JP2005074855A - 複合透湿防水膜及びこれを用いた複合透湿防水シート - Google Patents
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Abstract
【課題】高水蒸気透過性を維持しつつ、結露し難く、水に対する寸法安定性が優れ、脱臭性、抗菌、防かび性、帯電防止性、ドライタッチ性、耐摩耗性等の機能を付与し得る複合透湿防水膜及びこれを用いたシートを提供する。
【解決手段】連続気孔を有し、JIS K6768に準拠して求められる濡れ指数が45dyne/cm以下である疎水性膜の少なくとも片面の少なくとも一部に、主として極性溶媒可溶性高分子材料からなり連続気孔を有する多孔質膜を積層して複合透湿防水膜とする。
【解決手段】連続気孔を有し、JIS K6768に準拠して求められる濡れ指数が45dyne/cm以下である疎水性膜の少なくとも片面の少なくとも一部に、主として極性溶媒可溶性高分子材料からなり連続気孔を有する多孔質膜を積層して複合透湿防水膜とする。
Description
本発明は、透湿機能を有する防水膜及びこれを用いた透湿防水シートに関し、詳しくは、織物、不織布、編み地等と積層され、例えばスキーや登山等のスポーツ用衣料やレインコート等の雨天用衣料の素材として好適に使用される透湿防水膜であり、より詳しくは優れた透湿性と防水性を有するだけでなく、結露防止、吸着・脱臭性、断熱性、耐摩耗性、ドライタッチ性、意匠性等の様々な機能を付与し得る新規な複合透湿防水膜及びこれを用いた複合透湿防水シートに関するものである。
従来の透湿防水シートに用いられてきた膜は、多孔質膜タイプと無孔質膜タイプに大別される。多孔質膜タイプには、ポリウレタン系、フッ素系、ポリオレフィン系等があり、ポリウレタン系の例では、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶剤に溶解されたポリウレタン系溶液が織物等の多孔性シートにコーティングされ、湿式凝固法によりコーティング層内に連続した微細気孔が形成されたものが挙げられる。透湿防水機能はこの気孔を介して付与される。一方、無孔質膜タイプは、分子内に親水性成分が導入されたポリウレタンやポリエステル等の高分子溶液が前述と同様に織物等の多孔質基材に直接コーティングされるか、或いは、離型シート上で製膜された膜のラミネートにより製造される。無孔質膜の透湿防水機能は、水蒸気の膜内への溶解、拡散、そして気化により付与される。これが多孔質膜と大きく異なる点である。
スキーウエア等のスポーツ用衣料や雨天用衣料には、時代と共により高度の快適性が要求されるようになり、従来の透湿性と防水性だけでなく、衣服内面への汗による結露の防止や、断熱性、脱臭性、抗菌・防かび性、耐摩耗性、帯電防止性、ドライタッチ等の種々の機能が求められるようになってきている。
従来の多孔質膜タイプの透湿防水シート(例えば特公昭60−47955号公報参照)は、孔径が数〜数十μmオーダーの連続気孔を有するので、その気孔サイズは水蒸気の分子サイズに比べて十分大きく水蒸気透過性は優れている。しかし、高度な防水性(耐水圧)を確保するため、多くの場合に膜は疎水化されているので水を吸収することはできない。従って、多孔質膜の透湿能力を超える量の水蒸気が発生した場合には、衣服内に発生した過剰の水蒸気が衣服内側膜表面で凝縮し、或いは汗が衣服内側表面に付着し、結露或いはベタツキが生じるという問題があった。
一方、従来の無孔質膜タイプの透湿防水シート(例えば国際公開第99/20465号パンフレット参照)は、膜内に孔がないので水蒸気透過性は多孔質膜より劣るものの、表面及び膜内に開口した孔を持たないために高度の防水性が得られる。また、上記のように透湿能力を越える量の水蒸気が発生した場合でも膜内に水蒸気を液体水として吸収することができるので、膜内側表面での結露は疎水性の多孔質膜に比べて生じ難い。しかし、膜が非常に薄いので吸収量には限界があり、例えば急激な多量の発汗による吸収容量を超える水分を膜内に充分に吸収することはできない。また、洗濯・乾燥の際、親水性故に膜内での水の吸放出による膨潤・収縮の繰り返しによりヒステリシスを生じ、元の寸法に戻らなくなり、織物等と張り合わせたものでは織物表面にシワが生じる。即ち、水による寸法変化、変形或いは劣化を生じ易く、耐水性が劣るという問題がある。更に、雨等の水は数百mmH2Oの低水圧域で織物内部に容易に侵入し、無孔質膜と接触し、容易に溶解、吸収される。特に、0℃〜10℃近くの冷水の場合、衣服内側膜面の表面温度の低下により露点が下がり、結露が生じ易く、漏水の如き結露水が発生するという問題を有していた。
