JP6742891B2 - Nα−アシル−L−アミノ酸の製造方法 - Google Patents

Nα−アシル−L−アミノ酸の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Nα−アシル−L−アミノ酸の製造方法などに関する。
Nα−アシルグルタミン酸、Nα−アシルアラニン、Nα−アシルグリシン、Nα−アシルアルギニン等のNα−アシルアミノ酸は、アミノ酸系界面活性剤としてシャンプー等の洗浄剤に利用されている。また、Nα−アシルアミノ酸は、膜タンパク質の可溶化にも用いることができる(Abe et al.,Mol Biosyst.2010 Apr;6(4):677−9)。
Nα−アシルアミノ酸の酵素合成に関する先行技術が幾つか報告されている。
例えば、非特許文献1では、ブタ腎由来アシラーゼを用いて、グリセロールを含む溶液中で、アミノ酸と脂肪酸からNα−アシルアミノ酸を合成できることが報告されている。グリセロールを含む溶液中では、グリセロールに起因してNα−アシルアミノ酸の加水分解反応が進み難いことから、非特許文献1は、Nα−アシルアミノ酸の合成に成功している。
非特許文献2では、Streptomyces mobaraensisに由来する、分子量61kDaと19kDaのヘテロダイマーからなるアシラーゼを用いて、アミノ酸と脂肪酸からN−α−アシルアミノ酸を合成できることが報告されている。しかし、非特許文献2では、有機溶媒(78%グリセロール)を含む反応系でのアシルアミノ酸合成が報告されているが、有機溶媒を含まない水系溶媒中でのアシルアミノ酸合成は報告されていない。
非特許文献3では、Streptomyces mobaraensisに由来する、分子量100kDaのモノマーであるアシラーゼを用いて、アミノ酸と脂肪酸からNα−アシルアミノ酸を合成できることが報告されている。ただし、フェルラ酸、アミノ酸および70%グリセロールを含む条件での縮合反応では最大12%の収率にとどまり、種々のカルボン酸とL−リジンとの縮合反応では最大43%の収率にとどまる。
Wada et al.,Journal of the American Oil Chemists’ Society,2002,79(1), pp 41−46 Koreishi et al.,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2006,54(1),pp 72−78 Koreishi et al.,Bioscience,Biotechnology, and Biochemistry,2005,69(10),pp 1914−1922
本発明の目的は、代替酵素によるN−α−アシルアミノ酸の製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、Nα−アシルアミノ酸の合成を触媒できる新規酵素を見出し、当該酵素によりNα−アシルアミノ酸の製造方法を提供することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕以下(A)〜(C):
(A)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(B)配列番号2のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が挿入、付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質;または
(C)配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の相同性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質;
の存在下において、アミノ酸もしくはその塩およびカルボン酸もしくはその塩を反応させて、Nα−アシル−L−アミノ酸を生成することを含み、
アミノ酸が、グリシン、または置換されていてもよい直鎖アルキル基を側鎖として有する中性または塩基性L−α−アミノ酸である、Nα−アシル−L−アミノ酸の製造方法。
〔2〕前記置換されていてもよい直鎖アルキル基が、以下:
(1)C〜Cアルキル;
(2)ヒドロキシル;
(3)C〜Cアルキルオキシ;
(4)スルファニル;
(5)C〜Cアルキルスルファニル;
(6)グアニジノ;
(7)アミノ;
(8)C〜Cアルキルでモノ置換もしくはジ置換されたアミノ;
(9)アミド;
(10)前記(1)〜(9)の置換基からなる群より選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよいアリール;および
(11)前記(1)〜(9)の置換基からなる群より選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよいヘテロアリール;
からなる群より選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよいC〜C直鎖アルキル基である、〔1〕の方法。
〔3〕前記中性または塩基性L−α−アミノ酸が、L−フェニルアラニン、L−アラニン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−リジン、L−ロイシン、L−メチオニン、L−アスパラギン、L−グルタミン、L−アルギニン、L−セリン、L−スレオニン、L−バリン、L−トリプトファン、L−チロシン、およびL−テアニンからなる群より選ばれる、〔2〕の方法。
〔4〕カルボン酸が、炭素原子数5以上のカルボン酸である、〔1〕〜〔3〕のいずれかの方法。
〔5〕カルボン酸が、ラウリン酸、またはステアリン酸である、〔4〕の方法。
〔6〕前記タンパク質が精製酵素である、〔1〕〜〔5〕のいずれかの方法。
〔7〕前記タンパク質の存在下における反応が、前記タンパク質を産生する微生物またはその処理液を用いて行われる、〔1〕〜〔5〕のいずれかの方法。
〔8〕前記微生物が、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む異種発現単位を含む、〔7〕の方法。
〔9〕前記微生物が腸内細菌科に属する細菌である、〔8〕の方法。
〔10〕前記細菌がエシェリヒア・コリである、〔9〕の方法。
〔11〕以下(A)〜(C)からなる群より選ばれるタンパク質:
(A)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(B)配列番号2のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が挿入、付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質;または
(C)配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の相同性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質;
〔12〕以下(a)〜(c)からなる群より選ばれるポリヌクレオチド:
(a)配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号1のヌクレオチド配列と90%以上の相同性を示すヌクレオチド配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;または
(c)配列番号1のヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド;ならびに
(d)(a)〜(c)からなる群より選ばれるポリヌクレオチドの縮重変異体。
〔13〕〔11〕のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現単位を含む発現ベクター。
〔14〕〔11〕のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む異種発現単位を含む微生物。
〔15〕〔11〕のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む異種発現単位を含む微生物を用いて、前記タンパク質を生成することを含む、タンパク質の製造方法。
本発明の方法は、有機溶媒を含まない水溶系溶媒中でNα−アシルアミノ酸を高収率で合成することができる。
