JP2005089517A - 導電性高分子およびそれを用いた固体電解コンデンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】導電性高分子および固体電解コンデンサに関するものであり、高導電率で可撓性に優れた導電性高分子および固体電解コンデンサの低漏れ電流化を実現するものである。
【解決手段】2種以上のドーパントを含ませ、かつそのうちの少なくとも1種が芳香族スルホン酸アニオンとした導電性高分子とすることによって、高い導電率で可撓性に富む導電性高分子を得ることができ、またこの導電性高分子を固体電解コンデンサの固体電解質層4として用いることで低ESR化と低漏れ電流化を実現できる。
【選択図】図1
【解決手段】2種以上のドーパントを含ませ、かつそのうちの少なくとも1種が芳香族スルホン酸アニオンとした導電性高分子とすることによって、高い導電率で可撓性に富む導電性高分子を得ることができ、またこの導電性高分子を固体電解コンデンサの固体電解質層4として用いることで低ESR化と低漏れ電流化を実現できる。
【選択図】図1
Description
本発明は導電性高分子およびそれを用いた各種電子機器に用いられる固体電解コンデンサに関するものである。
近年、導電性高分子は様々な分野に応用されている。例えば電子機器の分野では固体電解コンデンサの固体電解質層として導電性高分子が用いられている。
このような固体電解コンデンサは低い等価直列抵抗(ESR)特性を実現することができることから、電源回路の二次側やパーソナルコンピュータなどのCPU周りに多く用いられ、高周波化に対応したコンデンサとして実用化されてきている。
また、この固体電解コンデンサには漏れ電流というものが存在しており、漏れ電流が大きいと蓄積した電荷が漏れてしまうために漏れ電流はできるだけ小さいことが望ましい。
従来の固体電解コンデンサは弁金属からなる陽極と、この弁金属の上に形成した誘電体被膜と、この誘電体被膜の上に形成された導電性高分子からなる固体電解質層からなる構造を有し、一般には導電性高分子のドーパントには芳香族スルホン酸が単独で用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
また、芳香族スルホン酸以外の酸がドーパントとして用いられているものもあるが、複雑な構造を有していた(例えば、特許文献2参照)。
特開2003−158043号公報
特開平7−70312号公報
しかしながら、上記従来の固体電解コンデンサでは芳香族スルホン酸が単独で用いられているため、芳香族スルホン酸の固定した構造により生成する導電性高分子は柔軟性を持たず、応力により割れが発生し易く、これを固体電解質層として用いた固体電解コンデンサによっては漏れ電流を悪化させるものであった。
また、芳香族以外の酸としてはアダマンタン環やカンファーの構造を持つものが報告されていたが、芳香族と比べてそのスルホ基の求核性が弱いことから、導電性高分子とドーパント間での電荷移動が起こりにくく、芳香族スルホン酸と比べると高い導電性は期待できないものであった。
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、柔軟性に富む導電性高分子を実現するとともに、この導電性高分子を固体電解質層として用いることにより低漏れ電流化を実現した固体電解コンデンサを提供するものである。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
本発明の請求項1に記載の発明は、特に、2種以上のドーパントを含ませ、かつそのうちの少なくとも1種を芳香族スルホン酸アニオンとした導電性高分子であることを特徴としており、これにより、優れた導電性と可撓性を有する導電性高分子を得ることができる。
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、2種以上のドーパントのうちの1種を芳香族スルホン酸以外の酸のアニオンとした請求項1に記載の導電性高分子であることを特徴としており、これにより、芳香族スルホン酸アニオンとのドーパントの組み合わせにより所望の導電性と可撓性を有する導電性高分子を得ることができる。
本発明の請求項3に記載の発明は、特に、芳香族スルホン酸以外の酸のアニオンを脂肪族スルホン酸アニオンとした請求項2に記載の導電性高分子であることを特徴としており、これにより、より低抵抗かつ柔軟性に富んだ導電性高分子を得ることができる。
本発明の請求項4に記載の発明は、特に、導電性高分子をピロールまたはその誘導体を用いて構成した請求項1に記載の導電性高分子であることを特徴としており、これにより、ピロールのフィルム状になりやすい性質のために請求項1の作用に加えて膜厚の均一性に優れた導電性高分子を得ることができる。
