JP2005067196A - 廃プラスチックのリサイクル時に発生する塩酸の抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 プラスチック製容器包装廃棄物や一般プラスチック製品の廃棄物をリサイクルプラスチック材として使用したり、またはペレット化するときに塩酸の発生を押さえることができる。
【解決手段】 プラスチック製容器包装廃棄物やその他の一般プラスチック製品の廃棄物等の廃プラスチックをリサイクルプラスチック材として使用する際に、0.1重量%以上の受酸剤を混合することを特徴とする。前記受酸剤は酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸マグネシウム等を用いることができる。また、受酸剤はマスターバッチとして使用することが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】 プラスチック製容器包装廃棄物やその他の一般プラスチック製品の廃棄物等の廃プラスチックをリサイクルプラスチック材として使用する際に、0.1重量%以上の受酸剤を混合することを特徴とする。前記受酸剤は酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸マグネシウム等を用いることができる。また、受酸剤はマスターバッチとして使用することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
この発明は、廃棄されたプラスチック製品をリサイクルプラスチック材として使用する際に発生する塩酸の抑制方法に関するものである。
近年、いわゆる容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進に関する法律)の施行に伴い、容器包装リサイクル法に基づく容器包装廃棄物の再商品化によるリサイクル材の利用が望まれている。また、近年の自然環境保護の意識の高まりとともに、前記容器包装リサイクル法に基づく容器包装廃棄物以外の一般プラスチック製品の廃プラスチック材がリサイクル材として再利用されるようになってきており、プラスチック製品のリサイクルの動きも強くなっている。これらの容器包装リサイクル法に基づく容器包装廃棄物や一般プラスチック製品の廃棄物は、繰り返し再生して使用することが可能であり、このようなリサイクルプラスチック材が多くの分野で利用されている。
容器包装リサイクル法に基づくプラスチック製容器包装廃棄物は、各容器毎に分別されることなく収集されるため、各種材質のプラスチック容器が含まれることになる。従って、リサイクルプラスチック材は、多種材質の混合物であるから、これを再商品化した場合には、曲げ強度、衝撃強度、溶着強度がいずれも低い。この点が、材質毎に分別されて収集される一般プラスチック製品の廃プラスチック材と異なる。
前記プラスチック製容器包装廃棄物や一般プラスチック製品の廃棄物等を、環境保護のために再利用を図るように、国の施策においてマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル等の各種リサイクルに補助金を支給しているが、マテリアルリサイクルは充分進んでいるとは言えない。
マテリアルリサイクルが充分に進んでいない理由の1つは、次の点にあるものと思われる。即ち、従来のリサイクルプラスチック材のほとんどには、ポリ塩化ビニル(PVC)が混在している。PVCには熱及び紫外線による塩酸の発生を押さえるために成型の際に安定剤が配合されるが、安定剤は時間が経つにつれてその機能が失われてくる。従って、従来のプラスチック製品の廃プラスチックをリサイクルプラスチック材として使用すると、成型の際に塩酸が発生し、金型を含めた製造機械を錆びさせるという問題がある。
そこで、特許文献1に記載されているように、脱塩素化廃プラスチックの製造方法が提案されている。これは、粉砕した廃プラスチック類に含有塩素の当量以上の金属酸化物、金属炭酸塩等を添加混合し、ポリ塩化ビニルの熱分解により生成する塩化水素を金属塩化物としてプラスチック溶融物内に固定化し、ボイラー燃料、高炉用還元剤或いは製鋼用鎮静剤として使用できるようにしたものである。
特開2001−191051号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている脱塩素化廃プラスチックの製造方法は、用途をボイラー燃料、高炉原料或いは製鋼用鎮静剤として使用するものであって、これらの用途に使用する限り残留する金属酸化物、金属炭酸塩等も無害であるとするものである。これらの廃プラスチックをリサイクルプラスチック材として使用した場合に、金型を含めた製造機械の錆びを防止できるかどうかは不明である。
このように、廃プラスチックにはPVCが混在しているために、塩素により塩酸が発生し機械を錆びさせるという問題があるにもかかわらず、塩酸の発生を押さえる方法は未だ見つかっていない。
この発明はかかる現況に鑑みてなされたもので、前記プラスチック製容器包装廃棄物や一般プラスチック製品の廃棄物をリサイクルプラスチック材として使用したり、またはペレット化するときに発生する塩酸の抑制方法を提供せんとするものである。
この発明は上記目的を達成するために次のような構成とした。即ち、この発明に係る廃プラスチックのリサイクル時に発生する塩酸の抑制方法は、プラスチック製容器包装廃棄物やその他の一般プラスチック製品の廃棄物等の廃プラスチックをリサイクルプラスチック材として使用する際に、前記リサイクルプラスチック材に0.1重量%以上の受酸剤を混合することを特徴とする。前記受酸剤としては、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸マグネシウムのいずれかを用いることができる。
