以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。まず、本実施形態に係る乗員保護装置は、車両が衝突等したときに乗員の姿勢を制御することにより、装置本来の機能を損なうことなく乗員を保護するものである。なお、以下には、乗員保護装置の一例として、衝突時に乗員の膝位置を制御することにより、ニープロテクタにて乗員の膝を柔らかく受け止めるものを例に説明する。
図1は、本実施形態に係る乗員保護装置が用いられる車室内構成の説明図である。車室空間は車体骨格200により形成されており、車室の床面201上に乗員が着座するシート202が設けられている。また、シート202の側方には乗降用ドア203が設けられている。
シート202のうち運転席の前方には車両の挙動を制御するためのステアリング204及びペダル類205が設けられている。また、運転席と助手席との双方のシート202前方には、運転装置やエアコンなど様々な部品を覆い隠すダッシュパネル206が横断的に配置されている。
運転席と助手席との間には、ナビゲーションや空調装置等の操作を行うための操作パネル207が配されている。さらに、本実施形態では、運転席及び助手席の前方のダッシュパネル206部分に、乗員膝頭を柔らかく受け止めるためのニープロテクタ208が設置されている。
図2は、車両の前面衝突時における乗員の挙動を示す説明図であり、(a)は衝突発生前の乗員の様子を上方から示しており、(b)は衝突発生前の乗員の様子を側方から示している。また、(c)は衝突発生後の乗員の様子を上方から示しており、(d)は衝突発生後の乗員の様子を側方から示している。
図2(a)及び(b)に示すように、衝突前において着座した乗員Dの膝部Kとニープロテクタ208の間には幾らか空間がある。ここで、前面衝突が発生すると、乗員Dの身体は前方へと移動する。そして、図2(c)及び(d)に示すように、衝突時の速度等が大きいときには、エアバッグ209が展開して乗員Dの上半身を拘束することとなる。
このとき、乗員Dの膝部Kはダッシュパネル206の下面部に当たる。ところが、内挿されたニープロテクタ208が部分的に変形して膝部Kへの衝撃を緩和する。ただし、乗員Dの姿勢によっては、膝部Kがニープロテクタ208に当たるとは限らない。
図3は、車両の前面衝突時における乗員の挙動を示す説明図であり、(a)は正規な姿勢の挙動を示しており、(b)は開脚時の挙動を示しており、(c)は閉脚時の挙動を示している。また、(d)は乗員Dの身体が右へ傾いているときの挙動を示し、(e)は乗員Dの身体が左へ傾いているときの挙動を示し、(f)は乗員Dがブレーキペダルを踏んでいるときの挙動を示している。
まず、図3(a)に示すように、乗員Dが正規の着座姿勢をとっている。ここで、車両の前面衝突が発生すると、左右膝部Kがダッシュパネル206へ当たる。このとき、右膝が当たる位置R1及び左膝が当たる位置L1は、それぞれ右側ニープロテクタ208a及び左側ニープロテクタ208bの配置位置と一致している。
また、図3(b)に示すように、乗員Dが開脚姿勢をとっている場合、車両の前面衝突が発生したとすると、左右膝部Kがダッシュパネル206へ当たる。このとき、膝部Kが当たる位置は、正規姿勢の場合と異なる。すなわち、開脚姿勢時に、右膝が当たる位置R2及び左膝が当たる位置L2は、それぞれ右側ニープロテクタ208a及び左側ニープロテクタ208bの配置位置から身体外側へずれている。
また、図3(c)に示すように、乗員Dが閉脚姿勢をとった場合、左右膝部Kがダッシュパネル206へ当たる位置は、正規姿勢の場合と異なる。すなわち、閉脚姿勢時に、右膝が当たる位置R3及び左膝が当たる位置L3は、それぞれ右側ニープロテクタ208a及び左側ニープロテクタ208bの配置位置から身体内側へずれている。
また、図3(d)に示すように、乗員Dが緊急回避のための車両旋回などをしようとして車両右側方向へ身体が傾いた場合、左右膝部Kがダッシュパネル206へ当たる位置は、正規姿勢の場合と異なる。すなわち、身体が右へ傾いたときに、右膝が当たる位置R4は、右側ニープロテクタ208aの配置位置から身体外側へずれ、左膝が当たる位置L4は、左側ニープロテクタ208bの配置位置から身体内側へずれている。
また、図3(e)に示すように、車両左側方向へ乗員Dの身体が傾いた場合、右膝が当たる位置R5は、右側ニープロテクタ208aの配置位置から身体内側へずれ、左膝が当たる位置L5は、左側ニープロテクタ208bの配置位置から身体外側へずれている。
さらに、図3(f)に示すように、乗員Dがブレーキペダル205aを踏んでいる場合、左膝が当たる位置L6は、左側ニープロテクタ208bの配置位置と一致している。しかし、右膝が当たる位置R6は、右側ニープロテクタ208aの配置位置から身体外側へずれている。
このように、乗員Dの姿勢によっては、ニープロテクタ208の配置位置に膝部Kが移動してこず、期待通りの効果が得られない場合がある。すなわち、乗員Dの姿勢に応じてニープロテクタ208が奏するはずの効果が左右されることとなり、安定した効果が期待できなくなってしまう。
さらに、乗員Dの姿勢によって、衝突時に乗員が感じる感覚についても異なってくる。図4は、ダッシュパネル等への干渉により膝部Kへ入力した荷重を示す説明図であり、(a)は正規姿勢時の様子を示しており、(b)は開脚時の様子を示しており、(c)は閉脚時の様子を示している。
これらの図に示すように、膝部Kへ入力した荷重は、大腿骨Tを通って股関節Hを介して骨盤Bへ伝達する。また、これらの図に示すように、正規姿勢時において、乗員Dの骨盤Bに対する大腿骨Tの角度は、θ1となっている。これに対し、開脚時では、乗員Dの骨盤Bに対する大腿骨Tの角度は、θ2となり、正規姿勢時よりも大きくなっている。また、閉脚時では、乗員Dの骨盤Bに対する大腿骨Tの角度は、θ3となり、正規姿勢時よりも小さくなっている。
ここで、車両乗員Dは、自己の背骨方向に加わる荷重に関して衝撃を感じにくいのに対し、背骨から外れる方向に関して衝撃を感じやすくなる傾向にある。このため、乗員の不快感等を考慮すると、乗員Dの骨盤に対する大腿骨の角度が小さい場合は、車両乗員Dにとって望ましいものとは言えない。
次に、本実施形態に係る乗員保護装置の具体的構成について説明する。図5は、本実施形態に係る乗員保護装置の構成図であり、(a)は全体構成を示し、(b)はシート202の周辺部構成を示し、(c)は車室内全体構成を示している。
図5(a)に示すように、本実施形態に係る乗員保護装置1は、車両の状態を検出する車両状態検出部(車両状態検出手段)10を備えている。また、乗員保護装置1は、車両の衝突を検出又は予測するための衝突検出部(衝突検出手段)20と、乗員の骨盤Bに対する大腿骨Tの角度を調整する姿勢矯正部(姿勢矯正手段)30と、上記ニープロテクタ208とを備えている。
車両状態検出部10は、具体的に走行速度及び前後左右の加速度のうち少なくとも一方を含む車両の走行状態を検出する走行状態検出センサを含んで構成されている。また、車両状態検出部10は、ステアリング204の急操舵及びペダル類205の急操作のうち少なくとも一方を検出する操作検出センサを含んで構成されている。
衝突検出部20は、レーダー及び超音波の少なくとも一方により非接触で障害物との距離を推定する距離推定センサと、衝撃及び急激な減速度の少なくとも一方から障害物との接触を検出する接触検出センサとを含んで構成されている。
また、図5(b)及び(c)に示すように、姿勢矯正部30は、エアバッグ31を有し、シート202の座面の略前下方に配置されている。エアバッグ31は、内部に高圧ガスが噴出されることにより、運転席及び助手席に着座した乗員の左右大腿部の間で膨張展開する袋体である。
さらに、乗員保護装置1は、車両状態検出部10と衝突検出部20とからの信号に基づいて、乗員の左右の大腿骨間距離が広がるように姿勢矯正部30を制御するコントローラ(制御手段)40を備えている。具体的にコントローラ40は、衝突時に損傷を受けにくい車両の中心付近に設置されており、所定の条件が成立すると姿勢矯正部30に対しエアバッグ31の展開指令信号を送出する構成とされている。
図6は、姿勢矯正部30の詳細を示す構成図であり、(a)はエアバッグ31の展開前における断面図であり、(b)はエアバッグ31の展開後における斜視図である。図6(a)に示すように、姿勢矯正部30の内部には、膨張展開可能なエアバッグ31が折り畳まれて格納されている。また、姿勢矯正部30の一側壁(展開側の壁)には、エアバッグ展開用の切欠部30a,30bが形成されている。エアバッグ31は、展開時に切欠部30a,30bに沿って一側壁を突き破って展開するようになっている。
また、切欠部30a,30bが形成される反対側内部には、インフレータ32が設けられており、エアバッグ31は、インフレータ32に接続されている。インフレータ32は、発火装置32aと火薬材32bとにより構成され、発火装置32aが上記展開指令信号を受けることにより火薬材32bを発火させる。これにより、火薬材32bは、高圧ガスとなってエアバッグ31内に噴出して膨張展開させる。
また、図6(b)に示すように、エアバッグ31が全展開すると、排気口33が現れる。そして、エアバッグ31内のガスは、展開後、排気口33を通って排出されるようになっている。
このような乗員保護装置1においては、まず、車両状態検出部10の1つである走行状態検出センサが走行速度、前後左右の加速度などを含む車両の走行状態を検出する。また、車両状態検出部10の1つである操作検出センサが、ステアリング204の急操舵やペダル類205の急操作を検出する。そして、車両状態検出部10は、これらの情報をコントローラ40に送信する。
送信後、コントローラ40は、走行状態検出センサ及び操作検出センサの情報を集約分析して、車両が緊急状態にあるか否かを判断する。すなわち、コントローラ40は、前面衝突発生時に、車両乗員Dが前方に移動してダッシュパネル206まで達する程度の状態(緊急状態)にあるか否かを判断する。例えば、車速が数キロメートルである場合など、前面衝突したとしても車両乗員Dの膝部Kはダッシュパネル206まで到達しない。このような場合、コントローラ40は、車両が緊急状態でないと判断する。
また、衝突検出部20は、距離推定センサにて障害物との距離を推定している。距離推定センサは、推定距離に関する信号を常時コントローラ40に供給しており、コントローラ40は、距離推定センサからの信号と上記車両状態検出部10からの信号とに基づいて、車両の衝突を予測する。例えば、コントローラ40は、距離推定センサからの信号により障害物までの距離が「100m」と判断したとする。この場合、コントローラ40は、車両状態検出部10からの信号に基づいて得られた車速が「5km/h」のときには衝突しないと予測し、得られた車速が「100km/h」のときには衝突すると予測する。
さらに、衝突検出部20は、接触検出センサにより実際の衝突を検出している。すなわち、接触検出センサは、常時、衝撃及び急激な減速度の少なくとも一方から障害物の接触等を検出しており、接触等が検出された際にはコントローラ40にその旨を示す信号を送信する。そして、コントローラ40は、接触が検出されたことを示す信号を受信すると、車両の衝突があったことを検出する。
衝突を検出又は予測した後、コントローラ40は、車両が緊急状態にあるか否かを判断する。そして、緊急状態にある場合、コントローラ40は姿勢矯正部30に対してエアバッグ31の展開指令を送出する。これにより、姿勢矯正部30では、発火装置32aが火薬材32bを発火させ、発火により発生した高圧ガスがエアバッグ31を展開させる。
