JP2005087350A - 血液適合性に優れた血液浄化膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】 親水性高分子を含み、血液と接触して使用した際の性能保持性、安全性に優れた中空糸型血液浄化膜、すなわち、血液適合性、安全性、性能保持性を同時に満足した中空糸型血液浄化膜を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の血液浄化膜は、(1)ヘパリン添加全血を60分にわたって灌流・接触させた際の血液中の血小板保持率が70%以上、98%以下であり、(2)カチオン性染料水溶液を灌流・接触させた際、溶液中のカチオン性染料吸着率が40%以上、70%以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、血液透析、血液濾過、血液透析濾過などの血液浄化に用いられる血液浄化膜に関する。
従来より、慢性腎不全患者に対する維持療法として血液透析が行われてきている。また、近年、急性腎不全や敗血症などの重篤な病態の患者に対して、急性血液浄化療法として、持続血液濾過、持続血液濾過透析、持続血液透析などの療法の実施例が増大しつつある。これらの療法に使用される血液浄化膜の素材としては、セルロース、セルロース誘導体などの天然由来の素材と、ポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体などの合成高分子素材が利用されている。中でも、ポリスルホン系樹脂からなる膜は、良好な機械的特性、耐熱性、生体適合性などの長所を持つことから、近年特に注目されている。
ポリスルホン系樹脂は比較的疎水性が強いため、血液と接触した際に、血漿タンパク質を吸着しやすい傾向がある。このためポリスルホン系樹脂で血液浄化膜を製造する場合には、親水性を付与して血液適合性を向上させるため、親水性高分子を添加するのが一般的である。
しかし、このような材料は本質的に生体にとって異物であり、親水性高分子の添加などの方法をとっても、血液と接触した際には血小板の付着や白血球の活性化を招き、結果として生体適合性が悪い場合がある。
特許文献1や特許文献2では血液接触表面の凹凸を制御することによって血液適合性を向上させる技術が開示されている。これらの技術においては表面の凹凸はいずれも白色干渉顕微鏡によって測定された値から規定されている。特許文献1では血小板の粘着として、10-6個/cm2−膜面積以下であるのが好ましいとされている。この特性を持つ膜は、本発明における血小板保持率(詳細については後述する)がほぼ100%と概算される。しかしながら、極端に血小板保持率が高い膜では、膜との接触によって活性化された血小板が血液中に放出され、これが引き金となって体内の循環血液全体の活性化を招き、結果として生体適合性悪化の原因となることが考えられ、むしろ好ましくない。
また特許文献1、特許文献2に共通して言えることだが、平滑な血液接触面は、血球との接触面積が大きくなることも考えられ、血球の活性化を招く原因となる可能性も考えられる。表面の物理的な性状の制御は血液適合性向上のひとつの手法として有効であるとは考えられるが、生体にとって本質的に異物である材料を使用している以上、このアプローチだけではおのずと限界が有ると言わざるを得ない。
特開2000−126286号公報(1頁〜3頁) 特開平11−309353号公報(1頁〜2頁)
本発明は、上記課題を解決し、血液適合性に優れた血液浄化膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の血液浄化膜は、
1.ヘパリン添加全血を60分にわたって灌流・接触させた際の血液中の血小板保持率が70%以上、98%以下であることを特徴とする血液適合性に優れた血液浄化膜。
2.カチオン性染料水溶液を灌流・接触させた際、溶液中のカチオン性染料吸着率が40%以上、70%以下であることを特徴とする。
3.疎水性高分子と親水性高分子を含んでなることを特徴とする。
4.疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする。
5.ポリスルホン系高分子がポリエーテルスルホンであることを特徴とする。
6.親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする。
7.不溶成分の含有率が、膜全体に対して2重量%未満であることを特徴とする。
8.中空糸膜であることを特徴とする。
本発明の血液浄化膜は、血液灌流時の血小板保持率が所定範囲にあることで、血液適合性、血液接触使用時の性能保持性、安全性が高レベルで実現されているため、血液透析、血液濾過、血液透析濾過などの血液浄化分野への利用に好適である。
本発明における血小板保持率とは、次の方法によって血液灌流の前後の血液中の血小板数から算出した値を示す。
(1)採血バッグに、濃度が5U/mLとなるよう予めヘパリンカルシウムを入れておき、健康な成人の血液をひじの内側の静脈からこの採血バッグに採取する。血液灌流に先立ち、血液成分の分析用に血液のサンプリングを行う。
(2)膜面積1.5m2の中空糸膜モジュールの血液側、透析液側を生理食塩水でプライミングし、このモジュールの血液側に上記ヘパリン加ヒト全血を150mL/minの流量で灌流する。この際、採血バッグから流れ出た血液はモジュールの血液側を通過し、採血バッグに戻るように回路を組む。
(3)37℃の環境下で60分の血液灌流を行った後、血液のサンプリングを行い、血液成分の分析を行う。
(4)灌流前後の血液中の血小板数から、次の式により血小板保持率を算出する。
(血小板保持率)[%]=100×[{(灌流後の血液中の血小板数)×(灌流前の血液のヘマトクリット)}/(灌流後の血液のヘマトクリット)] ÷(灌流前の血液中の血小板数)
