JP2005092984A - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

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【課題】高密度記録が達成できるとともに、高度な走行性及び耐久性を発揮できる磁気記録媒体の製法を提供する。
【解決手段】可撓性支持体の表面に磁性層が形成されてなる磁気記録媒体の製法。連続走行する帯状の可撓性支持体Wの表面に、放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液F1を塗布し、未乾燥の第1の塗布液の上に磁性体を含む第2の塗布液F2を塗布する。
【選択図】 図1

Description

本発明は磁気記録媒体の製造方法に係り、特に、ガイドローラなどの走行案内手段により支持されて連続走行する可撓性支持体上に磁気記録層を塗布することにより製造される磁気記録媒体の製造方法に関する。
近年、コンピューターの小型化、情報処理能力の増大と相まって、記録装置の大容量化、小型化の要求が強くなっている。これに伴い、記録媒体の記録容量の向上が強く要求されている。このような磁気記録媒体、特に磁気テープにあっては、安定な記録・再生を維持するためには従来よりも更に高度な走行性及び耐久性が要求される。
塗布型の磁気記録媒体において、記録密度と走行耐久性と改善するためには、支持体表面の表面粗さを向上させることが重要である。すなわち、C/N比を向上させるのには、支持体の表面を平滑にするのが効果的である。また、支持体表面にいわゆる「フィッシュアイ」と称される微小な突起が存在すると、これにより磁性層が影響を受け、ドロップアウトの悪化となる。すなわち、ドロップアウトの低減には、支持体表面の微小な突起を減少させるのが効果的である。
このような問題点に鑑み、本出願人等により、各種の提案がなされており(特許文献1、2等参照)、所定の効果が得られている。このうち、特許文献1は、支持体表面に平滑化層を形成する構成のものである。特許文献2は、非磁性の下層に放射線硬化樹脂を使用する構成のものである。
特開2003−132522号公報 特開2001−84553号公報
しかしながら、上記のような従来の技術においても、問題点が完全には解消されていないのが現状である。すなわち、特許文献1に記載の提案のように、支持体表面を平滑化した場合には、後工程において支持体同士が貼り付いてしまい、ハンドリングが困難であるという懸念があった。また、特許文献2に記載の提案のように、磁性層の下層に非磁性の放射線硬化樹脂を含有させる構成では、平滑化の効果が十分には得られなかった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、高密度記録が達成できるとともに、高度な走行性及び耐久性を発揮できる磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に係る本発明は、前記目的を達成するために、可撓性支持体の表面に磁性層が形成されてなる磁気記録媒体の製造方法において、連続走行する帯状の可撓性支持体の表面に、放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布する工程と、未乾燥の前記第1の塗布液の上に磁性体を含む第2の塗布液を塗布する工程と、を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
本発明によれば、粗面である可撓性支持体の表面に、平滑化層となる放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布し、次いで未乾燥の状態で、磁性体を含む第2の塗布液を塗布する。すなわち、いわゆるウェット・オン・ウェットで塗布膜を形成する。これにより、表面の平滑化が促進され、高度な走行性及び耐久性を発揮できる。また、平滑過ぎる表面状態は、ハンドリングの妨げになるが、本発明によれば、平滑化層となる第1の塗布液層の上に機能層が略同時に形成されるので、表面は適度な粗さになり、高速走行においても安定的なハンドリングが可能となる。
なお、「放射線硬化樹脂」とは、放射線の照射により重合可能な樹脂であり、後述する実施の態様において具体例を列挙する。
請求項2に係る本発明は、可撓性支持体の表面に磁性層が形成されてなる磁気記録媒体の製造方法において、連続走行する帯状の可撓性支持体の表面に、放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布する工程と、未乾燥の前記第1の塗布液の上に磁性体を含まない第3の塗布液を塗布する工程と、塗布後の前記第1及び第3の塗布液を乾燥させる工程と、乾燥後の前記第3の塗布液の上に磁性体を含む第2の塗布液を塗布する工程と、を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
本発明によれば、粗面である可撓性支持体の表面に、平滑化層となる放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布し、次いで未乾燥の状態で、磁性体を含まない第3の塗布液を塗布する。すなわち、いわゆるウェット・オン・ウェットで塗布膜を形成する。これによっても、表面の平滑化が促進され、高度な走行性及び耐久性を発揮できる。また、平滑過ぎる表面状態は、ハンドリングの妨げになるが、本発明によれば、平滑化層となる第1の塗布液層の上に機能層が略同時に形成されるので、表面は適度な粗さになり、高速走行においても安定的なハンドリングが可能となる。
請求項3に係る本発明は、可撓性支持体の表面に磁性層が形成されてなる磁気記録媒体の製造方法において、連続走行する帯状の可撓性支持体の表面に、放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布する工程と、未乾燥の前記第1の塗布液の上に磁性体を含まない第3の塗布液を塗布する工程と、未乾燥の前記第3の塗布液の上に磁性体を含む第2の塗布液を塗布する工程と、を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
