JP2005074019A - 中空糸型血液浄化膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】 親水性高分子を含み、血液と接触して使用した際の性能保持性、安全性に優れた中空糸型血液浄化膜、すなわち、血液適合性、安全性、性能保持性を同時に満足した中空糸型血液浄化膜を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の中空糸型血液浄化膜は、疎水性高分子と親水性高分子を含んでなり、血液接触面の表面での該親水性高分子の含有率(A)と、血液接触面の近傍での該親水性高分子の含有率(B)との比(A)/(B)が1.2以上3.2以下とし、不溶成分の含有率が、膜全体に対して2重量%未満であり、膜内部が実質的に均一構造、膜表面が平滑構造であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、血液透析、血液濾過、血液透析濾過などの血液浄化に用いられる血液浄化膜に関する。
従来より、慢性腎不全患者に対する維持療法として血液透析が行われてきている。また、近年、急性腎不全や敗血症などの重篤な病態の患者に対して、急性血液浄化療法として、持続血液濾過、持続血液濾過透析、持続血液透析などの療法の実施例が増大しつつある。これらの療法に使用される血液浄化膜の素材としては、セルロース、セルロース誘導体などの天然由来の素材と、ポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体などの合成高分子素材が利用されている。中でも、ポリスルホン系樹脂からなる膜は、良好な機械的特性、耐熱性、生体適合性などの長所を持つことから、近年特に注目されている。
ポリスルホン系樹脂は比較的疎水性が強いため、血液と接触した際に、血漿タンパク質を吸着しやすい傾向がある。このためポリスルホン系樹脂で血液浄化膜を製造する場合には、親水性を付与して血液適合性を向上させるため、親水性高分子を添加するのが一般的である。
また、前述のとおり疎水性の強い材料は血漿タンパクを吸着しやすいので、長時間にわたって血液と接触して使用した場合には、表面に吸着した血漿タンパクの影響で膜性能が経時的に低下してしまう。親水性の付与によって血漿タンパクの吸着が低減されるので、親水性高分子添加は血液適合性向上のほか、膜として安定した溶質除去性能を発揮するためにも有効である。
こういった目的で使用される親水性高分子としては、ポリビニルピロリドン(PVP)が最も一般的である。しかしながら、PVPは膜の使用時、血液との接触によって溶出する可能性があり、場合によってはこの溶出したPVPによって患者にアナフィラキシー様の症状を呈する可能性も否定できない。膜の高性能化には有効なPVPであるが、このような副作用を招く可能性から、その溶出量は最小限に抑制するのが好ましい。
従って、安全性、血液適合性、溶質除去性能発揮を同時に満足するためには、必要最小限のPVPを膜に導入することが必要である。血液浄化膜におけるPVPの存在量を規定した技術としては、これまで数多くの方法が提案されている。例えば、血液に接触する内表面に親水性高分子が、エックス線光量子スペクトル:XPSにより求めた膜表面での窒素含量と硫黄含量から算出した存在率として20〜50%の範囲で存在することにより、優れた膜性能、血液適合性が得られるとされている。(例えば、特許文献1参照)。血液浄化膜を実際に血液と接触させて使用した場合、表面に存在する親水性高分子がある程度溶出していくのは避け難く、長時間にわたって安定した性能、血液適合性を実現するには、表面での親水性高分子が更新されていくのが好ましい。そのためには、親水性高分子がある程度の深さをもって存在するのが好適である。上記の技術においてはこの点の考慮が不十分であり、膜性能、血液適合性の持続性が不十分となってしまう可能性がある。
特開平6−296686号公報(1頁〜5頁)
また、透析液側からのエンドトキシンの侵入を防ぐことを主たる目的として、外表面の親水性高分子が5%から25%の比率で存在する膜が開示されている。(例えば、特許文献2参照)。外表面の親水性高分子を減少させた場合、血液と接触する表面の親水性高分子量も減少し、血小板の付着等が生じる、との記載もあるものの、この技術においては膜性能、血液適合性に大きく関わる血液接触面への配慮が具体的には何らなされていない。
特開2000−254222号公報(1頁〜4頁)
中空糸膜中のPVP含有量と中空糸膜内表面のPVPが所定の範囲にある中空糸型血液浄化膜が開示されている。(例えば、特許文献3参照)。しかし、この技術も特許文献1同様、表面での親水性高分子の更新を考慮した存在深度についての視点が欠けており、膜性能、血液適合性の持続性が不十分となってしまう可能性がある。
特開平11−309355号公報(1頁〜8頁)
PVPを固定化、不溶化することで溶出を抑制し、安全性を高める技術も開示されている(例えば、特許文献4、5、6、7、8、9、10参照)。しかしながら、これらの方法では操作が煩雑である上、処理による膜の特性の変化、処理部位の局在化の可能性があり、満足できる効果が得られないことが考えられる。
特開平7−3034号公報(3頁) 特開平6−339620号公報(1頁〜2頁) 特開平9−24261号公報(1頁〜4頁) 特開平9−103664号公報(1頁〜4頁) 特開平10−66846号公報(1頁〜3頁) 特開平10−230148号公報(1頁〜3頁) 特開2000−350926号公報(1頁〜5頁)
本発明者らは、化学改質、架橋による改質を施さなくても親水性高分子の溶出が見られない膜についても既に特許出願を行っている(特許文献11参照)。この技術においては、膜構造を均一微細構造とすることで親水性高分子の溶出を抑制しているが、親水性高分子の存在部位(表面からの存在深度)についての視点が欠けており、膜性能、血液適合性の持続性ついての考慮が十分とは言えなかった。
