JP2005062822A - 画像形成装置用ベルト及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂と導電性物質とを含む画像形成装置用エンドレスベルト。印加電圧100V,10秒にて測定した表面電気抵抗率をSR(100V)、印加電圧500V,10秒にて測定した表面電気抵抗率をSR(500V)、印加電圧100V,10秒にて測定した時の体積電気抵抗率をVR(100V)、印加電圧250V,10秒にて測定した時の体積電気抵抗率をVR(250V)、としたときに以下の式(1)、(2)、(3)を満たす。
式(1):SR(100V)/SR(500V)<VR(100V)/VR(250V)
式(2):SR(100V)/SR(500V)≦30
式(3):8≦VR(100V)/VR(250V)≦100
【選択図】図1
Description
(1) 半導体領域にて所定の表面電気抵抗率と体積電気抵抗率を有し、抵抗ばらつきが少ないこと
(2) トナー離型性を有していること
(3) 厚みが薄く均一であること
(4) 機械的強度が強い(伸びにくく、割れにくい)こと
(5) 環境(温度湿度)による抵抗値、寸法、機械強度の変動が少ないこと
(6) 低コストであること
(7) シームレスで真円(ベルト幅方向の周長差が少ない)ベルトであること
(8) 様々な紙の種類において高画質なプリントができること
円筒状金型の内周面に溶液を溶かした樹脂を入れ、金型を回転させながら温度を加え、溶媒を半分以上揮発させてから金型の内部よりシームレス状のチューブを取り出す工程と、別の円筒状金型の外部にシームレスチューブを装着し、温度を加えて熱硬化反応をさせる工程とからなる(特開昭60−170862号公報)。この方法は、主にポリイミド製転写ベルトの製造に用いられる。
導電性フィラーをコンパウンドした樹脂を環状に溶融押出しする方法である。この方法は、主にエチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリイミド系転写ベルトの作製方法に用いられている。
樹脂溶液を円筒状又は円柱状金型外面にディッピング塗布等により一定厚みに塗布し、加熱成膜した後、金型より成膜したチューブ状フィルムを引き抜く方法である。この方法は、主にポリフッ化ビニリデン製転写フィルムの作製に用いられている。
ポリウレタンゴムを筒状に押し出し加硫した後、表面研磨し、再外層表面にフッ素樹脂等をコートする方法が報告されている(電子写真学会誌33(1)43(1994))。
・樹脂製ベルトでは、クラックの問題、トナーの凝集破壊による文字抜けの問題がある。
・ゴム製ベルトでは、コストの問題、温度湿度による電気抵抗率変化が大きいという問題、更には架橋剤、可塑剤等のブリードによる感光体汚染の問題がある。
・熱可塑性エラストマー製ベルトでは、トナー離形性、寸法精度、電気抵抗の電圧依存性が大きいといった問題がある。
式(1):SR(100V)/SR(500V)<VR(100V)/VR(250V)
式(2):SR(100V)/SR(500V)≦30
式(3):8≦VR(100V)/VR(250V)≦100
イ)転写ベルトとトナー粒子間で作用する分子間引力、いわゆるファンデルワールス力
ロ)帯電したトナーが電気的に作用する鏡像力
ハ)トナーと転写ベルトの2つの物体が接触することにより発生する接触帯電力
ニ)トナーと転写ベルト間での水分が作用する液架橋力
が、一般的に考えられ、二次転写部におけるトナー転写条件は、このイ)〜ニ)の総合的な付着力に打ち勝つように、トナーに逆方向の電界を印加してクーロン力を作用させてやることが、トナー転写条件として最低限必須であると言われている。
ホ)ベルト表面を適度に荒らした方が、ファンデルワールス力が小さくなり、転写ベルト上のトナー付着力を低減することができるため、二次転写効率の向上に寄与する。
ヘ)転写ベルトの電気抵抗率が低いことが、転写ベルト上で帯電したトナーが除電されやすくなり、二次転写効率向上には有利に作用する。
ト)トナーと転写ベルトの摩擦帯電列における差が小さいことが、接触帯電力の低減に効果がある。
チ)転写ベルト表面が疎水性であることが、液架橋力を低減し、トナーの付着力を低減させる効果がある。
・二次転写におけるトナー付着力低減化については、自己除電機能を持たせた電気抵抗特性を有するベルト(即ち、体積電気抵抗率が適度な電圧依存性を有する)を作ることでトナー付着力を低減化させ、
・一次転写におけるトナー付着力向上については、ベルト素材を柔らかくすることとベルト表面をできるだけ疎水化しないことでトナー付着力を向上させ、