本発明におけるカチオン性染料吸着率とは、次の方法によってカチオン性染料溶液灌流前後の溶液中のカチオン染料濃度から算出した値を示す。
(1)カチオン性染料を0.5ppmの濃度になるよう水に溶解してカチオン性染料溶液を調製する。
(2)膜と接触する前のカチオン性染料溶液をサンプリングしておく。
(3)カチオン性染料溶液1000mLを測り採り、膜面積1.5m2の中空糸膜モジュールの血液側、透析液側を満たす。
(4)モジュール充填後、余ったカチオン性染料溶液をプールし、モジュールの血液側に200mL/minの流量で灌流する。この際、溶液プールから流れ出た溶液はモジュールの血液側を通過し、プールに戻るように回路を組む。
(5)5分の灌流を行った後、モジュールに充填されたカチオン性染料溶液と、プールされたカチオン性染料溶液を併せ、サンプリングを行う。
(6)カチオン性染料水溶液の紫外吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)の吸光度(Absλmax)から、検量線を作成し、膜接触前後のカチオン性染料溶液のカチオン性染料濃度を測定する。
(7)次の式からカチオン性染料吸収率を算出する。
(カチオン性染料吸収率)[%]=100×(灌流後の溶液のカチオン性染料濃度)/灌流前の溶液のカチオン性染料濃度)
本発明においてカチオン性染料とは、例えばメチレンブルー、クリスタルバイオレット、トルイジンブルー、アズールなど特に制限されないが、比較的安価で入手しやすく、有害性が低いことからメチレンブルーが好ましい。
本発明において、不溶成分の含有率とは、次の方法によって測定・算出した値を示す。
(1)血液浄化膜の重量(膜重量)を測定し、製造の際に使用したのと同じ溶媒で10wt%の濃度になるよう溶解する。
(2)この液を遠心分離により1500rpm、10分で不溶成分を分離し、上清を除去する。
(3)(2)の操作を3回繰返し、残った不溶成分を蒸発乾固して重量(不溶成分重量)を測定する。
(4)次の式から不溶成分の含有率を算出する。
(不溶成分の含有率)[%]=100×(不溶成分重量)÷(膜重量)
血液適合性を示す指標として、血液と接触した際の血小板の粘着を評価する方法がある。従来、血液適合性向上のために、血小板粘着量を減少させること(血小板保持率を向上させること)を目標に検討がなされてきているが、生体にとって異物である材料との接触による血液成分の活性化は、その程度の差はあってもある意味で不可避であると考えられる。血小板保持率が非常に高い膜では、見かけの血液適合性は良好であると判断されてしまうが、見方を変えた場合、異物である材料との接触で活性化された血小板までもが血液中に放出されてしまっている可能性がある。このような観点から、さらに鋭意検討を行った結果、実は血小板の保持率は70%〜98%であることが好ましいということがわかり、本発明に到った。血小板保持率のより好ましい範囲は75%〜98%であり、さらに好ましい範囲は80%〜98%である。血小板保持率がこの範囲よりも小さいと血小板の粘着量が多くなり、血栓ができやすくなったり、血液浄化機能が低下したりすることがある。また、この範囲よりも大きいと活性化された血小板までも血液中に放出されるため、生体内を循環する血球や血漿などの血液成分が刺激され、生体内の血液全体が活性化された状態となり、凝血傾向や、場合によっては塞栓を生じる危険性も否定できない。
材料表面の血液適合性を考える上で重要な指標として挙げられるのが、例えば、荷電状態、親水性−疎水性バランス、非特異的な吸着能などである。本発明の血液浄化膜はカチオン性染料の吸着率が40%〜70%であることが好ましいが、ここで言うカチオン性染料の吸着率は、上記荷電状態、親水性−疎水性バランス、非特異的な吸着能を示す指標として考えることができる。カチオン性染料の吸着率が40%〜70%の範囲にある時に、膜表面性状が最適化され、生体適合性に優れた膜が得られるものと考えられる。カチオン性染料の吸着率がこの範囲よりも小さいと陰性荷電が少なくなり過ぎてしまうため、表面が陰性に荷電している血小板との静電的な相互作用が大きくなって血小板が粘着しやすくなることがある。また、この範囲よりも大きいと疎水性相互作用、非特異的な吸着が多くなって種々の血液成分の吸着を招きやすくなるため、経時的な血液浄化機能の低下が起こることがある。
本発明の血液浄化膜を構成する材料は、再生セルロース、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート、けん化酢酸セルロースなどの天然由来素材、ポリスルホン(以下PSfと略記する)系高分子、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体などの合成高分子素材、さらにガラス、カーボン、ゼオライトなどの無機系材料など、特に制限されないが、疎水性高分子と親水性高分子を含んで構成されていることが好ましい。
本発明における疎水性高分子とは、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、PSf、ポリエーテルスルホン(以下PESと略記する)、ポリメチルメタクリレートなどの合成高分子やセルローストリアセテート、セルロースナイトレートなどのセルロース系高分子が例示される。中でも、PSf、PESなどのPSf系高分子は生体適合性に優れ、尿毒症関連物質の高い除去性能が得られるので好ましく、PESが特に好ましい。ここで言うポリスルホン系高分子は、官能基やアルキル基などの置換基を含んでいてもよく、炭化水素骨格の水素原子はハロゲンなど他の原子や置換基で置換されていてもよい。また、これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
PSf系樹脂は比較的疎水性が強いため、血液と接触した際に、血漿タンパク質を吸着しやすい傾向がある。このためPSf系樹脂で血液浄化膜を製造する場合には、親水性を付与して血液適合性を向上させるため、親水性高分子を添加するのが一般的である。
