JP2005061433A - 多点接触玉軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】ボールねじ支持用軸受あるいは回転軸支持用軸受として現在使用されている二列組合せアンギュラ玉軸受からの代替が可能で、かつ正確な位置決めと予圧付与が可能な多点接触玉軸受を提供する。
【解決手段】外輪10a及び内輪10bのうち何れか一方の軌道輪を、外輪軌道溝10eまたは内輪軌道溝10fの中央部を軌道輪のラジアル方向に分断する軌道溝分断面を軸方向の一端に有する二つの円筒部材と、これら円筒部材の外周面または内周面に形成されたスナップリング溝に係合して円筒部材の端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリング14とから構成し、かつスナップリング14を合成樹脂で形成する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえばIT関連製品の製造工程や組立工程などで半導体チップ、液晶等の電子部品を基板上に実装もしくは装着する電子部品実装装置や、放電加工機、レーザ加工機等の非切削型工作機械またはタッピングセンター等の軽切削加工機などで使用される精密位置決め用ボールねじのボールねじ軸を支承するボールねじ支持用玉軸受、あるいは一般産業機機械の回転軸を支承する回転軸支持用玉軸受として用いられる多点接触玉軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子部品実装装置や工作機械等で使用される精密位置決め用ボールねじのボールねじ軸は、図21に示されるような軸受装置によって支持されていることが多い。この軸受装置は二列組合せ軸受1と、この二列組合せ軸受1の周囲を密封する軸受ハウジング2と、この軸受ハウジング2の軸方向両端部に設けられたオイルシール3とからなり、二列組合せ軸受1は、図22に示されるように、二つのアンギュラ玉軸受4から構成されている。これらのアンギュラ玉軸受4は外輪4a、内輪4b、玉4c等からなり、内輪4bは、図21に示されるように、ボールねじ軸5の端部に形成された大径軸部5aの端面に押えリング6及び軸受ナット7によって押付け固定されている。なお、軸受ハウジング2は円筒状のハウジング本体2aと、このハウジング本体2aのフランジ部2bにボルト接合される環状の外輪押え2cとから構成されている。
【0003】
ところで、アンギュラ玉軸受は深溝玉軸受に比べ、以下のような特徴を持っている。
(1)一列当りの玉数が多く、荷重負荷能力及び剛性が大きい。
(2)保持器形状が強固であり、高速回転が可能。
(3)単列では一方向のアキシャル荷重しか負荷することができないが、アンギュラ玉軸受を二列の組合せとすることにより、両方向のアキシャル荷重を負荷することが可能となる。
【0004】
(4)二つのアンギュラ玉軸受の端面間に形成されるギャップg(図22参照)を調整することにより、軸受の内部すき間を無くし、予め内部荷重を発生させること(いわゆる定位置予圧)が容易である。予圧をかけることで、軸受剛性の向上や高回転精度を得ることが可能となる。
アンギュラ玉軸受は以上のような特徴を持っていることから、旋盤やフライス盤、研削盤等の工作機械においてスピンドルを支持する軸受と使用される他、高精度の位置決めを必要とする機械(例えば工作機械用精密ボールねじ、電子部品高速装着機用精密ボールねじ、搬送ロボット用ボールねじ等)にも広く使用されている。しかし、ボールねじのボールねじ軸を支持する軸受としてアンギュラ玉軸受を使用する場合、ボールねじ軸には両アキシャル方向の負荷荷重が作用するため、単列のアンギュラ玉軸受のみではボールねじ軸に作用する負荷荷重を支持することができない。従って、切削型あるいは研削型工作機械のベッドを移動させる手段として用いられるボールねじでは、加工荷重の反力による変位を最小限に抑え、かつ所要の加工精度を得るために、軸方向剛性が極めて大きく、かつ接触角が60°程度のスラストアンギュラ玉軸受を2〜4列に組合せたものをボールねじ支持用軸受として使用している場合が多い。この場合、ラジアル方向の負荷荷重は、ボールねじとセットで使用されるリニアガイドやアリ溝が受ける構造となっている。
【0005】
一方、放電加工機、レーザ加工機等の電解加工型工作機械や電子部品実装装置、部品搬送ロボット等では、実加工時の負荷荷重が比較的小さいことから、ボールねじ軸を支持する軸受として、例えば内径寸法が6mm〜40mm程度で、接触角が15°〜30°程度の標準型アンギュラ玉軸受(寸法系列70××、72××等)を二列に組合せ、数十Nから数百Nの比較的小さな予圧をかけたものを使用する場合が多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、ボールねじ支持用軸受として現在使用されるアンギュラ玉軸受において予圧をかけるためには、どうしても二列組合せが条件となる。当然、軸受を装着する軸およびハウジング部分のスペースも単列での使用に対して2倍必要となり、機械全体のスペース増につながる。
IT部品等の組立ラインや装着ラインでは、工程に応じて部品実装装置や搬送ロボットが数多く使用されているため、上記のスペース増はライン構成の点で問題になる。また、二列組合せアンギュラ玉軸受を1台の機械で数ヶ所使用すると、各ボールねじ支持用軸受部分が干渉することが懸念される。これに加えて、最近では、部品の実装速度を上げてタクトタイムを短縮化することが要求されており、可動部分の軽量化による急加減速時の慣性力軽減要求も非常に高い。これは、一般産業機械の回転軸支持用軸受でも同様のことが言える。