本発明の方法で用いられる本発明のタンパク質、ポリヌクレオチド、発現ベクター、微生物、およびタンパク質の製造方法は、かかる合成の実施に有用である。
図1は、SDS−PAGE解析の結果(実施例2)を示す図である。M:マーカー;CFE:Burkholderia sp.LP5_18B株の可溶性画分;AS fractionation:硫安沈殿;Q Sepharose:Q Sepharoseカラムによる、Nα−ラウロイル−L−フェニルアラニン(Lau−Phe)分解活性を有する画分の精製;Resource Phe:Resource 15 Phe 6mLカラムによる、Lau−Phe分解活性を有する画分の精製;Mono Q:Mono Q 5/50 GLカラムによる、Lau−Phe分解活性を有する画分の精製。
本発明は、Nα−アシル−L−アミノ酸の製造方法を提供する。本発明の方法は、以下(A)〜(C)のいずれかのタンパク質の存在下において、アミノ酸もしくはその塩およびカルボン酸もしくはその塩を反応させて、Nα−アシル−L−アミノ酸を生成することを含む:
(A)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(B)配列番号2のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が挿入、付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質;または
(C)配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の相同性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質。
アミノ酸は、グリシン、または置換されていてもよい直鎖アルキル基を側鎖として有する中性または塩基性L−α−アミノ酸である。
タンパク質(B)では、アミノ酸残基の欠失、置換、付加および挿入からなる群より選ばれる1、2、3または4種の変異により、1個または数個のアミノ酸残基が改変され得る。アミノ酸残基の変異は、アミノ酸配列中の1つの領域に導入されてもよいが、複数の異なる領域に導入されてもよい。用語「1個または数個」は、タンパク質の活性を大きく損なわない個数を示す。用語「1個または数個」が示す数は、例えば、1〜100個、好ましくは1〜80個、より好ましくは1〜50個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜10個または1〜5個(例、1個、2個、3個、4個、または5個)である。
タンパク質(C)では、配列番号2のアミノ酸配列との相同性%は、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であってもよい。上述したアミノ酸配列および後述するヌクレオチド配列の相同性(即ち、同一性または類似性)は、例えばKarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993))、PearsonによるFASTA(MethodsEnzymol.,183,63(1990))を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTP、BLASTNとよばれるプログラムが開発されているので(http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照)、これらのプログラムをデフォルト設定で用いて、相同性を計算してもよい。また、相同性としては、例えば、Lipman−Pearson法を採用している株式会社ゼネティックスのソフトウェアGENETYX Ver7.0.9を使用し、ORFにコードされるポリペプチド部分全長を用いて、Unit Size to Compare=2の設定で類似性をpercentage計算させた際の数値を用いてもよい。あるいは、相同性は、NEEDLEプログラム(J Mol Biol 1970;48:443−453)検索において、デフォルト設定のパラメータ(Gap penalty=10、Extend penalty=0.5、Matrix=EBLOSUM62)を用いて得られた値(Identity)であってもよい。これらの計算で導き出される相同性%の値のうち、最も低い値を採用してもよい。相同性%としては、好ましくは同一性%が利用される。
本発明のタンパク質は、Nα−アシラーゼ活性を有することから、Nα−アシル−L−アミノ酸の特異的な生成に優れ得るという特性を有する。本明細書中で用いられる場合、用語「Nα−アシラーゼ活性」とは、アミノ酸におけるα位のアミノ基に対して、カルボン酸またはその塩におけるアシル基を特異的に転移させる能力をいう。本発明のタンパク質は、特定の測定条件で活性を測定した場合、(A)のタンパク質の活性を基準として、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、94%以上、96%以上、98%以上、または同等以上の活性を有することが好ましい。このような特定の測定条件としては、例えば、基質としてアルギニンまたはフェニルアラニン(200mM)およびラウリン酸(100mM)を用いて、本発明のタンパク質(2μg/mL)を含み、かつ有機溶媒(例、グリセロール)を含まない水溶液の反応系(pH9.0、0.2mL)を25℃で60時間振とうして反応させる条件が挙げられる。
本発明のタンパク質は、目的特定を保持し得る限り、触媒ドメイン中の部位、および触媒ドメイン以外の部位に、変異が導入されていてもよい。目的特性を保持し得る、変異が導入されてもよいアミノ酸残基の位置は、当業者に明らかである。具体的には、当業者は、1)同種の特性を有する複数のタンパク質のアミノ酸配列を比較し、2)相対的に保存されている領域、および相対的に保存されていない領域を明らかにし、次いで、3)相対的に保存されている領域および相対的に保存されていない領域から、それぞれ、機能に重要な役割を果たし得る領域および機能に重要な役割を果たし得ない領域を予測できるので、構造・機能の相関性を認識できる。したがって、当業者は、本発明のタンパク質のアミノ酸配列において変異が導入されてもよいアミノ酸残基の位置を特定できる。
アミノ酸残基が置換により変異される場合、アミノ酸残基の置換は、保存的置換であってもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「保存的置換」とは、所定のアミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換することをいう。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で周知である。例えば、このようなファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖を有するアミノ酸(例、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β位分岐側鎖を有するアミノ酸(例、スレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、ヒドロキシル基(例、アルコール性、フェノール性)含有側鎖を有するアミノ酸(例、セリン、スレオニン、チロシン)、および硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(例、システイン、メチオニン)が挙げられる。好ましくは、アミノ酸の保存的置換は、アスパラギン酸とグルタミン酸との間での置換、アルギニンとリジンとヒスチジンとの間での置換、トリプトファンとフェニルアラニンとの間での置換、フェニルアラニンとバリンとの間での置換、ロイシンとイソロイシンとアラニンとの間での置換、およびグリシンとアラニンとの間での置換であってもよい。
本発明のタンパク質はまた、異種部分とペプチド結合を介して連結された融合タンパク質であってもよい。このような異種部分としては、例えば、目的タンパク質の精製を容易にするペプチド成分(例、ヒスチジンタグ、Strep−tag II等のタグ部分;グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質等の目的タンパク質の精製に利用されるタンパク質)、目的タンパク質の可溶性を向上させるペプチド成分(例、Nus−tag)、シャペロンとして働くペプチド成分(例、トリガーファクター)、他の機能を有するペプチド成分(例、全長タンパク質またはその一部)、ならびにリンカーが挙げられる。