本発明の請求項5に記載の発明は、特に、導電性高分子をチオフェンまたはその誘導体を用いて構成した請求項1に記載の導電性高分子であることを特徴としており、これにより、ピロールよりもさらに導電率と耐熱性に優れた導電性高分子を得ることができる。
本発明の請求項6に記載の発明は、特に、弁金属からなる陽極と、この弁金属の上に形成した誘電体被膜と、この誘電体被膜の上に形成された導電性高分子からなる固体電解質層で構成された固体電解コンデンサにおいて、前記導電性高分子を2種以上のドーパントを含ませ、かつそのうちの少なくとも1種を芳香族スルホン酸アニオンとし、この導電性高分子を固体電解質層とした固体電解コンデンサであることを特徴としており、これにより、低ESR特性でLC不良の少ない高信頼性の固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明の請求項7に記載の発明は、特に、2種以上のドーパントのうちの1種を芳香族スルホン酸以外の酸のアニオンとした請求項6に記載の固体電解コンデンサであることを特徴としており、これにより、芳香族スルホン酸とのドーパントの組み合わせで、形状、特性および製造方法に応じて高信頼性設計が可能な固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明の請求項8に記載の発明は、特に、芳香族スルホン酸以外の酸のアニオンを脂肪族スルホン酸アニオンとした請求項7に記載の固体電解コンデンサであることを特徴としており、これにより、より低ESR特性でかつ可撓性に富んだ導電性高分子を得られることから誘電体被膜に対するダメージを低減し、漏れ電流の小さい固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明の請求項9に記載の発明は、特に、導電性高分子をピロールおよびその誘導体を用いて構成した請求項6に記載の固体電解コンデンサであるという特徴を有しており、これにより、膜厚の均一性と導電性に優れた固体電解質層を形成することにより低ESR特性および高信頼性の固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明の請求項10に記載の発明は、特に、導電性高分子をチオフェンおよびその誘導体を用いて構成した請求項6に記載の固体電解コンデンサであるという特徴を有しており、これにより、ピロールよりもさらに導電性と耐熱性に優れた固体電解質を形成することにより低ESR特性および高信頼性の固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明の請求項11に記載の発明は、特に、導電性高分子をピロールまたはその誘導体とチオフェンまたはその誘導体との複合体を用いて構成した請求項6に記載の固体電解コンデンサであることを特徴としており、これにより、設計自由度の高い優れた固体電解質層を得ることができることにより電気特性、信頼性および生産性に優れた固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明の請求項12に記載の発明は、特に、導電性高分子を化学重合で形成した請求項6に記載の固体電解コンデンサであることを特徴としており、これにより、反応系中に様々な化合物を混合することが可能で、所望の特性の固体電解質層を得ることが容易であることから低ESR特性で高信頼性の固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明の請求項13に記載の発明は、特に、導電性高分子を電解重合で形成した請求項6に記載の固体電解コンデンサであることを特徴としており、これにより、反応が電極表面で連続的に起こるため、緻密で導電性に優れた固体電解質層を得ることができることから低ESR特性で高信頼性の固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明の請求項14に記載の発明は、特に、導電性高分子を化学重合と電解重合とで形成した請求項6に記載の固体電解コンデンサであることを特徴としており、これにより、化学重合で望む特性の固体電解質層を電極体内部に形成した後、電解重合で導電性に優れた固体電解質層を形成することにより、生産性に優れた高信頼性の固体電解コンデンサを得ることができる。
