JP2005093730A - 異方性磁石、その製造方法、およびこれを用いたモータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 R2Fe14B相、α−Fe相、およびR−Cu相の少なくとも3相を含み、かつ、組成式は、次式:
RxFe100-x-y-zByCuz
(Rは1種または2種以上の希土類元素を表し、x,y,z は、それぞれ、2≦x≦11、1≦y≦10、0.5≦z≦5を満たす数を表す)
で示され、また、前記R−Cu相の組成式が、次式:
RwCu100-w
(ただし、wは、5≦w≦60を満たす数である)
で示される異方性磁石。
【選択図】 なし
Description
なお、以後の説明においては、所定形状に成形された着磁前の成形体についても磁石という。
そして、昨今、これら機器の高性能化と小型化が追求されていることに対応して、Nd−Fe−B系磁石に関しても、高性能化、とりわけ高磁束密度化の要求が強まっている。
この交換スプリング磁石の材料設計思想は、いずれもnmオーダの微細な結晶粒である高保磁力の硬磁性相(Nd2Fe14B相)と高飽和磁化の軟磁性相(α−Fe相)を全体の組織内に共存させ、両相の特性を交換相互作用を介して同時に発現させ、もって高エネルギー積を達成するというものである。
更に、この交換スプリング磁石は、磁化曲線における角形比が大きく、高エネルギー積を実現していることが要求される。
この磁石は、Nd7Fe82Co5Cu3B3の組成を有する合金の溶湯を超急冷法で薄膜片にしたのちそれを粉砕し、得られた粉末を冷間プレスして予備成形体にし、更にその予備成形体を熱間プレスして高密度化したのち熱間据え込み加工して製造されている。
そして、得られた磁石の飽和磁化(Is)、残留磁束密度(Br)、固有保磁力(iHc
)、および最大エネルギー積((BH)max)は、磁化容易軸方向において、それぞれ、1.68T(16.8kG)、1.59T(15.9kG)、1.54×106A/m(19.3kOe)、469kJ/m3(58.9MGOe)であり、磁化容易軸と直角する方向において、それぞれ、0.58T(5.8kG)、0.33T(3.3kG)、549kA/m(6.9kOe)、9.55kJ/m3(1.2MGOe)になっている。
また、Nd−Cu相に代表されるR−Cu相(Rは希土類元素を表す)は非磁性相であるため、明らかに、その晶出量と磁気特性との間に相間があるはずであるが、その点に関しても明確になっているわけではない。
また、本発明は上記異方性磁石を用いることにより、より一層の高性能化と小型化が可能なモータの提供を目的とする。
RxFe100-x-y-zByCuz …(1)
(Rは1種または2種以上の希土類元素を表し、x,y,z は、それぞれ、2≦x≦11、1≦y≦10、0.5≦z≦5を満たす数を表す)
で示され、R−Cu相は、その組成式が、次式:
RwCu100-w …(2)
(ただし、wは5≦w≦60を満たす数である)で示されることを特徴とする異方性磁石が提案される。
また、本発明においては、R2Fe14B相、α−Fe相、およびR−Cu相の少なくとも3相を含み、かつ、組成式は、次式:
RxFe100-x-y-zByCuz
(Rは1種または2種以上の希土類元素を表し、x,y,z は、それぞれ、2≦x≦11、1≦y≦10、0.5≦z≦5を満たす数を表す)
で示され、また、前記R−Cu相の組成式が、次式:
RwCu100-w
(ただし、wは、5≦w≦60を満たす数である)
で示される粉末、またはその粉末のバルク体を、700〜1100℃の温度域で塑性加工する工程を含むことを特徴とする異方性磁石の製造方法が提供される。
また、磁石の製造工程においては、700〜1100℃の温度域で行う塑性加工の工程を必須の工程として含んでいるので、磁性相の相互流動性が保障されて磁性相は特定方向に配向することができ、そのことにより、大きな異方化度が実現され、各磁性相の磁化容易軸が揃うことになる。
具体的には、硬磁性相であるR2Fe14B相と軟磁性相であるα−Fe相と非磁性相であるR−Cu相の少なくとも3相が共存し、これら3相のうち、R2Fe14B相は磁石に高保磁力を付与する結晶相として、またα−Fe相は磁石に高飽和磁化を付与する結晶相としてそれぞれ機能する。そして、これら磁性相の結晶粒界に、(2)式で示した組成のR−Cu相が介在している。
そして、本発明の磁石は、上記した硬磁性相と軟磁性相におけるそれぞれの磁化容易軸が特定の方向に揃っている焼結磁石またはボンド磁石であって、例えばトロイダル形、円板形、角棒、板状の直方体、丸棒、瓦形などの形状をしており、かつ、上記した磁化容易軸に沿って着磁しているものは勿論のこと、着磁前のものも含まれる。
