JP2004171866A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭化水素燃料と水とを反応させて水素を含有する改質ガスを得る改質装置と、該改質装置で得られた水素と酸素とを反応させて発電を行う固体高分子形燃料電池とを備える燃料電池システムであって、該改質装置と該燃料電池との間に、該改質ガスから、該改質装置を反応せずに通過した残存炭化水素燃料の少なくとも一部を除去可能な除去手段を有することを特徴とする燃料電池システム。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素化合物を燃料とする固体高分子形燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池はエネルギー利用効率の良い発電システムとして開発が活発化している。この中でも固体高分子形燃料電池は高い出力密度、取り扱いの容易さなどから特に注目を集めている。
【0003】
燃料電池は水素と酸素との電気化学的な反応により発電するシステムであるため、水素供給手段の確立が必須である。この方法の一つとして炭化水素燃料を改質し水素を抽出する方法があり、炭化水素燃料の供給システムがすでに社会的に整備されている点で、純水素を用いる方法などより有利である。
【0004】
炭化水素燃料としては、都市ガス、ガソリン、灯油、軽油などがあるが、この中でガソリン、灯油、軽油などの液体燃料は取り扱い、保存および輸送が容易であること、安価であることなどの特徴から燃料電池用燃料として注目されている。これらの炭化水素燃料を燃料電池で用いるためには炭化水素から水素を抽出することが必要であるが、このために通常、改質装置で炭化水素を水と反応させ主に一酸化炭素と水素に分解し、続いてシフト反応器で大部分の一酸化炭素を水と反応させ水素と二酸化炭素に転換し、最後に選択酸化反応器において微量の残存一酸化炭素を酸素と反応させ二酸化炭素にすることが行われる。
【0005】
このような改質に関連する技術として、水素製造用圧力変動吸着装置の吸着塔に係る技術が特許文献1に、水素の発生による気化動力装置における酸性ガスの除去に係る技術が特許文献2に、燃料電池用水蒸気分離器に係る技術が特許文献3に開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−300244号公報
【特許文献2】
特表2001−505615号公報
【特許文献3】
特開平11−3722号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ガソリン、灯油、軽油等の炭化水素燃料を改質反応により分解する際、若干の分解残存成分が存在する場合がある。これが固体高分子形燃料電池に流入すると、発電効率が悪化するなどの悪影響があることが本発明者らによる検討により判明した。更に該分解残存成分或いは、副反応生成物が後段の触媒であるシフト反応触媒、或いは選択酸化触媒に流入することにより、触媒が被毒されることが本発明者らによる検討により判明した。分解残存成分の一つとして、改質装置に供給された炭化水素燃料が、改質装置において反応せずにそのまま通過し、改質ガス中に残存してしまう残存炭化水素燃料がある。また、改質装置において炭化水素燃料が副反応を起こして発生する副反応生成物、すなわち水素や一酸化炭素等の本来の改質反応生成物以外の物質もある。副反応生成物としては、アンモニアや、蟻酸、アルデヒド等の含酸素化合物などがある。
【0008】
本発明はこのような、分解残存成分の悪影響を取り除くことのできる手段を備えた燃料電池システムを提供するものである。さらに詳しくは、改質反応で若干の分解残存成分が存在する場合においても安定でかつ高効率な燃料電池システムを提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明により、炭化水素燃料と水とを反応させて水素を含有する改質ガスを得る改質装置と、該改質装置で得られた水素と酸素とを反応させて発電を行う固体高分子形燃料電池とを備える燃料電池システムであって、
該改質装置と該燃料電池との間に、該改質ガスから、該改質装置を反応せずに通過した残存炭化水素燃料の少なくとも一部を除去可能な除去手段を有することを特徴とする燃料電池システムが提供される。
【0010】
このシステムが、さらに、前記改質装置と前記燃料電池との間に、前記改質ガス中の一酸化炭素を水とシフト反応させるシフト反応器と、該シフト反応器で得られたガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する選択酸化反応器とを備えることが好ましい。
