JP2005073592A - マイタケ由来のレクチンをコードする遺伝子 - Google Patents

マイタケ由来のレクチンをコードする遺伝子 Download PDF

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Abstract

【課題】 マイタケ由来のレクチンをコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を利用したマイタケ由来レクチンの製造方法を提供すること。
【解決手段】 マイタケ由来のレクチンの部分アミノ酸配列を基に、RACE法を利用して該レクチンをコードする遺伝子の完全長cDNAをクローニングし、その塩基配列を決定する。該遺伝子を用いて、遺伝子工学的にマイタケ由来のレクチンを製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、マイタケ由来のレクチンをコードする遺伝子、ならびにその利用方法に関する。
レクチンとは、生物界に広く存在する、糖を認識して特異的かつ可逆的に結合するタンパク質の総称である。通常レクチンは複数のサブユニットからなるオリゴマーで、1個のサブユニットあたり1個の糖結合部位をもつ。
レクチンの生物学的機能(役割)は大きく2つに分けることができる。1つは「同一の生物内で作用する場合(内務型レクチン)で、例えば細胞分化、形態形成糖蛋白質の代謝などの現象に関与するものが含まれる。もう1つは「異種の生物間で作用する場合(外務型レクチン)」で、例えば細菌やウィルスの感染、種々の外敵に対する生体防御、共生や補食などに関与するものが含まれる。
レクチンは、糖鎖への結合特性に加えて、マイトジェン活性、悪性腫瘍細胞の選択的凝集活性等を有するため、生物学や医学の分野における重要な研究ツールとして利用されている。その利用範囲は、糖タンパクの分類や特定のみならず、細胞の分化、神経細胞の追跡、細菌の同定、骨髄移植時のリンパ球と骨髄の分画など、基礎研究から臨床まで多岐に渡る。
菌類のレクチンについては、動・植物由来のレクチンに比較して研究の例は少ない。キノコの場合、タモギタケ(Pleurotus cornucopiae)、エノキタケ(Flammulina veltipes)、ツクリタケ(Agaricus bisporus)などの栽培キノコやその他のいくつかのキノコについて単離されているにすぎない(例えば、非特許文献1及び2参照)。これらは、そのアミノ酸配列に基づいて分類すると、大きく5つのグループに分類される(例えば、非特許文献3参照)。しかし、近縁種であってもそのレクチンは同じグループに属するとは限らないことから、キノコ由来のレクチンは多岐にわたることが予測される。キノコ由来のレクチンは、その多様性から様々な分野で利用されることが期待され、すでにヒイロチャワンタケのレクチン(例えば、非特許文献4参照)などは糖鎖研究用試薬として広く利用されている。
マイタケは、人工栽培の確立により近年入手が容易になった担子菌キノコの1つである。担子菌キノコについては、上述のようにタモギタケ由来のレクチンが単離されている。担子菌キノコは、さらにヒダの有無により2つに分類され、タモギタケはヒダのあるもの、マイタケはヒダのないものに分類される。
本発明者らは、これまでマイタケからのレクチンの抽出法を確立し、その物性とアミノ酸組成、ならびにN末端部分アミノ酸配列を明らかにしている(特許文献1)。上記よれば、マイタケ由来のレクチンタンパク質は22KDaのサブユニットから構成される約2万ダルトンのタンパク質で、pH2〜9、温度50℃までは安定である。しかしながら、マイタケ由来のレクチンの完全なアミノ酸配列は未だ特定されておらず、その遺伝子も単離されたことはない。
特開2003−73398号公報 M. Yoshida et al, 「バイオサイエンス バイオテクノロジー アンド バイオケミストリー(Bioscience Biotechnology and Biochemistry)」, (1994) 58, p498 S. Oguri et al, 「ジャーナル オブ バクテリオロジー(Journal of Bacteriology)」, (1996) 178, p5692 長田嘉穂、「化学と生物」, (1996) vol.38, No.6, p368 長田嘉穂、「蛋白質・核酸・酵素」, (1992) 37, p1525
本発明は、マイタケ由来のレクチンをコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を利用することによりマイタケ由来のレクチンの遺伝子工学的生産を可能にすることを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、マイタケ由来のレクチンの部分アミノ酸配列を基に、RACE法を利用して該レクチンをコードする遺伝子の完全長cDNAをクローニングし、その塩基配列を決定することに成功した。
すなわち、本発明はマイタケ由来のレクチンタンパク質をコードする遺伝子に関する。該遺伝子は、具体的には、以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつレクチン活性を有するタンパク質
本発明の遺伝子はまた、以下の(c)又は(d)のDNAからなる遺伝子である。
(c)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつレクチン活性を有するタンパク質をコードするマイタケ由来のDNA
本発明はまた、本発明の遺伝子を利用した、組換えタンパク質を提供する。該組換えタンパク質は、以下の(a)又は(b)のタンパク質である。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつレクチン活性を有するタンパク質
また本発明は、本発明の遺伝子を含有する組換えベクターを提供する。
さらに本発明は、本発明の遺伝子を宿主に導入して得られる形質転換体を提供する。
本発明の組換えタンパク質は、上記形質転換体を培養し、得られる培養物からレクチンタンパク質を採取することにより得ることができるが、本発明は、このようなマイタケ由来のレクチンタンパク質の製造方法をも提供する。
