JP2005075990A - ポリオレフィン系樹脂組成物 - Google Patents

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Keiko Ai
啓子 阿井
Takashi Masuda
高士 桝田
Tatsuro Okano
達郎 岡野
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Abstract

【課題】 長期間にわたって塩素含有水に直接接触した場合であっても優れた耐久性を示す成形体を形成可能なポリオレフィン系樹脂組成物を実現する。
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、平均粒子径が100nm以下であり、かつ、吸着ガスとして窒素ガスを使用するBET吸着法により測定された比表面積が10〜130m/gのカーボンブラックとを含んでいる。ここで用いられるポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン系樹脂である。また、この組成物において、カーボンブラックの含有量は、通常、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂組成物、特に、ポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
一般家庭用の水道管、配水管、排水管およびこれらの配管継手等の送水管には、一般にポリオレフィン系樹脂等の樹脂製のものが用いられている。これに対し、土中に埋設される配水管並びにタンカーや客船等の船舶および発電所や工場プラント等の工業用施設等に配置される送水管およびその配管継手は、耐久性が求められるため、鉄製のものを用いるのが一般的である。しかしながら、水道水等の塩素含有水は、そこに含まれている塩素のため、鉄製の送水管等を錆びさせやすい。このため、鉄製の送水管等の内周面には、通常、防錆のため、ポリオレフィン系樹脂等による塗膜が付与されている。
ところで、上述の送水管を形成するためのポリオレフィン系樹脂は、耐候性を向上させるため、安定剤としてカーボンブラックを含有したものが用いられていた。ところが、カーボンブラックは、ポリオレフィン系樹脂の塩素水劣化に対して触媒作用を有することが判明し、これが原因で送水管の内面に水泡が発生したり、送水管の内面が薄皮状に剥離したりする現象が生じる(非特許文献1および2参照)。
このため、最近のポリオレフィン系樹脂製送水管は、カーボンブラックを含まないポリオレフィン系樹脂からなる内側層と、カーボンブラックを含む、耐候性に優れたポリオレフィン系樹脂からなる外側層とを備えた二層構造のものが一般化している。また、鉄製送水管の内周面の塗膜を形成するためのポリオレフィン系樹脂は、カーボンブラックを含まないものが用いられるに至っている。
しかしながら、カーボンブラックを含まないポリオレフィン系樹脂は、やはり、水中に含まれる塩素の影響を受けて劣化しやすく、水を汚染する可能性がある。具体的には、ポリオレフィン系樹脂は、水中の塩素の影響により、表面に点状の突起または小径膨れ(以下、単に「膨れ」という)が発生する場合があり、この膨れは、一部が剥離し、その剥離片が水中に混入するおそれがある。このため、送水管に用いられるポリオレフィン系樹脂は、塩素含有水に対する耐久性の向上が求められている。
JIS K 6762(1993) 合成樹脂、VOL38、No.6(1992)、14〜23頁および30頁
本発明の目的は、長期間にわたって塩素含有水に直接接触した場合であっても優れた耐久性を示す成形体を形成可能なポリオレフィン系樹脂組成物を実現することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂の塩素含有水劣化に対して触媒作用を示すとされていたカーボンブラックが、意外なことに、特定の平均粒子径および特定の比表面積を有する場合、上記触媒作用を示さず、逆に、塩素含有水に対するポリオレフィン系樹脂の耐久性を高めることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、平均粒子径が100nm以下であり、かつ、吸着ガスとして窒素ガスを使用するBET吸着法により測定された比表面積が10〜130m/gのカーボンブラックとを含んでいる。
ここで用いられるポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン系樹脂である。また、この組成物において、カーボンブラックの含有量は、通常、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部である。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、特定の平均粒子径および特定の比表面積を有するカーボンブラックとを含んでいるため、長期間にわたって塩素含有水に直接接触した場合であっても優れた耐久性を示す成形体を形成可能である。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、特定の物性を有するカーボンブラックとを含んでいる。
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂は、各種のものであって特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂およびエチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィン等とを共重合させて得られる線状低密度ポリエチレン樹脂等のポリエチレン系樹脂、未変性ポリプロピレン樹脂および変性ポリプロピレン樹脂等のポリプロピレン系樹脂並びにエチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの各種ポリオレフィン系樹脂は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上のものが併用されてもよい。
なお、ポリオレフィン系樹脂として特に好ましいものは、成形、粉砕等の加工性に優れ、しかも安価であるという点において、ポリエチレン系樹脂、とりわけ低密度ポリエチレン樹脂および高密度ポリエチレン樹脂である。
一方、本発明において用いられるカーボンブラックは、平均粒子径および比表面積が特定の範囲のものである。具体的には、平均粒子径が100nm以下、好ましくは15〜90nmであり、かつ、比表面積が10〜130m/g、好ましくは15〜120m/gのものである。カーボンブラックの平均粒子径が100nmより大きい場合、または、カーボンブラックの比表面積が130m/gを超える場合は、塩素含有水に対して優れた耐久性を有するポリオレフィン系樹脂組成物を得るのが困難になる。また、カーボンブラックの比表面積が10m/g未満の場合は、塩素含有水に対して優れた耐久性を有するポリオレフィン系樹脂組成物を得ることができるものの、当該組成物から得られる成形体の表面平滑性が悪化する。