【0007】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ボールねじ支持用軸受あるいは回転軸支持用軸受として現在使用されている二列組合せアンギュラ玉軸受からの代替が可能で、かつ正確な位置決めと予圧付与が可能な多点接触玉軸受を提供することにある。
また、多点接触玉軸受で軸受の剛性を上げたり、負荷容量を増加させたりするためには、玉数を出来るだけ多くする必要があり、その場合、内輪または外輪を軌道溝の中央で分割することが必要である。内輪または外輪を軌道溝の中央で分割しておけば、分割されない側の軌道輪に玉を配置して、その後、分割側軌道輪を軸方向から合せて組立てることが可能となる。
この場合、軸受の製造組立時に軸やハウジングを組み込む際、分割された軌道輪が脱落したり、あるいは軸受内部に異物が混入したりする不具合が生じる可能性がある。本発明の目的は、分割された軌道輪を一体化して、これらの不具合を解消することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、外輪の内周面に形成された外輪軌道溝および/又は内輪の外周面に形成された内輪軌道溝を前記外輪と前記内輪との間に設けられた多数の玉に対して2点で接触する形状に形成し、前記外輪軌道溝及び内輪軌道溝と前記玉との接触点を3点以上とした多点接触玉軸受であって、前記外輪及び内輪のうち何れか一方の軌道輪を、前記外輪軌道溝または前記内輪軌道溝の中央部を軌道輪のラジアル方向に分断する軌道溝分断面を軸方向の一端に有する二つの円筒部材と、これら円筒部材の外周面または内周面に形成されたスナップリング溝に係合して前記円筒部材の端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリングとから構成するとともに、前記スナップリングを合成樹脂で形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の多点接触玉軸受において、前記スナップリング溝底部と、前記円筒部材の突き合わせ面と離れた側のスナップリング溝肩部との交点が前記軌道溝に所定の角度で接触する玉の接触角線の延長線より前記円筒部材の突き合わせ面側に位置することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の多点接触玉軸受において、前記玉の直径をD、前記軌道溝の曲率をR、前記玉と軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを12.5°<α≦17.5°とし、かつ前記玉の直径に対する前記軌道溝の曲率比R/DをR/D=0.54〜0.555としたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は2記載の多点接触玉軸受において、前記玉の直径をD、前記軌道溝の曲率をR、前記玉と軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを17.5°<α≦22.5°とし、かつ前記玉の直径に対する前記軌道溝の曲率比R/Dを0.555<R/D≦0.57としたことを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1又は2記載の多点接触玉軸受において、前記玉の直径をD、前記軌道溝の曲率をR、前記玉と軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを22.5°<α≦27.5°とし、かつ前記玉の直径に対する前記軌道溝の曲率比R/Dを0.57<R/D≦0.59としたことを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1又は2記載の多点接触玉軸受において、前記玉の直径をD、前記軌道溝の曲率をR、前記玉と軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを27.5°<α≦32.5°とし、かつ前記玉の直径に対する前記軌道溝の曲率比R/Dを0.59<R/D≦0.61としたことを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1記載の多点接触玉軸受において、前記多点接触玉軸受が、ボールねじのボールねじ軸を支承するボールねじ支持用軸受であることを特徴とする。
【0012】
【作用】
本発明に係る多点接触玉軸受は、外輪の内周面に形成された外輪軌道溝および/又は内輪の外周面に形成された内輪軌道溝を前記外輪と前記内輪との間に設けられた多数の玉に対して2点で接触する形状に形成し、外輪軌道溝及び内輪軌道溝と玉との接触点を3点以上とした多点接触玉軸受である。外輪及び内輪のうち何れか一方の軌道輪は、外輪軌道溝または内輪軌道溝の中央部を軌道輪のラジアル方向に分断する軌道溝分断面を軸方向の一端に有する二つの円筒部材と、これら円筒部材の外周面または内周面に形成されたスナップリング溝に係合して円筒部材の端面同士を突き合わせた状態に保持する合成樹脂製のスナップリングとから構成されている。
【0013】
