JP2005080818A - コンタクトレンズの殺菌/消毒方法及び装置 - Google Patents

コンタクトレンズの殺菌/消毒方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 コンタクトレンズの殺菌乃至は消毒操作における安全性を高め得るコンタクトレンズの殺菌/消毒方法を提供すること。
【解決手段】 カチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤を含有する殺菌/消毒液中にコンタクトレンズを浸漬して、かかるコンタクトレンズの殺菌乃至は消毒を行なう一方、該殺菌/消毒液に接触して、前記殺菌剤若しくは消毒剤の活性を失活させるアニオン性物質を存在させ、更に、該アニオン性物質に対する該殺菌/消毒液中の殺菌剤若しくは消毒剤の接触を制限する制限手段を設けて、かかるアニオン性物質による該殺菌剤若しくは消毒剤の失活速度を低減せしめることにより、前記コンタクトレンズを殺菌乃至は消毒した後に、前記殺菌/消毒液の殺菌力又は消毒力を低下又は消失せしめた。
【選択図】 なし

Description

本発明は、コンタクトレンズの殺菌/消毒方法及び装置に係り、特に、コンタクトレンズの殺菌乃至は消毒に用いられる殺菌/消毒液の殺菌力又は消毒力を一定時間持続させた後、消失せしめるようにすることにより、コンタクトレンズを有利に殺菌乃至は消毒処理する方法と、そのための装置に関するものである。
従来より、コンタクトレンズは、その材質に応じて、非含水性コンタクトレンズと含水性コンタクトレンズとに分類されたり、また、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズとに分類されたり、更には、非イオン性コンタクトレンズとイオン性コンタクトレンズとに分類されたりしている。そして、それら何れのコンタクトレンズにあっても、それが継続して使用される場合において、コンタクトレンズを眼から外して保管している間に、レンズ表面に付着した細菌等の微生物が増殖する恐れがあるところから、一般に、コンタクトレンズに対しては、その装用前において消毒を施すことが必要とされているのであり、特に、ソフトコンタクトレンズにあっては、細菌等の微生物が繁殖しやすいために、装用前の消毒が極めて重要となっている。
このため、従来から、所定の殺菌剤若しくは消毒剤を含有せしめてなるコンタクトレンズ用液剤、即ち殺菌/消毒液が用いられ、この殺菌/消毒液に、コンタクトレンズが浸漬されて、目的とする殺菌/消毒処理が実施されている。そして、そのようなコンタクトレンズの殺菌/消毒液に添加せしめられる殺菌剤乃至は消毒剤としては、例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)にて代表されるビグアニド化合物や、塩化ベンザルコニウム、ポリクオタニウム(Polyquaternium)等にて代表される4級アンモニウム化合物等のカチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤が、他の殺菌剤又は消毒剤に比して特に有用な殺菌・消毒特性を有するところから、広く採用されている。また、そのような目的をもったコンタクトレンズ用液剤が、例えば、殺菌剤乃至は消毒剤を含む、洗浄、すすぎ、保存可能な殺菌又は消毒液等としてのマルチパーパスソリューションと呼ばれて、用いられてきている。
ところで、それら従来からの有用なコンタクトレンズ用液剤としての殺菌/消毒液は、簡便に用いることが出来るようになっている一方、その使用方法によっては、殺菌/消毒液中の殺菌剤又は消毒剤が、コンタクトレンズに付着した形態において直接に眼に入る恐れがあり、特に殺菌/消毒効果を高めるべく、殺菌剤乃至は消毒剤の濃度を高めたりすると、そのような殺菌剤乃至は消毒剤の侵入の恐れは更に大きくなって、眼刺激等の障害が惹起される恐れもあり、安全性の面から問題を生じることとなる。
このため、そのような問題に対処すべく、かかるコンタクトレンズ用の殺菌/消毒液がカチオン性の殺菌/消毒剤(カチオン性成分)を含有しているところから、そのようなカチオン性成分を、アニオン性成分との間においてイオン的な結合を図り、かかるカチオン性成分の殺菌力乃至は消毒力を消失させて、失活せしめる方策が検討されてきており、例えば、特開平5−237172号公報(特許文献1)には、陽イオン抗菌剤と、コンタクトレンズの消毒を可能にする速度で、該抗菌剤を充分に除去し、消毒されるコンタクトレンズ表面への抗菌剤の蓄積を防止する捕捉要素とを用いて、コンタクトレンズを滅菌或いは消毒する方法が明らかにされている。そしてそこでは、所定の電荷に荷電した抗菌剤を用いる場合に、捕捉要素としては、そのような電荷を補完するような材料を用いることが明らかにされ、更に、そのような抗菌剤として、陽イオン抗菌剤又は陰イオン抗菌剤が、また捕捉要素としては、イオン交換樹脂やN−アシルサルコシン、負に荷電のスルホン酸基を有する反応性染料等が、例示されている。
また、カチオン性成分(殺菌/消毒剤)と共に、アニオン性成分を含むコンタクトレンズ用液剤として、特表2001−516713号公報(特許文献2)には、カチオン性抗菌剤であるPHMBとアニオン性ポリマーであるキサンタンを含む溶液を用い、この溶液中に、コンタクトレンズを浸漬せしめる例が示されており、更に、特開2000−241773号公報(特許文献3)には、カチオン性抗菌剤であるPHMBと共に、アニオン性界面活性剤、例えばDOSS(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)を併用してなるコンタクトレンズ用処理溶液も、明らかにされている。
