JP2005080503A - γ−D−グルタミル化合物の製造方法 - Google Patents

γ−D−グルタミル化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】γ−グルタミルトランスペプチターゼを用いてγ−グルタミル化合物を製造する際に生じる副反応を抑制し、目的とするγ−D−グルタミル化合物を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】γ−グルタミルトランスペプチターゼの存在下で、γ−D−グルタミル基供与体のγ−D−グルタミル基をγ−グルタミル基受容体のアミノ基にアミド結合させることによりγ−D−グルタミル化合物を製造する方法であって、前記γ−グルタミルトランスペプチターゼが、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しない酵素であるとともに、前記γ−グルタミル基受容体としてD−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチド以外のアミノ基含有化合物を用いる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、γ−グルタミルトランスペプチターゼを用いたγ−D−グルタミル化合物の製造方法に関し、より詳細には、副反応を抑制し、目的とするγ−D−グルタミル化合物を効率的に製造することができるγ−D−グルタミル化合物の製造方法に関する。
下記一般式で表されるγ−グルタミル化合物は、その呈味性やリラクゼーション効果から、食品、医薬品等の分野での利用が期待されている。
(上記一般式において、Rは、置換または無置換の炭化水素基である。)
例えば、γ−グルタミル化合物の1種であるL−テアニン(上記一般式にて、Rがエチル基)は緑茶のうま味成分として古くから知られている。また、D−テアニンもお茶に含まれ、L−テアニンと同様な呈味性を示すことが報告されている(E.-Ott et al. J. Agric. Food Chem., 45, 353-363 (1997))。このことから、L−テアニンで報告されているリラクゼーション効果(Kobayashi et al. 日本農芸化学会誌, 72, 153-157 (1998))がD−テアニンばかりでなく、様々なγ−D−グルタミル化合物においてより少ないドースで認められる可能性が考えられる。
また、興奮性のアミノ酸に対するアンタゴニストとして、γ−D−Glu−タウリンをはじめとする多くのγ−D−グルタミルアミノ酸が有効であることが報告されている(Jones et al. Neuroscience,13(2), 573-581 (1984), Davis et al. Comp. Biochem. Physiol., 72C, 211-224 (1982))。
このようにγ−グルタミル化合物は食品、医薬品等の様々な分野での需要が期待できることから、γ−グルタミル化合物の効率的な製造方法の開発が望まれている。
γ−グルタミル化合物の酵素合成法としては、大腸菌由来のγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)を用いて様々なγ−グルタミル化合物を生成する方法が知られている。当該方法は、大腸菌由来のGGTの存在下で、L−Gln等をγ-グルタミル基供与体として用い、γ−グルタミル基受容体のアミノ基にγ-グルタミル基をアミド結合させることにより、目的とするγ−グルタミル化合物を製造する方法である。
(上記一般式において、R1は、水素、または、置換もしくは無置換の炭化水素基であり、R2は、置換または無置換の炭化水素基である。)
大腸菌のGGTを用いた酵素合成法の特徴としては、(1)γ−グルタミル基供与体として、グルタチオンより安価なGlnを用いることができる、(2)γ-グルタミルシステイン合成酵素やグルタミン合成酵素を用いるγ−グルタミル化合物合成法と異なり、ATPなどのエネルギー源を必要としない(また、これらの酵素は生成物の一つであるADPによって強く阻害されるが、本法はその問題が生じない)、(3)大腸菌のGGTがγ-グルタミル基受容体として多くのアミノ酸、ペプチド、その他のアミン化合物などを利用できるため、多種のγ−グルタミル化合物の合成が可能である、(4)広い反応pHを選択できる;(5)多量のGGTを容易に調製し供給できる、という特徴が挙げられる。
特公平4−281788公報 特開平2−231085公報 M. Orlowski & A. Meister, Isolation of γ-glutamyl transpeptidase from hog kidney, JBC, 240, 338〜347, 1964 Suzuki, H., H.Kumagai, T. Echigo, and T. Tochikura. 1998. Molecular cloning of Escherichia coli K-12 ggt and rapid isolation of γ-glutamyltranspeptidase. Biochem. Biophys. Res. Commun. 150:33-38 Hashimoto, W., H. Suzuki, K. Yamamoto, and H. Kumagai. 1997. Analysis of low temperature inducible mechanism ofγ-glutamyltranspeptidase of Escherichia coli K-12. Biosci. Biotechnol. Biochem. 61:34-39 Suzuki, H., H.Kumagai, and T. Tochikura. 1986. γ-glutamyltranspeptidase from Escherichia coli K-12: formation and localization. J. Bacteriol. 168:1332-1335