また、前記受酸剤は、マスターバッチとすることが好ましく、マスターバッチのベースレジンには、エチレンアクリル酸エチル共重合体(EEA)または低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることができる。
上記構成とすることによって、プラスチック製容器包装廃棄物や一般プラスチック製品の廃棄物等の廃プラスチックをリサイクルプラスチック材として使用しても、塩酸の発生が押さえられ、金型等の製造機械を錆びさせることがない。特に、受酸剤をマスターバッチとした場合には、パウダーのまま添加する場合に比べて分散性を高めることができ、その分添加量を抑えることができる。
リサイクル時に受酸剤を添加することにより、成型の際に発生する塩酸を抑制することができるから、PVCが混入するために使用できなかったプラスチック製容器包装廃棄物や一般プラスチック製品の廃棄物等の廃プラスチックをリサイクルプラスチック材として使用したり、またはペレット化をすることができる。
廃プラスチックをリサイクルプラスチック材として使用しても製造機械に錆を発生させないという目的を、きわめて簡単な構成で、しかも安価に実現した。
次に、上記構成に係るこの発明の一実施例を説明する。酸性度試験の評価は次のようにして行った。
PVCが0.1%混在するプラスチック製容器包装廃棄物及び/又は一般プラスチック製品の廃棄物であるシティダスト(以下「CD」という。)に対して、受酸剤(安定剤)として酸化マグネシウム(MgO)を1重量%、0.1重量%、0.01重量%を各々加えてタンブリングした3種類のサンプル材料を作成する。また、比較材料として、受酸剤を加えていないCDと、ポリプロピレン(PP)を用意する。次に、前記各サンプル材料と比較材料を個別に50t射出成形機を使用し、220℃で成型して5種類の試験サンプルを得た。
上記サンプルの酸性度を測定した。図示するように、開閉蓋1を有する缶本体2に前記射出後のサンプル3を直ちに缶本体2の中に入れて、蓋1を閉じて常温下に8時間以上放置した。前記蓋1の裏には予めリトマス試験紙のようなpHを測る試薬4を貼り、上記のように、蓋1を閉じた状態で放置し、試薬4の酸性度を測定した。測定は、試薬の標準色と変化した色を対比することにより、標準色と一致した色のpH度を抽出することによって行った。測定結果を表1に示す。
表1から明らかなように、受酸剤を1重量%以上混合することで塩酸の発生を抑制できる。なお、上記受酸剤の混合は、プラスチック製容器包装廃棄物や一般プラスチック製品の廃棄物をリサイクルプラスチック材として使用する場合に限らず、ペレット化する場合にも有効であることは当然である。また、結果を表示するのを省略したが、ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)、マグネシウム亜鉛(MgZn)も同様の効果が得られる。また、2500t射出成形機やφ50一軸押出機、φ30二軸押出機においても同様の効果が得られる。
次に、酸性度をより正確に測定するために、イオンクロマトを使用した場合について説明する。受酸剤の形状は、パウダーが一般的である。そこで、受酸剤として、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸マグネシウムの各パウダーを用いた。
しかしながら、パウダーの状態でタンブリングすると、パウダーは凝集性が高いために分散性が悪い。また、嵩比重が小さく嵩張るため、プラスチックマテリアルリサイクルに用いるには好ましくない。CDの中には、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)等の各種材質が混在している。
即ち、CDには、異なる融点の材質が混在している。これらの混在している材質の中にPVCがあり、PVCが塩酸を発生させる原因と考えられている。従来は、CDをリサイクルプラスチック材として使用する場合には、CDと接着剤(通常はオイル)とをタンブリングし、その後再度受酸剤をタンブリングすることで塩酸を抑制する方法が取られていた。しかしながら、タンブリングする際にホッパー内等でブリッジを起こすという問題があった。
受酸剤をパウダーで使用することは、ハンドリング性が劣るだけでなく、凝集性が高いことからどうしても添加量を多く必要とするという問題がある。また、受酸剤は溶融しないから成型品内に異物として残ることになり、塩酸の発生を抑制できるものの、いわゆる異物の添加によって成型品の耐衝撃性等の低下を招くことになるという問題がある。。
そこで、上記問題を解決するために、受酸剤を少ない量で効果的に添加するためにどうすればよいかという観点から検討し、マスターバッチとすることにより解決することができた。マスターバッチとするためには、融点が問題になる。CDの中でもPVCは、他の混在している材質と比較すると融点が低い。PVCから発生する塩酸を抑えるためには、受酸剤のマスターバッチが低温域でPVCと同時に、あるいはPVCより前に溶融・分散していることが必要である。
即ち、受酸剤をマスターバッチとするベースレジンは、PVCより融点の低い材質を選択することが必要である。そこで、実施例では、融点の低い材質として、エチレンアクリル酸エチル共重合体(EEA)と低密度ポリエチレン(LDPE)を用いた。表2に示すように、受酸剤をパウダーのまま用いるよりもマスターバッチとすることによって同じ量を添加してもCDから発生する塩酸の抑制効果がきわめて高いことが確認された。