特開2000−42383号公報
親水性高分子の分布に注目した技術として、本発明者らは既に特許出願を行っている(特許文献12、13参照)。特許文献12では、膜内表面のPVP含有率(Ci)、膜外表面のPVP含有率(Co)、膜内平均PVP含有率(Cave)の関係がCi≧Co×3、Ci≧Cave×2である中空糸膜が開示されているが、これはPVPの存在状態を規定することで安全性、モジュール組立性を向上させることが目的であった。特許文献13では、PVP含有率が5〜20重量%、かつ芳香族ポリスルホン系高分子含有率が95〜80重量%、かつ内表面のPVP含有率(A)、外表面のPVP含有率(B)、膜中間部のPVP含有率(C)の関係が((A−X)2+(B−X)2+(C−X)20.5/X≦0.5(ただしX=(A+B+C)/3)である中空糸膜が開示されている。上記A、B、Cがこの関係を満たすことは親水性高分子が膜に均一に近く分布することを意味しており、これによりエンドトキシンの吸着性、侵入阻止を主たる目的としている。これらの技術はいずれも表面での親水性高分子の更新を考慮した存在深度についての視点が欠けており、膜性能、血液適合性の持続性が不十分となってしまう可能性が否定できなかった。
特開2001−038170号公報(1頁〜4頁) 特許第3314861号公報(1頁〜5頁)
本発明は、上記課題を解決することを目的とし、親水性高分子を含み、血液と接触して使用した際の性能保持性、安全性に優れた中空糸型血液浄化膜、すなわち、血液適合性、安全性、性能保持性を同時に満足した中空糸型血液浄化膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の中空糸型血液浄化膜は、
1.疎水性高分子と親水性高分子を含んでなる中空糸型血液浄化膜であって、該中空糸型血液浄化膜における血液接触面の表面での該親水性高分子の含有率(A)と、血液接触面の近傍での該親水性高分子の含有率(B)との比(A)/(B)が1.20以上、3.2以下であることを特徴とする。
2.不溶成分の含有率が、膜全体に対して2重量%未満であることを特徴とする。
3.疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする。
4.ポリスルホン系高分子がポリエーテルスルホンであることを特徴とする。
5.親水性高分子がPVPであることを特徴とする。
6.膜内部が実質的に均一構造、膜表面が平滑構造であることを特徴とする。
本発明の中空糸型血液浄化膜は、C特性の値が大きく、血液接触使用時の性能保持性に優れていることが示された。また、血液適合性試験例から、本発明の中空糸型血液浄化膜は血液灌流時の血液中の血小板保持率が高く、血液適合性に優れていることが示された。さらに、安全性試験例の結果から、本発明の中空糸型血液浄化膜は、抽出物投与によっても実験動物の状態変化が見られず、安全性にも優れていることが示された。すなわち、本発明の中空糸型血液浄化膜は、疎水性高分子と親水性高分子を含んでなり、血液接触面の表面での親水性高分子の含有率(A)と表面近傍での親水性高分子の含有率(B)の比が所定範囲にあることで、血液接触使用時の性能保持性、血液適合性、安全性が高レベルで実現されていることがわかる。
以下、本発明を詳細に説明する。
疎水性高分子を主体とした血液浄化膜では、膜性能、血液適合性を向上させるため、親水性高分子を添加するのが一般的である。この親水性高分子が効果を発揮するのは主として血液と接触する中空糸の内表面である。また、親水性高分子として広く使用されているポリビニルピロリドン(PVP)は、それ自体の生体に対する安全性は十分確認されているが、多量のPVPを導入することは好ましくなく、血液接触表面に局在するのがよいという考え方がある。しかし、中空糸型血液浄化膜において、PVPの溶出を皆無にするのは実質的に不可能なので、表面のPVPは使用中に溶出、枯渇してしまう可能性がある。この現象は膜表面の親水性高分子を減少させることとなり、血液接触使用時の性能および血液適合性の保持性を低下させる結果となることも考えられる。本件出願人らは鋭意検討の結果、中空糸型血液浄化膜における血液接触面の表面での該親水性高分子の含有率(A)と、血液接触面の近傍での該親水性高分子の含有率(B)との比(A)/(B)が1.2以上3.2以下である膜が血液浄化性能、血液接触使用時の性能保持性、安全性を高レベルで両立できること見出し、本発明に到った。
上記(A)/(B)の値が1.2よりも小さいと、親水性高分子が中空糸膜表面に濃縮されていないこととなり、十分な効果を発揮するには膜全体での親水性高分子の量を多くしなければならず、高い血液適合性と低い溶出物量を両立するのが難しくなることがある。上記(A)/(B)の値が3.2よりも大きいと、親水性高分子が表面のみに多く存在することとなり、血液接触使用時の性能および血液適合性が経時的に低下することがある。
なお、本発明において血液接触面の表面とは、最表面からElectron Spectroscopy for Chemical Analysis(ESCA)によって測定可能な深度の範囲を意味し、具体的には数nmから数十nmに相当する深度の範囲である。また、本発明において血液接触面の近傍とは、最表面から表面赤外分光法(表面IR)によって測定可能な深度の範囲を意味し、具体的には数百nmに相当する深度の範囲である。