本発明の導電性高分子は2種以上のドーパントが含まれ、少なくとも1種が芳香族スルホン酸アニオンであることを特徴としており、導電性に優れ、かつ、ドーパントの組み合わせにより、単独のドーパントを用いた場合と異なる可撓性に優れた導電性高分子を得ることができる。また、この導電性高分子を固体電解質層とした固体電解コンデンサは低ESR化だけでなく低漏れ電流化も可能とするものである。
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1〜5に記載の発明について説明する。
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1〜5に記載の発明について説明する。
一般に、固体電解コンデンサに用いられる導電性高分子はピロールやチオフェンまたはこれらの誘導体を用いて、酸化剤による酸化反応で重合する化学重合あるいは電気化学反応による電解重合で形成される。これらの形成方法はコンデンサ素子に導電性高分子を形成する場合に限らず、導電性高分子単体を合成・評価する場合も同じである。特に導電性高分子の評価をするための試料を作製する場合、化学重合では溶液内のいたるところで反応が起こることから、評価のための導電性高分子フィルムを得ることが難しい。一方、電解重合では溶液内の電極上でのみ反応が起こり、電極板の上に導電性高分子のフィルムを生成させることができることから、その生成した導電性高分子フィルムを用いて特性を評価することが容易である。
従って、本実施の形態1では電解重合で導電性高分子フィルムを作製して評価した。
また、導電性高分子の導電率に影響するのがドーパントであり、導電性高分子とドーパント間での電荷移動が起こることによって導電性が発現する。このドーパントを取り込んだ導電性高分子の溶液を作製する手順について説明する。
まず始めに、所定の量の純水に(表1)に示す組成を有する芳香族スルホン酸の一例であるアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムを溶解させた。
次に、脂肪族スルホン酸の一例である1,2−アルキルオキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウムを(表1)に示す組成になるように添加した。
次に、エタノールを1.8g、ピロールを2.68g、p−ニトロフェノールを0.28gを混合した。ここで、エタノールはピロールの溶液への溶解性を向上させるために加えているものである。
前記のように調整して作製した水溶液中に電極として二枚のニッケル板を接触しないように設置し、二枚のニッケル板間に2.0Vの電圧を20分間印加して電解重合膜を作製した。この電解重合膜は陽極側に作製されていることから、陽極側のニッケル板を洗浄、乾燥して剥離することにより、曲げ試験用の導電性高分子膜のサンプルを得た。また同様に作製したものを乾燥後、ニッケル板上から剥離して導電率測定用のサンプルを得た。
ここで、電解重合時にニッケル板どうしが接触してしまうと、溶液に電流が流れずに電解重合は起こらないので二枚のニッケル板は接触させてはいけない。これを防止するためにニッケル板は厚さ30μm、幅7.5mmのものを70mmの長さだけニッケル表面を露出させ、他の部分はテープを貼って絶縁し、ニッケル露出部のみに導電性高分子が生成するようにした。
また、本実施の形態1では2.0Vの電圧で電解重合を行ったが、これ以外の電圧を印加してもよい。ただし、電圧が高くなりすぎると水の電気分解が激しく起こり、均質な導電性高分子フィルムを得ることが難しくなる。逆に電圧が低すぎると電解重合が起こらなくなる。また用いる装置にもよるが、電圧としては1Vから5V程度の範囲がよい。
さらに、実際の反応は電圧ではなく電位で決まるため、このような反応を見る場合、正確には電極の電位を測定する必要がある。本実施の形態1で電圧を1Vから5Vまで変化させた場合、銀−塩化銀電極を参照電極としたときの陽極電位は0.6Vから2Vである。
また、本実施の形態1では電圧を制御して行っているが、前述したように電位制御でもよく、あるいは電流制御でもよい。電流を制御して電解重合を行えば電流と時間を等しくすれば電気量も等しくなり、水の電気分解などの副反応によるロスが無視できれば導電性高分子の生成量は等しくなる。
ここでは、ドーパントであるアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムのアニオンが芳香族スルホン酸アニオンであり、本実施の形態1ではナトリウム塩を用いているが、アルキルナフタレンスルホン酸を用いてもよい。