図7は、姿勢矯正部30が作動するときの様子を示す説明図であり、(a)は作動前の様子を示し、(b)は作動後の様子を示している。まず、図7(a)に示すように、車両乗員Dは、正規の状態でそれぞれ運転席及び助手席に着座している。このとき、上記コントローラ40が衝突を検出又は予測したとすると、図7(b)に示すように、姿勢矯正部30が作動する。
ここで、姿勢矯正部30は、エアバッグ31を有し、シート202座面の略前下方に配置されている。このため、姿勢矯正部30が作動してエアバッグ31が展開すると、エアバッグ31は乗員Dの膝部Kの間で展開して、膝部Kを身体外側に移動させることとなる。すなわち、乗員Dは、左右大腿骨先端の位置がいずれも骨盤内の腸骨側端より身体外側になるように制御される。これにより、衝突に際し乗員Dが感じる衝撃は、比較的抑えられることとなる。
ここで、エアバッグ31は、適度な大きさに展開し、乗員Dの膝部Kがニープロテクタ208の身体外側に外れない程度にされている。このため、衝突に際して、乗員Dの膝部Kがダッシュパネル206に当たったとしても、膝部Kは柔らかく受け止められることとなる。
図8は、本実施形態に係る乗員保護装置1の動作の一例を示すフローチャートである。なお、図8では、車両の衝突を予測判断せず、実際の衝突のみを判断するものとする。
まず、図8に示すように、コントローラ40は、車両状態のセンシングを開始させる(ST10)。これにより、車両状態検出部10は、車両状態を検出することとなる。
その後、コントローラ40は、変数Sを「0」に初期化し(ST11)、さらに、変数S1を「0」に初期化する(ST12)。そして、コントローラ40は、車両状態検出部10にて検出された車速信号を入力する(ST13)。
次いで、コントローラ40は、車速信号から車速Vを求め、この車速Vが予め記憶されている車速値Vcrを超えるものであるか否かを判断する(ST14)。超えると判断した場合(ST14:YES)、コントローラ40は、変数S1に「1」を代入し(ST15)、処理はステップST20に進む。一方、超えないと判断した場合(ST14:NO)、変数S1に「1」が代入されることなく、処理はステップST20に進む。
また、これらステップST12〜ST15の処理が行われる一方で、コントローラ40は、変数S2を「0」に初期化する(ST16)。そして、コントローラ40は、衝突検出部20にて検出された信号を入力する(ST17)。
その後、コントローラ40は、衝突検出部20からの信号に基づいて、衝突が発生したか否かを判断する(ST18)。発生したと判断した場合(ST18:YES)、コントローラ40は、変数S2に「1」を代入し(ST19)、処理はステップST20に進む。一方、発生していないと判断した場合(ST18:NO)、変数S2に「1」が代入されることなく、処理はステップST20に進む。
ステップST20において、コントローラ40は、変数S1と変数S2との論理乗算により、変数Sを求める(ST20)。そして、コントローラ40は、変数Sが「0」を超えるか否かを判断する(ST21)。すなわち、変数S1及び変数S2が共に「1」であるか否かを判断する。
ここで、変数Sが「0」を超えないと判断した場合(ST21:NO)、処理はステップST12,16に戻る。一方、変数Sが「0」を超えると判断した場合(ST21:YES)、コントローラ40は、エアバッグ展開指令信号を送出する(ST22)。これにより、エアバッグ31は展開し、乗員Dの左右大腿骨先端の位置がいずれも骨盤内の腸骨側端より身体外側になるように制御される。
このようにして、本実施形態に係る乗員保護装置1によれば、車速等から車両状態を検出する一方で、衝突を検出又は予測する。このため、例えば、急激な加速度変化により乗員が車両前方に移動してダッシュパネル206に膝部が当たってしまうような場合を検出することができる。また、このような場合に、乗員Dの左右の大腿骨間距離が広がるように制御するので、乗員を或る決まった姿勢にすることができる。このため、乗員の各状態に応じて効果が左右されることがなく、安定した効果が期待できる乗員保護装置を提供することができる。
また、膨張展開可能な袋体を用いて膨張展開させることにより、乗員Dの姿勢制御を行うようにしているので、広く普及しているエアバッグ部品を流用して、安価に本装置1を実現することができる。
また、車両状態を検出する際の情報入力手段として、走行速度や前後左右の加速度など車両の走行状態を検出する走行状態検出センサや、ステアリング204の急操舵やペダル類205の急操作を検出する操作検出センサを用いている。このため、オートクルーズ装備やプレビュー・ブレーキ装備などとセンサを共有することができる。
また、衝突時等において、乗員Dの左右大腿骨先端の位置がいずれも骨盤内の腸骨側端より身体外側になるように制御するので、衝突の際の衝撃を乗員Dに感じさせ難くすることができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る乗員保護装置2は、第1実施形態のものと同様であるが、新たに姿勢検出部(姿勢検出手段)50及び重量センサ60を備える点で、第1実施形態のものと異なっている。また、姿勢矯正部30の構成も一部異なっている。さらには、コントローラ40の処理内容も一部異なっている。
以下、第1実施形態との相違点について説明する。図9は、第2実施形態に係る乗員保護装置2の構成図であり、(a)は全体構成を示し、(b)はシート202の周辺部構成を示し、(c)は車室内全体構成を示している。
図9(a)及び(c)に示すように、姿勢検出部50は、乗員Dの着座姿勢、具体的に乗員Dの開脚姿勢を検出するためのものである。姿勢検出部50は、着座した乗員の略上方もしくは略前方に配されている。
また、姿勢検出部50は、超音波センサ又は電磁場センサを含んで構成されている。これらセンサは、送信器と受信器とにより構成され、送信器から超音波又は電磁波を発し、跳ね返ってきた超音波又は電磁波を受信器にて受信し、波形イメージや信号レベルを検出するものである。
さらに、姿勢検出部50は、コントローラ40に接続されており、計測した波形イメージや信号レベルの情報をコントローラ40に伝える構成とされている。
また、図9(a)及び(b)に示すように、重量センサ60は、乗員Dの着座を検出するためのものである。具体的に、重量センサ60は、シート202の座面に設けられている。
また、重量センサ60は、荷重が加わると、その荷重を電気信号に変換して計測するものである。さらに、重量センサ60は、コントローラ40に接続されており、計測した荷重の情報をコントローラ40に伝える構成とされている。
図10は、第2実施形態の姿勢矯正部30の詳細を示す構成図であり、(a)はエアバッグ34の展開前における断面図であり、(b)はエアバッグ34の展開後における斜視図である。図10(a)に示すように、姿勢矯正部30は、左右に2つのエアバッグ34を含み、それぞれのエアバッグ34を収納するように2分割された対象構造になっている。
エアバッグ34は、ゴム等の超弾性の素材が用いられており、内部にガスが供給されていないときには収縮して折り畳まれることなく格納されている。両エアバッグ34の中間部には、高圧ガス封入ボンベ35が装備されている。この高圧ガス封入ボンベ35は、配管38a,38bを通じてエアバッグ34の内部につながっている。また、配管38a,38bは、姿勢矯正部30の外部へも通じており、外部への排気管としての役割を果たしている。
さらに、配管38a,38Bの中央部、具体的に高圧ガス封入ボンベ35とエアバッグ34との間には、封入弁36a,36bが設けられている。この封入弁36a,36bは、ボンベ35からエアバッグ34へ流れ込む高圧ガスの量を制御する機能を有している。
また、配管38a,38Bの中央部、具体的にエアバッグ34と外部との間には、排出弁37a,37bが設けられている。この排出弁37a,37bは、エアバッグ34内部から外部へ排出される高圧ガスの量を制御する機能を有している。
また、これら弁41a,41b,42a,42bは、コントローラ40に制御される構成とされており、コントローラ40からの信号に従って開閉する。この開閉動作により、エアバッグ34は、高圧ガスを導入して図10(b)に示すように膨張すると共に、高圧ガスを排出して収縮することとなる。
また、姿勢矯正部30の一側壁(展開側の壁)には、エアバッグ展開用の切欠部30a,30bが形成されている。このため、エアバッグ31は、展開時に切欠部30a,30bを突き破って展開するようになっている。さらに、上記一側壁には、高弾性樹脂が用いられている。このため、エアバッグ34が切欠部30a,30bを突き破って展開した場合、一側壁は、図10(b)に示すように弾性変形するのみで、破壊されることはない。そして、一側壁は、エアバッグ34から高圧ガスが排出されると、再度、図10(a)に示すように収縮したエアバッグ34を格納するようになっている。
また、姿勢矯正部30は、高圧ガス封入ボンベ35に通じる配管39が一側面から設けられており、エアバッグ34が複数回展開等されてガス量が減少した際にガスを充填できるようになっている。
このような乗員保護装置2においては、車両状態検出部10及び衝突検出部20からの信号により、第1実施形態と同様の処理が行われる。さらに、本実施形態では、姿勢検出部50は、乗員Dの開脚姿勢を検出すべく、超音波又は電磁波を出力して波形イメージや信号レベルを検出する。そして、姿勢検出部50は、これらの情報をコントローラ40に送信する。
送信後、コントローラ40は、超音波センサ又は電磁場センサから出力される波形イメージ又は信号レベルを、予め登録された開脚状態ごとの波形パターン又は信号レベルと照合する。そして、コントローラ40は、照合結果に基づいて乗員Dの開脚姿勢を検出する。
その後、コントローラ40は、車両状態検出部10、衝突検出部20及び姿勢検出部50からの信号に基づいて、必要な部位にあるエアバッグ34を展開する。すなわち、コントローラ40は、車両状態検出部10と衝突検出部20とからの信号によりエアバッグ展開の必要性を判断し、姿勢検出部50からの信号により乗員Dの姿勢を検出して、乗員Dの開脚姿勢に応じた姿勢矯正部30の制御を行う。
具体的にコントローラ40は、上記封入弁41a,41bを制御することにより、2つのエアバッグ34内の高圧ガスの量を調整する。この調整により、例えば、衝突時に乗員Dの右膝がニープロテクタ208に当たる位置にある場合には、右膝を矯正する制御を行わないこととなる。一方、左膝が適正位置にない場合には、左膝を適正位置にするように積極的に制御を行うこととなる。つまり、必要な部位にあるエアバッグ34のみを膨張展開させて、一層適切な矯正を行うこととしている。
さらに、エアバッグ34が既に展開している場合には、コントローラ40は、排出弁42a,42bを制御することにより、2つのエアバッグ34内の高圧ガスの量を調整する。この調整によっても同様に、一層適切な矯正を行うことができる。
また、重量センサ60は、乗員Dの重量を検出する。そして、重量センサ60は、この情報をコントローラ40に送信する。送信後、コントローラ40は、重量値に基づいて乗員Dが着座しているか否かを判断する。そして、コントローラ40は、乗員Dが着座していないと判断した場合、例えば助手席に乗員Dがいない場合など、姿勢矯正部30に展開指令信号を送出しないこととする。