本発明において、表面における親水性高分子の含有率、膜全体における親水性高分子の含有率は特に制限されないが、前者は好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜35重量%であり、後者は3〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%である。また、親水性高分子の溶出量は、安全性の観点から低いほうが好ましく、具体的には、中空糸型血液浄化膜を40%エタノール水溶液で抽出した際の親水性高分子抽出量が20(mg/m2−中空糸型血液浄化膜血液接触表面積)以下であることが好ましく、15(mg/m2−中空糸型血液浄化膜血液接触表面積)以下であることがより好ましく、10(mg/m2−中空糸型血液浄化膜血液接触表面積)以下であることがさらに好ましい。
架橋などの処理によって構造の一部を改変した親水性高分子は、本来その親水性高分子が持つ特性と微妙に異なる挙動を示すことが考えられる。血液接触使用時の性能保持性を確保するために、本発明の中空糸型血液浄化膜に含まれる親水性高分子は実質的に不溶化されていないことが好ましく、具体的には不溶成分の含有率が膜全体に対して2重量%未満であることが好ましい。
本発明における疎水性高分子とは、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホン(PSf)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレートなどの合成高分子やセルローストリアセテート、セルロースナイトレートなどのセルロース系高分子が例示される。中でも、PSf、PES等のポリスルホン系高分子は、生体適合性に優れ、尿毒症関連物質の高い除去性能が得られるので、好ましい。ここで言うポリスルホン系高分子は、官能基やアルキル基などの置換基を含んでいてもよく、炭化水素骨格の水素原子はハロゲンなど他の原子や置換基で置換されていてもよい。また、これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明における親水性高分子とは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、PVP、カルボキシメチルセルロース、デンプンおよびその誘導体、酢酸セルロースなどの高分子が例示される。中でも、ポリスルホン系高分子との相溶性、血液浄化膜素材としての使用実績から、PVPが好ましい。これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の中空糸型血液浄化膜は、血液浄化性能、血液接触使用時の性能保持性、安全性を高レベルで両立するための構造的な特徴として、膜内部が実質的に均一構造、膜表面が平滑構造であることが好ましい。このような膜構造となった場合、血液接触面の表面での該親水性高分子の含有率(A)と、血液接触面の近傍での該親水性高分子の含有率(B)との比(A)/(B)が1.2以上3.2以下となりやすく、かつ、表面からの溶出は比較的低く抑えられる。詳細な機構は不明であるが、内外面いずれにも粗い構造の散漫層が存在せず、含有された親水性高分子が逃げにくい構造であるためであると推定される。ここで言う「実質的に均一構造」とは、膜断面を電子顕微鏡で観察した際、膜表面から膜中心にかけての構造的な不均一性が目視で認められないことを意味する。
このような中空糸型血液浄化膜を得る具体的な手段としては、例えば、中空糸製造の際に使用される内腔形成剤(内液)として、疎水性高分子溶液を凝固させにくいものを使用するのが好ましい。
中空糸膜を製造する際には、素材となる高分子の溶液(ドープ)と、内腔の形成剤を二重管型のノズルから吐出し、空走部分を経て凝固浴に導き凝固させ、洗浄の工程を経て巻取る乾湿式紡糸法をとるのが一般的である。従来、ポリスルホン系の疎水性高分子とPVPを主構成成分として成る中空糸型血液浄化膜では、内腔形成剤(内液)として疎水性高分子を凝固させる水系の液体を使用するのが一般的である。このような技術によって製造された中空糸膜は、まず内腔側の表面でドープが凝固し、その状態で凝固浴に浸漬して成形されているので、必然的に内腔側表面が緻密で、外表面が粗い不均質構造となる。このような手法で調製された膜は、水系内液との接触によって親水性高分子が内表面に局在化するので、表面の親水性高分子含有率は向上するが、洗浄工程で外表面の散漫層から親水性高分子が溶出しやすいため、表面近傍および膜全体の親水性高分子含量は低下してしまう可能性がある。
これに対し、内液としてドープ低凝固性の液体を使用した場合には、空走部分での凝固が穏やかであり、内腔側表面でのドープ凝固が急速には進行せず、均質の構造となりやすい。このため、外表面が凝固系内液を使用した場合ほどには粗くならないので、洗浄工程での親水性高分子脱離が軽微である。すなわち、このような方法で調製した場合、本発明が意図する親水性高分子の分布状態を実現するのに有利となる。
しかしながら、このように内液をドープ低凝固性の液体とした場合には、逆に外表面の構造が相対的に緻密になる可能性もある。そこで、均一の膜構造を得るには、凝固浴での凝固を制御し、外表面の緻密構造形成をある程度抑制することが好ましい。具体的には、凝固液をドープ凝固性液体と、ドープ非凝固性あるいはドープ低凝固性の混合液とすること、凝固液の温度を比較的低温にすることが好ましい。より好ましくは、凝固液をドープ溶媒と水との混合液とし、溶媒濃度が5〜65重量%、さらには、溶媒濃度が7〜60重量%であることが好ましい。凝固液の温度は、より好ましくは5〜35℃、さらに好ましくは5〜30℃、さらに好ましくは5〜25℃であるのが好適である。
本発明の意図する膜中の親水性高分子分布状態を実現するには、製膜工程を経て得られた膜の水分率も寄与する。詳細な機構は不明であるが、ある範囲の水分を含有することで膜内での親水性高分子の動きやすさが制御され、本発明の意図する分布状態になると考えられる。膜の水分率としては具体的には、0.3〜3.5重量%であることが好ましく、0.5〜3.0重量%であることがさらに好ましい。