【0011】
前記除去手段が、前記選択酸化反応器と前記燃料電池との間に配されたことが好ましい。
【0012】
前記炭化水素燃料が、沸点が160℃以上の炭化水素化合物を含み、かつ、
前記除去手段が、該沸点が160℃以上の炭化水素化合物の少なくとも一部を除去可能であることが好ましい。
【0013】
前記炭化水素燃料が、炭素数が8以上の炭化水素化合物を含み、かつ、
前記除去手段が、該炭素数が8以上の炭化水素化合物の少なくとも一部を除去可能であることが好ましい。
【0014】
前記除去手段が、前記改質装置で発生した副反応生成物をも除去可能であることが好ましい。
【0015】
前記除去手段が、供給されるガスを冷却して前記残存炭化水素燃料のうちの少なくとも一部を凝縮させ、凝縮した成分を除去する凝縮分離手段を備えることが好ましい。
【0016】
前記除去手段が、前記残存炭化水素を収着する収着手段を備えることが好ましい。
【0017】
前記除去手段が、供給されるガスを冷却して前記残存炭化水素燃料のうちの少なくとも一部を凝縮させ、凝縮した成分を除去する凝縮分離手段を備え、かつ、該凝縮分離手段の下流に、前記残存炭化水素を収着する収着手段を備えることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の燃料電池システムは改質装置と固体高分子形燃料電池を有する。また、一酸化炭素による燃料電池の性能劣化防止の観点から、改質ガス中の一酸化炭素濃度を低減するために、改質装置と燃料電池との間にシフト反応器および/または選択酸化反応器を設けても良い。
【0019】
1)改質装置
炭化水素燃料と水を反応させる装置である。この装置で炭化水素燃料は主に一酸化炭素と水素に分解される。また、通常、二酸化炭素およびメタンも分解ガス中に含有される。分解反応の例としては水蒸気改質反応、自己熱改質反応などを挙げることができる。
【0020】
水蒸気改質反応とは水蒸気と炭化水素を反応させるものであるが、大きな吸熱を伴うため通常外部からの加熱が必要である。通常、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などのVIII族金属を代表例とする金属触媒の存在下反応が行われる。反応温度は450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で行うことができる。反応系に導入するスチームの量は、原料炭化水素燃料に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比)として定義され、この値は好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。この時の空間速度(LHSV)は炭化水素燃料の液体状態での流速をA(L/h)、触媒層体積をB(L)とした場合A/Bで表すことができ、この値は好ましくは0.05〜20h−1、より好ましくは0.1〜10h−1、さらに好ましくは0.2〜5h−1の範囲で設定される。
【0021】
自己熱改質反応とは、燃料の一部を酸化しながら、この時発生する熱で水蒸気改質反応を進行させることで反応熱のバランスを取りつつ改質を行う方法であり、比較的立ち上げ時間も短く制御も容易であるため、近年燃料電池用の水素製造方法として注目されているものである。この場合にも通常、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などのVIII族金属を代表例とする金属触媒の存在下反応が行われる。反応系に導入するスチームの量は、スチーム/カーボン比として好ましくは0.3〜10、より好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは1〜3とされる。
【0022】
自己熱改質ではスチームの他に酸素が原料に添加される。酸素源としては純酸素でも良いが多くの場合空気が使用される。通常水蒸気改質反応に伴う吸熱反応をバランスできる熱量を発生し得る程度の酸素を添加するが、熱のロスや必要に応じて設置する外部加熱と関係において適宜添加量は決定される。その量は、原料炭化水素燃料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比)として好ましくは0.05〜1、より好ましくは0.1〜0.75、さらに好ましくは0.2〜0.6とされる。自己熱改質反応の反応温度は水蒸気改質反応の場合と同様、450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で設定される。この時の空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1〜30、より好ましくは0.5〜20、さらに好ましくは1〜10の範囲で選ばれる。