また、疎水性の強い材料は血漿タンパクを吸着しやすいので、長時間にわたって血液と接触して使用した場合には、表面に吸着した血漿タンパクの影響で膜性能が経時的に低下してしまう。親水性の付与によって血漿タンパクの吸着が低減されるので、親水性高分子添加は血液適合性向上のほか、膜として安定した溶質除去性能を発揮するためにも有効である。
本発明における親水性高分子とは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、PVP、カルボキシメチルセルロース、デンプンおよびその誘導体などの高分子が例示される。中でも、ポリスルホン系高分子との相溶性、血液浄化膜素材としての使用実績から、PVPが好ましい。これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
ところが、PVPは膜の使用時、血液との接触によって溶出する可能性があり、場合によっては、溶出したPVPによって患者にアナフィラキシー様の症状を呈する可能性も否定できない。膜の高性能化には有効なPVPであるが、このような副作用を招く可能性から、その溶出量は低いほうが好ましく、具体的には、血液浄化膜を40%エタノール水溶液で抽出した際の親水性高分子抽出量が20(mg/m2−血液浄化膜血液接触表面積)以下であることが好ましく、15(mg/m2−血液浄化膜血液接触表面積)以下であることがより好ましく、10(mg/m2−血液浄化膜血液接触表面積)以下であることがさらに好ましい。
血液適合性、性能安定性に寄与するのは、主として血液接触面の親水性高分子であると考えられる。本発明の血液浄化膜において、血液接触表面の親水性高分子の含有率は好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。親水性高分子含有率がこれより低くても高くても、血液成分の過剰な吸着を招く可能性がある。また、親水性高分子含有率がこれよりも高いと、血液との接触で多くの親水性高分子が溶出する可能性があり、安全性の観点から問題となることがある。
架橋などの処理によって構造の一部を改変した親水性高分子は、本来その親水性高分子が持つ特性と微妙に異なる挙動を示すことが考えられる。血液接触使用時の性能保持性を確保するために、本発明の中空糸型血液浄化膜に含まれる親水性高分子は実質的に不溶化されていないことが好ましく、具体的には不溶成分の含有率が膜全体に対して2重量%未満であることが好ましい。
血液適合性には、微細な表面形状などの物理的な特性も深く関わっている。本発明の血液浄化膜は、膜の血液接触表面が網目構造であることが好ましい。ここで言う網目構造とは、膜が材料の微小な粒子状構造体を構成成分として成るのではなく、フィブリル状の微小な構造体によって構成されていることを意味する。微小粒子集合体から成る表面は、血球と点で接触するため、血球への刺激が大きく、活性化を招く可能性がある。また、平滑な血液接触面では血球との接触面積が大きくなるため、血球の活性化を招く原因となる可能性があることは既に述べた通りである。これらの表面構造と比較して、網目構造は線で血球と接触するため、血球への刺激、接触面積とも好適であり、血液適合性に優れていると考えられる。
本発明の血液浄化膜の形状は特に制限されないが、中空糸型であることが好ましい。中空糸型膜を製造する際には、素材となる高分子を溶媒に溶解して溶液(ドープ)とし、内腔形成剤とともに二重管型のノズルから吐出し、空走部分を経て凝固浴に導き凝固させ、洗浄の工程を経て巻取る乾湿式紡糸法をとるのが一般的である。本発明において使用できる溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などが例示される。中でも、DMAcまたはNMPが好ましい。これらの溶媒は単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。また、ドープには同時に非溶媒を添加することもできる。本発明において使用できる非溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、水などが例示される。中でもトリエチレングリコール、水が安全性、取り扱い性の面から好ましい。これらの非溶媒は単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
紡糸用ドープにおける疎水性高分子の濃度は好ましくは、5重量%〜50重量%、より好ましくは10重量%〜45重量%、さらに好ましくは15重量%〜45重量%である。これよりも濃度が低いと膜の強度を確保するのが困難になることがあり、これよりも濃度が高いと紡糸用ドープの粘度が高くなりすぎ操業性が悪化することがある。
紡糸用ドープにおける親水性高分子の濃度は、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%である。これよりも濃度が低いと導入される親水性高分子が少なくなり、性能、血液適合性の発現が困難になることがあり、これよりも濃度が高いと親水性高分子の溶出量が多くなることがある。また、親水性高分子の分子量は大きすぎると紡糸用ドープの溶解性に問題が生じ、小さすぎると膜から溶出しやすくなるため、重量平均分子量で好ましくは2万〜150万、さらに好ましくは3万〜130万である。
本発明で使用できる内腔形成剤は、窒素、空気、アルゴンなどの気体、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、水など疎水性高分子の非溶媒、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピルなどの不活性液体、あるいはこれらの混合物、さらにこれらとDMF、DMAc、DMSO、NMPなど疎水性高分子の溶媒との混合物など、特に制限されないが、疎水性高分子の非溶媒、疎水性高分子の不活性液体、これらの混合物、これらと疎水性高分子の溶媒との混合物などの液体が好ましい。
