JP2005063789A - 水素製造装置および燃料電池システム - Google Patents

水素製造装置および燃料電池システム Download PDF

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Abstract

【課題】 燃料電池システムや水素製造装置において、粉体による流路閉塞を防止し、水素含有ガスもしくは燃料電池に供給される流体に粉体が流入することを防止する。
【解決手段】 燃料電池の上流に、並列に配された複数系統のフィルターを有し、かつ該複数系統のフィルターのうちの一部の系統のフィルターと残部の系統のフィルターとを切り替えるための流路切り替え手段を有することを特徴とする燃料電池システム。水素製造用原料を改質して水素を含有する水素含有ガスを製造する水素製造装置において、並列に配された複数系統のフィルターを有し、かつ該複数系統のフィルターのうちの一部の系統のフィルターと残部の系統のフィルターとを切り替えるための流路切り替え手段を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は灯油等の原料から水素を製造するための水素製造装置に関する。また、本発明は、灯油等の原料から製造した水素を燃料とする燃料電池システムに関する。
燃料電池はエネルギー利用効率の良い発電システムとして開発が活発化している。この中でも固体高分子形燃料電池は高い出力密度、取り扱いの容易さなどから特に注目を集めている。
燃料電池は水素と酸素との電気化学的な反応により発電するシステムであるため、水素供給手段の確立が必須である。この方法の一つとして炭化水素燃料などの水素製造用原料を改質し水素を製造する方法があり、炭化水素燃料の供給システムがすでに社会的に整備されている点で、純水素を用いる方法より有利である。
炭化水素燃料としては、都市ガス、ガソリン、灯油、軽油などがある。ガソリン、灯油、軽油などの液体燃料は取り扱い、保存および輸送が容易であること、安価であることなどの特徴から燃料電池用燃料として注目されている。これらの炭化水素燃料を燃料電池で用いるためには炭化水素から水素を製造することが必要であるが、このために、改質器で炭化水素を水と反応させ主に一酸化炭素と水素に分解し、続いてシフト反応器で大部分の一酸化炭素を水と反応させ水素と二酸化炭素に転換し、最後に選択酸化反応器において微量の残存一酸化炭素を酸素と反応させ二酸化炭素にすることが行われている。また、硫黄が改質触媒などの被毒物質となるため、炭化水素燃料中の硫黄を除去するための脱硫器が設けられる場合も多い。このような燃料電池システムは例えば特許文献1に開示されている。
このように、水素含有ガスを製造する水素製造装置においては、脱硫器、改質器、CO変成反応器、選択酸化反応器などが設けられるが、これらはいずれも通常触媒を備える。
ところで触媒は必ずしも機械的強度が高いとはいえず、反応器に触媒を充填する際、反応器を輸送する際など、また反応器の運転によって、触媒の一部が粉化する場合がある。
触媒の粉化の程度によっては、水素製造装置や燃料電池システムの運転時に流路が閉塞する可能性がある。特に燃料電池は通常単電池が積層されたスタック構造をとるため、単電池内の面内においてまた積層方向においてガス流配の均一性などが要求されること、電極に多孔質体が使用されることなどの事情があるり、比較的少量の粉体の存在が、燃料電池の性能に影響を及ぼしやすい。従って、燃料電池に粉体が流入することは、極力避けることが望ましい。
特開2003−187832号公報
本発明の目的は、燃料電池システムにおいて、燃料電池上流の流体に粉体が含まれていたとしても、燃料電池に粉体が流入することを防止することである。
本発明の別の目的は、水素製造装置において、粉体による流路閉塞を防止し、また製造される水素含有ガス中に粉体が混入することを防止することである。特には、触媒を備える反応器を有する水素製造装置において、粉化した触媒による流路閉塞を防止し、また製造される水素含有ガス中に粉化した触媒が混入することを防止することである。
本発明により、燃料電池の上流に、並列に配された複数系統のフィルターを有し、かつ該複数系統のフィルターのうちの一部の系統のフィルターと残部の系統のフィルターとを切り替えるための流路切り替え手段を有することを特徴とする燃料電池システムが提供される。
本発明により、水素製造用原料を改質して水素を含有する水素含有ガスを製造する水素製造装置と、燃料電池とを備え、該水素製造装置が該燃料電池のアノード室に接続された燃料電池システムにおいて、
該水素製造装置内に、および/または該水素製造装置と該アノード室との間に、
並列に配された複数系統のフィルターと、