しかしながら、コンタクトレンズが浸漬せしめられる液剤中に、カチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤の如きカチオン性成分と共に、アニオン性成分が共存せしめられると、それら両成分のイオン的な結合が迅速に惹起されることとなるところから、カチオン性の殺菌剤乃至は消毒剤の殺菌/消毒力が、直ちに低下して、失活してしまい、充分な時間の間、コンタクトレンズを殺菌剤乃至は消毒剤に接触させることが困難となり、そのために、殺菌乃至は消毒処理を効果的に施し得なくなるという問題があり、また、上記した特許文献1に明らかにされている捕捉要素としてのアニオン性成分を用いた場合においても、殺菌剤/消毒剤の失活速度を有効にコントロールすることは困難であって、適切な殺菌/消毒時間の維持と適度な失活時間とのバランスを保つことは難しいという問題が内在している。加えて、特許文献2、3においては、カチオン性抗菌剤であるPHMBの抗菌力を一定時間保持させた後、それを失活せしめるという思想についても、何等、明らかにされてはいないのである。
ここで、本発明に関連する先行技術文献としては、以下のものがある。
特開平5−237172号公報 特表2001−516713号公報 特開2000−241773号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、コンタクトレンズの殺菌乃至は消毒操作における安全性を高め得るコンタクトレンズの殺菌/消毒方法を提供することにあり、また、そのような方法に好適に用いられ得るコンタクトレンズの殺菌/消毒装置を提供することにあり、更に、コンタクトレンズ殺菌/消毒液中のカチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤の失活速度を効果的にコントロールして、適切な殺菌乃至は消毒時間の維持と適度な失活時間とのバランスを有利に保つことの出来るコンタクトレンズの殺菌/消毒処理技術を提供することにある。
そして、本発明にあっては、そのような課題を解決するために、カチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤を含有する殺菌/消毒液中にコンタクトレンズを浸漬して、かかるコンタクトレンズの殺菌乃至は消毒を行なう一方、該殺菌/消毒液に接触して、前記殺菌剤若しくは消毒剤の活性を失活させるアニオン性物質を存在させ、更に、該アニオン性物質に対する該殺菌/消毒液中の殺菌剤若しくは消毒剤の接触を制限する制限手段を設けて、かかるアニオン性物質による該殺菌剤若しくは消毒剤の失活速度を低減せしめることにより、前記コンタクトレンズを殺菌乃至は消毒した後に、前記殺菌/消毒液の殺菌力又は消毒力を低下又は消失させることを特徴とするコンタクトレンズの殺菌/消毒方法を、その要旨とするものである。
なお、この本発明に従うコンタクトレンズ殺菌/消毒方法の望ましい態様の一つによれば、前記アニオン性物質としては、親水性のアニオン性ホモポリマー或いは、アニオン性モノマーと親水性のノニオン性モノマーとの共重合によって得られる親水性のアニオン性コポリマーが、有利に用いられ得ることとなる。
また、本発明の望ましい他の態様によれば、前記親水性のアニオン性コポリマーは、前記アニオン性モノマー:ノニオン性モノマー=90:10〜10:90の共重合割合(重量比)において構成されている。
さらに、本発明に係るコンタクトレンズの殺菌/消毒方法の更に他の望ましい態様によれば、上述した各態様におけるアニオン性物質は架橋されており、これによって、その形状安定性等の特性が高められている。
一方、本発明に従うコンタクトレンズの殺菌/消毒方法にあっては、前記制限手段は、望ましくは、前記アニオン性物質を、前記殺菌/消毒液から区画するように配置されており、また、他の望ましい態様によれば、前記制限手段は、前記アニオン性物質を覆うように設けられている。
また、本発明の望ましい態様によれば、前記制限手段は親水性であり、且つ架橋されているノニオン性ポリマーにて構成されていることが好ましい。
さらに、本発明の他の望ましい態様によれば、前記制限手段として、10〜170μmの細孔径を有するフィルタが有利に用いられ、中でも、好ましくは、そのようなフィルタは40〜130μmの厚みを有しており、且つその複数が重ね合わされて、制限手段として用いられることとなる。
加えて、上記した本発明に従うコンタクトレンズの殺菌/消毒処理方法の各態様において、好ましくは、前記カチオン性殺菌剤若しくは消毒剤は、ビグアニド系殺菌若しくは消毒剤であることが望ましく、更に、そのようなビグアニド系殺菌若しくは消毒剤としては、ポリヘキサメチレンビグアニドが有利に用いられることとなる。
また、本発明にあっては、上記した本発明に従うコンタクトレンズの殺菌/消毒方法を有利に実施するために、(a)カチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤を含有する殺菌/消毒液を収容し、処理されるべきコンタクトレンズが浸漬せしめられる処理容器と、(b)該処理容器内に存在せしめられ、前記殺菌/消毒液に接触して、前記殺菌剤若しくは消毒剤の活性を失活させるアニオン性物質と、(c)該処理容器内において前記アニオン性物質を前記殺菌/消毒液から区画するように配置され、該アニオン性物質に対する該殺菌/消毒液中の殺菌剤若しくは消毒剤の接触を制限して、かかるアニオン性物質による該殺菌剤若しくは消毒剤の失活速度を低減せしめることにより、前記コンタクトレンズを殺菌乃至は消毒した後に、前記殺菌/消毒液の殺菌力又は消毒力を低下又は消失させる制限手段とを、含むことを特徴とするコンタクトレンズの殺菌/消毒装置をも、その要旨とするものである。
なお、そのような本発明に従うコンタクトレンズ用の殺菌/消毒装置においては、前記した本発明に従うコンタクトレンズの殺菌/消毒方法の好ましい態様の何れもが、同様に望ましい態様として採用され得るところであり、そしてそのような態様の採用によって、本発明に従うコンタクトレンズの殺菌/消毒装置としての機能が、より一層有利に発揮され得ることとなる。