これらの組み合わせにより、一次転写と二次転写のトナー転写効率を同時に向上させることができると考え、転写ベルトの機械的強度を損なわせることなく、弾性率を調整できる手段として熱可塑性エラストマーに着目し、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂とのアロイ化の検討し、前記式(1)〜(3)を満たす特有の電気抵抗電圧依存性と、更には、適度な弾性率と適度な表面濡れ性と表面粗さとを満たすことが、一次転写効率及び二次転写効率を向上さることを解明した。
式(i):LogY≧−X+20
式(ii):LogY≦−X+30
ただし、X,Yは次の通り。
X:エンドレスベルト中のカーボンブラックの含有量(重量%)
Y:エンドレスベルトの100V印加電圧,10秒での表面電気抵抗率(Ω)
(表面電気抵抗率と体積電気抵抗率)
本発明の画像形成装置用ベルトは、
印加電圧100V,10秒にて測定した表面電気抵抗率をSR(100V)、
印加電圧500V,10秒にて測定した表面電気抵抗率をSR(500V)、
印加電圧100V,10秒にて測定した時の体積電気抵抗率をVR(100V)、
印加電圧250V,10秒にて測定した時の体積電気抵抗率をVR(250V)、
としたときに、以下の式(1)、(2)及び(3)を満たすものである。
式(1):SR(100V)/SR(500V)<VR(100V)/VR(250V)
式(2):SR(100V)/SR(500V)≦30
式(3):8≦VR(100V)/VR(250V)≦100
式(1'):SR(100V)/SR(500V)×2≦VR(100V)/VR(250V)
式(2'):1≦SR(100V)/SR(500V)≦10
式(3'):10≦VR(100V)/VR(250V)≦50
本発明のエンドレスベルトの引張弾性率は、300MPa以上2500MPa以下であることが好ましい。エンドレスベルトの引張弾性率が低いと、例えば中間転写ベルトとして画像形成装置に用いる場合に張力により少し伸びが発生してしまい、色ズレなどの不具合を発生することがあり、また、引張弾性率が高すぎる場合は、ベルトを駆動する際にモータ負荷がかかるため、厚み設定を薄くする必要が生じ、一旦ローラとベルト間にゴミが入り込んだり、感光体との摩擦による傷等が入るとクラックが入り易く、信頼性に問題があるため好ましくない。また、一次転写におけるトナーの転写効率を向上させるためには、ベルトが伸びない程度の引張弾性率が必要であり、かつエンドレスベルトが硬くならない程度の引張弾性率が必要である。従って、好ましい引張弾性率の範囲は300MPa以上2500MPa以下、特に500MPa以上2000MPa以下であり、とりわけ好ましいのは600MPa以上1800MPa以下である。
本発明のエンドレスベルトの外表面の水との接触角は60°以上90°未満であることが好ましい。外表面の水との接触角が60°未満であるとトナーがベルト表面上にくっついて、フィルミング化してしまい、トナー二次転写効率が悪化する。また、90°では一次転写においてトナーの転写効率が悪化する。従って、本発明のエンドレスベルトの外表面の水との接触角は60°以上90°未満、特に65°以上85°以下であることが好ましい。
本発明のエンドレスベルトの表面粗さRaは0.05μm以上0.3μm以下であることが好ましい。表面粗さRaが0.05μm未満であると、トナー一次転写効率が悪化してしまう。また、0.3μmを超えるとトナーの二次転写効率が悪化する。従って、本発明のエンドレスベルトの表面粗さRaは0.05μm以上0.3μm以下、特に0.07μm以上0.2μm以下であることが好ましい。
本発明のエンドレスベルトを例えば中間転写ベルトとして画像形成装置に用いる場合には、耐屈曲性が悪いとクラックが発生して画像が得られなくなるので耐屈曲性の良好なエンドレスベルトが好ましい。
本発明のエンドレスベルトの収縮率特性としては、温度60℃湿度90%、24hr放置後の温度23℃湿度50%に対する収縮率が0.2%以下であることが好ましい。これらの条件範囲より収縮率が大きいと、エンドレスベルトを輸送、保管中に寸法変化が大きくなり使用できなくなるばかりか電気特性、機械特性も変化することがあるため好ましくない。より好ましい収縮率特性は0.1%以下であり、特に好ましいのは0.05%以下である。
