JP2005087333A - 差動送りミシン - Google Patents

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Abstract

【課題】 縫製時の操作性の向上を図る。
【解決手段】 上送り装置(30,60)と下送り装置(70,74)により上布と下布のそれぞれの送り量に差を設けて縫製を行う差動送りミシン(10)であって、上送り装置及び下送り装置の動作制御手段(80)が、縫製時に切り替わる複数の縫製区間ごとにいせ込み量を設定入力可能とすると共に、所定の縫製区間の切り替えに際して、切り替えに前後する二つの縫製区間について予め設定されたいせ込み量の変化量よりも、一時的に大きく変化させる動作制御を行う超過変化機能を備えている。
【選択図】 図21

Description

本発明は、ミシンに係り、特に、下布の送り量に対して上布の送り量を異ならせて縫製を行う差動送りミシンに関する。
従来の差動送りミシンは、針板の上方に配置され,上布の送りを行う上送り部と、針板上の下布を下方から送る下送り部と、上送り部と下送り部の動作制御を行う動作制御手段を備えている(例えば、特許文献1参照)。
そして、この従来の差動送りミシンにあっては、いせ込み量が予め個別に決められた複数の縫製区間が設定され、順番に縫製区間が切り替えられてゆくことで、いせ込み量が順番に変化して縫製が行われるようになっていた。
なお、いせ込みとは、上布と下布とで縫製のピッチ幅に差を設けることをいい、その差(いせ込み量)を大きくすることで縫い上がりに伸縮性を持たせることができる。
特開2003−135873号公報 (第5図、第6図)
しかしながら、先に挙げた差動送りミシンにあっては、その縫製区間が切り替わる際にいせ込み量も切り替わることとなるが、その場合において、上送り部又は下送り部の各部の部材の加工誤差や組み立て誤差等により、或いはベルト機構を用いることにより、いせ込み量の切替に応答遅れを生じ、各区間で必要ないせ込み量が確保されない場合があった。
本発明は、いせ込み量の切り替えにおける応答遅れの影響を低減することをその目的とする。
請求項1記載の発明は、上送り装置と下送り装置により上布と下布のそれぞれの送り量に差を設けて縫製を行う差動送りミシンであって、上送り装置及び下送り装置の動作制御手段が、縫製時に切り替わる複数の縫製区間ごとにいせ込み量を設定入力可能とすると共に、所定の縫製区間の切り替えに際して、切り替えに前後する二つの縫製区間での予め設定されたいせ込み量の変化量よりも、一時的に大きく変化させる動作制御を行う超過変化機能を備える、という構成を採っている。
上記構成において、「縫製区間での予め設定されたいせ込み量」とは、超過変化機能の実行における一時的ないせ込み量ではなく、縫製区間について一定のいせ込み量で縫製されるように設定されたいせ込み量を示すものとする。例えば、図21の(4)の縫製区間を例に挙げて説明すると、(4)の縫製区間の当初に示される突出したいせ込み量ではなく、その区間のほぼ全体において一様となるいせ込み量が上記「縫製区間での予め設定されたいせ込み量」に該当する。
上記構成では、縫製区間が順次切り替わるごとに、上送り装置と下送り装置とがそれぞれその縫製区間で定められたいせ込み量となるように、上布と下布の送り動作を行う。
そして、予め定められた所定の縫製区間への切り替え時において、超過変化機能により、予定されているいせ込み量の変化量よりも大きく変化するように、上送り装置と下送り装置との動作制御が行われる。即ち、手前の縫製区間から所定の縫製区間への切り替えにおいて、いせ込み量が小さくなる変化が予定されている場合には、一時的に予定よりもいせ込み量がより小さくなるように、上送り装置及び下送り装置の動作制御が行われた後に、本来のいせ込み量に戻される。また逆に、手前の縫製区間から所定の縫製区間への切り替えにおいて、いせ込み量が大きくなる変化が予定されている場合には、一時的に予定よりもいせ込み量がより大きくなるように、上送り装置及び下送り装置の動作制御が行われた後に、本来のいせ込み量に戻される。
このように、一時的にいせ込み量の変動量を大きくすることで、いせ込み量の切り替えにおける応答性の遅れが生じた場合であっても、その遅れ分の影響を低減することができる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、動作制御手段は、超過変化機能によるいせ込み量の変化量と変化針数を予め設定入力可能とする、という構成を採っている。
上記構成では、請求項1記載の発明と同様の作用を奏すると共に、超過変化機能の実行時におけるいせ込み量の変化量とその実行期間となる針数が予め設定され、当該設定に従っていせ込み量の切り替えが行われる。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、動作制御手段は、超過変化機能の実行の解除を設定入力可能とする、という構成を採っている。
上記構成では、請求項1又は2記載の発明と同様の作用を奏すると共に、任意に超過変化機能の実行を解除して、従前の縫製を実行することも可能となる。
請求項4記載の発明は、請求項1,2又は3記載の発明と同様の構成を備えると共に、各縫製区間の切り替えを指示入力する切替指示入力手段を備えると共に、動作制御手段は、切替指示入力手段による切り替え指示により順次各縫製区間を切り替えると共に、超過変化機能は切替指示入力手段による切り替え指示入力後に実行する、という構成を採っている。
上記構成では、請求項1,2又は3記載の発明と同様の作用を奏すると共に、切替指示入力手段殻の指示入力により各縫製区間の切り替えが行われる。つまり、切替指示入力手段により指示入力が行われるまでいせ込み量が一定に維持され、指示入力があると、次の縫製区間で設定されているいせ込み量に移行する。そして、予め選択された縫製区間の一方から他方に切替指示入力手段殻の指示入力による切り替えが行われる際には、超過変化機能が実行される。
請求項5記載の発明は、請求項1,2又は3記載の発明と同様の構成を備えると共に、動作制御手段は、各縫製区間ごとにその縫製を行う長さを設定入力可能とすると共に、縫製時に各縫製区間ごとに縫製される長さを積算して、設定長さになると次の縫製区間に切り替える動作制御を行う、という構成を採っている。
上記構成では、請求項1,2又は3記載の発明と同様の作用を奏すると共に、動作制御手段が、各縫製区間ごとに針数や送りピッチから縫製を行った長さを積算し、積算値が当該縫製区間で設定された長さに到達すると、次の縫製区間に切り替える。そして、予め選択された縫製区間の一方から他方に切り替えが行われる際には、超過変化機能が実行される。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明と同様の構成を備えると共に、動作制御手段は、超過変化機能を所定の縫製区間への切替の手前で実行する、という構成を採っている。
上記構成では、請求項5記載の発明と同様の作用を奏すると共に、
予め選択された一方の縫製区間において縫製を行った長さを積算するにあたり、積算値が当該縫製区間で設定された長さに到達する前に超過変化機能が実行され、その後、次の縫製区間に移行する。
請求項7記載の発明は、請求項5記載の発明と同様の構成を備えると共に、動作制御手段は、超過変化機能を所定の縫製区間への切替後に実行する、という構成を採っている。
上記構成では、請求項5記載の発明と同様の作用を奏すると共に、予め選択された一方の縫製区間において縫製を行った長さを積算するにあたり、積算値が当該縫製区間で設定された長さに到達した後で超過変化機能が実行される。
請求項1記載の発明は、超過変化機能により、所定の縫製区間の切り替えにおいて、いせ込み量の変化量を予定されている場合よりも一時的に大きく変化させる動作制御が行われることから、構造的或いは機械的な要因等によりいせ込み量の切り替えにおける応答性の遅れが生じた場合であっても、その遅れ分の影響を低減することが可能となる。このため、本来予定していたいせ込み量により近い状態が確保され、縫い品質の向上を図ることが可能となる。