本発明によれば、粗面である可撓性支持体の表面に、平滑化層となる放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布し、次いで未乾燥の状態で、磁性体を含まない第3の塗布液を塗布し、次いで未乾燥の状態で、磁性体を含む第2の塗布液を塗布する。すなわち、いわゆるウェット・オン・ウェットで塗布膜を形成する。これによっても、表面の平滑化が促進され、高度な走行性及び耐久性を発揮できる。また、平滑過ぎる表面状態は、ハンドリングの妨げになるが、本発明によれば、平滑化層となる第1の塗布液層の上に機能層が略同時に形成されるので、表面は適度な粗さになり、高速走行においても安定的なハンドリングが可能となる。
本発明において、前記第1の塗布液の乾燥後の厚さを0.1〜1.0μmとなるように調整することが好ましい。このような厚さの平滑化層を設けることにより、本発明の効果が発揮できる。
以上説明したように、請求項1に係る本発明によれば、粗面である可撓性支持体の表面に、平滑化層となる放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布し、次いで未乾燥の状態で、磁性体を含む第2の塗布液を塗布する。すなわち、いわゆるウェット・オン・ウェットで塗布膜を形成する。これにより、表面の平滑化が促進され、高度な走行性及び耐久性を発揮できる。また、平滑過ぎる表面状態は、ハンドリングの妨げになるが、本発明によれば、平滑化層となる第1の塗布液層の上に機能層が略同時に形成されるので、表面は適度な粗さになり、高速走行においても安定的なハンドリングが可能となる。
請求項2に係る本発明によれば、粗面である可撓性支持体の表面に、平滑化層となる放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布し、次いで未乾燥の状態で、磁性体を含まない第3の塗布液を塗布する。すなわち、いわゆるウェット・オン・ウェットで塗布膜を形成する。これによっても、表面の平滑化が促進され、高度な走行性及び耐久性を発揮できる。また、平滑過ぎる表面状態は、ハンドリングの妨げになるが、本発明によれば、平滑化層となる第1の塗布液層の上に機能層が略同時に形成されるので、表面は適度な粗さになり、高速走行においても安定的なハンドリングが可能となる。
請求項3に係る本発明によれば、粗面である可撓性支持体の表面に、平滑化層となる放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布し、次いで未乾燥の状態で、磁性体を含まない第3の塗布液を塗布し、次いで未乾燥の状態で、磁性体を含む第2の塗布液を塗布する。すなわち、いわゆるウェット・オン・ウェットで塗布膜を形成する。これによっても、表面の平滑化が促進され、高度な走行性及び耐久性を発揮できる。また、平滑過ぎる表面状態は、ハンドリングの妨げになるが、本発明によれば、平滑化層となる第1の塗布液層の上に機能層が略同時に形成されるので、表面は適度な粗さになり、高速走行においても安定的なハンドリングが可能となる。
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施態様の例について説明する。図1は、本発明に適用される塗布装置のうち、塗布ヘッド10の一部を切断して示す斜視図である。図2は、塗布ヘッド10の先端部分と可撓性支持体(以下、「ウェブ」と称する)Wとの位置関係を示す概略断面図であり、ウェブWを塗布ヘッド10に対してセットし、塗布液を塗布している状態を示す。
図1及び図2に示されるように、塗布ヘッド10は、2種類の塗布液を供給できるように独立した下記の液供給系が2組設けられている。以下、この2組の液供給系の構成について説明するが、上流側の液供給系については部材番号の後にAを附し、下流側の液供給系については部材番号の後にBを附して区別することとする。
塗布ヘッド10の本体12には、長手方向(ウェブWの幅方向)に延びた液溜め部14A、14Bと、液溜め部14A、14Bと連通するとともに、長手方向(ウェブWの幅方向)においてウェブWと対向し、開口部より塗布液を吐出するスリット16A、16Bと、液溜め部14A、14Bへ塗布液を供給する液供給口18A、18Bと、液溜め部14A、14Bから塗布液を引き抜く液排出口20A、20Bと、を備えている。
液溜め部14A、14Bは、「ポケット」又は「マニホールド」とも称され、その断面が略円形をなし、図1に示されるように、ウェブWの幅方向に略同一の断面形状をもって延長された液溜め機能を有する空洞部である。その有効長さは、通常、塗布幅と同等又は若干長く設定される。液溜め部14A、14Bの貫通した両端開口部は、図1に示されるように、本体12の両端部に取付けられる閉鎖板22、24により閉止されている。なお、既述の液供給口18A、18Bは閉鎖板22に、液排出口20A、20Bは閉鎖板24にそれぞれ設けられている。
スリット16A、16Bは、液溜め部14A、14BからウェブWに向け、通常、0. 01〜0. 5mmの開口幅をもって塗布ヘッド10の本体12内部を貫通し、かつ液溜め部14A、14Bと同じようにウェブWの幅方向に延長された比較的狭隘な流路であり、ウェブWの幅方向の開口長さは塗布幅と略同等に設定される。
なお、スリット16A、16BにおけるウェブWに向けた流路の長さは、塗布液の液組成、物性、供給流量、供給液圧、等の諸条件を考慮して適宜設定し得る。すなわち、塗布液がウェブWの幅方向に均一な流量と液圧分布をもって層流状にスリット16A、16Bから供給できればよい。
次に、スリット16A、16Bの開口部について、図2を参照しながら説明する。スリット16Aは、塗布ヘッド10の本体12(図1参照)のフロントエッジ26と第1ドクターエッジ28とにより形成される。スリット16Bは、塗布ヘッド10の本体12の第1ドクターエッジ28と第2ドクターエッジ30とにより形成される。また、塗布ヘッド10の本体12の上面(ウェブWと対向する面)には、上流側より、フロントエッジ面26a、第1ドクターエッジ面28a、第2ドクターエッジ面30aがそれぞれ形成されている。
図2に示されるように、フロントエッジ面26aは断面が略直線状に、第1ドクターエッジ面28aと第2ドクターエッジ面30aは、断面がそれぞれ所定の局率半径R1、R2の円弧状に形成されている。また、フロントエッジ面26aの後端エッジ部と第1ドクターエッジ面28aの先端エッジ部とには所定の段差が設けられ、第1ドクターエッジ面28aの後端エッジ部と第2ドクターエッジ面30aの先端エッジ部とには所定の段差が設けられ、いずれも塗布液F1、F2の所定厚さの膜が形成できるようになっている。
次に、塗布ヘッド10を主体として、塗布装置の作用について説明する。塗布液F1、F2は、連続的に、かつ一定の流量で送液可能な定量送液手段、一般的には定量ポンプ(図示略)により、図1に示されるように、液供給口18A、18Bを経て液溜め部14A、14Bに供給される。定量ポンプとしては、たとえば、プランジャポンプ、歯車ポンプ等の流量可変の送液手段が好ましく使用できる。