このように、本発明においては、殺菌剤若しくは消毒剤の活性を失活させるアニオン性物質を用いると共に、かかるアニオン性物質に対する殺菌/消毒液中の殺菌剤若しくは消毒剤の接触を制限する制限手段を設けて、そのようなアニオン性物質による殺菌剤若しくは消毒剤の失活速度を低減せしめることにより、コンタクトレンズを殺菌乃至は消毒した後に、殺菌/消毒液の殺菌力又は消毒力を低下又は消失させるようにしたことによって、その失活速度を効果的にコントロールすることが出来ることとなり、以て、適切な殺菌若しくは消毒時間の維持と適度な失活時間とのバランスを有利に取ることが出来ることとなったのである。即ち、コンタクトレンズの殺菌/消毒液中の殺菌/消毒剤が、適度なスピードにて、アニオン性物質に吸着されて、失活することとなるところから、コンタクトレンズの殺菌又は消毒に充分な時間が確保されて、有効な殺菌/消毒処理が行なわれる一方、そのような殺菌乃至は消毒処理の後の、充分な時間の経過後における眼に対する装用時までには、殺菌/消毒液中の殺菌/消毒剤は、アニオン性物質にて吸着されて、その殺菌力乃至は消毒力が低下せしめられ、失活されるものであるところから、そのようなアニオン性物質の存在下において殺菌/消毒処理されたコンタクトレンズは、眼に対する安全性がより一層向上せしめられたものとなっているのである。
要するに、かかる本発明に従うコンタクトレンズの殺菌/消毒方法によれば、コンタクトレンズに対して、有効な殺菌乃至は消毒処理が施される一方、そのような殺菌乃至は消毒処理が終了したコンタクトレンズには、殺菌剤乃至は消毒剤は、ほとんど残存することがないところから、その再装用に際して、その安全性は著しく向上され得ることとなるのである。
さらに、本発明の前記したコンタクトレンズの殺菌/消毒装置にあっては、所定大きさの処理容器内に、殺菌剤若しくは消毒剤の活性を失活させるアニオン性物質が、本発明に従う制限手段にて殺菌/消毒液から区画された状態において、収容、配置されているところから、そのような処理容器内に、殺菌/消毒液と共に、コンタクトレンズを収容せしめるだけで、所定時間の経過後には、安全で、再装用可能な殺菌/消毒済みのコンタクトレンズを得ることが出来ることに加えて、アニオン性物質における殺菌/消毒剤の吸着力が低下するまでは、かかる処理装置を繰り返してコンタクトレンズの殺菌/消毒処理に用いることが可能である。
ところで、本発明は、カチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤の活性を失活させるアニオン性物質に対する殺菌/消毒液中の殺菌剤若しくは消毒剤の接触を制限する制限手段を介して、かかるアニオン性物質が、殺菌/消毒液に接触せしめられるようにして、かかる殺菌/消毒液の殺菌力又は消毒力を、コンタクトレンズの殺菌乃至は消毒に充分な時間の経過後において低下乃至は消失させるようにしたものであるが、そこで用いられる殺菌/消毒液としては、カチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤として従来から公知の各種のビグアニド系や4級アンモニウム塩系等の殺菌剤若しくは消毒剤を含む公知の液剤が、適宜に用いられることとなる。中でも、ビグアニド系殺菌/消毒剤にあっては、4級アンモニウム塩系の殺菌/消毒剤に比して、他の液剤成分による殺菌阻害を受け難く、少量であっても優れた殺菌効果を奏し得ると共に、本発明に従う所定のアニオン性物質による失活時間の制御を容易に行い得るところから、より一層有利に用いられるのである。
なお、上記したカチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤のうち、ビグアニド系殺菌/消毒剤としては、例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)や、下記の構造式(I)にて示されるビグアニド系ポリマー等を挙げることが出来る。
Figure 2005080818
一方、4級アンモニウム塩系殺菌/消毒剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウム塩や、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のトリアルキルベンジルアンモニウム塩の如きアルキルアンモニウム塩類;ヒドロキシエチルアルキルイミダゾリンクロライドに代表されるアルキルヒドロキシアルキルイミダゾリン4級塩類;アルキルイソキノリニウムブロマイドに代表されるアルキルイソキノリニウム塩類;アルキルピリジニウム塩類;アミドアミン類等のカチオン性界面活性剤の他、下記の構造式(II)〜(IV)にて表される4級アンモニウムポリマーや、特許第2550036号明細書に開示の如き、ジアミン類とジハロゲン化合物との縮合体、特開平4−231054号公報、特表平8−512145号公報、特開平11−249087号公報等に開示されているポリカチオン性のものや、ハロゲン化ベンザルコニウム等が挙げられる。
Figure 2005080818
Figure 2005080818
Figure 2005080818
そして、かくの如きカチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤は、通常、0.000001〜0.5重量%(w/w%)程度、好ましくは0.000001〜0.3重量%(w/w%)程度、更に好ましくは、0.00001〜0.1重量%(w/w%)程度の範囲で用いられることとなる。なお、そのような殺菌剤乃至は消毒剤の含有量が過少となる場合には、コンタクトレンズに対する充分な殺菌効果乃至は消毒効果を得ることが困難となるのであり、また、過多となる場合には、コンタクトレンズへの吸着が促進される等の問題に加えて、本発明に従って、所定の制限手段を介在しても、そのような殺菌/消毒剤の失効が困難となる場合を生じる恐れがある。
また、そのようなコンタクトレンズの殺菌/消毒液中には、上記の如きカチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤の他に、よく知られているように、その用途等に応じて、更に、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤、界面活性剤、キレート化剤、増粘剤等の、従来から点眼剤やコンタクトレンズ用殺菌液等のコンタクトレンズ用液剤、及び化粧品等の液剤等に添加、含有せしめられている、公知の各種の添加剤が、適宜に選択されて、含有せしめられていても、何等、差し支えない。