請求項2記載の発明は、超過変化機能の実行時におけるいせ込み量の変化量とその実行期間となる針数を予め任意に設定することができるので、いせ込み量の切り替えにおける応答性の遅れを解消すべき最も適切ないせ込み量及びその期間を設定することが可能となる。従って、本来予定していたいせ込み量にさらに近い状態を確保することができ、縫い品質のさらなる向上を図ることが可能となる。
請求項3記載の発明は、超過変化機能の実行の解除を任意に設定することができ、必要に応じて従前の縫製を実行することが可能となる。
請求項4記載の発明は、切替指示入力手段からの指示入力により、縫製区間の切り替えを実行するので、ミシンの使用者により自在にいせ込み量を維持又は変化させることが可能となる。これにより、使用者の判断に従って、いせ込み量の調節を行うことが可能となる。
請求項5記載の発明は、各縫製区間で縫製を実行する長さが予め設定することができるため、各区間ごとに適切ないせ込み量に調節することが可能となると共に自動的に縫製区間が切り替わることから誤操作を回避し、一定の縫い品質を維持することが可能となる。
請求項6記載の発明は、各縫製区間ごとに縫製を行う長さが決まっていることから、縫製区間の切り替え時期が予め認識することが可能であり、縫製区間の切り替え前に超過変化機能を実行することが可能となる。
請求項7記載の発明は、予め選択された一方の縫製区間から他方の縫製区間への切り替え時に超過変化機能を実行させることが可能となる。
(実施の形態の全体構成)
本発明の実施の形態を図1〜図21に基づいて説明する。本実施形態たる差動送りミシン10は、縫製を行う上布と下布のそれぞれの送り速度に差を設けることによりいせ込みを行いつつ縫製を行うミシンであって、例えば、袖と身頃の縫製等に使用される。
なお、いせ込みとは、上布と下布とで縫製のピッチ幅に差を設けることをいい、その差(いせ込み量)を大きくすることで縫い上がりに伸縮性を持たせることができる。従って、袖と身頃の縫製を行う場合に、肩側の縫い部分を脇側よりもいせ込み量を大きくすることで、縫製後において伸縮性が要求される肩側にゆとりを持たせることができる。
ここで、後述する縫い針11が上下動を行う方向をY軸方向(上下方向)とし、これと直交する一の方向をX軸方向(前後方向)とし、Y軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向(左右方向)と定義する。また、後述する針板15の載置面15aはX−Z平面に平行に配設されているものとする。
図1は、差動送りミシン10の全体斜視図である。かかる差動送りミシン10は、上布及び下布を載置し縫製を行う載置面15aが形成された針板15を有する布載置部13と、載置面15aの上側で上下動可能に支持される縫い針11と、縫い針11を上下方向に駆動する針昇降手段20と、載置面15aの上側で上下動可能に支持されると共に縫い針11の貫通部を有する布押さえ12と、布押さえ12に隣接して配置され,載置面15a上の上布を送る上側回転送り部30と、載置面15a上の下布を送る下側回転送り部70と、上側回転送り部30に送り動作の駆動力を付与する上送り駆動手段60と、下側回転送り部70に送り動作の駆動力を付与する下送り駆動手段74と、縫い針11の上下動に同期させて布押さえ12と上側回転送り部30とを交互に上下動させると共に、これらの内の布押さえ12について縫い針11と共に上下動させる上下動手段40と、上記各部の動作制御を行う動作制御手段80と、を備えている。
なお、上記上側回転送り部30と上送り駆動手段60とが、上送り装置として機能すると共に、下側回転送り部70と下送り駆動手段74とが、下送り装置として機能する。
(縫い針)
図2は針板15の上方に位置する構成を示す斜視図である。上記縫い針11は、図示しない本体フレームに支持された針昇降手段20によりY軸方向に沿って往復駆動する。縫い針11はその先端近傍に図示しない上糸が通されており、Y軸方向の往復動作により針板15の載置面15a上の上布及び下布を貫通して針板15の下側まで上糸を送り、図示しない釜の繰る下糸と係合させて縫製を行う。
(針昇降手段)
針昇降手段20は、その下端部において縫い針11を保持すると共にY軸方向に沿って往復可能に支持された針棒23と、本体フレームに固定され,針棒23の上端部近傍と下端部近傍とをそれぞれ滑動可能に支持する上側スリーブ24及び下側スリーブ25と、ミシンモータ18(図10参照)により回転駆動されると共にその回転中心線をZ軸方向に沿わせた状態で本体フレームに回転可能に支持された主駆動軸21と、この主駆動軸21の端部に固定装備された回転部材22と、針棒23の中間部に固定装備された連結体27と、この連結体27と回転部材22の偏心位置とを連結するコンロッド26とを備えている。
上記コンロッド26は、その両端部のぞれぞれがいずれもZ軸方向に沿った中心線により回転可能な状態で回転部材22と連結体27とに連結されている。従って、回転部材22がZ軸方向を中心に回転駆動すると、コンロッド26はX軸方向の変位を解消しつつY軸方向に沿った変位のみを連結体27に伝達する。従って、これにより針棒23はY軸方向,即ち上下方向に往復駆動させることが可能である。
(布押さえ)
図3は縫い針11の周囲の構成を示す拡大斜視図、図4は布押さえ12をZ軸方向から見た側面図である。図4に示すように、布押さえ12は、その全体形状が略L字状に形成され、L字の縦棒に相当する部位の上端部において後述する上下動手段40の布押さえ保持軸49に保持されている。従って、布押さえ12は、縫製時において連続的に上下移動を行い、一往復ごとに上布及び下布を針板15側に押圧して布押さえを行う。
また、布押さえ12のL字の横棒に相当する部位の下面(押さえ面とする)が接触する状態で載置面15a上の上布及び下布の上方から押圧して布押さえを行う。
さらに、布押さえ12のL字の横棒相当部はX軸方向に沿った状態で配設されており、各布送り部30,70による布送り方向上流側(図4における右側)となる端部は上方に反りあがった形状に形成されている。かかる形状とすることにより、布押さえ12と下側回転送り部70との間への上布及び下布の送り込みを円滑に行うことを可能としている。
また、布押さえ12は、その横棒相当部が針昇降手段20に保持された縫い針11の下方位置となるように配設されており、縫い針11の直下となる位置には縫い針11を針板15の下方にある釜側に通すための貫通穴12aが形成されている。
また、布押さえ12の押さえ面はその断面形状がノコ刃状に形成され、布押さえ時における布送りとは逆方向への上布の移動を防止している。さらに、布押さえ12の押さえ面は、少なくとも縫い針11の中心線Cの通過位置から布送り方向下流側(図4における右側)に向かって距離T1までの領域についてはX−Z平面に沿った平坦状に形成されている。なお、この場合の平坦状とは、ノコ刃形状の複数の先端が一様にX−Z平面に沿う状態をいう。
上記距離T1は、下側回転送り部70による送りピッチ以上とすることが望ましい。送りピッチとは、一針ごとの布送り距離をいい、縫い針11の上下動の周期と一針ごとの下側回転送り部70による送り量により決定される。動作制御手段80において、送りピッチ幅を可変設定可能とする場合には、距離T1をその最大となる送りピッチ以上とすることが望ましい。
(上側回転送り部)
上側回転送り部30は、図3に示すように、布押さえ12を挟んでZ軸方向に沿って並んで設けられた第一の上送り部31及び第二の上送り部32とこれらを連結する連結部材39とを備えている。第一及び第二の上送り部31,32とは、連結部材39により連結されているので、上下動手段40により上下移動を行う際には一体的に移動する。
図5は第一の上送り部31をその一部を切り欠いてZ軸方向から見た側面図である。かかる第一の上送り部31は、上送り駆動手段60により搬送駆動される第一上ベルト37と、この第一上ベルト37を案内するガイド枠33と、ガイド枠33の先端部で回転自在に支持されると共に第一上ベルト37を折り返すローラ35とを備えている。
上記ガイド枠33は略J字状に形成されており、その上端部で上下動機構40の送り部保持軸48に保持される。また、ガイド枠33は上端部近傍に後述する上送り駆動手段60のガイドアーム64の先端部を軸支する連結ブラケット33cが設けられている。
