JP2005093106A - 走査電子顕微鏡 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁性体試料表面の磁化分布を高倍率で観察できる走査電子顕微鏡を提供する。
【解決手段】本発明の走査電子顕微鏡は、電子源17と、磁界レンズ7を含んで構成され磁界レンズ7の磁界中に設置された試料6に電子源から放出される電子線を収束させて照射する電子線収束手段7、21、22と、電子線を試料6上に2次元走査する電子線走査手段23と、試料6から放出される2次電子を電子線の逆方向に導いて結像させる2次電子光学系8と、2次電子光学系により導かれた2次電子のスピン偏極度を検出する検出手段30とを備え、2次電子のスピン方向の分散を極力抑えて2次電子をスピン偏極度の検出手段30へ導くことにより、磁性体試料表面の磁化分布を高倍率で観察するようにしたことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、試料表面を高倍率で観察する走査電子顕微鏡(SEM)に係り、特に2次電子のスピン偏極度を利用して試料表面の磁化分布を高倍率で観察する走査電子顕微鏡に関する。
磁気記録分野では記録密度が60Gb/inに達し、さらに高密度化が進められている。現状、記録ビットの長さは数十nmに達している。記録密度をさらに向上させるには再生信号の信号対雑音比(SN比)を大きく保つ必要があるが、雑音の原因である媒体ノイズが大きな問題となっている。これは記録ビット境界の揺らぎに依存しており、その揺らぎを如何に小さくするかが媒体ノイズを低減する重要な問題となっている。揺らぎの最小単位は記録媒体を構成している磁性結晶粒の大きさであり、その寸法は3nm程度である。そのため、結晶粒を判別できる分解能をもつ磁区観察装置によりビット境界を高分解能に観察できれば、その結果を記録媒体の開発にフィードバックすることにより、記録密度の向上を進めることが可能となる。
強磁性体試料表面の磁区構造を高分解能で観察するため、2次電子のスピン偏極度を利用した走査電子顕微鏡(スピン偏極走査電子顕微鏡、スピンSEM)が、1984年に開発され(非特許文献1)、2001年には空間分解能5nmを実現した(非特許文献2)。しかし、磁気記録媒体のビット境界を高分解能に観察するには未だ十分な分解能とは言えない。スピンSEMの分解能をさらに向上させるには、次のことが必要となる。
(1)大きなプローブ電流を維持したままプローブビーム径を縮小すること
(2)2次電子のスピン偏極度の検出効率を向上させること
上記の(1)に関しては、高輝度電子銃の使用すること、及び低収差対物レンズを強励磁(焦点距離を短くする)で使用することに対応する。このため、試料と対物レンズの先端との距離(ワーキングディスタンス、WD)を短くする必要がある。また、(2)に関しては、スピン偏極度検出器の効率を向上させるだけではなく、試料からの2次電子をロスなく、かつその電子スピン方向の分散を極力抑えてスピン偏極度検出器へ伝送する必要がある。2次電子をロスなく、またスピン方向の分散を極力抑えて伝送するには、2次電子光学系の先端部を試料近傍に近づける必要がある。
しかし、WDを短くすることはプローブ径を縮小することに対応し、これと2次電子光学系先端部を試料に近づけることは相容れない。そのため、これまで通常のSEMの分解能に達することができなかった。現在、5nmの分解能を達成したスピンSEMのWDは12mmである。この12mmの空間に2次電子をスピン偏極度検出器へ導くための電子光学系が挿入されている。この方式は試料をレンズ磁界の外に置くので、アウトレンズ方式と呼ぶことができる。
一方、通常の高分解能SEMではWDを短くするため、磁界レンズの磁界中に試料を挿入したインレンズ方式を採用しており、各社から製品化されている。インレンズ方式の詳細は例えば、特許文献1,2などに記載されている。この方式では対物レンズの焦点距離はアウトレンズ方式より短くなり、数mm程度となる。このとき磁界レンズの球面収差係数、色収差係数は数mm程度となり、例えば、日立製作所製のS―5200型走査電子顕微鏡ではインレンズ方式と高輝度電界放出電子銃の組み合わせでプローブ電子線のエネルギーが30keVで0.5nm以下の分解能を実現している。