また、本実施形態において、コントローラ40は、衝突検出部20の1つである距離推定センサと、車両状態検出部10とからの信号に基づいて、衝突回避可能か否かを判断する。ここで、回避可能な場合に、エアバッグ34を展開してしまうと、乗員Dの運転操作を邪魔することになりかねない。そこで、コントローラ40は、衝突回避可能か否かの要因によって、エアバッグ34の展開が必要であるか否かを判断し、必要であればエアバッグ34を展開する。
図11〜図13は、本実施形態に係る乗員保護装置2の動作の一例を示すフローチャートであり、図11はメインフローを示し、図12は後述の変数Svを求めるサブフローを示し、図13は後述の姿勢変数Pを求めるサブフローを示している。
コントローラ40は、車両状態のセンシングを開始させる(ST30)。これにより、車両状態検出部10は、車両状態を検出することとなる。その後、コントローラ40は、乗員姿勢のセンシングを開始させる(ST31)。これにより、姿勢検出部50は、乗員Dの姿勢を検出することとなる。
そして、コントローラ40は、変数Svを入力する(ST32)。ここで、変数Svは、上記ステップST30からステップST32に至るまでの間に、図12に示す処理ルーチンにより求められている。
図12に示すように、ステップST30において車両状態のセンシングが開始された後、コントローラ40は、衝突検出部20のうち接触検出センサからの信号に基づいて、実際に衝突が発生したか否かを判断する(ST50)。発生したと判断した場合(ST50:YES)、後述する図18の処理に移行する。
一方、発生していないと判断した場合(ST50:NO)、コントローラ40は、変数Seを「0」に初期化する(ST51)。そして、コントローラ40は、車両状態検出部10から、車速や加速度などの車両状態を示す信号を入力する(ST52)。
次いで、コントローラ40は、車両状態を示す信号に基づいて、緊急状態にあるか否かを判断する(ST53)。緊急状態にあると判断した場合(ST53:YES)、コントローラ40は、変数Seに「1」を代入し(ST54)、処理はステップST59に進む。一方、緊急状態にないと判断した場合(ST53:NO)、変数Seに「1」が代入されることなく、処理はステップST59に進む。
また、これらステップST51〜ST54の処理が行われる一方で、コントローラ40は、変数Saを「0」に初期化する(ST55)。そして、コントローラ40は、衝突検出部20のうち距離推定センサからの信号を入力する(ST56)。
その後、コントローラ40は、距離推定センサからの信号と、車両状態検出部10からの信号とに基づいて、衝突回避可能か否かを判断する(ST57)。例えば、コントローラ40が、距離推定センサの信号から障害物までの距離が「10m」と判断し、車両状態検出部10の信号から車速を「100km/h」と判断したとする。このような場合、コントローラ40は、衝突回避が可能でないと判断する。
回避可能でないと判断した場合(ST57:NO)、コントローラ40は、変数Saに「1」を代入し(ST58)、処理はステップST59に進む。一方、回避可能であると判断した場合(ST57:YES)、変数Saに「1」が代入されることなく、処理はステップST59に進む。
ステップST59において、コントローラ40は、変数Seと変数Saとの論理和により、変数Svを求める(ST59)。そして、コントローラ40は、変数Svが「1」を超えるか否かを判断する(ST60)。すなわち、変数Se及び変数Saが共に「1」であるか否かを判断する。
ここで、変数Svが「1」を超えると判断した場合(ST60:YES)、処理は後述する図18に移行する。一方、変数Svが「1」を超えないと判断した場合(ST60:NO)、すなわち、変数Svが「1」又は「0」である場合、コントローラ40は、危険状態であるが回避可能である又は危険状態でないなどと判断する。そして、コントローラ40は、変数Svの値を出力し(ST42)、処理は図11のステップST32に戻る。
図11のステップST32において変数Svを入力した後、コントローラ40は、変数Svが「0」を超えるか否かを判断する(ST33)。「0」を超えないと判断した場合(ST33:NO)、すなわち、変数Svが「0」のとき、そもそも緊急状態ですらなく、エアバッグ34の展開の必要性がないことから、処理はステップST32に戻る。これにより、コントローラ40は、再度Svを求める処理、すなわちステップST50〜ST61の処理を実行することとなる。
一方、「0」を超えると判断した場合(ST33:YES)、コントローラ40は、姿勢変数Pを入力する(ST34)。ここで、姿勢変数Pは、上記ステップST31からステップST33に至るまでの間に、図13に示す処理ルーチンにより求められている。
図13に示すように、ステップST31において乗員姿勢のセンシングが開始された後、コントローラ40は、重量センサ60からの重量値に関する信号を入力する(ST70)。そして、コントローラ40は、この重量値に基づき乗員Dが存在するか否かを判断する(ST71)。乗員Dが存在すると判断した場合(ST71:YES)、コントローラ40は、姿勢検出部50からの信号を入力する(ST72)。その後、処理はステップST74に至る。
一方、乗員Dが存在しないと判断した場合(ST71:NO)、コントローラ40は、姿勢変数Pを「0」とする(ST73)。そして、処理はステップST74に移行する。
ステップST74において、コントローラ40は、姿勢変数Pを設定する(ST74)。ここで、ステップST73において姿勢変数Pが「0」とされている場合は、そのまま値を保持し、ステップST72において、姿勢検出部50からの信号を入力した場合は、その信号に基づく値を設定する。
姿勢変数Pは、例えば、「0」〜「6」までの数値で設定される。ここで、Pが「0」とは乗員Dが存在しないことを示し、Pが「1」とは乗員Dが正規の姿勢であることを示し、Pが「2」とは乗員Dが開脚姿勢であることを示し、Pが「3」とは乗員Dが閉脚姿勢であることを示している。また、Pが「4」とは乗員Dが右傾斜姿勢であることを示し、Pが「5」とは乗員Dが左傾斜姿勢であることを示し、Pが「6」とは乗員Dがブレーキペダル205a等を操作している操作姿勢であることを示している。
コントローラ40は、ステップST72において、検出した乗員Dの開脚姿勢から適切な姿勢変数Pを選択して設定する。具体的には、図14に示すように設定する。
図14は、姿勢変数Pの設定処理(ST74)の説明図であり、(a)は乗員Dが開脚姿勢であるときの様子を示し、(b)は開脚姿勢であるときの膝位置と予め登録された正規の姿勢であるときの膝位置との関係を示している。また、(c)は乗員Dが閉脚姿勢であるときの様子を示し、(d)は閉脚姿勢であるときの膝位置と予め登録された正規の姿勢であるときの膝位置との関係を示している。さらに、(e)は乗員Dが正規の姿勢であるときの様子を示し、(f)は正規の姿勢であるときの膝位置と予め登録された正規の姿勢であるときの膝位置との関係を示している。
まず、これらの図において姿勢検出部50からの信号により検出された乗員Dの右膝の位置はKaであり、左膝の位置はKbである。さらに、予め登録された正規の右膝位置はKrであり、左膝位置はKlである。
図14(a)及び(b)に示す例の場合、乗員Dの膝位置はKa,Kbは、両者とも予め登録された正規の膝位置Kr,Klの身体外側にある。このため、姿勢検出部50からの信号により、コントローラ40は、乗員Dが開脚姿勢であると検出する。そして、コントローラ40は、姿勢変数Pを「2」に設定する。
また、図14(c)及び(d)に示す例の場合、乗員Dの膝位置はKa,Kbは、両者とも予め登録された正規の膝位置Kr,Klの身体内側にある。このため、姿勢検出部50からの信号により、コントローラ40は、乗員Dが閉脚姿勢であると検出する。そして、コントローラ40は、姿勢変数Pを「3」に設定する。
また、図14(e)及び(f)に示す例の場合、乗員Dの右膝位置はKaは、予め登録された正規の右膝位置Krの身体外側にある。一方、左膝位置Kbは、予め登録された正規の左膝位置Klの身体内側にある。このため、姿勢検出部50からの信号により、コントローラ40は、乗員Dが右傾斜姿勢であると検出する。そして、コントローラ40は、姿勢変数Pを「4」に設定する。
このように、ステップST74では、姿勢変数Pを設定する。そして、処理は図11に示すステップST35に移行する。
図11に示すステップST35において、コントローラ40は、エアバッグの膨張率を決定する(ST35)。具体的に膨張率の決定は、図15に示す処理により行われる。図15は、図11に示す膨張率決定処理(ST35)の詳細を示すフローチャートである。
図15のステップST80に示すように、コントローラ40は、姿勢変数Pの値を判定する(ST80)。すなわち、図13に示すステップST74にて設定された姿勢変数Pがどの値であるかを判定する。
姿勢変数Pが「0」であると判断した場合(ST81)、コントローラ40は、乗員Dが存在していないことから、両エアバッグ34の膨張率を示す作動レベルLR,LLの双方に「0」を代入する。ここで、作動レベルLR,LLが「0」である場合とは、エアバッグ34を展開させず、収縮した状態とすることを示している。
また、姿勢変数Pが「1」であると判断した場合(ST83)、コントローラ40は、乗員Dが正規の姿勢であることから、両エアバッグ34の膨張率を示す作動レベルLR,LLの双方に「1」を代入する(ST84)。ここで、作動レベルLR,LLが「1」である場合とは、エアバッグ34を中程度膨張させた状態とすることを示している。すなわち、乗員Dが既に正規の姿勢であることから、乗員Dの膝部Kが正規の位置からずれないようにするため、中程度だけ両エアバッグ34を膨張させて、膝部Kを保持するようにしている。
また、姿勢変数Pが「2」であると判断した場合(ST85)、コントローラ40は、乗員Dが開脚姿勢であることから、両エアバッグ34の膨張率を示す作動レベルLR,LLの双方に「1」を代入する(ST86)。すなわち、乗員Dが開脚姿勢であるため、乗員Dが膝を身体内側に移動させたときに膝部Kの位置が正規位置で止まるように、中程度だけ両エアバッグ34を膨張させるようにしている。
また、姿勢変数Pが「3」であると判断した場合(ST87)、コントローラ40は、乗員Dが閉脚姿勢であることから、両エアバッグ34の膨張率を示す作動レベルLR,LLの双方に「2」を代入する(ST88)。ここで、作動レベルLR,LLが「2」である場合とは、エアバッグ34を最大レベルまで膨張させた状態とすることを示している。すなわち、乗員Dが閉脚姿勢であることから、乗員Dの膝部Kを素早く正規の位置に移動させるべく、両エアバッグ34を最大レベルで膨張させるようにしている。
また、姿勢変数Pが「4」であると判断した場合(ST89)、コントローラ40は、乗員Dが右側傾斜姿勢であることから、右エアバッグ34の膨張率を示す作動レベルLRに「1」を代入し、左エアバッグ34の膨張率を示す作動レベルLLに「2」を代入する(ST90)。すなわち、乗員Dが右側傾斜姿勢であることから、乗員Dの左膝を素早く正規の位置に移動させるべく、左エアバッグ34を最大レベルで膨張させるようにしている。また、乗員Dが右側傾斜姿勢である場合、乗員Dの右膝は既に正規位置又は正規位置より身体外側にあることから、右エアバッグ34を中程度だけ膨張させて、右膝をの身体内側への移動を規制するようにしている。