本発明により、マイタケ由来のレクチンタンパク質をコードする遺伝子が提供される。該遺伝子を利用すれば、マイタケ由来のレクチンタンパク質の大量生産が可能になる。マイタケ由来のレクチンは、糖鎖研究用試薬はもとより、免疫賦活活性や腫瘍増強抑制作用を有する医薬品として有用である。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
1.マイタケ由来のレクチン
本発明にかかる「マイタケ」とは、担子菌ヒダナシタケ目に属する食用キノコ(子実体を形成する菌)の1種であって、マイタケ(Grifola frondosa)、白マイタケ(Grifola albicans)等が挙げられる。
本発明にかかる「レクチン」とは、生物界に広く存在する、糖を認識して特異的かつ可逆的に結合するタンパク質の総称である。Goldsteinらによれば、レクチンは抗体や酵素と区別する意味で次のように定義されている。
1)免疫反応の産物以外の、糖結合性タンパク質又は糖タンパク質で、細胞又は複合糖質を凝集する。
2)2つ以上の結合部位をもち、動・植物細胞を凝集することができる。
3)凝集は、単糖又はオリゴ糖により特異的に阻止される。
本発明にかかる「マイタケ由来のレクチン(以下、「GFL-F」と記載する。)」は、本発明者らにより、マイタケ子実体より抽出・精製され、その物性とN末端のアミノ酸配列(配列番号4)が既に明らかにされている(特開2003−73398)。それによれば、GFL-Fは、22KDaのサブユニットから構成される約2万ダルトンのタンパク質で、pH9以下では安定であるが、それ以上になると徐々に失活し、pH11以上では完全に失活する。また熱に対しては、50℃以下では安定であるが、それ以上では徐々に失活し、70℃以上では完全に失活する。
発明者らは、さらにGFL-Fの糖特異性を調べたところ、PSM(Porcinen Stomach Mucin 「ブタ胃由来のムチン」)にのみ特異性を示すことが確認された。ムチンの中には細胞のガン化やガン細胞の転移に深く関与するものがある。したがって、GFL-Fは糖鎖研究用試薬等への応用のほか、免疫賦活活性や腫瘍増強抑制作用等を用いた医薬品にも応用できることが予測された。
また発明者らは、冷蔵庫で保存中にGFL-Fが2つのフラグメントに切断されていることを発見した。そしてこの分解断片と未分解の断片を比較することにより、N末端部分アミノ酸配列に加えて、分子のほぼ中央部の部分配列(配列番号5)を新たに特定することができた。
2.GFL-F遺伝子のクローニング
本発明のマイタケ由来のレクチンをコードする遺伝子(以下、「GFL-F遺伝子」という。)は、既に特定されているN末端部分アミノ酸配列、及び新たに特定された中央部の部分アミノ酸配列に基づき、マイタケのcDNAあるいはcDNAライブラリーから周知の方法に従ってクローニングすることができる。例えば、cDNAに対して、上記部分アミノ酸配列から作製されるプライマーを用いてPCRを行い、得られた増幅断片によりマイタケcDNAライブラリーから目的とするGFL-F遺伝子をクローニングする。あるいは、cDNAライブラリーを作製することなく、RACE法を利用してcDNAから目的のGFL-F遺伝子をクローニングする。一般にcDNAライブラリーからの全長cDNAの取得は困難であることが多く、ここでは後述のRACE法によるクローニングについて説明する。
(1) mRNAの抽出
まず、マイタケよりmRNAを調製する。mRNAの供給源は、マイタケの傘、菌褶、菌輪、菌柄、脚苞、菌糸など子実体の一部であっても、子実体全体であっても良いが、子実体全体が好ましい。また、菌体は、胞子又は一次菌糸若しくは二次菌糸を0.25×MYPG培地、SMY培地、グルコース・ペプトン培地などの固体培地で培養し、該菌糸を液体培地に接種して、生育してきたものを用いてもよい。
mRNAの抽出は、通常行われる手法により行うことができる。例えば、液体培地により得られた菌糸を、濾過によって回収後、液体窒素で凍結する。次いで、凍結した菌糸を粉砕後、ISOGEN(ニッポンジーン社製)などを加えて核酸を抽出する。あるいは、市販のキット(MACS mRNA Isolation Kit (Miltenyi Biotec社製)を用いて抽出してもよい。抽出した核酸は、クロロホルムやフェノール試薬などで処理して全RNAを得る。次いで、oligo (dT)磁性ビーズ(あるいは磁石)、oligo (dT)-セルロース等を用いたアフィニティーカラム、若しくはStraight A's mRNA Isolation System(Novagen社製)などのキットによりmRNA(ポリ(A)+RNA)を調製する。
(2) cDNAの合成
こうして得られたmRNAを鋳型として、市販のキット、例えば3'-RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends (GIBCO BRL社製)等を用いて、オリゴdTプライマー及び逆転写酵素によって一本鎖cDNAを合成した後、該一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する。
(3) RACE法による完全長cDNAの取得
次に、得られた二本鎖cDNAに適切なアダプターを付加した後、アダプタープライマーと5'側及び3'側遺伝子特異的プライマー(Gene Specific Primer:GSP)を用いてPCRを行う。得られた5'-RACE及び3'-RACE産物の末端の塩基配列を決定し、その配列から新たに5'側及び3'側GSPを作製してPCRを行い、目的とする完全長cDNAを取得する。
GFL-Fの場合、N’末端の配列を基に作製した縮重RACEプライマーとアダプタープライマーによるPCR反応では、アダプタープライマーの濃度を変化させてもアダプタープライマー間でしか増幅が起こらず目的とする遺伝子の増幅ができなかった。そこで、N末端及び内部の部分アミノ酸配列にそれぞれ設定したプライマーを用いてPCRを行い、まずGFL-Fの内部塩基配列を特定した。次いでこの特定した内部塩基配列をもとに作製したGSPとアダプタープライマーを用いたPCRにより、目的とするGFL-F cDNAを増幅した。
(4) 塩基配列の決定