玉が軌道溝と4点で接触する多点接触玉軸受は、図19に示されるように、外輪10aおよび内輪10bに形成された軌道溝10e,10fのいずれもが二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されている。一方、玉10cが軌道溝10e,10fと3点で接触する多点接触玉軸受は、図20に示されるように、外輪10aおよび内輪10bに形成された軌道溝10e,10fのいずれか一方が一つの円弧、もう一方が二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されている(図20では、10fが二つの円弧で形成されている)。
【0014】
スナップリング溝底部と円筒部材の突き合わせ面と離れた側のスナップリング溝肩部との交点は、軌道溝に所定の角度で接触する玉の接触角線の延長線より円筒部材の突き合わせ面側に位置している。このような構成とすることで、軸受に荷重を負荷した時の玉と軌道溝との接触部で接触角方向の荷重がスナップリング溝の形成されている薄肉部分に直接負荷されることがないので、軸やハウジングにバックアップされた部分で負荷荷重を受けることができる。これにより、軌道輪の変形を抑制することができ、その結果、軌道輪の破損、軸受剛性の低下、軌道溝の摩耗、寿命低下等を防止できる。
【0015】
また、本発明に係る多点接触玉軸受は、軸受の負荷容量や剛性を上げるために、隣り合う玉間の円周ピッチを極力小さくし、標準のアンギュラ玉軸受に比べ、玉径を同等サイズかやや小さくし、玉数を多くしている。
本発明に係る多点接触玉軸受において、外輪及び内輪のうち何れか一方の軌道輪を、外輪軌道溝または内輪軌道溝の中央部を軌道輪のラジアル方向に分断する軌道溝分断面を軸方向の一端に有する二つの円筒部材と、これら円筒部材の外周面または内周面に形成されたスナップリング溝に係合して円筒部材の端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリングとから構成するとともに、スナップリングを合成樹脂で形成したことにより、次のような効果が得られる。
【0016】
(1)別体となった内輪または外輪の軸方向脱落防止(ボールねじ支持用軸受とした時に取扱いが向上する)。
(2)ボールねじ軸またはハウジングに軸受を組込む際の組込み性が向上
(3)スナップリングの取り外しが容易であり、メンテナンスやグリースの補給等を容易に行うことができる。
【0017】
(4)スナップリング材料として金属ではなく合成樹脂を用いることにより、軸受回転中の振動によるスナップリングのガタツキを抑制でき、これにより、スナップリングのガタツキによる振動音を小さく抑えることができる。
スナップリングは軸受を単体で取り扱う際の軸受の分解防止が目的であり、しかも軸受を軸またはハウジングに組込んだ後は外輪及び内輪が軸受ナットや外輪押えによって強固に固定される。従って、スナップリングには荷重が負荷されることがないので、スナップリングを形成する材料として、必ずしも金属を用いる必要はない。また、スナップリングを合成樹脂で形成した場合は、金属製のスナップリングに比較して二つの円筒部材を挟圧する力が小さいので、軌道輪の変形を抑制できる。特に、外輪はハウジング内に隙間嵌めで組み込まれることが多いので、軌道輪に変形が生じると軌道輪の変形がそのまま残り易い。
【0018】
ここで、通常、一般の用途では、軸受は内輪回転が主で、静止ラジアル荷重が負荷する場合(いわゆる内輪回転荷重)が多い。この場合、内輪に発生し易いフレッチングを防止するため、内輪を締りばめにし、外輪をすき間ばめにする。このため、軸受を軸やハウジングに組込む場合、先ず、軸に内輪を圧入または焼嵌めした後、外輪をハウジングに挿入する方法が採られることが多い。しかし、ボールねじ支持用軸受では、アキシャル荷重のみでラジアル荷重を負荷しない用途のため、外輪および内輪をすき間ばめ(h又はH嵌め合い)に設定し、軸方向を軸受ナット等で確りと締結する方法が採られている。このような嵌め合いの他に、軸が長尺のボールねじであることもあり、軸受がハウジングに挿入されたボールねじサポートユニットとして予め作られており、そのユニットをすき間ばめのねじ軸に挿入するとい組込み方法が採られることが多い。このような場合、内輪が別体となった多点接触玉軸受が使用された場合には、サポートユニットとして取り扱い難いと共に、組込み性が極めて悪く、誤って内輪を分離・落下させた場合、軸受内部への異物の侵入や落下した内輪に打痕きず等を発生させる虞がある。本発明に係る多点接触玉軸受は、ボールねじ支持用軸受としてだけでなく、一般産業機械の回転軸支持用軸受としても用いることができ、この場合でも上記のような不具合が防止される。
【0019】
ラジアル方向に二分割された外輪または内輪の隣り合う端面間には、図17または図18に示されるように、幾何的に3点または4点接触(軸受接触角α)で適度な予圧すき間(Δa)が形成されており、二列組合せアンギュラ玉軸受と同様に、軸受ナットや抑えふたで内輪または外輪の端部を軸方向に押付け固定することで適正な予圧をかけることができる。
【0020】
