JP2005077111A - 回転機器の状態診断支援装置およびそのプログラム、ならびに同プログラムを記録した記録媒体、状態診断支援方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】状態診断手段20は、回転機器から採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータと、回転機器の軸受等から採取される衝撃データに基づき、それぞれ基準値との比較を行うことにより、回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行う。また、診断結果通知手段22は、診断結果と、その診断結果に従ってあらかじめ定義される回転機器毎の保全頻度を外部へ通知する。なお、必要に応じて状態診断に潤滑油分析も含めることにより、一層診断精度を高めることができる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、プラント設備に用いて好適な送風機等、回転機器の状態診断支援装置およびそのプログラム、ならびに同プログラムを記録した記録媒体、状態診断支援方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
汚泥処理プラント設備において、高速回転機器が占める割合は非常に高い。また、毎分1000回転以上の大型の回転機器に至っては高価なため、予備機器を持たないことが多く、一旦故障が発生すると汚泥処理の機能が低下し、放置しておけばその故障の範囲が拡大する恐れがある。
上記した高速回転機器の故障診断において、従来は、稼動中の軸受を聴診、触診によって異常を判定する方法、および振動測定器等のセンサを使用して採取した振動値を元に、点検、あるいは運転者の判断により異常の推定が行われる。
【0003】
上記した聴診、触診による方法は、点検あるいは運転者が軸受近傍から発生する音を聞き、音の種類や大きさから異常や故障を診断するものである。
また、振動測定器を用いて行う方法は、図7に示される送風機のように、回転機器(電動機72、回転体70)の各軸受73、74、75、76の垂直V、水平H、軸方向Aの3方向に測定器(振動測定座)を当て、変位、速度、加速度、およびその振動(周波数)スペクトルを採取し、その採取したデータを基準値と比較することによって異常を推定するものである(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−66626号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前者の聴診、触診による方法では、点検あるいは運転者のスキルに依存する部分が多く、点検、あるいは運転者(以下、総称して単にオペレータという)によってはその判定にバラツキがあった。また、後者の振動測定器を用いて振動(周波数)スペクトルに基づき振動解析を行う方法のみでは期待する状態診断の精度が得られず、十分なメンテナンス対応を行うことができないといった欠点を有していた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、振動測定器を用いて振動解析を行う方法に、更に、衝撃データ解析、そして必要に応じて潤滑油分析(成分・フェログラフィを含めてもよい)を適宜組み合わせて実施することにより状態診断の精度を向上させ、十分なメンテナンス対応を行うことのできる、回転機器の状態診断支援装置およびそのプログラム、ならびに同プログラムを記録した記録媒体、状態診断支援方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために本発明の回転機器の状態診断支援装置は、回転機器から採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータと、前記回転機器の軸受から採取される衝撃データに基づき、それぞれ基準値との比較を行うことにより、前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行う状態診断手段を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、状態診断手段が、回転機器から採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータに加え、回転機器の軸受から採取される衝撃データに基づき、それぞれの基準値との比較により異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行うため、従来の周波数解析にのみ依存していた回転機器の状態診断に比較して精度の高い診断が可能になる。
【0008】
また、本発明の回転機器の状態診断支援装置において、前記状態診断手段による診断結果と、その診断結果に従ってあらかじめ定義される前記回転機器毎の保全情報・処置方法を外部へ通知する診断結果通知手段を更に備えたことを特徴とする。