また、姿勢変数Pが「5」であると判断した場合(ST91)、コントローラ40は、乗員Dが左側傾斜姿勢であることから、右エアバッグ34の膨張率を示す作動レベルLRに「2」を代入し、左エアバッグ34の膨張率を示す作動レベルLLに「1」を代入する(ST92)。すなわち、乗員Dが左側傾斜姿勢であることから、乗員Dの右膝を素早く正規の位置に移動させるべく、右エアバッグ34を最大レベルで膨張させるようにしている。また、乗員Dが左側傾斜姿勢である場合、乗員Dの左膝は既に正規位置又は正規位置より身体外側にあることから、左エアバッグ34を中程度だけ膨張させて、左膝の身体内側への移動を規制するようにしている。
また、姿勢変数Pが「6」であると判断した場合(ST93)、乗員Dがブレーキペダル205a等の操作をしている操作姿勢であることから、コントローラ40は、右エアバッグ34の膨張率を示す作動レベルLRに「0」を代入し、左エアバッグ34の膨張率を示す作動レベルLLに「1」を代入する(ST94)。
すなわち、乗員Dが操作姿勢であることから、乗員Dのブレーキペダル205a等の操作を阻害しないように、ブレーキペダル205a等の操作側(具体的には右エアバッグ34)を部分的に抑制(具体的には展開させないように)している。また、乗員Dが操作姿勢である場合、乗員Dの左膝は既に正規位置又は正規位置より身体外側にあることから、左エアバッグ34を中程度だけ膨張させて、左膝の身体内側への移動を規制するようにしている。
上記のように図15に示す処理では、乗員Dの姿勢状態に応じて、作動レベルLR,LLを設定している。そして、その作動レベルLR,LLに基づいてエアバッグ34の展開の程度及び収縮を決定している。
このように、エアバッグ34を中程度に展開したり最大レベルまで展開したりすることは、言い換えれば、姿勢矯正部30の姿勢矯正に関する作動力を変化させているとも言える。すなわち、エアバッグ34を中程度に展開した場合、作動力を弱めており、エアバッグ34を最大レベルまで展開した場合、作動力を強めていることとなる。
ここで、エアバッグ34の展開及び収縮の様子を説明する。図16は、エアバッグ34の展開及び収縮の様子を示す説明図であり、(a)は作動レベルLR,LLが「0」のときの様子を示している。また、(b)は作動レベルLR,LLが「1」のときの様子を示し、(c)は作動レベルLR,LLが「2」のときの様子を示している。
まず、図16(a)に示すように、作動レベルLR,LLが「0」のときには、左右のエアバッグ34の双方が展開せず収縮した状態となっている。また、図16(b)に示すように、作動レベルLR,LLが「1」のときには、左右のエアバッグ34の双方が中程度だけ膨張した状態となっている。この場合、上記したように、乗員Dの膝部Kは、身体内側へ移動できないように規制された状態となっている。
また、図16(c)に示すように、作動レベルLR,LLが「2」のときには、左右のエアバッグ34の双方が最大レベルまで膨張した状態となっている。この場合、上記したように、乗員Dの膝部Kは、強制的に身体外側へ移動させられることとなる。
そして、上記のように作動レベルLR,LLを決定した後、処理は、図11に示すステップST36に移行する。ステップST36において、コントローラ40は、エアバッグ34の状態を入力する(ST36)。すなわち、現在、エアバッグ34が展開状態にあるか、収縮状態にあるかなどの情報を入力することとなる。
そして、コントローラ40は、ステップST35にて決定された膨張率と、ステップST36にて入力されたエアバッグ34の状態とに基づいて、エアバッグ34の作動指令をする。具体的に作動指令は、図17に示す処理により行われる。図17は、図11に示す作動指令処理(ST37)の詳細を示すフローチャートである。
図17に示すように、まず、コントローラ40は、右側の封入弁36a及び排出弁37aを制御することを決定する(ST100)。そして、コントローラ40は、制御方法を決定する(ST101)。具体的には、「R%=LR−OR」の演算を行って、制御方法を決定する。ここで、値ORとは、図11のステップST36にて入力された現在の右エアバッグ34の状態である。右エアバッグ34が既に最大レベルまで膨張している場合、ORの値は「2」となり、右エアバッグ34が中程度に膨張している場合、ORの値は「1」となる。また、右エアバッグ34が収縮している場合、ORの値は「0」となる。
その後、コントローラ40は、右エアバッグ34に対する高圧ガスの調整方法を求める(ST102)。具体的には、上記演算式により得られたR%の値によって、調整方法を決定する。そして、演算式により得られたR%が「2」の場合、ガス噴出量を多量とする。また、R%が「1」の場合、ガス噴出量を少量とする。R%が「0」の場合、ガスの噴出を無しとする。さらに、R%が「−1」の場合、ガスを排出する。なお、図17のフローチャートには示していないが、R%が「−2」の場合も同様にガスを排出する。
そして、コントローラ40は、求めた高圧ガスの調整方法に従って、右エアバッグ34を展開又は収縮させる。その後、コントローラ40は、LRの値をORの値とする(ST103)。すなわち、右エアバッグ34の展開又は収縮後の状態を、現在のエアバッグ34の状態として記憶しておく。そして、処理は図11に示すステップST38に移行する。
また、これらステップST100〜ST103の処理が行われる一方で、コントローラ40は、左エアバッグ34の制御を行う。すなわち、まず、コントローラ40は、左側の封入弁36b及び排出弁37bを制御することを決定し(ST104)、制御方法を決定する(ST105)。制御方法は、上記ステップST101と同様に、「L%=LL−OL」の演算により決定される。値OLは、図11のステップST36にて入力された現在の左エアバッグ34の状態である。また、OLの値は、右エアバッグ34の現在の状態を示すOR同様である。つまり、最大レベルまで膨張している場合、LRの値は「2」となる。他の場合も同様である。
そして、コントローラ40は、左エアバッグ34に対する高圧ガスの調整方法を求める(ST106)。この処理においても、右エアバッグ34と同様に調整方法が決定される。その後、コントローラ40は、求めた高圧ガスの調整方法に従って、左エアバッグ34を展開又は収縮させ、LLの値をOLの値とする(ST107)。そして、処理は図11に示すステップST38に移行する。
このように、本装置2では、車両状態検出部10及び衝突検出部20からの信号に基づいて変数Svを決定し、変数Svが所定の条件を満たすときに、姿勢検出部50からの信号に基づいて姿勢変数Pを決定する。そして、姿勢変数Pから作動レベルLR,LLを求め、これら作動レベルLR,LLと現在のエアバッグ34の状態とに基づいて、エアバッグ34の内部にガスを噴出したり排出したりしている。
ここで、図15に示す処理では、作動レベルLR,LLを部分的に抑制していたが、部分的抑制は、作動レベルLR,LLに限らず、R%,L%などの作動状態であってもよい。つまり、作動レベルLR,LLを抑制するのでなく、ブレーキペダル等の操作姿勢にあるときには、R%が「2」と算出されたのにもかかわらず、R%を「0」とすることで、部分的に右エアバッグ34のみ作動状態を抑制するようにしてもよい。
図11のステップST38において、コントローラ40は、衝突検出部20のうち接触検出センサからの信号に基づいて、実際に衝突が発生したか否かを判断する(ST38)。発生したと判断した場合(ST38:YES)、後述する図18の処理に移行する。一方、発生していないと判断した場合(ST38:NO)、コントローラ40は、衝突検出部20のうち距離推定センサからの信号に基づいて、衝突が回避されたか否かをを判断する(ST39)。衝突が回避されていないと判断した場合(ST39:NO)、処理はステップST34に戻る。これにより、コントローラ40は、再度姿勢変数Pを求めてエアバッグ34の膨張率の決定処理など、すなわちステップST70〜ST74,ST35〜38の処理を実行することとなる。
衝突が回避されたと判断した場合(ST39:YES)、コントローラ40は、エアバッグ34を収縮させて格納する(ST40)。そして、処理はステップST32に戻る。
ここで、ステップST38にて衝突発生が検出され、又は、ステップST50にて衝突発生が検知された場合の処理について説明する。図18は、衝突発生時の処理を示すフローチャートである。
まず、コントローラ40は、右側の封入弁36a及び排出弁37aを制御することを決定する(ST110)。そして、コントローラ40は、制御方法を決定する(ST111)。具体的には、「R%=2−OR」の演算を行って、制御方法を決定する。この演算によれば、エアバッグ34は常に最大レベルまで膨張させられることとなる。
その後、コントローラ40は、上記演算式により得られたR%の値に従って、高圧ガスを右エアバッグ34内に噴出させる。すなわち、上記ステップST102,ST106と同様に、R%が「2」の場合、ガス噴出量を多量とし、R%が「1」の場合、ガス噴出量を少量とする。そして、コントローラ40は、右エアバッグ34を展開させる。その後、処理はステップST114に移行する。
一方、ステップST110,ST111の処理が行われる一方で、コントローラ40は、左側の封入弁36b及び排出弁37bを制御することを決定する(ST112)。そして、コントローラ40は、制御方法を決定する(ST113)。具体的には、「L%=2−OL」の演算を行って、制御方法を決定する。この演算によっても、エアバッグ34は常に最大レベルまで膨張させられることとなる。
その後、コントローラ40は、上記演算式により得られたL%の値に従って、高圧ガスを左エアバッグ34内に噴出させる。ここで、L%が「2」の場合、ガス噴出量を多量とし、L%が「1」の場合、ガス噴出量を少量とする。そして、コントローラ40は、左エアバッグ34を展開させる。その後、処理はステップST114に移行する。
ステップST114において、コントローラ40は、数秒程度待機し、待機後にR%及びL%を「−1」とする。すなわち、コントローラ40は、左右のエアバッグ34内のガスを排出するように排出弁37a,37bを制御する。そして、排出が完了すると、処理は終了する。
次に、噴出されるガス量を時系列的に説明する。図19は、衝突が予測されたとき及び衝突が発生したときに、エアバッグ34内に噴出されるガス量を示す説明図であり、(a)は衝突予測後に衝突が回避されたときの例を示し、(b)は衝突予測後に衝突が発生したときの例を示している。また、(c)は衝突予測なく衝突が発生したときの例を示し、(d)は衝突予測後に衝突が回避され、その後衝突が発生したときの例を示している。
なお、上記フローチャート等では、衝突が予測された場合、乗員Dの姿勢に応じて、ガス多量噴出、ガス少量噴出及びガス噴出無しのいずれかが選択されるが、図19においては衝突が予測された場合、すべてガスを少量だけ噴出するものとする。
まず、図19(a)に示すように、緊急状態ながらも衝突回避可能と判断された場合(すなわち上記変数Svが「1」の場合)、まず、衝突が予測された時点で、少量のガスがエアバッグ34に噴出される。その後、衝突が回避可能と判断されると、ガス量無しの状態となる。すなわち、エアバッグ34内部のガスが排出される。
また、図19(b)に示す例の場合、まず、衝突が予測されと、この時点で少量のガスがエアバッグ34に噴出される。その後、衝突が発生すると、再度ガスが噴出されエアバッグ34の内部には多量のガスが供給されることとなる。
また、図19(c)に示す例の場合、まず、衝突が予測されていないので、エアバッグ34内にはガスが供給されていない。その後、衝突が発生すると、瞬時にガスが噴出され、エアバッグ34は最大レベルまで膨張する。すなわち、エアバッグ34の内部に多量のガスを噴出することとなる。