一般産業機械の一部に使用されている多点接触玉軸受は内部すき間が残っている状態で製作され、アキシャル荷重を専用で負荷する用途で使用される場合が多い。例えば、多点接触玉軸受をスクリューコンプレッサ等で使用する場合は、ラジアル荷重負荷用円筒ころ軸受と並列に使用され、スクリューロータ軸に作用するアキシャル荷重のみを受ける構造となっている。また、ジェットエンジンやガスタービン等で多点接触玉軸受を使用する場合は、タービン軸推力のみを負荷し、ラジアル荷重がほとんど負荷しない条件での使用となる。つまり、多点接触玉時受とは呼びつつも実際の使用条件においては、外輪および内輪に形成された軌道溝と玉とはそれぞれ一点で接触する標準の玉軸受としての使用がほとんどであった。この理由は、玉と軌道溝とが多点で接触することによって、通常の転がり運動と共に発生するスピン滑り等が標準アンギュラ玉軸受に比べ玉と軌道溝との接触部間で極端に増加するためである。このため、運転時の発生トルクも大きく、発熱も異常に高くなり、安定した運転は望めない。
【0021】
このような理由から、多点で常時接触する予圧条件下での使用は極めて少なく、インデックステーブルや旋回輪等、軸受のdmn値(dm:転動体ピッチ円直径(mm)とn:回転数(min−1)との積)が数万程度の回転数が極めて低い用途に限定されていた。
本発明に係る多点接触玉軸受は、加工物や搬送部品の位置決め精度を確保するために、単列軸受でありながら予圧をかけられる構造である。また、予圧による多点接触条件下においても玉と軌道溝との接触部のスピン滑り等を抑制し、軸受の発熱や摩耗を抑え、低トルクで円滑に回転できる構造である。
【0022】
本発明に係る多点接触玉軸受では、軸方向の取付けスペースが従来の二列組合せアンギュラ玉軸受の約半分で済むため、省スペース化が可能となり、部品間の干渉問題が軽減される。また、内輪取付け分のねじ軸端部寸法が短くなる分を含めた可動部分の軽量化が図られ、急加速及び急減速時のイナーシャ(慣性力)が軽減されるので、電子部品の製造工程や組立工程で使用される機械(例えば電子部品実装装置、各種ボンダー、ハンドラー、搬送ロボット等)の実装速度を向上してタクトタイムの短縮に寄与できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る多点接触玉軸受をボールねじ支持用軸受として適用した場合の第1実施形態を示す図であり、同図に示されるように、第1の実施形態に係るボールねじ支持用軸受は、ボールねじ軸5を支持する4点接触玉軸受10と、この玉軸受10の周囲を密封する軸受ハウジング2と、この軸受ハウジング2の軸方向両端部に設けられたオイルシール3とから構成されている。
【0024】
図2は、4点接触玉軸受10の軸方向断面図である。同図に示されるように、4点接触玉軸受10は外輪10a、内輪10b、玉10c、保持器10d(図4参照)等から構成されており、外輪10aの内周面中央部には、外輪軌道溝10eが外輪10aの円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝10eの軸方向断面は、図19に示されるように、Reの曲率半径を有する二つの円弧つまりゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉10cは外輪軌道溝10eと二点で接触するようになっている。
【0025】
一方、内輪10bの外周面中央部には、内輪軌道溝10fが内輪10bの円周方向に沿って形成されている。この内輪軌道溝10fの軸方向断面は、図19に示されるように、Riの曲率半径を有する二つの円弧つまりゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉10cは内輪軌道溝10fと二点で接触するようになっている。
【0026】
4点接触玉軸受10の内輪10bは、図1に示されるように、ボールねじ軸5の端部に形成された大径軸部5aの端面に押えリング6及び軸受ナット7によって押付け固定されている。
外輪10aおよび内輪10bのうち一方の軌道輪(本実施形態では内輪10b)は、図3に示されるように、二つの円筒部材12a,12bと、これら円筒部材12a,12bの端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリング14とで構成されている。
【0027】
円筒部材12a,12bは軸方向の一端に環状の軌道溝分断面(円筒部材の突き合わせ面)13をそれぞれ有しており、内輪10bの外周面に形成された内輪軌道溝10fは、円筒部材12a,12bの軌道溝分断面13によって内輪10bのラジアル方向に分断されている。
スナップリング14は内輪10bの円周方向に沿ってほぼC字状(周方向の1箇所で切り欠かれている)に形成されており、このスナップリング14の軸方向両端部には、円筒部材12a,12bの内周面に形成されたスナップリング溝16a,16b(図3参照)に係合する係合片部15a,15b(図2参照)が設けられている。また、スナップリング14は治具挿入孔17(図3参照)を有しており、この治具挿入孔17に治具を差し込むことにより内輪10bへの取付け及び取外しを容易に行えるようになっている。
【0028】
さらに、スナップリング14は例えばポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材あるいはガラス繊維、炭素繊維等の補強材を混合した合成樹脂材で形成されている。スナップリング溝16a,16bの上記突き合わせ面13から離れた側の肩部16a,16bとスナップリング溝底部16a,16bとの交点をP1,P2とした時、P1,P2が軌道溝10fに所定の角度で接触する玉10cの接触角線L1,L2よりも突き合わせ面13側に位置している(図3参照)。
【0029】