これに対し、上記の疎水性多孔質膜と無孔質膜の欠点を補完し合うため、両者の複合膜(例えば特開平7−9631号公報参照)が用いられる場合がある。そのような複合膜は無孔質膜が積層されているので高度な耐水圧を得ることができ、また、多孔質膜をベースにしているので低水圧での外部からの水の膜内への侵入が防止され、水による膨潤、吸収による寸法変化を防止することができる。しかし、多孔質膜の長所である連続した開気孔による高い水蒸気透過性が無孔質膜により阻害され、透湿性が低下するという問題を有する。更に、吸着・脱臭機能や断熱性等の表面積や空隙率に起因する機能は、無孔質膜であるため発現できないという問題も有する。
特公昭60−47955号公報
国際公開第99/20465号パンフレット
特開平7−9631号公報
本発明は、上述従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、多孔質膜の最大の特長である高水蒸気透過性を維持しつつ、結露が発生し難く、水に対する寸法安定性が優れ、さらに脱臭性、抗菌、防かび性、帯電防止性、ドライタッチ性、耐摩耗性等の様々な機能を付与し得る複合透湿防水膜、及びこれを用いた複合透湿防水シートを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、従来技術の課題を膜内の気孔の大きさや分布等気孔構造と濡れ性の観点から考察した結果、連続気孔を有する疎水性膜と、必要に応じて諸機能が付加された多孔質膜とを、積層、ハイブリッド化することにより、前述の優れた水蒸気透過性を維持しつつ結露を防止できると共に、優れた寸法安定性が得られ、脱臭性、抗菌、防かび性、帯電防止性、ドライタッチ性、耐摩耗性等の機能を付与し得ることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち本発明の複合透湿防水膜は、上記の課題を解決するために、連続気孔を有し、JIS K6768に準拠して求められる濡れ指数が45dyne/cm以下である疎水性膜(以下、単に疎水性膜という)の少なくとも片面の少なくとも一部に、主として極性溶媒可溶性高分子材料からなり、連続気孔を有する多孔質膜(以下、単に多孔質膜という)が積層されたものとする(請求項1)。
上記において、疎水性膜は、極性溶媒可溶性高分子材料100重量部に対して1次粒子径が0.1μm以下の疎水性微粒子が固形分比で10〜100重量部の割合で混合されてなり、かつ平均孔径が10μm以下の連続気孔が膜内にほぼ均一に分布したものであることが好ましい(請求項2)。
また、多孔質膜は、極性溶媒可溶性高分子材料100重量部に対して機能性材料が固形分比で1〜100重量部の割合で混合されてなり、かつJIS L1907に準拠して求められる吸水率が30%以上であることが好ましい(請求項3)。
その場合、機能性材料としては、親水性材料、多孔性材料、潤滑性材料及び導電性材料からなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる(請求項4)。
本発明の複合透湿防水シートは、上記複合透湿防水膜の疎水性膜面が、不織布、織物、及び編み地からなる群から選択された多孔質基材の少なくとも一部に付設又は埋設されたものとする(請求項5)。
本発明の複合透湿防水膜によれば、多孔質膜の特長である水蒸気透過性を維持しつつ、結露を防止できると共に寸法安定性に優れた透湿防水シートが得られる。
また、請求項3,4に記載のように多孔質膜に機能性材料を配合することにより、脱臭性、抗菌、防かび性、帯電防止性、ドライタッチ性、耐摩耗性等の諸機能を容易に付与し得る。