しかしながら、様々なγ−グルタミル化合物の酵素合成法を開発する過程で、L−Glnをγ-グルタミル基供与体として、反応性の低いγ-グルタミル基受容体(X)へγ-グルタミル基を転移させようとすると、目的とするγ−L−グルタミル化合物(γ−L−Glu−X)の収率が低くなることが分かってきた。
これは、下記の副反応1、2に示すように、γ-グルタミル基供与体として用いたL−Glnや、反応生成物であるγ−L−Glu−XなどがGGTによってγ-グルタミル基受容体として認識されてしまい、γ-L−Glu−L−Glnやγ−L−Glu-γ−L−Glu−Xが多量副生することが原因であると考えられる。
副反応1 2L-Gln → γ-L-Glu-L-Gln + H2O
副反応2 L-Gln + γ-L-Glu-X → γ-L-Glu-γ-L-Glu-X + H2O
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、反応副生物の生成を抑制し、目的とするγ−D−グルタミル化合物を効率的に製造することができるγ−D−グルタミル化合物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記問題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、エシェリヒア コリに由来するγ−グルタミルトランスペプチターゼがD−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しないという性質を有することを発見し、このような性質を持つγ−グルタミルトランスペプチターゼの存在下で、γ−D−グルタミル化合物をγ-D−グルタミル基供与体として用いて反応を実施することにより、反応副生物の生成を抑制し、目的とするγ−D−グルタミル化合物を効率的に製造することができることを見出し、本発明に想到した。なお、本発明において、「γ−D−グルタミル化合物」と記載する場合、γ-D−グルタミル基供与体として用いるγ−D−グルタミル化合物と、酵素反応による反応生成物として得られるγ−D−グルタミル化合物とがあるが、以下、特にことわりがない限り、「γ−D−グルタミル化合物」は、反応生成物としてのγ−D−グルタミル化合物と表すものとする。
従来、微生物に由来するGGTにおいて、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しないGGTについての報告は見られず、本発明のγ−D−グルタミル化合物の製造方法は、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しないという酵素の特性に着目して、反応副生物の生成を抑制するものである。また、本発明は、食品、医薬品等の様々な分野での需要が期待できるD体のγ−グルタミル化合物を、光学特異的に製造する方法を提供するものである。
即ち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 γ−グルタミルトランスペプチターゼの存在下で、γ−D−グルタミル基供与体のγ−D−グルタミル基をγ−グルタミル基受容体のアミノ基にアミド結合させることによりγ−D−グルタミル化合物を製造する方法であって、
前記γ−グルタミルトランスペプチターゼが、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しない酵素であるとともに、
前記γ−グルタミル基受容体としてD−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチド以外のアミノ基含有化合物を用いることを特徴とするγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
〔2〕 前記γ−グルタミルトランスペプチターゼが、エシェリヒア コリに由来するγ−グルタミルトランスペプチターゼであることを特徴とする〔1〕に記載のγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
〔3〕 前記γ−D−グルタミル基供与体が、D−グルタミンであることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
〔4〕 前記γ−グルタミル基受容体が、D−アミノ酸以外のアミノ酸またはアミンであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
〔5〕 前記γ−グルタミル基受容体が、グリシルグリシン、L−アラニン、L−システイン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−タウリン、及びエチルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
〔6〕 前記γ−グルタミル基受容体が、グリシルグリシン、L−ヒスチジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、またはL−トリプトファンであることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
本発明により、食品、医薬品等の様々な分野での需要が期待できるD体のγ−グルタミル化合物を、光学特異的かつ効率的に酵素合成することができる。