このような位置関係で、円筒部材12a,12bの内周面に形成されたスナップリング溝16a,16bに係合して円筒部材12a,12bの端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリング14を合成樹脂で形成したことで、金属製のスナップリングを用いた場合のように、スナップリングにガタツキがあっても振動音の発生を抑制できる。また、円筒部材12a,12bの軸方向端面を突き合わせた状態に保持する保持力が金属製のスナップリングに比べて小さいので、スナップリングの保持力によって円筒部材に変形が生じることを抑制できる。さらに、スナップリングを金属で形成した場合に比較して、製作コストや取扱い性の点でも有利である。
【0030】
また、交点P1,P2を軌道溝10fに所定の角度で接触する玉10cの接触角線L1,L2よりも突き合わせ面13側に位置させれば、図2に示すように、軸受に荷重(例えば軸方向荷重F)が負荷した時の玉10cと軌道溝10e,10fとの接触部での接触角方向の転動体荷重がスナップリング溝16a,16bの形成されている薄肉部分に直接負荷されることがないので、軸5やハウジング2にバックアップされた部分で負荷荷重を受けることができる。これにより、内輪10bの変形を抑制することができ、その結果、軌道輪の破損、軸受剛性の低下、軌道溝の摩耗及び寿命低下等を防止できる。
【0031】
図4は、玉10cと保持器10dの一部を示す斜視図である。同図に示されるように、保持器10dは冠形の形状を有しており、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材から形成されている。また、負荷容量を上げる等の必要性が生じた場合、保持器のない総玉設計も可能である。なお、軸受ハウジング2は円筒状のハウジング本体2aと、このハウジング本体2aのフランジ部2bにボルト接合される環状の外輪押え2cとから構成されている。
【0032】
このような構成において、玉10cの直径をD、軌道溝10e,10fの曲率をRe,Ri、玉10cと軌道溝10e,10fとの接触角をαとすると、本実施形態に係る4点接触玉軸受10は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝10e,10fの曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0033】
図5は本発明に係る多点接触玉軸受をボールねじ支持用軸受として適用した場合の第2実施形態を示す図であり、同図に示されるように、第2の実施形態に係るボールねじ支持用軸受は、ボールねじ軸5を支持する4点接触玉軸受10と、この玉軸受10の周囲を密封する軸受ハウジング2と、この軸受ハウジング2の軸方向両端部に設けられたオイルシール3とから構成されている。
【0034】
4点接触玉軸受10は、図6に示されるように、外輪10a、内輪10b、玉10c等から形成されており、外輪10aの内周面には、外輪軌道溝10eが外輪10aの円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝10eの軸方向断面は曲率半径がReの二つの円弧つまりゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉10cは外輪軌道溝10eと二点で接触するようになっている。
【0035】
一方、内輪10bの外周面には内輪軌道溝10fが外輪軌道溝10eに対向して形成されている。この内輪軌道溝10fの軸方向断面は曲率半径がRiの二つの円弧つまりゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉10cは内輪軌道溝10fと二点で接触するようになっている。
4点接触玉軸受10の内輪10bは、図5に示されるように、ボールねじ軸5の端部に形成された大径軸部5aの端面に押えリング6及び軸受ナット7によって押付け固定されている。
【0036】
外輪10aおよび内輪10bのうち一方の軌道輪(本実施形態では外輪10a)は、図7に示されるように、二つの円筒部材18a,18bと、これら円筒部材18a,18bの端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリング20とで構成されている。
円筒部材18a,18bは軸方向の一端に環状の軌道溝分断面(円筒部材の突き合わせ面)19をそれぞれ有しており、外輪10aの内周面に形成された外輪軌道溝10eは、円筒部材18a,18bの軌道溝分断面19によって外輪10aのラジアル方向に分断されている。
【0037】
スナップリング20は外輪10aの円周方向に沿ってほぼC字状(周方向の1箇所で切り欠かれている)に形成されており、このスナップリング20の軸方向両端部には、円筒部材18a,18bの外周面に形成されたスナップリング溝22a,22b(図7参照)に係合する係合片部21a,21b(図6参照)が設けられている。さらに、スナップリング20は治具挿入孔23(図7参照)を有しており、この治具挿入孔23に治具を差し込むことにより外輪10aへの取付け及び取外しを容易に行えるようになっている。なお、軸受サイズが小径で、スナップリング20の厚みが薄ければ、スナップリング20の内径を容易に拡げることができるので、スナップリング20に治具挿入孔23を必ずしも設ける必要はない。
【0038】