本発明によれば、診断結果通知手段が、状態診断手段による診断結果と、その診断結果に従ってあらかじめ定義される回転機器毎の保全情報・処置方法を外部へ通知することで、オペレータは機器の状態と保全のための処置を知ることができ、その内容に従ってメンテナンスを行うことができるため、熟練者の配置を要することなく統一した回復のための処置を迅速に行うことができる。
【0009】
また、本発明の回転機器の状態診断支援装置において、前記診断結果に基づく改善のための処置がなされた後、再度前記状態診断手段による前記回転機器の状態診断を行い、その診断結果と当該診断結果によってあらかじめ定義される前記回転機器毎の保全情報・処置方法を、前記診断結果通知手段を介して外部へ通知することを特徴とする。
本発明によれば、診断結果に応じて決まる処置後の再診断が自動的に行われ、るため、状態の改善もしくは悪化の様子がGUI(Graphical User Interface)を介してオペレータに通知され、その内容に従ってメンテナンスを行うことができる。
【0010】
また、本発明の回転機器の状態診断支援装置において、前記状態診断手段は、更に、前記回転機器の少なくとも軸受に使用されている潤滑剤の分析結果に基づき前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無について状態診断を行うことを特徴とする。
本発明によれば、状態診断手段が、振動スペクトルデータに加え、回転機器の軸受から採取される衝撃データ、ならびに潤滑油分析の結果に従い、異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行うため、従来の周波数解析にのみ依存していた回転機器の状態診断に比較して一層精度の高い診断が可能になる。
なお、潤滑油分析の結果によっては、振動解析、衝撃解析の結果によらず、回転機器を緊急停止して補修を促すこともあり得る。
【0011】
また、本発明の回転機器の状態診断支援装置において、前記状態診断手段は、更に、前記回転機器の正常稼動時の動作音と採取した動作音との差に基づき前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無について状態診断を行うことを特徴とする。
本発明によれば、状態診断手段が、振動スペクトルデータに加え、回転機器の軸受から採取される衝撃データ、軸受から採取される潤滑油分析の結果に従い、異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行うため、従来の周波数解析にのみ依存していた回転機器の状態診断に比較して更に一層精度の高い診断が可能になる。
【0012】
また、本発明の回転機器の状態診断支援装置において、前記回転機器の診断部位を構成する軸受は、前記回転機器が稼動中に採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータに基づく振動解析と、前記回転機器より採取される潤滑剤の分析結果との組み合わせにより、状態診断が行われることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の回転機器の状態診断支援装置において、前記回転機器の診断部位を構成する回転部は、前記回転機器が稼動中に採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータに基づく振動解析と、前記回転機器の正常稼動時の動作音と採取した動作音との差に基づく音響解析との組み合わせにより、状態診断が行われることを特徴とする。
【0014】
上記した課題を解決するために本発明は、回転機器の異常、もしくは異常の兆候についての状態診断を行う状態診断支援プログラムであって、前記回転機器から採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータと、前記回転機器の軸受から採取される衝撃データに基づき、それぞれ基準値との比較を行うことにより、前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行う状態診断ステップと、前記診断結果と、その診断結果に従ってあらかじめ定義される前記回転機器毎の保全情報・処置方法を外部へ通知する診断結果通知ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明において、前記状態診断ステップは、前記回転機器の軸受に使用されている潤滑剤成分の分析結果に基づき、前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無について状態診断を行うステップを含み、当該ステップをコンピータに実行させることを特徴とする。
【0016】
上記した課題を解決するために本発明は、回転機器の異常、もしくは異常の兆候についての状態診断を行う状態診断支援プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記回転機器から採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータと、前記回転機器の軸受から採取される衝撃データに基づき、それぞれ基準値との比較を行うことにより、前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行う状態診断ステップと、前記診断結果と、その診断結果に従ってあらかじめ定義される前記回転機器毎の保全頻度を外部へ通知する診断結果通知ステップとをコンピュータに実行させる状態診断支援プログラムを記録した記録媒体である。