上述したような本発明のタンパク質としては、例えば、バークホルデリア(Burkholderia)属に属する細菌、より具体的にはバークホルデリア・エスピー(Burkholderia sp.)に由来するタンパク質、天然に生じるそのホモログ、または人為的に作出された変異タンパク質が挙げられる。変異タンパク質は、例えば、目的タンパク質をコードするDNAに変異を導入し、得られた変異DNAを用いて変異タンパク質を産生させることにより、得ることができる。変異導入法としては、例えば、部位特異的変異導入、ならびに無作為変異導入処理(例、変異剤による処理、および紫外線照射)が挙げられる。
一実施形態では、本発明の方法は、本発明のタンパク質自体を用いて行うことができる。本発明のタンパク質として、天然タンパク質または組換えタンパク質を利用することができる。組換えタンパク質は、例えば、無細胞系ベクターを用いて、または本発明のタンパク質を産生する微生物から得ることができる。本発明のタンパク質は、未精製、粗精製または精製タンパク質として利用することができる。これらのタンパク質としては、反応において、固相に固定された固相化タンパク質として利用されてもよい。
本発明のタンパク質を公知の方法で単離し、場合によっては更に精製することにより、目的とするタンパク質が得られる。タンパク質を産生する微生物としては、形質転換体が好ましい。形質転換体を用いた場合には、不活性な目的タンパク質会合体、すなわちタンパク質封入体として目的タンパク質を得た後、これを適当な方法で活性化することも可能である。活性化後、活性型タンパク質を公知の方法で分離精製することにより目的タンパク質を得てもよい。
微生物を培養するための培地は公知であり、例えば、LB培地などの栄養培地や、M9培地などの最小培地に炭素源、窒素源、ビタミン源等を添加して用いることができる。形質転換体は宿主に応じて、通常、16〜42℃、好ましくは25〜37℃で5〜168時間、好ましくは8〜72時間培養される。宿主に依存して、振盪培養と静置培養のいずれも可能であるが、必要に応じて攪拌を行ってもよく、通気を行ってもよい。放線菌を発現宿主として選択する場合は、目的タンパク質を生産させるために使用し得る条件を適宜用いることが出来る。また、目的タンパク質の発現のために誘導型プロモーターを用いた場合は、培地にプロモーター誘導剤を添加して培養を行うこともできる。
産生された目的タンパク質は、形質転換体の抽出物から公知の塩析、等電点沈殿法もしくは溶媒沈殿法等の沈殿法、透析、限外濾過もしくはゲル濾過等の分子量差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等の疎水度の差を利用する方法やその他アフィニティークロマトグラフィー、SDSポリアクリルアミド電気泳動法、等電点電気泳動法等、またはこれらの組み合わせにより、精製および単離することが可能である。目的タンパク質を分泌発現させた場合には、形質転換体を培養して得られた培養液から、菌体を遠心分離等で除くことで目的タンパク質を含む培養上清が得られる。この培養上清からも目的タンパク質を精製および単離することが可能である。
例えば、形質転換体の培養終了後、遠心により集菌した菌体を菌体破砕用バッファー(20〜100mM Tris−HCl(pH8.0)、5mM EDTA)に懸濁し、超音波破砕を約10分間行うことにより菌体を破砕することができる。菌体破砕は、トルエン等の溶媒を培養液に加え行うこともできる。この破砕処理液を12000rpmで10分間遠心して上清を上述した精製操作をすることができる。また、前記遠心後の沈殿について必要に応じて塩酸グアニジウムまたは尿素などで可溶化したのち更に精製することもできる。目的タンパク質を分泌発現させた場合には、形質転換体の培養終了後、培養液を12000rpmで10分間遠心して上清を上述した精製操作をすることができる。
具体的には、目的タンパク質の精製は、例えば以下のように行うことができる。宿主の培養終了後、培養上清または細胞抽出物に硫酸アンモニウム(2.8M)を加えて沈殿分画後、更に、CM セファデックス C−50、DEAE−セファデックスA−50イオン交換カラムクロマトグラフィー、オクチルセファロースCL−4BおよびフェニルセファロースCL−4Bカラムクロマトグラフィー等の操作を行うことによって、ポリアクリルアミドゲル電気泳動した場合にゲル上で単一バンドを呈する程度にまで精製することができる。
得られた目的タンパク質の活性は、Nα−アシラーゼ活性を測定することにより評価することができる(例、実施例を参照)。
別の実施形態では、本発明の方法は、本発明のタンパク質を産生する微生物またはその処理液を用いて行うことができる。本発明のタンパク質を産生する微生物としては、例えば、本発明のタンパク質を天然に産生する微生物(例、バークホルデリア属に属する細菌)、および形質転換体が挙げられる。好ましくは、形質転換体またはその処理液が用いられる。
本発明のタンパク質を産生する微生物の処理液としては、任意の方法により処理された、目的タンパク質を含有する処理液を使用することができる。このような処理としては、例えば、上述した単離および精製で言及した方法、ならびに微生物の死滅を可能にする殺微生物処理方法が挙げられる。殺微生物処理方法としては、微生物の死滅を可能にする任意の方法を用いることができるが、例えば、熱処理、酸性処理、アルカリ性処理、界面活性剤処理、および有機溶媒処理が挙げられる。
好ましい実施形態では、本発明の形質転換体は、上記(A)〜(C)のいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現単位を含む宿主細胞である。
より好ましい実施形態では、本発明の形質転換体は、以下(a)〜(d)からなる群より選ばれるポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現単位を含む宿主細胞である:
(a)配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列と90%以上の相同性を有するヌクレオチド配列を含み、かつNα−アシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつNα−アシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;ならびに
(d)(a)〜(c)からなる群より選ばれるポリヌクレオチドの縮重変異体。
上記(a)〜(d)のポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよいが、DNAであることが好ましい。配列番号1および3のヌクレオチド配列は、配列番号2のアミノ酸配列をコードする。
上記ポリヌクレオチド(b)では、配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列に対するヌクレオチド配列の相同性%は、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上であってもよい。
上記ポリヌクレオチド(c)において、用語「ストリンジェント条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、ストリンジェント条件としては、6×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中、約45℃でのハイブリダイゼーション、続いて、0.2×SSC、0.1%SDS中、50〜65℃での1または2回以上の洗浄が挙げられる。
上記ポリヌクレオチド(d)において、用語「縮重変異体」とは、変異前のポリヌクレオチド中の所定のアミノ酸残基をコードする少なくとも1つのコドンが、同一アミノ酸残基をコードする別のコドンに変更されたポリヌクレオチド変異体をいう。このような縮重変異体はサイレント変異に基づく変異体であることから、縮重変異体によりコードされるタンパク質は、変異前のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質と同一である。