さらに、反応性の低いγ-グルタミル基受容体の場合も、γ-グルタミル基供与体としてγ−D−グルタミル化合物を用いることにより、L体のγ-グルタミル基供与体を用いる場合に比べて目的とするγ−グルタミル化合物を効率よく生産することが可能となる。
以下に、本発明の実施形態について説明する。本発明にかかるγ−D−グルタミル化合物の製造方法は、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しないγ−グルタミルトランスペプチターゼの存在下で、γ−D−グルタミル化合物をγ−D−グルタミル基供与体として用いて反応を実施することにより、目的とするγ−D−グルタミル化合物を効率的に製造することを特徴とする。
すなわち、本発明のγ−D−グルタミル化合物の製造方法は、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しないという酵素の特性に着目して、反応副生物の生成を抑制するものである。
γ−グルタミル基受容体としてL型およびD型いずれのアミノ酸に対しても基質特異性を有するGGTを用いると、このGGTは、γ−グルタミル基供与体(例えば、D−グルタミン)をγ−グルタミル基供与体としてだけでなく、γ−グルタミル基受容体としても認識してしまう。GGTによってγ−グルタミル基供与体がγ−グルタミル基受容体として認識されてしまうと、γ−グルタミル基供与体に他のγ−グルタミル基供与体のγ−グルタミル基が転移する副反応が生じる。また、目的とするγ−グルタミル化合物が生成しても、このγ−グルタミル化合物のγ−グルタミル基におけるアミノ基に、さらにγ−グルタミル基が転移する副反応が生じると言った問題があった。
特に、反応性の良くないγ-グルタミル基受容体の場合では、γ−グルタミル化合物の生成速度が遅いため、副反応の反応速度の影響が大きく、副反応によってγ−グルタミル基供与体や目的生成物であるγ−グルタミル化合物が消費されてしまい、目的とするγ−グルタミル化合物の収率が低下する傾向が顕著であった。
これに対し、本発明では、GGTとして、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しない酵素を用い、かつ、γ−グルタミル基供与体としてγ−D−グルタミル化合物を用いることを特徴とする。
D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しないγ−グルタミルトランスペプチターゼは、γ−グルタミル基供与体として用いるD−Glnや生成したγ−D−Glu−Xをγ−グルタミル基受容体として認識しないため、γ-D−Glu−D−Glnやγ−D−Glu-γ−D−Glu−X等の反応副生物の生成が抑制される。本発明は、このようなγ−グルタミルトランスペプチターゼの存在下で、γ−D−グルタミル基供与体としてγ−D−グルタミル化合物を用いて反応をすることにより、副反応を抑制し、目的とするγ−D−Glu−Xの収率を向上させるものである。
以下、本発明について、
[I]γ−グルタミルトランスペプチターゼの取得方法
[II]γ−D−グルタミル基供与体
[III]γ−グルタミル基受容体
[IV]反応条件
の順に詳細に説明する。
[I]γ−グルタミルトランスペプチターゼの取得方法
本発明において、γ−グルタミルトランスペプチターゼ(GGT)とは、γ−グルタミル基供与体のγ−グルタミル基をγ−グルタミル基受容体のアミノ基にアミド結合する反応を触媒する酵素を意味する。
(上記一般式において、R1は、水素、または、置換もしくは無置換の炭化水素基であり、R2は、置換または無置換の炭化水素基である。)
本発明においては、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しないGGTを用いる。ここで、「D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しない」とは、γ−グルタミル基供与体のγ−グルタミル基を、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドのアミノ基に転移する反応を実質的に触媒しないことを意味する。
本発明に用いるGGTは、γ−グルタミル基受容体としてD−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドを認識しない酵素であって、かつ、γ−D−グルタミル基供与体のγ−D−グルタミル基をγ−グルタミル基受容体のアミノ基にアミド結合する反応を触媒する酵素であれば、特に限定なく使用することができる。
このようなGGTとしては、エシェリヒア コリ由来のGGTを好ましく用いることができる。特に、Escherichia coli AJ110253 FERM P−19502株を好ましく用いることができる。尚、Escherichia coli AJ110253 FERM P−19502株については下記の通り寄託されている。
(i)寄託機関の名称・あて名
名称:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)
(ii)寄託日:平成15年8月27日
(iii)寄託番号:FERM P−19502
エシェリヒア コリ由来のGGTは、γ-グルタミル基供与体としてL型およびD型いずれのγ-グルタミル化合物も利用できる。しかし、γ-グルタミル基受容体としてはL型のアミノ酸を用いることはできるがD型のアミノ酸は用いることができないことが本発明者らの研究により明らかにされた。
本発明に用いるGGTの取得方法は特に限定されないが、(i)GGT産生菌を微生物培養することによりGGTを生成蓄積させる方法、または、(ii)組み換えDNA技術によりGGTを生成する形質転換体を作成し、当該形質転換体を培養することによりGGTを生成蓄積させる方法が好ましい。