得られた完全長 GFL-F cDNAは、直接あるいはpBlueScript SK(+)(Stratagene社製)、pCR2.1(Invitrogen社製)等の市販の適当なプラスミドベクターにサブクローニングして、サイクルシークエンス法などにより塩基配列解析を行う。塩基配列の決定はマキサム-ギルバートの化学修飾法、又はM13ファージを用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法等、公知の手法により行うことができるが、自動塩基配列解析装置(PERKIN-ELMER社製 :ABI PRISM 377 DNA Sequence System 等)を用いる方法が簡便で好ましい。
3.GFL-F遺伝子
上記の方法により単離されたGFL-F遺伝子(cDNA)は、配列番号1に示す546塩基からなる塩基配列を有し、配列番号2に示す181アミノ酸残基からなるマイタケ由来のレクチンタンパク質のアミノ酸配列をコードしていた。
しかしながら、本発明にかかるGFL-F遺伝子は、上記配列に限定されず、配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる他のポリヌクレオチドも、それが本発明のレクチン活性を有するGFL-Fタンパク質をコードする限り、本発明の遺伝子に含まれる。ここで、ストリンジェントな条件下とは、例えば、ナトリウム濃度が30mMかつ温度が65℃、好ましくはナトリウム濃度が10mMかつ温度が65℃の条件下をいう。
なお本明細書中において、「遺伝子」という用語には、DNAのみならずそのmRNA、cDNA及びcRNAも含むものとする。したがって、本発明の遺伝子には、常に配列表に示されるコーディング鎖とその相補鎖の両方が含まれ、該塩基配列を有するDNA、mRNA、cDNA、及びcRNAの全てが含まれる。また、配列表の塩基配列はすべてDNA配列として記載するが、該配列がRNAを示す場合は、配列表中の塩基記号「t」は「u」に読み替えるものとする。
また、本発明のGFL-Rタンパク質も配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパクに限定されず、該配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパクであっても、それがレクチン活性を有する限り、本発明にかかるGFL-Fタンパク質に含まれる。
かくして、一旦本発明の遺伝子とその塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、又はゲノムDNAを鋳型としたPCRによって、あるいは該塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることによって、さらに本発明の遺伝子を得ることができる。
4.組換えGFL-Fタンパクの製造
マイタケ由来のレクチンは、マイタケの強いプロテアーゼ活性や、レクチン自身の熱、pHに対する安定性の問題から、その精製が極めて困難であった。本発明者らは、このマイタケ由来のレクチンの効果的な精製法を開発した(特開2003−73398号)。しかしながら、その方法はマイタケを特定温度で冷凍保存後、解凍し、次いで特定温度で冷蔵放置して得られる浸出液を、陰イオン交換体及び陽イオン交換体で処理するという極めて煩雑なものである。
マイタケ由来のレクチンは、糖鎖研究用試薬はもとより、免疫賦活活性や腫瘍増強抑制作用を有する医薬品として広く利用できることが期待される。したがって、遺伝子工学的にマイタケ由来のレクチンを大量生産することができれば、それは極めて効率的な当該レクチンの取得方法となる。以下、本発明のGFL-F遺伝子を利用した組換えGFL-Fの製造方法について説明する。
1)組換えベクターの作製
GFL-F遺伝子を含む組換えベクターは、公知のベクターに本発明のGFL-F遺伝子を連結(挿入)することによって得ることができる。前記ベクターは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えばプラスミドDNA、ファージDNA等を用いることができる。
前記プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えば pBR322, pBR325, pUC18, pUC119, pTrcHis, pBlueBacHis 等)、枯草菌由来のプラスミド(例えば pUB110, pTP5 等)、酵母由来のプラスミド(例えば YEp13, YEp24, YCp50, pYE52 等)などが、ファージ DNAとしてはλファージ等が挙げられる。さらにレトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルスベクター、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスベクター、ジャガイモエックスウイルス等の植物ウイルスベクターなどを用いてもよい。
前記ベクターへの本発明のGFL-F遺伝子の挿入は、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、ベクターDNAの適当な制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法が採用される。本発明のGFL-F遺伝子はその遺伝子の機能を好適に発揮できるよう、ベクターに組み込む必要がある。そのため、ベクターには本発明のGFL-F遺伝子の他にプロモーター、必要であればエンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選抜マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)等を含有させることができる。なお選抜マーカーとしては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等を挙げることができる。
2)形質転換体の作出