好ましくは、縮重変異体は、それが導入されるべき宿主細胞のコドン使用頻度に適合するようにコドンが変更されたポリヌクレオチド変異体である。ある遺伝子を異種宿主細胞(例、微生物)で発現させる場合、コドン使用頻度の相違により、対応するtRNA分子種が十分に供給されず、翻訳効率の低下および/または不正確な翻訳(例、翻訳の停止)が生じることがある。例えば、エシェリヒア・コリでは、表1に示される低頻度コドンが知られている。
したがって、本発明では、後述するような宿主細胞(例、微生物)のコドン使用頻度に適合する縮重変異体を利用することができる。例えば、本発明の縮重変異体は、アルギニン残基、グリシン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、およびプロリン残基からなる群より選ばれる1種以上のアミノ酸残基をコードするコドンが変更されたものであってもよい。より具体的には、本発明の縮重変異体は、低頻度コドン(例、AGG、AGA、CGG、CGA、GGA、AUA、CUA、およびCCC)からなる群より選ばれる1種以上のコドンが変更されたものであってもよい。好ましくは、縮重変異体は、以下からなる群より選ばれる1種以上(例、1種、2種、3種、4種、または5種)のコドンの変更を含んでいてもよい:
i)Argをコードする4種のコドン(AGG、AGA、CGG、およびCGA)からなる群より選ばれる少なくとも1種のコドンの、Argをコードする別のコドン(CGU、またはCGC)への変更;
ii)Glyをコードする1種のコドン(GGA)の、別のコドン(GGG、GGU、またはGGC)への変更;
iii)Ileをコードする1種のコドン(AUA)の、別のコドン(AUU、またはAUC)への変更;
iv)Leuをコードする1種のコドン(CUA)の、別のコドン(UUG、UUA、CUG、CUU、またはCUC)への変更;ならびに
v)Proをコードする1種のコドン(CCC)の、別のコドン(CCG、CCA、またはCCU)への変更。
本発明の縮重変異体がRNAの場合、上記のとおりヌクレオチド残基「U」が利用されるべきであるが、本発明の縮重変異体がDNAの場合、ヌクレオチド残基「U」の代わりに「T」が利用されるべきである。宿主細胞のコドン使用頻度に適合させるためのヌクレオチド残基の変異数は、変異前後で同一のタンパク質をコードする限り特に限定されないが、例えば、1〜400個、1〜300個、1〜200個、または1〜100個である。
低頻度コドンの同定は、当該分野で既知の技術を利用することにより、任意の宿主細胞の種類およびゲノム配列情報に基づいて容易に行うことができる。したがって、縮重変異体は、低頻度コドンの非低頻度コドン(例、高頻度コドン)への変更を含むものであってもよい。また、低頻度コドンのみならず、生産菌株のゲノムGC含量への適合性などの要素を考慮して変異体を設計する方法が知られているので(Alan Villalobos et al., Gene Designer: a synthetic biology tool for constructing artificial DNA segments, BMC Bioinformatics. 2006 Jun 6;7:285.)、このような方法を利用してもよい。このように、上述の変異体は、それが導入され得る任意の宿主細胞(例、後述するような微生物)の種類に応じて適宜作製できる。
用語「発現単位」とは、タンパク質として発現されるべき所定のポリヌクレオチドおよびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む、当該ポリヌクレオチドの転写、ひいては当該ポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の産生を可能にする最小単位をいう。発現単位は、ターミネーター、リボゾーム結合部位、および薬剤耐性遺伝子等のエレメントをさらに含んでいてもよい。発現単位は、DNAであってもRNAであってもよいが、DNAであることが好ましい。
発現単位は、宿主細胞に対して同種であっても異種であってもよいが、好ましくは異種発現単位である。用語「異種発現単位」とは、発現単位が宿主細胞に対して異種であることを意味する。したがって、本発明では、発現単位を構成する少なくとも1つのエレメントが宿主細胞に対して異種である。宿主細胞に対して異種である、発現単位を構成するエレメントとしては、例えば、上述したエレメントが挙げられる。好ましくは、異種発現単位を構成する、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、もしくはプロモーターの一方、または双方が、宿主細胞に対して異種である。したがって、本発明では、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、もしくはプロモーターの一方、または双方が、宿主細胞以外の生物(例、原核生物および真核生物、または微生物、昆虫、植物、および哺乳動物等の動物)もしくはウイルスに由来するか、または人工的に合成されたものである。あるいは、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、宿主細胞に対して異種であってもよい。好ましくは、目的タンパク質が、宿主細胞に対して異種である。
異種発現単位を構成するプロモーターは、その下流に連結されたポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質を宿主細胞で発現させることができるものであれば特に限定されない。例えば、プロモーターは、宿主細胞に対して同種であっても異種であってもよい。例えば、組換えタンパク質の産生に汎用される構成または誘導プロモーターを用いることができる。このようなプロモーターとしては、例えば、PhoAプロモーター、PhoCプロモーター、T7プロモーター、T5プロモーター、T3プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、PRプロモーター、PLプロモーター、SP6プロモーター、アラビノース誘導プロモーター、コールドショックプロモーター、テトラサイクリン誘導性プロモーターが挙げられる。好ましくは、宿主細胞で強力な転写活性を有するプロモーターを用いることができる。宿主細胞で強力な転写活性を有するプロモーターとしては、例えば、宿主細胞で高発現している遺伝子のプロモーター、およびウイルス由来のプロモーターが挙げられる。
宿主細胞としては、例えば、大腸菌(E.coli)、放線菌およびコリネ型細菌を含む種々の微生物が挙げられる。本発明において宿主細胞として用いられる大腸菌(E.coli)には一般にクローニングや異種タンパク質の発現によく利用される菌株、例えば、HB101、MC1061、JM109、CJ236、MV1184が含まれる。本発明において宿主細胞として用いられる放線菌には一般に異種タンパク質の発現によく利用される菌株、例えば、S.リビダンス TK24やS.セリカラーA3(2)が含まれる。本発明において宿主細胞として用いられるコリネ型細菌とは好気性のグラム陽性桿菌であり、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが現在コリネバクテリウム属に統合された細菌を含み(Int.J.Syst.Bacteriol.,41,255(1981))、またコリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。コリネ型細菌を使用することの利点には、これまでにタンパク質の分泌に好適とされてきたカビ、酵母やBacillus属細菌と比べて本来的に菌体外に分泌されるタンパク質が極めて少なく、目的タンパク質を分泌生産した場合にその精製過程が簡略化、省略化できること、分泌生産した酵素を用いて酵素反応を行う場合には、培養上清を酵素源として用いることができるため、菌体成分、夾雑酵素等による不純物、副反応を低減させることができること、糖、アンモニアや無機塩等を含む単純な培地で容易に生育するため、培地代や培養方法、培養生産性の点で優れていることが含まれる。また、Tat系分泌経路を利用することにより、これまでに知られていたSec系分泌経路では分泌生産が困難なタンパク質であったイソマルトデキストラナーゼやプロテイングルタミナーゼ等産業上有用なタンパク質も効率良く分泌させることが可能である(WO2005/103278)。その他、WO01/23491、WO02/081694、WO01/23491等に開示されるコリネバクテリウム・グルタミカムを用いることもできる。