【0023】
2)シフト反応器
改質装置で発生するガスは水素の他に一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、水蒸気を含む。また、自己熱改質で空気を酸素源とした場合には窒素も含有される。このうち、一酸化炭素を水と反応させ水素と二酸化炭素に転換する工程を行うのがシフト反応器である。通常、触媒の存在下反応が進行し、Fe−Crの混合酸化物、Zn−Cuの混合酸化物、白金、ルテニウム、イリジウムなど貴金属を含有する触媒を用い、一酸化炭素含有量(ドライベースのモル%)を好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下までに落とす。シフト反応を二段階で行うこともでき、この場合高温シフト反応器と低温シフト反応器が用いられる。
【0024】
3)選択酸化反応器
固体高分子形燃料電池システムでは、さらに一酸化炭素濃度を低減させることが好ましく、このためにシフト反応器の出口ガスを選択酸化反応で処理する。この工程では、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、金などを含有する触媒を用い、残存する一酸化炭素モル数に対し好ましくは0.5〜10倍モル、より好ましくは0.7〜5倍モル、さらに好ましくは1〜3倍モルの酸素を添加することで一酸化炭素を選択的に二酸化炭素に転換することにより一酸化炭素濃度を好ましくは10ppm(ドライベースのモル基準)以下に低減させる。この場合、一酸化炭素の酸化と同時に共存する水素と反応させメタンを生成させることで一酸化炭素濃度の低減を図ることもできる。
【0025】
次に、固体高分子型燃料電池の構成を記す。
【0026】
燃料電池電極はアノード(燃料極)およびカソード(空気極)とこれらに挟まれる固体高分子電解質からなり、アノード側には上記改質装置で得られた水素を含有する燃料ガスが、カソード側には空気等の酸素含有ガスが、それぞれ必要であれば適当な加湿処理を行った後導入される。
【0027】
この時、アノードでは水素ガスがプロトンとなり電子を放出する反応が進行し、カソードでは酸素ガスが電子とプロトンを得て水となる反応が進行する。これらの反応を促進するため、それぞれ、アノードには白金黒、活性炭担持のPt触媒あるいはPt−Ru合金触媒などが、カソードには白金黒、活性炭担持のPt触媒などが用いられる。通常アノード、カソードの両触媒とも、必要に応じてテフロン、低分子の高分子電解質膜素材、活性炭などと共に多孔質触媒層に成形される。
【0028】
固体高分子電解質としてはナフィオン(Nafion、デュポン社製)、ゴア(Gore、ゴア社製)、フレミオン(Flemion、旭硝子社製)、アシプレックス(Aciplex、旭化成社製)等の商品名で知られる高分子電解質膜が通常用いられ、この両側に上記多孔質触媒層を積層しMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極集合体)が形成される。さらにMEAを金属材料、グラファイト、カーボンコンポジットなどからなるガス供給機能、集電機能、特にカソードにおいては重要な排水機能等を持つセパレータで挟み込むことで燃料電池が組み立てられる。電気負荷はアノード、カソードと電気的に連結される。
【0029】
炭化水素燃料に含まれる炭化水素化合物が、いわゆる重い成分であると分解残存成分の悪影響が大きくなる傾向がある。本発明によれば分解残存成分の悪影響を抑制できるため、本発明は、炭化水素燃料が、純物質の沸点が160℃以上の炭化水素化合物を含む場合に好適に適用できる。炭化水素燃料に、180℃以上、さらには200℃以上の炭化水素化合物が含まれると、本発明の効果がより一層顕著となる。同様の観点から、本発明は、炭化水素燃料が炭素数8以上の炭化水素化合物を含む場合に好適に適用できる。炭化水素燃料に、好ましくは炭素数10以上、より好ましくは12以上40以下の炭化水素化合物が含まれると、本発明の効果がより一層顕著となる。
【0030】
炭化水素化合物の具体例としてはデカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサンなどの飽和炭化水素、
キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、クメン、プロピルベンゼン、あるいはブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、エチルナフタレン、プロピルナフタレン、ビフェニル、メチルビフェニル、エチルビフェニル、プロピルビフェニルなどの置換あるいは無置換の芳香族化合物、
テトラリン、デカリン、など飽和環を持つ芳香族あるいは非芳香族化合物、
などを挙げることができるが、これらは、非常に多くの対象化合物の一部の例でしかないことは言うまでもない。
【0031】
上記炭化水素化合物を含む炭化水素燃料として上記純物質を単独で用いることもできるが、通常、炭化水素燃料には該炭化水素化合物は混合物として複数種類が含まれる。その例としては、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、フィシャートロップシュ法で製造された燃料、などを挙げることができる。
【0032】
炭化水素燃料中の硫黄は改質触媒を不活性化させる作用があるためなるべく低濃度であることが望ましく、好ましくは50質量ppm以下、より好ましくは20質量ppm以下とする。このため、必要であれば前もって燃料を脱硫することができる。脱硫工程に供する原料中の硫黄濃度には特に制限はなく脱硫工程において上記硫黄濃度に転換できるものであれば使用することができる。
【0033】
脱硫の方法にも特に制限はないが、適当な触媒と水素の存在下水素化脱硫を行い生成した硫化水素を酸化亜鉛などに吸収させる方法を例としてあげることができる。この場合用いることができる触媒の例としてはニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデンなどを成分とする触媒を挙げることができる。一方、適当な収着剤の存在下必要であれば水素の共存下硫黄分を収着させる方法も採用できる。この場合用いることができる収着剤としては特許第2654515号公報、特許第2688749号公報などに示されたような銅−亜鉛を主成分とする収着剤あるいはニッケル−亜鉛を主成分とする収着剤などを例示できる。
【0034】
改質装置、シフト反応器および選択酸化反応器を経たガスの組成(ドライベースのモル%)は改質装置に水蒸気改質反応を用いた場合、通常例えば、水素65〜75%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素20〜30%、窒素1〜10%である。一方、自己熱改質反応を用いた場合の組成(ドライベースのモル%)は、通常例えば、水素25〜40%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素20〜40%、窒素30〜60%である。また、改質装置、シフト反応器を経たガスの組成(ドライベースのモル%もしくはモルppm)は改質装置に水蒸気改質反応を用いた場合、通常例えば、水素65〜75%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素20〜30%、一酸化炭素1000ppm〜10000ppmである。一方、自己熱改質反応を用いた場合の組成(ドライベースのモル%もしくはモルppm)は、通常例えば、水素25〜40%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素20〜40%、一酸化炭素1000ppm〜10000ppm、窒素30〜60%である。さらに、改質装置を経たガスの組成(ドライベースのモル%)は改質装置に水蒸気改質反応を用いた場合、通常例えば、水素63〜73%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素5〜20%、一酸化炭素5〜20%である。一方、自己熱改質反応を用いた場合の組成(ドライベースのモル%)は、通常例えば、水素23〜37%、メタン0.1〜5%、二酸化炭素5〜25%、一酸化炭素5〜25%、窒素30〜60%である。
【0035】
その他にどちらの改質方法の場合においても、改質装置の運転条件によっては原料とした炭化水素燃料を主成分とする微量の分解残存成分が検出される場合がある。この量は改質装置の空間速度が高く、反応温度が低いほど多く検出される傾向がある。また、改質装置の触媒が劣化しても同様の傾向が見られる。
【0036】
検出される分解残存成分の量は、運転条件に依存するが場合によっては10000体積ppm以下、或いは5000体積ppm以下、或いは1000体積ppm以下存在する場合がある。これらの分解残存成分の存在は固体高分子形燃料電池の分極の増大を引き起こし、性能の低下を招くことが判明した。
【0037】