また、ガイド枠33にはその内側に第一上ベルト37を案内するガイド溝33aが形成され、その底部にはその底面側で第一上ベルト37をX軸方向(さらに詳しくは図5における左方)に沿った搬送を案内するガイド板33bが形成されている。第一上ベルト37は、かかるガイド板33bを搬送される際に上布と接触し、上布の送りを行う。
さらに、ガイド板33bは、その一部が平坦状に形成されており、かかる平坦となる部位を通過する第一上ベルト37が上布と接触するように且つガイド板33bの平坦領域がX−Z平面に沿うようにガイド枠33が送り部保持軸48に保持される。仮に第一上ベルト37が湾曲した状態で上布と接すると、第一上ベルト37はその弾性変形により曲率半径が変化し、上布をベルト搬送速度に応じた送り量で精度良く送ることが困難となるが、平坦面にならった状態で第一上ベルト37が上布と接触することにより、上布を精度良く送ることが可能となる。
また、平坦となる領域は、Z軸方向から見た縫い針11の中心線位置から搬送方向上流側について距離T3,下流側について距離T2の範囲で形成される。そして、距離T2,T3はいずれも、下側回転送り部70による送りピッチ以上とすることが望ましく、動作制御手段80において送りピッチ幅を可変設定可能とする場合には、最大となる送りピッチ以上とすることがより望ましい。
図6は第二の上送り部32をその一部を切り欠いてZ軸方向から見た側面図である。かかる第二の上送り部32は、上送り駆動手段60により搬送駆動される第二上ベルト38と、この第二上ベルト38を案内するガイド枠34と、ガイド枠34の先端部で回転自在に支持されると共に第二上ベルト38を折り返すローラ36とを備えている。
上記ガイド枠34は、連結部材39及びガイド枠33を介して上下動機構40の送り部保持軸48に保持される。また、ガイド枠34にはその内側に第二上ベルト38を案内するガイド溝34aが形成され、その底部にはその底面側で第二上ベルト38をX軸方向(さらに詳しくは図6における左方)に沿った搬送を案内するガイド板34bが形成されている。第二上ベルト38は、ローラ36を搬送される際に上布と接触し、上布の送りを行う。また、このローラ36は、Z軸方向から見て縫い針11の中心線Cと配置が一致しており、従って、第二上ベルト38が上布と接触する位置も中心線Cと一致する。
さらに、第二上ベルト38は、第一上ベルト37に比較してその幅が半分以下に設定されている。これは上布及び下布の端縁部に沿って縫製を行う場合に、第二上ベルト38を端縁側とすることで、縫い代を狭くすることが可能となるためである。
なお、かかる第二の上送り部32では、第二上ベルト38の上布との接触部において平坦となる領域を形成していないが、第一の上送り部31と同様に平坦部を形成しても良い。
図3に示すように、連結部材39には、第一の上送り部31に対する第二の上送り部32のX軸方向及びY軸方向に沿った相対的な位置関係を調節する調節機構3,4が設けられている。即ち、連結部材39は、送り部保持軸48の下端部に装備される軸保持部39aと、この軸保持部39aに対してX軸方向に沿って移動調節可能に装着され,第二の上送り部32を支持する支持部39bとから構成される。
第一の上送り部31に対する第二の上送り部32のX軸方向(送り方向)に沿った相対的な位置関係を調節する調節機構3は、支持部39bに貫通状態で設けられたX軸方向に沿った長穴3aに挿通され、支持部39bを軸保持部39aに対して締結固定する締結ネジ3bにより構成されている。即ち、締結ネジ3bを緩めると、支持部39bが軸保持部39aに対してX軸方向に沿った移動が可能となり、支持部39bを介して第二の上送り部32をX軸方向について位置決めする。さらに、締結ネジ3bを締結することでX軸方向における所望の位置で第二の上送り部32が固定される。
第一の上送り部31に対する第二の上送り部32のY軸方向(上下方向)に沿った相対的な位置関係を調節する調節機構4は、支持部39bの下端部で第二の上送り部32のガイド枠34をZ軸方向を中心に回動自在に支持する支軸ネジ4aと、支持部39aに対してねじ込み可能に支持されると共にそのねじ込み動作によりガイド枠34の上部に設けられた突起部34cのネジ穴に螺合する調節ネジ4bと、支持部39bとガイド枠34の上部との間で張力を付勢する引っ張りバネ4cとを備えている。
第二の上送り部32のガイド枠34は、支軸ネジ4aを緩めることによりZ軸方向を中心とする回動が可能となる。このとき、ガイド枠34は、引っ張りバネ4cにより一方向への回動力が付勢されており、かかる状態で調節ネジ4bを締め付け方向に回転させると、ガイド枠34は、引っ張りバネ4cの張力に抗して支軸ネジ4aを中心として他方向に回動する。ガイド枠34がこのように回動することで第二の上送り部32の下端部に位置するローラ36の高さ調節が行われる。また、高さ調節後は、支軸ネジ4aを締結し、ガイド枠34の回動を規制し固定する。
上側回転送り部30は、上述のように、針位置を挟んで両側に第一及び第二の上送り部31,32を配置しているので、縫製の対象物,特に上布の送りに関し、縫い糸の影響を抑制して所期の送り方向に安定して送ることが可能となる。
(上下動手段)
上下動手段40について、図2及び図7により詳説する。図7は、上下動手段40及び上送り駆動手段60の斜視図である。
上下動手段40は、上側回転送り部30を上下方向に移動可能に支持する構成と、布押さえ12を上下方向に移動可能に支持する構成と、主駆動軸21の回転駆動力を往復揺動を行う駆動力に変換する構成と、当該往復揺動駆動力により上側回転送り部30と布押さえ12とを交互に上下動させる構成とを備えている。
上記上側回転送り部30を上下動可能に支持する構成は、上側回転送り部30をその下端部に保持する送り部保持軸48と、本体フレームに固定され,送り部保持軸48を上下方向に沿って往復可能に支持する第一スリーブ51と、送り部保持軸48に固定装備された第一の軸連結体53と、送り部保持軸48を常時下方に押圧する第一の押圧バネ55とを有している。
第一の軸連結体53は、本体フレームに固定装備された後述するスリーブ保持ブラケット50に設けられたY軸方向に沿った溝50aに係合する図示しない係合突起を備えている。このため、送り部保持軸48は上側回転送り部30と共にY軸方向を中心とする回転を生じることなく上下動を行うことが可能である。
上記布押さえ12を上下動可能に支持する構成は、布押さえ12をその下端部に保持する布押さえ保持軸49と、布押さえ保持軸49を上下方向に沿って往復可能に支持する第二スリーブ52と、本体フレームに固定され,第二スリーブ52を保持するスリーブ保持ブラケット50と、布押さえ保持軸49に固定装備された第二の軸連結体54と、後述するX軸変位解消リンク体47を介して布押さえ保持軸49を常時下方に押圧する第二の押圧バネ56とを有している。
第二の軸連結体54は、スリーブ保持ブラケット50に設けられたY軸方向に沿った長穴50bに係合する係合突起54aを備えている。このため、布押さえ保持軸49は布押さえ12と共にY軸方向を中心とする回転を生じることなく上下動を行うことが可能である。
主駆動軸21の回転駆動力を往復揺動を行う駆動力に変換する構成は、本体フレームに固定装備された後述するモータブラケット62に回転可能に支持されると共にZ軸方向に沿った揺動軸41と、この揺動軸41の一端部に連結され,当該揺動軸41を中心に揺動する主動揺動リンク体42と、主駆動軸21の中間部にその一端部が連結されると共にその他端部が主動揺動リンク体42の揺動端部に連結された偏心コンロッド43とを有している。
上記偏心コンロッド43は、その一端部において回転可能な偏心車を擁しており、この偏心車がその中心から偏心した位置において主駆動軸21に軸支されている。従って、主駆動軸21の回転駆動により偏心車は偏心状態で共に回転するので偏心コンロッド43はその一端部が主駆動軸21を中心として偏心距離を半径とする円運動を行う。一方、偏心コンロッド43はその他端部がZ軸方向を中心に回転可能な状態で主動揺動リンク体42の揺動端部に連結されている。その結果、偏心コンロッド43の一端部が主動揺動リンク体42から遠ざかる位置に移動すれば当該主動揺動リンク体42の揺動端部を自らの方向に引き寄せ、偏心コンロッド43の一端部が主動揺動リンク体42に近づく位置に移動すれば当該主動揺動リンク体42の揺動端部を自らの位置から遠ざかる方向に押し戻すこととなる。従って、主動揺動リンク体42は、揺動軸41を中心とする往復揺動動作を行うこととなる。また、その際、揺動軸41も主動揺動リンク体42の揺動範囲と同じ角度範囲で往復揺動回転を行うこととなる。