該複数系統のフィルターのうちの一部の系統のフィルターと残部の系統のフィルターとを切り替えるための流路切り替え手段と
を有することを特徴とする燃料電池システムが提供される。
前記水素製造装置が、水素製造用原料中の硫黄分濃度を低減する脱硫器、水素製造用原料を改質して水素を含有する改質ガスを製造する改質器、該改質ガス中の一酸化炭素濃度をシフト反応により低減するCO変成反応器および該CO変成反応器を経た改質ガス中の一酸化炭素濃度を酸化反応により低減する選択酸化反応器を有し、
前記並列に配された複数系統のフィルターおよび流路切り替え手段が、該選択酸化反応器の下流かつ前記アノード室の上流に設けられた燃料電池システムが好ましい。
前記並列に配された複数系統のフィルターおよび流路切り替え手段が、さらに、前記脱硫器の下流かつ前記改質器の上流に設けられた燃料電池システムが好ましい。
本発明により、水素製造用原料を改質して水素を含有する水素含有ガスを製造する水素製造装置において、
並列に配された複数系統のフィルターを有し、かつ該複数系統のフィルターのうちの一部の系統のフィルターと残部の系統のフィルターとを切り替えるための流路切り替え手段を有することを特徴とする水素製造装置が提供される。
前記水素製造装置が、水素製造用原料中の硫黄分濃度を低減する脱硫器、水素製造用原料を改質して水素を含有する改質ガスを製造する改質器、該改質ガス中の一酸化炭素濃度をシフト反応により低減するCO変成反応器および該CO変成反応器を経た改質ガス中の一酸化炭素濃度を酸化反応により低減する選択酸化反応器を有し、
前記並列に配された複数系統のフィルターおよび流路切り替え手段が、該選択酸化反応器の下流に設けられた水素製造装置が好ましい。
前記並列に配された複数系統のフィルターおよび流路切り替え手段が、さらに、前記脱硫器の下流かつ前記改質器の上流に設けられた水素製造装置が好ましい。
本発明によれば、水素製造装置および燃料電池システムにおいて、フィルターにより粉体を捕捉することができ、かつフィルターを切り替え、交換して使用することが可能になる。したがって、粉体による機器や配管の閉塞を防止しつつ水素製造装置や燃料電池システムを連続運転することが可能となる。
図1に水素製造装置と燃料電池とを有する燃料電池システムの一形態につき、概略フローを示す。なお、図には水素製造用原料が各種処理を受けて水素含有ガスとなり燃料電池のアノード室102Aに至るまでのアノードガス供給ラインを主に示してあり、他のラインは簡略に示すか、省略してある。
ここでは水素製造用原料は灯油であり、燃料電池は固体高分子形燃料電池である。水素製造装置100は原料ポンプ1、脱硫器2、改質器3、CO変成反応器4、選択酸化反応器5を備える。固体高分子形燃料電池システムの場合は特に一酸化炭素濃度を極力抑えるために、CO変成反応器および選択酸化反応器を設けることが好ましい。
脱硫器において灯油の硫黄分の濃度が低減され、脱硫された灯油は不図示の気化器により気化され、スチームと混合されて改質器に供給される。改質器では灯油が水蒸気改質されて水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水を含む改質ガスが得られる。改質ガスはCO変成反応器においてシフト反応(CO+H2O→CO2+H2)により一酸化炭素が水素に転換され、さらに選択酸化反応器において、COが選択的に酸化されて二酸化炭素になる。
こうして得られた水素含有ガスが燃料電池102のアノード室102Aに供給される。一方、燃料電池のカソード室102Cには空気ブロワ101から空気(大気)が供給される。電気化学反応の後、アノード室からアノードオフガスが排出され、カソード室からはカソードオフガスが排出される。
ここでは改質器は反応管を外部から加熱する外熱式改質器であり、この加熱のためにアノードオフガスを空気で燃焼させる。また選択酸化反応器には酸素を供給するために空気が供給される。さらに、アノードオフガス、カソードオフガスの顕熱を利用することも行われ、流体の加熱や冷却のための熱交換器、スチーム発生器が設けられる。これらについては図示を省略してある。
さて脱硫器、改質器、CO変成反応器、選択酸化反応器は、いずれも触媒を備える反応器(以下、触媒具備反応器という。)である。これら触媒が粉化した場合などに、燃料電池に粉体が流入することを防止するためにフィルター11aおよびbが選択酸化反応器の下流かつアノード室の上流に設けられる。この位置にフィルターを設けること、すなわち水素製造装置を構成する全ての触媒具備反応器の下流(原料から水素含有ガスに変換される流体の流れ方向について下流、すなわち燃料電池のアノードガス供給ラインの流れ方向について下流)にフィルターを設けることによって、アノードガス供給ラインに存在する脱硫触媒、改質触媒、CO変成触媒および選択酸化触媒のいずれが粉化しても、水素含有ガスから粉体を除去することができ、燃料電池に粉体が流入することを防止できる。