組み換えDNA技術によりGGTを生成する形質転換体については、公知の手法を用いて作製することができる。具体的には、非特許文献2〜4に記載されている。
GGTの取得源となる微生物(GGT産生菌および形質転換体のいずれも含む)の培養形態は液体培養、固体培養いずれも可能であるが、工業的に有利な方法は、深部通気撹拌培養法である。栄養培地の栄養源としては、微生物培養に通常用いられる炭素源、窒素源、無機塩およびその他の微量栄養源を使用できる。使用菌株が利用できる栄養源であればすべてを使用できる。
通気条件としては、好気条件を採用することが好ましい。培養温度としては、菌が発育し、GGTが生産される範囲であれば良い。従って、厳密な条件は無いが、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃である。培養時間は、その他の培養条件に応じて変化する。例えば、GGTが最も生産される時間まで培養すれば良く、通常5時間〜7日間、好ましくは10時間〜3日間程度である。
培養後、菌体を遠心分離(たとえば、10,000xg、10分)により集菌する。GGTの大部分は菌体中に存在するので、この菌体を破砕、または溶菌させることにより、GGTの可溶化を行う。菌体破砕には、超音波破砕、フレンチプレス破砕、ガラスビーズ破砕等の方法を用いることができ、また溶菌させる場合には、卵白リゾチームや、ペプチダーゼ処理またはこれらを適宜組み合わせた方法が用いられる。
GGT産生菌由来のGGTを精製する場合、酵素可溶化液を出発材料として精製することになるが、未破砕あるいは未溶菌残査が存在するようであれば、可溶化液を再度遠心分離操作に供し、沈殿する残査を除いた方が、精製に有利である。
GGTの精製には、通常酵素の精製を行うために用いられる全ての常法、例えば硫安塩析法、ゲル濾過クロマトグラフィー法、イオン交換クロマトグラフィー法、疎水性クロマトグラフィー法、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー等を採用することができる。その結果、より比活性が高いGGT含有画分を得ることができる。
[II]γ−D−グルタミル基供与体
γ−D−グルタミル基供与体とは、γ−D−グルタミル基受容体にγ−D−グルタミル基を供与可能な化合物であり、γ−D−グルタミル化合物を用いる。γ−D−グルタミル基供与体としては、D−Gln、γ−D−グルタミル−p−ニトロアニリド等を使用することができる。
本発明では、反応に用いるGGTのγ−D−グルタミル基供与体に対する基質特異性に応じて、使用するγ−D−グルタミル基供与体を適宜選択すればよい。例えば、エシェリヒア コリ由来のGGTを用いる場合は、γ−D−グルタミル基供与体として、D−Gln、γ−D−グルタミル−p−ニトロアニリド、γ−D−グルタミル−L−システイニルグリシン(グルタチオン)等を用いることができる。
本発明に用いるGGTは、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しない酵素であるため、γ−D−グルタミル化合物であるD−Glnなどのγ−D−グルタミル基供与体は、GGTにγ−グルタミル基受容体として認識されない。したがって、γ−D−グルタミル基供与体に他のγ−D−グルタミル基供与体のγ−グルタミル基が転移する副反応や、目的とするγ−D−グルタミル化合物にさらにγ−グルタミル基が転移する副反応を抑制することができる。このため、目的とするγ−D−グルタミル化合物の収率を向上させることができる。
[III]γ−グルタミル基受容体
本発明に用いるGGTは、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しない酵素であるため、γ−グルタミル基受容体としては、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチド以外のアミノ基含有化合物を使用する。
従って、γ−グルタミル基受容体としては、例えば、アミン、D−アミノ酸以外のアミノ酸、N末端がD−アミノ酸以外のペプチドなどを使用することができる。なお、ここでいう「N末端がD−アミノ酸以外のペプチド」は、N末端がD−アミノ酸以外であれば、ペプチド中に含まれるN末端以外のアミノ酸についてはL型、D型のいずれであってもよい。γ−グルタミル基受容体としてペプチドを用いる場合は、ペプチド結合数が10以下のオリゴペプチドであることが好ましく、ジペプチドまたはトリペプチドがより好ましい。
本発明では、反応に用いるGGTのγ−グルタミル基受容体に対する基質特異性に応じて、γ−グルタミル基受容体の種類を適宜選択すればよい。例えば、E.coli由来のGGTを用いる場合は、γ−グルタミル基受容体として、アミン、D−アミノ酸以外のアミノ酸、N末端がD−アミノ酸以外のペプチドなどを用いることができる。具体的には、Gly−Gly、L−Ala、L−Cys、L−Glu、Gly、L−His、L−Met、L−Phe、L−Trp、L−Val、L−タウリン、エチルアミンが好ましく、特に、Gly−Gly、L−His、L−Met、L−Phe、またはL−Trpが好ましい。
γ−グルタミル基受容体のアミノ基に、γ−D−グルタミル基供与体のγ−D−グルタミル基がアミド結合されることによって、目的とするγ−D−グルタミル化合物が生成する。
本発明に用いるGGTは、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しない酵素である。したがって、γ−D−グルタミル基供与体として用いるγ−D−グルタミル化合物、および、生成したγ−D−グルタミル化合物は、γ−グルタミル基受容体として認識されない。このため、γ−D−グルタミル基供与体に他のγ−D−グルタミル基供与体のγ−D−グルタミル基が転移する副反応や、目的とするγ−D−グルタミル化合物にさらにγ−D−グルタミル基が転移する副反応を抑制することができる。このため、目的とするγ−D−グルタミル化合物の収率を向上させることができる。