また、主動揺動リンク体42は、揺動端部に長穴が形成されている。この長穴には、偏心コンロッド43の他端部がZ軸方向を中心に回転可能な状態で且つ当該長穴の所定位置で連結されている。当該長穴に沿ってコンロッド43の連結位置を変更調節することにより、主動揺動リンク42の揺動半径が変動し、さらにこれにより揺動角度を変更調節するためである。換言すれば、長穴を有する主動揺動リンク体42と、偏心コンロッド43の他端部との連結位置を長穴に沿って変更調節可能とすることにより、布押さえ12及び上側回転送り部30全体の上下方向のストローク調節手段を構成している。
往復揺動駆動力により上側回転送り部30と布押さえ12とを交互に上下動させる構成は、三角形の各頂点となる位置に連結点を有すると共にその内の第一の連結点46aが前述した第一の軸連結体53と連結された三点リンク体46と、この三点リンク体46の第二の連結点46bと前述した第二の軸連結体54とを連結するX変位解消リンク体47と、前述した揺動軸41の他端部に固定連結されて揺動軸41を中心とする揺動動作を行う従動揺動リンク体44と、この従動揺動リンク体44の揺動端部と三点リンク体46の第三の連結点46cとを連結する伝達リンク体45とを有している。
上記従動揺動リンク体44と揺動軸41とのみが固定連結され、その他の上記各リンク体44,45,46,47の各連結点はいずれもZ軸方向を中心として回転可能に連結されている。その結果、従動揺動リンク体44は、主駆動軸21の回転駆動力から変換された往復揺動駆動力が付与されることとなる。
これにより、三点リンク体46の第三の連結点46cが従動揺動リンク体44側に引き寄せられると、第一の連結点46aから第一の軸連結体53を介して送り部保持軸48が下方に押し下げられ、上側回転送り部30は布地を介して下側回転送り部70に当接した状態となる。さらに、第三の連結点46cが従動揺動リンク体44側に引き寄せられ続けると、三点リンク体46は第一の連結点46aを中心に回動し、その結果、第二の連結点46bからX変位解消リンク体47,第二の軸連結体54を介して布押さえ保持軸49が上方に引き上げられる。なお、このとき、三点リンク体46の第二の連結点46bに生じるX軸方向に沿った変位はX変位解消リンク体47により解消される。
また、三点リンク体46の第三の連結点46cが従動揺動リンク体44から遠ざかる方向に押し戻されると、上記とは逆の状態となり、布押さえ12が下側回転送り部70に当接し、上側回転送り部30が上方に引き上げられる。
つまり、上記構成では、三点リンク体46の一の連結点(第三の連結点46c)を力点とし、当該連結点に往復駆動力を入力することで、残る二つの連結点(第一及び第二の連結点46a,46b)が交互に支点と作用点となる状態を切り替え、布押さえ12と上側回転送り部30とを交互に上下動させている。
このようにして、上下動手段40は、布押さえ12と上側回転送り部30とを交互に上下動させることが可能である。また、上下動手段40は、針昇降手段20と同様に、その上下動作の駆動力を主駆動軸21から付与されるので、縫い針11の上下動と布押さえ12及び上側回転送り部30の上下動との同期を容易に取ることが可能である。かかる上下動手段40では、縫い針11と布押さえ12とが共に上下動を行い、上側回転送り部30は縫い針11と交互に上下動行うように構成されている。
また、上述の上下動手段40は、主動揺動リンク体42に布押さえ12と上側回転送り部30の上昇割合を調節する上昇割合調節手段を備えている。かかる、上昇割合調節手段は、主動揺動リンク体42の基端部側(揺動軸41との連結端部)に設けられた締め付け可能な揺動軸挿通穴部と締め付けネジ42aとを有している。揺動軸挿通穴部は、主動揺動リンク42の基端部に揺動軸挿通用の貫通穴とその貫通穴から半径方向に沿ったスリットとを形成し、締め付けネジ42aはそのスリット間隔を締め付けることで揺動軸41と主動揺動リンク体42とを固定する。従って、布押さえ12と上側回転送り部30の上昇割合を調節する際には、締め付けネジ42aを緩め、揺動軸41を適宜回動させて再び締め付けネジ42aを締めることにより行うことができる。
(上送り駆動手段)
上送り駆動手段60について図2及び図8に基づいて説明する。図8は上送り駆動手段60をZ軸方向から見た図である。
この上送り駆動手段60は、第一の上送り部31の回転送り駆動を行う駆動手段と第二の上送り部31の回転送り駆動を行う駆動手段として機能する。
即ち、上送り駆動手段60は、上側回転送り部30の第一の上送り部31の送り動作の駆動源となる第一の上送りモータ61aと、第二の上送り部32の送り動作の駆動源となる第二の上送りモータ61bと、各上送りモータ61a,61bを保持し本体フレームに固定装備されたモータブラケット62と、第一の上送りモータ61aの出力軸に装備され,第一上ベルト37が巻回されるベルト溝が設けられた第一のプーリ63aと、第二の上送りモータ61bの出力軸に装備され,第二上ベルト38が巻回されるベルト溝が設けられた第二のプーリ63bと、各上送りモータ61a,61bから上側回転送り部30まで第一及び第二上ベルト37,38をガイドするガイドアーム64と、ガイドアーム64の各部に設けられ,第一上及び第二上ベルト37,38をガイドアームに沿わせると共にテンションを与えるテンションプーリ65,66,67,68とを備えている。
第二の上送りモータ61bが第一の上送りモータ61aよりも上方となる配置で、上記各上送りモータ61a,61bはその出力軸をZ軸方向に平行となるようにモータブラケット62に支持されている。これら各上送りモータ61a,61bは、回転角度量を制御可能なステッピングモータが使用されており、その回転角度は動作制御手段80の動作指令信号により制御される。前述したように、送りピッチは、縫い針11の上下動の周期と一針ごとの下側回転送り部70による送り量により決定されるが、送りピッチを変更するために下側回転送り部70の送り量を変更制御する場合には、これに応じて上側回転送り部30の送り量も変更しなければならない。従って、このように上送り量を決定する駆動源を縫い針11の上下動の駆動源とは別個独立したステッピングモータとすることにより、自在な上送り量の変更設定を可能としている。
上記第一のプーリ63aのベルト溝に第一上ベルト37が巻回され、第二のプーリ63bのベルト溝には第二上ベルト38が巻回されている。そして、第一の上送りモータ61aと第二の上送りモータ61bとは、その回転量が動作制御手段80により個別に制御されるので、第一の上送り部31と第二の上送り部32との上布の送り量に差を設けることが可能となる(この差を差動量という)と共に、その差動量を自在に設定することが可能である。
従って、第二の上送り部32の送り量が第一の上送り部31よりも多くなる設定とすれば、送り方向下流側に向かって左側にカーブした縫い代(送り方向下流側に向かって見た状態で第二の上送り部32は縫い針11の右側となるので布送り方向は左側にカーブする)の布地の縫製を好適に行い、第二の上送り部32の送り量を第一の上送り部31よりも少なくなる設定とすれば、送り方向下流側に向かって右側にカーブした縫い代の布地の縫製を好適に行うことができる。また、各上送り部31,32を同じ送り量とすることで直進方向の縫製にも容易に対応する。
ガイドアーム64は、回動間接により二つのリンク体を連結した構造を備えている。そして、このガイドアーム64の一端部は第一の上送りモータ61aの出力軸の近傍下方においてモータブラケット62に対してZ軸方向を中心に回動可能に連結支持されており、他端部は前述した上側回転送り部30のガイド枠33に対してやはりZ軸方向を中心に回動可能に連結されている。そして、各テンションプーリ65,68はガイドアーム64の一端部側に配設され、各テンションプーリ66,67はガイドアーム64の回動間接付近に配設されている。各上送りベルト37,38は、各テンションプーリ65〜68に半巻回されることで、テンションを維持しながらガイドアーム64に沿って上送りモータ61と各回転送り部31,32間で搬送されることとなる。なお、第二の上送りベルト38は、そのベルト幅が狭く、伸長し易いことから、上送りモータ61とガイドアーム64との間に設けられたもう一つのテンションプーリにも半巻回されている。