そこで本発明では、上記改質装置と上記固体高分子形燃料電池との間に、比較的分子量が大きく高沸点の炭化水素である残存炭化水素の除去手段を設置する。この除去手段は残存炭化水素の除去と同時に改質反応の副反応生成物をも除去することも可能であり、これら両者を含めた分解残存成分の量を好ましくは1000体積ppm以下、より好ましくは500体積ppm以下、さらに好ましくは100体積ppm以下まで低減させる。このことにより、固体高分子形燃料電池の安定かつ高効率の運転が担保される。
【0038】
高分子量、高沸点の炭化水素の除去手段の具体例としては、収着剤を用いた収着装置による形態、冷却により液体として凝縮分離する形態などを挙げることができる。
【0039】
収着装置を用いる場合を説明する。収着剤としては例えば、活性炭、ゼオライト、などのような高表面積の多孔性物質を当てることができるが、活性炭が好ましく使用される。収着剤を円筒状あるいは円柱状などの容器に入れ、収着装置を形成することができる。容器に適当な温度調節手段を備えることもできる。
【0040】
活性炭を収着材とする場合、活性炭の温度を好ましくは室温〜150℃、好ましくは50℃〜120℃、さらに好ましくは70℃〜100℃の範囲とする。150℃以下とすることにより、活性炭の吸着能が低下することを良好に防止でき、残存炭化水素や副反応生成物を良好に除去できる。室温以上とすることにより、改質ガス中の水分が凝集することにより除去しようとしていない成分まで除去されてしまうといった現象を良好に防止することができる。
【0041】
活性炭の使用量は、残存炭化水素や副反応生成物を良好に除去しつつ収着剤の体積を抑制する観点から、標準条件におけるガス空間速度GHSV(水を除く)として、好ましくは1〜100000h−1、より好ましくは10〜50000h−1、さらに好ましくは100〜10000h−1になるように設定される。なお、GHSVは15℃、0.101MPa換算のものである(以下同じ)。
【0042】
用いる活性炭の粒径については特に制限はないが、活性炭層の圧力損失を抑制する観点から直径0.1mm以上が好ましく、吸着能の観点から5mm以下が好ましい。より好ましくは0.5mm〜4mm、さらに好ましくは1mm〜3mmのものが用いられる。
【0043】
次に冷却による凝縮分離装置を説明する。凝縮分離装置は、これに供給されるガスを冷却して凝縮成分を気相から除去するものであり、ガス冷却のための冷却部とガス/液分離部を有する。冷却部では、大気、水などの冷媒との熱交換手段、あるいは電気やガスなど適当な動力で運転される冷却器によりガスが冷却される。残存炭化水素や副反応生成物を良好に除去しつつ改質ガス中の水分が凝縮により除去されてしまうことを抑制する観点から、冷却された後のガス温度は通常、好ましくは室温〜150℃、より好ましくは40℃〜120℃、さらに好ましくは50℃〜100℃の範囲である。
【0044】
また、供給されるガスをフィルターに通す形態、ガスを水などの液体にバブリングさせる形態、ガスに水などの液体をシャワーをかける形態によっても、ガス中の残存炭化水素燃料等を除去することができる。
【0045】
除去手段は改質装置と燃料電池との間に設ける。改質装置に加えてシフト反応器および選択酸化反応器をこの順に有する場合は、改質装置とシフト反応器の間、あるいはシフト反応器と選択酸化反応器との間に設けることもできるが、収着による除去の場合も、凝縮分離による除去の場合も、温度レベルが適しているという点で選択酸化反応器の下流、燃料電池の直前に設けることが好ましい。
【0046】
また除去手段として、収着装置と凝縮分離装置の両方を組み合わせて用いることもできる。組み合わせの形態は適宜決定できるが、収着装置を凝縮分離装置の後流に配置する形態がより好ましい。凝縮分離装置により残存炭化水素燃料の除去を行うことができ、また改質装置で発生した副反応生成物のうちの一部の除去も行うことが可能であるが、改質装置で発生した副反応生成物のうち沸点が低いもののなかには凝縮分離装置で分離されずに通過するものもある。そこで凝縮分離装置の下流に設けた収着装置によって、このような低沸点物質も含めて更に除去を行うことができる。
【0047】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0048】
(システム例1)
図1において、燃料タンク3内の燃料は燃料ポンプ4を経て改質器バーナーオフガスとの熱交換器19を経て脱硫器5に流入する。この時、必要であれば選択酸化反応器11からの水素含有ガスを添加できる。脱硫器内には例えば銅−亜鉛系あるいはニッケル−亜鉛系の収着剤などを充填することができる。脱硫器5で脱硫された燃料は水タンク1から水ポンプ2を経た水と混合した後気化器6に導入され改質器7に送り込まれる。