本発明で使用できる凝固浴の条件は特に制限されないが、凝固液としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、水など疎水性高分子の非溶媒、これらの混合液、あるいはこれらとDMF、DMAc、DMSO、NMPなど疎水性高分子の溶媒との混合液が例示される。凝固浴温度は安定した成膜が実施できれば特に制限されないが、実施の容易さから、0〜100℃であることが好ましく、5〜80℃であることがより好ましい。
本発明の血液浄化膜が中空糸型膜である場合、血液適合性、安全性、性能保持性を同時に満足するという観点から、膜厚が10〜50μm、内径が100〜300μmであることが好ましい。膜厚が小さい場合には、十分な強度を確保するのが困難となることがある。膜厚は12μm以上がより好ましく、14μm以上がさらに好ましい。また、膜厚が厚すぎる場合には物質透過性能が低下することがある。したがって、膜厚は40μm以下がより好ましく、35μm以下がさらに好ましい。内径が上記の範囲から外れると、血液灌流時の血液流速が過小または過大となり、膜表面との相互作用による血液成分の吸着などによる血液適合性低下や性能保持性低下を招く可能性がある。内径は120〜280μmがより好ましく、150〜250μmがさらに好ましい。
本発明が意図する血液適合性に優れた血液浄化膜を得るための具体的な手段としては、以下に記すような手法が例示される。これらの手法を適当に組み合わせることによって血液適合性に優れた血液浄化膜を得ることができる。
1.使用する材料の最適化
微弱な陰性荷電をを持つ材料を原料として使用することで、得られる膜に電荷が導入され、本発明の意図する好ましい特性を付与するのに有用である。PSf系高分子の場合、末端のフェノール性水酸基の水素原子が一部脱離し、カリウム塩となって存在するものがある。このような材料では、カリウム含量は材料中の陰性荷電置換基の量と考えることができる。具体的にはカリウム含量が100mg/kg〜350mg/kg、好ましくは150mg/kg〜300mg/kgのPSf系材料を使用することが好ましい。カリウム含量がこれよりも少ないと材料の陰性荷電が少なすぎ、所期の特性を得られないことがある。また、これよりも多いと材料の陰性荷電が過剰となりブラジキニン産生亢進など問題が起こることがある。このような材料としては、住友化学社製のポリエーテルスルホン(商品名スミカエクセル)などが例示される。
2.使用する材料の還元粘度の最適化
使用する疎水性高分子の還元粘度は0.2〜0.6であることが好ましい。詳細な機構は不明であるが、このような還元粘度の疎水性高分子を使用することで凝固浴内での凝固が適度に制御され、血液接触面での親水性高分子の含量が前述の好ましい範囲になるのに好適であると考えられる。還元粘度のより好ましい範囲は0.3〜0.6、さらに好ましくは0.4〜0.6である。このような還元粘度を有する疎水性高分子としては、住友化学社製のポリエーテルスルホン、スミカエクセル3600P(還元粘度0.36)、4800P(同0.48)、5200P(同0.52)などを用いるのが好ましい。
3.製膜時の凝固浴中での延伸
詳細な機構は不明であるが、製膜中の延伸によって、材料に含まれる荷電の分布が最適化されると同時に、膜表面の微細構造が最適化され、好ましい特性が発揮されるものと考えられる。また、製膜中の延伸は血液接触面の親水性高分子の含有率を制御する点からも有用な手段である。詳細な機構は不明であるが、製膜中の延伸によって膜孔の微細構造が最適化され、洗浄工程での過剰な親水性高分子の抜けやすさなどに影響を及ぼして好ましい表面親水性高分子含量になるものと考えられる。延伸は好ましくは1〜50%、より好ましくは1〜30%、さらに好ましくは1〜20%である。ここで言う延伸とは凝固浴入口ローラー速度と凝固浴出口ローラー速度との比である。
4.ノズル吐出直後の内腔形成剤とドープの吐出線速度の最適化
中空糸型膜を製造する際には、ドープを内腔形成剤とともに二重管型のノズルから吐出し、空走部分を経て凝固浴に導き凝固させるのが一般的であることは既に述べた。この際、ノズルから吐出された直後の内腔形成剤吐出線速度とドープ吐出線速度が、内腔形成剤吐出線速度>ドープ吐出線速度の関係にあると、中空糸型膜の内部、血液接触面ではドープと内腔形成剤の接触面で摩擦が生じる。この摩擦によって荷電が付与され、本発明の意図する好ましい特性を付与するのに有用である。吐出線速度の具体的な好ましい値としては、内腔形成剤は500〜30000cm/minが好ましく、800〜28000cm/minがより好ましい。ドープは200〜15000cm/minが好ましく、250〜10000cm/minがより好ましい。吐出線速度がこの範囲を外れると、操業性、紡糸効率が低下することがある。内腔形成剤およびドープの吐出直後の吐出線速度は、次の式で算出することができる。
(吐出直後の吐出線速度)[cm/min]=
(吐出量)[cc/min]÷(吐出孔面積)[cm2
5.製膜時の非伝導体との摩擦
製膜工程において、走行する膜と非伝導体とを接触させることにより膜が静電気を帯びて、本発明の意図する好ましい特性を付与するのに有用である。走行中の膜と非伝導体の接触は、具体的には、製膜機台の膜接触部分に非伝導体を使用するのが好ましい。ここで言う膜接触部分とは、例えば、ガイド、ローラーなどが例示される。使用できる非伝導体は、例えば、エボナイト、テフロン(R)、セラミック、あるいはこれらをコーティングした金属材料などが例示される。
6.ミスト状の水の吹き付け