特公平6−46556 特願平11−242942 JapaneseJournal of Applied Physics、23、L187(1984)、 小池、早川 JapaneseJournal of Applied Physics、40、L1264(2001)、孝橋、小池
しかしながら、従来、スピンSEMにインレンズ方式は採用されていない。その大きな理由は、次の点にある。
(1)磁性体試料にレンズ磁界が印加されるため、観察対象である磁性体試料の磁化分布が変化する可能性がある(破壊試験となる)。
(2)レンズ磁界中を通して2次電子をスピン検出器へ導くとき、2次電子スピンの方向に分散が起こり、検出信号であるスピン偏極度が減少してしまう。
つまり、電子スピンは磁界中で歳差運動によってその角度を変える。レンズ磁界は光軸に対して対称にその磁界方向、強度を変えるので、その磁界中のいろいろな軌道を通る2次電子は、軌道ごとにスピンの回転方向が異なる。そのため、2次電子全体としてスピン方向の分散が大きくなり、偏極ベクトルの大きさが減少することになる。
上記(1)に関しては、レンズ磁界が印加されても磁化分布が変わらない硬磁性材料を観察対象とする場合は、回避することができる。例えば、磁気記録媒体、永久磁石などが硬磁性材料にあたる。しかし、上述したように、磁気記録媒体等のような磁性体に高分解能磁化分布計測が求められているのである。また、上記(2)に関しては、解決策は提案されていない。
本発明が解決しようとする課題は、磁性体試料表面の磁化分布を高倍率で観察できる走査電子顕微鏡を提供することにある。
本発明は、試料を磁界レンズ又は静電レンズ中に設置するインレンズ方式のスピン走査電子顕微鏡を対象とし、2次電子のスピン方向の分散を極力抑えて2次電子をスピン偏極度の検出手段へ導くことにより、磁性体試料表面の磁化分布を高倍率で観察するようにしたことを特徴とする。
具体的な本発明の走査電子顕微鏡は、電子源と、磁界レンズを含んで構成され前記磁界レンズの磁界中に設置された試料に前記電子源から放出される電子線を収束させて照射する電子線収束手段と、前記電子線を前記試料上に2次元走査する電子線走査手段と、前記試料から放出される2次電子を前記電子線の逆方向に導いて結像させる2次電子光学系と、該2次電子光学系により導かれた2次電子のスピン偏極度を検出する検出手段とを備えてなることを特徴とする。
すなわち、試料から放出される2次電子は、磁界レンズが形成する磁束線周りをスピン運動しながら電子線と逆方向に移動して2次電子光学系に導かれる。この2次電子光学系は、放出2次電子を結像させるレンズ系であるから、少なくとも結像位置に達するまでに磁界レンズの磁界が弱まり、スピンの分散を抑えることができるのである。
この場合において、スピン偏極度の検出手段が電子線の光軸から離れた位置に配置され、2次電子光学系を通った2次電子をスピン偏極度の検出手段に導く偏向手段を電子線の光軸上に設けることが好ましい。また、2次電子光学系は、少なくとも2個以上の静電レンズを有して形成され、偏向手段は少なくとも1個以上の静電偏向器を有して形成される。あるいは、2次電子光学系は、少なくとも2個以上の静電レンズを有して形成され、偏向手段は少なくとも1個以上のウィーンフィルターを有して形成される。
また、2次電子光学系の2次電子通路を磁界レンズの磁界から遮蔽する磁気シールドを、磁界レンズのポールピースから離れた位置に配置することができる。なお、電子線収束手段は、1個以上の磁界レンズと、1個以上の静電レンズとを有して構成することができる。
上記において、本発明を試料を磁界レンズの中に設置する構成の走査電子顕微鏡に適用したが、これに代えて、静電レンズの電界中に試料を設置する走査電子顕微鏡にも適用することができる。
本発明によれば、空間分解能の高い磁化分布像を得ることができる。また、2次電子の検出効率を通常のインレンズ方式の走査電子顕微鏡の2次電子検出よりも向上させることが可能となる。さらに、磁気シールドを付加したものによれば、磁界レンズ単独で電子線を収束するよりも電子線のプローブ径を縮小することができる。