【0049】
改質器7は加温用バーナー18で加温される。本バーナーの燃料には主に燃料電池17のアノードオフガスを用いるが必要に応じて燃料ポンプ4から吐出される燃料を補充することもできる。改質器7に充填する触媒としてはニッケル系、ルテニウム系、ロジウム系などの触媒を用いることができる。
【0050】
この様にして製造された水素と一酸化炭素を含有するガスは高温シフト反応器9、低温シフト反応器10、選択酸化反応器11を順次通過させることで一酸化炭素濃度が燃料電池の特性に影響を及ぼさない程度まで低減される。これらの反応器に用いる触媒の例としては高温シフト反応器9には鉄−クロム系触媒、低温シフト反応器10には銅−亜鉛系触媒、選択酸化反応器11にはルテニウム系触媒等を挙げることができる。
【0051】
残存炭化水素燃料の除去器21はアノード12の入口直前に設置される。該除去器は、改質器側に水冷凝縮分離器、その後流、燃料電池側に活性炭を充填した収着器から構成される。水冷凝縮器では、水流の温度、流量を調節しガス温を50〜70℃に制御する。一方、収着器には、粒径1〜3mmの活性炭粒を空間速度GHSV(水蒸気を除く)が1000〜10000h−1になるように充填する。
【0052】
固体高分子型燃料電池17はアノード12、カソード13、固体高分子電解質14からなり、アノード側には上記の方法で得られた高純度の水素を含有する燃料ガスが、カソード側には空気ブロアー8から送られる空気が、それぞれ必要であれば適当な加湿処理を行った後(加湿装置は図示していない)導入される。
【0053】
この時、アノードでは水素ガスがプロトンとなり電子を放出する反応が進行し、カソードでは酸素ガスが電子とプロトンを得て水となる反応が進行する。これらの反応を促進するため、それぞれ、アノードには白金黒、活性炭担持のPt触媒あるいはPt−Ru合金触媒などが、カソードには白金黒、活性炭担持のPt触媒などが用いられる。通常アノード、カソードの両触媒とも、必要に応じてテフロン、低分子の高分子電解質膜素材、活性炭などと共に多孔質触媒層に成形される。
【0054】
前記ナフィオン(Nafion、デュポン社製)、ゴア(Gore、ゴア社製)、フレミオン(Flemion、旭硝子社製)、アシプレックス(Aciplex、旭化成社製)等の商品名で知られるものを代表例とする高分子電解質膜の両側に該多孔質触媒層を積層しMEA(Membrane ElectrodeAssembly:膜電極集合体)が形成される。さらにMEAを金属材料、グラファイト、カーボンコンポジットなどからなるガス供給機能、集電機能、特にカソードにおいては重要な排水機能等を持つセパレータで挟み込むことで燃料電池が組み立てられる。電気負荷15はアノード、カソードと電気的に連結される。
【0055】
アノードオフガスは加温用バーナー18において燃焼され、熱交換器19を経て排気口20から排出される。カソードオフガスは排気口16から排出される。
【0056】
(システム例2)
本例は、残存炭化水素燃料の除去器21について、水冷凝縮分離器を用いず活性炭収着器のみを備えること以外は、システム例1と同様の構成である。
【0057】
(システム例3)
本例は、残存炭化水素燃料の除去器21について、活性炭収着器を用いず水冷凝縮分離器のみを備えること以外は、システム例1と同様の構成である。
【0058】
(システム例4)
システム例1では、水蒸気改質による改質を行うが、ここに示すシステム例4では自己熱改質を行う。図2において、燃料タンク3内の燃料は燃料ポンプ4およびオフガス燃焼熱交換器19を経て脱硫器5に流入する。脱硫器内には例えば銅−亜鉛系あるいはニッケル−亜鉛系の収着剤などを充填することができる。この時、必要であれば選択酸化反応器11からの水素含有ガスを添加できる。脱硫器5で脱硫された燃料は水タンク1から水ポンプ2を経た水と混合した後気化器6に導入され、次いで空気ブロアー8から送り出された空気と混合され改質器7に送り込まれる。
【0059】
改質器7の触媒としてはニッケル系、ルテニウム系、ロジウム系などの触媒を用いることができる。
【0060】
この時、酸素/カーボン比は好ましくは0.05〜1、より好ましくは0.1〜0.75、さらに好ましくは0.2〜0.6に設定され、スチーム/カーボン比は0.3〜10、好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは1〜3に設定される。また、この時の空間速度は、好ましくは0.1〜30、より好ましくは0.5〜20、さらに好ましくは1〜10の範囲で選ばれる。この時、酸素/カーボン比および空間速度を適宜制御することにより改質器内の温度を好ましくは450℃〜900℃、より好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃に制御することができる。