フィルターを2個並列に設置することにより、1個ずつ切り替えて連続運転することが可能となる。切替のタイミングは圧力または差圧が所定値を超えた時点とすることができる。ここでは、まず自動弁11aおよび13aを開、自動弁11bおよび13bを閉としてa系列(図面左側)のフィルター12aだけに流体を通す。そして圧力計21によって脱硫器上流の水素製造用原料の圧力を監視する。この圧力が所定値以上になった場合には、制御装置30が自動弁11bおよび13bを開、自動弁11aおよび13aを閉としてb系列(図面右側)のフィルター12bだけに流体を流す。そしてフィルター12aは交換する。
図2には本発明の別の形態を示す。この形態では改質器3の入り口に設けた圧力計22で計測した圧力に基づいて制御装置30から自動弁11aおよびb、13aおよびbを開閉し、フィルター12aおよびbを切替て使用することを可能にする。また脱硫器と改質器の間にも自動弁およびフィルターが2系列並列に設けられ、脱硫器入り口に設けた圧力計21で計測した圧力に基づいて制御装置30から自動弁14aおよびb、自動弁16aおよびbを開閉し、フィルター15aおよびbを切替て使用することを可能とする。
この形態では、改質器に供給される流体中の粉体は改質器上流のフィルター15aおよびbで、燃料電池アノード室に供給される流体中の粉体はアノード室上流のフィルター12aおよびbで除去することができる。改質器の触媒層に粉体が流入すると、触媒層の目詰まりによって触媒層へのガス供給の均一性が損なわれ、その結果、反応領域の温度分布に悪影響が及ぶ場合が考えられる。これは、改質反応の反応熱が大きいことに起因する。このように改質器も粉体の影響を受けやすい傾向があるため、改質器の上流で粉体を除去することが好ましい。
〔フィルター〕
前述の形態では、1系統に1つのフィルターが配され、それが2系統並列に配されている。1系統あたりのフィルターの数は1つに限定されず、2以上であってもよい。また、系統の数も2つに限定されず、3以上であっても良い。
本発明では、流路切り替え手段によって複数系統のフィルターのうちの一部の系統のフィルターと残部の系統のフィルターとを切り替える。2系統の場合は1系統ずつ交互に切り替えて使用する。例えば3系統の場合は、通常2つの系統を交互に切り替えて使用し、残る1系統はバックアップ用として使用するような使用形態がありうる。
フィルターは、前述の二つの形態における設置場所に限らず、触媒粉化が予想される触媒具備反応器の下流に、また粉体の影響が懸念される機器の上流に適宜配置することができる。
フィルターの材質としては、使用環境において所望の耐性を有する材料であってフィルターの形状に加工できるものから適宜選ぶことができる。例えば、ステンレス鋼などの金属、コーディエライトなどのセラミックスを挙げることができる。その構造としてはフィルターとして機能しうる構造から適宜選ぶことができ、例えばメッシュ状やハニカム状が挙げられる。例えば、金属メッシュフィルターやハニカム状セラミックスフィルターなどが通過ガスの温度に対するフィルターの耐久性の観点から好ましく使用できる。
フィルターの形状としてはコーン状が粉体の捕捉のし易さおよびガスの通過量の確保および配管への組み込み易さの観点から好ましい。
〔流路切り替え手段〕
前述の形態ではフィルター切替のために止め弁11aおよびb、13aおよびbを用いているが、これらに替えてそれぞれ三方弁を用いることもできる。またフィルター切替のために用いるバルブは自動弁である必要はなく、手動によるものでもよい。
〔フィルター切替のタイミング〕
フィルター交換は定期的に行うこともできるが、圧力を利用してフィルター交換のタイミングを知ることが簡易かつ状況に応じた判断ができるため、好ましい。前述の形態では所定の位置の圧力を圧力計で検知したが、差圧を検知しても良い。例えば図2では、圧力計21を設置するとともに、脱硫器出口と改質器入口との間および選択酸化反応器の出口とアノード室入口との間のフィルター部に差圧計を設置し検知しても良い。
フィルターは経済性の観点からより長時間使用することが好ましいが、通常、燃料電池システムは100kPa(ゲージ圧)以下で運転を行うため、例えば図1の場合には、脱硫器上流の圧力計21が好ましくは70kpa以上、より好ましくは80kPa以上、さらに好ましくは90kPa以上に達した時点で制御装置30の信号によりフィルターの切替交換を行う。