ここで、本発明の原理について図2〜図4を用いて説明する。まず、2次電子のスピン方向の分散を極力抑えて2次電子をスピン偏極度の検出器へ導くことの一番大きな問題は、磁界レンズの強い磁界中を2次電子が通過するときである。2次電子取り込み光学系を静電レンズで構成すると、2次電子スピンが回転するのは磁界レンズの磁界中のみである。そこで、レンズ磁界中の2次電子の振る舞いに焦点をあてて説明する。いま、磁束密度ベクトルB、電界ベクトルE内に質量mの電子が速度vで運動するとき、電子と電子スピンsの運動方程式は、次式の数1、数2で表せる。
Figure 2005093106
Figure 2005093106
数2を電子の軌道に沿って積分することによって、スピンsの運動を追跡することができる。試料から磁束密度Bが十分小さい領域まで達したときのスピンsは、次式の数3で求めることができる。ここで、積分は電子の軌道に沿って行うものとする。
Figure 2005093106
2次電子スピン方向の分散を極力抑えて2次電子をスピン偏極度の検出器に導くには、
各電子の軌道において数3の値がほぼ同じになればよい。通常使用される磁界レンズの磁界分布は軸対称であり、光軸をz軸とすると主な成分はz成分である。磁界レンズのポールピース中心付近での磁界の絶対値は光軸上が小さく、光軸から離れるにしたがって大きくなる。このため、数3を一定値に近づけるには、できるだけ電子軌道の直径を小さくした状態で、レンズ磁界中を通過させ、試料上のイメージを光軸上に結像する必要がある。しかし、現状では、理論的に最適解を導出することはできない。そこで、試行錯誤法にて2次電子光学系を設計する必要がある。
そこで、図2に試料1から放出される2次電子軌道の模式図を示してさらに検討する。ここで、試料1の周りにはレンズ磁界が印加され、2次電子は電界によって図において上方に加速されるものとする。試料1上の光軸(電子ビーム軸)2の方向に放出された電子はらせん運動をしながら上方へ運動し、その軌跡は軌道3で表されている。また、光軸2から離れた場所より放出された電子の軌道4は、放出直後は軌道3と同様のらせん軌道を描くが、上方に行くにしたがって光軸2から離れていく。これは、磁界レンズからの磁束線5が光軸位置では光軸に平行であるが、光軸位置から離れると上方へ行くにしたがって傾くことによる。
図3に、走査電子顕微鏡の試料周りの磁界レンズ及び2次電子光学系の構成断面図を示す。図示のように、磁界レンズ7及び2次電子光学系8は、いずれも光軸2に対して軸対称に形成されている。2次電子光学系8は、円筒形状の第1電極9、第2電極10、第3電極11で構成されており、それぞれ第1電源12、第2電源13、第3電源14から、例えば1kV、7kV、1kVの電位が与えられている。試料6は接地電位である。試料6と第1電極9で静電レンズが構成され、第1電極9、第2電極10、第3電極11でアインツェルレンズが構成されている。
図3の装置を用いて2次電子を放出させたときの2次電子の軌道を、図4を用いて説明する。図4(a)に2次電子光学系8の電極9、10、11の位置を示し、同図(b)、(c)に2次電子の軌道15を示す。同図(b)は、光軸2をz軸、試料面をxy面とし、光軸2上からx方向、y方向に0°、±20°、±40°、±60°、±80°傾けて2次電子を放出したときの軌道である。また、同図(c)は、2次電子の放出位置を、光軸2からx軸方向に0.1mm離れた位置にしたときの軌道であり、その他の条件は同図(b)と同じである。2次電子の初期エネルギーは3eVである。磁界レンズは30keVのプローブ電子線を収束するように励磁されており、試料上でのプローブ径は0.53nmである。試料の光軸上から出射される2次電子は、第1電極9の電位によって上方へ加速され、さらに磁界レンズ7の磁界によって、らせん運動をしながら電極9、10、11内に取り込まれる。磁界レンズ7の磁界は、第1電極9内で試料から離れるにしたがって急激に減少し、軌道15は第1電極9を出るときにはらせん半径が広がっていく。また、第1電極9から第2電極10に向かうにしたがって、アインツェルレンズのレンズ作用によって、軌道は収束し、第3電極11内で結像する。図では像面16を点線で示している。像面16上での2次電子のビーム径は15μmであり、開き角は0.84°以内である。このとき、試料上x方向を向いていた電子スピンは、像面16において5回転+18.1°回転する。スピンの分散は10.7°である。このときスピン偏極度検出器の検出信号の減少は1−cos10.7°=1.7%となり、ほとんど画像の劣化は問題とならない。