さらに、かくの如き殺菌/消毒液にて殺菌乃至は消毒処理せしめられるコンタクトレンズとしても、本発明にあっては、その種類が何等限定されるものではなく、例えば、非含水、低含水、高含水等の全てに分類されるソフトコンタクトレンズや、ハードコンタクトレンズが、その対象となり得るものである。中でも、殺菌剤成分乃至は消毒剤成分が内部に取り込まれやすいソフトコンタクトレンズに対して、本発明を適用することは、そのようなレンズへの殺菌成分乃至は消毒成分の取り込み乃至は吸着を軽減若しくは阻止する上においても、有効となるものである。
ここにおいて、本発明は、上述の如き殺菌/消毒液にてコンタクトレンズを殺菌乃至は消毒するに際して、かかる殺菌/消毒液の殺菌力又は消毒力を低下乃至は消失させ、失活せしめるために、カルボキシル基やスルホン酸基等の酸性基を有するアニオン性物質が用いられ、このアニオン性物質に対して殺菌/消毒液が接触せしめられるようにされるのであるが、本発明にあっては、そのようなアニオン性物質として、一般に、アニオン性モノマーのホモポリマーにて与えられる親水性のアニオン性ホモポリマーや、アニオン性モノマーと親水性を有するノニオン性モノマーとの共重合によって得られる親水性のアニオン性コポリマーが有利に用いられ得る他、アニオン性モノマーにて代表されるアニオン性の低分子化合物をも用いることが可能であり、また、そのようなアニオン性物質は、所定形状の固体形態において用いられ得ると共に、液体形態においても用いることは可能である。
なお、この本発明に従うアニオン性物質として用いられる親水性のアニオン性ホモポリマーやアニオン性コポリマーを与えるアニオン性モノマーとしては、酸性基を有する不飽和モノマー(化合物)であって、具体的には、(メタ)アクリル酸として表示されるアクリル酸、メタクリル酸;無水マレイン酸;マレイン酸;フマール酸;フマール酸誘導体等のカルボン酸基含有の不飽和モノマーが、有利に用いられることとなる。そして、それらアニオン性モノマーの中でも、カチオン性殺菌/消毒剤の活性を有効に失活させるという点よりして、(メタ)アクリル酸が、特に有利に用いられることとなる。
また、かかるアニオン性モノマーと共重合せしめられるノニオン性モノマーは、得られるコポリマーの親水性を高めて、殺菌/消毒剤の吸着(収着、拡散吸収)を制御し易くするために、親水性を有していることが必要である。そして、そのような親水性を有するノニオン性モノマーとしては、具体的には、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N ,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド若しくはその誘導体(N置換);N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカプリルラクタム、1−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン等のビニルラクタム類;アミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシル基含有(メタ)アクリレート;アミノスチレン;ヒドロキシスチレン等を挙げることが出来、これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて、用いることが出来る。そして、これらの中でも、殺菌又は消毒剤の吸着(収着、拡散吸収)を制御し易いという点から、水酸基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド若しくはそのN置換誘導体、及びビニルラクタム類からなる群より選ばれた少なくとも1種以上が、有利に用いられ、更に、水酸基含有(メタ)アクリレート、或いは(メタ)アクリルアミド若しくはそのN置換誘導体が、特に有利に用いられることとなる。
なお、本明細書において、モノマー表記に関し、「・・・(メタ)アクリレート」とあるのは、「・・・アクリレート」及び「・・・メタクリレート」の二つの化合物を示すものであり、その他の(メタ)アクリル化合物についても、同様に二つの化合物を表す表現として、理解されるべきである。
また、本発明に従うアニオン性物質としての親水性のアニオン性コポリマーを与える、アニオン性モノマーと親水性のノニオン性モノマーとの共重合割合は、殺菌/消毒剤の有効な失活と適切な殺菌/消毒時間の維持とのバランス等を考慮して、適宜に選定されることとなるが、一般に、共重合割合(重量比)において、アニオン性モノマー:ノニオン性モノマー=90:10〜10:90の範囲内において選定されることとなる。なお、かかるアニオン性モノマーの共重合割合が多くなり過ぎると、殺菌/消毒剤の失活速度が速くなり過ぎ、コンタクトレンズの殺菌又は消毒に充分な時間の間、維持することが困難となる問題が惹起され易く、また、ノニオン性モノマーの割合が多くなり過ぎて、アニオン性モノマーの割合が少ないと、眼に対する再度の装用に至る時間までに、殺菌/消毒剤が充分に失活され難くなる等の問題を惹起する恐れがある。
さらに、前記したアニオン性モノマーの単独重合体である、親水性のアニオン性ホモポリマーや、アニオン性モノマーとノニオン性モノマーとを共重合して得られる親水性のアニオン性コポリマーは、殺菌/消毒剤の吸着(収着)を制御し易くすることに加えて、ポリマーの形状安定性を確保する等の点から、従来と同様な架橋性モノマーを用いて、架橋されていることが望ましい。そして、そのような架橋性モノマーの代表例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アジピン酸ジアリル、トリアリルジイソシアネート、α−メチレン−N−ビニルピロリドン、4−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、1,4−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル]ベンゼン、1,2−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル]ベンゼン、1,2−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル]ベンゼン等が挙げられ、そしてこれらは、単独で、または2種以上を組み合わせて、用いられることとなる。