ガイドアーム64は、以上の配置で各テンションプーリ65〜68が設けられ、その途中には回動間接が設けられていることから、その先端部が上側回転送り部30に連結され、当該上側回転送り部30と共に上下動が行われても、円滑にベルト搬送を行うことができる。
(布載置部)
布載置部13を図3,9に基づいて説明する。図9は布載置部13,下側回転送り部70及び下送り駆動手段74の一部分解した斜視図である。布載置部13は、縫い針11の下方に立設された載置台14と、載置台14の上面に固定装備された針板15とを備えている。載置台14の上部であってそのカバーの内側には前述した釜ハウジング16及び後述する下側回転送り部70のベルトガイド71が支持されている。
針板15は、布地の送り方向に長い板状部材であり、載置台14上に固定された状態において、その長手方向中間にX−Z平面に平行な平坦面である載置面15aが形成されている。また、載置面15aから布地の送り方向上流側は、当該上流側に向かうに従ってやや下降勾配気味な布地を送る上流側送り面が形成され、載置面15aから布地の送り方向下流側は、当該下流側に向かうに従ってやや下降勾配気味な布地を送る下流側送り面が形成されている。
そして、針板15の載置面15aの中央には当該針板15を貫通してなる四角い下送り用開口部15bが形成されている。そして、この下送り用開口部15bからは、後述する下側回転送り部70のベルトガイド71の上面及び第一,第二の下ベルト72,73が露出されている。従って、これらにより載置面15a上に載置された布地は背面が下送り用開口部15bから露出した各下ベルト72,73に当接し、その送り方向に送られる。
(下側回転送り部)
下側回転送り部70を図3,5,9に基づいて説明する。下側回転送り部70は、前述した載置台14の上部に支持された釜ハウジング16のさらに上部に設けられたベルトガイド71と、下送り駆動手段74に搬送される第一の下送り部としての第一下ベルト72及び第二の下送り部としての第二下ベルト73とを備えている。
上記ベルトガイド71は、その上面にX軸方向に沿った二本のガイド溝71a,71bが形成されており、各ガイド溝71a,71bの間であって縫い針11の直下位置には釜ハウジング内の釜まで縫い針11を案内するための貫通穴が形成されている。かかる貫通穴は、縫い針11の挿入時において送り込まれる上糸の環状部に釜が繰る下糸を挿通させて縫製を行うためのものである。
また、各下ベルト72,73はそれぞれのガイド溝71a,71bに沿って搬送される。このとき、各下ベルト72,73はその上面が針板15の載置面15aよりも上方に突出するようにガイド溝71a,71bの底面深さが設定されている。
さらに、ベルトガイド71のガイド溝71a,71bを搬送される各下ベルト72,73は、図5に示すように、縫い針11の送り方向の前後において、その上面がX−Z平面に平行な平坦状となるようにベルトガイド71の各ベルト溝71a,71bの底面形状が設定されている。かかる平坦状となる領域は、縫い針11の前後において少なくとも送りピッチ幅で1ピッチ分ずつ形成することが望ましい。このように、各下ベルト72,73に平坦状となる領域を設けることにより、ベルトが湾曲した状態で下布と接した場合に生じる曲率半径の変化が防止され、下布をベルト搬送速度に応じた送り量で精度良く送ることが可能となる。
さらに、各下ベルト72,73に平坦状領域を設けた効果を説明する。前述したように、上側回転送り部30の第一の上送り部31は、第一上送りベルト37を縫い針11の前後において送りピッチ幅で1ピッチ分ずつ平坦状として搬送する。また、布押さえ12はその底面が、縫い針11の後(送り方向下流側)において送りピッチ1ピッチ分平坦状に形成されている。かかる場合、人為的に、下布を平坦に維持したまま上布をたわませた状態として布地を送り込むと、第一の上送り部31は上下動を行っていることから、縫い針の手前位置において、上布がたわんだままの状態で1ピッチ幅分だけ布地が挟み込まれることとなる。そして、各送り部30,70の各ベルトの搬送により1ピッチ分の搬送が行われ、そのままの状態で今度は布押さえ12により各布は押さえ込まれると同時に縫い針11による縫いつけが行われる。
つまり、(1)縫い針11の前後双方において上ベルトに少なくとも1ピッチ幅で平坦領域を形成する、(2)縫い針11の前後双方において下ベルトに少なくとも1ピッチ幅で平坦領域を形成する、(3)縫い針11の後方において布押さえに少なくとも1ピッチ幅で平坦領域を形成する、という三つの条件を満たすことで、人為的にいせ込みを行うことが可能となる。
なお、当然のことながら上下のベルトの1ピッチの送り量に差を設けることによる装置の正常な効果としてのいせ込みは通常通り行われる。従って、「人為的にいせ込みを行う」とは、厳密に言えば、上記人為的な作業を行うことにより1ピッチごとのいせ込み量を増加させることが可能となるという意味である。
(下送り駆動手段)
下送り駆動手段74について図9に基づいて説明する。下送り駆動手段74は、下側回転送り部70の送り動作の駆動源となる下送りモータ75と、下送りモータ75の出力軸に装備され,第一及び第二下ベルト72,73が並んで巻回される主動プーリ76と、下送りモータ75から下側回転送り部70までの間において載置台14に支持され,第一及び第二下ベルト72,73にテンションを与えるテンションプーリ77,78とを備えている。
上記下送りモータ75はその出力軸をZ軸方向に平行となるように本体フレームに支持されている。この下送りモータ75もステッピングモータが使用されており、その回転角度は動作制御手段80の動作指令信号により制御される。前述したように、送りピッチは、縫い針11の上下動の周期と一針ごとの下側回転送り部70による送り量により決定されるので、送りピッチを変更する際には下送りモータ75の一回の送り角度の変更制御が行われる。このように下送り量を決定する駆動源を縫い針11の上下動の駆動源とは別個独立したステッピングモータとすることにより、自在な上送り量の変更設定を可能としている。
なお、下送り駆動手段74にあっては、第一及び第二下ベルト72,73に個別に対応する下送りモータを設け、各々のモータの駆動量について個別に動作制御手段80により制御を行っても良い。これにより、各下ベルト72,73について異なる送り量で下布を送ることができ、湾曲した縫い代を有する布地に対してハンドリングを容易とし、操作性をより向上させることが可能となる。
(動作制御手段の構成)
動作制御手段80について図10により説明する。図10は差動送りミシン10の制御系を示すブロック図である。まず、動作制御手段80の周囲の構成について説明する。
図10に示す操作パネル17は、所定の画像を表示する表示手段とその表示画面上に設けられたタッチパネルとを備える入出力装置である。かかる表示画面には動作制御手段80から出力される種々の縫製情報や各種設定ボタン等が表示され、タッチパネルは各種表示スイッチに対する入力操作を感知し、接触操作による入力指示位置の座標情報を動作制御手段80に出力する。動作制御手段80は、出力中の画像データに対応する表示エリアの所定の各位置における個別のデータを記憶しており、当該各位置と入力指示位置の位置座標とが一致する場合に、当該位置のデータを読み出し、当該データが選択されたことを認識することができる。
図10に示すステップ切替スイッチ92とは、作業者が縫製範囲を区分してなる複数の区間ごとにいせ込み量の設定を行う場合に入力設定の対象となる区間(ステップ)を順次切り替えるためのスイッチである。かかるステップ切り替えスイッチ92に併設された入力回路90により、スイッチ92の操作内容に応じた信号が動作制御手段80に入力される。
ミシン起動ペダル91とは、その踏み込み操作によりミシンモータ18の起動を指示入力するためのON−OFF入力手段である。かかるミシン起動ペダル91に併設された入力回路89により、ミシン起動ペダル91の操作に応じた信号が動作制御手段80に入力される。
糸張力ソレノイド19とは、糸を挟みこんで糸に張力を付与する糸狭持部(図示せず)の駆動源として用いられ、動作制御手段80の制御信号により駆動回路97から出力される駆動電流に応じて動作することにより、糸狭持部に狭持された糸に所定の大きさの張力が加わるようになっている。
