの間隔での送信とするということになる。IEEE802.11方式においては、常にパケット間隔としてFIFS+バックオフがとられていたが、本実施形態の構成によれば、この間隔を詰めることができて、より効果的なパケット伝送が可能となる。
上記では、TGP中の通信局にのみ優先送信権が与えられるという説明を行なったが、TGP中の通信局に呼び出された通信局にも優先送信権を与える。基本的にTGPにおいては、送信を優先するが、自通信局内に送信するものはないが、他局が自局宛てに送信したい情報を保持していることが判っている場合には、その「他局」宛てにページング(Paging)メッセージあるいはポーリング(Polling)メッセージを投げたりしてもよい。
逆に、ビーコンを送信したものの、自局には何も送信するものがない場合でかつ他局が自局宛てに送信したい情報を保持していることを知らない場合、このような通信局は、通信動作を行なわず、TGPで与えられた送信優先権を放棄し、何も送信しない。すると、LIFS+バックオフあるいはFIFS+バックオフ経過後に他局がこの時間帯でも送信を開始する。
図7に示したようにビーコン送信した直後にTGPが続くという構成を考慮すると、各通信局のビーコン送信タイミングは密集しているよりも伝送フレーム周期内で均等に分散している方が伝送効率上より好ましい。したがって、本実施形態では、基本的に自身が聞こえる範囲でビーコン間隔が最も長い時間帯のほぼ真中でビーコンの送信を開始するようにしている。勿論、各通信局のビーコン送信タイミングを集中して配置し、残りの伝送フレーム周期では受信動作を停止して装置の消費電力を低減させるという利用方法もある。
図8には、ビーコン信号フォーマットの構成例を示している。同図に示すように、ビーコン信号は、当該信号の存在を知らしめるためのプリアンブルに、ヘディング、ペイロード部PSDUが続いている。ヘディング領域において、該パケットがビーコンである旨を示す情報が掲載されている。また、PSDU内にはビーコンで報知したい以下の情報が記載されている。
TX.ADDR:送信局(TX)のMAC アドレス
TOI:TBTTオフセット・インジケータ(TBTT Offset Indicator )
NBOI:近隣ビーコンのオフセット情報(Neighbor Beacon Offset Information)
TIM:トラフィック・インジケーション・マップ(Traffic Indication Map)
PAGE:ページング(Paging)
TOI:TBTTオフセット・インジケータ(TBTT Offset Indicator )
NBOI:近隣ビーコンのオフセット情報(Neighbor Beacon Offset Information)
TIM:トラフィック・インジケーション・マップ(Traffic Indication Map)
PAGE:ページング(Paging)
TIMとは、現在この通信局がどの通信局宛てに情報を有しているかの報知情報であり、TIMを参照することにより、受信局は自分が受信を行なわなければならないことを認識することができる。また、Pagingは、TIMに掲載されている受信局のうち、直後のTGP において送信を予定していることを示すフィールドであり、このフィールドで指定された局はTGPでの受信に備えなければならない。その他のフィールド(ETCフィールド)も用意されている。
NBOIは、チャネル上の伝送フレーム内における近隣の通信局のビーコン配置を記述した情報である。本実施形態では、各チャネルにおいて伝送フレーム周期内に最大16個のビーコンを配置することができることから、NBOIを各ビーコン位置に相当する16ビット長のフィールドとして構成し、受信できたビーコンの配置に関する情報をビットマップ形式で記述する。そして、自局のビーコン送信タイミングを基準として、各通信局からのビーコン受信タイミングの相対位置(オフセット)に対応するビットに1を書き込み、ビーコンを受信しないタイミングの相対位置に対応するビット位置は0のままとする。
図9には、利用チャネル数を1つとした場合におけるNBOIの記述例を示している。同図に示す例では、図3に示した通信局0が、「通信局1並びに通信局9からのビーコンが受信可能である」旨を伝えるNBOIフィールドが示されている。NBOIフィールドの最上位ビットを自局のビーコン送信位置に割り当てられ、この位置を基準として受信可能な隣接局のビーコンの相対位置(オフセット)に対応するビットに関し、ビーコンが受信されている場合にはマーク、受信されていない場合にはスペースを割り当てる。なお、これ以外の目的で、ビーコンが受信されていないタイミングに対応するビットに関してマークを行なうようにしてもよい。本実施形態では、利用可能な各周波数チャネルについてのビーコン配置を記述したNBOI情報が必要であるが、この点について後述に譲る。