なお、このような架橋性モノマーは、前記した親水性のアニオン性ホモポリマーやコポリマーを架橋せしめるために用いられるものであって、それらホモポリマーやコポリマーを与えるモノマーの単独重合乃至は共重合時に、その重合系に存在せしめられるものであり、一般に、その使用量は、単独重合せしめられるアニオン性モノマーの100重量部あたり、又は共重合せしめられるアニオン性モノマーとノニオン性モノマーの合計量の100重量部あたり、0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上の割合とされ、これによって、機械的強度の向上効果や耐久性の付与効果が充分に発揮されるのである。また、そのような架橋性モノマーの上限としては、親水性のアニオン性ホモポリマーやコポリマーの特性等に悪影響をもたらさないように、一般に、アニオン性モノマーの100重量部に対して、又はアニオン性モノマーとノニオン性モノマーの合計量の100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下の値が採用されることとなる。
一方、かかるアニオン性物質に対して、殺菌/消毒液が直接に接触しないように、それらアニオン性物質と殺菌/消毒液との間に介在せしめられる制限手段は、その介在によって、アニオン性物質に対する殺菌/消毒液中の殺菌剤若しくは消毒剤の接触を制限し、これにより、殺菌剤若しくは消毒剤が適度のスピードにてアニオン性物質に収着、拡散吸収等により吸着されることとなるのであり、以て、コンタクトレンズの殺菌乃至は消毒に充分な時間の間保持されるものの、眼に装用する時間に至ったときには、殺菌剤若しくは消毒剤が失活しており、それ故に、安全な再装用を可能ならしめるものである。そして、そのような制限手段としては、代表的には、親水性を有するノニオン性ポリマーや、微細な細孔径を有するフィルターを挙げることが出来る。
ここにおいて、制限手段としてのノニオン性ポリマーとは、水酸基の如き親水性基は有するが、酸性基や塩基性基の如きイオン性基は含まない、親水性の不飽和モノマー(化合物)を用いて、その単独若しくは複数を重合乃至は共重合せしめて得られる重合体であって、具体的には、先に例示のノニオン性モノマーの一種若しくは二種以上からなる重合体を挙げることが出来る。なお、このノニオン性ポリマーは、殺菌剤若しくは消毒剤のアニオン性物質への吸着(収着、拡散吸収)の制御を容易と為すべく、親水性とされており、また、そのような殺菌/消毒剤の吸着(収着)を制御し易いことに加えて、ポリマーの形状安定性という観点等からして、有利には、前述せる如き架橋性モノマーを用いて、架橋構造が導入されてなる重合体構造とされている。
また、本発明において制限手段として用いられるフィルタにあっても、それは、上記したノニオン性ポリマーと同様な、殺菌/消毒剤のアニオン性物質に対する接触制限作用を備えている必要があるのであって、そのために、10〜170μmの細孔径を有している必要がある。けだし、その細孔径が小さ過ぎたり、大き過ぎたりすると、殺菌/消毒剤のアニオン性物質への吸着(収着、拡散吸収)が制御し難くなるからである。また、そのような殺菌/消毒剤のアニオン性物質への吸着制御をさらに有効に行い得る上において、かかるフィルタは、40〜130μmの厚みを有し、且つその複数が重ね合わされて、例えば2重乃至4重に重ね合わされて、用いられることが望ましい。このような特性を有するフィルタは、よく知られており、例えば、日本ミリポア社製のナイロン・ネット・フィルタNY11,NY20、NY30、NY41、NY60、NY80、NY1H、NY2H、NY4H、NY6H等を用いることが出来る。
なお、前記したアニオン性物質としての親水性のアニオン性ホモポリマーやアニオン性コポリマー、及び制限手段として用いられる親水性のノニオン性ポリマーは、先に例示したアニオン性モノマーやノニオン性モノマーを用い、また、必要に応じて架橋性モノマーの存在下において、従来から公知の各種の重合手法に従って単独重合乃至は共重合することにより、容易に得ることが可能である。例えば、ラジカル重合開始剤を用いて重合せしめる方法や、マイクロ波、紫外線、放射線(ガンマ線)等の電磁波を照射して、重合を行なう方法等が採用され、その際、ラジカル重合開始剤としても公知の各種のものが適宜に用いられ、また、光線等を用いて重合せしめる場合にあっては、公知の光重合開始剤や増感剤が適宜に用いられることとなる。更に、重合形式としても、塊状重合法、溶媒等を用いた溶液重合法等の公知の各種の重合手法が、目的とするアニオン性物質や制限手段の形状乃至は形態に応じて適宜に採用され得、特に限定されるものではない。
本発明においては、かくの如き制限手段を用いて、コンタクトレンズの殺菌乃至は消毒に用いられる殺菌/消毒液が、アニオン性物質に対して直接に接触しないようにして、そのような殺菌/消毒液中のカチオン性の殺菌剤乃至は消毒剤の吸着(収着)を制御し、その失活速度を低減乃至は遅延させるものであって、そのアニオン性物質に対する殺菌/消毒剤の接触の制限形態としては、アニオン性物質の形状乃至は形態に応じて、また、制限手段の構造等に応じて、かかる制限手段が、アニオン性物質を殺菌/消毒液から区画するように配置されたり、かかるアニオン性物質を覆うように設けられる、等の適宜の形態が採用されることとなる。
具体的には、例えば、図1に示される如き、従来から公知のコンタクトレンズ用保存ケースを利用して、その内部に、本発明に従うアニオン性物質や制限手段を配置せしめるようにすれば、本発明に従うコンタクトレンズの殺菌/消毒処理は、有利に実現され得ることとなるのである。なお、このコンタクトレンズ用保存ケースは、一般に、コンタクトレンズを収容、保持するために従来から用いられてきているものであって、この保存ケース内に、所定の殺菌/消毒液を収容して、放置することにより、コンタクトレンズに対して目的とする殺菌乃至は消毒が行なわれることとなるのである。また、図1に示される構造のケースの他にも、実開平7−34433号公報等に開示の如きソフトコンタクトレンズ用ケースを利用することも可能である。