【0017】
また、本願発明は、回転機器の異常、もしくは異常の兆候についての状態診断を行う状態診断支援装置に用いられる状態診断支援方法であって、前記状態診断支援装置は、前記回転機器から採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータと、前記回転機器の軸受から採取される衝撃データに基づき、それぞれ基準値との比較を行うことにより、前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行い、前記診断結果と、その診断結果に従ってあらかじめ定義される前記回転機器毎の保全情報・処置方法を外部へ通知することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明における回転機器の状態診断支援装置が採用されるプラントの設備診断システムの構成例を示す図である。
プラントの設備診断システムは、DB(データベース)サーバ1を核に、データ収集PC2、現場PC3、運転支援PC4、そして、本発明の状態診断支援装置が実装される診断PC5で構成され、LAN回線6経由で共通接続される。
【0019】
データ収集PC2は、既存設備システムから各種プロセスデータを収集し、時系列データとしてLAN回線6経由でDBサーバ1へ供給する。
現場には、現場PC3の他に、点検員が携帯するPDA11、振動測定器7、衝撃測定器8、スキャナ12、プリンタ5等が設備される。PDA11から日常の点検データを、また、振動測定器7、衝撃測定器8等市販の診断ツールからそれぞれのデータを取得し、DBサーバ1へLAN回線6経由で転送する。また、スキャナ12を介して潤滑油分析の結果、写真等を取りこみ、更に、DBサーバ1にある診断結果、および機器台帳、工事、故障履歴等の設備管理台帳を現場PC3に表示し、また、プリンタ5を介して出力する。
【0020】
図2は、図1に示す診断PC4の内部構成を機能展開して示したブロック図である。診断PC4は、状態診断手段20と、診断結果通知手段22と、基準値DB21で構成される。
【0021】
状態診断手段20は、図7に示す回転機器から採取される、変位(DISP)、速度(VEL)、加速度(ACC)、および各々の振動波形をFFT(高速フーリエ変換)解析することによって得られる振動スペクトルデータと、回転機器の軸受から採取される衝撃データに基づき、基準値DB21に格納されたそれぞれ基準値との比較を行うことにより、回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行う。
診断結果通知手段22は、状態診断手段20による診断結果と、その診断結果に従ってあらかじめ定義される回転機器毎の保全情報・処置方法を外部へ通知する。ここでいう保全情報・処置方法とは、回転機器毎の保全をすべき時期とその処置方法に関する情報が含まれるものであり、例えば、後述する図3の診断結果A〜D、図4の診断結果A、B、Dが一例としてあげられる。
なお、状態診断手段20には、他に、回転機器の軸受等に使用されている潤滑剤の分析結果、あるいは、回転機器の音響解析結果も入力される。
【0022】
図3、図4は、本発明における回転機器の状態診断支援装置の動作を説明するために引用したフローチャートであり、回転機器を構成する軸受(図3)、回転体(図4)のそれぞれにおける状態診断支援プログラムの処理手順を示す。本発明の状態診断フログラムは、図1に示す診断PCにインストールされ、実行される。
以下、図3、図4に示すフローチャートを参照しながら本発明実施形態の動作について詳細に説明する。
【0023】
動作説明に先立ち、回転機器の診断部位について説明する。送風機やポンプ等の回転機器の診断部位は、図7に示されるように、軸受73、74、75、76と回転体70(インペラ)やカップリング71等の回転部に大別される。
軸受の異常診断は、振動解析、潤滑剤分析、音響解析による軸受構成部品の内輪、外輪、玉、保持器等の軸受損傷の判定、軸受から採取される潤滑油中の金属磨耗粉の種別、含有量による軸受損傷の判定、衝撃データ解析による油膜厚さについての判定が可能である。また、回転部の異常診断では、振動解析、音響解析によるミスアライメント、アンバランスについての判定が可能である。
【0024】
まず、図3に示すフローチャートを参照しながら軸受の診断処理について説明する。図3において、31:「振動解析」とは、軸受や回転部から採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータに基づきそれぞれの基準値と比較することにより行われる解析処理をいう。
ここでは、まず、振動解析による簡易診断を行い、危険レベル(×)と判定されたときに再測定を行う。可能であれば給油・給脂を行う。その後更なる精密診断を実行する。ここで、簡易診断では、変位、加速度の数値を基準値と比較する。変位では、架台剛性不良、または軸受損傷の判定基準とし、加速度では軸受損傷発生の判定基準とする。精密診断では、簡易診断の結果に基づき実施し、架台剛性不良や軸受損傷部位を特定する。