また、図19(d)に示す例の場合、まず、衝突が予測されると、この時点で少量のガスがエアバッグ34に噴出される。その後、衝突が回避可能と判断されると、ガス量無しの状態となる。しかし、この後に衝突が回避できなかった場合、瞬時にガスが噴出され、エアバッグ34は最大レベルまで膨張する。すなわち、エアバッグ34の内部に多量のガスを噴出することとなる。
次に、乗員Dの着座姿勢に基づくエアバッグ34の展開の様子を説明する。図20は、乗員Dの着座姿勢に基づくエアバッグ34の展開の説明図であり、(a)は閉脚姿勢の展開前の様子を示しており、(b)は閉脚姿勢の展開後の様子を示している。また、(c)は右側傾斜姿勢の展開前の様子を示しており、(d)は右側傾斜姿勢の展開後の様子を示している。さらに、(e)は操作姿勢の展開前の様子を示しており、(f)は操作姿勢の展開後の様子を示している。
まず、図20(a)に示す例の場合、コントローラ40は、姿勢検出部50からの信号に基づいて、乗員Dが閉脚状態であることを検出する。そして、閉脚状態のとき、コントローラ40は、姿勢変数Pを「3」とする。このため、図15に示すように、作動レベルLR,LLは、双方とも「2」とされる。そして、エアバッグ34は、図20(b)に示すように、最大レベルまで膨張させられることとなる。
また、図20(c)に示す例の場合、コントローラ40は、姿勢検出部50からの信号に基づいて、乗員Dが右側傾斜状態であることを検出する。そして、右側傾斜状態のとき、コントローラ40は、姿勢変数Pを「4」とする。このため、図15に示すように、作動レベルLRは「1」とされ、作動レベルLLは「2」とされる。そして、エアバッグ34は、図20(d)に示すように、右エアバッグ34を中程度に膨張させ、左エアバッグ34を最大レベルまで膨張させる。
また、図20(e)に示す例の場合、コントローラ40は、姿勢検出部50からの信号に基づいて、乗員Dが操作状態であることを検出する。そして、操作状態のとき、コントローラ40は、姿勢変数Pを「6」とする。このため、図15に示すように、作動レベルLRは「0」とされ、作動レベルLLは「1」とされる。そして、エアバッグ34は、図20(f)に示すように、右エアバッグ34を膨張させず、左エアバッグ34を中程度まで膨張させる。
このようにして、本実施形態に係る乗員保護装置2によれば、第1実施形態と同様に安定した効果が期待できる乗員保護装置を提供することができ、安価に本装置を実現することができ、オートクルーズ装備やプレビュー・ブレーキ装備などとセンサを共有することができる。さらには、衝突の際の衝撃を乗員Dに感じさせ難くすることができる。
また、車両状態検出部10及び衝突検出部20からの信号に基づいて、姿勢矯正部30の作動力を変化させている。例えば、本実施形態にあっては、中程度にエアバッグ34を展開させたり、最大レベルまで展開させたりするようにしている。このため、衝突回避可能な場合等に、運転操作の邪魔とならないように作動力を弱めたり、衝突発生時等に作動力を強めて強制的に姿勢矯正したりすることができる。従って、乗員Dによる車両の操作性を損なうことがないようすることができると共に、適切な姿勢矯正を行うことができる。
また、衝突を検出又は予測するための情報入力手段として、レーダー及び超音波の少なくとも一方により非接触で障害物との距離を推定する距離推定センサや、衝撃及び減速度の少なくとも一方から障害物の接触を検出する接触検出センサを用いることにより、レーンキープ装置や車間距離キープ装置、又は障害物検知装置や接触検知装置などとセンサ類を共有することができる。
また、姿勢検出部50からの信号に基づいて、乗員の姿勢に応じて姿勢矯正部30を制御するので、例えば、乗員Dが衝突を回避しようとして、傾斜姿勢をとった場合であっても、その傾斜姿勢に応じて姿勢矯正することができる。従って、安定した効果が一層期待できる乗員保護装置を提供することができる。
また、姿勢矯正部30が複数のエアバッグ34を有して構成され、姿勢検出部50からの信号に基づいて、複数のエアバッグ34のうち必要箇所にあるものを展開させている。このため、例えば、本実施形態のように、左右の脚部それぞれの姿勢に基づいて左右のエアバッグ34を展開することができる。すなわち、左右の脚部それぞれの姿勢に基づいて、適切に姿勢矯正することができる。従って、安定した効果が一層期待できる乗員保護装置を提供することができる。
また、車両状態検出部10、衝突検出部20及び姿勢検出部50からの信号に基づいて、エアバッグ34にガスを噴出したり排出したりするので、例えば、必要な場合に乗員の姿勢を矯正できると共に、衝突を回避して必要がなくなった場合に運転操作の邪魔にならないようにすることができる。従って、安定した効果が期待できるうえ、乗員Dによる車両の操作性を損なうことがないようすることができる。
また、乗員Dがペダル類205を操作している場合、作動レベルLR,LL及び作動状態R%,L%を部分的に抑制している。このため、運転操作の邪魔とならないようにすることができる。また、逆に、乗員Dがペダル類205を操作していない場合、部分的抑制を行わず、適切に姿勢矯正をすることができる。従って、乗員Dによる車両の操作性を損うことがないようすることができると共に、適切な姿勢矯正を行うことができる。
また、乗員の姿勢を検出するための情報入力手段として、着座乗員Dの略上方もしくは略前方に配された超音波センサや電磁場センサを用いることにより、乗員Dの正規でない着座姿勢(Out of Position)を検知する姿勢検出装置とセンサ類を共有することができる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態に係る乗員保護装置3は、第2実施形態のものと同様であるが、新たに複数の重量センサ(着座位置検出手段)61を備える点で、第1実施形態のものと異なっている。また、コントローラ40の処理内容も一部異なっている。
以下、第2実施形態との相違点について説明する。図21は、第3実施形態に係る乗員保護装置3の構成図であり、(a)は全体構成を示し、(b)はシート202の周辺部構成を示し、(c)は車室内全体構成を示している。
図21(a)及び(b)に示すように、複数の重量センサ61は、乗員Dの着座位置を検出するためのものである。具体的に、複数の重量センサ61は、シート202の座面に設けられている。
また、複数の重量センサ61は、荷重が加わると、その荷重を電気信号に変換して計測するものである。さらに、複数の重量センサ61としては、多分割ロードセルが用いられ、着座面の荷重分布を出力できる構成とされている。さらには、複数の重量センサ61は、コントローラ40に接続されており、荷重分布の情報をコントローラ40に伝える構成とされている。
なお、他の構成については、図21(c)にも示されるように、第2実施形態のものと同様である。
このような乗員保護装置3においては、第2実施形態と同様の処理が行われる。さらに、本実施形態において、複数の重量センサ61は、乗員Dの着座位置を検出すべく荷重を電気信号として取得して荷重分布を得る。そして、複数の重量センサ61は、荷重分布の情報をコントローラ40に送信する。
コントローラ40は、車両状態検出部10と衝突検出部20とからの信号に基づいて、衝突方向を推定する。また、コントローラ40は、姿勢検出部50と複数の重量センサ61とからの信号に基づいて、乗員Dの骨盤Bに対する左右大腿骨Tの角度を推定し、この推定角度をもとに姿勢矯正部30を制御する。例えば、作動レベルLR,LL及び作動状態R%,L%のうち少なくとも一方を変化させる。
より具体的には、コントローラ40は、姿勢検出部50と複数の重量センサ61とからの信号に基づいて、乗員Dの開脚角度を算出する。すなわち、まず、コントローラ40は、複数の重量センサ61から出力される重量分布をもとに求めた乗員Dの骨盤位置を求める。そして、コントローラ40は、求めた骨盤位置と、姿勢検出部50からの出力される乗員Dの膝部Kの位置とに基づいて、開脚角度を求める。
その後、コントローラ40は、衝突方向と、開脚角度とに基づいて、乗員Dの骨盤Bに対する相対的大腿部角度を求める。そして、求めた相対的大腿部角度に基づいて作動レベルLR,LL及び作動状態R%,L%のうち少なくとも一方を制御する。これにより、姿勢矯正部30を制御することとなる。
図22及び図23は、本実施形態に係る乗員保護装置3の動作の一例を示すフローチャートであり、図22は変数Sv及び衝突方向θvを求めるサブフローを示し、図23は姿勢変数Pを求めるサブフローを示している。なお、メインフローについては図11に示すものと同様であるため、省略する。
まず、図22に示すステップST120〜ST129は、図12に示すステップST50〜ST59と同様であるため、説明を省略する。ステップST129にて、変数Se及び変数Saの論理和から、変数Svを求めた後、処理はメインフローに戻る。図11で言えば、ステップST32に戻ることとなる。
その後、コントローラ40は、変数Svが「1」を超えるか否かを判断する(ST130)。ここで、変数Svが「1」を超えると判断した場合(ST130:YES)、処理は図17に移行する。一方、変数Svが「1」を超えないと判断した場合(ST130:NO)、コントローラ40は、進行方向θ4を「0」に初期化する(ST131)。
そして、コントローラ40は、車両状態検出部10から車速や加速度や操舵角などの車両状態を示す信号を入力し(ST132)、進行方向θ4を求める。そして、処理はステップST137に進む。
また、これらステップST131〜ST133の処理が行われる一方で、コントローラ40は、接近方向θ5を「0」に初期化する(ST134)。この接近方向θ5とは、例えば、車両前方方向と車両中央から障害物へ向かう方向とが為す角度である。初期化後、コントローラ40は、衝突検出部20のうち距離推定センサからの信号を入力する(ST135)。その後、コントローラ40は、距離推定センサからの信号に基づいて、接近方向θ5を求め(ST136)、処理はステップST137に進む。
ステップST137において、コントローラ40は、進行方向θ4と接近方向θ5とから衝突方向θvを求める(ST137)。具体的に、コントローラ40は、「θv=θ5−θ4」の演算を行い、衝突方向θvを求める。ここで、衝突方向θvは、衝突したとするならばどのような角度で衝突するかを示すものである。衝突方向θvを求めた後、処理は後述する図23のステップST145に戻る。
ここで、図11に示す処理では、乗員姿勢のセンシングが行われている。このため、図22のステップST130〜ST137の処理と並行して、図23に示す処理が実行されている。まず、コントローラ40は、右足の開脚角度を示す変数θr及び左足の開脚角度を示す変数θlを「0」に初期化する(ST140)。その後、コントローラ40は、姿勢検出部50からの信号を入力する(ST141)。そして、コントローラ40は、乗員Dが存在するか否かを判断する(ST142)。乗員Dが存在しないと判断した場合(ST142:NO)、コントローラ40は、姿勢変数Pを「0」とする(ST143)。そして、処理はステップST147に移行する。ここで、乗員Dが存在するか否かは、複数の重量センサ61の重量値に基づいて判断してもよいし、姿勢検出部50からの信号に基づいて判断してもよい。姿勢検出部50からの信号に基づいて判断する場合、例えば、コントローラ40は、乗員がいないときの波形イメージ等を予め登録しておき、当該信号と波形イメージ等とを比較することにより判断することとなる。