本発明の複合透湿防水膜は、上記のように、濡れ指数が45dyne/cm以下の連続気孔を有する疎水性膜の少なくとも片面に、連続気孔を有する極性溶媒可溶性高分子材料を主成分とした多孔質膜が積層されたものである。なお、本明細書において、濡れ指数とは、JIS K6768の濡れ性試験法に基づき求められる、濡れ指数の異なる試薬を綿棒で試験体(膜の外部又は内部)表面に塗布し、塗布液がその表面で点状にはじかず、面状に濡れる試薬の濡れ指数の最小値である。
このような疎水性膜の材料としては、極性溶媒可溶性ポリマー、オレフィン系、フッ素系等の高分子材料からなる多孔質膜が例示されるが、ポリマー種や他材料との混合等の自由度、柔軟性、経済性等の点で、湿式凝固法により製造される極性溶媒可溶性高分子材料からなる疎水性膜が好ましい。
極性溶媒可溶性高分子材料とは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ケトン類等の極性を有する溶媒に溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリウレタン系、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系、ポリエーテルスルホン系、フェノール系樹脂、ポリスチレン系、ポリアミド系、ポリエステル系、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、それらのフッ素、シリコーン誘導体等である。中でも、ポリウレタン系、ポリスルホン系、ポリアクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系が好ましいが、ウレタン系ポリマーが特に好ましい。
ウレタン系ポリマーは、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応により生じるウレタン結合を有するポリマーを主成分とするものであれば特に限定されるものではない。イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等、ポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が用いられる。また、アクリル系、ビニル系、スチレン系、アミド系、エステル系、ジエン系等の他のポリマーとの共重合体、それらのフッ素、シリコーン誘導体等も用いることができる。
上記高分子材料には、助剤として、フッ素系、シリコーン系等の撥水及び/又は撥油剤、イソシアネート系、アミン系等の架橋剤、界面活性剤等を添加することもできる。
上記疎水性膜の濡れ指数が45dyne/cmを超えると、低水圧で連続気孔内部に水が侵入し易くなり、高耐水圧を得難くなり、防水性が低下し易い。濡れ指数が45dyne/cm以下、好ましくは40dyne/cm以下であると、非吸水性となり、高耐水圧を得ることが容易になる。
上記高分子材料には必要に応じて疎水性微粒子を添加することにより、防水性(耐水圧)を高めることができ、高分子材料の疎水性を更に強化することができる。疎水性微粒子とは、湿式法や乾式法で製造されたシリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア等の金属酸化物や天然のケイ酸塩類等の無機微粉末が、シラン化合物、シランカップリング剤、及びそれらのフッ素誘導体、シリコーンオイル等でその粒子表面が疎水化されたものである。このような疎水性微粒子を用いることにより、疎水性は向上し、濡れ指数を40dyne/cm以下に向上させることができる。
上記疎水性微粒子の粒度はタイラーメッシュで300メッシュパスが好ましく、1次粒子径がnmオーダーで2次粒子がμmオーダーであるのがより好ましく、このような微粒子としては、乾式法や湿式法で製造されたシリカ、アルミナ等が例示される。
