JP2005168405A - ジペプチドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複雑な合成方法を経ることなく、簡便かつ高収率で安価にペプチドを製造できる新規酵素に関する。より詳細には、カルボキシ成分とアミン成分とからのペプチド生成反応を触媒する新規酵素、この酵素を生産する微生物、およびこの酵素もしくは微生物を使用する安価なペプチドの製造方法を提供することである。
【解決手段】アミノ酸エステルハイドロラーゼがペプチド生成活性を有することを、細菌から得られる酵素において見いだした。当該酵素はペプチドを効率良く生成する酵素であり、当該酵素をカルボキシ成分とアミン成分とに作用させて安価かつ簡便にペプチドを製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ジペプチドの製造方法に関し、詳しくは簡便かつ高収率で安価にペプチドを製造する方法に関する。
ペプチドは、医薬品、食品等のさまざまな分野で利用されている。例えば、L−アラニル−L−グルタミンはL−グルタミンに比べ安定かつ水溶性も高いことから、輸液や無血清培地の成分として広く用いられている。
ペプチドの製造法としては従来から化学合成法が知られているが、その製造法は必ずしも簡便なものではなかった。例えば、N−ベンジルオキシカルボニルアラニン(以下、「Z−アラニン」と称する)と保護L−グルタミンを用いる方法(非特許文献1;Bull.Chem.Soc.Jpn.,34,739(1961)、非特許文献2;Bull.Chem.Soc.Jpn.,35,1966(1962))、Z−アラニンと保護L−グルタミン酸−γ−メチルエステルを用いる方法(非特許文献3;Bull.Chem.Soc.Jpn.,37,200(1964))、Z−アラニンエステルと無保護グルタミン酸を用いる方法(特許文献1;特開平1−96194号公報)、2−置換−プロピオニルハロイドを原料として、N−(2−置換)−プロピオニルグルタミン誘導体を中間体として生成する方法(特許文献2;特開平6−234715号公報)等が知られている。
しかしながら、いずれの方法においても、保護基の導入脱離、もしくは光学活性中間体の使用が必要であり、工業的に有利で十分に満足できる製造方法ではなかった。
一方、酵素を用いたペプチドの代表的製造法としては、N保護、C無保護のカルボキシ成分とN無保護、C保護のアミノ成分を用いる縮合反応(反応1)、および、N保護、C保護のカルボキシ成分とN無保護、C保護のアミン成分を用いる置換反応(反応2)が広く知られている。(反応1)の例としては、Z−アスパラギン酸とフェニルアラニンメチルエステルからのZ-アスパルチルフェニルアラニンメチルエステルの製造方法(特許文献3;特開昭53−92729号公報)、(反応2)の例としてはアセチルフェニルアラニンエチルエステルとロイシンアミドからのアセチルフェニルアラニルロイシンアミドの製造方法(非特許文献4;Biochemical J., 163, 531 (1977))が挙げられる。N無保護、C保護のカルボキシ成分を用いる方法の報告研究例は極めて少なく、N無保護、C保護のカルボキシ成分とN無保護、C保護のアミン成分を用いる置換反応(反応3)の例としてはWO 90/01555公報(特許文献4)があり、例えばアルギニンエチルエステルとロイシンアミドからのアルギニルロイシンアミドの製造方法が挙げられる。N無保護、C保護のカルボキシ成分とN無保護、C無保護のアミン成分を用いる置換反応(反応4)の例としては、EP 278787A1公報(特許文献5)とEP 359399B1公報(特許文献6)があり、例えばチロシンエチルエステルとアラニンからのチロシルアラニンの製造方法が挙げられる。
特開平1−96194号公報 特開平6−234715号公報 特開昭53−92729号公報 国際公開第90/01555号パンフレット 欧州特許出願公開第278787号明細書 欧州特許第359399号明細書 Bull.Chem.Soc.Jpn.,34,739(1961) Bull.Chem.Soc.Jpn.,35,1966(1962) Bull.Chem.Soc.Jpn.,37,200(1964) Biochemical J., 163, 531 (1977)
上記の(反応1)から(反応4)の方法の中で最も安価な製造方法となり得るのは、当然ながら保護基の数が最も少ない(反応4)の範疇に入る反応である。
しかしながら、(反応4)の先行例(特許EP 278787A1)には以下の大きな問題点があった。(1)ペプチド生成速度が極めて遅い、(2)ペプチド生成収率が低い、(3)生産できるペプチドが比較的疎水度の高いアミノ酸を含むものに限られる、(4)添加酵素量が極めて大量、(5)カビ、酵母、植物に由来する比較的高価なカルボキシペプチダーゼ標品が必要である。
(反応4)において、細菌およびサッカロミセス(Saccharomyces)属以外の酵母由来の酵素を用いる方法は全く知られておらず、また親水性の高いアラニルグルタミン等のペプチドの製造方法についても全く知られていなかった。このような背景の下、これらペプチドの工業的安価な製造法の開発が望まれていた。
本発明は、複雑な合成方法を経ることなく、簡便かつ高収率で安価にペプチドを製造できる新規酵素を提供することを課題とする。より詳細には、カルボキシ成分とアミン成分とからのペプチド生成反応を触媒する新たな酵素、この酵素を生産する微生物、およびこの酵素もしくは微生物を使用する安価なペプチドの製造方法を提供することを課題とする。