各通信局は、あるチャネル上でお互いのビーコン信号を受信すると、その中に含まれるNBOIの記述に基づいて、使用可能な各周波数チャネル上でビーコンの衝突を回避しながら自己のビーコン送信タイミングを配置したり周辺局からのビーコン受信タイミングを検出したりすることができる。
図10には、ある周波数チャネル上において、新規参入局がNBOIの記述に基づいて既存のビーコンとの衝突を回避しながら自己のビーコン送信タイミングを配置する様子を示している。同図の各段では、通信局STA0〜STA2の参入状態を表している。そして、各段の左側には各通信局の配置状態を示し、その右側には各局から送信されるビーコンの配置を示している。
図10上段では、通信局STA0のみが存在している場合を示している。このとき、STA0はビーコン受信を試みるが受信されないため、適当なビーコン送信タイミングを設定して、このタイミングの到来に応答してビーコンの送信を開始することができる。ビーコンは40ミリ秒(伝送フレーム)毎に送信されている。このとき、STA0から送信されるビーコンに記載されているNBOIフィールドのすべてのビットが0である。
図10中段には、通信局STA0の通信範囲内でSTA1が参入してきた様子を示している。STA1は、ビーコンの受信を試みるとSTA0のビーコンが受信される。さらにSTA0のビーコンのNBOIフィールドは自局の送信タイミングを示すビット以外のビットはすべて0であることから、上述した処理手順に従ってSTA0のビーコン間隔のほぼ真中に自己のビーコン送信タイミングを設定する。
STA1が送信するビーコンのNBOIフィールドは、自局の送信タイミングを示すビットとSTA0からのビーコン受信タイミングを示すビットに1が設定され、それ以外のビットはすべて0である。また、STA0も、STA1からのビーコンを認識すると、NBOIフィールドの該当するビット位置に1を設定する。
図10の最下段には、さらにその後、通信局STA1の通信範囲にSTA2が参入してきた様子を示している。図示の例では、STA0はSTA2にとって隠れ端末となっている。このため、STA2は、STA1がSTA0からのビーコンを受信していることを認識できず、右側に示すように、STA0と同じタイミングでビーコンを送信し衝突が生じてしまう可能性がある。
NBOIフィールドはこの現象を回避するために用いられる。まず、STA1のビーコンのNBOIフィールドは自局の送信タイミングを示すビットに加え、STA0がビーコンを送信しているタイミングを示すビットにも1が設定されている。そこで、STA2は、隠れ端末であるSTA0が送信するビーコンを直接受信はできないが、STA1から受信したビーコンに基づいてSTA0のビーコン送信タイミングを認識し、このタイミングでのビーコン送信を避ける。
そして、図11に示すように、このときSTA2は、STA0とSTA1のビーコン間隔のほぼ真中にビーコン送信タイミングを定める。勿論、STA2の送信ビーコン中のNBOIでは、STA2とSTA1のビーコン送信タイミングを示すビットを1に設定する。このようなNBOIフィールドの記述に基づくビーコンの衝突回避機能により、隠れ端末すなわち2つ先の隣接局のビーコン位置を把握しビーコンの衝突を回避することができる。
C.送信停止期間の効率的な設定
上述したように、自律分散型の無線通信システムでは、各通信局は伝送フレーム周期内でビーコン情報を報知するとともに、他局からのビーコン信号のスキャン動作を行なうことにより1チャネル上でのネットワーク構成を認識することができる。また、衝突を回避し通信品質を向上させる手段としてRTS/CTS方式を採用し、これらRTS又はCTSを受信した周辺局は、RTS/CTS手続に基づくデータ伝送が行なわれると予想される期間だけ自局の送信停止期間を設定することにより、衝突を回避することができる。
上述したように、自律分散型の無線通信システムでは、各通信局は伝送フレーム周期内でビーコン情報を報知するとともに、他局からのビーコン信号のスキャン動作を行なうことにより1チャネル上でのネットワーク構成を認識することができる。また、衝突を回避し通信品質を向上させる手段としてRTS/CTS方式を採用し、これらRTS又はCTSを受信した周辺局は、RTS/CTS手続に基づくデータ伝送が行なわれると予想される期間だけ自局の送信停止期間を設定することにより、衝突を回避することができる。
ところが、本実施形態に係るマルチチャネル自律分散型ネットワークの場合、図4に示したような伝送フレームが周波数軸上に利用チャネル数分だけ配置された構成となっている(図12を参照のこと)。このため、データ送信元の通信局がデータ送信先の通信局のビーコン送信チャネルに移行してデータ送信動作を行なう場合、データ送信先の通信局にとって隠れ端末となる周辺局が移行先のチャネルが干渉チャネルとなっている場合には、移行先のチャネルで送信するRTS信号を聞きとれないといった、マルチチャネルに固有の隠れ端末問題が生じる。