[IV]反応条件
本発明においては、前述のGGT、γ−D−グルタミル基供与体、およびγ−グルタミル基受容体を含む反応液を調製し、γ−グルタミル基転移反応を進行させることにより、目的とするγ−D−グルタミル化合物を生成する。
本発明において、GGTは、γ−D−グルタミル基供与体のγ−D−グルタミル基をγ−グルタミル基受容体のアミノ基にアミド結合する反応を触媒可能な限り、いかなる形態で反応系に添加してもよい。すなわち、GGTを精製酵素として反応系に添加してもよいし、GGTを含有するGGT活性を有する組成物の形態で反応系に添加してもよい。
ここで「GGT活性を有する組成物」とは、γ−D−グルタミル基供与体のγ−グルタミル基をγ−グルタミル基受容体のアミノ基にアミド結合する反応を触媒し、かつ、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しないGGTを含むものであればよく、具体的には培養物、培地(培養物から菌体を除去したもの)、菌体(培養菌体、洗浄菌体のいずれも含む)、菌体を破砕あるいは溶菌させた菌体処理物、前記培地および/または細胞を精製処理することにより得られるGGT活性を有する組成物(粗酵素液)などを含む。例えば、GGT産生菌または組み換えDNAによって形質転換された細胞を用いて、γ−D−グルタミル化合物を製造する場合、培養しながら、培養液中に直接基質を添加してもよいし、培養液より分離された菌体、洗浄菌体などいずれも使用可能である。また、菌体を破砕あるいは溶菌させた菌体処理物をそのまま用いてもよいし、当該菌体処理物からGGTを回収し、粗酵素液として使用してもよいし、さらに、酵素を精製して用いてもよい。すなわち、GGT活性を有する画分であれば、どのような形態であっても本発明のγ−D−グルタミル化合物の製造方法に使用することが可能である。
また、γ−D−グルタミル基供与体として用いるγ−D−グルタミル化合物の反応系への供給形態としては、このγ−D−グルタミル化合物の光学異性体であるγ−L−グルタミル化合物を実質的に含まない状態が好ましい。反応系にγ−D−グルタミル基供与体としてγ−D−グルタミル化合物を添加する際、このγ−D−グルタミル化合物の光学異性体であるγ−L−グルタミル化合物が不純物として反応系に混入することがあるが、この不純物γ−L−グルタミル化合物はGGTによってγ−グルタミル基供与体およびγ−グルタミル基受容体のいずれとしても認識されるので、様々な副反応を生じさせ、目的とするγ−D−グルタミル化合物の収率を低下させる要因となる。したがって、反応液中におけるこの不純物γ−L−グルタミル化合物の混入率が低いほど好ましく、具体的にはγ−D−グルタミル基供与体として用いるγ−D−グルタミル化合物に対して、γ−L−グルタミル化合物が、50%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは0%である。
GGTまたはGGT活性を有する組成物を用いてγ−グルタミル基転移反応を進行させるには、γ−D−グルタミル基供与体、γ−グルタミル基受容体、および、GGTまたはGGT活性を有する組成物を含む反応液を20〜50℃の適当な温度に調製し、30分〜5日静置、振とう、または攪拌すればよい。反応液のpHは、使用するGGTがγ−グルタミル基転移反応を触媒するのに適当な範囲に設定すればよい。例えば、E.coli由来のGGTを用いる場合は、pH7〜11、好ましくはpH8〜10.5、より好ましくは至適pHであるpH9〜10.5に保ちつつ、反応を実施することが好ましい。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例において、γ−Glu−タウリンとγ−Glu-γ−Glu−タウリンはHPLCを用いて測定した。Cosmosil SC18-ARカラム(10 x 250 mm; ナカライテスク製)で分離後(溶出液は0.05%のトリフルオロ酢酸を含む水)、213nmの紫外吸収をUV ディテクター(model L-7100; 日立製作所)で測定した。Tocris Cookson 社(St. Louis, MO, USA)から購入したγ−Glu−タウリンをもとにγ−Glu−タウリンのピークを同定した。γ−Glu-γ−Glu−タウリンのピークは以下のように同定した。HPLCでγ−Glu−タウリンと分離した未知のピークを大腸菌のGGTを用いてpH5.5で加水分解した(このpHはGGTの加水分反応の至適pHである)。得られた加水分解物の成分がグルタミン酸:タウリン=2:1であったことから、このピークがγ−Glu-γ−Glu−タウリンであると同定した。グルタミン、タウリン、γ−Glu-Gln 、テアニンは、Shim-pack Amino-Na columnを装着したHPLC (model LC-9A; 島津製作所)を用い、ポストカラム法でo-フタルアルデヒドでラベル後、蛍光ディテクターで検出した。
また、γ−L−Glu−タウリン、L−テアニンの測定法については、下記の文献に記載に従って行った。
H. Suzuki, N. Miyakawa, and H. Kumagai. Enzymatic production of γ-L-glutamyltaurine through the transpeptidation reaction of γ−glutamyltranspeptidase from Escherichia coli K-12.