また、スナップリング20は例えばポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材あるいはガラス繊維、炭素繊維等の補強材を混合した合成樹脂材で形成されている。スナップリング溝22a,22bの上記突き合わせ面19から離れた側の肩部22a,22bとスナップリング溝底部22a,22bとの交点をP1,P2とした時、P1,P2が軌道溝10eに所定の角度で接触する玉10cの接触角線L1,L2よりも突き合わせ面19側に位置している(図7参照)。
【0039】
このように、円筒部材18a,18bの外周面に形成されたスナップリング溝22a,22bに係合して円筒部材18a,18bの端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリング20を合成樹脂で形成したことで、金属製のスナップリングを用いた場合のように、スナップリングにガタツキがあっても振動音の発生を抑制できる。また、円筒部材18a,18bの軸方向端面を突き合わせた状態に保持する保持力が金属製のスナップリングに比べて小さいので、スナップリングの保持力によって円筒部材に変形が生じることを抑制できる。さらに、スナップリングを金属で形成した場合に比較して、製作コストや取扱い性の点でも有利である。特に、円筒部材18a,18bが外輪10aを構成する場合は、外輪10aとハウジング2との間が隙間嵌合なので、ハウジング2に外輪10aを組み込んだ後もそのまま変形が残る点でスナップリング20を合成樹脂で形成したほうが有利である。
【0040】
また、交点P1,P2を軌道溝10eに所定の角度で接触する玉10cの接触角線L1,L2よりも突き合わせ面19側に位置させれば、図6に示すように、軸受に荷重(例えば軸方向荷重F)が負荷した時の玉10cと軌道溝10e,10fとの接触部での接触角方向の転動体荷重がスナップリング溝22a,22bの形成されている薄肉部分に直接負荷されることがないので、軸5やハウジング2にバックアップされた部分で負荷荷重を受けることができる。これにより、外輪10aの変形を抑制することができ、その結果、軌道輪の破損、軸受剛性の低下、軌道溝の摩耗及び寿命低下等を防止できる。
【0041】
このような構成において、玉10cの直径をD、軌道溝10e,10fの曲率をRe,Ri、玉10cと軌道溝10e,10fとの接触角をαとすると、本実施形態に係る4点接触玉軸受10は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝10e,10fの曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0042】
ところで、多点接触玉軸受をボールねじ支持用軸受として使用する場合、多点接触玉軸受に要求される点は動トルクをある範囲内に抑え、かつスムーズな回転立上り性と回転立下り性を得られる点である。このような要求を満たすために、本発明者は、種々の組合せ条件についてコンピュータによる解析を行い、その解析結果から表1に示すような仕様の実施例A〜Dを見出した。
【0043】
【表1】
Figure 2005061433
【0044】
表1において、実施例Aは接触角αを12.5°<α≦17.5°とし、かつ玉10cの直径Dに対する軌道溝10e,10fの曲率比(以下、「溝曲率比」という)fi,feを0.54≦fi≦0.555、0.54≦fe≦0.555とした4点接触玉軸受であり、実施例Bは接触角αを17.5°<α≦22.5°とし、かつ溝曲率比fi,feを0.555<fi≦0.57、0.555<fe≦0.57とした4点接触玉軸受である。また、実施例Cは接触角αを22.5°<α≦27.5°とし、かつ溝曲率比fi,feを0.57<fi≦0.59、0.57<fe≦0.59とした4点接触玉軸受であり、実施例Dは接触角αを27.5°<α≦32.5°とし、かつ溝曲率比fi,feを0.59<fi≦0.61、0.59<fe≦0.61とした4点接触玉軸受である。
表1に示した実施例A〜Dと従来例(二列組合せアンギュラ玉軸受(7010A、軸受内径:50mm)の玉径、玉数、玉PCD及び予圧すき間の選定値を表2に示す。
【0045】
【表2】
Figure 2005061433
【0046】
表2に示される従来例E(従来軸受で、製造範囲内で最も動トルクが大きくなる条件)及び実施例A〜Dの接触角αをα=30°、α=17.5°、α=22.5°、α=27.5°、α=32.5°とし、溝曲率比fe及びfiをfe=fi=0.52、fe=fi=0.54、fe=fi=0.556、fe=fi=0.571、fe=fi=0.591とした場合における動トルクを表3に示す。
【0047】
【表3】
Figure 2005061433
表3の結果から、接触角αを17.5°≦α≦32.5°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.54〜0.591とすると、動トルクTrがTr=0.28〜0.282N・mとなり、従来例Eの動トルクと同一かそれより低い値となることがわかる。
次に、実施例A〜Dの接触角αをα=15°、α=20°、α=25°、α=30°とし、溝曲率比fe及びfiをfe=fi=0.55、fe=fi=0.56、fe=fi=0.58、fe=fi=0.60とした場合における動トルクの結果を表4に示す。
【0048】
【表4】
Figure 2005061433