【0025】
図5(a)に、精密診断のときに使用される判定表の一例が示されている。ここでは、測定モード毎に警報レベルと、測定値が示されている。すなわち、加速度、速度、変位毎に判定閾値(注意レベル、危険レベル)が定義されており、測定値がその閾値を越えたときに、その程度によって注意レベル、危険レベルと判定される。危険レベルと判定された場合は、軸受に異常が発生している状態、注意レベルと判定された場合は軸受に異常の兆候があることを示している。
なお、ここに示す閾値は基準値DB21に格納され、状態診断手段20が基準値DB21に格納された閾値と入力される測定値とを比較することによりレベル判定を行い、診断結果通知手段22を介して警報を発してオペレータに注意を喚起する。
【0026】
図5(b)に、AC(加速度)波形と、そのFFT解析の結果が時系列でグラフ表示されている。加速度波形をFFT解析することによって振動スペクトルを表現することができ、ここで軸受の構成部位(内輪fin、外輪fout、ボールfball他)毎に状態診断手段が所定値以上のピークが検出されたときに異常と診断する。
軸受の部位毎精密診断の結果得られる周波数および判定値を図5(c)に示す。判定値中、*****は、異常判定された部位を示す。
【0027】
32:「衝撃データ解析」とは、軸受から採取される衝撃データに基づき、基準値との比較を行う解析であり、上記した簡易診断による振動解析と同じ頻度、要領で実施するものとする。
ここでは、軸受の状態、油膜厚さを直接判定し、結果が診断結果A〜Dとして4レベルで表現される。診断の結果、診断結果Dは損傷ありとして状態診断PC4に診断結果通知手段22を介して赤色表示され、また、診断結果Cは潤滑不足として、更に、診断結果Bは転動面劣化の兆候ありとして黄色表示される。なお、緑色表示は問題ない。
【0028】
33:「潤滑油分析」とは、大部分は回転機器の停止時に必要に応じて実施され、軸受等に使用されている潤滑剤を採取して成分を分析し、潤滑油自体の劣化、および潤滑油中の疲労粒子の含有率、色、形で軸受の損耗を判定するものである。
図6に、潤滑油に含まれる金属元素の検出量が例示されている。ここでは、錫(Sn)や銅(Cu)の増加により閾値と比較することによって軸受の異常摩耗が、また、鉄(Fe)の増加からータやシャフトあるいは軸受の摩耗が推測される。なお×のときに疲労粒子(球状粒子、スポール粒子)の含有が多く、△のときに疲労粒子の含有が少ないと判定されたものとする。
【0029】
34:音響解析は、上記した衝撃データ解析や振動解析を通常測定しない小型機器や重要度が低い機器に実施され、正常稼動時の動作音と基準にとって採取した動作音との差で異常を検知するものである。ここでは、×を異常動作音ありの危険レベルとし、△を異常動作音ありとして注意レベルと判定する。
以上は診断ツールについて説明したが、これらツールを組み合わせ状態診断手段20によって行われる診断結果は、図中に示すブロックに従う。診断結果は、保全の頻度により診断結果A〜Dの4レベルで表現される。
診断結果Aは、回転機器を緊急停止して補修を即時要するレベルとし、診断結果Bは、給油、給脂の頻度を改善して数ヶ月以内に補修を要するレベルとし、診断結果Cは、給油、給脂の頻度を改善して次年度補修を要するレベルとし、診断結果Dは特に異常のないレベルとする。
【0030】
診断結果Aは、軸受の損傷が進行しており、連続運転が不可能なレベルになっている。また、回転体のバランスまたは芯ズレが発生しており、継続運転すると損傷範囲が拡大する恐れがある。また、診断結果Bは、軸受が軽度の損傷を起こしている。継続運転は可能であるが、要注意状態であるために日常管理を強化する必要がある。停止時には後述する潤滑油検査を行い、損耗の進行を確認できる。また、回転体のアンバランス、または芯ズレ発生の兆候があり、停止時に清掃、調整等が必要になる。
診断結果Cは、軸受が軽度の損傷または油膜切れを起こしており、潤滑油脂類の補給が必要である。診断結果Dは、これまでの給油、給脂頻度で問題なく継続使用可能なレベルとする。
【0031】
なお、診断結果が出た後にも処置はGUIを介してオペレータに通知され、オペレータは表示された内容に基づく処置(給油、給脂等)を行い、その処置後、再度診断がなされる。従って、処置の結果によっては状態がA判定にもC判定にもなり得るため、図3に示すフローチャート上ではB判定→C判定→B判定→C判定のようなサイクルが発生する。
【0032】
そのサイクル中で潤滑油分析(33)を実施したときに、×判定“疲労粒子が多く発生している”された場合は、既に軸受の損耗状態が激しいものと判断し、その診断結果をBとする。
なお、状態診断PC4の所定のボタンをクリックすれば、潤滑油分析結果が示された顕微鏡写真を見ることができる。この写真を目視することにより、最終的な診断結果を決定することも可能である。
【0033】
次に、図4に示すフローチャートを参照しながら回転部の診断処理について説明する。