なお、本発明において、カーボンブラックの平均粒子径とは、電子顕微鏡により1,000個のカーボンブラック粒子の粒子径を測定した場合の平均値をいう。また、本発明において、カーボンブラックの比表面積とは、吸着ガスとして窒素ガスを使用するBET吸着法によって測定した値をいう。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物において、カーボンブラックの配合量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部に設定するのが好ましく、0.03〜8重量部に設定するのがより好ましい。この配合量が0.01重量部未満の場合、塩素含有水に対して優れた耐久性を有するポリオレフィン系樹脂組成物が得られにくくなる可能性がある。また、この配合量が10重量部を超える場合、カーボンブラックがポリオレフィン系樹脂中へ分散しにくくなり、ポリオレフィン系樹脂組成物から得られる成形体の表面平滑性が悪化するおそれがある。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、例えば、次のようにして製造することができる。先ず、上記ポリオレフィン系樹脂と、上記カーボンブラックとを混練押出機、加熱ロール、バンバリーミキサーまたはニーダー等の各種混練機を用いて溶融混練した後、所望の形状、例えばペレット状に成形する。そして、得られたペレットを機械粉砕法、液体窒素を用いる冷凍粉砕法等の手段により粉砕し、必要に応じて篩等を用いて分級すると、粉体状の目的とする組成物が得られる。このようにして得られる本発明の組成物は、上述の必須成分の他に、各種の着色剤、核剤、帯電防止剤、耐候安定剤等の添加剤が適宜配合されていてもよい。これらの添加剤は、通常、必須成分の溶融混練時に配合されるのが好ましいが、上記ペレットを粉砕した後に配合されてもよい。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、成形材料として用いられた場合、或いは、塗料用の樹脂成分として用いられた場合、長期間にわたって塩素含有水に直接接触した場合であっても優れた耐久性を示す、各種形状の成形物や塗膜などの成形体を形成することができる。より具体的には、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を公知の成形方法、例えば、押出成形法、射出成形法等により管状等に成形すると、長期間にわたって塩素含有水に直接接触しても、膨れの発生し難い優れた耐久性を有する水道管、配水管、排水管およびこれらの配管継手等の送水管を形成することができる。また、粉体状の本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、公知の粉体塗装方法、例えば、流動浸漬法、静電塗装法、散布法、コーティング法等により、金属製(特に、鉄製)の水道管、配水管、排水管およびこれらの配管継手等の送水管、特に当該送水管の内周面に対して塗装すると、長期間にわたって塩素含有水に直接接触しても、膨れの発生し難い優れた耐久性を有する塗膜を形成することができる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1〜6および比較例1〜2
ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して表1に示す割合でカーボンブラックを配合し、ヘンシェルミキサーで予備混合した。そして、押出機を使用し、得られた混合物を150℃で溶融混練してペレットを得た。
なお、表1中に示したポリオレフィン系樹脂およびカーボンブラックは次の通りである。
ポリオレフィン系樹脂
LLDPE:低密度ポリエチレン樹脂(ダウケミカル株式会社の商品名“L2035”)
HDPE:高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリケム株式会社の商品名“H5560”)
カーボンブラック
A:旭カーボン株式会社の商品名“旭#50H”(平均粒子径85nm、比表面積20m/g)
B:旭カーボン株式会社の商品名“旭#70L”(平均粒子径25nm、比表面積85m/g)
C:旭カーボン株式会社の商品名“旭#80”(平均粒子径20nm、比表面積115m/g)
D:旭カーボン株式会社の商品名“旭#15”(平均粒子径122nm、比表面積12m/g)
E:東海カーボン株式会社の商品名“シースト9SAF”(平均粒子径19nm、比表面積142m/g)
評価
圧縮成形機を用い、各実施例および比較例で得られたポリオレフィン系樹脂組成物をそれぞれ150℃で厚さ2mmのシートに成形した。そして、得られたシートを一辺が5cmの正方形に打ち抜いて試験片を得、この試験片について、塩素含有水の影響による膨れ発生までの時間を評価した。具体的には、耐塩素含有水性試験(JIS K6762)に準じ、得られた試験片を容器内に貯留された塩素水(塩素濃度2,000±100ppm、温度60℃、pH6.5±0.5)に浸漬し、24時間毎に表面の膨れの発生を目視で観察した。なお、容器内の塩素水は、24時間毎に、上記の塩素濃度、温度およびpHに設定された新たな塩素水に交換した。結果を表2に示す。
表2によると、実施例1〜6のポリオレフィン系樹脂組成物からなる試験片は、塩素含有水に直接接触しても耐久性に優れていることがわかる。したがって、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、長期間にわたって塩素含有水に直接接触した場合であっても優れた耐久性を有する成形体を形成可能なことがわかる。

Claims (3)

  1. ポリオレフィン系樹脂と、
    平均粒子径が100nm以下であり、かつ、吸着ガスとして窒素ガスを使用するBET吸着法により測定された比表面積が10〜130m/gのカーボンブラックと、
    を含むポリオレフィン系樹脂組成物。
  2. 前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  3. 前記カーボンブラックの含有量が、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部である、請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011203198A (ja) * 2010-03-26 2011-10-13 Kitz Corp 高分子材料の耐塩素性評価方法とその評価装置
JP2014198783A (ja) * 2013-03-29 2014-10-23 大日精化工業株式会社 配水管用着色樹脂組成物及び配水管
JP2016079368A (ja) * 2014-10-22 2016-05-16 株式会社Kri 低熱膨張性樹脂組成物およびその製造方法

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