【0049】
表4の結果から、接触角αを15°≦α≦30°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.55〜0.60とすると、動トルクTrがTr=0.24〜0.255N・mとなり、表2に示す従来例Eの動トルクより低い値となることがわかる。
次に、従来例E(従来軸受で製造範囲内で最も動トルクが小さくなる条件)及び実施例A〜Dの接触角αをα=29°、α=12.6°、α=17.6°、α=22.6°、α=27.6°とし、溝曲率比fe及びfiをfe=fi=0.53、fe=fi=0.555、fe=fi=0.57、fe=fi=0.59、fe=fi=0.61とした場合における動トルクの結果を表5に示す。
【0050】
【表5】
Figure 2005061433
【0051】
表5の結果から、接触角αを12.6°≦α≦27.6°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.555〜0.61とすると、動トルクTrがTr=0.215〜0.222N・mとなり、表2に示す従来例Eの動トルクより大きい値となることがわかる。つまり、表1に示す実施例A〜Dを採用することで、従来例の(製造)実績範囲内の動トルクに抑えることが可能となる。
【0052】
表3〜表5の解析計算結果を基に動トルクTrと接触角αおよび溝曲率比fi,feとの関係を三次元的に解析した結果を図8に、また動トルクTrと溝曲率比fi,feとの関係を解析した結果を図9に示す。図8及び図9の解析結果からも明らかなように、動トルクを抑えるためには、接触角αと溝曲率比fi,feを適正な値で組合せる必要があることがわかる。また、接触角αを12.6°≦α≦27.6°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.555〜0.61とすると、動トルクが小さくなっていくが、動トルクが小さ過ぎると、ボールねじの回転停止時における減速イナーシャにより、速やかな停止ができず、指示位置に対してオーバーシュートする可能性がある。また、軸受のアキシャル剛性が小さくなり、やはり、オーバーシュートが発生し易くなる。さらに、アキシャル負荷容量も小さくなるので、転がり疲労寿命も短くなる不具合が生じる。このことから、動トルクを従来例のバラツキ範囲内に抑え、スムーズな回転立上り性と回転立下り性を得るためには、接触角αと溝曲率比fe,fiを表1に示す範囲内で組合せる必要があることがわかる。
【0053】
次に、実施例A〜Dの接触角αをαA=15°、αB=20°、αC=25°、αD=30°とし、溝曲率比fe及びfiをfe=fi=0.55、fe=fi=0.56、fe=fi=0.58、fe=fi=0.60とした場合における各軸受のPV値を表6に示す。
【0054】
【表6】
Figure 2005061433
【0055】
表6の結果から、接触角αを15°≦α≦30°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.55〜0.60とすることによって、内輪と玉とのPV値PViがPVi=47〜80MPa・m/sになると共に外輪と玉とのPV値PVeがPVe=32〜58MPa・m/sとなり、いずれも従来例のそれより高い値を示すことがわかる。
【0056】
図10は表6の解析計算結果を基に内輪PV値と溝曲率比及び接触角との関係を示す図で、図11は同じく表6の解析計算結果を基に内輪PV値と溝曲率比との関係を示す図である。また、図12は表6の解析計算結果を基に外輪PV値と溝曲率比及び接触角との関係を示す図で、図13は同じく表6の解析計算結果を基に外輪PV値と溝曲率比との関係を示す図である。
【0057】
図10〜図13からわかるように、PV値の大小は動トルク、軸受温度上昇以外に接触部の耐摩耗特性にも影響する。半導体チップ等の電子部品を基板上に実装する電子部品実装装置や放電加工機、レーザ加工機等の電解加工機などでは、最近、ボールねじの高速回転が要求されている。急加速及び急減速時の不安定な滑り条件での耐摩耗特性を満足させるためには、PV値をより小さくする必要がある。従来例E及び実施例A〜DにおけるPV値をまとめると、表6の通りとなる。動トルク値を一定にした場合、接触角が小さく、かつ溝曲率比の小さいほうがPV値は小さくなる(実施例Aの方)。いずれの仕様も過去の軸受の実績から判断される限界PV値以下であるので、摩耗の問題は極めて少ないが、ボールねじ回転部の重量や急加速及び急減速時の発生Gに対応して、必要とされるアキシャル剛性要求値や軸受温度上昇特性に応じ、いずれの考案仕様(実施例A〜D)を選定してもよい。
【0058】
次に、実施例A〜Dの接触角αをα=15°、α=20°、α=25°、α=30°とし、溝曲率比fe及びfiをfe=fi=0.55、fe=fi=0.56、fe=fi=0.58、fe=fi=0.60とした場合における各軸受のアキシャル変位ad(μm/1000N:1000Nのアキシャル荷重を負荷した時のアキシャル変位を表す)を解析計算した結果を表7に示す。
【0059】
【表7】
Figure 2005061433
【0060】
表7の結果から、接触角αを15°≦α≦30°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.55〜0.60とすることによって、各軸受のアキシャル変位adがad=4〜14となり、いずれの場合も従来例のアキシャル変位と同一かそれより大きい値を示すことがわかる。