光軸から0.1mm離れたところから放出された2次電子の軌道は図4(c)のような軌道を描き像面16上に結像する。このときの軌道は光軸上から放出された2次電子軌道と同様にらせん軌道を描き、最終的に光軸から0.43mm離れたところで結像し、かつ光軸と2.2°の角度を持って像面16に入射する。像面16上での2次電子のビーム径は19μmであり、開き角は0.86°以内である。このとき試料上のx方向を向いて放出したスピンは、像面16において5回転+17.9°回転し、スピンの分散は10.7°である。スピンの回転角、分散は光軸上から放出された2次電子の回転角、分散とほぼ同じであり、検出信号の減少も問題とならない。像面16以降では電子スピンを回転する磁界は存在しないので、軌道のみに注意を払い、2次電子をスピン偏極度の検出器まで伝送すればよい。このスピン偏極度の検出器までの伝送は、非特許文献2に記載の方法で行うことができる。
このように、2次電子光学系8を適切に設計することによって、2次電子の軌道及びスピンの分散を極力抑えて、試料より2次電子を取り出し、スピン偏極度の検出器へ伝送することができる。なお、上述の例では、プローブ電子線のエネルギーが30keVでプローブ径0.53nmとなり、高分解能で試料面上の磁化分布を観察することが可能となる。
本発明の実施例1について、図1を参照して説明する。図1は走査電子顕微鏡の断面図を模式的にあらわしたものであり、試料6周りの磁界レンズ7及び2次電子光学系8の構成は図3に示したものと同一である。図示のように、チップ17から放出される電子線の光軸上に、第1陽極18と第2陽極19とからバトラーレンズ20と、コンデンサーレンズ21と、対物レンズアパーチャー22と、走査コイル23と、球面ディフレクター25と、アパーチャー24が順次配置されている。2次電子光学系8は、アパーチャー24の試料6側に配置されている。2次電子光学系8を構成する円筒形状の第1電極9の一端が試料6に近接させて配置され、第2電極10と第3電極11はアパーチャー24側に順次配列されている。磁界レンズ7は、試料6の表面近傍にレンズ磁界を形成するように配置されている。
このように構成される走査電子顕微鏡の特徴構成について、次に動作とともに説明する。まず、チップ17と第1陽極18との間に電圧を印加することによって、チップ17からから電子線が放射される。放射された電子線は、バトラーレンズ20とコンデンサーレンズ21を通過し、それらによって電子線の径、開き角などが整形される。次いで、電子線は対物レンズアパーチャー22を通過した後、最終的に対物レンズである磁界レンズ7によって試料6上に収束される。本実施例では、プローブ電子線が30keVのときに、プローブ径はそれぞれ0.53nmである。試料6に入射するプローブ電子線は走査コイル23により偏向を受け、試料6上を2次元的に走査される。ここまでの動作は、従来の走査電子顕微鏡と同様である。
試料6から放出された2次電子は2次電子光学系8に取り込まれる。つまり、プローブ電子線の方向に対して逆方向に取り出される。2次電子光学系8は第1電極9、第2電極10、第3電極11より構成されており、第1電源12、第2電源13、第3電源14によって、それぞれ1kV、7kV、1kVの電位が印加されている。接地電位の試料6と第1電極9で静電レンズ、第1電極9から第3電極11でアインツェルレンズが形成されている。これら静電レンズ、アインツェルレンズとレンズ磁界によって、試料6上の1点から出射した2次電子の軌道は、図4(b)で示した軌道と同様の軌道を描き、第3電極11近傍で1点に収束する。すなわち、試料上の各点が第3電極11の出口近傍のアパーチャー24の面上に結像される。このアパーチャー24を通ったほぼ1keVのエネルギーをもった2次電子は球面ディフレクター25によって、90°偏向させられ、アパーチャー24面上の像は球面ディフレクター25出口に結像する。この像はさらにスピン検出光学系28によって伝送され、最終的にスピン偏極度検出器30に受け渡される。スピン偏極度検出器30は、例えばモット検出器、散漫散乱検出器等(外村彰編「電子顕微鏡技術」(丸善株式会社1989年)6章参照)等を適用でき、電子線のスピン偏極ベクトルの2成分を同時に検出することが可能である。