上記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、アセトバクター(Acetobacter)属に属する細菌から、アミノ酸エステルを加水分解する活性を有する酵素であって、かつペプチドを効率良く生成する酵素を新たに見出した。さらに、本発明者らは、この酵素を用いることにより、上記の課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。なお、本明細書においては、アミノ酸エステルを加水分解する活性を有する酵素のことを「アミノ酸エステルハイドロラーゼ」ともいい、また当該酵素の活性を、「アミノ酸エステルハイドロラーゼ活性」ともいう。
アミノ酸エステルハイドロラーゼは、加水分解酵素であり、加水分解は下記の一般式1で示される反応を促進するものである。
A−B + H2O → A−OH + B−H ・・・一般式1
(一般式1において、「A−B」は、「A」および「B」いう物質が結合してなる化合物を示す。)
従来、アミノ酸エステルハイドロラーゼに、カルボキシ成分とアミン成分とからペプチドを合成する反応も促進する活性を有するものがあることはまったく知られていなかった。
本発明は下記の通りである。
〔1〕 アミノ酸エステルを加水分解する活性を有する酵素の存在下で、カルボキシ成分とアミン成分とからジペプチドを生成する、ジペプチドの製造方法。
〔2〕 前記酵素が、アミノ酸エステルを加水分解する活性を有する酵素を生産する微生物の培養物、該培養物より分離した微生物菌体、および、該微生物の菌体処理物からなる群より選ばれる1種または2種以上により供給される、上記〔1〕に記載のジペプチドの製造方法。
〔3〕 前記アミノ酸エステルを加水分解する活性を有する酵素を生産する微生物が、前記アミノ酸エステルを加水分解する加水分解する酵素を発現可能な形質転換体である、上記〔2〕に記載のジペプチドの製造方法。
〔4〕 前記カルボキシ成分が、L−アラニンメチルエステルである、上記〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載のジペプチドの製造方法。
〔5〕 前記アミン成分が、L−グルタミンである、上記〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載のジペプチドの製造方法。
本発明により、保護基の導入・脱離などの複雑な合成方法を軽減し、簡便かつ高収率で安価にペプチドを製造することができる酵素が新たに提供され、この酵素を用いることにより、効率的なペプチドの製造方法が提供される。
以下、本発明の実施の形態について、(1)本発明の製法で用いられる酵素を生産する微生物、(2)微生物の培養、(3)酵素の精製、(4)ジペプチドの製造方法、(5)ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするDNAの単離等、の順に詳細に説明する。
(1)本発明の製法で用いられる酵素を生産する微生物
本発明で用いられる酵素は、アミノ酸エステルハイドロラーゼ活性を有し、かつ、カルボキシ成分とアミン成分とからペプチドを生成する能力を有するタンパク質であればよく、このような酵素を生産する微生物は特に限定されるものではない。本明細書において、カルボキシ成分とは、ペプチド結合(−CONH−)におけるカルボニル部位(CO)を供給する成分のことをいい、アミン成分とは、ペプチド結合におけるアミノ部位(NH)を供給する成分のことをいう。また、本明細書において、単に「ペプチド」というときは、特に断らない限り、少なくとも1つ以上のペプチド結合を有するポリマーのことをいう。また、本明細書において「ジペプチド」とは、1つのペプチド結合を有するペプチドのことをいう。
本発明で用いられる酵素を生産する微生物としては、例えばアセトバクター属に属する細菌などが挙げられ、より具体的には、アセトバクター パスツーリアヌス(Acetobacter pasteureanus)ATCC9325株などが挙げられる。ATCC番号が付された菌株は、アメリカン・タイプ・カルチャーコレクション(P.O.Box 1549 Manassas, VA 20110, the United States of America)に寄託されており、番号を照会して分譲を受けることができる。
本発明で用いられる酵素は、上記のようにアセトバクター属に属する細菌などの菌体から単離・精製することによって得ることができる。また、単離された酵素をもとに遺伝子工学的な手法を用いて、本発明で用いる酵素および当該酵素を生産する微生物を得ることもできる。すなわち、単離・精製した酵素をもとに本発明で用いる酵素をコードするDNAを単離し、これを適当な宿主に導入し、発現させることによっても、本発明の酵素および微生物を作製することができる。また、アセトバクター パスツーリアヌスなどから得られた本発明で用いる酵素をコードするポリヌクレオチドなどをもとにプローブを作製し、他の微生物から、カルボキシ成分とアミン成分とからペプチドを生成する能力を有する酵素を得てもよい。種々の遺伝子組換え技法は、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)などに記載されている。