また、芳香族スルホン酸以外の酸として、1,2−アルキルオキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウムを用いており、本実施の形態1ではナトリウム塩を用いているが1,2−アルキルオキシカルボニルエタンスルホン酸を用いてもよい。
また、4つのピロール骨格に対して1つのドーパントが結合することも知られており、本実施の形態1ではピロールとドーパントのモル比は4対1にした。
また、本実施の形態1では室温で電解重合を行っているが、低温あるいは高温にしてもよい。特に低温にした場合、溶液の揮発を抑制する面で有利になり、液の寿命を延ばすことができる。ただし、溶液の融点以下にすると溶液が凍り、反応が不安定または起こらなくなるため注意が必要である。また高温にした場合、溶液の揮発が促進されてしまうが反応を速くすることができる。本実施の形態1のように水を溶媒とした場合は0℃から50℃くらいの温度範囲が望ましい。また溶媒として有機合成などでよく用いられるテトラヒドロフランなどを用いれば−100℃程度まで冷却することも可能である。
さらに、電解重合後の洗浄は十分に行った方がよい。洗浄が不十分の場合、生成した導電性高分子フィルムの上に未反応のモノマーやドーパントなどの溶質が付着している可能性があり、表面を汚染するため導電率の測定に影響を及ぼす可能性がある。
次に、乾燥は導電性高分子の分解や脱ドープが起こらない温度範囲で行う必要がある。このとき、できるだけ低い温度で行うことが望ましいがコンデンサを作製する場合の生産性なども考慮すると室温から200℃の範囲が望ましい。
また、生成した導電性高分子の導電率測定にはダイアインスツルメント製のロレスタGPを用いて四探針法で測定した。
次に、曲げ試験は導電性高分子が付着しているニッケル板の両端が90度の角度になるまで曲げて、そのときに導電性高分子に割れが発生するかを観察した。
それぞれの評価結果を(表1)に示す。
(表1)の結果より、2種以上のドーパントを含ませ、少なくとも一種に芳香族スルホン酸アニオンとすることにより柔軟性に富む導電性高分子膜を実現していることが分かる。また、導電率はいずれも同程度の特性を有していることが分かる。
なお、本実施の形態1では芳香族スルホン酸としてアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムを用いているが、これ以外の芳香族スルホン酸およびその誘導体を用いてもよい。芳香族としてはベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ビフェニル、テルフェニル、フラン、ピロール、チオフェン、ピリジンなどの骨格を持つ化合物が一般に用いられるが、ここに挙げた以外でもヒュッケルの(4n+2)π則に従ったπ電子を有する芳香族化合物を用いてもよい。
また、芳香族スルホン酸およびその誘導体のスルホ基は一つである必要はない。スルホ基が二つのジスルホン酸およびその誘導体、スルホ基が三つのトリスルホン酸およびその誘導体、スルホ基が四つのテトラスルホン酸およびその誘導体などでもよい。このようなスルホ基を複数もつ化合物をドーパントに用いた場合、ドーパントによって導電性高分子鎖どうしが架橋されたような構造になることで、機械的強度が向上する。また、複数の箇所でドーピングしているため、脱ドープが起こりにくくなり、耐熱性も向上する。
また、芳香環の上にはスルホ基以外の置換基が存在してもよく、立体的に嵩高い置換基が存在することで脱ドープが抑制されるため、耐熱性の向上が期待できる。立体的に嵩高くない置換基でも水素結合が可能な置換基を持っていれば、水素結合により脱ドープを抑制することができる。また置換基が二重結合やエポキシ基のような反応性部位を持つ場合、その反応性部位どうしを反応させる、あるいは別の化合物を用いて反応性部位を架橋させることで導電性高分子フィルムの強度を向上させることもできる。
また、本実施の形態1では芳香族スルホン酸以外の酸として1,2−アルキルオキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウムを用いているが、これ以外の脂肪族スルホン酸およびその誘導体、リン酸およびリン酸エステル、ポリアクリル酸およびその誘導体、スルホン化された高分子などを用いても同じような効果を得ることができることを確認している。
ただし、導電性高分子に柔軟性を与えるという点から考えると、一般的な可塑剤のような構造を持っている方が望ましい。一般的な可塑剤とはポリ塩化ビニルに添加されるフタル酸ジオクチルのような酸エステル化物が代表的な化合物であり、脂肪族スルホン酸が最も酸エステル化物に近い化学構造を有しているものと考えられる。