GFL-F遺伝子を導入した形質転換体は、上述の組換えベクターをGFL-F遺伝子をが発現しうる態様で宿主中に導入することによって得ることができる。ここで宿主としては、本発明のGFL-F遺伝子を発現できるのもであれば特に限定されず、例えば、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロテイ(Rhizobium melilotei)等のリゾビウム属に属する細菌、またサッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cervisiae)、サッカロミセス・ポンベ(S. pombe)等の酵母、サル細胞(COS細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)等の動物細胞、あるいはSf19、Sf21等の昆虫細胞を挙げることができる。
大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが各細菌中で自律複製可能であるとともにプロモーター、リボゾーム結合配列、本発明遺伝子、転写終結配列により構成されていることが望ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていても良い。大腸菌としてはエッシェリヒア・コリ(E. coli)K12、DH1、TOP10F等が挙げられ、枯草菌としてはバチルス・ズブチリス(B. subtilis)MI114、207-21 等が挙げられる。
前記プロモーターとしては、大腸菌等の宿主で発現できるものであれば特に限定されず、例えばtrpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等の大腸菌由来のプロモータを用いることができる。tacプロモーター等の人為的に設計されたプロモーターを用いてもよい。
細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入できる方法であれば特に限定されず、例えばカルシウムイオンを用いる方法(Cohen, SN et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69 : 2110 (1972))、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セルビシエ(S. cervisiae)、サッカロミセス・ポンベ(S. pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等が用いられる。この場合、プロモーターとしては酵母で発現できるものであれば特に限定されず、例えばgal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOXプロモーター等を挙げることができる。
酵母への組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入しうる方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法(Becker, D.M. et al. : Methods. Enzymol., 194 : 180 (1990))、スフェロプラスト法(Hinnen, A. et al. : Proc Natl. Acad. Sci. USA, 75 : 1929 (1978))、酢酸リチウム法(Itoh, H. : J. Bacteriol., 153 : 163 (1983))等を挙げることができる。
動物細胞を宿主とする場合にはサル細胞(COS-7)、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞、マウスL細胞、ラットGH3細胞、ヒトFL細胞などが用いられる。プロモーターとしては、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター等が用いられる。また、ヒトサイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いても良い。動物細胞への組換えベクターの導入方法は、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合には、Sf9細胞、Sf21細胞などが用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法は、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が用いられる。
3)GFL-Fタンパク質の生産
本発明のGFL-Fタンパク質は、前項2)記載の形質転換体を培養し、その培養物から該タンパク質を採取することによって得ることができる。本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。大腸菌や酵母等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化しうる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体を効率的に培養しうる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いても良い。
炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン、マルトース、デキストリン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としてはアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸、NZアミン等が用いられる。
無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム、硫酸亜鉛、塩化コバルト等が用いられる。培養は通常、振とう培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下で、約30℃で24〜96時間行う。培養期間中、pH は5.0〜8.0に保持する。pH の調製は無機又は有機の酸、アルカリ溶液による。