また、前述した各送りモータ61a,61b,75は、それぞれ駆動回路85a,85b,86により、動作制御手段80の制御信号に応じた回転角度により、その駆動制御が行われる。
また、ミシンモータ18はサーボモータであり、駆動回路88により、動作制御手段80の制御信号に応じた回転量により、その駆動制御が行われる。また、その回転量は角度単位で制御することが可能であることから、動作制御手段80は、ミシンモータ18の現在の回転角度位置を認識することが可能である。
動作制御手段80は、差動送りミシン10の後述する各種機能,動作を実行させる制御プログラム,制御データ又は各種縫製データが書き込まれているROM82と、制御プログラムに従って第一及び第二の上送りモータ61a,61b,下送りモータ75,糸張力ソレノイド19及びミシンモータ18等の各部の動作を集中制御すると共に表示データを生成して操作パネル17の表示部に表示させるマイコンであるMPU81と、MPU81の処理データ,いせ込み量設定処理やいせ込み縫製処理に関する各種データをワークエリアに格納するRAM83と、当該RAM83に格納された処理データ記録し保持するEEPROM84とを備えている。
また、上記RAM83には、種々のワークメモリやカウンタなどが設けられており、縫製動作中のワークエリアとしても使用される。
また、EEPROM84には、予め設定された縫製範囲を区分してなる複数の縫製区間(ステップ)毎に設定される各種縫製条件の設定値(例えば、各縫製区間長さ、区間ごとのいせ込み量、糸張力、針数等)や、各縫製区間(ステップ)に共通して設定される各種縫製条件の設定値(例えば、縫いピッチ量等)を記憶するとともに、設定されたいせ込み量に変更が生じた場合にその値も記憶する。
(動作制御手段:新規データ作成処理)
上記構成の動作制御手段80は、各種プログラムに従って以下の各種処理を行う。各処理について順を追って説明する。
まず、MPU81は、電源接続時において、ROM82に記録された画像データに基づいて操作パネル17に編集画面G1(図11)を表示する。そして、この編集画面G1の表示中にあっては、新規作成ボタンB1の入力を検知すると、後述する新規データ作成画面G2(図12)に表示を切り替える処理を行う。
新規データ作成画面G2は、縫製時に順番に切替可能な縫製区間の設定を入力するための画面であり、この画面に対する入力操作により、ピッチ量(下側回転送り部70の送り量)、各縫製区間ごとのいせ込み量(下送り量に対する第一の上送り部31による上送り量の差)、及び各縫製区間の縫製距離の設定入力を受け付け記録する処理が実行される。
即ち、MPU81は、新規データ作成画面G2の表示時にピッチ量の入力の受付を行い、ピッチ量が入力されるとそれをRAM83に記録する。なお、ピッチ量は縫製区間に限らず一定である。
次いで、縫製区間の設定入力を受け付ける。即ち、新規データ作成画面G2の中央にある円形の縫製領域ボタンB2の入力を検知すると、数値入力用の小画面の表示を行う処理を行い、第一の縫製区間の区間距離の数値入力が行われると、RAM83に記憶する。なお、各縫製区間において設定される区間距離に関しては、各縫製区間について設定区間長だけ縫製が行われると自動的に次の縫製区間に切り替えられるフルオートモードでの縫製でのみ参照されるものであり、ステップ切り替えスイッチ16の入力を待って次の縫製区間に切り替えられるいわゆるセミオートモードでの縫製では参照されない。これらのモード選択は縫製時に設定される。
次に、第一の縫製区間のいせ込み量の数値入力用の小画面の表示を行う処理を行い、第一の縫製区間のいせ込み量の入力が行われると、MPU81が、RAM83に記憶する。かかるいせ込み量の入力は、ピッチ量(下側回転送り部70の送り量)に対する第一の上送り部31の送り量の差を数値入力ボタンB3により数値入力することにより行われ、入力が行われると、MPU81は当該数値とピッチ量とから第一の縫製区間における第一の上送り部31の送り量を算出してRAM83に記録する。
ついで、図示しないステップ切替ボタンの入力が検出されると、第二の縫製区間について同様の入力を受け付ける処理が行われる。即ち、円形の縫製領域ボタンB2を二分割し、その一方には既に設定された第一の縫製区間のいせ込み量を表示する処理を行い、上記と同様に、第二の縫製区間の区間距離,いせ込み量を決定する設定値の入力を受け付ける処理が行われる。
ついで、必要な区間分の設定入力がなされると、MPU81は、差動送り量(第一の上送り部31に対する第二の上送り部32の送り量の差)の入力を受け付ける。即ち、差動送り量入力ボタンの入力が検知されると、MPU81は、数値入力用の小画面の表示を行う処理を行い、差動送り量の数値入力が行われると、RAM83に記憶する。
そして、MPU81は、RAM83に記録されたピッチ量と各縫製区間ごとの区間距離及びいせ込み量、差動送り量とを一つのファイルでEEPROM84に記録する。なお、このファイルにはファイルナンバーが付され、当該ナンバーにより読み出すことが可能である。また、このファイルはEEPROM84に記録されるので、差動送りミシン10の電源を一度落として再投入時にも呼び出すことができる。
(動作制御手段:超過変化機能実行データ設定処理)
MPU81は、上述した新規データ作成処理に基づく縫製区間データが格納されたファイルが既に作成されてEEPROM84に格納されている状態で電源が投入されると、後述する超過変化機能の実行データ設定処理の設定入力を行うことができる。
超過変化機能とは、予め選択された縫製区間に移行する際に、それ以前の縫製区間におけるいせ込み量に対する当該縫製区間のいせ込み量への変化量よりも一時的に大きくいせ込み量を変化させて縫製を行わせる動作制御を行う機能であって、MPU81がROM82に格納されたプログラムに従ってRAM83又はEEPROM84のデータを参照しつつ実行する。
ここで、図13は超過変化機能実行データ設定処理を示すフローチャートであり、図14は縫製区間データを読み出した状態における編集画面G3の表示例を示し、図15はステップ詳細画面G4の表示例を示し、図16はいせ込み増減値設定画面G5の表示例を示す。なお、図14において、画面中央部の環状であって半径方向に五分割された表示部は、それぞれ縫製区間を示しており、各縫製区間内の数値はいせ込み量を示すものとする。さらに、下部に表示される縫製区間(いせ込み量が2としるされているもの)を第一縫製区間とし、そこから反時計回りに第二〜第五縫製区間が表示されている。ここで、いせ込み量として表示される数値は、当該数値に0.1[mm]を乗じた値のいせ込みが行われることを示している。
MPU81は、差動送りミシン10の電源が投入されると初期化を行い(S1)、編集画面G3の表示を行う(S2)。さらに、MPU81は、編集画面G3の表示状態において、ステップ詳細ボタンB5の入力を検知すると、ステップ詳細画面G4の表示を行う(S3)。
かかるステップ詳細画面G4の表示状態において、MPU81は、超過変化機能を実行すべき縫製区間の入力を受け付ける(S4)。即ち、上下キーB6の入力を検知すると、MPU81は、第一縫製区間を選択する共に当該選択された縫製区間のみを他の縫製区間と異なる色彩で表示する。さらに、上キーB6の入力を検知すると、MPU81は、第一縫製区間から反時計方向に隣接する縫製区間を選択すると共に当該選択された縫製区間のみを他の縫製区間と異なる色彩で表示し、下キーB6の入力を検知すると、MPU81は、第一縫製区間から時計方向に隣接する縫製区間を選択すると共に当該選択された縫製区間のみを他の縫製区間と異なる色彩で表示する。
次いで、MPU81は、所定の縫製区間を選択された状態でいせ込み増減値設定ボタンB7の入力を検知すると、いせ込み増減値設定画面G5の表示を行う(S5)。
かかるいせ込み増減値設定画面G5の表示状態において、MPU81は、超過変化機能を実行すべき針数の入力を受け付ける(S6)。即ち、針数増減キーB8の入力を検知すると、MPU81は、初期値0から、増加又は減少のいずれかのキーの入力により数値を1ずつ加算又は減算し、増減キーB8の隣りに現在数値を表示する。