また、本実施の形態1では導電性高分子のモノマーとしてピロールを用いているが、ピロール誘導体あるいはチオフェンやその誘導体を用いてもよい。これらの導電性高分子材料を用いることで高柔軟性、高導電性、高耐熱性などの特性を有する導電性高分子を実現することができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2および図1、図2により請求項6〜14に記載の発明を説明する。
次に、本発明の実施の形態2および図1、図2により請求項6〜14に記載の発明を説明する。
図1は本実施の形態における固体電解コンデンサの断面模式図であり、図2は本実施の形態における固体電解コンデンサの特性図である。
図1において1は弁金属、2は誘電体被膜である。この弁金属1としてはタンタル、ニオブ、アルミニウムなどが用いられ、誘電体被膜2はこれら弁金属1の表面をエッチングして多孔質化したり粉末の成型体を焼結するなどして多孔質化することによりその表面を陽極酸化することで形成することができる。
3は絶縁層であり、陽極と陰極を分離し、ショートを防止する役割を持っている。
4は誘電体被膜の上に形成された固体電解質層であり、この固体電解質層4はポリピロールやポリチオフェンあるいはそれらの誘導体などの導電性高分子を化学重合や電解重合によって形成することができる。
この固体電解質層4に実施の形態1で説明した芳香族スルホン酸アニオンと芳香族スルホン酸以外の酸のアニオンをドーパントとして用いた導電性高分子を用いることによって、導電性だけでなく柔軟性などを持った固体電解質層4とすることができる。
5は固体電解質層4の上に形成されたカーボン層であり、6はカーボン層の上に形成された銀ペースト層である。7は陽極である弁金属1に溶接などの方法で接続された端子電極であり、8は陰極である銀ペースト層6に接続された端子電極であり、9は絶縁保護と形状を確保するための外装樹脂である。
次に、本発明の固体電解コンデンサを具体的に説明するが、ここでは弁金属1としてタンタル、固体電解質層4としてポリピロールを用いた。
平均粒子径0.2μmの公称10万CVタンタル粉末を用いて塗料を作製し、5mm×3mmの穴の空いたメタルマスクを用い、厚さ50μmのタンタル箔の上に、前記塗料を片側あたり100μmの厚さで両面に印刷し、乾燥させて電極体を形成した。
この電極体を400℃の不活性ガス雰囲気下で脱脂を行い、1300℃真空中で焼成を行った。
次に、絶縁層3としてタンタル箔との境界部をシリコーンでマスクした後、リン酸水溶液中で12Vの陽極酸化を行い、誘電体被膜2を形成した。
その後、実施の形態1で説明した芳香族スルホン酸の一例であるアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムと脂肪族スルホン酸の一例である1,2−アルキルオキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウムを溶解させてピロール組成になるように調整した水溶液を用いて、化学重合でポリピロールの導電性高分子を形成した後、前記水溶液を用いて電解重合を行い導電性高分子よりなる固体電解質層4を形成した。このピロールを用いることにより、膜厚の均一性と導電性に優れた固体電解質層4を形成することにより低ESR特性および高信頼性の固体電解コンデンサを得ることができる。また化学重合で望む特性の固体電解質層4を電極体内部に形成した後、電解重合で導電性に優れた固体電解質層4を形成することにより、生産性に優れた高信頼性の固体電解コンデンサを得ることができる。
次に、この固体電解質層4の上にカーボンペースト、銀ペーストを用いて、それぞれカーボン層5および銀ペースト層6を塗布形成した。このコンデンサ素子をリードフレームに接続して端子電極7,8を形成し、その後エポキシ樹脂にて樹脂モールド成型によって外装樹脂9を形成した後エージングを施して本発明の固体電解コンデンサのサンプルを得た(実施例1)。
比較例として、1,2−アルキルオキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウムを用いずに溶液を作製し、電解重合を行い同様の操作で固体電解コンデンサのサンプルを得た(比較例1)。この本発明品の実施例1と比較例1の電気特性を(表2)に示す。
(表2)の結果から明らかなように、本発明の固体電解コンデンサはLC特性(漏れ電流特性)において、低い漏れ電流値を示すとともにそのばらつきも小さく安定した性能を有していることが分かる。このLC特性は固体電解コンデンサにおいて重要な性能であり、固体電解コンデンサに定格電圧を印加し、所定の時間後の漏れ電流値を測定することにより得られるものであり、この特性は低いほどあるいは変化しないほど優れた固体電解コンデンサであるといえる。