Enzyme Microb. Technol., 30(7), 883-888 (2002).
H. Suzuki, S. Izuka, N. Miyakawa, and H. Kumagai. Enzymatic production of theanine, an“umami” component of tea, from glutamine and ethylamine with bacterial γ−glutamyltranspeptidase.
Enzyme Microb. Technol., 31(6), 884-889 (2002).
また、実施例で用いたGGTは、下記の方法によって調製した。
まず、非特許文献2に記載の方法に従って、GGT産生形質転換体E.coli K−12を調製した。具体的には、pUC18にEscherichia coli FERM P−10579株のGGT遺伝子を挿入し、当該プラスミドを導入したE.coli K−12を調製した。
次いで、E.coli K−12をアンピシリン100μg/mlを含むLB培地で、20℃で培養した(非特許文献3および非特許文献4参照)。ペリプラズム画分を調製し(非特許文献4)、硫安分画および定法のクロマトグラフィーによってGGTを精製した(非特許文献2参照)。
実施例1 γ-グルタミルタウリンの収量への影響の検討
γ-グルタミル基供与体として、D−Glnを用いた場合とL−Glnを用いた場合のγ-グルタミルタウリンの収量に及ぼす影響を検討した。
γ−L−Glu−タウリンの合成は、200mM L−Gln、200mM タウリン、0.2U/ml GGTを含有する反応組成液を調製し、pH10、37℃を保持しながら反応を実施した。
また、γ−D−Glu−タウリンの合成は、200mM D−Gln、200mM タウリン、および0.2U/ml GGTを含有する反応組成液を調製し、pH10、37℃を保持しながら反応を実施した。
5時間反応後のγ−L−Glu−タウリンは約50mM、対グルタミン収率25%であった(図1A参照)。反応開始1時間目までに、L−Gln量は急激に減少し、γ−L−Glu−タウリンの蓄積が見られた。また、γ−L−Glu−L−Glnやγ−L−Glu-γ−L−Glu−タウリンの蓄積も見られた。しかし、その後γ−L−Glu−タウリン量はほとんど変化がなく、L−Glnとγ−L−Glu−L−Glnが減少し、これらがなくなるまでγ−L−Glu-γ−L−Glu−タウリンは増加した。このことから、一定量以上のγ−L−Glu−タウリンが蓄積すると、GGTはL−Glnやγ−L−Glu−L−Glnからタウリンばかりでなく、γ−L−Glu−タウリンにγ-グルタミル基を転移すると考えられた。
このように、タウリンのようなγ-グルタミル基受容体へγ-グルタミル基を転移させようとする場合、γ−L−Glu−L−Glnやγ−L−Glu-γ−L−Glu-Xが多量副生する。
次に、上記と同一反応条件で、L−GlnをD−Glnに代えて反応すると図1Bに示した結果を得た。5時間反応後のγ−D−Glu−タウリンは142mM、対グルタミン収率71%であった。
したがって、D体のグルタミンを用いることにより、他のγ−グルタミル化合物が副生することなく、γ−Glu−タウリンの対グルタミン収率を飛躍的に増大できることが分かった(表1参照)。
実施例2 テアニン(γ-グルタミルエチルアミド)の収量への影響の検討
γ-グルタミル基供与体として、D−Glnを用いた場合とL−Glnを用いた場合のテアニンの収量に及ぼす影響を同様に調べた。
L−テアニンの合成は、200mM L−Gln、1500mMエチルアミン、0.4U/ml GGTを含有する反応組成液を調製し、pH10、37℃を保持しながら反応を実施した。
また、D−テアニンの合成は、200mM D−Gln、1500mMエチルアミン、0.4U/ml GGTを含有する反応組成液を調製し、pH10、37℃を保持しながら反応を実施した。
当該条件下では、5時間反応後のL−テアニンは121mM 、対グルタミン収率61%であった。反応開始1時間目までに、L−Gln量は急激に減少し、L−テアニンとともにγ−L−Glu-Glnの蓄積が見られた。2時間目までL−テアニン量は増加したが、それ以降は、L−テアニン量、γ−L−Glu-Gln 量ともにほとんど変化はなく、γ−L−Glu−タウリンの場合と同様の結果となった(図2(A−1)、(A−2)参照)。
一方、5時間反応後のD−テアニンは147mM、対グルタミン収率74%であった(図2(B−1)、(B−2)参照)。したがって、D体のグルタミンを用いることにより、他のγ−グルタミル化合物が副生することなく、テアニンの対グルタミン収率が増大した。(表1参照)