このような水分率の膜を得るには、製膜工程における乾燥温度を制御するのがひとつの手段である。過酷な乾燥条件では水分が過剰に除去され、穏やかすぎる乾燥条件では水分の除去が不完全となる。常圧において熱風により乾燥を行う場合には60℃〜90℃であることが好ましく、65℃〜85℃であることがさらに好ましい。
製膜工程によって紡糸ドープに与えられる熱履歴を制御することは、熱架橋による不溶成分の量を制御する上で有効な手段のひとつである。例えば、疎水性高分子、親水性高分子、溶媒、非溶媒などの原料を溶解する工程において、加熱温度と加熱時間の積は、1500℃h以下であることが好ましく、1300℃hであることがさらに好ましい。また、ドープ輸送のライン温度は150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。加熱温度と加熱時間の積が1500℃hを超えると、紡糸ドープに過剰の熱履歴が加えられることになり、熱架橋が進行して不溶成分の量が多くなり過ぎる可能性がある。
親水性高分子として広く利用されているPVPは、γ線照射によって架橋することが知られている。γ線架橋による不溶成分の含有率を本発明が意図する範囲に制御するには、γ線照射する際に膜の水分率が好ましくは0.3〜3.5重量%、さらに好ましくは0.5〜3.0重量%である、実質的にドライ膜であることが好ましい。また、詳細な機構は不明ながら、ポリオール、好ましくはエチレングリコール、プリピレングリコール、グリセリンあるいはこれらの脱水縮合物などが共存しているとγ線架橋が抑制される。これらのポリオールは、同時にまた、多孔質膜の膜孔保持剤としても機能する。ここで言う実質的にドライ膜であるとは、水あるいは水系溶媒に浸漬されておらず、膜を取出した時に水あるいは水系溶媒の滴下が見られず、膜表面を濾紙などで払拭した際に、払拭材(濾紙など)に水あるいは水系溶媒の移動が目視で確認できない膜であることを意味する。
また、前述のような中空糸型血液浄化膜を得る他の具体的な手段としては、例えば、中空糸製造の際に調製するドープ中の疎水性高分子濃度を高めに設定する方法がある。詳細な機構は不明であるが、疎水性高分子濃度を高めにすることで、親水性高分子を強固に包接した状態でドープの凝固が進行しやすく、結果として親水性高分子の溶出が抑制可能になるものと推定される。さらに、使用する疎水性高分子の還元粘度は好ましくは0.2〜0.6であることが好ましい。詳細な機構は不明であるが、このような還元粘度の疎水性高分子を使用することで凝固浴内での凝固が適度に制御され、前述のような中空糸型血液浄化膜を得るのに好適となると考えられる。このような還元粘度を有する疎水性高分子としては、住友化学社製のポリエーテルスルホン3600P(還元粘度0.36)、4800P(同0.48)、5200P(同0.52)を用いるのが好ましい。
疎水性高分子および親水性高分子を溶解する溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などが例示される。中でも、DMAc、NMPがより好ましい。中空糸製造に使用するドープに添加する非溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、水などが例示される。本発明の好ましい態様としては、エチレングリコール、トリエチレングリコールである。
紡糸用ドープにおける疎水性高分子の濃度は好ましくは、20重量%〜50重量%、さらに好ましくは25重量%〜45重量%、さらに好ましくは30重量%〜45重量%、よりさらに好ましくは38〜45重量%である。これよりも濃度が低いと膜の強度を確保するのが困難になることがあり、これよりも濃度が高いと操業性が悪化する恐れがある。
紡糸用ドープにおける親水性高分子の濃度は好ましくは、1〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。これよりも濃度が低いと導入される親水性高分子が少なくなり、性能、血液適合性の発現が困難になり、これよりも濃度が高いと親水性高分子の溶出量が多くなり好ましくない。また、親水性高分子の分子量は大きすぎると紡糸用ドープの溶解性に問題が生じ、小さすぎると膜から溶出しやすくなるため、重量平均分子量で好ましくは2〜150万、さらに好ましくは3万〜130万であることが好ましい。
中空糸膜を製造する際に使用されるのが好ましいドープ低凝固性の内液としては、例えば、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピルなどが例示される。
また、前述のような中空糸型血液浄化膜を得る他の具体的な手段としては、例えば、中空糸膜製造の際に凝固浴中で延伸を加える方法がある。詳細な機構は不明であるが、紡糸中の延伸によって膜孔の微細構造が最適化され、好ましい特性が発揮されるものと考えられる。延伸は好ましくは5〜50%、より好ましくは5〜30%、さらに好ましくは5〜20%である。ここで言う延伸とは、凝固浴入口ローラー速度と凝固浴出口ローラー速度との比である。ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンのような結晶化しにくいポリマーを非凝固性の内液を用いて紡糸する場合は、凝固速度が緩やかであるため、凝固浴中において適度な延伸をかけることにより、血液接触部である内表面の状態は、細孔形状の変形が大きくなりすぎず、孔の整列性が高く、均一で平滑性のある状態となる。このような特徴をもつことにより、血小板の粘着が抑制され、また血中タンパクの吸着が単分子層に抑制されるため、性能の経時的低下が少ない中空糸膜が得られると考えられる。また、延伸をすることにより膜表面の緻密化を抑制し、過剰な親水性高分子が除去され易く、使用時の溶出量を低減する効果もある。