R成分としては、例えばNd,Pr,Ce,Gd,Tb,Dy,Pm,Sm,Eu,Ho,Er,Tm,Yb,Luの1種または2種以上を用いることができる。
また、R−Cu相の組成が変化すると、例えば融点も変化して上記した潤滑作用に変化が生じ、その結果、異方化度も変化すると考えられる。このようなことから、R−Cu相の組成に関しても粒界相として適切な組成を把握すべきことになる。
すなわち、本発明で形成するR−Cu相の組成は、(2)式で示したものである。
ここで、(2)式におけるwは、組成におけるR成分の割合を原子%で表示した値であり、その値は、(2)式で示したように、5≦w≦60に設定される。好ましくは、14≦w≦50に設定される。
(1)式における指数x,y,zは、いずれも、組成におけるR,B,Cuそれぞれの元素の原子%数を表しており、その値は(1)式で示したように設定される。
また、(1)式の組成において、Feの一部をCoで置換した磁石は、キューリ点が高くなり、高温特性が向上して好適である。
その場合、Coの置換量は、Feの30原子%以下に設定することが好ましい。置換量が30原子%より多くなると、磁石の磁束密度は低下し、にもかかわらず材料コストが割高になるからである。
次に、本発明の異方性磁石の製造方法について説明する。
まず、(1)式で示した組成の磁性粉末、またはそれを集合して軽く圧縮することにより塊状物にしたバルク体を製造する。
具体的には、(1)式で示した組成の合金を例えばAr雰囲気中で高周波溶解して溶湯とし、その溶湯を所定口径のノズルから例えば所定の周速度で回転するロールの周面に噴射する。溶湯は急冷され、かつリボン状の薄膜片となって飛散する。
この過程で得られた薄膜片は、nmオーダの極微細な結晶粒のランダムな集合体からなり、全体としては非晶質構造で、かつ磁気的には等方性になっている。そして、その組織には、微細な硬磁性相(R2Fe14B相)と軟磁性相(α−Fe相)とこれら両相の間に介在するR−Cu相が形成されている。
この熱間塑性加工によって次のような作用効果が得られる。
すなわち、上記した温度域で加熱されることにより、各磁性相の粒界に介在するR−Cu相の溶融または流動化が進み、各磁性相の粒界では潤滑作用が惹起される。同時に、非晶質状態にあった各磁性相では極微細な結晶の粒成長が進行する。
この工程における温度が700℃より低い場合は、R−Cu相の潤滑作用が充分に発揮されないので、異方化度は充分に高くならない。また温度を1100℃より高くすると、塑性変形に先立って各磁性相の微細結晶の粒成長が進行してしまうので塑性加工の効果は減殺されて、高い異方化度が実現されず、そして保磁力も低下してしまう。
本発明の製造方法は上記した熱間塑性加工を必須の工程として含んでいるが、この工程の前段に、冷間プレスの工程と熱間プレスの工程をこの順序で配置することが好ましい。
ついで、このグリーン成形体を型内にセットしたのち熱間プレスして高密度な成形体にする。適用する温度は、通常、600〜800℃程度とし、またプレス作業は各元素の例えば高温酸化を防止するために例えばAr雰囲気中で行われる。
このように、塑性加工の工程の前段に冷間プレス工程−熱間プレス工程を配置することにより、目的とする形状の異方性磁石を高い寸法精度で製造することができる。
また、本発明では、上記した熱間塑性加工の工程の後段に、次のような工程を配置することもできる。
ついで、その磁性粉末と例えばポリイミド樹脂やエポキシ樹脂のようなバインダ樹脂を所定の割合で混合して混合物にする。
このとき、磁性粉末の割合が多すぎると、混合物の流動性が低下して後述する成形作業が円滑に進められず、また逆にバインダ樹脂の割合が多すぎると、混合物の成形性は高まるとはいえ、得られた成形体の磁気特性が低下する。このようなことから、本発明においては、磁性粉末とバインダ樹脂の混合割合は目標とする磁気特性との関係で適宜に選択するが、概ね、磁性粉末100重量部に対し、バインダ樹脂1〜5重量部にすることが好ましい。
ついで、成形体の脱磁を行ったのち、磁性粉末の磁化容易軸に沿って再度着磁する。このようにして、本発明では異方性のボンド磁石が製造される。
このような工程を配置することにより、本発明においては、例えば薄肉サイズ、複雑な形状、または形状が小型である異方性磁石を高い生産性の下で製造することが可能である。
本発明の異方性磁石が、既に説明したように、高い最大エネルギー積を有し、異方化度が高く、また飽和磁化、固有保磁力も大きいという優れた磁気特性を備えているので、本発明のモータは、従来のモータに比べて小型であっても高いトルクを小電力で発揮することができる。
薄膜片を粉砕機で粉砕したのち篩い分けして粒径300μm以下の粉末を用意した。