なお、かかる図1に示されるコンタクトレンズ用保存ケースは、有底円筒形状のケース本体10と、その開口部に螺着されて、それを閉塞せしめる蓋体12とから構成されており、かかるケース本体10内に、所定の殺菌/消毒液14を収容せしめる一方、蓋体12の内側に嵌着されたレンズホルダー16に、殺菌乃至は消毒処理されるべきコンタクトレンズ18を保持せしめた状態において、蓋体12をケース本体10の開口部に螺着せしめることによって、コンタクトレンズ18を収容、保持する間に、その殺菌乃至は消毒が行われ得るようになっているものである。なお、この図1に示されるコンタクトレンズの収容ケースたる保存ケースの構造については、例えば実公平7−311152号公報等に明らかにされている公知の構造のものであるところから、ここでは、更なる説明は省略することとする。
そして、このようなコンタクトレンズ用保存ケースのケース本体10内に、その底部に位置するようにして、本発明に従うアニオン性物質からなる失活材20が配置せしめられており、また、この失活材20の上部を覆うようにして、架橋された親水性のノニオン性ポリマーからなる板状の制限材22が、本発明に従う制限手段として配設されて、この制限材22を透過乃至は通過した殺菌/消毒液14のみが、失活材20に接触せしめられ得るようになっている。換言すれば、殺菌/消毒液14は、直接的には、失活材20に接触させられることがないようになっているのである。なお、ケース本体10の内壁面には、O−リング24が設けられて、制限材22の外周部との間がシールされるようになっていると共に、かかる制限材22の外周部を保持して、ケース本体10の底部側への位置決めが為されるようになっている。
従って、かかる図1に示される如く、ケース本体10内に収容された殺菌/消毒液14内に、蓋体12のレンズホルダー16に保持されたコンタクトレンズ18が浸漬せしめられて、その殺菌乃至は消毒が行なわれるに際して、ケース本体10内には、また、失活材20が、制限材22にて殺菌/消毒液14から区画された形態において、収容、配置せしめられているところから、コンタクトレンズ18の浸漬当初においては、その殺菌乃至は消毒が進行せしめられることとなるが、かかる殺菌/消毒液14中の殺菌/消毒剤は、制限材22を通過して、失活材20に接触して吸着され、漸次、失活されることとなるのであり、それ故に、所定時間の経過後においては、ケース本体10内に収容された殺菌/消毒液14は、それに含まれる殺菌/消毒剤が眼に対して悪影響をもたらさない程度の状態と為されることとなるのである。
また、本発明に従うアニオン性物質や制限手段の異なる配設例を示す図2においては、ケース本体10の内周面の全面に、本発明に従うアニオン性物質、例えば親水性のアニオン性ホモポリマーやアニオン性コポリマーを用いて形成された失活層26が、所定厚さにおいて存在せしめられ、また、この失活層26の表面を覆うようにして、本発明の制限手段に相当する制限層28が、所定のノニオン性ポリマーを用いて、所定厚さにおいて形成されている。
このように、かかる図2の構造を有するケース本体10内に収容された殺菌/消毒液14は、失活層26に直ちに接触せしめられるものではなく、制限層28を介して、接触せしめられるようになっているところから、かかる殺菌/消毒液14中の殺菌/消毒剤の失活層26への吸着、失活は、制限層28の存在によって遅延せしめられ、その失活速度が低減されることとなるところから、そのような殺菌/消毒液14に浸漬されるコンタクトレンズ(18)を殺菌乃至は消毒するための時間は、充分に確保されることとなるのであり、一方、そのような殺菌/消毒処理が充分に行なわれた後においては、かかる殺菌/消毒液中の殺菌/消毒剤は、失活せしめられて、眼に対する安全性は効果的に高められ得ているのである。なお、この図2に示される実施形態の変形例として、失活層26とケース本体10とを一体物として構成し、ケース本体10を失活層26を与える材質にて形成したり、失活層26を構成するアニオン性物質をケース本体10の材質中に含有せしめたりすることも可能である。
さらに、図3に示されるケース本体10の他の例は、本発明に従う制限手段としてのフィルターを用いた一つの具体例を示すものであって、そこにおいて、ケース本体10の底部上に所定の間隙を確保する有底円筒形状のスペーサー30が、その底部を上にして嵌入配置されており、このスペーサー30にて確保される間隙内に所定形状の失活材20が配置せしめられている。また、かかるスペーサー30の上には、本発明に従う制限手段である、10〜170μmの細孔径を有するフィルター32が配置されており、このフィルター32を透過した殺菌/消毒液14が、更に、スペーサー30の底部に設けられた通液孔34を通じて、スペーサー30にて形成された間隙内に導かれ、そして、失活材22に接触せしめられるようになっている。
従って、かかる図3に示される構造においても、フィルター32の存在によって、殺菌/消毒液14の失活材20に対する接触が制限されることとなるのであり、それ故に、かかる殺菌/消毒液中の殺菌剤若しくは消毒剤の失活速度が効果的に低減せしめられ得て、コンタクトレンズ(18)の殺菌乃至は消毒のための時間が充分に確保される一方、所定時間の経過後においては、かかる殺菌/消毒液14中の殺菌剤若しくは消毒剤が充分に失活せしめられることによって、殺菌/消毒処理が終了したコンタクトレンズ(18)の安全性は、より一層高められ得ているのである。
その他、殺菌/消毒液のアニオン性物質に対する直接的な接触を阻止する態様として、かかるアニオン性物質からなる失活材20を、本発明に従う制限手段にて直接に包み込むようにした構造を採用することも可能であり、その一例が、図4に示されている。即ち、図4の(a)においては、失活材20の全表面が、本発明に従うノニオン性ポリマーを用いて形成された、所定厚さの制限層36にて、覆われてなる形態とされているのであり、また、(b)においては、本発明に従うフィルターを与える素材にて構成される袋体38内に、失活材20が収容され、その開口部がファスナー40にて閉じられてなる構造とされている。
そして、このような図4の(a)や(b)に示される構造のものを、例えば、図1における失活材20や制限材22に代えて、ケース本体10内に収容するようにすれば、殺菌/消毒液の失活速度を有効にコントロールし得て、適切な殺菌/消毒時間の維持と、適度な失活時間とのバランスを、有利に保つことが出来ることとなる。