このような疎水性微粒子は、極性溶媒可溶性高分子材料100重量部に対して固形分比で10〜100重量部混合することにより、前述のように疎水性が向上するだけでなく、膜内の平均気孔径を10μm以下に調整することができる。また、微多孔質膜内の気孔構造を平均孔径が数μm以下で均一化されたミクロ気孔とし、かつ膜内に均一に分布したものとすることができる。疎水性微粒子が10重量部未満になると疎水性の向上効果が小さく、マクロ気孔が増加し、耐水圧が低下し易い。100重量部を超えると機械的強度が低下し、柔軟性が劣る。得られる疎水性膜は、疎水性が向上すると共に、膜内の気孔をミクロ化、均質化させることにより、水の侵入がより困難になり、耐水圧がより一層向上する。なお、本明細書における気孔の平均孔径は、透湿防水膜(微多孔質層)の縦断面のSEM画像(倍率2000倍)を画像解析し、2値化処理し、円相当径として算出した数平均値で表現されたものである。
次に、上記疎水性膜と積層される、極性溶媒可溶性高分子材料を主成分としてなり連続気孔を有する多孔質膜について述べる。この多孔質膜を構成する極性溶媒可溶性高分子材料としては、上記疎水性膜について述べたのと同じものを用いることができる。多孔質膜は、疎水性膜と同様、湿式凝固法により製造することができ、あるいは、油中水型樹脂による乾式凝固法、エマルジョン型樹脂による機械発砲法等により製造することもできる。
この連続気孔を有する多孔質膜には、必要に応じて機能性材料が混合される。機能性材料とは、親水性、吸収性、吸着性、抗菌、防かび性、分解性、導電性、難燃性、電波の遮蔽・吸収性、耐摩耗性、潤滑性等を有する材料である。このような機能性材料としては、下記の材料が例示される。
親水性を付与する材料としては、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシル基等の親水基を有するポリウレタン系、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリル酸系等種々の高分子材料、乾式法や湿式法で製造されるシリカ、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、バーミキュライト等の粘土鉱物が例示される。
吸収性、吸着性を付与する材料としては、活性炭、ゼオライト、結晶性アルミノリン酸塩型モレキュラーシーブ、シリカゲル、珪藻土、パリゴスカイト、セピオライト等の粒子内に微孔を有する多孔質無機粒子やジルコニウム系、チタン系等の化学吸着型無機粉末が例示される。
抗菌、防かび剤としては、銀ゼオライト、リン酸ジルコニウム等の金属塩、キチン、キトサン等の糖類、ベンズイミダゾール系、トリアゾール系の有機化合物等が例示される。
難燃性を付与する材料としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和物、リン酸系、硼酸系等の無機塩類が例示される。
導電性を付与する材料としては、炭素、黒鉛、アルミニウム等の金属が例示される。
耐摩耗、潤滑性材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、黒鉛、シリコーン樹脂、2硫化モリブデン等の粉末が例示される。
上記のような機能性材料は、極性溶媒可溶性高分子材料100重量部に対して固形分比で1〜100重量部の割合で配合されることが好ましい。1重量部未満であると配合割合が小さすぎて機能性材料の効果が発現しない。100重量部を超えると膜の機械的強度が低下する。
また、多孔質膜には、上述した機能を損なわない範囲内で他の添加物を使用することができる。その例としては、短繊維状の鉱滓繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、活性炭素繊維等の無機繊維、シリコーン系、フルオロカーボン系、長鎖脂肪酸塩系、長鎖アミン塩系等の撥水及び/又は撥油剤、イソシアネート系、アミン系等の架橋剤、界面活性剤、金属塩類、顔料等が挙げられる。
また、多孔質膜の吸水率はJIS L1907に準拠して求められる数値で30%以上であることが好ましい。30%未満になると水蒸気透過性と結露水の吸収容量が不十分となり、表面結露が生じ易くなる。また、膜内部の表面積が小さくなり、機能性材料の効果が不十分となる。更に、熱伝導率が高くなり、断熱性が悪くなる。なお、吸水率が大きくなるほど上記容量が大きくなり、機能性材料の効果も向上するが、膜強度を考慮する必要がある場合は100%以下が好ましい。