エンドレスベルトの厚みが過度に大きいと、ローラとの曲率が大きい場合、ベルト外側と内側の変形差が大きく、割れ易くなる。また、外側部に転写されたトナーが変形、飛散して画像が変形するようになる。一方、エンドレスベルトの厚みが過度に小さいと、わずかなローラとベルト間に入り込んだゴミ、或いは感光体等との接触による傷によりクラックが入り易く、ベルトが破損し易くなる。従って、本発明のエンドレスベルトの厚みは70〜300μmであることが好ましく、100〜200μmであれば特に好ましい。
本発明のエンドレスベルトは、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂と導電性物質とで構成される。本発明においては、基本的に引張弾性率、表面濡れ性、耐屈曲性がある範囲を満たしていれば良く、材料の種類において制限はなく公知の熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂を主成分とすることができる。そして、本発明のエンドレスベルトは、導電性フィラー或いはイオン導電性物質等の導電性を発現する物質の必要量を配合することにより、所望の導電性を得ることができる。
本発明のエンドレスベルトに用いる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度,中密度,低密度,直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロック又はランダム共重合体、ゴム又はラテックス成分、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、液晶性ポリエステル、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリビスアミドトリアゾール、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル、ポリフッ素化ビニリデン、ポリフッ素化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリウレタン共重合体等の1種又はこれらの2種以上の混合物からなるものが使用できる。
本発明で用いられる熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、塩ビ系等の熱可塑性エラストマー等が使用できる。
ポリエステルポリエーテルブロック共重合体は、(a)炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、(b)芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステル、及び(c)重量平均分子量が400〜6,000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応、又は、エステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させたものである。炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、好ましくは、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールを主成分とするものであり、これらの1種又は2種以上を併用したものを使用することができる。
ポリエステルポリエステルブロック共重合体は、上記(c)重量平均分子量が400〜6,000のポリアルキレンエーテルグリコールのかわりに、(d)脂肪族又は脂環式ジカルボン酸と脂肪族ジオールとが縮合したポリエステルオリゴマー、(e)脂肪族ラクトン又は脂肪族モノオールカルボン酸から合成されたポリエステルオリゴマーと、前記(a)炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、(b)芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとを原料とし、エテル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させたものである。
本発明のエンドレスベルトの成形材料に用いる熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーの重量比に特に制限はない。ただし、一般に熱可塑性樹脂の中で結晶性樹脂は耐薬品性、耐屈曲性に優れ、非晶性樹脂は成形寸法安定性に優れるので、使用目的に応じ、熱可塑性エラストマーとの比率を設定することができるが、なかでも、熱可塑性樹脂/熱可塑性エラストマーの重量比が1/99〜99/1が好ましく、5/95〜95/5がより好ましく、10/90〜90/10が更に好ましく、70/30〜30/70が特に好ましく、60/40〜40/60がとりわけ好ましい。