本発明の中空糸型血液浄化膜は血液適合性、安全性、性能保持性を同時に満足するという観点から、膜厚が10〜40μm、内径が100〜300μmであつことが好ましい。膜厚が小さい場合には、十分な強度を確保するのが困難となることがある。また、膜厚が厚すぎる場合には物質透過性能が低下することがある。したがって、膜厚は35μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下がよりさらに好ましく、特に20μm以下が好ましい。内径が上記の範囲から外れると、血液灌流時の血液流速が過小または過大となり、膜表面との相互作用による血液成分の吸着などによる血液適合性低下や性能保持性低下を招く可能性がある。
性能保持性の指標としては、C特性値がある。C特性値とは、血液を使用して測定した透水性の、血液灌流開始15分後の値に対する血液灌流開始120分後の値のパーセンテージであり、この値が小さいことは血液成分の吸着などによって性能が経時的に低下することを意味する。性能保持性の観点から、本発明の中空糸型血液浄化膜におけるC特性値は70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましい。通常の血液透析においては、3〜5時間程度の治療時間が一般的であり、C特性値がこれ以下である場合には性能保持性が低いため、十分な治療効果を得られないことがある。
血液適合性の指標としては、血液浄化膜に血液を接触させて灌流した際の血小板保持率がある。血液が異物と接触した際には、血球の粘着、凝固系の活性化などを経て血栓が生成する。このような反応は生体の防御機構として非常に重要であるが、医療用材料、医療用具を使用する場合には、機能の低下、継続使用が不可能になることなどの不都合が生じる。「血液適合性に優れている」とは、生体から異物として認識されにくく、このような反応を引き起こしにくいということを意味するわけだが、その指標となるのが、血小板が粘着しにくい度合い、すなわち、血小板保持率である。本発明の中空糸型血液浄化膜における血小板保持率は好ましくは70%〜98%、より好ましくは75%〜98%であり、さらに好ましくは80%〜98%である。血小板保持率がこの範囲よりも小さいと血小板の粘着量が多くなり、血液浄化機能が低下することがある。また、この範囲よりも大きいと、膜表面との接触によって著しく活性化された血小板までも血液中に放出される可能性がある。
本願発明の中空糸型血液浄化膜の透水性は、1mL/(m2・hr・mmHg)以上であることが好ましい。透水性が低すぎると、例えばビタミンB12などの中分子量物質のろ過効果に寄与する除去性能が十分に発現されない可能性がある。したがって、透水性は2mL/(m2・hr・mmHg)以上がより好ましく、3mL/(m2・hr・mmHg)以上がさらに好ましい。また、透水性が高すぎると、アルブミンなどの有用タンパクの漏出を抑えきれない可能性があるため、透水性は1000mL/(m2・hr・mmHg)以下が好ましく、500mL/(m2・hr・mmHg)以下がより好ましく、250mL/(m2・hr・mmHg)以下がさらに好ましく、100mL/(m2・hr・mmHg)以下がよりさらに好ましい。
本願発明の中空糸型血液浄化膜の尿素(分子量60)に代表される低分子物質のクリアランスは、130mL/(min・1.5m2)以上が好ましい。尿素クリアランスは中空糸膜の細孔数の指標であり、尿素クリアランスが低すぎる場合には、治療効果を上げるために透析時間を伸ばす必要があるなど効率的な治療ができないことがある。したがい、尿素クリアランスは140mL/(min・1.5m2)以上がより好ましく、150mL/(min・1.5m2)以上がさらに好ましい。また、尿素クリアランスは高い方が好ましいが、クリアランスの定義より血流量の値を超えることはなく、例えば血流量が200mL/minの場合には、尿素クリアランスの最大値は200mL/(min・1.5m2)である。
本願発明の中空糸型血液浄化膜のビタミンB12(分子量1300)に代表される中分子物質のクリアランスは40mL/(min・1.5m2)以上が好ましい。ビタミンB12クリアランスは、膜抵抗の指標であり、ビタミンB12クリアランスが低すぎる場合には、除去物質の透過抵抗が高く効果的な治療ができない可能性がある。ビタミンB12クリアランスはより好ましくは45mL/(min・1.5m2)以上、さらに好ましくは50mL/(min・1.5m2)以上、よりさらに好ましくは55mL/(min・1.5m2)以上である。また、ビタミンB12クリアランスは高い方が好ましいが、クリアランスの定義より血流量の値を超えることはなく、例えば血流量が200mL/minの場合には、ビタミンB12クリアランスの最大値は200mL/(min・1.5m2)である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
[不溶成分含有量の測定・算出方法]
完成品としての中空糸型血液浄化膜10gを製造の際に使用した溶媒100mLで溶解した。この液を遠心分離により1500rpm、10分で不溶成分を分離し、上清を除去した。この操作を3回繰返し、残った不溶成分を蒸発乾固して重量を測定し、不溶成分の含有量を算出した。
[中空糸膜の血液接触面の表面でのPVP含有率の測定方法]
中空糸膜1本を両面テープ上にはりつけ、ナイフで開腹した後展開して両面テープにはりつけ、内表面を露出させた。これを試料台にはりつけてESCAでの測定を行った。測定条件は次に示す通りである。
測定装置:アルバック・ファイ ESCA5800
励起X線:MgKα線
X線出力:14kV,25mA
光電子脱出角度:45°
分析径:400μmφ