(2)微生物の培養
本発明で用いられる酵素を生産する微生物の培養菌体を得るには、当該微生物を適当な培地で培養増殖せしめるとよい。このための培地はその微生物が増殖し得るものであれば特に制限はなく、通常の炭素源、窒素源、リン源、硫黄源、無機イオン、更に必要に応じ有機栄養源を含む通常の培地でよい。
例えば、炭素源としては上記微生物が利用可能であればいずれも使用でき、具体的には、グルコース、フラクトース、マルトース、アミロース等の糖類、ソルビトール、エタノール、グリセロール等のアルコール類、フマル酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸類及びこれらの塩類、パラフィンなどの炭水化物類あるいはこれらの混合物などを使用することができる。
窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどの無機塩のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムなどの有機酸のアンモニウム塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの硝酸塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカーなどの有機窒素化合物あるいはこれらの混合物を使用することができる。
他に無機塩類、微量金属塩、ビタミン類等、通常の培地に用いられる栄養源を適宜混合して用いることができる。
培養条件にも格別の制限はなく、例えば、好気的条件下にてpH5〜8、温度15〜40℃の範囲でpHおよび温度を適当に制限しつつ12〜48時間程度培養を行えばよい。
(3)酵素の精製
アミノ酸エステルハイドロラーゼ活性を有し、かつ、ペプチド生成する能力を有するタンパク質を単離または精製する方法の実施形態例を説明する。まず、アミノ酸エステルハイドロラーゼ活性を有し、かつ、ペプチド生成する能力を有するタンパク質を生産する微生物を培養する。得られた培養菌体を、超音波破砕等の物理的方法、あるいは細胞壁溶解酵素等を用いた酵素法等により破壊し、遠心分離等により不溶性画分を除いて菌体抽出液を調製する。
上記のようにして得られる菌体抽出液を、通常のタンパク質の精製法、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどを組み合わせて分画することによって、上記所定の能力を備えたタンパク質を精製することができる。
陰イオン交換クロマトグラフィー用の担体としては、例えばQ-Sepharose HP(アマシャム社製)などが挙げられる。陽イオンクロマトグラフィー用担体としては、例えば、MonoS HR(アマシャム社製)などが挙げられる。抽出液を、上記のような担体を詰めたカラムに通液させ、目的とするタンパク質をカラムに吸着させ、カラムを洗浄した後に、高塩濃度の緩衝液を用いて目的とするタンパク質を溶出させる。その際、段階的に塩濃度を高めてもよく、濃度勾配をかけてもよい。
上記のようにして精製されたタンパク質は、さらにゲル濾過クロマトグラフィー等により均一に精製できる。ゲル濾過クロマトグラフィー用担体としては、Sephadex 200pg(アマシャム社製)などが挙げられる。
上記精製操作において、本発明で用いられる酵素を含む画分は、後述する方法等により各画分のペプチド生成活性を測定することにより、確認することができる。
(4)ジペプチドの製造方法
本発明のジペプチドの製造方法は、アミノ酸エステルを加水分解する活性を有する酵素の存在下で、カルボキシ成分とアミン成分とからジペプチドを生成するものである。すなわち、本発明のジペプチドの製法は、アミノ酸エステルを加水分解する酵素および/または酵素含有物を用いて、カルボキシ成分とアミン成分とからジペプチドを生成する。
本発明に使用する酵素または酵素含有物を、カルボキシ成分とアミン成分に作用せしめる方法としては、当該酵素または酵素含有物、カルボキシ成分、およびアミン成分を混合すればよい。より具体的には、酵素または酵素含有物をカルボキシ成分とアミン成分を含む溶液中に添加して反応せしめる方法を用いてもよいし、当該酵素を生産する微生物を用いる場合には、当該酵素を生産する微生物を培養し、微生物中または微生物の培養液中に当該酵素を精製、蓄積せしめ、培養液中にカルボキシ成分とアミン成分を添加する方法などを用いてもよい。生成されたジペプチドは、定法により回収し、必要に応じて精製することができる。上記の酵素または酵素含有物は2種以上の形態を併用してもよい。
「酵素含有物」とは、当該酵素を含有するものであればよく、具体的形態としては、当該酵素を生産する微生物の培養物、当該培養物から分離された微生物菌体、菌体処理物などが含まれる。微生物の培養物とは、微生物を培養して得られる物のことであり、より具体的には、微生物菌体、その微生物の培養に用いた培地および培養された微生物により生成された物質の混合物などのことをいう。また、微生物菌体は洗浄し、洗浄菌体として用いてもよい。また、菌体処理物には、菌体を破砕、溶菌、凍結乾燥したものなどが含まれ、さらに菌体などを処理して回収される粗酵素、さらに精製した精製酵素なども含まれる。精製処理された酵素としては、各種精製法によって得られる部分精製酵素等を使用してもよいし、これらを共有結合法、吸着法、包括法等によって固定化した固定化酵素を使用してもよい。また、使用する微生物によっては、培養中に一部、溶菌するものもあるので、この場合には培養液上清も酵素含有物として利用できる。