両材料の粘度差が大きすぎると、製造条件を調整しても良好な分散が得られず、均一分散に至ることができなくなることがあるので、粘度差は小さい方が好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーを同一条件でMFR測定したときの比が1/20〜20/1程度の範囲に収まることが好ましく、1/10〜10/1の範囲となれば更に好ましい。
導電性物質としては、用途に要求される性能を満たすものであれば特に制限はなく、各種のものを用いることができ、具体的には、導電性フィラーとして、カーボンブラックやカーボンファイバー、グラファイトなどのカーボン系フィラー、金属系導電性フィラー、金属酸化物系導電性フィラーなどが用いられ、導電性フィラーの他には、イオン導電性物質、例えば四級アンモニウム塩等が例示されるが、これらの導電性物質の中でも、カーボンブラックを用いることが電気抵抗率の湿度依存性が小さくなる傾向にあるため好ましい。カーボンブラックはイオン導電性物質と併用して用いても良い。
カーボンブラックのDBP吸油量が大きいほど、カーボンは数珠状に連なった連鎖(カーボンストラクチャクチャー)を形成しやすく、カーボン凝集体が発生しにくい利点と、少ない添加量で導電性を発現しやすいため低コストな利点があったが、その反面、材料配合から成形加工の過程においてカーボンブラックを配合した樹脂に加えられる様々な剪断力によりカーボン連鎖が壊れて電気抵抗率がばらつきやすく、安定しないといった問題点がある。
反対にカーボンブラックのDBP吸油量が少なすぎると、カーボン連鎖を形成しにくいため導電性を発現させるためのカーボン添加量が多くなりすぎ、材料の耐屈曲性を損なう問題点がある。
従って好ましいカーボンブラックのDBP吸油量は、50〜300cm3/100gである。
カーボンブラックの比表面積が大きいほど、少ない添加重量で導電性が発現するため、機械的強度を割れにくさの点で有利となる反面、カーボン添加量により導電性が急激に変化する傾向にあるため半導電領域にコントロールするためには±0.05%以内の配合精度が必要であり、エンドレスベルトの抵抗ばらつきを±1オーダー以内で均一にすることが難しい。また、比表面積が大きいカーボンブラックは一般に粒径が小さいため、樹脂中に分散させる場合にカーボンブラック粒子がだまになりやすく、その結果、カーボン凝集体が成型品に混在し、カーボン凝集体の箇所に電気が集中し部分的な絶縁破壊を発生させやすい。また、カーボンブラックの比表面積が小さすぎる(カーボン粒子が大きすぎる)と、カーボン凝集体を形成しにくいため成型品の外観は平滑な反面、カーボン粒子間の接触により導電性発現が左右されやすく電気抵抗率がばらつきやすいので最適化したカーボン粒子径を選択した方が好ましい。
従って、好ましいカーボンブラックの平均一次粒径は20〜50nmであり、比表面積は35〜500m2/gである。
カーボンブラックの揮発分が多いほど、その表面特性によりカーボン分散は良好になる反面、加熱混練中にガスを発生させるため、成形上不利である。逆に、カーボンブラックの揮発分が少ないほど、加熱混練中のガスが発生しにくいため成形性は良好である反面、カーボン分散は悪化する傾向にある。
従って、好ましいカーボンブラックの揮発分量は、0〜20%である。
式(i):LogY≧−X+20
式(ii):LogY≦−X+30
ただし、X,Yは次の通り。
X:エンドレスベルト中のカーボンブラックの含有量(重量%)
Y:エンドレスベルトの100V印加電圧,10秒での表面電気抵抗率(Ω)
logY≧−X+21
logY≦−X+29
であることが好ましい。
本発明では、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとを単に混合したもの、重合段階からこれらを混合したもの、これらを触媒を反応させながら混合したもの等公知のアロイ化技術を用いることができるが、重合触媒を用いて加熱混合したものがコストの観点から最も好ましい。
重合触媒は、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーを重合する能力を有していれば特に制限はない。