多孔質膜に親水性材料を配合した場合、特に、多孔質膜表面及び内部の濡れ性が向上し、濡れ指数で50dyne/cm以上と高くすることができる。その結果、膜内の空隙への水の侵入が促進され、表面で生じる汗、結露水等の液体の膜内空隙への吸収が促進され、透湿性が向上すると共にベトツキ感の低減に効果を発揮する。
多孔質膜は疎水性膜の少なくとも片面に積層され、面の全体を覆うように連続状に積層してもよいが、点状、線状、格子状等の不連続状に積層することもできる。また、エンボス加工することもできる。不連続状にすることにより種々の模様や柄を付与し、表面にデザイン、意匠性を施すことができる。また、表面が凹凸状となるため、肌触り感やドライタッチ性を向上させることもできる。
このような連続気孔を有する多孔質膜が前述の疎水性膜に積層されることにより、次の効果が付与される。まず、多孔質構造のため、疎水性膜の水蒸気透過性を阻害することなく高透湿性を保持できる。第2に、高吸水率であると膜内に多くの空隙を有するので、汗や結露水等の液体吸収容量が大となり、表面結露の防止に効果を有する。第3に、高空隙率であると熱伝導率が小さく断熱性が向上するので、寒冷地での体温の外部への拡散を防止することができる。第4に表面積が大きいため機能性材料の効果が発揮され易く、特に、脱臭、抗菌、防かび、ドライタッチ等の諸機能を発揮させることができる。第5に、親水化無孔膜のような水膨潤がほとんどなく、更に疎水性膜で補強されているので、洗濯・乾燥等の乾湿繰り返しに対する寸法安定性に優れたものとなる。
以上のような濡れ指数が45dyne/cm以下の連続気孔を有する疎水性膜の少なくとも片面に連続気孔を有する多孔質膜が積層された複合透湿防水膜は、その疎水性膜面を不織布、織物、編み地等の多孔質基材の少なくとも一部に付設又は埋設させることにより積層して、複合透湿防水シートとすることができる。
上記複合透湿防水膜層を付設又は埋設する多孔質基材は、不織布や織布等の多孔性を有するシート状物であれば特に限定されるものではなく、短繊維を水中で分散し、ウェブを形成する湿式法や、カード式、エアーレイ式、メルトブローン式等種々の乾式法で造られた不織布や織布等が例示できる。多孔質基材の厚さ、目付、繊維の種類、形状等は、特に限定されるものではない。
本発明の複合透湿防水膜は、上記疎水性膜と多孔質膜、そして両膜と多孔質基材との積層の各工程を経て製造される。疎水性膜は、フッ素系膜やポリオレフィン膜の場合はシート成形法と延伸法により、そして、ポリウレタン系等の極性溶媒可溶性ポリマーの膜は湿式凝固法により製造することができる。特に、後者の極性溶媒可溶性高分子材料からなる疎水性膜の場合は、極性溶媒に溶解された高分子材料と必要に応じて疎水性微粒子等の他の添加物を混合し、得られた混合スラリーを、ポリエステル、ポリオレフィン等のフィルム、撥水処理や樹脂コーティング加工された織物等の多孔性基材上にコーティングし、湿式凝固法により表面に連続微多孔質膜を形成させ、水洗、乾燥後、膜の剥離を行うことにより製造される。得られた膜は必要に応じて不織布や織布にラミネートを行うことにより複合化される(ラミネート法)。また、疎水性膜は、基材シートとして不織布や織布を用いる場合、上記と同様に撥水加工や樹脂コーティング加工等が施された基材シートに上記スラリーを直接コーティング及び/又は含浸し、湿式凝固法により基材シートの表面や内部に連続微多孔質膜を形成させ、水洗、乾燥することによっても製造される(ダイレクト法)。
多孔質膜は疎水性膜と同様の湿式凝固法の他、油中水型樹脂による乾式凝固法、エマルジョン型樹脂による機械発泡法等により製造され、基材シートの片面に形成された疎水性膜上に上記ラミネート法やダイレクト法により全面に積層してもよく、或いはグラビア法等により、点状、線状、格子状等の不連続状に一体化してもよい。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
[実施例1]