また、当該酵素を含む微生物としては野生株を用いてもよいし、本酵素を発現する遺伝子組換え株を用いてもよい。当該微生物としては、酵素微生物菌体に限らず、アセトン処理菌体、凍結乾燥菌体等の菌体処理物を使用してもよいし、これらを共有結合法、吸着法、包括法等によって固定化した固定化菌体、固定化菌体処理物を使用してもよい。
なお、培養物、培養菌体、または菌体処理物を用いる場合には、ペプチドの生成に関与せずに生成ペプチドを分解する酵素が存在することが多く、この場合には、エチレンジアミン四酢酸 (EDTA)のような金属プロテアーゼ阻害剤を添加するほうが好ましい場合がある。添加量は、0.1mMから300mMの範囲で、好ましくは1mMから100mMである。
酵素または酵素含有物の使用量は、目的とする効果を発揮する量(有効量)であればよく、この有効量は当業者であれば簡単な予備実験により容易に求められるが、例えば酵素を用いる場合には、0.01から100ユニット(U)程度、洗浄菌体を用いる場合は1〜500g/L程度である。
カルボキシ成分としては、もう一つの基質であるアミン成分と縮合してペプチドを生成できるものであれば、いかなるものを使用してよい。カルボキシ成分としては、例えば、L−アラニンメチルエステル等が挙げられる。
アミン成分としては、もう一つの基質であるカルボキシ成分と縮合してペプチドを生成できるものであれば、いかなるものも使用してよい。アミン成分としては、例えば、L−グルタミン等が挙げられる。
出発原料であるカルボキシ成分およびアミン成分の濃度は各々1mM〜10M、好ましくは0.05M〜2Mであるが、カルボキシ成分に対してアミン成分を等量以上添加したほうが好ましい場合がある。また、基質が高濃度だと反応を阻害するような場合には、反応中にこれらを阻害しない濃度にして逐次添加することができる。
反応温度は0〜60℃でペプチド生成可能であり、好ましくは5〜40℃である。また反応pHはpH6.5〜10.5でペプチド生成可能であり、好ましくはpH7.0〜10.0である。
(5)ペプチド生成活性を有するタンパク質をコードするDNAの単離
〔5―1〕DNAの単離
本発明で用いられる微生物は、アミノ酸エステルとアミノ酸とからジペプチドを生成する能力を有しており、上記の微生物群などから遺伝子工学的な手法を用いて、アミノ酸エステルとアミノ酸とからジペプチドを生成するタンパク質をコードするDNA単離し、形質転換体を作製することにより、アミノ酸エステルとアミノ酸とからジペプチドを生成するタンパク質(ペプチド合成酵素)を得ることもできる。以下に、例として、微生物からL−アミノ酸エステルとL−アミノ酸とからジペプチドを生成するタンパク質をコードするDNA単離し、形質転換体を作製する方法についての実施形態を説明する。
はじめに、上記の微生物から上記(3)の欄で説明したようにして精製酵素を得て、精製されたペプチド生成酵素のアミノ酸配列を決定する。エドマン法(Edman,P., Acta Chem. Scand. 4, 227 (1950))を用いてアミノ酸配列を決定することができる。またApplied Biosystems社製のシークエンサーを用いてアミノ酸配列を決定することができる。精製されたペプチド生成酵素について、N末端から30残基のアミノ酸配列を決定し、明らかとなったアミノ酸配列に基づいて、これをコードするDNAの塩基配列を演繹できる。DNAの塩基配列を演繹するには、ユニバーサルコドンを採用する。
演繹された塩基配列に基づいて、30塩基対程度のDNA分子を合成する。該DNA分子を合成する方法はTetrahedron Letters, 22, 1859 (1981)に開示されている。また、Applied Biosystems社製のシンセサイザーを用いて該DNA分子を合成できる。該DNA分子は、微生物菌体からペプチド生成酵素をコードするDNA全長を、染色体遺伝子ライブラリーから単離する際に、プローブとして利用できる。あるいは、ペプチド生成酵素をコードするDNAをPCR法で増幅する際に、プライマーとして利用できる。ただし、PCR法を用いて増幅されるDNAは、ペプチド生成酵素をコードするDNA全長を含んでいないので、PCR法を用いて増幅されるDNAをプローブとして用いて、ペプチド生成酵素をコードするDNA全長を微生物の染色体遺伝子ライブラリーから単離する。
PCR法の操作については、White, T.J. et al., Trends Genet. 5, 185 (1989)等に記載されている。染色体DNAを調製する方法、さらにDNA分子をプローブとして用いて、遺伝子ライブラリーから目的とするDNA分子を単離する方法については、Molecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press(1989)等に記載されている。
単離されたペプチド生成酵素をコードするDNAの塩基配列を決定する方法は、A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley & Sons, Inc. (1985)に記載されている。また、Applied Biosystems社製のDNAシークエンサーを用いて、塩基配列を決定することができる。