本実施形態に係る自律分散型の通信システムでは、隣接局のビーコン受信予定の有無に関する情報を、周辺局間で通知する仕組みを導入しているが、次隣接局のビーコン自身は受信できないため、ビーコンが実際にはいつ送信されたのか、ビーコン送信後にチャネル変更をするのかどうかなどの情報は判らない。ここで、予想できる限り最も遅いCTS信号の送信時間までキャリア・センスを続け、最大限の時間の送信停止期間を設けた場合、必要以上に長く送信が止まってしまい、スループットが下がってしまう。
そこで、本発明では、ビーコンのチャネルやデータのチャネルを考慮し、送信停止期間を効率的に設けることで、ネットワークの運用を効率化し、スループットの向上を実現する。
C−1.マルチチャネル通信環境下における近隣装置情報
本実施形態では、各通信局は、ビーコンのチャネルやデータのチャネルを考慮することで、効率的な送信期間を設定する。このため、通信局は、利用可能な各チャネルにおいてビーコン送信タイミングやビーコン送信タイミングなどの近隣装置情報を獲得する必要がある。
本実施形態では、各通信局は、ビーコンのチャネルやデータのチャネルを考慮することで、効率的な送信期間を設定する。このため、通信局は、利用可能な各チャネルにおいてビーコン送信タイミングやビーコン送信タイミングなどの近隣装置情報を獲得する必要がある。
単チャネルの自律分散型システムの場合、図9に示したようなNBOI情報をビーコン信号に含ませて報知することにより、各通信局は、衝突を回避しながら自己のビーコン送信タイミングを配置したり周辺局(隣接局並びに次隣接曲を含む)のビーコン受信タイミングを検出したりすることができる(前述)。そこで、この項では、マルチチャネルの通信システムにおいて、各通信局が近隣装置情報を獲得する仕組みについて説明する。
ここで、図13に示すように、チャネル1〜チャネル4の4チャネルからなるマルチチャネル通信システムにおいて、通信範囲内に通信局A〜Dが4台だけ存在し、このうち通信局Aが送信チャネルを選択する場合について考える。そして、通信局A〜Dが各チャネル上で図14に示すようにビーコン送信タイミングを配置しているとする。
図14に示すように、各通信局A〜Dは、ビーコン送信タイミングが他局のビーコンと衝突しないように互いにずらして配置している。また、ビーコンが送受信されるチャネルも、通信局毎に周辺局でのチャネル品質情報に基づいてそれぞれ設定される。
仮に、各端末のビーコン間隔の最小ステップをT_SF/8とすると、図14に示したようなビーコン送信時刻、相対的なチャネル配置の場合には、図15のように記述されるビーコン位置情報として把握することができる。
図15に示す例では、ビーコン位置情報は、伝送フレーム周期T_SF内に配置可能なビーコンの個数だけカラムが用意されている。その先頭カラムは、自局のビーコン送信位置に割り当てられ、ビーコン送信チャネルが書き込まれる。そして、以降の各カラムは、自局のビーコン送信位置を基準としたT_SF/8毎の送信時刻に割り当てられており、自局のビーコン送信位置から対応する相対位置(オフセット)において受信することができたビーコンのチャネル情報が書き込まれる。
図15に示したようなビーコン位置情報は、それぞれのカラムに該当する送信時刻のビーコンの有無、ビーコンがある場合はそのチャネルが記録されており、マルチチャネル通信環境下における近隣通信装置情報NBOIに相当する。各通信局は、自局が各チャネル上で受信できたビーコンに基づいてビーコン位置情報を作成するとともに、ビーコン内にこれを書き込んで周辺局に報知し合うことで、近隣の通信環境を把握することができる。また、受信したビーコンからビーコン位置情報を取り出して、自局のビーコン位置情報の内容を更新する。
通信局は、このようなビーコン位置情報の記載内容に基づいて、各伝送フレーム周期において、ビーコン送信チャネルを求め、ビーコン送受信時刻になったら該当のチャネルに切り替えて、送受信を試みる。
ビーコンの相対的なチャネル配置は、各ビーコンの送信時刻が互いにできる限り離れるように配置するのが望ましい。何故ならば、ビーコン送受信後に獲得する優先送信期間TGPにおけるデータ通信はビーコンのチャネルで行なわれるため、できる限りビーコンが離れている方がそれぞれの通信可能時間を長くできるからである。図16には、マルチチャネル上における各通信局のビーコン配置例を示している。
C−2.送信停止期間の設定方法1
通信局は、すべてのチャネルを定期的にスキャン動作することにより、隣接端末のビーコンの送信位置と送信チャネルの情報を把握することができる。例えば図14に示したようなチャネル及びタイミングにより各局がビーコンを送信している場合、図15に示すような近隣装置情報(但し、同図は通信局Aが取得した例を示している)を各通信局が把握することができる(前述)。