また、高温寿命試験においても本発明の固体電解コンデンサにはLC不良は発生しなかったが、比較例1ではLC不良が発生した。これらの不良原因は導電性高分子の柔軟性に大きく依存していることが分かっている。
次に、本発明の固体電解コンデンサのESRおよびインピーダンスの周波数特性を図2に示した。図2より、1,2−アルキルオキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウムを加えたことによってのESRおよびインピーダンスの悪化は見られなかった。
なお、本実施の形態2では芳香族スルホン酸としてアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムを用いているが、実施の形態1同様、これ以外の芳香族スルホン酸およびその誘導体を用いてもよい。
また、実施の形態1と同様、芳香族スルホン酸およびその誘導体のスルホ基は一つである必要はない。スルホ基が二つのジスルホン酸およびその誘導体、スルホ基が三つのトリスルホン酸およびその誘導体、スルホ基が四つのテトラスルホン酸およびその誘導体などでもよい。このようなスルホ基を複数もつ化合物をドーパントに用いた場合、ドーパントによって導電性高分子鎖どうしが架橋されたような構造になることで、機械的強度が向上する。
また、複数の箇所でドーピングしているため、脱ドープが起こりにくくなり、耐熱性も向上する。このような導電性高分子を固体電解質層4とすることで、耐熱性の優れた固体電解コンデンサを得ることができる。
また、実施の形態1と同様に芳香環の上にはスルホ基以外の置換基が存在してもよく、立体的に嵩高い置換基が存在することで脱ドープが抑制されるため、耐熱性の向上が期待できる。立体的に嵩高くない置換基でも、水素結合が可能な置換基をもっていれば水素結合により脱ドープを抑制することができる。このような導電性高分子を固体電解質層4とすることで、熱あるいは機械的応力に対して優れた性能を有する固体電解コンデンサを得ることができる。
また、置換基が二重結合やエポキシ基のような反応性部位を持つ場合には、その反応性部位どうしを反応させて、あるいは別の化合物を用いて反応性部位を架橋させることで導電性高分子フィルムの強度を向上させることもできる。このような導電性高分子を固体電解質層4とすることで固体電解コンデンサを組み立て時の外部応力による特性悪化を防ぐことができる。
また、本実施の形態2では芳香族スルホン酸以外の酸として、1,2−アルキルオキシカルボニルエタンスルホン酸ナトリウムを用いているが、これ以外の脂肪族スルホン酸およびその誘導体、リン酸およびリン酸エステル、ポリアクリル酸およびその誘導体、スルホン化された高分子などを用いてもLC不良の発生が少ない固体電解コンデンサを作製できることを確認している。特に芳香族スルホン酸とのドーパントの組み合わせで、形状、特性および製造方法に応じて高信頼性設計が可能な固体電解コンデンサを得ることができる。ただし、導電性高分子に柔軟性を与えるという点から考えると、一般的な可塑剤のような構造を持っている方が望ましい。一般的な可塑剤としてはポリ塩化ビニルに添加されるフタル酸ジオクチルのような酸エステル化物が代表的な化合物であり、可塑剤により柔軟性を持った導電性高分子を固体電解質層4とすることで、誘電体被膜2に対するダメージを低減し、漏れ電流の小さい固体電解コンデンサを得ることができる。
また、本実施の形態2では導電性高分子のモノマーとしてピロールを用いているが、ピロール誘導体あるいはチオフェンやその誘導体を用いてLC不良の発生が少ない固体電解コンデンサを作製できることを確認している。このチオフェンを用いることにより、ピロールよりもさらに導電性と耐熱性に優れた固体電解質層4を形成することにより低ESR特性および高信頼性の固体電解コンデンサを得ることができる。さらに導電性高分子のモノマーとしてのピロールとチオフェンやその誘導体との複合体を用いても同様の効果を実験にて確認しており、このような構成とすることにより設計自由度の高い優れた固体電解質層4を得ることができ、高導電性、高耐熱性、高機械的強度、可溶性などの特性を得ることも可能であり、このような導電性高分子を固体電解質4とすることで固体電解コンデンサの低ESR化、高耐熱化生産の効率化などが可能になる。
また、本実施の形態2では生産性の観点から化学重合と電解重合との両方を併用して固体電解質層4を形成しているが、化学重合または電解重合単独で固体電解質層4を形成してもLC不良の発生が少ない固体電解コンデンサを作製できることを確認している。