重合触媒の活性が高すぎると、熱可塑性ポリマー成分の解重合を促進して分子量低下による機械的物性低下,低分子量体発生に伴う発泡などが問題になることがあるが、重合触媒中の金属にキレートする能力を有するキレーターが存在すると、解重合を抑制することができるため、必要に応じてキレーターを用いることが好ましい。
増粘剤は、本発明の目的である、印加電圧依存性が小さい表面電気抵抗率を示すエンドレスベルトを提供するために、好適に配合される。即ち、増粘剤を全く添加しない熱可塑性樹脂/熱可塑性エラストマー/導電性物質配合材料を用いたエンドレスベルトにおいては、表面電気抵抗率における印加電圧依存性が非常に大きく、そのために高精度な画質が得られない。その原因としては、高粘度の熱可塑性樹脂と低粘度の熱可塑性エラストマーとの粘度差が大きいために、低粘度の熱可塑性エラストマーが混練時にその他の成分と十分に混ざらず、エンドレスベルト中の各成分の分散が悪いことが考えられる。この問題を解決するために、本発明においては熱可塑性樹脂/熱可塑性エラストマー/導電性物質混合系全体の粘度を増大させ、低粘度の熱可塑性エラストマーを相当量含んでいても各成分が十分に分散し得る粘度に増大させる目的で、増粘剤を配合することが好ましい。
本発明のエンドレスベルトには、各種目的に応じて任意の配合成分を配合することができる。
(加熱混練及び成形)
本発明においては、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂と導電性物質を加熱混練して熱可塑性樹脂組成物とした後にエンドレスベルトを成形しても良く、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂と導電性物質とを加熱混練してそのままエンドレスベルトを成形しても良い。
しかしながら引き取り手段としては、エンドレスチューブを扁平させることなく円筒状を維持したまま引き取る成形方法が好ましい。
このようにして得られたエンドレスベルトを熱処理することにより、より物性の向上したエンドレスベルトとすることが可能となる。特に、耐折回数や引張弾性率の向上が見られる。
エンドレスベルトの熱処理は、ベルトを2本以上のローラに張架させて駆動させながら熱をかけて行っても良いし、円筒状の型にエンドレスベルトを装着して熱処理しても良い。更には、円筒状のまま熱処理をしても良い。
一般に、2種類の材料を溶融混合すると、完全に混じり合う場合(完全相溶化という場合もある)と、完全には混じり合わず海島構造をとる場合とがある。
本発明の画像形成装置用ベルトの用途に特に制限はないが、寸法精度,耐屈曲性,引張弾性率など要求物性の厳しいOA機器分野、特に機能部材には好適に用いることができる。このエンドレスベルトをシームレスベルト形状とした場合、割れ,伸びなど不具合が少ないので好適である。
原料は下記のものを用い、配合割合は表1又は表3の通りとした。
・PBT:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバデュラン5040ZS」
重量平均分子量=40,000
PS換算重量平均分子量=122,000
MFR(240℃、2.16kgf荷重):4g/10分
・PC:重量平均分子量=28,000
PS換算重量平均分子量=64,000
MFR(280℃、2.16kgf荷重):4.8g/10分
・重合触媒:チタニウム(IV)ブトキシド/酢酸マグネシウム
・キレーター:クラリアントジャパン(株)製 リン酸化酸化防止剤「PEPQ」
・熱可塑性エラストマー1:東洋紡積(株)製 ポリエステル−エーテルエラストマー
「ペルプレンP150B」
MFR(240℃、2.16kgf荷重):19g/10分
・熱可塑性エラストマー2:東洋紡積(株)製 ポリエステル−エーテルエラストマー
「ペルプレンP90B」
MFR(240℃、2.16kgf荷重):20g/10分
・熱可塑性エラストマー3:東洋紡積(株)製 ポリエステル−ポリエステルエラスト
マー「ペルプレンS3001」
MFR(240℃、2.16kgf荷重):21g/10分
・カーボンブラック:電気化学(株)製「デンカブラック」
DBP吸油量=180ml/100g
比表面積=65m2/g
揮発分=0%
平均一次粒径=39nm
・増粘剤1:日本油脂(株)製 グリシジルメタクリレート含有ポリマー
「モディパーA4400」
JIS K7210によるMI値(190℃、2.16kgf荷重):
0.3g/10分
・増粘剤2:日本油脂(株)製「モディパーA4200」
JIS K7210によるMI値(190℃、2.16kgf荷重):
0.6g/10分
各原料を、二軸混練押出機(IKG(株)製「PMT32」)を用いて材料ペレット化した。条件は表1又は表3の通りとした。