一方、乗員Dが存在すると判断した場合(ST142:YES)、コントローラ40は、各脚の開脚角度θr,θlを算出する(ST144)。ここで、各脚の開脚角度θr,θlは、複数の重量センサ61からの重量分布及び姿勢検出部50からの信号に基づいて求められる。
図24は、各脚の開脚角度θr,θlの説明図であり、(a)は開脚姿勢での各脚の開脚角度θr,θlを示し、(b)は閉脚姿勢での各脚の開脚角度θr,θlを示し、(c)は右側傾斜姿勢での各脚の開脚角度θr,θlを示している。
まず、これらの図において姿勢検出部50からの信号により検出された乗員Dの右膝の位置はKaであり、左膝の位置はKbである。さらに、重量分布から検出される最大荷重点は、脚部の付け根位置(骨盤位置相当)を示すものであり、右脚付け根位置はHaであり、左脚付け根位置はHbである。
図24(a)に示す例の場合、乗員Dが開脚姿勢となっているため、乗員Dの膝位置はKa,Kbは、両者とも脚部の付け根位置Ha,Hbより身体外側にある。開脚角度θr,θlを求める場合、右足の開脚角度θrについては、右脚付け根位置Haから乗員Dの右膝の位置はKaに向かう方向と、車両前方方向とが為す角を求めることにより得ることができる。また、左足の開脚角度θlについては、左脚付け根位置Hbから左膝の位置はKbに向かう方向と、車両前方方向とが為す角を求めることにより算出することができる。
また、図24(a)に示す例の場合、乗員Dが閉脚姿勢となっているため、乗員Dの膝位置はKa,Kbは、両者とも脚部の付け根位置Ha,Hbより身体内側にある。そして開脚角度θr,θlについては、脚部の付け根位置Ha,Hbから膝位置Ka,Kbに向かう方向と、車両前方方向とが為す角を求めることにより算出することができる。
また、図24(a)に示す例の場合、乗員Dが右側傾斜姿勢となっているため、乗員Dの右膝位置はKaは、右脚付け根位置Haより身体外側にある。一方、乗員Dの右膝位置Kbは、左脚付け根位置Hbより身体内側にある。そして開脚角度θr,θlについては、脚部の付け根位置Ha,Hbから膝位置Ka,Kbに向かう方向と、車両前方方向とが為す角を求めることにより算出することができる。
再度、図23を参照して説明する。各脚の開脚角度θr,θlを算出した後、コントローラ40は、衝突方向θvを入力する(ST145)。そして、コントローラ40は、衝突方向θvに対する相対的大腿部角度θrr,θrlを求める(ST146)。具体的にコントローラ40は、「θrr=θr−θv」及び「θrl=θl−θv」の演算式により、相対的大腿部角度θrr,θrlを求める。そして、処理はステップST147に移行する。
ステップST147において、コントローラ40は、衝突変数Pを設定する(STあ47)。ここで、ステップST143において衝突変数Pが「0」とされている場合は、そのまま値を保持し、ステップST146において、相対的大腿部角度θrr,θrlを求められている場合は、その信号に基づく値を設定する。この処理にて設定される姿勢変数Pは、第2実施形態において説明したものと同様である
図25は、相対的大腿部角度θrr,θrlの説明図であり、(a)は乗員Dが正規の姿勢であって、衝突方向θvが車両前方方向である場合の例を示し、(b)は乗員Dが正規の姿勢であって、衝突方向θvが車両右前方方向である場合の例を示し、(c)は乗員Dが正規の姿勢であって、衝突方向θvが車両左前方方向である場合の例を示している。
右脚側の相対的大腿部角度は「θrr=θr−θv」により求められるが、図25(a)に示す例の場合、θvがほぼ「0」となるため、「θrr≒θr」となる。また、左脚側の相対的大腿部角度も同様に、「θrl≒θl」となる。このような場合、コントローラ40は、衝突変数Pを「1」とする。
また、図25(b)に示す例の場合、右脚側の相対的大腿部角度は「θrr=θr−θv<0」となる。また、左脚側の相対的大腿部角度は、「θrl=θl−θv>0」となる。このような場合、コントローラ40は、衝突変数Pを「5」とする。
また、図25(c)に示す例の場合、右脚側の相対的大腿部角度は「θrr=θr−θv>0」となる。また、左脚側の相対的大腿部角度は、「θrl=θl−θv<0」となる。このような場合、コントローラ40は、衝突変数Pを「4」とする。
また、図示しないが、コントローラ40は、「θrr>0」且つ「θrl>0」の場合、衝突変数Pを「2」とし、「θrr<0」且つ「θrl<0」の場合、衝突変数Pを「3」とする。さらに、「θr≒0」且つ「θrl>0」の場合、衝突変数Pを「6」とする。
その後、第2実施形態に示した図15、図17及び図18と同様の処理を実行して、処理を終了する。すなわち、衝突方向θvを考慮した相対的大腿部角度θrr,θrlに基づいて、姿勢矯正部30を制御することとなる。また、第2実施形態と同様に、作動力、作動レベルLR,LL、及び作動状態R%,L%を変化させることとなる。
このように、第3実施形態において、コントローラ40は、姿勢検出部50と複数の受領センサ61とからの信号に基づいて、乗員Dの骨盤Bに対する左右大腿骨Tの角度を推定し、この推定角度をもとに姿勢矯正30を制御している。より詳しくは、姿勢検出部50と複数の重量センサ61とからの信号に基づいて乗員Dの姿勢を求めて、その姿勢に応じて姿勢矯正30を制御している。さらに、車両状態検出部10と衝突検出部20とからの信号により衝突方向θvを求めて、姿勢矯正部30を制御している。ここで、姿勢矯正部30の制御の際には、第2実施形態と同様に、作動力、作動レベルLR,LL、及び作動状態R%,L%などを変化させる。
このようにして、本実施形態に係る乗員保護装置3によれば、第2実施形態と同様に安定した効果が期待できる乗員保護装置を提供することができ、安価に本装置を実現することができ、オートクルーズ装備やプレビュー・ブレーキ装備などとセンサを共有することができる。また、衝突の際の衝撃を乗員Dに感じさせ難くすることができる。
さらに、レーンキープ装置や車間距離キープ装置、又は障害物検知装置や接触検知装置などとセンサ類を共有することができ、安定した効果が一層期待できる乗員保護装置を提供することができる。また、安定した効果が期待できるうえ、乗員Dによる車両の操作性を損なうことがないようすることができる。さらには、乗員Dによる車両の操作性を損なうことがないようすることができると共に、適切な姿勢矯正を行うことができ、乗員Dの正規でない着座姿勢(Out of Position)を検知する姿勢検出装置とセンサ類を共有することができる。
また、姿勢検出部50と複数の重量センサ61とからの信号に基づいて、乗員Dの骨盤Bに対する左右大腿骨の角度θrr,θrlを推定し、この推定角度をもとに姿勢矯正部30を制御するので、左右の大腿骨それぞれの姿勢状態に応じて適切に姿勢矯正することができる。
また、姿勢検出部50と複数の重量センサ61とからの信号に基づいて、作動レベルLR,LL及び作動状態R%,L%のうち少なくとも一方を変化させる。このため、例えば、運転操作の邪魔とならないようにすることができる一方、適切に姿勢矯正をすることができる。従って、乗員Dによる車両の操作性を損うことがないようすることができると共に、適切な姿勢矯正を行うことができる。
また、姿勢検出部50と複数の重量センサ61とからの信号に基づいて乗員Dの開脚角度θr,θlを算出する。一方、車両状態検出部10と衝突検出部20とからの信号に基づいて、衝突方向θvを求める。そして、衝突方向θvと開脚角度θr,θlとに基づいて、作動レベルLR,LL及び作動状態R%,L%のうち少なくとも一方を変化させる。このため、例えば車両斜め方向にて障害物と衝突するような場合であっても、衝突方向θvと開脚角度θr,θlとの関係から作動レベルLR,LL及び作動状態R%,L%のうち少なくとも一方を変化させることができる。従って、一層適切に姿勢を矯正することができる。
また、乗員の姿勢を検出するための情報入力手段として、シート202の座面下部に配された複数の重量センサ61を用いることにより、一部の車種に搭載されている乗員の正規外着座姿勢(Out of Position)を検知する姿勢検出装置とセンサ類を共有することができる。
なお、本実施形態では、複数の重量センサ61にて荷重分布を求め、乗員Dの着座位置を求めるようにしているが、第2実施形態に示す単体の重量センサ60であっても、同様に着座位置を求めることができる。この場合、重量値から乗員Dの体格等を推定し、推定された体格に基づいておおよその着座位置を求めることとなる。このため、推定された体格に基づいて着座位置を求める構成を採用した場合にも、第3実施形態と同様の効果が得られることとなる。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態に係る乗員保護装置4は、第1実施形態のものと同様であるが、姿勢矯正部30の構成が第1実施形態のものと異なっている。
以下、第1実施形態との相違点について説明する。図26は、第4実施形態の姿勢矯正部30の詳細を示す構成図であり、(a)は展開後のエアバッグを前方から見たときの斜視図であり、(b)は展開後のエアバッグを後方から見たときの斜視図である。
図26(a)及び(b)に示すように、姿勢矯正部30は、エアバッグ70を有している。このエアバッグ70は、着座した乗員Dの膝部Kの前方までを略覆うように膨張展開可能とされている。具体的には、両側端72a,72bが中央部71より左右に大きく張り出し、この両側端72a,72bにより、衝突時に乗員Dの膝部Kを柔らかく受け止めることとなる。
図27は、姿勢矯正部30が作動するときの様子を示す説明図であり、(a)は作動前の様子を示し、(b)は作動後の様子を示している。まず、図27(a)に示すように、車両乗員Dは、正規の状態でそれぞれ運転席及び助手席に着座している。そして、衝突時には、図27(b)に示すように姿勢矯正部30が作動して、エアバッグ70が展開する。
ここで、エアバッグ70は、中央部71より左右に大きく張り出す両側端72a,72bを有している。このため、エアバッグ70は、展開したときに乗員Dの膝部Kの前方位置まで拡がることとなる。故に、乗員Dの膝部Kは、エアバッグ70の両側端72a,72bにより柔らかく受け止められ、且つダッシュパネル206との衝突が防がれる。また、エアバッグ70の中央部71は、上記実施形態と同様に乗員Dの膝位置を矯正する。
このようにして、本実施形態に係る乗員保護装置4によれば、第1実施形態と同様に安定した効果が期待できる乗員保護装置を提供することができ、安価に本装置を実現することができ、オートクルーズ装備やプレビュー・ブレーキ装備などとセンサを共有することができる。また、衝突の際の衝撃を乗員Dに感じさせ難くすることができる。
また、姿勢矯正部30(エアバッグ70)は、乗員Dの膝部前方までを略覆うように膨張展開可能であるので、ニープロテクタ208の機能を兼ねることとなり、ニープロテクタ208の構成自体を不要とすることができる。従って、構成を簡素化することができる。なお、ニープロテクタ208を用いた場合には、エアバッグ70とニープロテクタ208とにより、乗員Dの膝部Kを一層柔らかく受け止めて保護することができる。
次に、本発明の第5実施形態を説明する。第5実施形態に係る乗員保護装置5は、第1実施形態のものと同様であるが、姿勢矯正部30の構成が第1実施形態のものと異なっている。