ミスト状の水は微弱に帯電しているので、製膜された血液浄化膜にミスト状の水を吹き付けることにより膜が静電気を帯びて、本発明の意図する好ましい特性を付与するのに有用である。上記の操作は、静電気付与による好ましい特性の実現と同時に、洗浄操作としても位置付けることができる。具体的には、例えば、中空糸膜紡糸工程において、走行中の中空糸膜に水を噴霧して洗浄を行った後乾燥工程を経て巻取る方法、紡糸工程を経て得られた中空糸膜を糸束としてこれに水を噴霧し、洗浄を行う方法などが例示される。
7.親水性高分子の架橋の回避
親水性高分子が架橋されることで、親水性高分子が持つ特性と微妙に異なる挙動を示すことが考えられるので、血液接触使用時の性能保持性を確保するために、本発明の中空糸型血液浄化膜に含まれる親水性高分子は実質的に不溶化されていないことが好ましいことは既に述べた。具体的に親水性高分子の架橋を回避する手段としては、次のような手法が例示される。
7−1.溶解、ドープ輸送時の熱履歴の最適化
製膜工程によって紡糸ドープに与えられる熱履歴を制御することは、熱架橋による不溶成分の量を制御する上で有効な手段のひとつである。例えば、疎水性高分子、親水性高分子、溶媒、非溶媒などの原料を溶解する工程において、加熱温度は200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱温度と加熱時間の積は、1500℃h以下であることが好ましく、1300℃hであることがさらに好ましい。また、ドープ輸送のライン温度は150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。加熱温度と加熱時間の積が1500℃hを超えると、紡糸ドープに過剰の熱履歴が加えられることになり、熱架橋が進行して不溶成分の量が多くなり過ぎる可能性がある。
7−2.高エネルギー線照射時の膜水分率の制御
血液浄化膜の滅菌には、γ線などの高エネルギー線照射が利用されているが、親水性高分子として広く利用されているPVPは、γ線照射によって架橋することが知られている。照射するγ線は20〜60kGyが好ましい。γ線量が少なすぎると、滅菌効果が不足することがある。また、γ線量が多すぎると、膜素材が劣化することがある。γ線架橋による不溶成分の含有率を本発明が意図する範囲に制御するには、γ線照射する際に膜の水分率が好ましくは0.3〜3.5重量%、さらに好ましくは0.5〜3.0重量%である、実質的にドライ膜であることが好ましい。膜の水分率がこの範囲にあれば、γ線照射時の親水性高分子の劣化・分解の抑制および架橋抑制の両方の効果を得ることができる。また、30〜80重量%のグリセリンを含浸させておくこともγ線照射時の架橋を抑制するための好ましい態様である。ここで言う実質的にドライ膜であるとは、水あるいは水系溶媒に浸漬されておらず、膜を取出した時に水あるいは水系溶媒の滴下が見られず、膜表面を濾紙などで払拭した際に、払拭材(濾紙など)に水あるいは水系溶媒の移動が目視で確認できない膜であることを意味する。
血液適合性の指標としては、血液浄化膜に血液を接触させて灌流した際の血小板第4因子(以下PF4と略記する)の上昇率がある。血液が異物と接触した際には、血球の粘着、活性化などが惹起され、同時に凝固系も活性化して最終的に血栓が生成する。このステップにおける血小板の活性化度合いを示すのがPF4濃度であり、血液灌流前後のPF4の濃度比(PF4上昇率)が低いということは血小板の活性化を招きにくいということであり、血液適合性に優れていることを意味する。本発明の血液浄化膜におけるPF4上昇率は好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下であり、さらに好ましくは2倍以下である。
性能保持性の指標としてC特性値が知られている。C特性値とは、血液を使用して測定した透水性の、血液灌流開始15分後の値に対する血液灌流開始120分後の値のパーセンテージであり、この値が小さいことは血液成分の吸着などによって性能が経時的に低下することを意味する。性能保持性の観点から、本発明の中空糸型血液浄化膜におけるC特性値は70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。通常の血液透析においては、3〜5時間程度の治療時間が一般的であり、C特性値がこれ以下である場合には性能保持性が低いため、十分な治療効果を得られないことがある。また、血液灌流中の血液成分の吸着により透水性は経時的に低下していくので、C特性値が高いということは血液成分の吸着が低いと見ることもでき、血液適合性を示す値と考えることもできる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
[中空糸膜の血液接触面の表面でのPVP含有率の測定方法]
中空糸膜1本を両面テープ上にはりつけ、ナイフで開腹した後展開して両面テープにはりつけ、内表面を露出させた。これを試料台にはりつけてESCAでの測定を行った。測定条件は次に示す通りである。
測定装置:アルバック・ファイ ESCA5800
励起X線:MgKα線
X線出力:14kV,25mA
光電子脱出角度:45°
分析径:400μmφ
パスエネルギー:29.35eV
分解能:0.125eV/step
真空度:約10―7Pa以下
窒素の測定値(N)と硫黄の測定値(S)から、次の式により表面でのPVP含有率を算出した。
<PVP添加PES膜の場合>
(PVP含有率)[%]
=100×(N×111)/(N×111+S×232)
<PVP添加PSf膜の場合>
(PVP含有率)[%]
=100×(N×111)/(N×111+S×442)
[40%エタノール水溶液での抽出方法]