この材料ペレットを乾燥し、直径φ160mm、ダイスリップ幅1.5mmの6条スパイラル型環状ダイ付き40mmφの押出機(環状ダイの円周方向に16個の温度調節機構を有する。)により、環状ダイ下方に溶融チューブ状態で押し出し、押し出した溶融チューブを、環状ダイと同一軸線上に支持棒を介して装着した外径153mmの冷却マンドレルの外表面(温度80℃)に接しめて冷却固化させつつ、次に、シームレスベルトの中に設置されている円筒形の中子と外側に設置されている4点式ベルト式引取機により、シームレスベルトを円筒形を保持した状態で引き取りつつ340mm長の長さで輪切りにして、厚み140μm、表面電気抵抗率1×1010〜1×1012Ωとなるようとなるよう押出量と引取速度、押出温度を調整しつつ、内径151mmの樹脂製シームレスベルトとした。成形条件は表1又は表3の通りとした。
式:MFR=(600×m)÷t (g/10分)
t=試料採取時間(秒)(ここでは60秒)
m=試料採取の重量(g)
評価は必要に応じ、エンドレスベルトを必要な大きさに切り開いて実施し、結果を表2,表4に示した。
ダイヤインスツルメント(株)製 商品名「ハイレスタ(UR端子)」を使用し、100V、500V、各10秒の条件にて20mmピッチにてベルト円周方向を測定した。
ダイヤインスツルメント(株)製 商品名「ハイレスタ(UR端子)」を使用し、100V、250V、各10秒の条件にて20mmピッチにてベルト円周方向を測定した。
表面電気抵抗率と体積電気抵抗率のそれぞれにおいて、温度10℃、湿度20%で20hr放置後(LL条件)の電気抵抗率と、温度30℃、湿度80%に20hr放置後(HH条件)の電気抵抗率との比(電気抵抗率(LL条件)/電気抵抗率(HH条件))を求め、電気抵抗環境変動率とした。
得られたエンドレスベルトを中間転写ベルトとして画像形成装置に搭載し、連続で画像出力をし、何枚出力した段階でエンドレスベルトにクラックが発生するかを評価した。
エンドレスベルトを200mmの一定幅に輪切り切断後、更に幅方向1カ所を切断する。次に得られたサンプルを温度23℃、湿度50%に24hr放置した後、エンドレスベルトの円周方向の長さを3次元寸法測定器(ニコン社製マイクロスコープを取り付けた東京精密社製「GJ800A」)にて測定した。この測定値を(P)とする。
収縮率={(P)−(Q)}/(P)×100
ISO R1184−1970に準拠し、試験片を幅15mm、長さ150mmに切断し、引張速度1mm/min、つかみ具間距離100mmとして測定した。
JIS Z1702−62に準拠し、試験片を幅15mm、長さ150mmに切断し、引張速度50mm/min、つかみ具間距離100mm、標線間隔50mmとして測定した。
JIS Z1702−62に準拠し、試験片を幅15mm、長さ150mmに切断し、引張速度50mm/min、つかみ具間距離100mm、標線間隔50mmとして測定した。
JIS P−8115に準拠し、試験片を幅15mm、長さ100mmの大きさに切断し、MIT試験機にて折り曲げ速度175回/分、回転角度135°左右、引張荷重1.0kgfの条件にて、折り曲げ治具の先端部の曲率半径をR=0.38mmとして破壊に至る折り曲げ回数を測定した。
エンドレスベルトの外表面に水を一滴たらし、エルマー製ゴニオメーター「G−1」を用いて1分後の水の接触角を測定した。
エンドレスベルト外側表面を約50mm×50mmのサンプルにカットし、(株)キーエンス製超深度形状測定顕微鏡商品名「VK8500」を用い、レンズ100倍、ピッチ0.01μm、シャッタースピードAUTO、ゲイン835の測定条件にて40μm×40μmのエリアの表面粗さを4点測定し、その平均値を表面粗さの測定値とした。
図1に示す如く、エンドレスベルト20の内、外両端部にポリエステル製厚み50μm、10mm幅のPETテープを内補強テープ22及び外補強テープ21として貼り、内両端部にポリウレタン製厚み1.0mm、5mm幅の蛇行防止ガイドゴム23を貼り合せたエンドレスベルトを、セイコーエプソン(株)製のカラーレーザープリンタ機種名「LP3000C」に搭載し、カラー画像をCCDカメラにて20倍に拡大し画像を評価した。
画像(中抜け)はトナーが転写されていない部分が5%以下であれば○とし、5%を超えるものを△とした。
画像ズレは、50μm以下を○とし、50μmを超え80μm以下を△とし、
80μmを超えるものを×とした。
画像の一次、二次転写特性は、トナーが転写されていない部分が5%以下であれば○とし、5%を超えるものを△とした。