図2の場合には、脱硫器上流の圧力計21が好ましくは70kpa以上、より好ましくは80kPa以上、さらに好ましくは90kPa以上に達した時点で、改質器の入り口に設けた圧力計22と圧力計21との圧力上昇の経時変化から、制御装置30により改質器上流のフィルターと燃料電池アノード室上流のフィルターの目詰まりの程度を判断し、いずれか一方あるいは両方のフィルターを切替交換する。
差圧計を用いる場合は、例えば図2では、通常燃料電池システムは100kPa(ゲージ圧)以下で運転を行うため、脱硫器上流の圧力計21が好ましくは70kpa以上、より好ましくは80kPa以上、さらに好ましくは90kPa以上に達した時点で、各差圧計の圧力の経時変化から、制御装置30により改質器上流のフィルターと燃料電池アノード室上流のフィルターの目詰まりの程度を判断し、いずれか一方あるいは両方のフィルターを切替交換する。
〔制御手段〕
上記のような自動切り替えのために用いる制御装置としては、圧力計などのセンサーから信号を受信し、所定の値との比較を行い、切り替え手段に所定の信号を送信できるシーケンサーやコンピュータなどの公知の制御装置を用いれば良い。
切替の信号を発するとともに、制御装置によってブザーを鳴らす、ランプを点灯する、画面に表示などを行い、人(管理者や運転員)にフィルター交換を促すこともできる。
〔改質器〕
改質器は、水素製造用原料と水および/または酸素を反応させ、水素を含有する改質ガスを製造する装置である。この装置で水素製造用原料は主に水素と一酸化炭素に分解される。また、通常、二酸化炭素およびメタンも分解ガス中に含有される。分解反応の例としては水蒸気改質反応、自己熱改質反応、部分酸化反応などを挙げることができる。
水蒸気改質反応とは水蒸気と炭化水素を反応させるものであるが、大きな吸熱を伴うため通常外部からの加熱が必要である。通常、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などのVIII族金属を代表例とする金属触媒の存在下反応が行われる。反応温度は450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で行うことができる。反応系に導入するスチームの量は、水素製造用原料に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比)として定義され、この値は好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。水素製造用原料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は水素製造用原料の液体状態での流速をA(L/h)、触媒層体積をB(L)とした場合A/Bで表すことができ、この値は好ましくは0.05〜20h-1、より好ましくは0.1〜10h-1、さらに好ましくは0.2〜5h-1の範囲で設定される。
部分酸化反応とは、水素製造用原料を酸化させて改質反応を進行させる方法であり、比較的立ち上げ時間が短く、装置をコンパクトに設計できることもあり、水素製造方法として注目されている。触媒を使用する場合と使用しない場合があるが、触媒を使用する場合は、通常、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などのVIII族金属を代表例とする金属触媒やペロブスカイトやスピネル型酸化物触媒の存在下反応が行われる。反応系においてすすの発生を抑制するためにスチームを導入することができ、その量は、スチーム/カーボン比として好ましくは0.1〜5、より好ましくは0.1〜3、さらに好ましくは1〜2とされる。
部分酸化改質では酸素が原料に添加される。酸素源としては純酸素でも良いが多くの場合空気が使用される。反応を進めるための温度を確保するため、熱のロス等において適宜添加量は決定される。その量は、水素製造用原料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比)として好ましくは0.1〜3、より好ましくは0.2〜0.7とされる。部分酸化反応の反応温度は、触媒を用いない場合は、反応温度は1,000〜1,300℃の範囲とすることができ、触媒を用いた場合は水蒸気改質反応の場合と同様、450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で設定することができる。水素製造用原料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1〜30の範囲で選ばれる。