【0061】
この様にして製造された水素と一酸化炭素を含有するガスは高温シフト反応器9、低温シフト反応器10、選択酸化反応器11を順次通過させることで一酸化炭素濃度は燃料電池の特性に影響を及ぼさない程度まで低減される。これらの反応器に用いる触媒の例としては高温シフト反応器9には鉄−クロム系触媒、低温シフト反応器10には銅−亜鉛系触媒、選択酸化反応器11にはルテニウム系触媒等を挙げることができる。
【0062】
残存炭化水素燃料の炭化水素化合物の除去器21はアノード12の入口直前に設置される。該除去器は、改質器側に水冷凝縮分離器、その後流、燃料電池側に活性炭を充填した収着器から構成される。水冷凝縮分離器では、水流の温度、流量を調節しガス温を50〜70℃に制御する。一方、収着器には、粒径2〜4mmの活性炭粒を空間速度GHSV(水蒸気を除く)が1000〜10000h−1になるように充填する。
【0063】
固体高分子型燃料電池17はアノード12、カソード13、固体高分子電解質14からなり、アノード側には上記の方法で得られた高純度の水素を含有する燃料ガスが、カソード側には空気ブロアー8から送られる空気が、それぞれ必要であれば適当な加湿処理を行った後(加湿装置は図示していない)導入される。
【0064】
この時、アノードでは水素ガスがプロトンとなり電子を放出する反応が進行し、カソードでは酸素ガスが電子とプロトンを得て水となる反応が進行する。これらの反応を促進するため、それぞれ、アノードには白金黒、活性炭担持のPt触媒あるいはPt−Ru合金触媒などが、カソードには白金黒、活性炭担持のPt触媒などが用いられる。通常アノード、カソードの両触媒とも、必要に応じてテフロン、低分子の高分子電解質膜素材、活性炭などと共に多孔質触媒層に成形される。
【0065】
次いでナフィオン(Nafion、デュポン社製)、ゴア(Gore、ゴア社製)、フレミオン(Flemion、旭硝子社製)、アシプレックス(Aciplex、旭化成社製)等の商品名で知られる高分子電解質膜の両側に該多孔質触媒層を積層しMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極集合体)が形成される。さらにMEAを金属材料、グラファイト、カーボンコンポジットなどからなるガス供給機能、集電機能、特にカソードにおいては重要な排水機能等を持つセパレータで挟み込むことで燃料電池が組み立てられる。電気負荷15はアノード、カソードと電気的に連結される。
【0066】
アノードオフガスは燃焼熱交換器19において燃焼され原料の加温に用いられた後、排気口20から排出される。カソードオフガスは排気口16から排出される。
【0067】
(システム例5)
本例は、残存炭化水素燃料の除去器21について、水冷凝縮分離器を用いず活性炭収着器のみを備えること以外は、システム例4と同様の構成である。
【0068】
(システム例6)
本例は、残存炭化水素燃料の除去器21について、活性炭収着器を用いず水冷凝縮分離器のみを備えること以外は、システム例4と同様の構成である。
【0069】
(システム比較例1)
除去器21を削除した以外、システム例1と同様の構成である。
【0070】
(システム例比較例2)
除去器21を削除した以外、システム例4と同様の構成である。
【0071】
(実施例1)
システム例1の試験装置を用いて、灯油を燃料として用いて試験を行った。この時、改質器7に導入するスチーム/カーボン比は3.0に設定した。改質器に充填する触媒としては2質量%Ru/アルミナ触媒を用い、改質器出口温度は650℃に制御した。灯油のみを基準とするLHSVを3として運転した。
【0072】
高温シフト反応器9には鉄−クロム系触媒、低温シフト反応器10には銅−亜鉛系触媒、選択酸化反応器11にはルテニウム系触媒を充填した。その結果どの例においても、選択酸化反応器出口では、ガス組成(ドライベースのモル%もしくはモルppm)が水素濃度は70%を示し、CO濃度は10ppm以下となった。
【0073】
次に、燃料電池特性を1000mA/cm2におけるセル電圧を測定することにより比較した。その結果、450mVの電圧が観測された。
【0074】
(実施例2、3)
システム例2および3を用いて、実施例1と同様の試験を行った。その結果、1000mA/cm2におけるセル電圧はそれぞれ440mV、430mVであった。