表1にまとめたように、D−Glnをγ-グルタミル基供与体とした場合の方が、L−Glnの場合に比べて収量が高くなることが分かった。この現象はγ−Glu−タウリンの場合に特に顕著であった。
実施例3 反応生成物の精製と同定
(1)γ−Glu−タウリンの場合
γ−L−Glu−タウリンの至適生成条件は、200mM L−Gln、200mMタウリン、0.2U/ml GGT、pH10、37℃であった。そこで、この条件下で1時間反応させることでγ−L−Glu−タウリンを酵素合成した。また、200mM D−Gln、200mMタウリン、0.2U/ml GGT、pH10、37℃で5時間反応させることで、γ−D−Glu−タウリンを酵素合成した。
γ−L−Glu−タウリンは図3に示した方法で精製した。一方、γ−D−Glu−タウリンの場合はDowex カラムのみで、精製できた。これは、他のγ−グルタミル化合物が副生しないことの一つの利点である。
生成物5mgを0.5mlの重水に溶かし、NMR分析に供した(Bruker 500 MHz spectrometer)。γ−D−Glu−タウリンの結果は図5に示す。γ−L−Glu−タウリンの結果はEnzyme Microb. Technol.,30, 883-888 (2002)に記載されている。また、生成物5mgを1.2mlの蒸留水に溶かし、旋光度を測定した(Jasco DIP-1000 polarimeter)。
この結果、L−Glnとタウリンを基質とした場合はγ−L−Glu−タウリンが、D−Glnとタウリンを基質とした場合はγ−D−Glu−タウリンが生成したことを確認できた。
(2)テアニンの場合
L−テアニンの酵素合成は、20mM L−Gln、150mM エチルアミン、0.04 U/ml GGT、pH10の反応液30mlを用い、37℃で5時間反応させた。D−テアニンの酵素合成は、150mM D−Gln、150 mM エチルアミン、0.2U/ml GGT、pH10の反応液22mlを用い、37℃で5時間反応させた。
テアニンは図6に示した方法で精製した。生成物5mgを0.5mlの重水に溶かし、NMR分析に供した(Bruker 500 MHz spectrometer)。D−テアニンの結果を図8に示す。L−テアニンの結果は、Enzyme Microb. Technol., 31(6), 884-889 (2002)の中に示した。また、D−テアニン10mgを1.0mlの蒸留水に溶かし、旋光度を測定した(Jasco DIP-1000 polarimeter)。
この結果、D−Glnとエチルアミンを基質とした場合はD−テアニンが生成したことを確認できた。
実施例4 γ-グルタミル基受容体に対する基質特異性
次に、D−グルタミンをγ-グルタミル基供与体としたときのγ-グルタミル基受容体に対する基質特異性を比した。
γ-グルタミル基供与体として20mM D−Glnを使用した。反応pHは8.73、各γ−D−グルタミル化合物の生成量を経時的にアミノ酸分析機で測定し、反応速度を算出した。反応液中のGGT濃度はGly−Glyを基質とした場合の活性にして0.00543mmol/min/mlに相当する酵素量を用いた。そのときの活性値を100%として、各基質(γ−グルタミル基受容体)に対する反応性を相対値で示した。結果を下記表4、および、図9、10に示す。
この結果、これらの基質の中でも、Gly−Gly、L−Ala、L−Cys、L−Glu、Gly、L−His、L−Met、L−Phe、L−Trp、L−Val、L−タウリン、エチルアミン、特に、Gly−Gly、L−His、L−Met、L−Phe、およびL−Trpについて反応性が高いことを確認できた。
実施例5 大腸菌GGTのD−/L−γ−グルタミル化合物に対するKm, kcat 値の比
次に、大腸菌のGGTのD体/L体のγ−グルタミル化合物に対するアフィニティーと反応性を比した。
GpNA:グルタミル−p−ニトロアニリド
D体のγ−グルタミル化合物に対するアフィニティーが10倍以上低いことが分かったが、kcat 値はそれほど変わらないため、物質生産のように大過剰の基質を反応液に入れるような場合は全く問題ないと考えられる。
以上のように、本発明のγ−D−グルタミル化合物の製造方法は、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しないγ−グルタミルトランスペプチターゼを用いるとともに、γ−グルタミル基供与体としてγ−D−グルタミル化合物を用い、かつ、γ−グルタミル基受容体としてD−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチド以外のアミノ基含有化合物を用いることで、さまざまなγ−D−グルタミル化合物を光学特異的かつ効率的に酵素合成できる。