本発明で用い得るDNAは、上記のようにして得られるDNAのみではない。ある特定の菌体の染色体DNAから単離されたペプチド生成酵素をコードするDNAに人工的に変異を加えたDNAであっても、ペプチド生成酵素をコードする場合には、本発明で用い得るDNAである。人工的に変異を加える方法として頻繁に用いられるものとして、Method. in Enzymol.,154 (1987)に記載されている部位特異的変異導入法がある。
さらに、上記のようにして染色体DNAなどから単離されたDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を有し、ペプチド生成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明で用いることができるDNAである。
ここで「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば50%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、このましくは、60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、さらに好ましくは65℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件があげられる。ペプチド生成酵素の活性については既に上記にて説明したとおりである。ただし、相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列の場合には、50℃、pH8の条件下で元のアミノ酸配列を有するタンパク質の半分程度以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の酵素活性を保持していることが望ましい。
さらに、単離されたDNAでコードされるタンパク質と実質的に同一のタンパク質も本発明で用いることができる。したがって、単離されたDNAでコードされるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、および/または逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、L−アミノ酸エステルとL−アミノ酸からジペプチドを生成する反応を触媒するペプチド生成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明において用いることができる。ここで「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造や、ペプチド生成酵素活性を大きく損なわない範囲のものであり、具体的には、2〜50個、好ましくは2〜30個、さらに好ましくは2〜10個である。また、ペプチド生成酵素の活性については、既に説明した通りである。ただし、アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を含むアミノ酸配列の場合には、50℃、pH8の条件下で元のアミノ酸配列を有するタンパク質の半分程度以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の酵素活性を保持していることが望ましい。
上記のように、微生物からDNAを単離した場合、本発明では下記のDNAを好適に用いることができる。なお、例として、単離されたDNAの特定された塩基配列を塩基配列yとし、当該塩基配列でコードされるアミノ酸配列をアミノ酸配列Yという。
(i)塩基配列yからなるDNA。
(ii)塩基配列yと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつL−アミノ酸エステルとL−アミノ酸からジペプチドを生成する反応を触媒するペプチド生成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(iii)アミノ酸配列Yを有するタンパク質をコードするDNA。
(iv)アミノ酸配列Yにおいて、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、および/または逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、L−アミノ酸エステルとL−アミノ酸からジペプチドを生成する反応を触媒するペプチド生成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
〔5−2〕形質転換体の作製
次に、ペプチド生成酵素活性を有するタンパク質を発現する形質転換体の作製について説明する。組換えDNA技術を利用して酵素、生理活性物質等の有用タンパク質を製造する例は数多く知られており、組換えDNA技術を用いることで、天然に微量に存在する有用タンパク質を大量生産できる。
本発明の方法で用いることができる形質転換体としては、例えば下記(A)、(B)または(C)などのタンパク質を発現することができる形質転換体が好適なものとして挙げられる。
(A)アミノ酸配列Yを有するタンパク質。
(B)アミノ酸配列Yにおいて、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、および/または逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、L−アミノ酸エステルとL−アミノ酸からジペプチドを生成する反応を触媒するペプチド生成酵素活性を有するタンパク質。