以下、第1実施形態との相違点について説明する。図28は、第5実施形態の姿勢矯正部30の詳細を示す断面図である。同図に示すように、姿勢矯正部30は、上記実施形態と同様にエアバッグ73を有している。但し、エアバッグ73の収納方法、すなわち折り畳み方が他の実施形態と異なっている。
エアバッグ73は、図28に示すように、姿勢矯正部30の上部Aと下部Bとで折り畳み方が異なっている。エアバッグ73は、上部Aが下部Bよりも小さい占有領域にて折り畳まれている。また、上部Aの折り方は、高圧ガス噴出を受け易く、且つ上方へ展開しやすいものとなっている。これに対し、下部Bのエアバッグ73は、十分にガスが充填された段階で横方向へ展開する畳み方とされている。
また、姿勢矯正部30は、高圧ガス封入ボンベ35を具備している。この高圧ガス封入ボンベ35は、配管77を通じてエアバッグ73の内部につながっている。また、配管77は、エアバッグ73の他に外部へも通じており、外部への排気管としての役割を果たしている。
また、高圧ガス封入ボンベ35とエアバッグ34との間には、封入弁75が設けられている。封入弁75は、コントローラ40からの指令に基づいて、ボンベ35からエアバッグ34へ流れ込む高圧ガスの量を制御する構成となっている。
さらに、エアバッグ73と外部との間には、排出弁76が設けられている。排出弁76は、封入弁75と同様に、コントローラ40からの指令に基づいて、エアバッグ34内部から外部へ排出される高圧ガスの量を制御する構成となっている。
また、姿勢矯正部30の一側壁(展開側の壁)には、エアバッグ展開用の切欠部74が形成されている。このため、エアバッグ31は、展開時に切欠部74を突き破って展開するようになっている。
図29は、姿勢矯正部30が作動するときの様子を示す説明図であり、(a)は作動前の様子を示し、(b)は作動中の様子を示し、(c)は作動後の様子を示している。
まず、図29(a)に示すように、車両乗員Dは、正規の状態でそれぞれ運転席に着座している。そして、衝突時に姿勢矯正部30が作動してエアバッグ70が展開する。
ここで、エアバッグ73は、上部Aが高圧ガス噴出を受け易く、且つ上方へ展開しやすい畳み方になっている。このため、図29(b)に示すように、まず、エアバッグ73は、乗員Dの両膝間に入り込むように展開する。
また、下部Bのエアバッグ73は、十分にガスが充填された段階で横方向へ展開する畳み方とされている。このため、更にガスが充填されると、図29(c)に示すように、乗員Dの両膝を身体外側に広げるように展開する。
このようにして、本実施形態に係る乗員保護装置5によれば、第1実施形態と同様に安定した効果が期待できる乗員保護装置を提供することができ、安価に本装置を実現することができ、オートクルーズ装備やプレビュー・ブレーキ装備などとセンサを共有することができる。また、衝突の際の衝撃を乗員Dに感じさせ難くすることができる。
また、姿勢矯正部30のエアバッグ73を、高圧ガス噴出を受けて上方に展開する部分と、十分にガスが充填された段階で横方向へ展開する部分とが形成されるように、折り畳まれている。このため、例えば、エアバッグ73を、乗員Dの両膝間に入り込むように展開させ、その後、乗員Dの両膝を身体外側に広げるように展開させることができる。このように展開させることで、乗員Dの姿勢矯正に際して違和感を少なくすることができる。
次に、本発明の第6実施形態を説明する。第6実施形態に係る乗員保護装置6は、第1実施形態のものと同様であるが、姿勢矯正部30の構成が第1実施形態のものと異なっている。
以下、第1実施形態との相違点について説明する。図30は、第6実施形態の姿勢矯正部30の詳細を示す構成図であり、(a)はシート202に姿勢矯正部30を設置したときの様子を示す斜視図である。また、(b)はシート202に姿勢矯正部30を設置したときの様子を示す正面図であり、(c)は姿勢矯正部30の構成を示す分解斜視図である。
本実施形態の姿勢矯正部30は、移動可能な部材(後述の押し子82)を有して構成され、シート202の座面の略方下方に設置される。具体的には図30(a)に示すように、シート202の座面前端部に窪み部分が設けられ、姿勢矯正部30は、この窪み部分に設けられたステー81に接続されている。
また、図30(b)及び(c)に示すように、上記ステー81は、ブラケット85の取付孔85a,85bを介して、ボルト等でネジ止めされる。このブラケット85は、シート側からモータ86が取付けられ、モータ86のシャフト86aはブラケット85に設けられたシャフト穴85cを通り、ピニオンギア84へ接続される。
一方、押し子82の内部にはラックギア83が上下方向に設置されており、このラックギア83は、上記ピニオンギア84と噛みあうようになっている。また、押し子82は、全体形状が略三角形であり、下面にスリット82aが設けられている。スリット82aにはブラケット85が挿通されるようになっている(図30(c)のIに示す挿入方向)。
以上のような構成により、モータ86が作動してピニオンギア84を回転させると、回転力がラックギア83に伝わる。そして、ラックギア83を上下動させて、押し子82自体を上下に移動させる。
図31は、姿勢矯正部30が作動するときの様子を示す説明図であり、(a)は作動前の様子を示し、(b)は作動後の一例を示し、(c)は作動後の他の例を示している。
まず、図31(a)に示すように、作動前にあっては、押し子82は動作しておらず、乗員Dの姿勢を矯正していない状態にある。また、図31(b)に示すように、姿勢矯正部30が作動して、中程度だけ押し子82が上方に移動したとする。このとき、押し子82は乗員Dの両膝間の入り込む。このため、乗員Dの膝部Kは、身体内側へ移動できず、規制された状態となる。
また、図31(c)に示すように、姿勢矯正部30が作動して、最大レベルまで押し子82が上方に移動したとする。このとき、押し子82は乗員Dの両膝間の深く入り込む。このため、乗員Dの膝部Kは、強制的に身体外側へ移動させられることとなる。
図32及び図33は、本実施形態に係る乗員保護装置5の動作の一例を示すフローチャートであり、図32はメインフローを示し、図33は変数Sを求めるサブフローを示している。
まず、図32に示すように、コントローラ40は、車両状態のセンシングを開始させる(ST150)。これにより、車両状態検出部10は、車両状態を検出することとなる。
その後、コントローラ40は、変数Sを入力する(ST151)。ここで、変数Sは、上記ステップST150とステップST151との間に、図33に示す処理ルーチンにより求められている。
ここで、図33に示すステップST160〜ST168の処理は、図8に示すステップST11〜ST19の処理と同様であるため、説明を省略する。ステップST169において、コントローラ40は、変数S1と変数S2との論理和により、変数Sを求める(ST169)。処理は図32のステップST151に戻る。なお、変数Sは、後のステップST170において作動方法を決定するための指標となることから、上記した変数LR,LLと同じ作動レベルといえる。
図11のステップST151において変数Sを入力した後、コントローラ40は、変数Sが「0」を超えるか否かを判断する(ST152)。「0」を超えないと判断した場合(ST152:NO)、処理はステップST151に戻る。これにより、コントローラ40は、再度変数Sを求める処理、すなわちステップST160〜ST169の処理を実行することとなる。
一方、「0」を超えると判断した場合(ST152:YES)、コントローラ40は、押し子82の上昇指令をする(ST153)。図34は、図32に示す押し子82の上昇指令(ST153)の詳細を示すフローチャートである。
コントローラ40は、押し子82の上昇指令を、ステップST151にて入力した変数Sに基づいて行う(ST170)。具体的に、コントローラ40は、変数Sが「0」のときに押し子82の上昇を無しと決定し、変数Sが「1」のときに押し子82を中程度だけ上昇させると決定する。また、変数Sが「2」のときに押し子82を最大レベルまで上昇させると決定する。そして、上記決定に基づいて、押し子82の上昇させるなど行う。
なお、ステップST152において、変数Sが「0」を超えない場合、処理はステップST151に戻ることとなる。このため、ステップST170において変数Sが「0」のときの決定処理を除くようにしてもよい。ただし、上昇指令段階(ステップST153の段階)で押し子82の上昇レベルを変更するような場合には、変数Sが「0」のときの決定処理を加えておくとよい。
その後、処理は図32のステップST154に移行する。ステップST154,ST155の処理は、ステップST38,ST39と同様であるため、説明を省略する。そして、コントローラ40は、衝突が回避されたと判断した場合(ST155:YES)、押し子82を下降させて格納する(ST156)。その後、処理はステップST151に戻る。
ここで、ステップST154にて衝突発生が検出された場合の処理について説明する。図35は、衝突発生時の処理を示すフローチャートである。
まず、コントローラ40は、変数Sの値を「2」とする(ST180)。すなわち、コントローラ40は、押し子82を最大レベルまで上昇させると決定する。そして、コントローラ40は、上記ステップST170と同様の処理を実行して、押し子82を上昇させる(ST181)。この上昇により、乗員Dの膝部Kは、身体外側に強制的に移動させられる。上昇後、コントローラ40は、数秒程度押し子82を最大レベルで維持し、その後、押し子82を下降させる。そして、下降後に処理は終了する。
このようにして、本実施形態に係る乗員保護装置6では、第1実施形態と同様に安定した効果が期待できる乗員保護装置を提供することができ、オートクルーズ装備やプレビュー・ブレーキ装備などとセンサを共有することができる。また、衝突の際の衝撃を乗員Dに感じさせ難くすることができる。
さらに、姿勢矯正部30は移動可能な押し子82を有してシート座面の略前端部に設置され、押し子82の移動により乗員Dの両脚を身体外側に移動させるようにしている。このため、エアバッグを用いることなく、機械的部品を用いて安定した効果が期待できる乗員保護装置を提供することができる。
なお、本実施形態では、作動レベルSを変化させて、押し子82を中程度だけ上昇させたり最大レベルまで上昇させたりしている。このため、乗員Dの脚部に加わる力を変化させており、作動力を変化させているとも言える。また、作動レベルのみに限らず、作動状態を変化させるようにしてもよい。
さらに、上記した本実施形態のフローチャートにおいて、コントローラ40は車両状態検出部10と衝突検出部20からの信号を入力することが明示されているが、これらの他に、姿勢検出部50及び(複数の)重量センサ60,61からの信号を入力してもよい。この場合、姿勢検出部50及び(複数の)重量センサ60,61からの信号に基づいて、作動レベルや作動状態を変化させるようにしてもよい。
次に、本発明の第7実施形態を説明する。第7実施形態に係る乗員保護装置7は、第2実施形態のものと同様であるが、姿勢矯正部30の構成が第2実施形態のものと異なっている。また、コントローラ40の処理内容も一部異なっている。
以下、第2実施形態との相違点について説明する。図36は、第7実施形態の姿勢矯正部30の詳細を示す構成図であり、(a)はシート202に姿勢矯正部30を設置したときの様子を示す斜視図である。また、(b)はシート202に姿勢矯正部30を設置したときの様子を示す正面図であり、(c)は姿勢矯正部30の構成を示す拡大図である。