40%エタノール水溶液での抽出試験は以下の手順で行った。中空糸膜モジュールの中空糸内側に400mLの純水を流してフラッシングを行った後、モジュール内の純水を40容量%のエタノール水溶液で置換した。中空糸外側のモジュールケース内部にも40溶量%のエタノール水溶液で満たして封止した。続いて40℃の条件下、200mLの40容量%エタノールを150mL/minで1時間にわたって中空糸内側を循環させた後、循環した40容量%エタノール水溶液を回収し、そのPVP濃度を測定した。モジュールの中空糸内側容積とモジュール出入り口のヘッダー部分の体積、すなわちプライミングボリュームに200mLを加えた、抽出液総体積と抽出液中のPVP濃度から、抽出されたPVP総重量を算出し、さらに、中空糸膜モジュールの膜面積(中空糸内径基準)から、被処理液接触側膜面積1m2あたりのPVP抽出量を求めた。
[PVP濃度の測定方法]
PVPの濃度測定は、K.Muellerの方法(K.Mueller,Pharm.Acta.Helv.,43,107(1968))によって行った。すなわち、検体にクエン酸とヨウ素溶液を加え、吸光度を測定し、濃度既知のPVPから求めた検量線により濃度を求めた。ここで、濃度測定の際には、エタノールによる発色の阻害を避けるため2倍以上に希釈する必要がある。具体的には、例えば2倍希釈で濃度測定を行う場合、検体を1.25mL、水1.25mL、0.2mol/Lクエン酸水溶液1.25mL、0.006規定ヨウ素水溶液0.5mLをよく混合し、10分間静置した後、470nmの吸光度を測定し、その測定値からPVP濃度を算出すればよい。
[中空糸膜の透水性の測定方法]
中空糸膜モジュールを使用し、膜の内外両側に純水を満たした。膜の内側に通じるモジュール入り口から純水によって圧力をかけて、膜の内側と外側の圧力差、すなわち膜間圧力差を生じせしめ、1分間に膜を通じて膜外側に出てくる純水の量を測定した。4点の異なった膜間圧力差において、1分間の透水量を測定し、膜間圧力差と透水量の2次元座標にプロットして、それらの近似直線の傾きを数値として求めた。この数値に60をかけ、中空糸膜モジュールの膜面積で割って中空糸膜の透水性を求めた(以下UFRと略記する。単位はmL/m2・hr・mmHg)。
[中空糸膜のC特性値の測定方法]
中空糸膜モジュールを使用し、ヘマトクリット35%の牛血液を200mL/minの流量で中空糸の内側に灌流した。同時に、中空糸外側から20mL/minの流量で濾過を行った。灌流・濾過開始15分後の膜間圧力と濾過液量から、牛血液系での透水性(以下MFRと略記する。)を算出した。この値を(A)とし、灌流・濾過開始120分後、同様の操作により求めたMFRの値(B)とから、100(%)×(B)/(A)の計算によりC特性値を算出した。
[クリアランスの測定方法]
ビタミンB12が20ppm、尿素が1000ppm、塩化ナトリウムが180ppm、リン酸一ナトリウム(無水)が40ppm、リン酸二ナトリウム(12水和物)が480ppmになるよう調製したキンダリー希釈液(35倍希釈)を使い、膜面積1.5m2のモジュールで測定した。血液側の流速は200±1ml/min、透析液側の流速は500±10ml/minとし、37℃で上記キンダリー溶液を流した。流し始めてから1分後に3分間にわたって透析液側の液をサンプリングし、その間血液側(out)の液のサンプリングを1分間にわたって行った。それぞれの液について尿素の濃度を和光純薬工業株式会社製尿素窒素B−テストワコーを使用したウレアーゼ・インドフェノール法により測定した。また、ビタミンB12の濃度を360nmの吸光度から測定した。これらの測定値から中空糸膜の尿素クリアランス(CLun)、ビタミンB12クリアランス(CLvb)を算出した。
(実施例1)
DMF中での還元粘度が0.48、カリウム含量が265mg/kgであるPES(住友化学社製スミカエクセル4800P)および平均分子量が約120万のBASF社製PVP(K−90)をDMAc(三菱瓦斯化学社製)と水の混合液(重量比でDMAc:水=95:5)にそれぞれ18重量%、3重量%になるよう40℃で6時間にわたって混合・溶解し、均一な溶液とした。この溶液を紡糸原液として、二重環状スリットノズルから吐出すると同時に、紡糸原液に対して凝固性である45重量%DMAc水溶液を内腔形成剤として吐出した。この際、ドープを貯留したタンクからノズルピースを取り付けた部材(ノズルブロック)に到るまでのドープ流路の温度(ライン温度)は40℃に設定した。ノズルから凝固浴までの乾式部分を経て凝固浴内に紡糸原液/内腔形成剤を落とし込み、5%の延伸をかけながら凝固させて中空糸膜として成形し、50m/minの速度で巻取った。この際に使用した凝固液は水で、温度は25℃であった。中空糸膜巻き取りの過程において、水洗浴を経ることで洗浄を行った。中空糸膜紡糸の際に使用した二重環状ノズルの内腔形成剤吐出面積は9.5×10-5cm2、ドープ吐出面積は39.3×10-5cm2、内腔形成剤吐出量は2.35cc/min、ドープ吐出量は2.00cc/minで、吐出直後の内腔形成剤吐出線速度は24737cm/min、ドープ吐出線速度は5089cm/minであった。紡糸機台のローラーはステンレス製、中空糸膜のガイドにはテフロン(R)製のものを使用した。得られた中空糸膜は長さ約25cmの糸束とし、回転軸中心部から水を噴霧しながら遠心して内腔形成剤を洗浄除去した。さらに、3000回転で5分間の遠心により洗浄水を除去した後、40℃の空気を8時間にわたってブローして乾燥した。
前述の方法でこの中空糸膜の血小板保持率、カチオン性染料吸着率、不溶成分含有率を測定した。カチオン性染料としては、メチレンブルー(以下MBと略記する)を使用した。また、血小板保持率測定時の血液灌流前後の血液をサンプルとしてPF4の濃度を測定し、灌流前後での上昇率を算出した。さらに、前述の方法でこの中空糸膜のC特性値を測定した。結果は表1に示した。
Figure 2005087350
また、前述の方法でこの中空糸膜の血液接触側表面PVP含有率、血液接触側表面積1m2あたりの40%エタノール水溶液によるPVP抽出量、UFR、CLun、CLvbを測定した。結果は表2に示した。