液溜め部14A、14Bに供給された塗布液F1、F2は、所定量がスリット16A、16Bの開口部より吐出され、残りの量が液排出口20A、20Bより排出され、定量送液手段に回収される。このような運転を行うことにより、塗布液F1、F2が液溜め部14A、14B内で著しく滞留することを防止できる。このような運転方法は、揺変性を有しかつ凝集し易い磁性塗布液に対しては極めて有効である。但し、液排出口20A、20Bを具備しない構造であり、スリット16A、16Bの開口部より吐出される所定量を液供給口18A、18Bより供給する構造であってもよい。
ガイドローラなどの走行案内手段(図示略)により支持されて連続走行するウェブWは、ガイドローラ等の各走行案内手段の間で略一定した張力をもって、かつその厚さ方向に若干湾曲可能な状態に装架され、図2に示されるように、塗布ヘッド10の上面(ウェブWと対向する面)に押し付けられながら図の矢印方向に所定速度で移動する。これにより、スリット16Aの開口部より吐出された塗布液F1は、ウェブWの幅方向に均一な流量及び圧力分布をもって所定厚さに塗布される。そして、その下流において、スリット16Bの開口部より吐出された塗布液F2は、ウェブWの幅方向に均一な流量及び圧力分布をもって、塗布液F1の上に所定厚さに塗布される。
次に、本発明に使用される各種材料について説明する。ウェブWとしては、樹脂フィルム、紙(レジンコーティッド紙、合成紙、等)、金属箔(アルミニウムウェブ等)等を使用できる。樹脂フィルの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート等の公知のものが使用できる。これらのうち、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましく使用できる。
これらのウェブWは、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などを行っておいてもよい。ウェブWの表面粗さRaはカットオフ値0.25mmにおいて3〜10nmが好ましい。
磁性層に使用する強磁性粉末としては、特に制限されるべきものではないが、α−Feを主成分とする強磁性金属粉末、六方晶フェライト粉末が好ましい。これらの強磁性金属粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。特に、Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つをα−Fe以外に含むことが好ましく、Co、Y、Alの少なくとも一つを含むことが更に好ましい。
Coの含有量はFeに対して0原子%以上40原子%以下が好ましく、15原子%以上35%以下が更に好ましく、20原子%以上35原子%以下が最も好ましい。Yの含有量は1.5原子%以上12原子%以下が好ましく、3原子%以上10原子%以下が更に好ましく、4原子%以上9原子%以下が最も好ましい。Alは1.5原子%以上12原子%以下が好ましく、3原子%以上10原子%以下が更に好ましく、4原子%以上9原子%以下が最も好ましい。これらの強磁性粉末には、分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。
強磁性粉末には少量の水酸化物、又は酸化物が含まれてもよい。強磁性金属粉末は公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFe又はFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩又はヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。
このようにして得られた強磁性金属粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
磁性層の強磁性金属粉末をBET法による比表面積で表せば45〜80m2 /gが好ましく、50〜70m2 /gが更に好ましい。45m2 /g未満ではノイズが高くなり、一方、80m2 /gを超えると表面性が得にくく、いずれも好ましくない。
磁性層の強磁性金属粉末の結晶子サイズは80〜180Åが好ましく、100〜180Åが更に好ましく、110〜175Åが最も好ましい。強磁性金属粉末の長軸長は0.01μm以上0.15μm以下が好ましく、0.03μm以上0.15μm以下が更に好ましく、0.03μm以上0.12μm以下が最も好ましい。
強磁性金属粉末の針状比は3以上15以下が好ましく、5以上12以下が更に好ましい。強磁性金属粉末の飽和磁化σs は100〜180A・m2 /kgが好ましく、110〜170A・m2 /kgが更に好ましく、125〜160A・m2 /kgが最も好ましい。強磁性金属粉末の抗磁力は160〜280kA/mが好ましく、176〜240kA/mが更に好ましい。
強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが好ましい。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12であるが、6〜10が好ましい。強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性金属粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2 以下になり好ましい。
強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は20容量%以下が好ましく、5容量%以下が更に好ましい。また形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、米粒状、紡錘状のいずれでもかまわない。
強磁性金属粉末自体のSFDは小さい方が好ましく、0.8以下が好ましい。強磁性金属粉末のHcの分布を小さくする必要がある。なお、SFDが0.8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また、磁化反転がシャープでピークシフトも少なくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hcの分布を小さくするためには、強磁性金属粉末においてはゲ−タイトの粒度分布を良くする、焼結を防止するなどの方法がある。