しかし、これら周知のスピン偏極度検出器は、光軸方向のスピン偏極ベクトル成分を検出することができない。そこで、本実施例では、スピン偏極ベクトル成分を検出するために、スピン回転器29(ウィーンフィルター)をスピン検出光学系28内に設置している。スピン回転器29の一例は、公知文献(T. Kohashi et. al.、 Review of Scientific Instruments、 66、 5537
(1995))に記載されている。一方、球面ディフレクター25にはプローブ電子線が通過できるように垂直に穴が貫通している。プローブ電子線は、30keVであり、2次電子のエネルギー1keVに対して十分大きいので、球面ディフレクター25内での偏向は微小である。ただし、この偏向を補正するため、走査コイル23によって逆方向に偏向させる必要がある。また、球面ディフレクター25には電源26及び電源27が接続されており、内側球面25a、外側球面25bのそれぞれに独立に電位を印加している。
試料面と平行なスピンをもつ2次電子がこの2次電子光学系8を通過する場合、アパーチャー24面上で、電子スピンの分散は約11°となる。この分散による検出信号の劣化は1−cos11°=1.8パーセントであるから問題とはならない。また、球面ディフレクター25、スピン検出光学系28による2次電子の伝送は、磁界がほとんどないところでの伝送なので、スピンの分散は問題とならない。このため、2次電子のスピン偏極度をスピン偏極度検出器30で検出することができ、その出力信号をプローブ電子線の試料面上での走査と同期して走査電子顕微鏡制御系に取り込み、図示していないモニター上に表示することによって、試料面上の磁化分布像を得ることができる。このときの顕微鏡の分解能は0.5nm程度を期待することができる。試料から放出する2次電子のスピンの方向が垂直の場合は、レンズ磁界とスピンの方向が平行なので、スピンの歳差運動によるスピンの分散はほとんどおこらない。このため、スピン偏極度検出器30の検出信号の劣化はほとんどない。
上述したように、本実施例1によれば、試料上の磁化分布を0.5nm程度の分解能で観察することが可能となる。また、通常走査電子顕微鏡で使用されている電子検出器をスピン検出光学系28内に挿入することによって、試料からの2次電子をほとんど損失なく電子検出器で検出することが可能である。このため、通常の2次電子像においてもSN比の高い像を得ることが可能である。
本発明の実施例2を図5に示す。図5は走査電子顕微鏡の断面図を模式的にあらわしたものであり、図1の実施例の2次電子偏向の球面ディフレクター25に代えて、ウィーンフィルター31を用いた点が異なる。ウィーンフィルター31は、電界と磁界を光軸に対して垂直に印加し、電界Eと磁界Bも図に示すように互いに垂直に印加するようになっている。図では、電界を印加するための電界用電源32と磁界を印加するための磁界用電源33をウィーンフィルター31に接続している。印加する電界と磁界はプローブ電子線(例えばエネルギー30keV)がウィーンフィルター31内を直進するようにウィーン条件を満足するように印加されている。この条件のもとでは、1keVに加速された2次電子は直進することはできず、偏向することになる。このとき、偏向角は2次電子のエネルギー、電界、磁界の強さ、ウィーンフィルター31の光軸方向の長さで決まる。2次電子のスピンの方向を90°偏向する必要はないので、ここでは90°以下の偏向に抑えている。偏向角が小さい場合、ウィーンフィルター31に印加する電界、磁界を小さくすることができ、ウィーンフィルター31による2次電子軌道、スピンの両分散を小さく抑えることができる。ウィーンフィルター31内には磁界が印加されるので、そこでは2次電子のスピンは回転することになる。ただし、一様磁界なので、またその偏向角も小さくでき、2次電子のスピン方向の分散に大きな影響は与えない。
なお、試料からの2次電子をウィーンフィルター31へ導くまでは、実施例1と同様であり、またウィーンフィルター31内での2次電子軌道、スピンの両分散を小さく抑えることができるので、スピン偏極度検出器の検出信号の劣化を抑えることができる。これにより、実施例1と同様に、高分解能で試料表面の磁化分布を計測することが可能となる。