また、塩酸の抑制効果を高めるためには、マスターバッチの分散性が要求される。そのために、ベースレジンの選定と共に、レジンの流動性(MFR)も考慮しなければならない。ベースレジンとしてのEEAやLDPEの流動性も種々であるが、MFRは5以上であることが好ましい。
さらに、マスターバッチの製造に際しては、受酸剤の分散性を高めることが必要である。そこで、ベースレジンには、ペレットよりもパウダーを用い、パウダーであるベースレジンとパウダーである受酸剤とをタンブリングすることが好ましい。このように、ベースレジン、受酸剤ともパウダーを用いることによってマスターバッチを製造する際に、成形圧力や温度がかかる前にパウダーレジンを受酸剤に充分馴染ませ、分散させることができる。
(評価資料作成方法)
次に、実施例における評価資料の作成方法について説明する。まず、CDと受酸剤を混合し、成形機でパージした。成形機のシリンダー温度は200〜220℃、シリンダー内滞留時間は180秒であった。前記受酸剤としては、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸マグネシウムを用いた。酸化マグネシウムについては、マスターバッチについても測定した。マスターバッチのベースレジンには、エチレンアクリル酸エチル共重合体(EEA)を用いた。
次に、実施例における評価資料の作成方法について説明する。まず、CDと受酸剤を混合し、成形機でパージした。成形機のシリンダー温度は200〜220℃、シリンダー内滞留時間は180秒であった。前記受酸剤としては、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸マグネシウムを用いた。酸化マグネシウムについては、マスターバッチについても測定した。マスターバッチのベースレジンには、エチレンアクリル酸エチル共重合体(EEA)を用いた。
(測定方法)
パージした樹脂を液体窒素で凍結しこれを粉砕して試料とした。
(発生塩素の捕集)
捕集液には3ml(1.8mM Na2CO3/1.7mM NaHCO3)を用い、加熱方法は、試料燃焼装置としてQF02(三菱化学社製)を用い、加熱温度240℃、加熱時間3分、雰囲気;酸素/アルゴン;250/100ml/min、試料量は0.3〜0.4gの条件で行った。
(測定)
測定には、正確に測定できるイオンクロマトを使用し、カラム;ASA−SC、流速;1.5m/min、溶離液;1.8mM Na2CO3/1.7mM NaHCO3の条件で行った。分析結果を表2に示す。
パージした樹脂を液体窒素で凍結しこれを粉砕して試料とした。
(発生塩素の捕集)
捕集液には3ml(1.8mM Na2CO3/1.7mM NaHCO3)を用い、加熱方法は、試料燃焼装置としてQF02(三菱化学社製)を用い、加熱温度240℃、加熱時間3分、雰囲気;酸素/アルゴン;250/100ml/min、試料量は0.3〜0.4gの条件で行った。
(測定)
測定には、正確に測定できるイオンクロマトを使用し、カラム;ASA−SC、流速;1.5m/min、溶離液;1.8mM Na2CO3/1.7mM NaHCO3の条件で行った。分析結果を表2に示す。
上記測定結果から、受酸剤を用いない比較例に比べて、受酸剤を用いた場合には、0.1重量%混合しただけでも塩素の発生量を低く抑えることができる。試薬を用いて測定した実施例1では正確な測定が困難であったが、イオンクロマトにより測定することによって受酸剤をきわめて少量添加するだけで塩素の発生量を低く抑えることができることが分かった。
1:蓋
2:缶本体
3:サンプル
4:試薬
2:缶本体
3:サンプル
4:試薬
Claims (9)
- プラスチック製容器包装廃棄物やその他の一般プラスチック製品の廃棄物等の廃プラスチックをリサイクルプラスチック材として使用する際に、前記リサイクルプラスチック材に0.1重量%以上の受酸剤を混合することを特徴とする廃プラスチックのリサイクル時に発生する塩酸の抑制方法。
- 受酸剤が酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックのリサイクル時に発生する塩酸の抑制方法。
- 受酸剤がハイドロタルサイトであることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックのリサイクル時に発生する塩酸の抑制方法。
- 受酸剤が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックのリサイクル時に発生する塩酸の抑制方法。
- 受酸剤が炭酸マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックのリサイクル時に発生する塩酸の抑制方法。
- 受酸剤が水酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックのリサイクル時に発生する塩酸の抑制方法。
- 受酸剤がケイ酸マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックのリサイクル時に発生する塩酸の抑制方法。
- 受酸剤がベースレジンにエチレンアクリル酸エチル共重合体を用いたマスターバッチとされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の廃プラスチックのリサイクル時に発生する塩酸の抑制方法。
- 受酸剤がベースレジンに低密度ポリエチレンを用いたマスターバッチとされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の廃プラスチックのリサイクル時に発生する塩酸の抑制方法。
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