通信局は、すべてのチャネルを定期的にスキャン動作することにより、隣接端末のビーコンの送信位置と送信チャネルの情報を把握することができる。例えば図14に示したようなチャネル及びタイミングにより各局がビーコンを送信している場合、図15に示すような近隣装置情報(但し、同図は通信局Aが取得した例を示している)を各通信局が把握することができる(前述)。
各通信局は、自局で取得した近隣装置情報をビーコン情報の一部としても送信し、隣接局にも伝える。図15に示した近隣装置情報からは、T_SF/8毎の各ビーコン送信位置に配置されているビーコンが隣接局又は次隣接局のいずれのものであるかは区別されていないが、受信予定時刻において該当チャネル上でビーコンを実際に受信できたかどうかに応じて隣接局又は次隣接局のいずれであるかを判別することができる。すなわち、隣接局からどの時刻でビーコンを受信しているかが分かる。一方、受信予定のビーコンが自局には聞こえない送信位置である場合には、それが次隣接すなわち自局にとって隠れ端末のビーコンであると分かる。
通信局は、このようにして受信予定のビーコンが隣接局又は次隣接局のいずれからのものかを判定した結果に基づいて、送信を停止する期間を異なる長さに設定する。隠れ端末による衝突の回避のため、ビーコンの送信が予想される時間から、ビーコンに引き続き送られるデータ送受信のためのCTS(Clear To Send)信号の受信が予想される時間まで送信を停止する。それぞれの長さについては以下の通りになる。
(1)受信予定のビーコンが隣接局の場合
各通信局は、伝送フレーム周期T_SF中で時局のビーコン送信位置が到来すると、所定のランダム・バックオフだけ加算したタイミングでビーコン信号を送出する。
各通信局は、伝送フレーム周期T_SF中で時局のビーコン送信位置が到来すると、所定のランダム・バックオフだけ加算したタイミングでビーコン信号を送出する。
ビーコン受信を待機する側の通信局は、隣接局から送信される場合には、実際にビーコンを聞き取ることによりランダム・バックオフの値に拘わらず、ビーコン受信タイミングが確定する。そして、ビーコンに引き続いて、RTS(Request To Send)などの当該隣接局からの送信信号を受信することができる。
ここで、RTS信号の直後に返信されるCTSが聞こえた場合には、データ部の衝突の可能性があることから、CTS信号中で規定されている送信時間だけ送信を停止しなければならない。一方、RTS信号の直後に返信されるCTSが聞こえなければ、データ部の衝突の可能性は無いことが判り、送信を開始しても良い。この場合の送信停止期間を図示すると図17に示す通りとなる。
(2)受信予定のビーコンが次隣接局の場合
各通信局は、伝送フレーム周期T_SF中で時局のビーコン送信位置が到来すると、所定のランダム・バックオフだけ加算したタイミングでビーコン信号を送出する。
各通信局は、伝送フレーム周期T_SF中で時局のビーコン送信位置が到来すると、所定のランダム・バックオフだけ加算したタイミングでビーコン信号を送出する。
次隣接局からデータが送信される場合、ビーコン受信を待機する側の通信局は、実際にビーコンは受信できないので、データ部との衝突を回避するための送信停止期間として最大値を見積もる必要がある。
ここで、ビーコンはランダム・バックオフによる最も遅いタイミングで送信されたと考える。さらに、データ部の送信は別のチャネルで行なわれる可能性があることから、その場合はチャネル切り替え時間分だけ待つ必要がある。その後、RTSが送信され、CTSが返信される。そこまでの間送信を停止して、CTSの受信を試みる。この場合の送信停止期間は、図18に示す通りとなる。このように、次隣接のビーコン送信時刻では、隣接ビーコンの場合よりも送信停止期間は長くなる。
C−3.送信停止期間の設定方法2
C−2で説明した場合と同様に、通信局は、例えば定期的な全チャネルをスキャン動作することにより、隣接端末のビーコンの送信位置と送信チャネルの情報を把握することができる。例えば図14に示したようなチャネル及びタイミングにより各局がビーコンを送信している場合、図15に示すような近隣装置情報を各通信局が把握することができる。
C−2で説明した場合と同様に、通信局は、例えば定期的な全チャネルをスキャン動作することにより、隣接端末のビーコンの送信位置と送信チャネルの情報を把握することができる。例えば図14に示したようなチャネル及びタイミングにより各局がビーコンを送信している場合、図15に示すような近隣装置情報を各通信局が把握することができる。