パスエネルギー:29.35eV
分解能:0.125eV/step
真空度:約10-7Pa以下
窒素の測定値(N)と硫黄の測定値(S)から、次の式により表面でのPVP含有率を算出した。
<PVP添加PES膜の場合>
(PVP含有率)[%]
=100×(N×111)/(N×111+S×232)
<PVP添加PSf膜の場合>
(PVP含有率)[%]
=100×(N×111)/(N×111+S×442)
[中空糸膜全体でのPVP含有率の測定方法]
中空糸型血液浄化膜をDMSO-d6に溶解させ、60℃で1H-NMRの測定した。測定にはBruker社製Avance−500を使用した。1H-NMRスペクトルにおける7.2ppm付近のポリスルホン系高分子の芳香環由来のピーク(a)と、2.0ppm付近のPVPのピロリドン環由来のピーク(b)の積分強度比より、次の式で親水性高分子の含有量を算出した。
(PVP含有率)[%]=
{(b/nb)×111×100}/{(a/na)×Ma+(b/nb)×111}
ただし、Maはポリスルホン系高分子の繰返し単位の分子量、111はPVPの繰返し単位の分子量、naは繰返し単位中に含まれる上記aのプロトンの個数、nbは繰返し単位中に含まれる上記bのプロトンの個数を示す。なお、不溶成分を含む膜に含まれるPVP含有率は、可溶PVPと可溶ポリスルホン系高分子とを用いて上記NMR測定と透過法による赤外吸収スペクトル測定を行い、赤外吸収スペクトル吸光度とPVP含有率の検量線をあらかじめ作成しておき、この検量線を用いて赤外線吸収スペクトルにより算出した。
[中空糸膜の血液接触面の近傍でのPVP含有率の測定方法]
上記[中空糸膜の血液接触面の表面でのPVP含有率の測定方法]と同様の方法で準備した測定サンプルを使用し、透過法、および内部反射エレメントとしてダイヤモンド45°を使用したATR法により赤外吸収スペクトルを測定した。測定にはSPECTRA TECH社製IRμs/SIRMを使用した。赤外吸収スペクトルにおける1675cm-1付近のPVPのC=Oに由来するピークの吸収強度Apと1580cm-1付近のポリスルホン系高分子に由来するピークの吸収強度Asの比Ap/Asを求めた。ATR法においては吸収強度が測定波数に依存しているため、補正値としてポリスルホン系高分子のピーク位置υsおよびPVPのピーク位置υp(波数)の比υp/υsを実測値にかけた。次の式で血液接触面の近傍でのPVP含有率を算出した。
(PVP含有率)[%]=Cave×Ri/Rt
ただし、Caveは1H−NMRで求めたPVP含有率、RiはATR法におけるPVPとポリスルホン系高分子の吸光度比(補正後)、Rtは透過法におけるPVPとポリスルホン系高分子の吸光度比を示す。
[40%エタノール水溶液での抽出方法]
40%エタノール水溶液での抽出試験は以下の手順で行った。中空糸膜モジュールの中空糸内側に400mLの純水を流してフラッシングを行った後、モジュール内の純水を40容量%のエタノール水溶液で置換した。中空糸外側のモジュールケース内部にも40溶量%のエタノール水溶液で満たして封止した。続いて40℃の条件下、200mLの40容量%エタノールを150mL/minで1時間にわたって中空糸内側を循環させた後、循環した40容量%エタノール水溶液を回収し、そのPVP濃度を測定した。モジュールの中空糸内側容積とモジュール出入り口のヘッダー部分の体積、すなわちプライミングボリュームに200mLを加えた、抽出液総体積と抽出液中のPVP濃度から、抽出されたPVP総重量を算出し、さらに、中空糸膜モジュールの膜面積(中空糸内径基準)から、被処理液接触側膜面積1m2あたりのPVP抽出量を求めた。
[PVP濃度の測定方法]
PVPの濃度測定は、K.Muellerの方法(K.Mueller,Pharm.Acta.Helv.,43,107(1968))によって行った。すなわち、検体にクエン酸とヨウ素溶液を加え、吸光度を測定し、濃度既知のPVPから求めた検量線により濃度を求めた。ここで、濃度測定の際には、エタノールによる発色の阻害を避けるため2倍以上に希釈する必要がある。具体的には、例えば2倍希釈で濃度測定を行う場合、検体を1.25mL、水1.25mL、0.2mol/Lクエン酸水溶液1.25mL、0.006規定ヨウ素水溶液0.5mLをよく混合し、10分間静置した後、470nmの吸光度を測定し、その測定値からPVP濃度を算出すればよい。
[中空糸膜の透水性の測定方法]
中空糸膜モジュールを使用し、膜の内外両側に純水を満たした。膜の内側に通じるモジュール入り口から純水によって圧力をかけて、膜の内側と外側の圧力差、すなわち膜間圧力差を生じせしめ、1分間に膜を通じて膜外側に出てくる純水の量を測定した。4点の異なった膜間圧力差において、1分間の透水量を測定し、膜間圧力差と透水量の2次元座標にプロットして、それらの近似直線の傾きを数値として求めた。この数値に60をかけ、中空糸膜モジュールの膜面積で割って中空糸膜の透水性を求めた(以下UFRと略記する。単位はmL/m2・hr・mmHg)。
[中空糸膜のC特性値の測定方法]
中空糸膜モジュールを使用し、ヘマトクリット35%の牛血液を200mL/minの流量で中空糸の内側に灌流した。同時に、中空糸膜内側から中空糸膜外側に向けて20mL/minの流量で濾過を行った。灌流・濾過開始15分後の膜間圧力と濾過液量から、牛血液系での透水性(以下MFRと略記する。)を算出した。この値を(A)とし、灌流・濾過開始120分後、同様の操作により求めたMFRの値(B)とから、100(%)×(B)/(A)の計算によりC特性値を算出した。
[クリアランスの測定方法]