自己熱改質反応とは、水素製造用原料の一部を酸化しながら、この時発生する熱で水蒸気改質反応を進行させることで反応熱のバランスを取りつつ改質を行う方法であり、比較的立ち上げ時間も短く制御も容易であるため、近年燃料電池用の水素製造方法として注目されているものである。この場合にも通常、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などのVIII族金属を代表例とする金属触媒の存在下反応が行われる。反応系に導入するスチームの量は、スチーム/カーボン比として好ましくは0.3〜10、より好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは1〜3とされる。
自己熱改質ではスチームの他に酸素が原料に添加される。酸素源としては純酸素でも良いが多くの場合空気が使用される。通常水蒸気改質反応に伴う吸熱反応をバランスできる熱量を発生し得る程度の酸素を添加するが、熱のロスや必要に応じて設置する外部加熱と関係において適宜添加量は決定される。その量は、水素製造用原料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比)として好ましくは0.05〜1、より好ましくは0.1〜0.75、さらに好ましくは0.2〜0.6とされる。自己熱改質反応の反応温度は水蒸気改質反応の場合と同様、450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で設定される。水素製造用原料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1〜30、より好ましくは0.5〜20、さらに好ましくは1〜10の範囲で選ばれる。
〔CO変成反応器〕
改質器で発生するガスは水素の他に一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、水蒸気を含む。また、自己熱改質で空気を酸素源とした場合には窒素も含有される。このうち、一酸化炭素を水と反応させ水素と二酸化炭素に転換する工程を行うのがCO変成反応器である。通常、触媒の存在下反応が進行し、Fe−Crの混合酸化物、Zn−Cuの混合酸化物、白金、ルテニウム、イリジウムなど貴金属を含有する触媒を用い、一酸化炭素含有量(ドライベースのモル%)を好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下までに落とす。シフト反応を二段階で行うこともでき、この場合高温CO変成反応器と低温CO変成反応器が用いられる。
〔選択酸化反応器〕
固体高分子形燃料電池システムでは、さらに一酸化炭素濃度を低減させることが好ましく、このためにCO変成反応器の出口ガスを選択酸化反応で処理することが好ましい。この工程では、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、金などを含有する触媒を用い、残存する一酸化炭素モル数に対し好ましくは0.5〜10倍モル、より好ましくは0.7〜5倍モル、さらに好ましくは1〜3倍モルの酸素を添加することで一酸化炭素を選択的に二酸化炭素に転換することにより一酸化炭素濃度を好ましくは10ppm(ドライベースのモル基準)以下に低減させる。この場合、一酸化炭素の酸化と同時に共存する水素と反応させメタンを生成させることで一酸化炭素濃度の低減を図ることもできる。
〔燃料電池〕
燃料電池としては、燃料極において水素が電極反応の反応物質であるタイプの燃料電池を適宜採用することができる。例えば、固体高分子形、燐酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形の燃料電池を採用することができる。以下、固体高分子型燃料電池の構成を記す。
燃料電池電極はアノード(燃料極)およびカソード(空気極)とこれらに挟まれる固体高分子電解質からなり、アノード側には水素含有ガスが、カソード側には空気等の酸素含有ガスが、それぞれ必要であれば適当な加湿処理を行った後導入される。
この時、アノードでは水素ガスがプロトンとなり電子を放出する反応が進行し、カソードでは酸素ガスが電子とプロトンを得て水となる反応が進行する。これらの反応を促進するため、それぞれ、アノードには白金黒、活性炭担持のPt触媒あるいはPt−Ru合金触媒などが、カソードには白金黒、活性炭担持のPt触媒などが用いられる。通常アノード、カソードの両触媒とも、必要に応じてテフロン、低分子の高分子電解質膜素材、活性炭などと共に多孔質触媒層に成形される。