N,N−ジメチルホルムアミドに溶解されたポリウレタン(東レコーテックス(株)製U−5378、固形分25%)と粒子表面が疎水化されたシリカ(日本シリカ工業(株)製ニップシールSS−50)とを、固形分比で前者100重量部に対し後者を50重量部の割合で混合し、次にイソシアネート架橋剤(大日本インキ化学工業(株)製、バーノックD−500)5部とフッ素系撥水撥油剤(大日本インキ化学工業(株)製、デックガードNH−10)1部を添加してスラリーを調製した。このスラリーを撥水処理されたナイロン織物上にコーティングした後、湿式凝固法に基づき多孔質層を形成し、水洗、乾燥し、厚さ30μmの疎水性膜が積層された透湿防水シートを得た。疎水性膜内の平均気孔径は3μmであり、濡れ指数は40dyne/cmであった。
N,N−ジメチルホルムアミドに溶解されたポリウレタン(東レコーテックス(株)製U−5378、固形分25%)と粒子表面が疎水化されたシリカ(日本シリカ工業(株)製ニップシールSS−50)とを、固形分比で前者100重量部に対し後者を50重量部の割合で混合し、次にイソシアネート架橋剤(大日本インキ化学工業(株)製、バーノックD−500)5部とフッ素系撥水撥油剤(大日本インキ化学工業(株)製、デックガードNH−10)1部を添加してスラリーを調製した。このスラリーを撥水処理されたナイロン織物上にコーティングした後、湿式凝固法に基づき多孔質層を形成し、水洗、乾燥し、厚さ30μmの疎水性膜が積層された透湿防水シートを得た。疎水性膜内の平均気孔径は3μmであり、濡れ指数は40dyne/cmであった。
次に、N,N−ジメチルホルムアミドに溶解された親水基が導入されたポリウレタン(東レコーテックス(株)製U−6260、固形分30%)溶液を厚さ100μmのポリエステルフィルム上にコーティングした後、湿式凝固法に基づき微多孔質膜を形成し、水洗、乾燥後、ポリエステルフィルムからコーティング層を剥離し、厚さ30μmの多孔質膜を得た。この多孔質膜を上記疎水性膜が積層された透湿防水シートの疎水性膜表面にウレタン系接着剤を用いてドット状に接着させて、一体化し、複合透湿防水シートを得た。
[実施例2]
メチルエチルケトンに溶解されたポリウレタン(大日本インキ工業(株)製PX−300、固形分30%)100重量部に、キシレンとメチルエチルケトンが2:1の割合で混合された混合溶媒60重量部及びシリカ(日本シリカ工業(株)製K−500)5重量部を添加、混合した後、水70重量部とメチルエチルケトン7重量部の混合溶媒を徐々に添加し、油中水型スラリーを調整した。得られたスラリーを実施例1で得たのと同じ疎水性膜が積層された透湿防水シートの疎水性膜表面にダイレクト法によりコーティングして乾燥し、厚さ30μmの多孔質膜が積層された複合透湿防水シートを得た。
メチルエチルケトンに溶解されたポリウレタン(大日本インキ工業(株)製PX−300、固形分30%)100重量部に、キシレンとメチルエチルケトンが2:1の割合で混合された混合溶媒60重量部及びシリカ(日本シリカ工業(株)製K−500)5重量部を添加、混合した後、水70重量部とメチルエチルケトン7重量部の混合溶媒を徐々に添加し、油中水型スラリーを調整した。得られたスラリーを実施例1で得たのと同じ疎水性膜が積層された透湿防水シートの疎水性膜表面にダイレクト法によりコーティングして乾燥し、厚さ30μmの多孔質膜が積層された複合透湿防水シートを得た。
[実施例3]
メチルエチルケトンに溶解されたポリウレタン(大日本インキ工業(株)製PX−300、固形分30%)100重量部に、キシレンとメチルエチルケトンが2:1の割合で混合された混合溶媒60重量部及び活性炭粉末(武田薬品工業(株)製白鷺A−3)5重量部を添加、混合した後、水70重量部とメチルエチルケトン7重量部の混合溶媒を徐々に添加し、油中水型スラリーを調整した。得られたスラリーを実施例1で得たのと同じ疎水性膜が積層された透湿防水シートの疎水性膜表面にダイレクト法によりコーティングして乾燥し、厚さ30μmの多孔質膜が積層された複合透湿防水シートを得た。