本発明の形質転換体は、当該分野において公知の任意の方法により作製することができる。例えば、このような発現単位は、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれた形態、または宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれていない形態(例、発現ベクターの状態)において、宿主細胞に含まれる。発現単位を含む宿主細胞は、当該分野において公知の任意の方法(例、コンピテント細胞法、エレクトロポレーション法)により、発現ベクターで宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。発現ベクターが宿主細胞のゲノムDNAと相同組換えを生じる組込み型(integrative)ベクターである場合、発現単位は、形質転換により、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれることができる。一方、発現ベクターが宿主細胞のゲノムDNAと相同組換えを生じない非組込み型ベクターである場合、発現単位は、形質転換により、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれず、宿主細胞内において、発現ベクターの状態のまま、ゲノムDNAから独立して存在できる。あるいは、ゲノム編集技術(例、CRISPR/Casシステム、Transcription Activator−Like Effector Nucleases(TALEN))により発現単位を宿主細胞のゲノムDNAに組み込むことが可能である。
本発明の発現ベクターは、発現単位として上述した最小単位に加えて、宿主細胞で機能するターミネーター、リボゾーム結合部位、および薬剤耐性遺伝子等のエレメントをさらに含んでいてもよい。薬剤耐性遺伝子としては、例えば、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤に対する耐性遺伝子が挙げられる。
発現ベクターはまた、宿主細胞のゲノムDNAとの相同組換えのために、宿主細胞のゲノムとの相同組換えを可能にする領域をさらに含んでいてもよい。例えば、発現ベクターは、それに含まれる発現単位が一対の相同領域(例、宿主細胞のゲノム中の特定配列に対して相同なホモロジーアーム、loxP、FRT)間に位置するように設計されてもよい。発現単位が導入されるべき宿主細胞のゲノム領域(相同領域の標的)としては、特に限定されないが、宿主細胞において発現量が多い遺伝子のローカスであってもよい。
発現ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、ファージ、または人工染色体であってもよい。発現ベクターはまた、組込み型(integrative)ベクターであっても非組込み型ベクターであってもよい。組込み型ベクターは、その全体が宿主細胞のゲノムに組み込まれるタイプのベクターであってもよい。あるいは、組込み型ベクターは、その一部(例、発現単位)のみが宿主細胞のゲノムに組み込まれるタイプのベクターであってもよい。発現ベクターはさらに、DNAベクター、またはRNAベクター(例、レトロウイルス)であってもよい。発現ベクターはまた、汎用される発現ベクターを用いてもよい。このような発現ベクターとしては、例えば、pUC(例、pUC19、pUC18)、pSTV、pBR(例、pBR322)、pHSG(例、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398)、RSF(例、RSF1010)、pACYC(例、pACYC177、pACYC184)、pMW(例、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218)、pQE(例、pQE30)、およびその誘導体が挙げられる。また、コリネバクテリウム・グルタミカムのようなコリネ型細菌を宿主細胞として選択する場合、高コピーベクターであるpPK4などを好適に利用することができる。
本発明の方法は、上述したように、上記タンパク質自体、および/または上記タンパク質を産生する微生物もしくはその処理液の存在下で、アミノ酸もしくはその塩およびカルボン酸もしくはその塩を含む反応系において行うことができる。
本発明の方法で用いられるアミノ酸は、グリシン、または置換されていてもよい直鎖アルキル基を側鎖として有する中性または塩基性L−α−アミノ酸である。
中性または塩基性L−α−アミノ酸が側鎖として有する直鎖アルキル基は、好ましくは、C〜C12の直鎖アルキル基であり、より好ましくは、C〜C10の直鎖アルキル基であり、さらにより好ましくは、C〜Cの直鎖アルキル基であり、最も好ましくは、C〜Cの直鎖アルキル基である。このような直鎖アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、およびn−ヘキシルが挙げられる。
直鎖アルキル基は、1〜3個、好ましくは1または2個の所定の置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えば、以下が挙げられる:
(1)C〜Cアルキル;
(2)ヒドロキシル;
(3)C〜Cアルキルオキシ;
(4)スルファニル;
(5)C〜Cアルキルスルファニル;
(6)グアニジノ;
(7)アミノ;
(8)C〜Cアルキルでモノ置換もしくはジ置換されたアミノ;
(9)アミド;
(10)前記(1)〜(9)の置換基からなる群より選ばれる1〜3個(好ましくは1または2個)の置換基で置換されていてもよいアリール;および
(11)前記(1)〜(9)の置換基からなる群より選ばれる1〜3個の置換基(好ましくは1または2個)で置換されていてもよいヘテロアリール。
上記(1)、(3)、(5)、および(8)におけるC〜Cアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、およびiso−プロピルが挙げられる。
上記(10)におけるアリールとしては、例えば、フェニル、およびナフチルが挙げられる。好ましくは、アリールは、フェニルである。
上記(11)におけるヘテロアリールとしては、例えば、単環式芳香族複素環(例、ピロリル、フラニル、チエニル、フリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、およびイミダゾイル)、ならびに二環式芳香族複素環(例、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、キノリル、およびイソキノリル)が挙げられる。好ましくは、ヘテロアリールは、イミダゾイル、またはインドリルである。
好ましくは、置換されていてもよい直鎖アルキル基を側鎖として有する中性または塩基性L−α−アミノ酸は、L−フェニルアラニン、L−アラニン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−リジン、L−ロイシン、L−メチオニン、L−アスパラギン、L−グルタミン、L−アルギニン、L−セリン、L−スレオニン、L−バリン、L−トリプトファン、L−チロシン、またはL−テアニンである。
カルボン酸としては、α−L−アミノ酸のα位のアミノ基との反応のためにアシル基を供給できる任意のカルボン酸を使用することができる。このようなカルボン酸としては、例えば、直鎖または分枝した飽和または不飽和の脂肪酸、および飽和または不飽和の側鎖を有する芳香族カルボン酸が挙げられる。このようなカルボン酸は、好ましくは炭素数が5以上、より好ましくは炭素数が8以上のカルボン酸である。カルボン酸の炭素数はまた、例えば、30以下、25以下または20以下であってもよい。より具体的には、本発明の方法において用いられるカルボン酸としては、例えば、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミスチリン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、リノール酸、オレイン酸、安息香酸、メトキシメチル安息香酸、フェニルプロピオン酸、シンナモイル酸、メトキシシンナモイル酸、リノレン酸、ケイ皮酸が挙げられる。ラウリン酸、ステアリン酸が特に好ましい。