本実施形態の姿勢矯正部30は、回転可能な複数の部材(後述の2つの押し子91)を有して構成され、シート202の座面の略方下方に設置される。具体的には図36(a)及び(b)に示すように、前方下方に向かって伸びる2本の可動軸92a,92bがシート202の座面前端部に設けられ、姿勢矯正部30は、この2本の可動軸92a,92bによりシート202に接続されている。また、2本の可動軸92a,92bはそれぞれが押し子91a,91bに接続されており、2つの押し子91は2本の可動軸92a,92bそれぞれの回転に伴って回転動作するようにされている。
また、図36(c)に示すように、可動軸92aは、一端が金具93a,93bを介して押し子91aの内部に設けられる補強板94の端部に接続され、他端がステップモータ95に接続されている。ステップモータ95は、ブラケット96を介してステー97に取り付けられ、ステー97は、取付孔97a,97bを介してシート202の座面に接続されている。なお、図36(c)は右側の押し子91bとその周囲の部品について説明しているが、左側についての構成である。
以上のような構成により、ステップモータ95が作動して回転動作をすると、回転力が可動軸92a,92bを介して補強板94に伝わる。そして、押し子91自体を回転させる。ここで、可動軸92a,92bは補強板94の端部に接続されている。このため、補強板94の反対側の端部(可動軸92a,92bが接続される側と反対側)は、回転しつつ上下動することとなる。
図37は、姿勢矯正部30が作動するときの様子を示す説明図であり、(a)は作動前の様子を示し、(b)は作動後の一例を示し、(c)は作動後の他の例を示している。
まず、図37(a)に示すように、作動前にあっては、押し子91a,91bは動作しておらず、乗員Dの姿勢を矯正していない状態にある。また、図37(b)に示すように、姿勢矯正部30が作動して、押し子91a,91bが中程度だけ回転したとする。このとき、押し子91a,91bはシート202の中央部側が上方に移動し、乗員Dの両膝間の入り込む。このため、乗員Dの膝部Kは、身体内側へ移動できないように規制された状態となる。
また、図37(c)に示すように、姿勢矯正部30が作動して、最大レベルまで押し子91a,91bが回転したとする。このとき、押し子91a,91bは、シート202の中央部側が大きく上方に移動し、乗員Dの両膝間の深く入り込む。このため、乗員Dの膝部Kは、強制的に身体外側へ移動させられることとなる。
図38は、本実施形態に係る乗員保護装置7の動作の一例を示すメインフローチャートである。同図に示すステップST190〜ST194の処理は、図11に示すステップST30〜ST34と同様であるため、説明を省略する。
ステップST195において、コントローラ40は、可動軸92a,92bの回転量を求める(ST195)。ここでは、図15に示す処理と同様にして行われ、作動レベルLR,LLが決定される。
そして、コントローラ40は、可動軸92a,92bの作動方法を決定する(ST196)。図39は、図38に示した作動方法決定処理(ST196)の詳細を示すフローチャートである。
同図に示すように、まず、コントローラ40は、右側可動軸92aを制御することを決定する(ST201)。そして、コントローラ40は、ステップST195において決定された作動レベルLRを参照する(ST202)。
その後、コントローラ40は、右側の押し子91aの回転量を決定する(ST203)。具体的には、作動レベルLRの値によって、回転量を決定する。例えば、作動レベルLRが「2」の場合、回転量を最大とする。また、作動レベルLRが「1」の場合、回転量を中程度とする。作動レベルLRが「0」の場合、回転量を「0」とする。そして、処理は、図38のステップST197に移行する。
また、これらステップST201〜ST204の処理が行われる一方で、コントローラ40は、左側の押し子91bの制御を行う。すなわち、コントローラ40は、左側の押し子91aを制御することを決定し(ST204)、ステップST195において決定された作動レベルLLを参照する(ST205)。
そして、コントローラ40は、左側押し子91bの回転量を求める(ST206)。ここでは、右側の押し子91aと同様に回転量が決定される。そして、処理は図38に示すステップST197に移行する。
ステップST197において、コントローラ40は、ステップモータ95の作動指令を行う(ST197)。そして、コントローラ40は、衝突検出部20のうち接触検出センサからの信号に基づいて、実際に衝突が発生したか否かを判断する(ST198)。発生したと判断した場合(ST198:YES)、後述する図40の処理に移行する。一方、発生していないと判断した場合(ST198:NO)、コントローラ40は、衝突検出部20のうち距離推定センサからの信号に基づいて、衝突が回避されたか否かを判断する(ST199)。衝突が回避されていないと判断した場合(ST199:NO)、処理はステップST194に戻る。これにより、コントローラ40は、再度姿勢変数Pを求めて押し子91a,91bの回転量の決定処理などを実行することとなる。
衝突が回避されたと判断した場合(ST199:YES)、コントローラ40は、ステップモータ95を逆回転させる(ST200)。そして、処理はステップST192に戻る。
ここで、衝突発生が検出された場合の処理について説明する。図40は、衝突発生時の処理を示すフローチャートである。まず、コントローラ40は、右側の押し子91aを制御することを決定する(ST210)。そして、コントローラ40は、右側の押し子91aの回転量を最大とする(ST211)。すなわち、コントローラ40は、「LR=2」とする。その後、コントローラ40は、右側の押し子91aを回転させる。その後、処理はステップST214に移行する。
一方、ステップST210,ST211の処理が行われる一方で、コントローラ40は、左側の押し子91bを制御することを決定する(ST212)。そして、コントローラ40は、左側の押し子91bの回転量を最大とする(ST213)。すなわち、コントローラ40は、「LL=2」とする。その後、コントローラ40は、左側の押し子91bを回転させる。その後、処理はステップST214に移行する。
ステップST214において、コントローラ40は、数秒程度待機し、待機後にモータ95を逆回転させる(ST214)。すなわち、コントローラ40は、左右の押し子91a,91bの車両中央部側が下降するように制御する。そして、回転終了後、処理は終了する。
このようにして、本実施形態に係る乗員保護装置7によれば、第2実施形態と同様に安定した効果が期待できる乗員保護装置を提供することができ、安価に本装置を実現することができ、オートクルーズ装備やプレビュー・ブレーキ装備などとセンサを共有することができる。また、衝突の際の衝撃を乗員Dに感じさせ難くすることができる。
さらに、レーンキープ装置や車間距離キープ装置、又は障害物検知装置や接触検知装置などとセンサ類を共有することができ、安定した効果が一層期待できる乗員保護装置を提供することができる。また、乗員Dの正規でない着座姿勢(Out of Position)を検知する姿勢検出装置とセンサ類を共有することができ、乗員Dによる車両の操作性を損なうことがないようすることができると共に、適切な姿勢矯正を行うことができる。
さらには、エアバッグを用いることなく、機械的部品を用いて安定した効果が期待できる乗員保護装置を提供することができる。
なお、本実施形態では、第6実施形態と同様に、作動レベルを変化させて、押し子91a,91bを中程度だけ上昇させたり最大レベルまで上昇させたりしている。このため、乗員Dの脚部に加わる力を変化させており、作動力を変化させているとも言える。また、作動レベルのみに限らず、作動状態を変化させるようにしてもよい。
さらに、上記した本実施形態のフローチャートにおいて、コントローラ40は車両状態検出部10と衝突検出部20と姿勢検出部50とからの信号を入力することが明示されているが、これらの他に、(複数の)重量センサ60,61からの信号を入力してもよい。この場合、姿勢検出部50及び(複数の)重量センサ60,61からの信号に基づいて、作動レベルや作動状態を変化させるようにしてもよい。
また、2つの押し子91a,91bを用いているので、上記した第2実施形態と同様に、
作動レベルS及び作動状態を部分的に抑制して適切な姿勢矯正を行うようにしてもよい。
次に、本発明の第8実施形態を説明する。第8実施形態に係る乗員保護装置8は、第7実施形態のものと同様であるが、姿勢矯正部30の構成が第7実施形態のものと異なっている。また、コントローラ40の処理内容も一部異なっている。
以下、第7実施形態との相違点について説明する。図41は、第8実施形態の姿勢矯正部30の詳細を示す構成図であり、(a)はシート202に姿勢矯正部30を設置したときの様子を示す斜視図であり、(b)は姿勢矯正部30の構成を示す拡大図である。なお、図41では、右側の押し子91aとその周囲の部品を説明する。
第8実施形態の姿勢矯正部30は、第7実施形態の構成のステー97に代えてプレート82を備えており、更に、金具99a,99b、シャフト100、回転モータ101、ブラケット102、及びステー103を備えている。
プレート98は長方形状の平板であり、ステップモータ95はプレート98の一側端にブラケット93を介して接続されている。また、プレート98には、可動軸92aと垂直方向に延在するシャフト100が設けられている。このシャフト100は、金具99a,99bによってプレート98に取り付けられており、プレート98と反対側の端部に回転モータ101が接続されている。
また、回転モータ101は、ブラケット102を介して、ステー103に取り付けられている。ステー103は、取付孔103a,103bを介してボルト固定されて、シート202の座面に取り付けられている。なお、左側の押し子91bとその周囲の部品についても同様である。
以上のような構成により、回転モータ101が作動して回転動作をすると、回転力がシャフト100を介してプレート98に伝わる。そして、押し子91a自体を車両前後方向に回転させる。このように動作するため、図41(b)に示すように、姿勢矯正部30は、通常時にシート202の前端部に接するようにして格納されているが、回転モータ101が回転することにより、前方へ回転しながらせり出してくる。
このようにして、本実施形態に係る乗員保護装置8によれば、第7実施形態と同様に安定した効果が期待できる乗員保護装置を提供することができ、安価に本装置を実現することができ、オートクルーズ装備やプレビュー・ブレーキ装備などとセンサを共有することができ、安定した効果が一層期待できる乗員保護装置を提供することができる。また、衝突の際の衝撃を乗員Dに感じさせ難くすることができる。
さらに、安定した効果が一層期待できる乗員保護装置を提供することができ、乗員Dによる車両の操作性を損なうことがないようすることができると共に、適切な姿勢矯正を行うことができる。
さらには、エアバッグを用いることなく、機械的部品を用いて安定した効果が期待できる乗員保護装置を提供することができ、乗員下腿部を支持するオットマンの部品と共用することもできる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各実施形態を組み合わせてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、衝突検出部20は、それ自体が衝突を検出又は予測してもよいし、衝突を検出又は予測せずに、衝突の検出又は予測に必要な信号のみを検知して他の演算部等に送信し、演算部等が衝突を検出又は予測してもよい。