また、MPU81は、いせ込み増減値設定画面G5の表示状態において、いせ込み増減値(超過変化機能の実行時におけるいせ込み量)の入力を受け付ける(S7)。即ち、いせ込み量増減キーB9の入力を検知すると、MPU81は、初期値0から、増加又は減少のいずれかのキーの入力により数値を1ずつ加算又は減算し、増減キーB9の隣りに現在数値を表示する。なお、ここでいせ込み量として入力される数値は、当該数値に0.1[mm]を乗じた値のいせ込みが行われることを示している。
さらに、針数といせ込み増減値の入力が行われた状態でエンターキーB10の入力を検知すると、MPU81は、入力された針数といせ込み増減値と超過変化機能を実行すべき縫製区間をEEPROM84に記録すると共に、ステップ詳細画面G4の再表示を行う(S8)。
かかるステップ詳細画面G4の再表示状態において、MPU81は、上下キーB6又は終了キーB11の入力待ち状態となる(S9)。そして、上下キーB6の入力を検知すると、MPU81は、S4に戻り、新たに超過変化機能が実行される縫製区間の入力を受け付け、その後は前述と同様の設定受付処理が行われる。
また、終了キーB11の入力を検知すると、MPU81は、ステップ詳細画面G4を閉じて、編集画面G3を再表示すると共に、超過変化機能の実行データ設定入力受付を終了する(S10)。
なお、超過変化機能の実行データ設定入力において、超過変化機能を実行すべき針数か又はいせ込み増減値を0と入力設定することで、任意に超過変化機能の実行を解除することが可能である。
(動作制御手段:縫製作業中における処理)
図17は縫製作業中における縫製画面G6の表示例を示す。
差動送りミシン10の縫製作業中において、MPU81は、操作パネル17に縫製画面G6を表示する処理を行う。縫製作業は、新規データ作成画面G2により作成されたファイルに記憶された設定に従って行われるが、縫製中にあっても、いせ込み量及び差動量を変更調整することが可能である。
即ち、縫製画面G6には、画面左方下部にいせ込み量増減ボタンB12が表示され、画面右方下部に差動量増減ボタンB13が表示される。縫製作業中において、いせ込み量増減ボタンB12による増加又は減少の入力を検知すると、MPU81は、第一の上送り部31の送り量を一定量だけ増加又は減少させる動作制御を行う。また、縫製作業中において、差動量増減ボタンB13による増加又は減少の入力を検知すると、MPU81は、第二の上送り部32の送り量について絶対値入力,相対値入力,比率入力のいずれかの設定されている方法により第二の上送り部32の送り量の設定値を変更する動作制御を行う。なお、各種設定に基づいて縫製を行い、その途中で上記のようにいせ込み量又は第二の上送り部32の送り量の設定値について修正が行われた場合において、EEPROM84に記録されているもとの設定を修正後の設定に更新する処理をMPU81が行っても良い。
(差動送りミシンの動作説明)
上記構成からなる差動送りミシン10の縫製動作を図17〜図21に基づいて説明する。図18,図19,図20は縫製作業における各種の処理を示すフローチャートであり、図21は各縫製区間を順番に移行して縫製作業が行われる場合における針数といせ込み量の変化の関係を示す線図である。
ここでは、まず、前述したセミオートモードに設定されている場合における動作説明を行うものとする。
まず、差動送りミシン10の電源が投入されると、MPU81により、初期化が行われ(S11)、操作パネル17に編集画面G3が表示される(S12、図14参照)。さらに編集画面G3の表示状態において、準備完了キーB14の入力が検知されると(S13)、MPU81は縫製画面Gの表示を行う(S14)。さらに、MPU81はミシンモータ18の一回転ごとにカウントを1つ加算する針数カウンタをクリアして0にする(S15)。かかる針数カウンタは、各縫製区間の開始からのミシンモータ18の回転数をカウントするためのものである。
さらに、MPU81は、超過変化機能の実行データを参照し、超過変化機能を実行すべき縫製区間が現在の縫製区間か否かを判定する。そして、超過変化機能を実行すべき縫製区間が現在の縫製区間である場合には(S16:YES)、いせ込み増減設定フラグをセットする(S17)と共に、現在の縫製区間で設定されているいせ込み量の値にいせ込み増減値を加算した値を算出し記録する(S18)。その後、S20の処理に移行する。
また、超過変化機能を実行すべき縫製区間が現在の縫製区間ではない場合には(S16:NO)、いせ込み増減設定フラグをクリアする(S19)と共に、S20の処理に移行する。
S20において、MPU81は、ミシン起動ペダル91の入力待ち状態となる。そして、ミシン起動ペダル91の入力がない間は(S20:NO)、監視処理(A)が繰り返される(S21)。
ここで、監視処理(A)の処理内容を図20に基づいて詳説する。この監視処理(A)は、ステップ切り替えスイッチ92の入力の有無を監視するための処理である。
従って、監視処理(A)では、まずステップ切り替えスイッチ92の入力が監視され、入力がなければ監視処理は終了する(S41:NO)。
また、ステップ切り替えスイッチ92の入力をMPU81が検知すると(S41:YES)、縫製区間(ステップ)を次の縫製区間に移行させる(S42)と共に針数カウンタをクリアして0に戻す(S43)。
さらに、MPU81は、超過変化機能の実行データを参照し、超過変化機能を実行すべき縫製区間が更新された現在の縫製区間か否かを判定する。そして、超過変化機能を実行すべき縫製区間が更新された現在の縫製区間である場合には(S44:YES)、いせ込み増減設定フラグをセットする(S45)と共に、現在の縫製区間で設定されているいせ込み量の値にいせ込み増減値を加算した値を算出し記録する(S46)。その後、監視処理は終了する。
また、超過変化機能を実行すべき縫製区間が更新された現在の縫製区間ではない場合には(S44:NO)、いせ込み増減設定フラグをクリアして(S47)、監視処理を終了する。
上述の監視処理(A)が繰り返される間に、ミシン起動ペダル91の入力がMPU81により検知されると(S20:YES)、ミシンモータ18の回転駆動を開始する動作制御が行われる(S22)。
即ち、この段階で、まだいせ込み増減設定フラグがセットされていない場合には、通常の布送りが実行される。即ち、予め設定された送りピッチで下側回転送り部70が下布の送りを行い、その縫製区間で設定されたいせ込み量に従って第一の上送り部31は上布の送りを行い、予め設定された差動送り量に従って第二の上送り部32は上布の送りを行う(図21(1),(2),(3),(5)のいずれかの縫製区間の場合)。
また、この段階で、既に、いせ込み増減設定フラグがセットされている場合には、超過変化機能に従って布送りが実行される。即ち、予め設定された送りピッチで下側回転送り部70が下布の送りを行い、その縫製区間で設定されたいせ込み量にいせ込み増減値が加算された値に従って第一の上送り部31は上布の送りを行い、予め設定された差動送り量に従って第二の上送り部32は上布の送りを行う(図21(4)の縫製区間の場合)。
そして、再び監視処理(A)が行われ、ステップ切り替えスイッチ92の入力の有無が検知されると共に入力があれば次の縫製区間に移行し、さらに超過変化機能を実行すべき縫製区間であればいせ込み増減設定フラグがセットされる(S23)。
次いで、MPU81により、ミシンモータ18が一回転したか否かが検知される(S24)。即ち、ミシンモータ18が出力軸の一回転につき基準位置パルスを一度出力するように構成し、MPU81は監視処理(A)を行うと、基準位置パルスが出力されたか判定し、出力されていないときには(S24:NO)ミシン起動ペダル91が継続して踏まれているかを判定する(S25)。そして、未だ、ミシン起動ペダル91が継続して踏まれているときには、縫製が継続されると共に、再び監視処理(S23)が行われる。
また、ミシンの回転判定で一回転されたことがMPU81に検知されると(S24:YES)、いせ込み増減設定フラグがセットされているか参照され、セットされていない場合には(S26:NO)、ミシン起動ペダル91の入力判定(S25)に移行する。