C−2項では、受信予定のビーコンを受信できたかに応じて送信停止期間を設定したが、この項では、図15に示したような近隣装置情報に基づいて、先の送信停止期間を設けるか否かを判断する。
送信が予定されているビーコンが次隣接局のビーコンである場合、実際にはこのビーコンを受信することはできない。しかし、不用意に送信を始めると、この次隣接のビーコンを受信している隣接局にとっては隠れ端末からの干渉信号になってしまい、ビーコン受信を妨げてしまう。図19に示す例では、通信局が、隣接局がチャネル1上で次隣接局からデータを受信しているときに同じチャネル1上でデータ送信し干渉している様子を示している。
そこで、通信局は、隣接局から受信したビーコンに記載されている近隣装置情報を見て、該当する次隣接局のビーコン送信チャネルが自局の送信予定チャネルと一致するのかどうかを判断する。これらのチャネルが一致する場合には次隣接局用の送信停止期間を設けて、送信を延期する。これにより、隣接局の次隣接局からのビーコン受信の妨害を避けるとともに、不必要な送信停止期間を設けることが無くなり、スループットが向上する。
図20には、通信局が周辺局からのビーコン受信予定に応じて送信停止期間を設定するための処理手順をフローチャートの形式で示している。この処理は、実際には、通信局として動作する無線通信装置100において中央制御部103が情報記憶部103に格納されている実行命令手順を実行することにより実現される。
通信局は、隣接局のビーコン送信予定時刻が到来したことに応答して(ステップS1)、送信を停止し(ステップS2)、ビーコンの受信を待機する(ステップS3)。
また、通信局は、次隣接局のビーコン送信予定時刻が到来したことに応答して(ステップS4)、そのビーコン送信チャネルが自局のデータ送信チャネルと一致するかどうかを確認する(ステップS5)。
このとき、互いのチャネルが一致する場合には、ビーコンが到来するまでの最大遅延時間を想定して送信停止期間を設定し、衝突を回避するようにする(ステップS6)。
そして、隣接局のビーコン受信後、あるいは次隣接局がビーコンを送信するための停止期間が経過した後、自局の送信動作を再開させる(ステップS7)。
C−4.送信停止期間の設定方法3
C−2で説明した場合と同様に、通信局は、例えば定期的な全チャネルをスキャン動作することにより、隣接端末のビーコンの送信位置と送信チャネルの情報を把握することができる。例えば図14に示したようなチャネル及びタイミングにより各局がビーコンを送信している場合、図15に示すような近隣装置情報を各通信局が把握することができる。
C−2で説明した場合と同様に、通信局は、例えば定期的な全チャネルをスキャン動作することにより、隣接端末のビーコンの送信位置と送信チャネルの情報を把握することができる。例えば図14に示したようなチャネル及びタイミングにより各局がビーコンを送信している場合、図15に示すような近隣装置情報を各通信局が把握することができる。
ここでは、ビーコン送信直後にチャネルを変更して、データの送信は別チャネルで行なうことも可能であると想定する。この場合、次隣接局からのビーコンは直接受信できないので、データ送信チャネルが変更するのかどうかは知ることができない。このため、通信局は、不用意に自局からの送信を始めると、同じチャネルで次隣接局からのデータを受信していた隣接局に対する干渉波になってしまう恐れがある。したがって、次隣接局のビーコン受信予定時刻では、いずれのチャネルがビーコン送信チャネルに設定されているかに関わらず、無条件に送信停止期間を設けなくてはならないことになってしまう。
このように必要以上に送信停止期間を設定することを回避するために、ここではビーコンの記載情報として、さらにデータ送信チャネルの変更の有無を示した情報(以下では、「データ・チャネル変更可能性情報」とも呼ぶ)を追加する。
データ・チャネル変更可能性情報は、周辺局のビーコン送信位置やチャネルを示した近隣装置情報(図15を参照のこと)と同様に、それぞれのビーコン送信位置に対応する位置に情報を記述する。すなわち、データ・チャネル変更可能性情報は、伝送フレーム周期T_SF内に配置可能なビーコンの個数だけカラムが用意されている。その先頭カラムは、自局のチャネル変更可能性が1又は0の値により示される。以降の各カラムは、自局のビーコン送信位置を基準としたT_SF/8毎の送信時刻に割り当てられており、自局のビーコン送信位置から対応する相対位置(オフセット)にビーコン送信予定の周辺局におけるチャネル変更可能性が1又は0の値により示される。
図21には、通信局がデータ・チャネル変更可能性情報に基づいて送信停止期間を設定する仕組みを図解している。