(C)塩基配列yと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつL−アミノ酸エステルとL−アミノ酸からジペプチドを生成する反応を触媒するペプチド生成酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAでコードされるタンパク質。
上記(A)〜(C)のペプチド生成酵素活性を有するタンパク質を発現する形質転換体を作製するためには、上記〔5―1〕の欄に示した(i)〜(iv)のDNAを宿主細胞に導入すればよい。すなわち、(i)、(ii)、(iii)または(iv)のDNAを宿主細胞で発現可能な発現ベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入する。
上記(B)に示されるような変異は、例えば部位特異的変異法によって、本酵素遺伝子の特定の部位のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加されるように塩基配列を改変することによって得られる。また、上記のような改変されたDNAは、従来知られている突然変異処理によっても取得され得る。突然変異処理としては、本酵素をコードするDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及び本酵素をコードするDNAを保持するエシェリヒア属細菌を、紫外線照射またはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常人工突然変異に用いられている変異剤によって処理する方法などが挙げられる。
タンパク質を組換えDNA技術を用いて大量生産する場合、該タンパク質を生産する形質転換体内で該タンパク質が会合し、タンパク質の封入体(inclusion body)を形成させる形態も好ましい一実施形態として挙げられる。この発現生産方法の利点は、目的のタンパク質を菌体内に存在するプロテアーゼによる消化から保護する点および目的のタンパク質を菌体破砕に続く遠心分離操作によって簡単に精製できる点等である。
このようにして得られるタンパク質封入体は、タンパク質変性剤により可溶化され、主にその変性剤を除去することによる活性再生操作を経た後、正しく折り畳まれた生理的に活性なタンパク質に変換される。例えば、ヒトインターロイキン−2の活性再生(特開昭61−257931号公報)等多くの例がある。
タンパク質封入体から活性型タンパク質を得るためには、可溶化・活性再生等の一連の操作が必要であり、直接活性型タンパク質を生産する場合よりも操作が複雑になる。しかし、菌体の生育に影響を及ぼすようなタンパク質を菌体内で大量に生産させる場合は、不活性なタンパク質封入体として菌体内に蓄積させることにより、その影響を抑えることができる。
目的タンパク質を封入体として大量生産させる方法として、強力なプロモータの制御下、目的のタンパク質を単独で発現させる方法の他、大量発現することが知られているタンパク質との融合タンパク質として発現させる方法がある。
さらに、融合タンパク質として発現させた後に、目的のタンパク質を切り出すため、制限プロテアーゼの認識配列を適当な位置に配しておくことも有効である。
タンパク質を組換えDNA技術を用いて大量生産する場合、形質転換される宿主細胞としては、細菌細胞、放線菌細胞、酵母細胞、カビ細胞、植物細胞、動物細胞等を用いることができるが、一般に大腸菌などの腸内細菌、好ましくは大腸菌(エシェリヒア コリ、Escherichia coli)が用いられる。大腸菌などの腸内細菌を用いてタンパクを大量生産する技術について数多くの知見があるためである。以下、形質転換された大腸菌を用いてペプチド生成酵素を製造する方法の一形態を説明する。
ペプチド生成酵素をコードするDNAを発現させるプロモータとしては、通常大腸菌における異種タンパク質生産に用いられるプロモータを使用することができ、例えば、T7プロモータ、lacプロモータ、trpプロモータ、trcプロモータ、tacプロモータ、ラムダファージのPRプロモータ、PLプロモータ等の強力なプロモータが挙げられる。
ペプチド生成酵素を融合タンパク質封入体として生産させるためには、ペプチド生成酵素遺伝子の上流あるいは下流に、他のタンパク質、好ましくは親水性であるペプチドをコードする遺伝子を連結して、融合タンパク質遺伝子とする。このような他のタンパク質をコードする遺伝子としては、融合タンパク質の蓄積量を増加させ、変性・再生工程後に融合タンパク質の溶解性を高めるものであればよく、例えば、T7gene 10、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、デヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、インターフェロンγ遺伝子、インターロイキン−2遺伝子、プロキモシン遺伝子等が候補として挙げられる。
これらの遺伝子とペプチド生成酵素をコードする遺伝子とを連結する際には、コドンの読み取りフレームが一致するようにする。適当な制限酵素部位で連結するか、あるいは適当な配列の合成DNAを利用すればよい。