表1に記載の配合で、加熱混練し、材料ペレットを得た。このときの加熱混練条件は表1に示すものとし、樹脂温度と混練機内での滞留時間を調節し、混練機内での反応は抑制すると同時に電気抵抗が半導電領域になるよう混練条件を調節した。この材料ペレットを押出成形してエンドレスベルトを製造した。
熱可塑性エラストマーの種類を変更した以外は、実施例1と同様にエンドレスベルトを得た。本実施例5でも外観に優れ、環境による電気抵抗率変化や電気抵抗率ばらつきが少ないエンドレスベルトを得た。このエンドレスベルトを画像形成装置に搭載したところ、良好な画像を得ることができた。
増粘剤の種類を変更した以外は、実施例1と同様にエンドレスベルトを得た。本実施例6でも外観に優れ、環境による電気抵抗率変化や電気抵抗率ばらつきが少ないエンドレスベルトを得た。このエンドレスベルトを画像形成装置に搭載したところ、良好な画像を得ることができた。
熱可塑性エラストマーの種類を変更した以外は、実施例1と同様にエンドレスベルトを得た。本実施例7でも外観に優れ、環境による電気抵抗率変化や電気抵抗率ばらつきが少ないエンドレスベルトを得た。このエンドレスベルトを画像形成装置に搭載したところ、良好な画像を得ることができた。
増粘剤を用いなかったこと以外は、実施例7と同様にエンドレスベルトを得た。本実施例8でも外観に優れ、環境による電気抵抗率変化や電気抵抗率ばらつきが少ないエンドレスベルトを得た。このエンドレスベルトを画像形成装置に搭載したところ、良好な画像を得ることができた。これは、増粘剤を用いていなくても、重合触媒が熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂との相溶性を促進させ、増粘効果を発生させ、カーボン分散性が向上したことによるものと推定される。
増粘剤を用いずに実施例1と同様な熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の配合比にカーボンブラックを添加し、電気抵抗率が半導電領域になるようにカーボン濃度を調整した以外は、実施例1と同様にエンドレスベルトを得た。
増粘剤を用いずに実施例2と同様な熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の配合比にカーボンブラックを添加し、電気抵抗率が半導電領域になるようにカーボン濃度を調整した以外は、実施例2と同様にエンドレスベルトを得た。
増粘剤を用いずに実施例3と同様な熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の配合比にカーボンブラックを添加し、電気抵抗率が半導電領域になるようにカーボン濃度を調整した以外は、実施例3と同様にエンドレスベルトを得た。
熱可塑性樹脂を配合せずに熱可塑性エラストマーにカーボンブラックを添加し、電気抵抗が半導電領域になるようカーボンブラック濃度を調整した以外は、実施例1と同様にエンドレスベルトを得た。
熱可塑性エラストマーを配合せず、熱可塑性樹脂としてPBT/PCアロイを用い、カーボンブラックを添加し、電気抵抗率が半導電領域になるように混練条件を練りしてカーボン濃度を調整した以外は、実施例1と同様にエンドレスベルトを得た。
2 帯電器
3 露光光学系
4 現像器
5 クリーナー
6 導電性エンドレスベルト
7,8,9 搬送ローラ
20 エンドレスベルト
21 外補強テープ
22 内補強テープ
23 蛇行防止ガイドゴム
Claims (17)
- 画像形成装置に用いられるエンドレスベルトであって、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂と導電性物質とを配合してなるエンドレスベルトにおいて、
印加電圧100V,10秒にて測定した表面電気抵抗率をSR(100V)、
印加電圧500V,10秒にて測定した表面電気抵抗率をSR(500V)、
印加電圧100V,10秒にて測定した時の体積電気抵抗率をVR(100V)、
印加電圧250V,10秒にて測定した時の体積電気抵抗率をVR(250V)、
としたときに、以下の式(1)、(2)及び(3)を満たすことを特徴とする画像形成装置用ベルト。
式(1):SR(100V)/SR(500V)<VR(100V)/VR(250V)
式(2):SR(100V)/SR(500V)≦30