固体高分子電解質としてはナフィオン(Nafion、デュポン社製)、ゴア(Gore、ゴア社製)、フレミオン(Flemion、旭硝子社製)、アシプレックス(Aciplex、旭化成社製)等の商品名で知られる高分子電解質膜が通常用いられ、この両側に上記多孔質触媒層を積層しMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極集合体)が形成される。さらにMEAを金属材料、グラファイト、カーボンコンポジットなどからなるガス供給機能、集電機能、特にカソードにおいては重要な排水機能等を持つセパレータで挟み込むことで燃料電池が組み立てられる。電気負荷はアノード、カソードと電気的に連結される。
〔水素製造用原料〕
水素製造の原料としては、水蒸気改質法、オートサーマルリフォーミング法、部分酸化法などの改質法により水素を含む改質ガスを得ることのできる物質から適宜選択して使用できる。例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類など分子中に炭素と水素を有する化合物を用いることがでる。工業用あるいは民生用に安価に入手できる好ましい例として、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、都市ガス、LPG(液化石油ガス)、ガソリン、灯油などを挙げることができる。なかでも灯油は工業用としても民生用としても入手容易であり、その取り扱いも容易なため、好ましい。
〔脱硫〕
水素製造用原料中の硫黄は改質触媒を不活性化させる作用があるためなるべく低濃度であることが望ましく、好ましくは0.1質量ppm以下、より好ましくは50質量ppb以下とする。このため、必要であれば前もって水素製造用原料を脱硫することができる。脱硫工程に供する原料中の硫黄濃度には特に制限はなく脱硫工程において、上記の硫黄濃度に転換できるものであれば使用することができる。
脱硫の方法にも特に制限はないが、適当な触媒と水素の存在下水素化脱硫を行い生成した硫化水素を酸化亜鉛などに吸収させる方法を例としてあげることができる。この場合用いることができる触媒の例としてはニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデンなどを成分とする触媒を挙げることができる。一方、適当な収着剤の存在下必要であれば水素の共存下硫黄分を収着させる方法も採用できる。この場合用いることができる収着剤としては特許第2654515号公報、特許第2688749号公報などに示されたような銅−亜鉛を主成分とする収着剤あるいはニッケル−亜鉛を主成分とする収着剤などを例示できる。
〔触媒〕
脱硫触媒(収着剤も含める)、改質触媒、CO変成触媒、選択酸化触媒のいずれにおいても触媒の形状は適宜選ばれる。典型的には粒状であるが、場合によってはハニカム状などとされることもある。
〔水素含有ガスの組成〕
改質器、シフト反応器および選択酸化反応器を経たガスの組成(ドライベースのモル%)は改質器に水蒸気改質反応を用いた場合、通常例えば、水素65〜75%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素20〜30%、窒素1〜10%である。一方、自己熱改質反応を用いた場合の組成(ドライベースのモル%)は、通常例えば、水素25〜40%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素20〜40%、窒素30〜54%である。部分酸化改質反応を用いた場合の組成は(ドライベースのモル%)、通常例えば、水素20〜40%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素20〜45%、窒素30〜55%である。また、改質器、シフト反応器を経たガスの組成(ドライベースのモル%もしくはモルppm)は改質器に水蒸気改質反応を用いた場合、通常例えば、水素65〜75%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素20〜30%、一酸化炭素1000ppm〜10000ppmである。一方、自己熱改質反応を用いた場合の組成(ドライベースのモル%もしくはモルppm)は、通常例えば、水素25〜40%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素20〜40%、一酸化炭素1000ppm〜10000ppm、窒素30〜54%である。部分酸化改質反応を用いた場合の組成は(ドライベースのモル%)、通常例えば、水素20〜40%、メタン0.1〜5%、一酸化炭素1000ppm〜10000ppm、二酸化炭素20〜45%、窒素30〜55%である。さらに、改質器を経たガスの組成(ドライベースのモル%)は改質器に水蒸気改質反応を用いた場合、通常例えば、水素63〜73%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素5〜20%、一酸化炭素5〜20%である。一方、自己熱改質反応を用いた場合の組成(ドライベースのモル%)は、通常例えば、水素23〜37%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素5〜25%、一酸化炭素5〜25%、窒素30〜60%である。部分酸化反応を用いた場合の組成は(ドライベースのモル%)、通常例えば、水素15〜35%、メタン0.1〜5%、一酸化炭素10〜30%、二酸化炭素10〜40%、窒素30〜60%である。