また、生産量を増大させるためには、融合タンパク質遺伝子の下流に転写終結配列であるターミネーターを連結することが好ましい場合がある。このターミネータとしては、T7ターミネータ、fdファージターミネータ、T4ターミネータ、テトラサイクリン耐性遺伝子のターミネータ、大腸菌trpA遺伝子のターミネータ等が挙げられる。
ペプチド生成酵素、または、ペプチド生成酵素と他のタンパク質との融合タンパク質をコードする遺伝子を大腸菌に導入するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、ColE1由来の複製開始点を有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミドあるいはその誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。なお、ここでいう改変とは、変異剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異などによる改変をも含む。より具体的には、ベクターとしては、例えば、pUC19、pUC18、pBR322、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218等を用いることができる。他にもファージDNA、トランスポゾンDNAのベクターも利用できる。
また、形質転換体を選別するために、該ベクターがアンピシリン耐性遺伝子等のマーカーを有することが好ましい。このようなプラスミドとして、強力なプロモーターを持つ発現ベクターが市販されている(pUC系(宝酒造(株)製)、pPROK系(クローンテック製)、pKK233−2(クローンテック製)ほか)。
プロモータ、ペプチド生成酵素またはペプチド生成酵素と他のタンパク質との融合タンパク質をコードする遺伝子、ターミネータの順に連結したDNA断片と、ベクターDNAとを連結して組換えDNAを得る。
得られた組換えDNAを用いて、例えば大腸菌を形質転換し、この大腸菌を培養すると、ペプチド生成酵素またはペプチド生成酵素と他のタンパク質との融合タンパク質が発現生産される。形質転換される宿主は、異種遺伝子の発現に通常用いられる株を使用することができるが、例えばエシェリヒア コリ JM109株などが好ましい。形質転換を行う方法、および形質転換体を選別する方法はMolecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)等に記載されている。
融合タンパク質として発現させた場合、血液凝固因子Xa、カリクレインなどの、ペプチド生成酵素内に存在しない配列を認識配列とする制限プロテアーゼを用いてペプチド生成酵素を切り出せるようにしてもよい。
生産培地としては、M9−カザミノ酸培地、LB培地など、大腸菌を培養するために通常用いる培地を用いてもよい。また、培養条件、生産誘導条件は、用いたベクターのマーカー、プロモータ、宿主菌等の種類に応じて適宜選択する。
ペプチド生成酵素またはペプチド生成酵素と他のタンパク質との融合タンパク質を回収するには、以下の方法などがある。ペプチド生成酵素あるいはその融合タンパク質が菌体内に可溶化されていれば、菌体を回収した後、菌体を破砕あるいは溶菌させ、粗酵素液として使用できる。さらに、必要に応じて、通常の沈澱、濾過、カラムクロマトグラフィー等の手法によりペプチド生成酵素あるいはその融合タンパク質を精製して用いることも可能である。この場合、ペプチド生成酵素あるいは融合タンパク質の抗体を利用した精製法も利用できる。
タンパク質封入体が形成される場合には、変性剤でこれを可溶化する。菌体タンパク質とともに可溶化してもよいが、以降の精製操作を考慮すると、封入体を取り出して、これを可溶化するのが好ましい。封入体を菌体から回収するには、従来公知の方法で行えばよい。例えば、菌体を破壊し、遠心分離操作等によって封入体を回収する。タンパク質封入体を可溶化させる変性剤としては、グアニジン塩酸(例えば、6M、pH5〜8)や尿素(例えば8M)などが挙げられる。
これらの変性剤を透析等により除くと、活性を有するタンパク質として再生される。透析に用いる透析溶液としては、トリス塩酸緩衝液やリン酸緩衝液などを用いればよく、濃度としては20mM〜0.5M、pHとしては5〜8が挙げられる。
再生工程時のタンパク質濃度は、500μg/ml程度以下に抑えるのが好ましい。再生したペプチド生成酵素が自己架橋を行うのを抑えるために、透析温度は5℃以下であることが好ましい。また、変性剤除去の方法として、この透析法のほか、希釈法、限外濾過法などがあり、いずれを用いても活性の再生が期待できる。
なお、遺伝子工学的な手法については、例えばMolecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)などの文献に記載された手法に準拠して実施することができる。
以下、実施例をあげて、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、生成物の測定には、薄層クロマトグラムのニンヒドリン発色での確認(定性)に加え、定量的には以下に示す高速液体クロマトグラフィーにて定量した。
カラム:InertsiL ODS-2(GLサイエンス社製)、溶離液:5.0mM 1−オクタンスルホン酸ナトリウムを含むリン酸水溶液(pH2.1):メタノール=100:15〜50、流量:1.0mL/min、検出 210nm。