回転部の異常診断は、振動解析と音響解析によりアンバランス、ミスアライメントの判定を可能とするものであることは上記したとおりである。図4に示すS41:振動解析では、軸受同様、簡易診断を実施し、注意(△)、危険(×)レベルの判定を実施する。ここでは、速度の数値を基準値と比較することにより判定がなされる。速度では、アンバランス、ミスアライメント発生の判定基準とする。そして、簡易診断の結果を元に精密診断を行うことでアンバランス、ミスアライメントを特定する。
42:音響解析は、上記した軸受の衝撃データ解析、簡易診断による振動解析と同じ頻度で実施し、ここでも軸受同様、正常稼動時の動作音を基準に、採取した動作音との差で異常を検知する。
【0034】
なお、回転部の診断においても上記した軸受同様、振動解析(41)、音響解析(42)においていずれかにより危険レベル、注意レベルの判定がなされた場合に対応する処置を行うことで状態が変化する。アンバランス、ミスアライメントは、主に、回転体やカップリングに起因する異常現象であり、軸受の損耗に特化された手法である衝撃データ解析、潤滑油分析は適応外とし、ロジックには取りこまないこととした。
なお、本発明の状態診断支援プログラムでは、上記した一連の状態変化を各ツールに従う診断結果を元にロジック化し、状態診断PC4で判定させるようにしたものである。同様に、各ツールで注意レベルの判定がなされた場合にも同様のロジックを適用して判定を行う。
【0035】
以上説明のように本発明は、(1)毎分1000回転以上の高速回転機器の軸受に装着されたセンサ類を介して採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータと、同様に高速回転機器の軸受から採取される衝撃データと、(2)また、必要に応じて採取されるグリース、オイル等の潤滑剤に含まれる成分、形、色、大きさ等のデータを可視することで得られる分析結果、(3)音響解析結果との組み合わせに基づき、高速回転機器の異常、または異常の兆候の有無について状態診断を行い、また、その状態診断結果と、それぞれの回転機器に特有の保全頻度に基づき定義される処置についてオペレータに通知することにより、高速回転機器の状態診断の精度向上をはかり、処置を行う運転員にスキルを求めない回転機器の状態診断支援装置を提供するものである。
【0036】
なお、図2に示す、状態診断手段20、診断結果通知手段22のそれぞれで実行される手順をコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより本発明の回転機器の状態診断支援装置が実現されるものとする。ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものである。
【0037】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のシステムやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0038】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0039】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明のように本発明によれば、振動測定器を用いて振動解析を行う方法に、更に、衝撃データ解析、潤滑油分析、音響解析等を適宜組み合わせることにより診断の精度を向上させることができ、かつ、十分なメンテナンス対応を行うことのできる回転機器の状態診断支援装置を提供することが可能である。
また、状態診断の結果判断、処置の仕方についてルール化することにより、スキルを持つ熟練者の配置を必要とせず、判断に統一性をもたせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における回転機器の状態診断支援装置が採用されるプラントの設備診断システムの構成例を示す図である。
【図2】図1に示す診断PCの内部構成を機能展開して示したブロック図である。
【図3】本発明実施形態の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【図4】本発明実施形態の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【図5】本発明実施形態による診断結果の判定基準を説明するために引用した表である。
【図6】本発明で採用される潤滑油分析において、採取された潤滑油に含有される金属元素の一例を表形式で示した図である。
【図7】状態診断の対象となる高速回転機器の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
1…DBサーバ、2…データ収集PC、3…現場PC、4…状態診断PC、6…既存設備システムのLAN回線、20…状態診断手段、21…基準値DB、22…診断結果通知手段
Claims (11)
- 回転機器から採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータと、前記回転機器の軸受から採取される衝撃データに基づき、それぞれ基準値との比較を行うことにより、前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行う状態診断手段、