メチルエチルケトンに溶解されたポリウレタン(大日本インキ工業(株)製PX−300、固形分30%)100重量部に、キシレンとメチルエチルケトンが2:1の割合で混合された混合溶媒60重量部及び活性炭粉末(武田薬品工業(株)製白鷺A−3)5重量部を添加、混合した後、水70重量部とメチルエチルケトン7重量部の混合溶媒を徐々に添加し、油中水型スラリーを調整した。得られたスラリーを実施例1で得たのと同じ疎水性膜が積層された透湿防水シートの疎水性膜表面にダイレクト法によりコーティングして乾燥し、厚さ30μmの多孔質膜が積層された複合透湿防水シートを得た。
[実施例4]
メチルエチルケトンに溶解されたポリウレタン(大日本インキ工業(株)製PX−300、固形分30%)100重量部に、キシレンとメチルエチルケトンが2:1の割合の混合溶媒60重量部及びPTFE粉末((株)喜多村製KTL−500F)5重量部を添加、混合した後、水30重量部とメチルエチルケトン3重量部の混合溶媒を徐々に添加し、油中水型スラリーを調整した。得られたスラリーを実施例1で得たのと同じ疎水性膜が積層された透湿防水シートの疎水性膜表面にダイレクト法によりコーティングして乾燥し、厚さ30μmの多孔質膜が積層された複合透湿防水シートを得た。
メチルエチルケトンに溶解されたポリウレタン(大日本インキ工業(株)製PX−300、固形分30%)100重量部に、キシレンとメチルエチルケトンが2:1の割合の混合溶媒60重量部及びPTFE粉末((株)喜多村製KTL−500F)5重量部を添加、混合した後、水30重量部とメチルエチルケトン3重量部の混合溶媒を徐々に添加し、油中水型スラリーを調整した。得られたスラリーを実施例1で得たのと同じ疎水性膜が積層された透湿防水シートの疎水性膜表面にダイレクト法によりコーティングして乾燥し、厚さ30μmの多孔質膜が積層された複合透湿防水シートを得た。
[比較例1]
N,N−ジメチルホルムアミドに溶解されたポリウレタン(東レコーテックス(株)製U−5378、固形分25%)とシリカ(日本シリカ工業(株)製ニップシールE−200)とを固形分比で前者100重量部に対し後者を5重量部の割合で混合してスラリーを調製した。実施例1で用いたのと同じナイロン織物上にこのスラリーをコーティングした後、湿式凝固法に基づき多孔質層を形成し、水洗、乾燥し、厚さ30μmの透湿防水シートを得た。疎水性膜内の平均気孔径は17μmであり、濡れ指数は50dyne/cmであった。
N,N−ジメチルホルムアミドに溶解されたポリウレタン(東レコーテックス(株)製U−5378、固形分25%)とシリカ(日本シリカ工業(株)製ニップシールE−200)とを固形分比で前者100重量部に対し後者を5重量部の割合で混合してスラリーを調製した。実施例1で用いたのと同じナイロン織物上にこのスラリーをコーティングした後、湿式凝固法に基づき多孔質層を形成し、水洗、乾燥し、厚さ30μmの透湿防水シートを得た。疎水性膜内の平均気孔径は17μmであり、濡れ指数は50dyne/cmであった。
[比較例2]
メチルエチルケトンに溶解された親水性ポリウレタン(東レコーテックス(株)製U−6285M固形分30%)溶液を実施例1で用いたのと同じ織物にコーティングした後、乾燥し、厚さ25μmの無孔質膜が積層された透湿防水シートを得た。濡れ指数は50dyne/cm以上であった。
メチルエチルケトンに溶解された親水性ポリウレタン(東レコーテックス(株)製U−6285M固形分30%)溶液を実施例1で用いたのと同じ織物にコーティングした後、乾燥し、厚さ25μmの無孔質膜が積層された透湿防水シートを得た。濡れ指数は50dyne/cm以上であった。
実施例1〜4及び比較例1、2により得られた透湿防水シートの諸物性を次の方法により測定した。結果を表1に示す。
〔耐水圧〕JIS L1092に準拠して測定した。
〔透湿抵抗〕(株)東洋精機製 衣服内外環境測定装置TIMS−1を用いて、測定雰囲気20℃、65%RH、水温36℃にて測定した。
〔熱伝導率〕京都電子工業(株)製迅速熱伝導率計QTM−500を用いて、20℃、65%RHにて測定した。
〔吸水率〕JIS L1907に準拠して、常温浸漬、浸漬1時間で測定した。
〔疎水性膜濡れ指数〕JIS K6768の濡れ性試験法に準拠して測定した。
〔吸着率〕トルエン濃度が200ppmになるように調整された5Lのテドラーパックに1gの試料を封入した。次に、前記試料の封入前と封入1時間後の容器内のトルエン濃度を検知管により測定し、下式により吸着率を算出した。