Figure 2005087350
(実施例2)
PESの濃度が16重量%、内腔形成剤が50重量%DMAc水溶液、凝固液が10重量%DMAc水溶液、凝固液温度が5℃である以外は実施例1と同様の条件、手法で中空糸膜を得た。
実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の血小板保持率、カチオン性染料吸着量、不溶成分含有率、PF4上昇率、C特性値を測定した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の血液接触側表面PVP含有率、血液接触側表面積1m2あたりの40%エタノール水溶液によるPVP抽出量、UFR、CLun、CLvbを測定した。結果は表2に示した。
(実施例3)
DMF中での還元粘度が0.48、カリウム含量が265mg/kgであるPES(住友化学社製4800P)および平均分子量が約120万のBASF社製PVP(K−90)をNMP(三菱化学社製)とトリエチレングリコール(以下TEGと略記する。)(三井化学社製)の混合液(重量比でNMP:TEG=58:42)にそれぞれ42重量%、5重量%になるよう130℃で6時間にわたって混合・溶解し、均一な溶液とした。この溶液を紡糸原液として、二重環状スリットノズルから吐出すると同時に、紡糸原液に対して非凝固性である流動パラフィンを内腔形成剤として吐出した。この際、ライン温度は120℃に設定した。ノズルから凝固層までの乾式部分を経て凝固層内に紡糸原液/内腔形成剤を落とし込み、10%の延伸をかけながら凝固させて中空糸膜として成形し75m/minの速度でボビンにチーズ状に巻取った。この際に使用した凝固液の組成は35重量%のNMP水溶液で温度は5℃であった。中空糸膜巻き取りの過程において、水洗浴、50重量%のグリセリン水溶液浴を経ることで洗浄、表面へのグリセリン塗布を行い、さらに80℃の温風によって乾燥を行った。なお、この際に使用した二重環状ノズルの内腔形成剤吐出面積は20.4×10-4cm2、ドープ吐出面積は27.0×10-4cm2、内腔形成剤吐出量は2.30cc/min、ドープ吐出量は0.9cc/minで、吐出直後の内腔形成剤吐出線速度は1127cm/min、ドープ吐出線速度は333cm/minであった。紡糸機台のローラーはステンレス製、中空糸膜のガイドにはテフロン(R)製のものを使用した。
実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の血小板保持率、カチオン性染料吸着量、不溶成分含有率、PF4上昇率、C特性値を測定した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の血液接触側表面PVP含有率、血液接触側表面積1m2あたりの40%エタノール水溶液によるPVP抽出量、UFR、CLun、CLvbを測定した。結果は表2に示した。
(比較例1)
DMF中での還元粘度が0.76、カリウム含量が310mg/kgであるPESおよび平均分子量が約120万のPVP(K−90)をDMAcと水の混合液(重量比でDMAc:水=90:10)にそれぞれ18重量%、4重量%となるよう40℃で6時間にわたって混合・溶解し、均一な溶液とした。この溶液を紡糸原液として、凝固浴内で実質的に延伸がかからないようにしたこと、紡糸機台のローラー、中空糸膜のガイドともにステンレス製のものを使用したこと以外は実施例1と同様の条件、手法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は長さ約25cmの糸束とし、水への浸漬、引き上げをくり返して内腔形成剤を洗浄除去した。さらに、3000回転で5分間の遠心により洗浄水を除去した後、40℃の空気を24時間にわたってブローして乾燥した。
実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の血小板保持率、カチオン性染料吸着量、不溶成分含有率、PF4上昇率、C特性値を測定した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の血液接触側表面PVP含有率、血液接触側表面積1m2あたりの40%エタノール水溶液によるPVP抽出量、UFR、CLun、CLvbを測定した。結果は表2に示した。この比較例では疎水性高分子として還元粘度が好ましい値よりも高いものを使用し、製膜中の延伸が実質的にかからないように設定し、紡糸機台の中空糸膜接触部分を伝導体のステンレス製にし、ミスト状の水の噴霧を行わずに中空糸膜を製造した。血液接触表面でのPVP含量は好ましい範囲内であるものの、疎水性高分子が高粘度であること、成膜中の延伸が行われていないことなどによって、PVPの存在状態・分布などが微妙に影響を受けているものと考えられる。このため、血液接触面からのPVP溶出が好ましい範囲を超えていると考えられる。また、製膜時に非伝導体との摩擦を受けず、ミスト状の水吹き付けが行われていないため、中空糸膜の荷電状態が最適化されず、カチオン性染料の吸着率が好ましい範囲を下回っていると考えられる。成膜中の延伸が行われていないことは、血液接触表面の微細な構造に影響を与え、血小板保持率低下の原因のひとつとなっている可能性がある。
(比較例2)
DMF中での還元粘度が0.76、カリウム含量が310mg/kgであるPESおよび平均分子量が約4万のPVP(K−30)をNMPとTEGの混合液(重量比でNMP:TEG=60:40)にそれぞれ25重量%、3重量%になるよう160℃で12時間にわたって混合・溶解し、均一な溶液とした。この溶液を紡糸原液として、二重環状スリットノズルから吐出すると同時に、窒素ガスを内腔形成剤として吐出した。凝固浴内で実質的に延伸がかからないようにしたこと、紡糸機台のローラー、中空糸膜のガイドともにステンレス製のものを使用したこと、凝固液を10重量%のNMP水溶液として温度を25℃に設定したこと、グリセリン塗布後の乾燥を100℃の温風で行ったこと以外は実施例3と同様の条件、手法で中空糸膜を得た。