本発明の実施例3を図6に示す。図6は走査電子顕微鏡の断面図を模式的にあらわしたものであり、図1の実施例と同様であるが、2次電子偏向の球面ディフレクター25に代えて、磁界ディフレクター34を使用している点が相違する。本実施例では、磁界の印加を電磁石で行うことため、磁界ディフレクター34に電源35が接続されている。この磁界ディフレクター34は一様の磁界Bを図のように光軸に対して垂直に印加している。磁界ディフレクター34の内部では、プローブ電子線も2次電子もローレンツ力によって、偏向を受ける。ただし、プローブ電子線のエネルギーを30keV、2次電子のエネルギーを1keVとすると、その偏向角は異なる。このため、チップ17、第1陽極18、第2陽極19、コンデンサーレンズ21、対物レンズアパーチャー22、走査コイル23の光軸は、偏向角に合わせてあらかじめ傾けて配置している。また、スピン検出光学系28、スピン回転器29、スピン偏極度検出器30も同様に2次電子の偏向角に合わせて傾けて配置している。本実施例では磁界ディフレクター34内での2次電子の偏向角を小さくし(光軸からの偏向角:90°以下)、ディフレクター内部での2次電子軌道、スピンの分散を極力抑えている。
また、本実施例では、試料6の電位を電源36によって、任意に与えることができるようにしている。試料6を接地電位にした場合、プローブ電子線のエネルギーを決めるとチップ電位が一義的に決まってしまうため、最適条件で電子銃を動作できなくなってしまう。試料6に任意に電位を印加できれば、チップ電位を任意に設定でき、電子銃を最適条件で動作させることができる。
また、試料からの2次電子を磁界ディフレクター34へ導くまでは、実施例1と同様であり、また磁界ディフレクター34内での2次電子軌道、スピンの両分散を小さく抑えることができるので、スピン偏極度検出器30の検出信号の劣化を抑えることができる。したがって、本実施例によれば、実施例1と同様に、高分解能で試料表面の磁化分布を計測することが可能となる。
本発明の実施例4の特徴部の断面図を図7〜図9に示す。図7の実施例は、磁界レンズ7の磁界から2次電子光学系8を磁気遮蔽する磁気シールド37を設けたこと、及び2次電子光学系8に加えて、電子源側に円筒状の第4電極38と第5電極39を配置し、これらと第3電極11とからアインツェルレンズは構成したことを特徴とする。その他の部分は実施例1〜3と同じに構成することができる。
つまり、本実施例は、2次電子のスピン分散を極力抑えるため、磁気シールド37を設置したものである。磁界レンズ7のギャップ内の磁界は、プローブ電子線を収束するために必要であるが、ギャップから離れた2次電子の通過する領域では、磁界は2次電子のスピンを回転させるので不必要なものである。そこで、磁界レンズギャップから離れた領域の2次電子光学系8を包囲して、円筒状の磁気シールド37を配置している。図8の実施例は、磁気レンズ7の形状に合わせて、光軸周りの中心部を下に窪ませた円板状の磁気シールド41を配置している。また、図9の実施例は、光軸周りの中心部を上に盛り上げ帽子状の磁気シールド42を配置している。
このような磁気シールドを設けることにより、磁気シールド部分での2次電子軌道、及びスピンが磁界から受ける影響を低減することができる。さらに、磁気シールドはプローブ径を縮小する効果もある。プローブ電子線のエネルギーが30keV、10keVのときのプローブ径0.534nm、1.05nmが、例えば図8の磁気シールド41を付加することによって、0.505nm、0.873nmとプローブ径が縮小する。
また、2次電子光学系にアインツェルレンズ40を付加することにより、2次電子光学系で形成された試料上の像をさらに上方に像を形成することができる。これにより、アインツェルレンズ40の倍率を調整し、後流側のディフレクターに最適な条件で2次電子を入射できるようにする。その結果、ディフレクターによる2次電子軌道、スピンの分散を他の実施例よりもさらに小さくすることが可能となる。
本発明の実施例5の特徴部の断面図を図10に示す。図10の実施例は、実施例1にプローブ電子線を収束するための静電レンズ43を組み込んだものである。静電レンズ43は第1電極44、第2電極45、第3電極46で構成されており、それぞれ第1電源47、第2電源48、第3電源49により独立に電位を印加できるようになっている。この静電レンズ43と磁界レンズの収束作用によって、プローブ電子線を収束する。本実施例で磁界レンズ7が発生する磁界は磁界レンズ単独でプローブ電子線を収束する場合の磁界と比べて減少する。このため、2次電子に与える磁界の効果が磁界レンズ単独で使用する場合より小さくすることができる。すなわち、2次電子軌道、スピンの分散を抑えることができる。