ついで、得られた粉末を金型に充填したのち常温下で圧縮して、外径20mm、高さ50mmの円柱体を成形した。そして、この円柱体を熱間プレス用の金型の中にセットし、Ar雰囲気下において、温度700℃で圧縮成形し、外径20mm、高さ30mmの高密度な円柱体にした。
なお、このときの加工率は85%である。
この磁石の場合、図1で示したように、内部の粉末1は、いずれも、据え込み方向に圧縮されて扁平となっているので、その磁化容易軸2は粉末の厚み方向に沿っている。そのため、磁石全体の磁化容易軸3に沿った方向の両端面にN極、S極が形成され、強い磁力を保持することができる。
なお、各磁石の組織をX線回折法で測定したところ、いずれも、Nd2Fe14B相、α−Fe相、Nd−Cu相が同定された。そして、そのNd−Cu相の組成も表1に示した。
それらの磁石につき、磁化容易軸方向における最大エネルギー積を測定した。その結果を、指数w(原子%)との関係で図2に示した。
また、図2から明らかなように、w値が5〜60である組成のNd−Cu相が形成されている磁石の場合、その最大エネルギー積が442〜497kJ/m3の範囲にあり、高性能である。
したがって、この異方性磁石を組み付けたモータは、従来のモータに比べて小型であっても小電力で高いトルクを得ることができるので、例えば電気自動車やハイブリッド車などの駆動モータとして好適である。
2 磁性粉末1の磁化容易軸
3 磁石全体の磁化容易軸
Claims (9)
- R2Fe14B相、α−Fe相、およびR−Cu相の少なくとも3相を含み、かつ、組成式は、次式:
RxFe100-x-y-zByCuz
(ただし、Rは1種または2種以上の希土類元素を表し、x,y,zは、それぞれ、2≦x≦11、1≦y≦10、0.5≦z≦5を満たす数を表す)
で示され、また、前記R−Cu相の組成式が、次式:
RwCu100-w
(ただし、wは5≦w≦60を満たす数である)で示されることを特徴とする異方性磁石。 - 前記組成式において、Feの30原子%以下がCoで置換されている請求項1の異方性磁石。
- 前記R2Fe14B相、前記α−Fe相、および前記R−Cu相の少なくとも3相を含む磁性粉末とバインダ樹脂との混合物の成形体である請求項1または2の異方性磁石。
- 前記磁石または前記成形体の飽和磁化が、1.55T以上であり、かつ、固有保磁力が3.2×105〜2.4×106A/mである請求項1〜3のいずれかの異方性磁石。
- R2Fe14B相、α−Fe相、およびR−Cu相の少なくとも3相を含み、かつ、組成式は、次式:
RxFe100-x-y-zByCuz
(Rは1種または2種以上の希土類元素を表し、x,y,z は、それぞれ、2≦x≦11、1≦y≦10、0.5≦z≦5を満たす数を表す)
で示され、また、前記R−Cu相の組成式が、次式:
RwCu100-w
(ただし、wは、5≦w≦60を満たす数である)
で示される粉末、またはその粉末のバルク体を、700〜1100℃の温度域で塑性加工する工程を含むことを特徴とする異方性磁石の製造方法。 - 前記塑性加工が、据え込み加工または押出加工である請求項5の異方性磁石の製造方法。
- 前記塑性加工の工程の前段に、冷間プレスの工程と熱間プレスの工程をこの順序で配置する請求項5または6の異方性磁石の製造方法。
- 前記塑性加工の工程の後段に、得られた加工物を粉砕し、その粉砕粉とバインダ樹脂を混合し、得られた混合物を磁場中で射出成形または圧縮成形する工程を配置する請求項5〜7のいずれかの異方性磁石の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかの異方性磁石が、ロータまたはステータに永久磁石として取り付けられていることを特徴とするモータ。
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JP2003325158A JP2005093730A (ja) | 2003-09-17 | 2003-09-17 | 異方性磁石、その製造方法、およびこれを用いたモータ |
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JP2006320036A (ja) * | 2005-05-10 | 2006-11-24 | Hitachi Ltd | モータ |
JP2007300754A (ja) * | 2006-05-01 | 2007-11-15 | Nissan Motor Co Ltd | 電動機の回転子製造方法および回転子 |
-
2003
- 2003-09-17 JP JP2003325158A patent/JP2005093730A/ja active Pending
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