【0075】
(比較例1)
システム比較例1を用いて、実施例1と同様の試験を行った。その結果、1000mA/cm2におけるセル電圧は350mVであった。
【0076】
(実施例4)
システム例4の試験装置を用いて、灯油を燃料として用いて試験を行った。この時、改質器7に導入する酸素/カーボン比は0.4、スチーム/カーボン比は2.0に設定した。改質器に充填する触媒としては2質量%Ru/アルミナ触媒を用い、灯油のみを基準とするLHSVを5、改質器入口直前の原料温度は400℃として運転した。
【0077】
高温シフト反応器9には鉄−クロム系触媒、低温シフト反応器10には銅−亜鉛系触媒、選択酸化反応器11にはルテニウム系触媒を充填した。その結果どの例においても、選択酸化反応出口では、ドライベースのモル%もしくはモルppmで水素濃度は38%を示し、CO濃度は10ppm以下となった。
【0078】
次に、燃料電池特性を1000mA/cm2におけるセル電圧を測定することにより比較した。その結果、410mVの電圧が観測された。
【0079】
(実施例5、6)
システム例5および6を用いて、実施例4と同様の試験を行った。その結果、1000mA/cm2におけるセル電圧はそれぞれ400mV、400mVであった。
【0080】
(比較例2)
システム比較例2を用いて、実施例4と同様の試験を行った。その結果、1000mA/cm2におけるセル電圧は305mVであった。
【0081】
【発明の効果】
本発明により、改質反応で若干の分解残存成分が存在する場合においても安定でかつ高効率な燃料電池システムが提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池システムの一形態を示すフロー図である。
【図2】本発明の燃料電池システムの他の形態を示すフロー図である。
【符号の説明】
1 水タンク
2 水ポンプ
3 燃料タンク
4 燃料ポンプ
5 脱硫器
6 気化器
7 改質器
8 空気ブロアー
9 高温シフト反応器
10 低温シフト反応器
11 選択酸化反応器
12 アノード
13 カソード
14 固体高分子電解質
15 電気負荷
16 排気口
17 固体高分子形燃料電池
18 加温用バーナー
19 熱交換器
20 排気口
21 残存炭化水素燃料の除去器
Claims (9)
- 炭化水素燃料と水とを反応させて水素を含有する改質ガスを得る改質装置と、該改質装置で得られた水素と酸素とを反応させて発電を行う固体高分子形燃料電池とを備える燃料電池システムであって、
該改質装置と該燃料電池との間に、該改質ガスから、該改質装置を反応せずに通過した残存炭化水素燃料の少なくとも一部を除去可能な除去手段を有することを特徴とする燃料電池システム。 - さらに、前記改質装置と前記燃料電池との間に、前記改質ガス中の一酸化炭素を水とシフト反応させるシフト反応器と、該シフト反応器で得られたガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する選択酸化反応器とを備える請求項1記載の燃料電池システム。
- 前記除去手段が、前記選択酸化反応器と前記燃料電池との間に配された請求項2記載の燃料電池システム。
- 前記炭化水素燃料が、沸点が160℃以上の炭化水素化合物を含み、かつ、
前記除去手段が、該沸点が160℃以上の炭化水素化合物の少なくとも一部を除去可能である請求項1〜3のいずれか一項記載の燃料電池システム。 - 前記炭化水素燃料が、炭素数が8以上の炭化水素化合物を含み、かつ、
前記除去手段が、該炭素数が8以上の炭化水素化合物の少なくとも一部を除去可能である請求項1〜3のいずれか一項記載の燃料電池システム。 - 前記除去手段が、前記改質装置で発生した副反応生成物をも除去可能である請求項1〜5のいずれか一項記載の燃料電池システム。
- 前記除去手段が、供給されるガスを冷却して前記残存炭化水素燃料のうちの少なくとも一部を凝縮させ、凝縮した成分を除去する凝縮分離手段を備える請求項1〜6のいずれか一項記載の燃料電池システム。
- 前記除去手段が、前記残存炭化水素を収着する収着手段を備える請求項1〜7のいずれか一項記載の燃料電池システム。
- 前記除去手段が、供給されるガスを冷却して前記残存炭化水素燃料のうちの少なくとも一部を凝縮させ、凝縮した成分を除去する凝縮分離手段を備え、かつ、
該凝縮分離手段の下流に、前記残存炭化水素を収着する収着手段を備える請求項1〜6のいずれか一項記載の燃料電池システム。
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