加えて、図5に示される例においては、本発明に従うアニオン性物質からなる粉状、粒状或いは小石状の失活物体42を、本発明に従うノニオン性ポリマーからなるシートや、所定の細孔径を有するフィルターの複数枚から構成される円形の制限シート44上に載置し、それを包み込むようにして、制限シート44を二つ折りにした後、その折畳み側の両端部を重ね合わすように折り畳み、そして、その折畳み部分をステープラー46にて固定して、その折畳み形状が開放されないようにした折畳物48を用い、この折畳物48を、図6に示されるように、それに包み込まれた失活物体42が処理容器50内に収容された殺菌/消毒液14に接触し得るようにして、浸漬せしめ、これによって、かかる殺菌/消毒液中の殺菌/消毒剤の失活速度が効果的に低減せしめられることとなる。
なお、上記した失活材20は、板状(プレート状)のものに限られるものではなく、シート状であっても、ブロック状乃至はタブレット状であっても何等差し支えなく、また粉粒状や、フィルム状物の重ね合わせ物であっても、同様に使用可能である。また、アニオン性物質や制限手段としてのノニオン性ポリマーから所定形態の失活部材(層)や制限部材(層)を形成するに際して、それらの単独にて目的とする形態の部材(層)を形成することの他、他のポリマーとの組成物の形態において目的とする部材(層)を形成することも可能である。
このように、本発明にあっては、殺菌/消毒液中のカチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤を、アニオン性物質(20,26,42)にて失活せしめるに際して、それらの間に、本発明に従う制限手段(22、32、36、38、44)を介在せしめ、以て、そのような殺菌/消毒液14の殺菌力又は消毒力が、コンタクトレンズ18の殺菌乃至は消毒に充分な時間の経過後において、低下乃至は消失せしめられ得るようにしたのである。なお、このコンタクトレンズ18の殺菌又は消毒に充分な時間としては、コンタクトレンズ18が、殺菌/消毒液14に浸漬されて、次回(再度)の使用に備えて、保存乃至は保持される時間を考慮して、適宜に決定されるところとなるが、一般に、接触開始後10分経過するまでは、好ましくは30分経過するまでは、殺菌/消毒液14の殺菌力又は消毒力が保持されていることが望ましく、また、そのような殺菌力乃至は消毒力の保持は、最大限6時間以下、好ましくは4時間程度以下とされることが望ましい。そのような殺菌/消毒液の殺菌力又は消毒力が長く保持されることは、コンタクトレンズ18の再度の装用を可能ならしめるために時間がかかり過ぎる等の問題を惹起することとなる。
そして、以上の如くして、殺菌/消毒処理して得られたコンタクトレンズにあっては、それが浸漬せしめられた殺菌/消毒液中のカチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤が、本発明に従う所定の制限手段を介してのアニオン性物質による失活作用にて失活せしめられて、眼に対する悪影響が惹起されないようになっているところから、コンタクトレンズを再び装用するに際しては、その殺菌乃至は消毒したコンタクトレンズを、生理食塩水で注ぐ等の簡単な洗浄操作を施すだけで、装用することが可能であり、更には、本発明に従って失活された殺菌/消毒液からコンタクトレンズを取り出して、そのまま、直接に、眼に装用することも可能である。
以下に、本発明の実施例を含む、幾つかの実験例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実験例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
先ず、アニオン性モノマーとして、メタクリル酸(MAA)を準備する一方、親水性を有するノニオン性モノマーとして、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を準備し、更に架橋性モノマーとして、エチレングリコールジメタクリレート(EGMA)を準備した。そして、それぞれのモノマー(MAA、HEMA)の100重量部に対して、架橋性モノマー(EGMA)の1重量部を配合して、通常のラジカル重合法により架橋されたMAAホモポリマーのプレート(厚さ:1mm)を得ると共に、架橋されたHEMAホモポリマーの各種厚さ(1mm、3mm、5mm、6mm)のプレートを得た。
そして、このようにして得られた二種のプレートのうち、MAAホモポリマーのプレートは、図1に示されるコンタクトレンズ用保存ケースにおいて、失活材20として用い、また各種厚さのHEMAホモポリマーのプレートは、制限材22として用いて、ケース本体10内にセットした後、5ppmの濃度のPHMB溶液(殺菌/消毒液14)の20mlに4時間浸漬せしめる一方、浸漬開始から所定時間毎にPHMB溶液の4mlを採取し、それについて、カンジダ・アルビカンス(Candida Albicans IFO 1594)を用いて、殺菌又は消毒効力試験を実施した。なお、その試験方法は、ISO14729 Stand Alone Testに従った。殺菌又は消毒効力について、対数に換算した菌減少数(log reduction)として求め、その結果を、下記表1に示した。
Figure 2005080818
ところで、かかる殺菌又は消毒効力試験において、log reductionが1以上となると、殺菌又は消毒活性があり、1未満になると、失活していると考えられる一方、コンタクトレンズの殺菌又は消毒処理は、10分〜30分程度で充分であることを考えると、上記の表1の結果よりして、殺菌/消毒処理の開始後5分程度までは活性維持されており、また、4時間後においては、ほぼ失活していることが認められる。特に、制限材22(HEMAホモポリマープレート)の厚みが約1mm〜約3mmの場合において、30分〜1時間後には殺菌/消毒剤が失活しており、好ましい形態となっていることがわかる。
アニオン性物質として、先の実施例1において用いたMAAホモポリマーの粒状物の約1gを準備する一方、本発明に従う制限手段である、細孔径を有するフィルターとして、日本ミリポア社製のナイロン・ネット・フィルターNY11(孔径:11μm、厚さ:60μm)を準備した。