ビタミンB12が20ppm、尿素が1000ppm、塩化ナトリウムが180ppm、リン酸一ナトリウム(無水)が40ppm、リン酸二ナトリウム(12水和物)が480ppmになるよう調製したキンダリー希釈液(35倍希釈)を使い、膜面積1.5m2のモジュールで測定した。血液側の流速は200±1ml/min、透析液側の流速は500±10ml/minとし、37℃で上記キンダリー溶液を流した。流し始めてから1分後に3分間にわたって透析液側の液をサンプリングし、その間血液側(out)の液のサンプリングを1分間にわたって行った。それぞれの液について尿素の濃度を和光純薬工業株式会社製尿素窒素B−テストワコーを使用したウレアーゼ・インドフェノール法により測定した。また、ビタミンB12の濃度を360nmの吸光度から測定した。これらの測定値から中空糸膜の尿素クリアランス(CLun)、ビタミンB12クリアランス(CLvb)を算出した。
(実施例1)
DMF中での還元粘度が0.48であるポリエーテルスルホン(以下PESと略記する。)(住友化学社製4800P)およびBASF社製PVP(K−90)をNMP(三菱化学社製)とトリエチレングリコール(以下TEGと略記する。)(三井化学社製)の混合液(重量比でNMP:TEG=7:3)にそれぞれ42重量%、3重量%になるよう130℃で6時間にわたって混合・溶解し、均一な溶液とした。この溶液を紡糸原液として、二重環状スリット口金から吐出すると同時に、紡糸原液に対して非凝固性である流動パラフィンを内液として吐出した。この際、ドープを貯留したタンクから口金を取り付けた部材(ノズルブロック)に到るまでのドープ流路の温度(ライン温度)は120℃に設定した。口金から凝固層までの乾式部分を経て凝固層内に紡糸原液/内液を落とし込み、5%の延伸をかけながら凝固させて中空糸膜として成形し75m/minの速度でボビンにチーズ状に巻取った。この際に使用した凝固液の組成は10重量%のNMP水溶液で温度は25℃であった。中空糸膜巻き取りの過程において、水洗浴、50重量%のグリセリン水溶液浴を経ることで洗浄、表面へのグリセリン塗布を行い、さらに80℃の温風によって乾燥を行った。この際、内液となる流動パラフィンの流量を調節することで中空糸の内径を200μmに制御した。
上記の方法でこの中空糸膜の表面PVP含量/表面近傍PVP含量の比、不溶成分含有率、中空糸膜の血液接触側表面積1m2あたりの40%エタノール水溶液によるPVP抽出量を測定した。結果は表1に示した。
Figure 2005074019
また、上記の方法でこの中空糸膜のUFR、C特性値、CLun、CLvbを測定した。結果は表2に示した。
Figure 2005074019
(実施例2)
PESの濃度が40重量%、PVPの濃度が5重量%、ドープ中のNMP:TEG比が6:4、凝固液の組成が50重量%のNMP溶液、紡糸の際の延伸が10%に設定し、その他の条件は実施例1と同様の条件、手法で中空糸膜を得た。実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の表面PVP含量/表面近傍PVP含量の比、不溶成分含有率、中空糸膜の血液接触側表面積1m2あたりの40%エタノール水溶液によるPVP抽出量、UFR、C特性値、CLun、CLvbを測定した。結果は表1または表2に示した。
(比較例1)
DMF中での還元粘度が0.75であるPESが25重量%、溶解温度を160℃、溶解時間を12時間、ライン温度を160℃、凝固浴中で実質的に延伸がかからないようにし、グリセリン塗布後の乾燥温度を100℃とし、それ以外は実施例1と同様の条件、手法で中空糸膜を得た。実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の表面PVP含量/表面近傍PVP含量の比、不溶成分含有率、中空糸膜の血液接触側表面積1m2あたりの40%エタノール水溶液によるPVP抽出量、UFR、C特性値、CLun、CLvbを測定した。結果は表1または表2に示した。この比較例では疎水性高分子として、還元粘度が好ましい値よりも高いものを使用し、溶解工程における加熱温度と加熱時間の積、ドープ輸送ライン温度、グリセリン塗布後の乾燥温度を好ましい値よりも高く設定し、凝固浴中での延伸を好ましい値よりも低く設定して中空糸膜を製造した。溶解工程における加熱温度と加熱時間の積、ドープ輸送ライン温度が高めであるために、熱架橋によって不溶成分量が増加したと考えられる。また、疎水性高分子の粘度、凝固浴中での延伸、グリセリン塗布後の乾燥温度による水分率の変動など、複数の要因が絡んで影響し、表面PVP含量/表面近傍PVP含量比の増加を招いたと考えられる。
(比較例2)
DMF中での還元粘度が0.75であるPESが25重量%、ライン温度を130℃、凝固浴中での延伸を60%、グリセリン塗布後の乾燥温度を100℃とし、それ以外は実施例1と同様の条件、手法で中空糸膜を得た。実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の表面PVP含量/表面近傍PVP含量の比、不溶成分含有率、中空糸膜の血液接触側表面積1m2あたりの40%エタノール水溶液によるPVP抽出量、UFR、C特性値、CLun、CLvbを測定した。結果は表1または表2に示した。この比較例では疎水性高分子として、還元粘度が好ましい値よりも高いものを使用し、グリセリン塗布後の乾燥温度を好ましい値よりも高く設定し、凝固浴中での延伸を好ましい値よりも高く設定して中空糸膜を製造した。疎水性高分子の粘度、凝固浴中での延伸、グリセリン塗布後の乾燥温度による水分率の変動など、複数の要因が絡んで影響し、表面PVP含量/表面近傍PVP含量比の増加を招いたと考えられる。
(比較例3)