〔他の機器〕
水素製造装置あるいは燃料電池システムの公知の構成要素は、必要に応じて適宜設けることができる。具体例を挙げれば、燃料電池のカソードに空気等の酸素含有ガスを供給する手段、燃料電池に供給するガスを加湿するための水蒸気を発生する水蒸気発生器、燃料電池等の各種機器を冷却するための冷却系、各種流体を加圧するためのポンプ、圧縮機、ブロワなどの加圧手段、流体の流量を調節するため、あるいは流体の流れを遮断/切り替えるためのバルブ等の流量調節手段や流路遮断/切り替え手段、熱交換・熱回収を行うための熱交換器、液体を気化する気化器、気体を凝縮する凝縮器、スチームなどで各種機器を外熱する加熱/保温手段、各種流体の貯蔵手段、計装用の空気や電気系統、制御用の信号系統、制御装置、出力用や動力用の電気系統などである。
本発明の燃料電池システムの一形態の概略を示すフロー図である。 本発明の燃料電池システムの別の形態の概略を示すフロー図である。
符号の説明
1 原料ポンプ
2 脱硫器
3 改質器
4 CO変成反応器
5 選択酸化反応器
11a、11b、13a、13b、14a、14b、16a、16b 自動弁
12a、12b、15a、15b フィルター
21、22 圧力計
30 制御装置
100 水素製造装置
101 空気ブロワ
102 燃料電池
102A アノード室
102C カソード室

Claims (7)

  1. 燃料電池の上流に、並列に配された複数系統のフィルターを有し、かつ該複数系統のフィルターのうちの一部の系統のフィルターと残部の系統のフィルターとを切り替えるための流路切り替え手段を有することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 水素製造用原料を改質して水素を含有する水素含有ガスを製造する水素製造装置と、燃料電池とを備え、該水素製造装置が該燃料電池のアノード室に接続された燃料電池システムにおいて、
    該水素製造装置内に、および/または該水素製造装置と該アノード室との間に、
    並列に配された複数系統のフィルターと、
    該複数系統のフィルターのうちの一部の系統のフィルターと残部の系統のフィルターとを切り替えるための流路切り替え手段と
    を有することを特徴とする燃料電池システム。
  3. 前記水素製造装置が、水素製造用原料中の硫黄分濃度を低減する脱硫器、水素製造用原料を改質して水素を含有する改質ガスを製造する改質器、該改質ガス中の一酸化炭素濃度をシフト反応により低減するCO変成反応器および該CO変成反応器を経た改質ガス中の一酸化炭素濃度を酸化反応により低減する選択酸化反応器を有し、
    前記並列に配された複数系統のフィルターおよび流路切り替え手段が、該選択酸化反応器の下流かつ前記アノード室の上流に設けられた請求項2記載の燃料電池システム。
  4. 前記並列に配された複数系統のフィルターおよび流路切り替え手段が、さらに、前記脱硫器の下流かつ前記改質器の上流に設けられた請求項3記載の燃料電池システム。
  5. 水素製造用原料を改質して水素を含有する水素含有ガスを製造する水素製造装置において、
    並列に配された複数系統のフィルターを有し、かつ該複数系統のフィルターのうちの一部の系統のフィルターと残部の系統のフィルターとを切り替えるための流路切り替え手段を有することを特徴とする水素製造装置。
  6. 前記水素製造装置が、水素製造用原料中の硫黄分濃度を低減する脱硫器、水素製造用原料を改質して水素を含有する改質ガスを製造する改質器、該改質ガス中の一酸化炭素濃度をシフト反応により低減するCO変成反応器および該CO変成反応器を経た改質ガス中の一酸化炭素濃度を酸化反応により低減する選択酸化反応器を有し、
    前記並列に配された複数系統のフィルターおよび流路切り替え手段が、該選択酸化反応器の下流に設けられた請求項5記載の水素製造装置。
  7. 前記並列に配された複数系統のフィルターおよび流路切り替え手段が、さらに、前記脱硫器の下流かつ前記改質器の上流に設けられた請求項6記載の水素製造装置。
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