次いで、かかるMAAホモポリマーの粒状物を、図5に示される如く、失活物体42として用い、また、ナイロン・ネット・フィルターNY11を3枚に重ねてなるものを、制限シート44として用い、そして、かかる失活物体42を制限シート44にて包み込むようにして折り畳み、ステープラー46にて固定することにより、失活物体42を包み込んでなる折畳物48を得た。その後、この折畳物48を、図6に示される如くして、かかる折畳物48内に包み込まれた失活物体42が処理容器50に収容された殺菌/消毒液14中に浸漬されるようにして、処理容器50にセットし、実施例1と同様にして、PHMB溶液を用いたカンジダ・アルビカンスに対する殺菌又は消毒効力試験を行ない、その結果を、log reductionとして、下記表2に示した。
Figure 2005080818
かかる表2の結果から明らかなように、本実施例では、浸漬開始から20分程度までは充分な殺菌乃至は消毒効力を示しているが、30分経過すると、殺菌/消毒液は失活しており、目に対する安全性が向上され得ていることが認められる。
本発明に従うコンタクトレンズの殺菌/消毒処理方法を、コンタクトレンズ用保存ケースを用いて、実施する形態の一例を示す縦断面説明図である。 本発明に従うコンタクトレンズの殺菌/消毒処理方法の他の実施の一例を示す、ケース本体部分のみの縦断面説明図である。 本発明に従うコンタクトレンズの殺菌/消毒処理方法の更に他の例を示す、ケース本体部分のみの縦断面説明図である。 本発明に従うアニオン性物質を制限手段にて取り囲んでなる態様の異なる例を示す断面説明図であって、(a)は、アニオン性物質としての失活材の表面をノニオン性ポリマーにて被覆してなる例を示し、また、(b)は、本発明に従う接触手段であるフィルターにて構成される袋体内に、アニオン性物質としての失活材を収容せしめてなる例を示している。 本発明に従うアニオン性物質としての失活物体を、本発明に従う制限手段としての制限シートにて包み込んでなる、構造の折畳物を得るための手順を示す説明図である。 図5において得られた折畳物を殺菌/消毒液に浸漬せしめてなる形態を示す断面説明図である。
符号の説明
10 ケース本体 12 蓋体
14 殺菌/消毒液 16 レンズホルター
18 コンタクトレンズ 20 失活材
22 制限材 24 O−リング
26 失活層 28 制限層
30 スペーサー 32 フィルター
34 通液孔 36 制限層
38 袋体 40 ファスナー
42 失活物体 44 制限シート
46 ステープラー 48 折畳物
50 処理容器

Claims (12)

  1. カチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤を含有する殺菌/消毒液中にコンタクトレンズを浸漬して、かかるコンタクトレンズの殺菌乃至は消毒を行なう一方、該殺菌/消毒液に接触して、前記殺菌剤若しくは消毒剤の活性を失活させるアニオン性物質を存在させ、更に、該アニオン性物質に対する該殺菌/消毒液中の殺菌剤若しくは消毒剤の接触を制限する制限手段を設けて、かかるアニオン性物質による該殺菌剤若しくは消毒剤の失活速度を低減せしめることにより、前記コンタクトレンズを殺菌乃至は消毒した後に、前記殺菌/消毒液の殺菌力又は消毒力を低下又は消失させることを特徴とするコンタクトレンズの殺菌/消毒方法。
  2. 前記アニオン性物質が、親水性のアニオン性ホモポリマー或いは、アニオン性モノマーと親水性のノニオン性モノマーとの共重合によって得られる親水性のアニオン性コポリマーである請求項1に記載のコンタクトレンズの殺菌/消毒方法。
  3. 前記親水性のアニオン性コポリマーが、前記アニオン性モノマー:前記ノニオン性モノマー=90:10〜10:90の共重合割合(重量比)において構成されている請求項2に記載のコンタクトレンズの殺菌/消毒方法。
  4. 前記アニオン性物質が、架橋されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のコンタクトレンズの殺菌/消毒方法。
  5. 前記制限手段が、前記アニオン性物質を前記殺菌/消毒液から区画するように配置されている請求項1乃至請求項4の何れかに記載のコンタクトレンズの殺菌/消毒方法。
  6. 前記制限手段が、前記アニオン性物質を覆うように設けられている請求項1乃至請求項5の何れかに記載のコンタクトレンズの殺菌/消毒方法。
  7. 前記制限手段が、親水性であり、且つ架橋されているノニオン性ポリマーにて構成されている請求項1乃至請求項6の何れかに記載のコンタクトレンズの殺菌/消毒方法。
  8. 前記制限手段が、10〜170μmの細孔径を有するフィルタである請求項1乃至請求項6の何れかに記載のコンタクトレンズの殺菌/消毒方法。
  9. 前記フィルタが、40〜130μmの厚みを有しており、且つその複数が重ね合わされて、用いられている請求項8に記載のコンタクトレンズの殺菌/消毒方法。
  10. 前記カチオン性殺菌剤若しくは消毒剤が、ビグアニド系殺菌若しくは消毒剤である請求項1乃至請求項9の何れかに記載のコンタクトレンズの殺菌/消毒方法。
  11. 前記ビグアニド系殺菌若しくは消毒剤が、ポリヘキサメチレンビグアニドである請求項10に記載のコンタクトレンズの殺菌/消毒方法。
  12. カチオン性の殺菌剤若しくは消毒剤を含有する殺菌/消毒液を収容し、処理されるべきコンタクトレンズが浸漬せしめられる処理容器と、
    該処理容器内に存在せしめられ、前記殺菌/消毒液に接触して、前記殺菌剤若しくは消毒剤の活性を失活させるアニオン性物質と、
    該処理容器内において前記アニオン性物質を前記殺菌/消毒液から区画するように配置され、該アニオン性物質に対する該殺菌/消毒液中の殺菌剤若しくは消毒剤の接触を制限して、かかるアニオン性物質による該殺菌剤若しくは消毒剤の失活速度を低減せしめることにより、前記コンタクトレンズを殺菌乃至は消毒した後に、前記殺菌/消毒液の殺菌力又は消毒力を低下又は消失させる制限手段とを、
    含むことを特徴とするコンタクトレンズの殺菌/消毒装置。
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