〔手触り感(滑り性)〕多孔質膜が形成された側の面に手で触れて滑り性を評価した。
〔寸法変化率〕JIS L 1909に準拠して、常温水浸漬、浸漬1時間にて測定した。
〔透湿抵抗〕(株)東洋精機製 衣服内外環境測定装置TIMS−1を用いて、測定雰囲気20℃、65%RH、水温36℃にて測定した。
〔熱伝導率〕京都電子工業(株)製迅速熱伝導率計QTM−500を用いて、20℃、65%RHにて測定した。
〔吸水率〕JIS L1907に準拠して、常温浸漬、浸漬1時間で測定した。
〔疎水性膜濡れ指数〕JIS K6768の濡れ性試験法に準拠して測定した。
〔吸着率〕トルエン濃度が200ppmになるように調整された5Lのテドラーパックに1gの試料を封入した。次に、前記試料の封入前と封入1時間後の容器内のトルエン濃度を検知管により測定し、下式により吸着率を算出した。
〔寸法変化率〕JIS L 1909に準拠して、常温水浸漬、浸漬1時間にて測定した。
本発明の複合透湿防水膜及びこれを用いたシートは、スキーウエア等のスポーツ用衣料、レインコート等の雨天用衣料の他、防水性と透湿性が併せて要求される用途に広く利用可能である。
Claims (5)
- 連続気孔を有し、JIS K6768に準拠して求められる濡れ指数が45dyne/cm以下である疎水性膜の少なくとも片面の少なくとも一部に、主として極性溶媒可溶性高分子材料からなり、連続気孔を有する多孔質膜が積層されたことを特徴とする複合透湿防水膜。
- 前記疎水性膜が、極性溶媒可溶性高分子材料100重量部に対して1次粒子径が0.1μm以下の疎水性微粒子が固形分比で10〜100重量部の割合で混合されてなり、かつ平均孔径が10μm以下の連続気孔が膜内にほぼ均一に分布したものであることを特徴とする、請求項1に記載の複合透湿防水膜。
- 前記多孔質膜が、極性溶媒可溶性高分子材料100重量部に対して機能性材料が固形分比で1〜100重量部の割合で混合されてなり、かつJIS L1907に準拠して求められる吸水率が30%以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合透湿防水膜。
- 前記機能性材料が、親水性材料、多孔性材料、潤滑性材料、及び導電性材料からなる群から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項3に記載の複合透湿防水膜。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合透湿防水膜の疎水性膜面が、不織布、織物、及び編み地からなる群から選択された多孔質基材の少なくとも一部に付設又は埋設されたことを特徴とする複合透湿防水シート。
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JP2008542064A (ja) * | 2005-05-25 | 2008-11-27 | ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド | 微多孔質基材上の多機能性被膜 |
JP2012111809A (ja) * | 2010-11-22 | 2012-06-14 | Masanaga Sakaguchi | 結露防止剤 |
CN113637416A (zh) * | 2021-08-19 | 2021-11-12 | 宋星云 | 一种防结露材料层 |
-
2003
- 2003-09-01 JP JP2003309321A patent/JP2005074855A/ja active Pending
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KR101393173B1 (ko) * | 2005-05-25 | 2014-05-21 | 고어 엔터프라이즈 홀딩즈, 인코포레이티드 | 미세다공성 기재 상의 다작용성 코팅 |
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