アミノ酸またはカルボン酸の塩としては、任意の塩を用いることができる。このような塩としては、例えば、無機酸塩(例、塩酸塩)、無機塩基塩(例、アンモニウム塩)、有機酸塩(例、酢酸塩)、および有機塩基塩(例、トリエチルアミン塩)等の非金属塩、ならびにアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩)、およびアルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩)等の金属塩が挙げられる。
反応系における基質(例、アミノ酸もしくはその塩、および/またはカルボン酸もしくはその塩)濃度は、上記タンパク質によるNα−アシル−L−アミノ酸の生成が可能である限り特に限定されず、例えば、1mM、10mMまたは100mM以上の濃度であってもよい。基質であるアミノ酸もしくはその塩、およびカルボン酸もしくはその塩の一方が反応系に過剰量存在していてもよく、必要に応じて不足している基質を反応中に追加してもよい。
反応系としては、例えば、上記タンパク質自体または上記処理液を用いるのであれば、緩衝液等の水溶液を用いることができる。この場合、有機溶媒(例、グリセロール)を含まない水溶液を、反応系として好適に用いることができる。反応温度は、上記タンパク質によるNα−アシル−L−アミノ酸の生成が可能である限り特に限定されず、例えば、約4℃〜40℃の温度条件下で反応を行うことができる。pHは、上記タンパク質によるNα−アシル−L−アミノ酸の生成が可能である限り特に限定されず、例えば、約6.0〜9.5のpH条件下で反応を行うことができる。反応時間は、適宜設定することができる。
反応系として上記のような水溶液を用いる場合、特に、前記カルボン酸が比較的長鎖であって、水に不溶性または難溶性であるα−アシル−L−アミノ酸(例、Nα−ラウロイルアルギニン)が生成するとき、生成するα−アシル−L−アミノ酸は析出して反応系から容易に除去され、従って、Nα−アシル−L−アミノ酸の合成反応がその逆反応であるNα−アシル−L−アミノ酸の分解反応よりも顕著に優先的かつ効率よく進む。また、このような場合、合成反応生成物であるNα−アシル−L−アミノ酸は速やかに水相から分離してくるので非常に容易に回収することができる。例えば、分離したNα−アシル−L−アミノ酸を直接回収する、または、有機溶媒によって容易にNα−アシル−L−アミノ酸を水性反応系から抽出して回収することができる。
また、反応系として、上記タンパク質を産生する微生物を用いるのであれば、液体培地等の任意の培地で培養することにより行うことができる。この場合、培養温度は、例えば、15〜42℃、好ましくは20〜37℃である。宿主細胞の培養は、例えば、pH5.5〜8.5、好ましくはpH6〜8で行うことができる。このような条件であれば、宿主細胞が十分に増殖するため、上記タンパク質を大量に得ることができる。培養は、例えば、バッチ培養法、流加培養法、および連続培養法等の公知の発酵方法により行われてもよい。液体培地は、宿主細胞の培養に用いられる任意の液体培地を利用することができる。例えば、液体培地としては、炭素源としてグルコース、フルクトース、グリセロール、スターチなどの炭水化物を含有するものが挙げられる。液体培地はまた、無機もしくは有機窒素源(例、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、カゼインの加水分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン等)を含んでいてもよい。液体培地はさらに、他の栄養源、例えば、無機塩(例、二リン酸ナトリウムまたは二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム)、ビタミン類(例、ビタミンB1)、抗生物質を含んでいてもよい。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1:アシラーゼ活性菌の採取
Nα−ラウロイル−L−フェニルアラニン(以下Lau−Phe)を単一炭素源とした培地を用いて集積培養を行うことにより、アシラーゼ活性菌を自然界より単離・取得した。
Lau−Phe単一炭素源培地(0.67% Difco(商標) Yeast Nitrogen Base(BD),0.2% NaHPO,0.1% Lau−Phe,pH5.2)0.5mLを入れた96穴ディープウェルプレートに土壌試料を接種し、30℃で1日間振とう培養を行った。得られた培養液0.005mLをLau−Phe単一炭素源培地0.5mLを入れた96穴ディープウェルプレートに接種し、30℃で2日間振とう培養を行った。同様にして再度3日間の振とう培養を行った。得られた培養液をLau−Phe単一炭素源寒天培地(0.67% Difco(商標) Yeast Nitrogen Base (BD),0.2% NaHPO,0.1% Lau−Phe,1.5% 寒天,pH5.2)に塗布し、30℃で3日間培養した。得られたコロニーをTGY寒天培地(ポリペプトン 5g/L,グルコース 1g/L,酵母エキス 5g/L,KHPO 1g/L,寒天 15g/L,pH7.0)に塗布し、30℃で2日間培養しコロニーを単離した。
得られた菌株を、TGY培地0.5mLを入れた96穴ディープウェルプレートに接種し、30℃で24時間振とう培養した。得られた培養液0.05mLから集菌し、5mMのLau−Phe、100mMのTris−HCl(pH8.0)を含む溶液0.1mLに懸濁した。30℃で16時間の反応を行い、反応停止液(0.01M NaOH、50%エタノール)0.5mLを添加した。残存しているLau−Pheは、Acquity UPLC BEH column(C18 1.7um 2.1x100mm,Waters)を利用したUPLC(Waters)分析により定量した。
分析条件は以下に示す通りである。
移動相A:0.1% リン酸
移動相B:アセトニトリル
A/B:20/80
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出:UV 210nm
同様にして菌体(0.02mL分)を10mMのラウリン酸ナトリウム、100mMのL−Phe、100mMのTris−HCl(pH8.0)、10%のエタノールを含む溶液0.1mLに懸濁した。30℃で16時間の反応を行い、反応停止液(0.01M NaOH、50%エタノール)0.5mLを添加した。生成したLau−PheはUPLCで分析した。分析条件は上述の通りである。
以上のようにして、Lau−Phe分解活性、Lau−Phe合成活性をともに有する菌株を得た。
次に、TGY寒天培地上で生育させたコロニーを4mLのTGY培地に植菌し、30℃で24時間振とう培養した。得られた培養液0.125mLから集菌し、10mMのステアリン酸ナトリウム、100mMのL−Phe、100mMの100mMのTris−HCl(pH8.0)、10%のエタノールを含む0.25mLの溶液に懸濁した。50℃で16時間の反応を行い、反応停止液(0.1M HCl、90%エタノール)1mLを添加した。生成したNα−ステアロイル−L−フェニルアラニン(以下、Ste−Phe)はAcquity UPLC BEH column(C18 1.7um 2.1x100mm,Waters)を利用したUPLC(Waters)分析により定量した。
分析条件は以下に示す通りである。
移動相A:0.1% リン酸
移動相B:アセトニトリル
A/B:10/90
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出:UV 210nm
最も活性が高く、0.7mMのSte−Phe蓄積を示したLP5_18B株をアシラーゼ活性菌として選抜した。本菌株を同定試験に供したところ、16S rDNAのヌクレオチド配列(配列番号4)はBurkholderia属の16S rDNAのヌクレオチド配列に対し高い相同性を示したため、本菌株をBurkholderia sp.LP5_18B株とした。
実施例2:Burkholderia sp.LP5_18B株由来アシラーゼの精製
Burkholderia sp.LP5_18B株の可溶性画分(CFE)からアシラーゼの精製を以下の通りに行った。アシラーゼ活性は、Lau−Pheを基質とした分解反応を以下の条件で実施し算出した。