さらに、反応性の低いγ-グルタミル基受容体の場合も、γ-グルタミル基供与体としてγ−D−グルタミル化合物を用いることにより、L体のγ-グルタミル基供与体を用いる場合に比べて目的とするγ−グルタミル化合物を効率よく生産することが可能となる。また、本発明によれば、食品、医薬品等の様々な分野での需要が期待できるD体のγ−グルタミル化合物を、光学特異的に製造することができる。
かかる特徴を有する本発明のγ−D−グルタミル化合物の製造方法は、γ−D−グルタミルペプチド化合物を効率的に製造することができるので、工業上、特に食品、医薬品等の分野で極めて有用である。
(A−1)γ−L−Glu−タウリンの合成反応における反応生成物濃度の時間変化、(A−2)γ−L−Glu−タウリンの合成反応における基質濃度の時間変化、(B−1)γ−D−Glu−タウリンの合成反応における反応生成物濃度の時間変化、および、(B−2)γ−D−Glu−タウリンの合成反応における基質濃度の時間変化を示すグラフである。 γ−Glu−タウリン(-黒□-) γ−Glu-γ−Glu−タウリン(-黒△-) γ−Glu-Gln (-□-) Gln(-黒○-) タウリン(-○-) (A−1) L−テアニンの合成反応における反応生成物濃度の時間変化、(A−2) L−テアニンの合成反応における基質濃度の時間変化、(B−1)D−テアニンの合成反応における反応生成物濃度の時間変化、および、(B−2)D−テアニンの合成反応における基質濃度の時間変化を示すグラフである。 テアニン (-黒□-) γ−Glu-Gln (-□-) Gln (-黒○-) γ−Glu−タウリンの合成および精製工程を示すフローチャートである。 標準品として購入したγ−D−Glu−タウリンのNMRのチャートを示す図である。 生成したγ−D−Glu−タウリンのNMRのチャートを示す図である。 テアニンの合成および精製工程を示すフローチャートである。 標準品として購入したL−テアニンのNMRのチャートを示す図である。 生成したD−テアニンのNMRのチャートを示す図である。 γ−D−グルタミル化合物(γ−D−Glu−アミノ酸)の生成量(mM)の経時変化を表すグラフである。 γ−D−グルタミル化合物(γ−D−Glu−アミノ酸)の生成量(g/L)の経時変化を表すグラフである。

Claims (6)

  1. γ−グルタミルトランスペプチターゼの存在下で、γ−D−グルタミル基供与体のγ−D−グルタミル基をγ−グルタミル基受容体のアミノ基にアミド結合させることによりγ−D−グルタミル化合物を製造する方法であって、
    前記γ−グルタミルトランスペプチターゼが、D−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチドをγ−グルタミル基受容体として認識しない酵素であるとともに、
    前記γ−グルタミル基受容体としてD−アミノ酸およびN末端がD−アミノ酸残基であるペプチド以外のアミノ基含有化合物を用いることを特徴とするγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
  2. 前記γ−グルタミルトランスペプチターゼが、エシェリヒア コリに由来するγ−グルタミルトランスペプチターゼであることを特徴とする請求項1に記載のγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
  3. 前記γ−D−グルタミル基供与体が、D−グルタミンであることを特徴とする請求項1または2に記載のγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
  4. 前記γ−グルタミル基受容体が、D−アミノ酸以外のアミノ酸またはアミンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
  5. 前記γ−グルタミル基受容体が、グリシルグリシン、L−アラニン、L−システイン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−タウリン、及びエチルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
  6. 前記γ−グルタミル基受容体が、グリシルグリシン、L−ヒスチジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、またはL−トリプトファンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のγ−D−グルタミル化合物の製造方法。
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