DMF中での還元粘度が0.48であるPESおよびBASF社製PVP(K−90)をDMAcと水の混合液(重量比でDMAc:水=15:1)にそれぞれ20重量%、5重量%になるよう40℃で6時間にわたって混合・溶解し、均一な溶液とした。この溶液を紡糸原液として、二重環状スリット口金から吐出すると同時に、紡糸原液に対して凝固性である50重量%DMAc水溶液を内液として吐出した。この際、ライン温度は40℃に設定した。口金から凝固層までの乾式部分を経て凝固層内に紡糸原液/内液を落とし込み、凝固浴中で実質的に延伸がかからないように凝固させて中空糸膜として成形して50m/minの速度で巻取った。中空糸膜巻き取りの過程において、水洗浴を経ることで洗浄を行った。この際、内液の流量を調節することで中空糸の内径を200μmに制御した。得られた中空糸膜は長さ約25cmの糸束とし、3000回転で5分間の遠心によって内液を除去した後、40℃の空気を8時間にわたってブローして乾燥した。
実施例1と同様の方法で、この中空糸膜の表面PVP含量/表面近傍PVP含量の比、不溶成分含有率、中空糸膜の血液接触側表面積1m2あたりの40%エタノール水溶液によるPVP抽出量、UFR、C特性値、CLun、CLvbを測定した。結果は表1または表2に示した。この比較例では紡糸時の内液として疎水性高分子を凝固させる水系の液体を使用し、凝固液として水を使用して中空糸膜を製造した。内液を疎水性高分子凝固性の液体としたことで血液接触側表面のPVP含量が増大し、結果として表面PVP含量/表面近傍PVP含量比の増加を招いたと考えられる。
(血液適合性試験例)
実施例1で得た中空糸膜モジュールの血液側と透析液側両方に生理食塩水を流して洗浄し、両方の流路部分に生理食塩水を満たした。4ユニット/mLの濃度になるようヘパリンカルシウム塩を添加した豚全血を血液バッグに200mL採取した。生理食塩水で血液側、透析液側を満たした中空糸膜モジュールの血液側流路にこの豚ヘパリン加全血を流し、モジュールを流れ出た血液が血液バッグに戻るような回路を組んで、150mL/minの流量で60分にわたり血液の灌流を行った。この際、透析液側は生理食塩水を封入しておいた。
上記の、モジュール灌流前後での血液をサンプリングし、血小板数、ヘマトクリット値(Ht値)を測定し、以下の式からモジュール灌流時の血小板保持率を算出した。結果は表3に示した。
(血小板保持率)[%]=
{(灌流後の血小板数)×(灌流前のHt値)/(灌流後のHt値)×100}/(灌流前の血小板数)
実施例2、比較例1、比較例2、比較例3で得た中空糸膜モジュールを使用し、上記と同様の方法で血小板保持率を求めた。結果は表3に示した。
Figure 2005074019
(安全性試験例)
実施例1で得た中空糸膜モジュールを、上記[40%エタノール水溶液での抽出方法]に示した方法で抽出し、中空糸膜モジュール5本分の抽出液をあわせて濃縮して40%エタノール水溶液を完全に留去した。この濃縮残渣を生理食塩水で再溶解し、全量で10mLになるように調製した。この液を濾過滅菌し、体重約10kgのイヌの静脈に投与し、アナフィラキシー様症状の観察という観点から状態の変化を観察した。結果は表4に示した。
比較例1で得た中空糸膜モジュールを使用し、上記と同様の方法で濃縮抽出液のイヌへの投与試験を行った。結果は表4に示した。
Figure 2005074019
表3におけるアナフィラキシー・グレードとは以下の基準で判断した。
−:症状発現なし
±:軽度な色調変化(耳介、眼周囲、腹部から鼠脣部にかけての部位など)
軽度な口唇腫脹
体こすり
頭部の振り
+:色調変化
口唇腫脹
頻繁な体こすり
頻繁な頭部の振り
++:振戦
丘疹
呼吸頻回
チアノーゼ
粗大呼吸
脱力
本発明の中空糸型血液浄化膜は、C特性の値が大きく、血液接触使用時の性能保持性に優れていることが示された。また、血液適合性試験例から、本発明の中空糸型血液浄化膜は血液灌流時の血液中の血小板保持率が高く、血液適合性に優れていることが示された。さらに、安全性試験例の結果から、本発明の中空糸型血液浄化膜は、抽出物投与によっても実験動物の状態変化が見られず、安全性にも優れていることが示された。すなわち、本発明の中空糸型血液浄化膜は、疎水性高分子と親水性高分子を含んでなり、血液接触面の表面での親水性高分子の含有率(A)と表面近傍での親水性高分子の含有率(B)の比が所定範囲にあることで、血液接触使用時の性能保持性、血液適合性、安全性が高レベルで実現されているため、血液透析、血液濾過、血液透析濾過などの血液浄化分野に利用することができ、産業界に寄与することが大である。

Claims (6)

  1. 疎水性高分子と親水性高分子を含んでなる中空糸型血液浄化膜であって、該中空糸型血液浄化膜における血液接触面の表面での該親水性高分子の含有率(A)と、血液接触面の近傍での該親水性高分子の含有率(B)との比(A)/(B)が1.2以上3.2以下であることを特徴とする中空糸型血液浄化膜。
  2. 不溶成分の含有率が、膜全体に対して2重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の中空糸型血液浄化膜。
  3. 疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸型血液浄化膜。
  4. ポリスルホン系高分子がポリエーテルスルホンであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の中空糸型血液浄化膜。
  5. 親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の中空糸型血液浄化膜。
  6. 膜内部が実質的に均一構造、膜表面が平滑構造であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の中空糸型血液浄化膜。
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