静電レンズ43に印加する電位を調整することで、2次電子を静電レンズ43上方に引き出すことができる。引き出された2次電子は2次電子光学系でさらに伝送されることになる。したがって、実施例1と同様に高分解能に試料表面の磁化分布を計測することが可能となる。
本発明に係る一実施例の走査電子顕微鏡の模式断面図である。 本発明の原理を説明するための試料から放出される2次電子軌道を表す模式図である。 本発明に係る走査電子顕微鏡の試料周りの構成を示す模式断面図である。 図3に示す走査電子顕微鏡の試料周りの構成に基づいて計算した2次電子軌道を説明する図である。 本発明に係る他の実施例の走査電子顕微鏡の特徴部の模式断面図である。 本発明に係る他の実施例の走査電子顕微鏡の特徴部の模式断面図である。 本発明に係る走査電子顕微鏡の2次電子光学系の他の実施例及びその周りに磁気シールドを設けた実施例の模式断面図である。 本発明に係る走査電子顕微鏡の2次電子光学系の他の実施例及びその周りに磁気シールドを設けた実施例の模式断面図である。 本発明に係る走査電子顕微鏡の2次電子光学系の他の実施例及びその周りに磁気シールドを設けた実施例の模式断面図である。 本発明に係る走査電子顕微鏡の2次電子光学系と磁気レンズとの間に静電レンズを設けた実施例の模式断面図である。
符号の説明
6 試料
7 磁界レンズ
8 2次電子光学系
9 第1電極
10 第2電極
11 第3電極
12 第1電源
13 第2電源
14 第3電源
17 チップ
20 バトラーレンズ
21 コンデンサーレンズ
22 対物レンズアパーチャー
23 走査コイル
24 アパーチャー
25 球面ディフレクター
26、27 電源
28 スピン検出光学系
29 スピン回転器
30 スピン偏極度検出器

Claims (7)

  1. 電子源と、磁界レンズを含んで構成され前記磁界レンズの磁界中に設置された試料に前記電子源から放出される電子線を収束させて照射する電子線収束手段と、前記電子線を前記試料上に2次元走査する電子線走査手段と、前記試料から放出される2次電子を前記電子線の逆方向に導いて結像させる2次電子光学系と、該2次電子光学系により導かれた2次電子のスピン偏極度を検出する検出手段とを備えてなる走査電子顕微鏡。
  2. 前記検出手段が前記電子線の光軸から離れた位置に配置され、前記2次電子光学系を通った2次電子を前記スピン偏極度の検出手段に導く偏向手段を前記電子線の光軸上に設けたことを特徴とする請求項1に記載の走査電子顕微鏡。
  3. 前記2次電子光学系は、少なくとも2個以上の静電レンズを有して形成され、前記偏向手段は少なくとも1個以上の静電偏向器を有して形成されることを特徴とする請求項2に記載の走査電子顕微鏡。
  4. 前記2次電子光学系は、少なくとも2個以上の静電レンズを有して形成され、前記偏向手段は少なくとも1個以上のウィーンフィルターを有して形成されることを特徴とする請求項2に記載の走査電子顕微鏡。
  5. 前記2次電子光学系の2次電子通路を前記磁界レンズの磁界から遮蔽する磁気シールドを、前記磁界レンズのポールピースから離れた位置に配置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の走査電子顕微鏡。
  6. 前記電子線収束手段は、1個以上の磁界レンズと、1個以上の静電レンズとを有して構成されてなる請求項1に記載の走査電子顕微鏡。
  7. 電子源と、静電レンズの電界中に設置された試料に前記電子源から放出される電子線を収束させて照射する電子線収束手段と、前記電子線を前記試料上に2次元走査する電子線走査手段と、前記試料から放出される2次電子を前記電子線の逆方向に導いて結像させる2次電子光学系と、該2次電子光学系により導かれた2次電子のスピン偏極度を検出する検出手段とを備えてなる走査電子顕微鏡。
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