100mM ホウ酸−Na緩衝液(pH11.0)、10mM Lau−Phe、0.01mL 酵素液/0.2mL反応液、25°Cで15分間反応。反応終了後、0.1mLの反応液と0.9mLの反応停止液(1%りん酸)を混合し、フィルターろ過後にUPLC分析に供しPheを定量した。1Uは1μmolのPheを1分あたりに生成する活性とした。
UPLCでの分析条件は以下に示す通りである。
移動相A:0.1% リン酸
移動相B:アセトニトリル
A/B:90/10
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出:UV 254nm
CFEの調製:
Burkholderia sp.LP5_18B株を、8L(800mL/2Lバッフル付フラスコ、10個)の酵素生産培地(10g/L yeast extract,10g/L polypeptone,3g/L KHPO,1g/L KHPO,5g/L 硫酸アンモニウム,1g/L グルコース,0.1g/L 硫酸マグネシウム7水和物)で30°C、18時間の振とう培養を行った。得られた菌体を20mM Tris−HCl(pH8.0)に懸濁し超音波破砕、遠心し上清をCFEとした。
硫安沈殿:
20−40%の硫安分画を行い、得られた沈殿を20mM Tris−HCl(pH8.0)に懸濁し20mM Tris−HCl(pH8.0)を用いて透析後、フィルターでろ過した。
Q sepharoseカラムでの精製:
上記サンプルをQ sepharose HP 26/10カラムに供し、2CVの20mM Tris−HCl(pH8.0)で洗浄した後、NaClのグラジエントにより溶出した(0−100mM,20CV)。Lau−Phe分解活性を有する画分を回収した。
Resource 15 Phe 6mLカラムでの精製:
上記サンプルに硫安が900mM含まれるよう調製し、Resource 15 Phe 6mLカラムに供した。2CVの20mM Tris−HCl(pH8.0),900mM 硫安で洗浄した後、硫安のグラジエントにより溶出した(900−400mM,20CV)。Lau−Phe分解活性を有する画分を回収し、20mM Tris−HCl(pH8.0)とAmicon Ultra−15 filter(10kDa)を用いて濃縮とバッファー交換を行った。
Mono Q 5/50 GLカラムでの精製:
上記サンプルをMono Q 5/50 GLカラムに供し、2CVの20mM Tris−HCl(pH8.0)で洗浄した後、NaClのグラジエントにより溶出した(0−20mM,80CV)。Lau−Phe分解活性を有する画分を回収し、20mM Tris−HCl(pH8.0)とAmicon Ultra−15 filter(10kDa)を用いて濃縮とバッファー交換を行った。
以上のカラムクロマト操作により得られた精製サンプルをSDS−PAGEに供したところ、単一のバンドが42kDa付近に確認された。精製およびSDS−PAGEの結果をそれぞれ、表2および図1に示す。
実施例3:Burkholderia sp.LP5_18B株由来アシラーゼを用いたアシルアミノ酸の合成
実施例2で得られた精製サンプルを用いたアシルアミノ酸合成を行った。合成反応は以下の条件で実施した。
100mM ホウ酸−Na緩衝液、100mM ラウリン酸−Na、200mM アミノ酸、2μg/mL アシラーゼ(精製サンプル)、pH9.0、0.2mLの反応液を25℃で60時間振とうして反応させた。反応終了後、0.05mLの反応液と1mLの反応停止液(0.1M HCl、90%エタノール)とを混合し、フィルターろ過後にUPLC分析に供し、生成したアシルアミノ酸を定量した。UPLC分析は上述したLau−Pheの定量と同条件で実施した。また、HCT−TK Mass Spectrometer(Bruker Daltonics)、Waters 2795 separation module(Waters)を用いたLC−MS分析に供し、アシルアミノ酸と一致する分子量を検出した。
LC−MS分析条件は以下の通りである。
カラム:COSMOSIL 2.5C18−MS−II Packed Column(2.0x100mm,Nacalai tesque)
移動相A:0.1% ギ酸アンモニウム
移動相B:アセトニトリル
A/B:50/50
流速:0.3mL/min
カラム温度:40℃
イオン化法:ESI−ネガティブ
UPLC分析の結果、Nα−ラウロイル−L−フェニルアラニンは51mM、Nα−ラウロイル−L−アラニンは4.7mM、Nα−ラウロイル−グリシンは5.5mM、Nα−ラウロイル−L−グルタミンは8.2mM、Nα−ラウロイル−L−アルギニンは89mM(UPLCにおける標品との保持時間の一致から、α位のアミノ基がラウロイル化されていると考えられる)、Nα−ラウロイル−L−セリンは13mM、Nα−ラウロイル−L−バリンは23mM、Nα−ラウロイル−L−テアニンは2.6mMが検出された。Nα−ラウロイル−DL−アスパラギン酸、Nα−ラウロイル−L−グルタミン酸、Nα−ラウロイル−L−ピログルタミン酸、Nα−ラウロイル−D−フェニルアラニン、Nα−ラウロイル−D−アルギニンの生成は確認されなかった。その他のラウロイル−アミノ酸に関してはUPLCによる定量を行わなかった。
LC−MS分析の結果、L−Phe、L−Ala、Gly、L−His、L−Ile、L−Lys、L−Leu、L−Met、L−Asn、L−Gln、L−Arg、L−Ser、L−Thr、L−Val、L−Trp、L−Tyr、L−テアニンを基質とした反応液から、該当するラウロイル−アミノ酸と一致する分子量が確認された。また、LCにおける標品との保持時間の一致から、α位のアミノ基がラウロイル化されていると考えられた。L−Glu、L−Pro、L−ピログルタミン酸、D−Phe、D−Argを基質とした反応液からは、該当するラウロイル−アミノ酸と一致する分子量は確認されなかった。
Nα−アシルアミノ酸の合成において基質として使用できたα−アミノ酸の側鎖構造は、以下の表3に示すとおりである。
以上より、アシラーゼは、グリシン、および置換されていてもよい直鎖アルキル基を側鎖として有する中性または塩基性L−α−アミノ酸をNα−アシルアミノ酸の合成反応における基質として利用できることが確認された。
また、先行技術では、水系溶媒中でのアシルリジン合成、水系溶媒への有機溶媒(グリセロール)添加系でのアシルグルタミン酸合成やアシルアルギニン合成が報告されているが、水系溶媒中でのアシルリジン以外のアシルアミノ酸の高収率合成は報告されていない。本発明の酵素(タンパク質)を用いた場合には、水系溶媒中でラウロイルアルギニン(89%)やラウロイルフェニルアラニン(51%)が高収率で得られている。したがって、本発明の酵素は、従来酵素と比し、水系溶媒中でアシルリジン以外のアシルアミノ酸を高収率で得ることができる点で、優れていると考えられる。
実施例4:Burkholderia sp.LP5_18B株由来アシラーゼ遺伝子のクローニング
実施例2で得られた精製サンプルをトリプシンで処理し、LC−MS/MS分析(nanoACQUITY UPLC system and SYNAPT G2−Si Mass Spectrometry,Waters)に供した。その結果、PPPAPAKPVLF(配列番号5)、SPLDMLTFTED(配列番号6)、VETAADWGTYLLVHAYTPE(配列番号7)(L:LまたはI,K:KまたはQ)の配列が得られた。これらの配列を用いてBLAST検索を行ったところ、Burkholderia sp. JPY251由来hydrolase(WP_026228646)と相同性を示したため、当該遺伝子(1323 bp)の周辺ヌクレオチド配列を参考にし、ORFの50bp上流および200bp下流にプライマーを設計した。これらのプライマーBspJPY_up50_F(5’−ccgtattagtgccgacctgtcgcgccgcgg−3’(配列番号8))とBspJPY_down200_R(5’−cgcgtgcacgtggtcgtgacgcagcggatg−3’(配列番号9))およびBurkholderia sp.LP5_18B株ゲノムDNAを用いてPCR増幅を行った。
PCR増幅は、KOD−plus−ver.2(東洋紡)を用いて以下の条件で行った。
1 cycle 94℃、2 min
25 cycles 98℃、10 sec
63℃、10 sec
68℃、90 sec
1 cycle 68℃、90 sec
4℃