培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加しても良い。プロモーターとして誘導性のものを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加しても良い。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、インドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加しても良い。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般的に使用されているRPMl1640培地、DMEN培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地が挙げられる。培養は通常、5%CO2存在下、20〜30℃で1〜7日間行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加しても良い。
昆虫細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C. : Nature, 195:788 (1962))に牛胎児血清等を添加した培地が挙げられる。培養は通常25℃で1〜7日間行う。培養期間中、pH は6.0〜7.0に保持し、必要に応じて通気や攪拌を加える。
培養後、本発明のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合は、菌体内又は細胞を破砕する。一方、本発明のタンパク質が菌体外又は細胞外に分泌される場合は、培養液をそのまま用いるか、遠心分離等によって菌体又は細胞を除去後上清を得る。タンパク質の単離・精製には、一般的に、例えば硫酸アンモニウム沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独であるいは適宜組み合わせて用いることにより、上記の培養物(細胞破砕液、培養液、又はそれらの上清)から本発明のGFL-Fタンパク質を単離・精製することができる。
5.形質転換マイタケの作製
本発明のGFL-F遺伝子をマイタケに導入することによりGFL-Fを過剰に含む組換えマイタケを作製することができる、あるいはGFL-F遺伝子のアンチセンス核酸をマイタケに導入することによりGFL-Fが少ない組換えマイタケを作製することもできる。これらの組換えマイタケはGFL-Fの生物学的機能の研究等に有用である。
実施例1:マイタケ由来のレクチン遺伝子のクローニング
精製したマイタケ由来のレクチンを冷蔵庫で保存していたところ、タンパク分子が2つの断片に切断されていることを発見した。この分解断片と未分解の断片を比較することにより、既知のN末端部分アミノ酸配列(特開2003−73398号)に加えて、分子のほぼ中央部の部分アミノ酸配列(配列番号5)を新たに特定することができた。そこで、この2つの部分アミノ酸配列に基づき、以下の手順でレクチン遺伝子のクローニングを試みた。
1. mRNAの抽出
マイタケのmRNAは市販のキット、μ MACS mRNA Isolation Kit (Miltenyi Biotec社製)を用いて抽出した。すなわち、-80℃にて保存していた菌床栽培にて得られたマイタケ子実体を液体窒素で冷却しながら粉砕した。粉砕サンプルをキットの説明書に従って処理し、oligo (dT)磁性ビーズ及び磁石を用いてmRNAの精製を行った。
2. cDNA合成
精製したmRNAからのcDNA合成は市販のキット3'-RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends (GIBCO BRL社製)を用いて、付属の説明書に従って行った。すなわち、mRNA溶液8μlとRNase-free H2O 3μlを混合してアダプタープライマー1μlとともに0.5mlのチューブに入れた。その後70℃で10分間静置後、氷上に1分間以上放置した。次いで、そこに表1記載の反応液を添加して42℃で2-5分間インキュベートした。さらにSuper Script II RTを添加して、42℃で50分、70℃で15分反応させて氷上に移した後、RNaseHを1μlを添加して37℃で20分間反応させてRNAを分解し、cDNAを調製した。
Figure 2005073592
3.縮重プライマーによるPCR
(1) 縮重プライマーの設計
調製したcDNAに対して縮重プライマーを用いたPCRを行った。縮重プライマーは既に解明されている該レクチンタンパク質のN末端部分アミノ酸配列(配列番号4)、及び中央部の部分アミノ酸配列(配列番号5)を基に作製した。すなわち、以下に示すように、上流のプライマーとしてGFL N1、GFL N2、下流のプライマーとしてGFL MC1、GFL MC2のそれぞれ二種類を作製した。N2、MC2はそれぞれGFL N1又はGFL MC1の内側の配列を基に作製して、GFL N1とGFL MC1で増幅したDNA断片の内側を増幅するように設計したものである。
GFL N1 (Upper primer):5'-GTIGGIACIACACATHCA-3'(配列番号6)
GFL N2 (Upper primer):5'-ATHCARACIWSIYTIATHGG-3'(配列番号7)
GFL MC1(Lower primer):5'-ACIGCIACIACRTTRTC-3'(配列番号8)
GFL MC2(Lower primer):5'-TTIARIACRTTCATICC-3'(配列番号9)
HはG以外、 Nは任意、RはA又はG、WはA又はT、YはC又はT、Iはイノシン、をそれぞれ表す。
PCR反応は市販のキットTakara Ex-Taqを用いて、それに付属の10x Ex-Taq buffer、dNTP mixture及びEx-Taqを用いて行った。反応液組成及び反応条件は表2、表3に示すとおりである。
Figure 2005073592
Figure 2005073592
(2) 一次PCR
まず、先に得られたcDNAを鋳型として、GFL N1及びGFL MC1を用いて一次PCRを行った。一次PCRによってDNA 断片が増幅されたことをPCR産物のアガロースゲル電気泳動及びエチジウムブロマイド染色にて確認した。結果を図1に示す。
(3) nested-PCR