を備えたことを特徴とする回転機器の状態診断支援装置。 - 前記状態診断手段による診断結果と、その診断結果に従ってあらかじめ定義される前記回転機器毎の保全情報・処置方法を外部へ通知する診断結果通知手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の回転機器の状態診断支援装置。
- 前記診断結果に基づく改善のための処置がなされた後、再度前記状態診断手段による前記回転機器の状態診断を行い、その診断結果と当該診断結果によってあらかじめ定義される前記回転機器毎の保全情報・処置方法を、前記診断結果通知手段を介して外部へ通知することを特徴とする請求項1または2に記載の回転機器の状態診断支援装置。
- 前記状態診断手段は、
更に、前記回転機器の軸受に使用されている潤滑剤成分の分析結果に基づき前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無について状態診断を行うことを特徴とする請求項1に記載の回転機器の状態診断支援装置。 - 前記状態診断手段は、
更に、前記回転機器の正常稼動時の動作音と採取した動作音との差に基づき前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無について状態診断を行うことを特徴とする請求項1または4に記載の回転機器の状態診断支援装置。 - 請求項1乃至5に記載の回転機器の状態診断支援装置において、
前記回転機器の診断部位を構成する軸受は、前記回転機器が稼動中に採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータに基づく振動解析と、前記回転機器の軸受から採取される衝撃データ解析と、前記回転機器より採取される潤滑剤の分析結果との組み合わせにより、状態診断が行われることを特徴とする回転機器の状態診断支援装置。 - 請求項1乃至5に記載の回転機器の状態診断支援装置において、
前記回転機器の診断部位を構成する回転部は、前記回転機器が稼動中に採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータに基づく振動解析と、前記回転機器の正常稼動時の動作音と採取した動作音との差に基づく音響解析との組み合わせにより、状態診断が行われることを特徴とする回転機器の状態診断支援装置。 - 回転機器の異常、もしくは異常の兆候についての状態診断を行う状態診断支援プログラムであって、
前記回転機器から採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータと、前記回転機器の軸受から採取される衝撃データに基づき、それぞれ基準値との比較を行うことにより、前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行う状態診断ステップと、
前記診断結果と、その診断結果に従ってあらかじめ定義される前記回転機器毎の保全情報・処置方法を外部へ通知する診断結果通知ステップとをコンピュータに実行させる状態診断支援プログラム。 - 前記状態診断ステップは、前記回転機器の少なくとも軸受に使用されている潤滑剤の分析結果に基づき、前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無について状態診断を行うステップを含み、当該ステップをコンピータに実行させる請求項8に記載の状態診断支援プログラム。
- 回転機器の異常、もしくは異常の兆候についての状態診断を行う状態診断支援プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記回転機器から採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータと、前記回転機器の軸受から採取される衝撃データに基づき、それぞれ基準値との比較を行うことにより、前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行う状態診断ステップと、
前記診断結果と、その診断結果に従ってあらかじめ定義される前記回転機器毎の保全情報・処置方法を外部へ通知する診断結果通知ステップとをコンピュータに実行させる状態診断支援プログラムを記録した記録媒体。 - 回転機器の異常、もしくは異常の兆候についての状態診断を行う状態診断支援装置に用いられる状態診断支援方法であって、
前記状態診断支援装置は、
前記回転機器から採取される変位、速度、加速度、およびその振動スペクトルデータと、前記回転機器の軸受から採取される衝撃データに基づき、それぞれ基準値との比較を行うことにより、前記回転機器の異常、もしくは異常の兆候の有無につき状態診断を行い、
前記診断結果と、その診断結果に従ってあらかじめ定義される前記回転機器毎の保全情報・処置方法を外部へ通知する
ことを特徴とする状態診断支援方法。
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