特に、化学重合の場合は反応系中に様々な化合物を混合することが可能であり、様々な特性の固体電解質層4を得ることが容易であることから容易に低ESR特性で高信頼性の固体電解コンデンサとすることができる。
また、電解重合の場合は反応が電極表面で連続的に起こるために緻密で導電性に優れた固体電解質層4を得ることができることから化学重合で行うよりも低ESR化を実現することができる。ただし、電解重合を行う場合には誘電体被膜2の表面に導電性を持たせる必要があり、そのために化学重合、あるいは可溶性の導電性高分子や導電性高分子粉末の分散溶液の塗布、あるいは従来のタンタルコンデンサの固体電解質層に用いられていた二酸化マンガンの形状などを行う必要がある。
本発明にかかる導電性高分子は、2種以上のドーパントが含まれ、少なくとも1種が芳香族スルホン酸アニオンであることを特徴としており、導電性に優れ、かつ、ドーパントの組み合わせにより、導電性および可撓性に優れた導電性高分子を得ることができるとともに、この導電性高分子を固体電解質層とした固体電解コンデンサは低ESR化だけでなく低漏れ電流化も可能とし、電源回路の二次側やパーソナルコンピュータなどのCPU周りの高周波応答性と高信頼性を要望されているコンデンサ素子に有用である。
1 弁金属
2 誘電体被膜
3 絶縁層
4 固体電解質層
5 カーボン層
6 銀ペースト層
7 端子電極
8 端子電極
9 外装樹脂
2 誘電体被膜
3 絶縁層
4 固体電解質層
5 カーボン層
6 銀ペースト層
7 端子電極
8 端子電極
9 外装樹脂
Claims (14)
- 2種以上のドーパントを含ませ、かつそのうちの少なくとも1種を芳香族スルホン酸アニオンとした導電性高分子。
- 2種以上のドーパントのうちの1種を芳香族スルホン酸以外の酸のアニオンとした請求項1に記載の導電性高分子。
- 芳香族スルホン酸以外の酸のアニオンを脂肪族スルホン酸アニオンとした請求項2に記載の導電性高分子。
- ピロールまたはその誘導体を用いて構成した請求項1に記載の導電性高分子。
- チオフェンまたはその誘導体を用いて構成した請求項1に記載の導電性高分子。
- 弁金属からなる陽極と、この弁金属の上に形成した誘電体被膜と、この誘電体被膜の上に形成された導電性高分子からなる固体電解質層で構成された固体電解コンデンサにおいて、前記導電性高分子を2種以上のドーパントを含ませ、かつそのうちの少なくとも1種を芳香族スルホン酸アニオンとし、この導電性高分子を固体電解質層とした固体電解コンデンサ。
- 2種以上のドーパントのうちの1種を芳香族スルホン酸以外の酸のアニオンとした請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
- 芳香族スルホン酸以外の酸のアニオンを脂肪族スルホン酸アニオンとした請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性高分子をピロールおよびその誘導体を用いて構成した請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性高分子をチオフェンおよびその誘導体を用いて構成した請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性高分子をピロールまたはその誘導体とチオフェンまたはその誘導体との複合体を用いて構成した請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性高分子を化学重合で形成した請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性高分子を電解重合で形成した請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
- 導電性高分子を化学重合と電解重合とで形成した請求項6に記載の固体電解コンデンサ。
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JP2007067065A (ja) * | 2005-08-30 | 2007-03-15 | Sanyo Electric Co Ltd | コンデンサおよびその製造方法 |
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- 2003-09-12 JP JP2003321334A patent/JP2005089517A/ja active Pending
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