式(3):8≦VR(100V)/VR(250V)≦100 - 請求項1において、エンドレスベルトの引張弾性率が300MPa以上2500MPa以下であり、エンドレスベルト外表面の水との接触角が60°以上90°未満であり、表面粗さRaが0.05μm以上0.3μm以下であることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項1又は2において、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂との重量比が、熱可塑性エラストマー/熱可塑性樹脂=5/95〜95/5であることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項3において、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂との重量比が、熱可塑性エラストマー/熱可塑性樹脂=10/90〜90/10であることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、更に、増粘剤を熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂との合計100重量部に対して0.01重量部以上20重量部以下含むことを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項5において、増粘剤がエポキシ基を含有するポリマーであることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項1ないし6のいずれか1項において、熱可塑性エラストマーがポリエステル系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項1ないし7のいずれか1項において、熱可塑性樹脂がポリアルキレンテレフタレートを主成分とすることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項8において、ポリアルキレンテレフタレートがポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項1ないし9のいずれか1項において、導電性物質として、DBP吸油量50cm3/100g以上300cm3/100g以下、比表面積35m2/g以上500m2/g以下、揮発分0%以上20%以下、平均一次粒径20nm以上50nm以下のカーボンブラックが、下記式(i)及び(ii)を満たすように配合されていることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
式(i):LogY≧−X+20
式(ii):LogY≦−X+30
ただし、X,Yは次の通り。
X:エンドレスベルト中のカーボンブラックの含有量(重量%)
Y:エンドレスベルトの100V印加電圧,10秒での表面電気抵抗率(Ω) - 請求項1ないし10のいずれか1項において、メルトフローレート(MFR)で示される溶融粘度が0.1g/10分以上の成形材料を押出成形してなることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項1ないし11のいずれか1項において、環状ダイから加熱押し出しした溶融チューブを冷却又は冷却固化しつつ引き取ることにより成形されてなることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項12において、環状ダイの円周方向に複数の温度調節機構が設けられていることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項12又は13において、溶融チューブの内側又は外側に30〜150℃の範囲に温度調節した金型を接触させて、溶融チューブを冷却したことを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項12ないし14のいずれか1項において、溶融チューブを円筒形状を保持して引き取ることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項1ないし15のいずれか1項において、シームレス状の中間転写ベルト、搬送転写ベルト、転写定着ベルト、定着ベルト、感光体ベルト、又は現像スリープであることを特徴とする画像形成装置用ベルト。
- 請求項1ないし16のいずれか1項に記載の画像形成装置用ベルトを含むことを特徴とする画像形成装置。
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