同図に示す例では、通信局Dは、干渉源Xから干渉を受けている。その結果、通信局Dは辛うじてビーコンは受信できるものの、このチャネルでのデータの受信は誤りも多く、速いレートは使用できない。そこで、通信局Dに送信をする通信局Aは、データのチャネルを切り替えて送信する。このチャネル切り替えの可能性を示す情報が、同図中で通信局Aの下にあるデータ・チャネル本稿可能性情報(CH Change)であり、通信局A自身のビーコン位置に相当するカラムが1に設定されている。
このようなデータ・チャネル変更可能性情報は、ビーコン情報の一部として隣接局に報知される。各通信局では、受信したビーコンを集計することによって、各周辺局のデータ・チャネル変更の有無を示す情報を取得し、自局のビーコン位置以外のデータ・チャネル変更可能性情報(CH Change)として記述される。
通信局Cは、通信局Bのビーコンに含まれているデータ・チャネル変更可能性情報(CH Change)を参照して、自局にとって次隣接局である通信局Aのビーコン送信位置では、データ・チャネルが変更される可能性を検知する。
そこで、通信局Cは、データ・チャネルの変更可能性が指示されているビーコン送信時刻では、自局が隠れ端末となって通信局Bの受信に干渉を与える可能性があるので、ビーコン受信予定時刻にランダム・バックオフの最大時間とRTS/CTS手続きの所要時間を含んだ最大限の送信停止期間を設定し、通信局BからのCTSを受信する可能性が無くなる時間まで送信を待機する。
一方、データ・チャネルの変更可能性のないその他の次隣接局のビーコン送信予定時刻では、そのビーコン送信チャネルが自局のデータ送信チャネルと異なるのであれば、データ送信時に衝突する可能性が無いので、通信局Cにとって、送信停止期間を設定する必要が無くなる。
このようにして、データ送信チャネルを変更する可能性の有無を示す情報を隣接局に報知することで、場合によっては送信停止期間を無くすことができる。この結果、データ送信可能時間が増えて、システム全体のスループットが向上する。
[追補]
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
100…無線通信装置
101…インターフェース
102…データ・バッファ
103…中央制御部
104…ビーコン生成部
106…無線送信部
107…タイミング制御部
108…チャネル設定部
109…アンテナ
110…無線受信部
112…ビーコン解析部
113…情報記憶部
101…インターフェース
102…データ・バッファ
103…中央制御部
104…ビーコン生成部
106…無線送信部
107…タイミング制御部
108…チャネル設定部
109…アンテナ
110…無線受信部
112…ビーコン解析部
113…情報記憶部
Claims (34)
- 複数のチャネルが用意されている通信環境下において、制御局を配置せずに複数の無線通信装置に自律分散的にネットワークを形成する無線通信システムであって、
各通信局は、周辺局の送信予定時刻において、該周辺局が隣接局又は次隣接局のいずれであるか、並びに該周辺局の送信時の使用チャネルに応じて送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする無線通信システム。 - 各通信局は、前記複数のチャネルの中から選択したビーコン送信チャネル上で、所定の伝送フレーム周期においてそれぞれ異なる送信タイミングでビーコン信号を送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。 - 各通信局は、周辺局のビーコン送信チャネル及びビーコン送信タイミングに関する近隣装置情報をビーコン信号に含めて送信する、
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。 - 通信局は、周辺局からのビーコンの受信予定時刻においてビーコンを実際に聞くことができたかどうかに応じて、当該ビーコンの送信元が隣接局又は次隣接局のいずれであるかを判別する、
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。 - 各通信局は、自局のビーコン送信直後に優先送信期間を得て、データ送信先に対して送信要求パケットRTSを送信し、データ送信先の通信局から確認通知パケットCTSを受信したことに応答してデータ送信を開始する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。 - 通信局は、隣接局からのRTS信号を受信後、データ送信先からのCTS信号を受信しなければ、隣接局からビーコンを受信した後からCTSの受信予定時刻までを送信停止期間に設定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の無線通信システム。 - 通信局は、次隣接局のビーコン受信予定に合わせて、ビーコン受信予定時刻にランダム・バックオフの最大時間とRTS/CTS手続きの所要時間を含んだ最大限の送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の無線通信システム。 - 通信局は、次隣接局のビーコン受信予定時において、当該次隣接局のビーコン送信予定チャネルが自局のデータ送信予定チャネルと一致するかどうかに応じて送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。 - 各通信局は、自局のビーコン送信直後に優先送信期間を得て、ビーコン送信チャネルからチャネルを変更してデータ送信を行なうことが許容される、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。 - 各通信局は、自局及び/又は周辺局がビーコン送信チャネルからチャネルを変更してデータ送信を行なう可能性を記述したデータ・チャネル変更可能性情報を互いに通知し合う、
ことを特徴とする請求項9に記載の無線通信システム。 - 通信局は、データ・チャネル変更可能性のある次隣接局のビーコン受信予定に合わせて、ビーコン受信予定時刻にランダム・バックオフの最大時間とRTS/CTS手続きの所要時間を含んだ最大限の送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の無線通信システム。 - 複数のチャネルが用意されている無線通信環境下で自律分散的に動作する無線通信装置であって、
各チャネルにおいて無線データを送受信する通信手段と、
前記通信手段において自局の送信信号の送信チャネルを設定する通信チャネル設定手段と、
前記通信チャネル設定手段により設定されたチャネル上で前記通信手段による通信動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、周辺局の送信予定時刻において、該周辺局が隣接局又は次隣接局のいずれであるか、並びに該周辺局の送信時の使用チャネルに応じて送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする無線通信装置。 - 自局に関する情報を記載したビーコン信号を生成するビーコン信号生成手段と、
前記通信手段により隣接局から受信したビーコン信号を解析するビーコン信号解析手段と、
をさらに備え、
前記チャネル設定手段は、前記複数のチャネルの中からビーコン送信チャネルを設定し、
前記制御手段は、所定の伝送フレーム周期において周辺局とは異なるビーコン送信タイミングでのビーコン送信を制御する、
ことを特徴とする請求項12に記載の無線通信装置。 - 前記ビーコン信号生成手段は、周辺局のビーコン送信チャネル及びビーコン送信タイミングに関する近隣装置情報をビーコン内で記述する、
ことを特徴とする請求項13に記載の無線通信装置。 - 前記制御手段は、周辺局からのビーコンの受信予定時刻においてビーコンを実際に聞くことができたかどうかに応じて、当該ビーコンの送信元が隣接局又は次隣接局のいずれであるかを判別する、
ことを特徴とする請求項13に記載の無線通信装置。 - 前記制御手段は、自局のビーコン送信直後に優先送信期間を得て、データ送信先に対して送信要求パケットRTSを送信し、データ送信先の通信局から確認通知パケットCTSを受信したことに応答してデータ送信を開始する、
ことを特徴とする請求項12に記載の無線通信装置。 - 前記制御手段は、隣接局からのRTS信号を受信後、データ送信先からのCTS信号を受信しなければ、隣接局からビーコンを受信した後からCTSの受信予定時刻までを送信停止期間に設定する、
ことを特徴とする請求項16に記載の無線通信装置。 - 前記制御手段は、次隣接局のビーコン受信予定に合わせて、ビーコン受信予定時刻にランダム・バックオフの最大時間とRTS/CTS手続きの所要時間を含んだ最大限の送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする請求項16に記載の無線通信装置。 - 前記制御手段は、次隣接局のビーコン受信予定時において、当該次隣接局のビーコン送信予定チャネルが自局のデータ送信予定チャネルと一致するかどうかに応じて送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする請求項14に記載の無線通信装置。 - 前記制御手段は、自局のビーコン送信直後に優先送信期間を得て、ビーコン送信チャネルからチャネルを変更してデータ送信を行なうことができる、
ことを特徴とする請求項12に記載の無線通信装置。 - 前記ビーコン信号生成手段は、自局及び/又は周辺局がビーコン送信チャネルからチャネルを変更してデータ送信を行なう可能性を記述したデータ・チャネル変更可能性情報をビーコン中に記述する、