次に、増幅されたDNA断片を鋳型としてGFL N2とGFL MC2を用いて一次PCRで得られたDNA断片の内側のDNA断片を増幅した(nested-PCR)。nested-PCRによってDNA断片が増幅されたことを一次PCRと同様に確認した。図2に示すとおり、約245bpのDNA断片が得られたことが確認された。そこでこのDNA断片の塩基配列を決定するために以下の手順でサブクローニングを行った。
(4) サブクローニング
得られた約245bpのDNA断片は常法に従い、エタノール沈殿にて精製した。該DNA断片の二本鎖それぞれの3'端にはEx-Taqのターミナルトランスフェラーゼ活性によりアデニン(A)が付加されている。そこでマルチクローニングサイトにチミン(T)が一塩基突出しているベクター、pGEM-T Easy vectorを用いてTAクローニングを行った。ライゲーションはT4 DNA Ligaseを用いて添付された手順に従って行った。
すなわち、表4に示す反応液を作製し、16℃にて一晩反応させた。なお、反応液を混合する際、T4 DNA Ligaseは最後に添加するほうが好ましい。次に作製したプラスミド液1μlと氷上で融解した大腸菌のコンピテントセル50μlを混合して氷上に30分間放置した。その後、42℃、30秒でヒートショックを行い、氷上で2分間放置後、無菌的に200μlのSOC培地を添加した。このときチューブの壁を伝わらせて静かに添加し、軽く攪拌を行った。37℃で1時間静置培養後、LB寒天培地(アンピシリン、IPTG、X-gal配合)に展開し、37℃で16時間以内培養を行うことにより形質転換を行った。
Figure 2005073592
pGEM-T Easy vector はプラスミド内にアンピシリン耐性遺伝子を持つため形質転換を受けたコロニーはアンピシリン耐性を持つ。また、マルチクローニングサイトにDNA断片が挿入されなかった場合、IPTG、X-galの存在によりコロニーが青くなるため、白色のコロニーを選ぶことによりDNA断片が挿入されたプラスミドを持つコロニーを選択することができる。こうした二つの選択により高確率で形質転換のされたコロニーを選別することができる。選別されたコロニーがDNA断片の導入されたプラスミドを持つことはダイレクトPCR法を用いることにより確認した。
すなわち表5に示す反応液をあらかじめ0.2mlのマイクロチューブ内に20μlづつ分注した。そこに形質転換されたコロニーを掻き取った爪楊枝を入れてすすぎ、表6に示す条件でPCR反応を行った。ここで用いたプライマーセット(M13forward及びM13reverse:いずれもPromega社製)は、ベクターのマルチクローニングサイトを増幅するように設計されたものである。
M13 forward primer:5'-GTAAACGACGGCCA-3'(配列番号17)
M13 reverse primer:5'-CAGGAAACAGCTATGAC-3'(配列番号18)
Figure 2005073592
Figure 2005073592
PCR反応後、常法に従いアガロースゲル電気泳動により目的の約245bpのDNA断片が増幅されていることを確認した。こうして選択されたコロニーから次に記す通りにプラスミドを抽出した。
アンピシリンを50μg/ml含むLB培地3mlに上記にて選択されたコロニーを無菌的に植菌して、37℃にて16-18時間振とう培養した。培養終了後1.5mlチューブに菌液を移し、4℃、15、000rpm、15秒遠心し、上清を捨てた。これを数回繰り返すことにより3ml全てから菌体を集菌した。得られた菌体からのプラスミド抽出は市販のQIA prep apin Miniprep kit (QIAGEN社製)を用いて行い、操作はその説明書に従った。
(5) 塩基配列の決定
こうして精製されたプラスミドクローンを用いてプラスミドに導入されたDNA断片の塩基配列を決定した。塩基配列の決定には二種類のDNAシークエンサーを用いた。すなわち、dideoxy法によるA.F.L DNA sequencerII(アマシャムバイオサイエンス社製)とDye Terminater法、キャピラリーシークエンスによるABI PRISM 3100 Genetic Analyzer(ABI社製)である。初めにA.F.L DNA sequencerIIでプライマー領域の確認を行った後、ABI PRISM 3100 Genetic Analyzerでキャピラリーシークエンスを行った。
A.F.L DNA sequencerIIを用いたシークエンスでは、鋳型となるプラスミド溶液5μlを45μlの滅菌水で希釈後、サイクルシークエンスを行った。PCRの条件は表7、表8に示した。サイクルシークエンス終了後、各チューブにLoading dyeを3μlづつ入れシークエンスサンプルとした。シークエンスでは市販のRepro Gel Long Read(アマシャムバイオサイエンス社製)をゲルとして用いて、A.F.L DNA sequencerIIを付属の説明書に従い、表9の条件にて電気泳動を行った。電気泳動像の解析を行い、縮重PCRで用いたプライマーの配列が現われたプラスミドについて、次のキャピラリーシークエンスを行った。
Figure 2005073592
Figure 2005073592
Figure 2005073592
ABI PRISM 3100 Genetic Analyzerでのキャピラリーシークエンサーには反応に用いるプラスミドを200-500ngとなるように調製した。サイクルシークエンスは市販のキットであるBigDye Terminator Cycle Aequence, FSを用いてその説明書に従って行った。PCR反応条件は表10、表11に示すとおりである。ここにあるプライマーとはM13forward, M13reverse/SP6,T7/GSP(前掲のGFL N1,GFL N2,GFL MC1,GFL MC2)をそれぞれ適宜使用した。
SP6 primer:5'-TAATACGACTCACTATAGGG-3'(配列番号19)
T7 primer:5'-ATTTAGGTGACACTATAGAAT-3'(配列番号20)
Figure 2005073592
Figure 2005073592