得られたDNA断片のヌクレオチド配列を確認したところ、440残基からなるORFを見出した。ORFのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号1および2として示す。LC−MS/MS分析で解析された内部配列と一致するアミノ酸配列が見出されたことから、得られたORFは目的のアシラーゼをコードする遺伝子と判断した。
得られたアシラーゼのアミノ酸配列を用いてBLAST検索を行ったところ、Burkholderia sprentiae WSM5005由来hydrolase(WP_027195669)と最も高い同一性を示し(ヌクレオチド配列:82%;アミノ酸配列:85%)、また、Burkholderia sp. JPY251由来hydrolase(WP_026228646)とも高い同一性を示した(ヌクレオチド配列:82%;アミノ酸配列:84%)。
次に、Burkholderia sp.LP5_18B株由来アシラーゼの遺伝子合成をLife technologies社に依頼し、当該遺伝子を含むDNA断片を得た。このDNA断片について、E.coliでのコドン使用頻度に応じて、E.coliでの発現用にコドンを至適化した。至適化されたコドンを有するDNA断片のヌクレオチド配列を配列番号3に示す。このDNA断片をNdeI、XhoIで制限酵素処理し得た約1300bpのDNA断片と、同様にNdeI、XhoIで処理したpET22b(Novagen)とをライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを抽出し、このプラスミドをpET22−BuAcyと命名した。
実施例5:Burkholderia sp.LP5_18B株由来アシラーゼの発現
実施例4で構築したプラスミドpET22−BuAcyをE.coli BL21(DE3)に導入し、形質転換体を100mg/Lのアンピシリンを含むOvernight Express Instant TB Medium (メルク) 4mLに接種し、30℃で16時間の振とう培養を行った。
得られた培養液1mLから集菌を行い、1mLのTris−HCl(pH7.6) 20mMに懸濁、超音波破砕を行った。破砕液の遠心上清を菌体抽出液として、Lau−Pheの分解活性を測定した。活性測定は実施例2と同様にして行った。
その結果、培養液1mL当たり0.080Uの活性が確認された。培地に塩化コバルト6水和物を200mg/L添加し培養した場合には0.26U/mLの活性が、硫酸亜鉛7水和物を200mg/L添加し培養した場合には1.0U/mLの活性が検出された。pET22bを導入したE.coli BL21(DE3)から活性は検出されなかったことから、pET22−BuAcy保有株が示した活性は発現したBurkholderia sp.LP5_18B株由来アシラーゼによるものと考えられた。

Claims (15)

  1. 以下(A)〜(C):
    (A)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (B)配列番号2のアミノ酸配列において、1〜40個のアミノ酸残基が挿入、付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質;または
    (C)配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質;
    の存在下において、アミノ酸もしくはその塩およびカルボン酸もしくはその塩を反応させて、Nα−アシル−L−アミノ酸を生成することを含み、
    アミノ酸が、グリシン、または置換されていてもよい直鎖アルキル基を側鎖として有する中性または塩基性L−α−アミノ酸である、Nα−アシル−L−アミノ酸の製造方法。
  2. 前記置換されていてもよい直鎖アルキル基が、以下:
    (1)C〜Cアルキル;
    (2)ヒドロキシル;
    (3)C〜Cアルキルオキシ;
    (4)スルファニル;
    (5)C〜Cアルキルスルファニル;
    (6)グアニジノ;
    (7)アミノ;
    (8)C〜Cアルキルでモノ置換もしくはジ置換されたアミノ;
    (9)アミド;
    (10)前記(1)〜(9)の置換基からなる群より選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよいアリール;および
    (11)前記(1)〜(9)の置換基からなる群より選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよいヘテロアリール;
    からなる群より選ばれる1〜3個の置換基で置換されていてもよいC〜C直鎖アルキル基である、請求項1記載の方法。
  3. 前記中性または塩基性L−α−アミノ酸が、L−フェニルアラニン、L−アラニン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−リジン、L−ロイシン、L−メチオニン、L−アスパラギン、L−グルタミン、L−アルギニン、L−セリン、L−スレオニン、L−バリン、L−トリプトファン、L−チロシン、およびL−テアニンからなる群より選ばれる、請求項2記載の方法。
  4. カルボン酸が、炭素原子数5以上のカルボン酸である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
  5. カルボン酸が、ラウリン酸、またはステアリン酸である、請求項4記載の方法。
  6. 前記タンパク質が精製酵素である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
  7. 前記タンパク質の存在下における反応が、前記タンパク質を産生する微生物またはその処理液を用いて行われる、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
  8. 前記微生物が、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む異種発現単位を含む、請求項7記載の方法。
  9. 前記微生物が腸内細菌科に属する細菌である、請求項8記載の方法。
  10. 前記細菌がエシェリヒア・コリである、請求項9記載の方法。
  11. 以下(A)〜(C)からなる群より選ばれるタンパク質:
    (A)配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (B)配列番号2のアミノ酸配列において、1〜40個のアミノ酸残基が挿入、付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質;または
    (C)配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質
  12. 以下(a)〜(c)からなる群より選ばれるポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
    (b)配列番号1のヌクレオチド配列と90%以上の同一性を示すヌクレオチド配列を含み、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;または
    (c)配列番号1のヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ、Nα−アシラーゼ活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド;ならびに
    (d)(a)〜(c)からなる群より選ばれるポリヌクレオチドの縮重変異体。
  13. 請求項11記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む発現単位を含む発現ベクター。
  14. 請求項11記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む異種発現単位を含む微生物。
  15. 請求項11記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、およびそれに作動可能に連結されたプロモーターを含む異種発現単位を含む微生物を用いて、前記タンパク質を生成することを含む、タンパク質の製造方法。
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