一方、いせ込み増減設定フラグがセットされている場合には(S26:YES)、針数カウンタが1加算され(S27)、そのカウント値が予め設定された超過変化機能の実行針数に到達したかが判定される(S28)。実行針数に到達していない場合には(S28:NO)、ミシン起動ペダルの入力判定(S25)に移行し、入力が継続している場合には、超過変化機能に基づく縫製が継続されると共に、再び監視処理(S23)が行われる。また、針数カウンタのカウント値が予め設定された超過変化機能の実行針数に到達した場合には(S28:YES)、いせ込み増減設定値分のいせ込み量が低減されて当該縫製区間の通常のいせ込み量に戻されると共に(S29)、いせ込み増減設定フラグがクリアされる(S30)。
ミシン起動ペダルの入力判定において、ミシン起動ペダル91の入力が解除されたと判定された場合には(S25:NO)、ミシンモータ18の回転駆動が停止され(S31)、再び監視処理(A)が行われる(S32)。即ち、縫製区間の切り替え判定及び新たな縫製区間が超過変化機能を実行すべき縫製区間であるかの判定が行われる。
そして、糸切り判定が行われる(S33)。かかる判定は、糸切りの指示入力を行うスイッチ(図示略)があり、その入力検知により行われる。そして、糸切りが行われていない場合には(S33:NO)、ミシン起動ペダル91の入力待ちとなる(S20)。
また、糸切りが行われた場合には、縫製に関するデータが初期化され、新たな縫製データ(例えば、左右の袖を交互に縫製する設定であって、一方の袖の縫製が完了した場合には他方の袖の縫製データとなる)に基づく縫製画面G6が表示される(S34)。さらに、針数カウンタがクリアされるS15の処理から再開される。
上述のようにして縫製作業が行われることとなるが、上記説明は前述したセミオードモードにおける処理による縫製作業を示している。一方、フルオートモードにおける処理の場合には、ミシンモータの駆動と共に連動して動作する送りパルス数と単位パルス量(0.1[mm])とを乗算して縫製距離を算出し、当該縫製区間の設定縫製距離との比較判定を行い、算出値が設定距離に至ったときに縫製区間が切り替わる処理が行われる。従って、ステップ切り替えスイッチ92の入力検知は行われないが、縫製区間が切り替わるたびに、新たな縫製区間が超過変化機能の実行すべき縫製区間であるかの判定は行われる。
また、フルオートモードにあっても、超過変化機能を図21に示すように当該縫製区間への切り替え時に実行しても良いが、フルオートモードでは、その縫製区間の切り替えがいつ行われるかを認識することが可能であることから、図22の(4)の区間と(5)の区間の間に示すように、その縫製区間の切り替えの手前で超過変化機能を実行させることも可能である。その場合、ミシンモータ18のカウント値と送りピッチとの乗算値が、(その縫製区間の縫製距離−超過変化機能の実行すべき縫製距離)に到達した場合に超過変化機能による縫製が実行される。
(実施形態の効果)
上記構成からなる差動送りミシン10にあっては、動作制御手段80が、超過変化機能の実行により、図21に示す(4)の縫製区間の切り替えにおいて、いせ込み量の変化量を予定されている場合よりも一時的に大きく変化させる動作制御を行うことから、構造的或いは機械的な要因等によりいせ込み量の切り替えにおける応答性の遅れが生じ、実際上は図21中における曲線Cに示すようないせ込み量の変化を生じる場合であっても、その遅れ分の影響を低減することが可能となる。このため、本来予定していたいせ込み量により近い状態が確保され、縫い品質の向上を図ることが可能となる。
また、超過変化機能の実行時におけるいせ込み量の変化量とその実行期間となる針数を予め任意に設定することができるので、いせ込み量の切り替えにおける応答性の遅れを解消すべき最も適切ないせ込み量及びその期間を設定することが可能となる。従って、本来予定していたいせ込み量にさらに近い状態を確保することができ、縫い品質のさらなる向上を図ることが可能となる。
なお、本実施形態では、いせ込み量について超過変化機能を実行しているが、各縫製区間ごとに、糸張力等のパラメータについて個別に設定がなされており、且つ当該パラメータについて動作制御手段80により動作制御が可能である場合には、当該糸張力等のパラメータについて超過変化機能を応用して適用しても良い。
即ち、動作制御手段80が、所定の縫製区間の切り替えに際して、切り替えに前後する二つの縫製区間について予め設定された糸張力等のパラメータの変化量よりも、一時的に大きく変化させる動作制御を行っても良い。かかる場合も、機械的或いは構造的な要因により当該糸張力等のパラメータの応答性に遅れを生じている場合あっては、その応答性の遅れの影響を低減することが可能である。
発明の実施形態たる差動送りミシンを示す斜視図である。 針板の上方に位置する差動送りミシンの構成を示す斜視図である。 縫い針の周囲の構成を示す拡大斜視図である。 布押さえをZ軸方向から見た側面図である。 第一の上送り部をその一部を切り欠いてZ軸方向から見た側面図である。 第二の上送り部をその一部を切り欠いてZ軸方向から見た側面図である。 上下動手段及び上送り駆動手段の斜視図である。 上送り駆動手段をZ軸方向から見た図である。 布載置部,下側回転送り部及び下送り駆動手段の一部分解した斜視図である。 差動送りミシンの制御系を示すブロック図である。 操作パネルに表示される編集画面の表示例である。 操作パネルに表示される新規データ作成画面の表示例である。 超過変化機能実行データ設定処理を示すフローチャートである。 縫製区間データを読み出した状態における操作パネルに表示される編集画面の表示例を示す。 操作パネルに表示されるステップ詳細画面の表示例を示す。 操作パネルに表示されるいせ込み増減値設定画面の表示例を示す。 操作パネルに表示される縫製作業中における縫製画面の表示例を示す。 縫製作業における各種の処理を示すフローチャートを示す。 図18に続く縫製作業における各種の処理を示すフローチャートを示す。 図19における監視処理を示すフローチャートを示す。 各縫製区間を順番に移行して縫製作業が行われる場合における針数といせ込み量の変化の関係を示す線図である。 各縫製区間を順番に移行して縫製作業が行われる場合における針数といせ込み量の変化の関係を示す線図であって、縫製区間の切り替え前に超過変化機能を実行した場合の例を示す。
符号の説明
10 差動送りミシン
11 縫い針
30 上側回転送り部
60 上送り駆動手段
70 下側回転送り部(下送り部)
74 下送り駆動手段
80 動作制御手段

Claims (7)

  1. 上送り装置と下送り装置により上布と下布のそれぞれの送り量に差を設けて縫製を行う差動送りミシンであって、
    前記上送り装置及び下送り装置の動作制御手段が、
    縫製時に切り替わる複数の縫製区間ごとにいせ込み量を設定入力可能とすると共に、
    所定の縫製区間の切り替えに際して、切り替えに前後する二つの縫製区間での予め設定されたいせ込み量の変化量よりも、一時的に大きく変化させる動作制御を行う超過変化機能を備えることを特徴とする差動送りミシン。
  2. 前記動作制御手段は、前記超過変化機能によるいせ込み量の変化量と変化針数を予め設定入力可能とすることを特徴とする請求項1記載の差動送りミシン。
  3. 前記動作制御手段は、前記超過変化機能の実行の解除を設定入力可能とすることを特徴とする請求項1又は2記載の差動送りミシン。
  4. 前記各縫製区間の切り替えを指示入力する切替指示入力手段を備えると共に、
    前記動作制御手段は、前記切替指示入力手段による切り替え指示により順次前記各縫製区間を切り替えると共に、前記超過変化機能は前記切替指示入力手段による切り替え指示入力後に実行することを特徴とする請求項1,2又は3記載の差動送りミシン。
  5. 前記動作制御手段は、
    前記各縫製区間ごとにその縫製を行う長さを設定入力可能とすると共に、
    縫製時に前記各縫製区間ごとに縫製される長さを積算して、設定長さになると次の縫製区間に切り替える動作制御を行うことを特徴とする請求項1,2又は3記載の差動送りミシン。
  6. 前記動作制御手段は、前記超過変化機能を前記所定の縫製区間への切替の手前で実行することを特徴とする請求項5記載の差動送りミシン。
  7. 前記動作制御手段は、前記超過変化機能を前記所定の縫製区間への切替後に実行することを特徴とする請求項5記載の差動送りミシン。
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