サイクルシークエンス終了後Sephadex G-50 DNA gradeを用いて余剰のTerminatorを除去した。すなわち、0.5mlのカラムに穴をあけ、ガラスウールを少量つめ、1.5mlチューブにセットした。そこに50mg/mlのSephadex溶液を600μlづつ分注した。2500rpmで4秒遠心の後、下のチューブに落ちた水を捨て、さらに2500rpm、2分の遠心を行った。こうして調製した0.5mlのカラムを新たな1.5mlのチューブにセットした。そこにあらかじめオイルを除いたサイクルシークエンスサンプルをアプライし、2500rpm、2分の遠心を行い、乾燥後にキャピラリーシークエンスに用いた。
得られた蛍光パターンから塩基配列を分析した。分析の結果を図3に示す。縮重PCRで得られたDNA断片は267bpの大きさで、プライマー間にストップコドンを持たないことが確認された。さらに、図4に示すように予想されるアミノ酸配列は前述のマイタケ由来のレクチンタンパク質のアミノ酸配列とほぼ一致し、得られたDNA断片はマイタケ由来レクチンタンパク質のアミノ酸配列をコードしているDNAの一部であることが確認された。
4. 3'-RACE
縮重PCRによって得られたDNA断片の塩基配列にはストップコドンが含まれていなかった。そこで、DNA断片の下流領域に存在するマイタケ由来レクチンタンパク質のC末端側アミノ酸配列をコードする塩基配列を3'-RACE法を用いて解析した。
(1) プライマー設計
先に決定したマイタケ由来レクチンタンパク質アミノ酸配列の一部をコードするDNA断片の塩基配列から、できるだけN末端よりでGC含量が適度であるよう、以下に示す二種類の縮重を持たないGSP:GFL N3、GFL N4を作製した。作製したプライマーは一つのプライマーだけでPCR及び電気泳動を行うことにより、プライマーダイマーを作らないことを確認した。
3'-RACEは、市販のキット3'-RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends (GIBCO BRL社製)を用いて、付属の説明書に従って実施した。反応液の組成及び反応条件は表12と表13に示すとおりである。また、用いたプライマー(上記GSPおよびアダプタープライマーAUAP)は以下のとおりである。
GFL N3(Upper primer):5'-ATGATGATAGACCTCAAGCAC-3'(配列番号10)
GFL N4(Upper primer):5'-CCTATTGTGGAGATGAGATTTCGG-3'(配列番号11)
AUAP(Lower primer):5'-GGCCACGCGTCGACTAGTAC-3'(配列番号14)
(2) 一次PCR及びnested-PCR
縮重PCRと同様、まず先に調製したcDNAを鋳型としてGFL N3とAUAPのプライマーセットで一次PCRを行い、その一次PCR産物を鋳型としてGFL N4とAUAPのプライマーセットでnested-PCRを行い、その内部のDNA断片を増幅した。それぞれのPCR産物は前述の方法でアガロースゲル電気泳動を行い、DNA断片の増幅を確認した。結果を図5、図6に示す。
Figure 2005073592
Figure 2005073592
nested-PCR産物については、2%アガロースゲルに40μlのPCR産物溶液をアプライして電気泳動を行い、約650bpに現われたバンドを切り出してDNA断片の回収を行った。すなわち、電気泳動後のアガロースゲルをエチジウムブロマイドで染色し、UVイルミネーターで照らしながら、約650bpの大きさのDNAバンドをカッターで切り出した。切り出したゲル断片の重量は0.15gであった。次にそのゲル断片から市販のキットであるGFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit(QUIAGEN社製)を用いて付属の説明書に従いDNA断片を回収した。
(3) サブクローニング
サブクローニング及びDNA断片の塩基配列の決定は縮重PCRと同様にして行った。ただし、本PCRではターミナルトランスフェラーゼ活性を持たないKoDを耐熱性DNAポリメラーゼとして用いたため、TAクローニングのライゲーションを行う前にPCR産物にAを付加した。A付加は表14に示す反応液を作製し、72℃にて2時間インキュベートすることにより行った。
Figure 2005073592
このようにして3'-RACEで得られたDNA断片の塩基配列を解析した結果を図7に示した。該DNA断片は746bpの大きさを持ち、そこから推定されるアミノ酸配列には縮重PCRで得られたクローンの配列及び中央部の部分アミノ酸配列、及びストップコドンが含まれていた。しかしながら、この配列には既知のN末端部分アミノ酸配列中Met1からThr8に相当する塩基配列は含まれていなかった。
5. 5'-RACE
次にマイタケ由来レクチンタンパク質のN末端側アミノ酸配列をコードする塩基配列を5'-RACE法を用いて解析した。
(1) プライマー設計
5'-RACEは、市販のキット5'RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends, Verion 2.0(GIBCO BRL社製)を用いて、付属の説明書に従って実施した。プライマーは、3'RACEと同様に二種類の縮重を持たないGSP:GFL MC3、GFL MC4を作製し、アダプタープライマーAUAP、Abridged Anchor Primerとともに用いた。プライマーの配列を以下に示す。
GFL MC3(Lower primer):5'-ATGCCGGTAGTGTCCGTAGA-3'(配列番号12)
GFL MC4(Lower primer):5'-AGCGCTGCCATGGACCTTCAC-3'(配列番号13)
AUAP(Upper primer):5'-GGCCACGCGTCGACTAGTAC-3'(配列番号15)
Abridged Anchor Primer:5'-GGCCACGCGTCGACTAGTACGGGIIGGGIIGGGIIG-3'(配列番号16)
(2) 一次PCR及びnested-PCR
まずGFL MC3をGSP1としてcDNA合成を行った。次いで、GFL MC4とAbridged Anchor Primerのプライマーセットで一次PCRを行ってdC tailed cDNAを増幅した。さらに、一次PCR産物(dC tailed cDNA)を鋳型としてGFL MC5とAUAPのプライマーセットでnested-PCRを行い、その内部のDNA断片を増幅した。一次PCR及びnested PCRの反応液、反応条件は3'RACEに従った。それぞれのPCR産物は前述の方法でアガロースゲル電気泳動を行い、DNA断片の増幅を確認した。nested-PCR産物の電気泳動結果を図9に示す。