次に六方晶フェライト粉末について述べる。本発明に用いることができる六方晶フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等がある。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、SbーZn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製造方法によっては特有の不純物を含有するものもある。
粒子サイズは六角板径で通常、10〜100nm、好ましくは10〜60nmであり、特に好ましくは10〜50nmである。特にトラック密度を上げるためMRヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があり、板径は40nm以下が好ましいが、10nmより小さいと熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。100nmを越えるとノイズが高く、いずれも高密度磁気記録には向かない。
板状比(板径/板厚)は1〜15が望ましい。好ましくは1〜7である。板状比が小さいと磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、十分な配向性が得られない。15より大きいと粒子間のスタッキングによりノイズが大きくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10〜100m2 /gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。
分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にするとともに、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
磁性体で測定される抗磁力Hcは通常、40〜400kA/m程度まで作成できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明では磁性体のHcは160〜320kA/m程度であるが、好ましくは176〜280kA/mである。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラを越える場合は、176kA/m以上にすることが好ましい。Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。
飽和磁化σsは40〜80A・m2 /kgである。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。
表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物又は水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1〜10%である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
六方晶フェライトの製造方法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製造方法を選ばない。
放射線硬化樹脂としては、脂環式環状構造を有する放射線硬化性化合物が使用できる。すなわち、分子中にアクリロイル基又はメタクロイル基を2つ以上有し、脂環式環状構造を有するものである。脂環式環状構造とはシクロ骨格、ビシクロ骨格、トリシクロ骨格、スピロ骨格、ジスピロ骨格等の骨格を有するものである。具体的な化合物としては以下のようなものが挙げられる。
シクロプロパンジアクリレート、シクロペンタンジアクリレート、シクロヘキサンジアクリレート、シクロブタンジアクリレート、ジメチロールシクロプロパンジアクリレート、ジメチロールシクロペンタンジアクリレート、ジメチロールシクロヘキサンジアクリレート、ジメチロールシクロブタンジアクリレート、シクロプロパンジメタクリレート、シクロペンタンジメタクリレート、シクロヘキサンジメタクリレート、シクロブタンジメタクリレート、ジメチロールシクロプロパンジメタクリレート、ジメチロールシクロペンタンジメタクリレート、ジメチロールシクロヘキサンジメタクリレート、ジメチロールシクロブタンジメタクリレート、ビシクロブタンジアクリレート、ビシクロオクタンジアクリレート、ビシクロノナンジアクリレート、ビシクロウンデカンジアクリレート、ジメチロールビシクロブタンジアクリレート、ジメチロールビシクロオクタンジアクリレート、ジメチロールビシクロノナンジアクリレート、ジメチロールビシクロウンデカンジアクリレート、ビシクロブタンジメタクリレート、ビシクロオクタンジメタクリレート、ビシクロノナンジメタクリレート、ビシクロウンデカンジメタクリレート、ジメチロールビシクロブタンジメタクリレート、ジメチロールビシクロオクタンジメタクリレート、ジメチロールビシクロノナンジメタクリレート、ジメチロールビシクロウンデカンジメタクリレート、トリシクロヘプタンジアクリレート、トリシクロデカンジアクリレート、トリシクロドデカンジアクリレート、トリシクロウンデカンジアクリレート、トリシクロテトラデカンジアクリレート、トリシクロデカントリデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロヘブタンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロドデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロウンデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロテトラデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカントリデカンジアクリレート、トリシクロヘブタンジジメタクリレート、トリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロドデカンジメタクリレート、トリシクロウンデカンジメタクリレート、トリシクロテトラデカンジメタクリレート、トリシクロデカントリデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロへブタンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロドデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロウンデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロテトラデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカントリデカンジメタクリレート、スピロオクタンジアクリレート、スピロヘブタンジアクリレート、スピロデカンジアクリレート、シクロペンタンスピロシクロブタンジアクリレート、シクロヘキサンスピロシクロペンタンジアクリレート、スピロビシクロヘキサンジアクリレート、ジスピロへブタデカンジアクリレート、ジメチロールスピロオクタンジアクリレート、ジメチロールスピロへブタンジアクリレート、ジメチロールスピロデカンジアクリレート、ジメチロールシクロペンタンスピロシクロブタンジアクリレート、ジメチロールシクロヘキサンスピロシクロペンタンジアクリレート、ジメチロールスピロビシクロヘキサンジアクリレート、ジメチロールジスピロへブタデカンジアクリレート、スピロオクタンジメタクリレート、スピロヘブタンジメタクリレート、スピロデカンジメタクリレート、シクロペンタンスピロシクロブタンジメタクリレート、シクロヘキサンスピロシクロペンタンジメタクリレート、スピロビシクロヘキサンジメタクリレート、ジスピロへブタデカンジメタクリレート、ジメチロールスピロオクタンジメタクリレート、ジメチロールスピロへブタンジメタクリレート、ジメチロールスピロデカンジメタクリレート、ジメチロールシクロペンタンスピロシクロブタンジメタクリレート、ジメチロールシクロヘキサンスピロシクロペンタンジメタクリレート、ジメチロールスピロビシクロヘキサンジメタクリレート、ジメチロールジスピロヘブタデカンジメタクリレート。
このうち好ましいものは、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールビシクロオクタンジアクリレート、ジメチロールスピロオクタンジアクリレートであり、特に好ましいものは、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートである。市販されている具体的化合物としては、日本化薬製(商品名:KAYARAD R−684、同 R−604)、共栄社化学製(商品名:ライトアクリレート DCP−A、同 BP4PA)、大日本インキ製(商品名:LUMICURE DCA−200)等がある。
放射線硬化樹脂の分子量は200〜1000が好ましく、200〜500が更に好ましい。放射線硬化樹脂の粘度は、25°Cで5〜200mPa・Sが好ましく、5m〜100mPa・Sが更に好ましい。官能基としては、アクリロイル基が好ましく、分子中に2官能以上あることが好ましく、2官能であることが最も好ましい。
前記化合物のほかに、併用できる放射線硬化型化合物として、1官能のアクリレート、メタクリレート化合物を反応性希釈剤として併用することもできる。好ましい構造は、脂環式炭化水素骨格をもつアクリレート化合物である。この具体的な例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等である。反応性希釈剤の配合量は、前記の2官能以上の化合物に対して10〜100重量%が好ましい。
平滑化層となる放射線硬化樹脂を含む第1の塗布層の硬化後の厚さとしては、0. 1〜1. 0μmが好ましく、0.5〜0.7μmが更に好ましい。膜厚が0.1μm未満では、十分な平滑性が得られず、一方、1.0μm超では、塗膜が乾燥しにくくなり粘着故障を起こすことがあり、いずれも好ましくないからである。
放射線硬化樹脂を含む第1の塗布層の硬化処理は、ウェブWのカレンダー処理後が好ましいが塗布乾燥後でもよい。硬化処理は放射線の照射により行う。使用される放射線としては、電子線や紫外線を用いることができる。紫外線を使用する場合には前記の化合物に光重合開始剤を添加することが必要となる。電子線硬化の場合は重合開始剤が不要であり、透過深さも深いので好ましい。
電子線加速器としてはスキャニング方式、タブルスキャニング方式、又はカーテンビーム方式が採用できるが、好ましいのは、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線の特性としては、加速電圧が30〜1000kVが好ましく、50〜300kVが更に好ましい。吸収線量として0.5〜20Mradが好ましく、2〜10Mradが更に好ましい。加速電圧が30kV未満の場合はエネルギーの透過率が不足し、好ましくない。一方、300kVを超えると重合に使われるエネルギーの効率が低下し、経済性に劣る。
電子線を照射する雰囲気は、窒素パージにより酸素濃度を200ppm以下にすることか好ましい。酸素濃度が高いと、表面近傍の架橋、硬化反応が阻害されるので好ましくない。紫外線光源としては水銀灯が用いられる。水銀灯は20〜240W/cmのランプを用い、速度0.3m/分〜20m/分で使用される。基体と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。
紫外線硬化に用いる光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤が用いられる。詳細は、たとえば「新高分子実験学 第2巻 第6章 光放射線重合」(共立出版1995発行、高分子学会編)に記載されているものを使用できる。具体例としては、アセトフエノン、ベンゾフエノン、アントラキノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンゾインイソブチルケトン、ヒドロキシジメチルフエニルケトン、1−ヒドロキシシクロへキシルフエニルケトン、2−2ジエトキシアセトフエノン、などがある。芳香族ケトンの混合比率は、放射線硬化化合物100重量部に対し0.5〜20重量部が好ましく、2〜15重量部が更に好ましく、3〜10重量部が最も好ましい。
放射線硬化装置、条件などについては「UV・EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000、(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。