実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の血小板保持率、カチオン性染料吸着量、不溶成分含有率、PF4上昇率、C特性値を測定した。結果は表1に示した。また、実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の血液接触側表面PVP含有率、血液接触側表面積1m2あたりの40%エタノール水溶液によるPVP抽出量、UFR、CLun、CLvbを測定した。結果は表2に示した。この比較例では疎水性高分子として還元粘度が好ましい値よりも高いものを使用し、溶解工程における加熱温度と加熱時間の積、ライン温度を好ましい値よりも高く設定し、紡糸機台の中空糸膜接触部分を伝導体のステンレス製にし、凝固浴中での延伸を実質的に行わずに中空糸膜を製造した。また、グリセリン塗布後の乾燥温度は実施例3よりも高く設定した。溶解工程における加熱温度と加熱時間の積、ライン温度が高めであるために、熱架橋によって不溶成分量が増加したと考えられる。また、疎水性高分子の粘度、凝固浴中での延伸、グリセリン塗布後の乾燥温度による水分率の変動などの要因により、血液接触表面でのPVP含量は好ましい範囲内であるものの、疎水性高分子が高粘度であること、成膜中の延伸が行われていないことなどによって、PVPの存在状態・分布などが微妙に影響を受けているものと考えられる。このため、血液接触面からのPVP溶出が好ましい範囲を超えていると考えられる。このPVPの存在状態・分布などの微妙な相違や、熱架橋による不溶成分量の増加はカチオン性染料の非特異的な吸着を増大させ、好ましい範囲を超えて吸着率が大きくなったと考えられる。成膜中の延伸が行われていないことは、血液接触表面の微細な構造に影響を与え、血小板保持率低下の原因のひとつとなっている可能性がある。
(比較例3)
PVPを含有しない、市販のPES/ポリアリレートアロイ製の中空糸型血液浄化膜を使用し、実施例1と同様の方法で、血小板保持率、カチオン性染料吸着量、不溶成分含有率、PF4上昇率を測定した。結果は表1に示した。
(安全性試験例)
実施例1で得た中空糸膜モジュールを、上記[40%エタノール水溶液での抽出方法]に示した方法で抽出し、中空糸膜モジュール5本分の抽出液をあわせて濃縮して40%エタノール水溶液を完全に留去した。この濃縮残渣を生理食塩水で再溶解し、全量で10mLになるように調製した。この液を濾過滅菌し、体重約10kgのイヌの静脈に投与し、アナフィラキシー様症状の観察という観点から状態の変化を観察した。結果は表3に示した。
比較例2で得た中空糸膜モジュールを使用し、上記と同様の方法で濃縮抽出液のイヌへの投与試験を行った。結果は表3に示した。
Figure 2005087350
表3におけるアナフィラキシー・グレードとは以下の基準で判断した。
−:症状発現なし
±:軽度な色調変化(耳介、眼周囲、腹部から鼠脣部にかけての部位など)
軽度な口唇腫脹
体こすり
頭部の振り
+:色調変化
口唇腫脹
頻繁な体こすり
頻繁な頭部の振り
++:振戦
丘疹
呼吸頻回
チアノーゼ
粗大呼吸
脱力
本発明の血液浄化膜は、PF4の上昇率が小さく、血液適合性に優れていることが示された。本発明の血液浄化膜はC特性値が高く、血液接触使用時の性能保持性に優れていることが示されると同時に、血液成分の吸着が少なく血液適合性に優れていることが示唆された。さらに、安全性試験例の結果から、本発明の血液浄化膜は、抽出物投与によっても実験動物の状態変化が見られず、安全性にも優れていることが示された。すなわち、本発明の血液浄化膜は、血液灌流時の血小板保持率が所定範囲にあることで、血液適合性、血液接触使用時の性能保持性、安全性が高レベルで実現されているため、血液透析、血液濾過、血液透析濾過などの血液浄化分野に利用することができ、産業界に寄与することが大である。

Claims (8)

  1. 膜面積1.5m2の血液浄化用モジュールの血液側にヘパリン加ヒト全血を150mL/minの流量で灌流した際、60分後の血小板保持率が70%以上98%以下であることを特徴とする血液適合性に優れた血液浄化膜。
  2. カチオン性染料溶液1000mLを血液浄化用モジュールの血液側、透析液側に満たし、残りのカチオン性染料溶液を該モジュールの血液側に200mL/minの流量で灌流した際、5分後のカチオン性染料吸着率が40%以上70%以下であることを特徴とする請求項第1項記載の血液適合性に優れた血液浄化膜。
  3. 主として疎水性高分子と親水性高分子を含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の血液適合性に優れた血液浄化膜。
  4. 疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の血液適合性に優れた血液浄化膜。
  5. ポリスルホン系高分子がポリエーテルスルホンであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の血液適合性に優れた血液浄化膜。
  6. 親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の血液適合性に優れた血液浄化膜。
  7. 不溶成分の含有率が、膜全体に対して2重量%未満であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の血液適合性に優れた血液浄化膜。
  8. 血液浄化膜が中空糸膜である請求項1から7いずれかに記載の血液適合性に優れた血液浄化膜。
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