ことを特徴とする請求項20に記載の無線通信装置。 - 前記制御手段は、データ・チャネル変更可能性のある次隣接局のビーコン受信予定に合わせて、ビーコン受信予定時刻にランダム・バックオフの最大時間とRTS/CTS手続きの所要時間を含んだ最大限の送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする請求項20に記載の無線通信装置。 - 複数のチャネルが用意されている無線通信環境下で自律分散的に動作するための無線通信方法であって、
自局の送信信号の送信チャネルを設定する通信チャネル設定ステップと、
周辺局の送信予定時刻において、該周辺局が隣接局又は次隣接局のいずれであるか、並びに該周辺局の送信時の使用チャネルに応じて送信停止期間を設定しながら、前記通信チャネル設定ステップにより設定されたチャネル上での通信動作を制御する制御ステップと、
を具備することを特徴とする無線通信方法。 - 自局に関する情報を記載したビーコン信号を生成するビーコン信号生成ステップと、
隣接局から受信したビーコン信号を解析するビーコン信号解析ステップと、
をさらに備え、
前記チャネル設定ステップでは、前記複数のチャネルの中からビーコン送信チャネルを設定し、
前記制御ステップでは、所定の伝送フレーム周期において周辺局とは異なるビーコン送信タイミングでのビーコン送信を制御する、
ことを特徴とする請求項23に記載の無線通信方法。 - 前記ビーコン信号生成ステップでは、周辺局のビーコン送信チャネル及びビーコン送信タイミングに関する近隣装置情報をビーコン内で記述する、
ことを特徴とする請求項24に記載の無線通信方法。 - 前記制御ステップでは、周辺局からのビーコンの受信予定時刻においてビーコンを実際に聞くことができたかどうかに応じて、当該ビーコンの送信元が隣接局又は次隣接局のいずれであるかを判別する、
ことを特徴とする請求項24に記載の無線通信方法。 - 前記制御ステップでは、自局のビーコン送信直後に優先送信期間を得て、データ送信先に対して送信要求パケットRTSを送信し、データ送信先の通信局から確認通知パケットCTSを受信したことに応答してデータ送信を開始するように制御する、
ことを特徴とする請求項23に記載の無線通信方法。 - 前記制御ステップでは、隣接局からのRTS信号を受信後、データ送信先からのCTS信号を受信しなければ、隣接局からビーコンを受信した後からCTSの受信予定時刻までを送信停止期間に設定する、
ことを特徴とする請求項27に記載の無線通信方法。 - 前記制御ステップでは、次隣接局のビーコン受信予定に合わせて、ビーコン受信予定時刻にランダム・バックオフの最大時間とRTS/CTS手続きの所要時間を含んだ最大限の送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする請求項27に記載の無線通信方法。 - 前記制御ステップでは、次隣接局のビーコン受信予定時において、当該次隣接局のビーコン送信予定チャネルが自局のデータ送信予定チャネルと一致するかどうかに応じて送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする請求項25に記載の無線通信方法。 - 前記制御ステップでは、自局のビーコン送信直後に優先送信期間を得て、ビーコン送信チャネルからチャネルを変更してデータ送信を行なうことができる、
ことを特徴とする請求項23に記載の無線通信方法。 - 前記ビーコン信号生成ステップでは、自局及び/又は周辺局がビーコン送信チャネルからチャネルを変更してデータ送信を行なう可能性を記述したデータ・チャネル変更可能性情報をビーコン中に記述する、
ことを特徴とする請求項31に記載の無線通信方法。 - 前記制御ステップでは、データ・チャネル変更可能性のある次隣接局のビーコン受信予定に合わせて、ビーコン受信予定時刻にランダム・バックオフの最大時間とRTS/CTS手続きの所要時間を含んだ最大限の送信停止期間を設定する、
ことを特徴とする請求項23に記載の無線通信方法。 - 複数のチャネルが用意されている無線通信環境下で自律分散的に動作するための無線通信処理をコンピュータ・システム上で実行するようにコンピュータ化毒形式で記述されたコンピュータ・プログラムであって、
自局の送信信号の送信チャネルを設定する通信チャネル設定ステップと、
周辺局の送信予定時刻において、該周辺局が隣接局又は次隣接局のいずれであるか、並びに該周辺局の送信時の使用チャネルに応じて送信停止期間を設定しながら、前記通信チャネル設定ステップにより設定されたチャネル上での通信動作を制御する制御ステップと、
を具備することを特徴とするコンピュータ・プログラム。
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