次に、第1の塗布層の上に形成される、磁性体を含まない第3の塗布液による非磁性層について説明する。第3の塗布液は実質的に非磁性であればその構成は制限されないが、通常、少なくとも樹脂からなり、好ましくは、粉体、たとえば、無機粉末又は有機粉末が樹脂中に分散されたものが挙げられる。無機粉末は、通常、好ましくは非磁性粉末であるが、この層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末も使用され得る。
非磁性粉末としては、たとえば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としてはたとえばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独又は組合せで使用される。
特に好ましいのは、粒度分布の小ささ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタン、α酸化鉄である。これら非磁性粉末の粒子サイズは0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは、非磁性粉末の粒子サイズが0.01μm〜0.2μmのものである。特に、非磁性粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径0.08μm以下が好ましく、針状金属酸化物である場合は、長軸長が0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下が更に好ましい。
タップ密度は、0.05〜2g/mlが好ましく、0.2〜1.5g/mlが更に好ましい。非磁性粉末の含水率は、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜3質量%が更に好ましく、0.3〜1.5質量%が最も好ましい。
非磁性粉末のpHは通常、2〜11であるが、5.5〜10の間が特に好ましい。非磁性粉末の比表面積は通常1〜100m2 /gであり、5〜80m2 /gが好ましく、10〜70m2 /gが更に好ましい。非磁性粉末の結晶子サイズは0.004μm〜1μmが好ましく、0.04μm〜0.1μmが更に好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は5〜100ml/100gが好ましく、10〜80ml/100gが更に好ましく、20〜60ml/100gが最も好ましい。
非磁性粉末の比重は、1〜12が好ましく、3〜6が更に好ましい。非磁性粉末の形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでもよい。非磁性粉末のモース硬度は4以上、10以下のものが好ましい。非磁性粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/m2 が好ましく、2〜15μmol/ m2 が更に好ましく、3〜8μmol/ m2 が最も好ましい。pHは3〜6の間にあることが好ましい。
これらの非磁性粉末の表面には表面処理が施され、Al2 3 、SiO2 、TiO2 、ZrO2 、SnO2 、Sb2 3 、ZnO、Y2 3 が存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2 3 、SiO2 、TiO2 、ZrO2 であるが、更に好ましいのはAl2 3 、SiO2 、ZrO2 である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後にその表層をシリカで処理する方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
次に、図3により、本発明の他の実施態様の例について説明する。図3は、塗布ヘッド10’の先端部分と可撓性支持体(ウェブ)Wとの位置関係を示す概略断面である。なお、図1及び図2に示される構成と同一、類似の部材については、同様の符号を附し、その詳細な説明を省略する。
図3に示されるように、フロントエッジ26はスリット14Aの出口からウェブWの上流側に位置し、かつ、下流側に配設した第1ドクターエッジ28の先端部よりもウェブW寄りに突出している。そして、ウェブWの塗布面に塗布された第1の塗布液F1によって塗布面とフロントエッジ26との間が液封された状態である。すなわち、本実施態様においては、フロントエッジ26の上流側にて、第1の塗布液F1を適宜掻き落としながら液封している。また、図3において、フロントエッジ26はウェブWに対向するエッジ面全域がウェブW側に膨らむように形成されている。ウェブW側に膨らむ形態としては、一般的には曲率を持った湾曲面が用いられるが、同伴空気の巻き込みを防止できれば、これには限らない。
第1ドクターエッジ28及び第2ドクターエッジ30の先端部は、鋭角な形状であり、フロントエッジ26のスリット14Aの出口部における接線(ウェブWのほぼ通過線)から離れるように位置している。このように、第1ドクターエッジ28はスリット14Aの出口部で最もウェブWに接近しているシャープエッジ状であり、第2ドクターエッジ30はスリット16Aの出口部で最もウェブWに接近しているシャープエッジ状であるので、スリット14A及び16Aより吐出される塗布液F3及びF2は、シャープエッジ先端部で離され、これより下流ではスムージングされていない。この構成の場合、仮に第1ドクターエッジ28又は第2ドクターエッジ30の下流側斜面に塗布液が溢れると、この溢れた塗布液が固化したりしてスジ等の塗布故障となる。
ところが、本実施態様において、塗布ヘッド10の先端部分のスリット14A、16Aの内面、フロントエッジ26のフロントエッジ面26a、及び第2ドクターエッジ30の第2ドクターエッジ面30aの表面粗さRaを所定の値(0.4μmRa以下)にしてあるので、スジは殆ど発生しない。
図3に示される塗布ヘッド10’を備えた塗布装置においては、第1の塗布液F1は、上流側に設けられる図示しない塗布ヘッドによりあらかじめ塗布される。この図示しない塗布手段としては、アプリケーション系では、ローラ塗布方法、ディップ塗布方法、ファウンテン塗布方法等が、計量系では、エアーナイフ塗布方法、ブレード塗布方法、バー塗布方法等が採用できる。また、アプリケーション系と計量系とを同一の部分で担当するものとして、エクストルージョン塗布方法、スライドビード塗布方法、カーテン塗布方法等が採用できる。