1.アセトバクター パスツーリアヌス(Acetobacter pasteureanus)ATCC9325由来アミノ酸エステルハイドロラーゼのE.coliでの発現
1L中にグルコース 50g、硫酸アンモニウム 5g、リン酸一カリウム 1g、リン酸二カリウム 3g、硫酸マグネシウム 0.5g、酵母エキス 5g、ペプトン 5g(pH7.0)を含む培地50mLを500mL坂口フラスコに分注し、115℃で15分殺菌した。これに同培地で30℃、16時間培養したアセトバクター パスツーリアヌスATCC9325株を1白金耳接種し、30℃、120往復/分で16時間振盪培養を行った。
培養液50mlを遠心分離(12000rpm、4℃、15分間)し、集菌した。QIAGEN Genomic-tip System(Qiagen社)を用いて、説明書の方法に基づき、この菌体から染色体DNAを取得した。
エシェリヒア コリ(Escherichia coli)W3110染色体DNA上のtrpオペロンのプロモーター領域を配列番号1、2に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRにより目的遺伝子領域を増幅し、得られたDNA断片をpGEM_Teasyベクター(プロメガ製)にライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中からtrpプロモーターの方向がlacプロモーターと反対向きに挿入された、目的のプラスミドを有する株を選択した。次にこのプラスミドをEcoO109I/EcoRIにて処理して得られるtrpプロモーターを含むDNA断片と、pUC19(Takara製)のEcoO109I/EcoRI処理物とライゲーションした。このライゲーション溶液でエシェリヒア コリ JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から、trpプロモーター領域を有するプラスミドを有する株を選択した。次にこのプラスミドをHindIII/PvuIIにて処理して得られるDNA断片と、pKK223−3(Amersham Pharmacia製)をHindIII/HincIIにて処理し、得られたrrnBターミネーターを含むDNA断片とをライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から、trpプロモーター領域を有し、かつrrnBターミネーターを含むプラスミドを有する株を選択し、このプラスミドをpTrpTと命名した。
アセトバクター パスツーリアヌスATCC9325株株の染色体DNAを鋳型とし、上記配列番号3、4に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとして、アミノ酸エステルハイドロラーゼ遺伝子を含む目的遺伝子をPCRにより増幅した。このDNA断片をAseI/BamHIにて処理し、得られたDNA断片とpTrpTのNdeI/BamHI処理物をライゲーションした。このライゲーション溶液でエシェリヒア コリ JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中からアミノ酸エステルハイドロラーゼを発現させるタンパク質をコードする塩基配列を含むプラスミドを有する株を選択し、このプラスミドをpTrpT_Ap_aehAと命名した。
pTrpT_Ap_aehAを有するエシェリヒア コリ JM109を3mlの培地(2g/l グルコース、10g/l 酵母エキス、10g/lカザミノ酸、5g/l硫酸アンモニウム、3g/lリン酸二水素カリウム、1g/lリン酸水素二カリウム、0.5g/l硫酸マグネシウム七水和物、100mg/lアンピシリン)を張り込んだ普通試験管に一白金耳植菌し、25℃、20時間の本培養を行った。L−アラニンメチルエステルとL−グルタミンとを添加して培養したところ、培養液1mlあたり0.02UのL−アラニル−L−グルタミン生成活性を有しており、α−アミノ酸エステルハイドロラーゼにペプチド生成活性があることを確認した。なお、対照としてpTrpTのみを導入した形質転換体には、活性は検出されなかった。
本発明は、工業的ペプチド生産において極めて有用性が高い。

Claims (5)

  1. アミノ酸エステルを加水分解する活性を有する酵素の存在下で、カルボキシ成分とアミン成分とからジペプチドを生成する、ジペプチドの製造方法。
  2. 前記酵素が、アミノ酸エステルを加水分解する活性を有する酵素を生産する微生物の培養物、該培養物より分離した微生物菌体、および、該微生物の菌体処理物からなる群より選ばれる1種または2種以上により供給される、請求項1に記載のジペプチドの製造方法。
  3. 前記アミノ酸エステルを加水分解する活性を有する酵素を生産する微生物が、前記アミノ酸エステルを加水分解する加水分解する酵素を発現可能な形質転換体である、請求項2に記載のジペプチドの製造方法。
  4. 前記カルボキシ成分が、L−アラニンメチルエステルである、請求項1から3のいずれか一項に記載のジペプチドの製造方法。
  5. 前記アミン成分が、L−グルタミンである、請求項1から4のいずれか一項に記載のジペプチドの製造方法。
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