次いで、3'-RACEと同様に、サブクローニングを行い、塩基配列を決定した。
6. 全長cDNAの塩基配列の決定
3'-RACE及び5'-RACEの結果得られた配列から、マイタケ由来レクチンcDNAの全長配列(配列番号1)が決定された。該配列は、開始コドン(Met)からストップコドンまで、181アミノ酸残基をコードする塩基配列を含んでいた。得られたアミノ酸配列(181aa)は、先に精製したマイタケ由来レクチンタンパク質のアミノ酸分析結果(178aa)のアミノ酸組成を比較したところ、両者はほぼ一致することが確認された。また、配列番号3に非翻訳領域を含むcDNA配列を記載するが、3'-RACEで得られたクローンのなかには、翻訳領域は完全に一致しているが、3'非翻訳領域の配列がやや短い別なクローンもあった(図8)。
Figure 2005073592
得られたアミノ酸配列をデータベースに登録された公知のアミノ酸配列と比較したところ、高い相同性が見られるタンパク質は存在しなかった。よって、今回得られたマイタケ由来レクチンは新種のレクチンタンパク質であると考えられた。
本発明のマイタケ由来のレクチンをコードする遺伝子はその糖結合性を生かして糖鎖研究用試薬として利用できる。また、他のレクチン同様、免疫賦活活性や腫瘍増強抑制作用を生かした医薬品として利用できる可能性もある。本発明の遺伝子を利用すれば、このマイタケ由来のレクチンタンパク質を遺伝子工学的に大量生産することが可能となる。また本発明の遺伝子や、そのアンチセンス核酸を利用すれば、該レクチンのマイタケ内での発現を増加若しくは減少させた組換えマイタケを作製することも可能である。
図1は、縮重プライマーによる一次PCR産物の電気泳動結果を示す。 図2は、縮重プライマーによるnested-PCR産物の電気泳動結果を示す。 図3は、縮重プライマーによるPCRによって得られたクローンの塩基配列を示す図である。 図4は、既知の部分アミノ酸配列と今回得られたアミノ酸配列とを比較したものである。 図5は、3'-RACE 一次PCR産物の電気泳動結果を示す。 図6は、3'-RACE nested-PCR産物の電気泳動結果を示す。 図7は、3'-RACEによって得られたクローンの塩基配列を示す図である。 図8は、3'非翻訳領域が異なる2つのクローンの塩基配列を示す図である。 図9は、5'-RACE nested-PCR産物の電気泳動結果を示す。
配列番号6−人工配列の説明:プライマー(GFL-N1)
i(イノシン)
配列番号7−人工配列の説明:プライマー(GFL-N2)
i(イノシン)
配列番号8−人工配列の説明:プライマー(GFL-MC1)
i(イノシン)
配列番号9−人工配列の説明:プライマー(GFL-MC2)
i(イノシン)
配列番号10−人工配列の説明:プライマー(GFL-N3)
配列番号11−人工配列の説明:プライマー(GFL-N4)
配列番号12−人工配列の説明:プライマー(GFL-MC3)
配列番号13−人工配列の説明:プライマー(GFL-MC4)
配列番号14−人工配列の説明:プライマー(AUAP 3'RACE)
配列番号15−人工配列の説明:プライマー(AUAP 5'RACE)
配列番号16−人工配列の説明:プライマー(Abridged Anchor Primer)
i(イノシン)
配列番号17−人工配列の説明:プライマー(M13 forward)
配列番号18−人工配列の説明:プライマー(M13 reverse)
配列番号19−人工配列の説明:プライマー(SP6)
配列番号20−人工配列の説明:プライマー(T7)

Claims (6)

  1. 以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子。
    (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつレクチン活性を有するタンパク質
  2. 以下の(c)又は(d)のDNAからなる遺伝子。
    (c)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA
    (d)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつレクチン活性を有するタンパク質をコードするマイタケ由来のDNA
  3. 以下の(a)又は(b)の組換えタンパク質。
    (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつレクチン活性を有するタンパク質
  4. 請求項1又は2記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
  5. 請求項1又は2記載の遺伝子を宿主に導入して得られる形質転換体。
  6. 請求項5記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からレクチンタンパク質を採取する、レクチンタンパク質の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH05199879A (ja) * 1989-09-15 1993-08-10 Max Planck Ges Foerderung Wissenschaft Ev 毛様体神経栄養因子
WO2001058943A1 (fr) * 2000-02-14 2001-08-16 Bf Research Institute, Inc. Nouvelle proteine clac du type collagene, precurseur de ladite proteine, et genes codant pour cette proteine
JP2003073398A (ja) * 2001-09-03 2003-03-12 Yukiguni Maitake Co Ltd マイタケ由来のレクチン及びその精製方法

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