以上、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法の実施形態の例について説明したが、本発明は上記実施形態の例に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、本実施形態の例では、液溜め部14A、14Bを円筒状の空洞部としたが、このような円筒状のものに限らず、角形、船底形、等の各種の態様が採用できる。要は、ウェブWの幅方向に液圧分布を均一可能とする形状であれば、特に限定されない。
また、請求項2に記載のように、乾燥後の第3の塗布液の上に磁性体を含む第2の塗布液を塗布する工程を採用する場合には、塗布ヘッド10又は10’の下流に乾燥手段と他の塗布手段を備える態様が採り得る。
更に、塗布ヘッド10又は10’の構成は、エクストルージョン塗布方法に限られず、カーテン塗布方法等も採用できる。
また、エクストルージョン塗布方法を採用する場合であっても、ウェブWを塗布ヘッド10又は10’に押し付ける構成とせず、ウェブWをバックアップローラに巻き掛け、ウェブWの表面と塗布ヘッド10又は10’の先端面との間に所定のクリアランスをもって塗布する構成も採用できる。
次に、本発明の実施例を、比較例と対比して説明する。なお、以下の各例において、「部」の表示は「重量部」 を意味する。以下の各例(実施例1〜実施例3)において、放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液、磁性体を含む第2の塗布液、及び、磁性体を含まない第3の塗布液の組成は以下のように共通とした。
(1)放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液
A液:共栄社化学製(ライトアクリレート BP4PA) 60部
メチルエチルケトン 40部
B液:日本化薬製(KAYARAD R−604) 60部
メチルエチルケトン 40部
(2)磁性体を含む第2の塗布液
強磁性金属微粉末 組成:Fe/Co=80/20 100部
Hc 183kA/m(2300 Oe)
BET法による比表面積 54m2 /g
結晶子サイズ 16. 5nm
表面被覆化合物 Al2 3
粒子サイズ(長軸径) 0. 10μm
針状比 8
σs 150A・m2 /kg(emu/g)
塩化ビニル系重合体 5部
日本ゼオン社製 MR−110
ポリエステルポリウレタン樹脂 3部
ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI=0. 9/2. 6/1
−SO3 Na基 1×10−4eq/g含有
αアルミナ(粒子サイズ 0. 1μm) 5部
カーボンブラック(粒子サイズ 0. 10μm) 0. 5部
ブチルステアレート 1. 5部
ステアリン酸 0. 5部
メチルエチルケトン 90部
シクロヘキサノン 30部
トルエン 60部
(3)磁性体を含まない第3の塗布液
非磁性粉体 α−Fe2 3 80部
平均長軸長 0.1μm
BET法による比表面積 48m2 /g
pH8、 Fe2 3 含有量 90%以上
DBP吸油量 27〜38ml/100g
表面被覆化合物 Al2 3
カーボンブラック 20部
平均1次粒子径 16μm
DBP吸油量 80ml/100g
pH8
BET法による比表面積 250m2 /g
揮発分 1. 5%
塩化ビニル共重合体 10部
日本ゼオン社製 MR−110
ポリエステルポリウレタン樹脂 5部
分子量 3.5万
ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI=0.9/2.6/1
−SO3 Na基 1×10−4eq/g含有
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 100部
シクロヘキサノン 50部
トルエン 50部
上記の(2)及び(3)の液については、各成分を連続ニーダーで混練し、その後スチールボールを使用したボールミルにて分散処理を6時間行った。得られた(2)の分散液にはポリイソシアネートを1部、(3)の分散液にはポリイソシアネートを3部加え、更に、それぞれにメチルエチルケトン、シクロヘキサノンの混合溶媒を40部加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、それぞれ(2)及び(3)の液を調整した。
[実施例1]
図1及び図2に示される塗布ヘッド10を使用して、ウェブWの表面に放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布し、未乾燥の第1の塗布液の上に磁性体を含む第2の塗布液を塗布して磁気記録媒体を製造した。
ウェブWとして、厚さ5.2μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)を使用した。ウェブWの走行速度を250m/分とした。そして、乾燥後の第1の塗布液の層(図4の表では「プレコート層」と表示)の厚さが0. 02〜1. 0μmに、乾燥後の第2の塗布液の層の厚さが0. 15μmにそれぞれなるように、塗布液F1及びF2の吐出量を制御した。ウェブWのカレンダー処理後に、加速電圧150kV、吸収線量5Mradで電子線を照射して第1の塗布液の硬化を促進させた。
比較例として、第1の塗布液を塗布しないものを2例製造し(図4の表では、プレコート層「なし」と表示)、実施例と比較した。このうち、比較例2は、非磁性下層液にA液を30部添加し混合したものを塗布した。
製造後の磁気記録媒体の試料について、表面粗さRaと電磁変換特性を評価した。表面粗さRaは、WYCO社製の測定器(機種名:TOPO−3D)により評価した。電磁変換特性は、DDS4ドライブにて4. 7MHzの単一周波数信号を最適記録電流で記録し、その再生出力を測定し、C/N比を評価した。結果を図4の表に示す。
表の実施例1−1〜1−4は、放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液としてA液を使用したものであり、実施例1−5〜1−8は、B液を使用したものである。結果を見ると、A液とB液の差はそれ程なく、いずれも、第1の塗布液の層(プレコート層)の厚さが増加するにつれ表面粗さRaが低下し(表面が平滑化し)、C/N比が増加(特性が向上)している傾向が読み取れる。
これに対し、比較例1及び2では、実施例と比べ、表面粗さRaが大きく(表面が粗い)、また、C/N比が低い(特性が不良)。以上の結果より、本発明の効果が確認できた。
[実施例2]
図1及び図2に示される塗布ヘッド10を使用して、ウェブWの表面に放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布し、未乾燥の第1の塗布液の上に磁性体を含まない第3の塗布液を塗布し、80〜120°Cの熱風にて塗布膜を乾燥させた後に、バーコーターにて磁性体を含む第2の塗布液を塗布して磁気記録媒体を製造した。
ウェブWとして、厚さ4. 0μmのアラミドを使用した。ウェブWの走行速度を300m/分とした。そして、乾燥後の第1の塗布液の層(図5の表では「プレコート層」と表示)の厚さが0. 02〜1. 0μmに、乾燥後の第3の塗布液の層の厚さが2. 0μmに、乾燥後の第2の塗布液の層の厚さが0. 1μmにそれぞれなるように、塗布液F1及びF2の吐出量、及びバーコーターを制御した。ウェブWのカレンダー処理後に、加速電圧150kV、吸収線量5Mradで電子線を照射して第1の塗布液の硬化を促進させた。
比較例として、第1の塗布液を塗布しないものを2例製造し(図5の表では、プレコート層「なし」と表示)、実施例と比較した。このうち、比較例4は、非磁性下層液にA液を30部添加し混合したものを塗布した。
製造後の磁気記録媒体の試料についての評価は、実施例1と同様に行なった。結果を図5の表に示す。
表の実施例2−1〜2−4は、放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液としてA液を使用したものであり、実施例2−5〜2−8は、B液を使用したものである。結果を見ると、A液とB液の差はそれ程なく、いずれも、第1の塗布液の層(プレコート層)の厚さが増加するにつれ表面粗さRaが低下し(表面が平滑化し)、C/N比が増加(特性が向上)している傾向が読み取れる。
これに対し、比較例3及び4では、実施例と比べ、表面粗さRaが大きく(表面が粗い)、また、C/N比が低い(特性が不良)。以上の結果より、本発明の効果が確認できた。
[実施例3]
バーコーター(図示略)を使用して、ウェブWの表面に放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布し、図3に示される塗布ヘッド10’を使用して、未乾燥の第1の塗布液の上に磁性体を含まない第3の塗布液を塗布し、未乾燥の第3の塗布液の上に磁性体を含む第2の塗布液を塗布して磁気記録媒体を製造した。
ウェブWとして、厚さ6. 0μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)を使用した。ウェブWの走行速度を400m/分とした。そして、乾燥後の第1の塗布液の層(図6の表では「プレコート層」と表示)の厚さが0. 02〜1. 0μmに、乾燥後の第3の塗布液の層の厚さが1. 3μmに、乾燥後の第2の塗布液の層の厚さが0. 18μmにそれぞれなるように、塗布液F1及びF2の吐出量、及びバーコーターを制御した。ウェブWのカレンダー処理後に、加速電圧150kV、吸収線量5Mradで電子線を照射して第1の塗布液の硬化を促進させた。
比較例として、第1の塗布液を塗布しないものを2例製造し(図6の表では、プレコート層「なし」と表示)、実施例と比較した。このうち、比較例6は、非磁性下層液にA液を30部添加し混合したものを塗布した。
製造後の磁気記録媒体の試料についての評価は、実施例1と同様に行なった。結果を図6の表に示す。
表の実施例3−1〜3−4は、放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液としてA液を使用したものであり、実施例3−5〜3−8は、B液を使用したものである。結果を見ると、A液とB液の差はそれ程なく、いずれも、第1の塗布液の層(プレコート層)の厚さが増加するにつれ表面粗さRaが低下し(表面が平滑化し)、C/N比が増加(特性が向上)している傾向が読み取れる。
これに対し、比較例5及び6では、実施例と比べ、表面粗さRaが大きく(表面が粗い)、また、C/N比が低い(特性が不良)。以上の結果より、本発明の効果が確認できた。
塗布装置のうち、塗布ヘッドの一部を切断して示す斜視図 塗布ヘッドの先端部分と可撓性支持体との位置関係を示す概略断面図 塗布ヘッドの先端部分と可撓性支持体との位置関係を示す概略断面図 実施例1の結果を示す表 実施例2の結果を示す表 実施例3の結果を示す表
符号の説明
10…塗布ヘッド、12…本体、14…液溜め部、16…スリット、18…液供給口、20…液排出口、22、24…閉鎖板、26…フロントエッジ、28…第1ドクターエッジ、30…第2ドクターエッジ、F1…第1の塗布液、F2…第2の塗布液、W…可撓性支持体(ウェブ)

Claims (4)

  1. 可撓性支持体の表面に磁性層が形成されてなる磁気記録媒体の製造方法において、
    連続走行する帯状の可撓性支持体の表面に、放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布する工程と、
    未乾燥の前記第1の塗布液の上に磁性体を含む第2の塗布液を塗布する工程と、
    を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  2. 可撓性支持体の表面に磁性層が形成されてなる磁気記録媒体の製造方法において、
    連続走行する帯状の可撓性支持体の表面に、放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布する工程と、
    未乾燥の前記第1の塗布液の上に磁性体を含まない第3の塗布液を塗布する工程と、
    塗布後の前記第1及び第3の塗布液を乾燥させる工程と、
    乾燥後の前記第3の塗布液の上に磁性体を含む第2の塗布液を塗布する工程と、
    を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  3. 可撓性支持体の表面に磁性層が形成されてなる磁気記録媒体の製造方法において、
    連続走行する帯状の可撓性支持体の表面に、放射線硬化樹脂を含む第1の塗布液を塗布する工程と、
    未乾燥の前記第1の塗布液の上に磁性体を含まない第3の塗布液を塗布する工程と、
    未乾燥の前記第3の塗布液の上に磁性体を含む第2の塗布液を塗布する工程と、
    を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  4. 前記第1の塗布液の乾燥後の厚さを0.1〜1.0μmとなるように調整する請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
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