ボールねじのアキシャル剛性は、ボールねじ支持用軸受以外にボールねじ軸とナット間の剛性やボールねじ軸自身の剛性にも影響する。また、使用される機械の種類や使用条件により、要求される剛性値は変わる。
表7の結果から、接触角が大きく、かつ溝曲率比が大きいほう(実施例D)がアキシャル剛性は大きくなる。前述のPV値の要求も考慮し、必要とされるアキシャル剛性要求に応じて、いずれの考案仕様(実施例A〜D)を選定してもよい。
【0061】
図14は、予圧された多点接触玉軸受(実施例Bに相当)に外部からアキシャル荷重を負荷した時の動トルクを、3種類の予圧すき間(Δα=−5μm、−10μm、−15μm)の条件で解析した結果を示す図である。いずれの予圧すき間の場合も動トルクはアキシャル荷重の増加と共に一時的に上昇し、その後、減少して再上昇するという傾向であることがわかる。これは、アキシャル荷重によって軸受の軸方向弾性変形が生じ、内外輪と玉との接触点が初期外部荷重時(0N)の4点接触から3点あるいは2点接触に変化したことによるものである。このように、初期の4点接触からアキシャル荷重の増加と共に2点接触に移行することで、アキシャル荷重が増加しても結果的に動トルクを少なくすることができる。
【0062】
また、図14からわかるように、予圧すき間を小さく設定すると、4点から2点接触に移行する過渡期の動トルク最大値も小さくできる。このことは、実使用条件に置き換えれば適正な予圧すき間選定により、急加速及び急減速時の往復動イナーシャ荷重による動トルク増加を接触点の減少によって軽減できることを意味する。種々の解析結果、最低限、ボールねじの軸方向がたを抑え、かつスムーズな回転特性を得るためには、実際の想定荷重条件を考慮した結果、予圧すき間を0〜−10μm程度に設定することで、動トルク軽減効果が出て来ることがわかった。
【0063】
以上のことから、実施例A及びDは従来品に比べPV値およびアキシャル剛性の点で機能の低下がやや大きめであり、実施例Bあるいは実施例Cはバランスがとれており、より好ましい。
次に、表8に示される仕様の試験軸受A〜E(軸受内径:12mm、軸受外径:28mm、玉ピッチ円径:20mm)を使用して、玉軸受の動トルク特性を回転数:10〜5000min−1(5000min−1は軸受のdmn値として10万に相当)、潤滑:グリース(基油粘度;15×10−5/s)の条件で試験した結果を図15に、また玉軸受の温度上昇特性を上記と同じ条件で試験した結果を図16に示す。
【0064】
【表8】
Figure 2005061433
【0065】
図15及び図16に示される試験結果から、表8の実施例A〜Dは回転数が5000min−1(ボールねじ用多点接触玉軸受として使用した場合に想定される最高回転数領域)のときに、その動トルクと軸受温度上昇(軸受温度−室温)が従来のアンギュラ玉軸受(従来例E)のそれらとほぼ同じ値を示すことがわかる。
また、図15に示される試験結果から、表8の実施例A〜Dは回転数が低速域から高速域に移行したときに、その動トルクの変化が従来例Eに比べて小さいことがわかる。したがって、表8の実施例A〜Dでは急加減速したときの動トルク変動によるイナーシャ変動を抑えることができ、その結果、ボールねじが急停止したときのオーバーシュート等をより効果的に防止することができる。
【0066】
以上のことから、本発明に係るボールねじ支持用多点接触玉軸受は、アンギュラ玉軸受と同等レベル若しくはそれ以上の動トルク特性と温度上昇特性を保持しつつ省スペース化を得ることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。たとえば、上述した実施形態では本発明を4点接触玉軸受に適用したが、本発明を3点接触玉軸受に適用してもよい(図18及び図20参照)。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る多点接触玉軸受によれば、軌道輪を構成する円筒部材の端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリングを金属で形成しなくてもよいので、軌道輪の変形やスナップリングのガタツキによる振動音の発生等を抑制することができる。また、外輪または内輪の脱落防止が可能となり、取扱い性の向上と組付け性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るボールねじ支持用軸受の構造を示す断面図である。
【図2】図1に示される4点接触玉軸受の軸方向断面図である。
【図3】図2に示される内輪の一部分を示す軸方向断面図である。
【図4】保持器の一部を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るボールねじ支持用軸受の構造を示す断面図である。
【図6】図5に示される4点接触玉軸受の軸方向断面図である。
【図7】図6に示される外輪の一部分を示す軸方向断面図である。
【図8】表3〜表5の結果を基に動トルクと接触角及び溝曲率比との関係を三次元的に示す図である。
【図9】表3〜表5の結果を基に動トルクと溝曲率比との関係を示す線図である。
【図10】表6の結果を基に内輪PV値と接触角と溝曲率比との関係を三次元的に示す図である。
【図11】表6の結果を基に内輪PV値と溝曲率比との関係を示す線図である。
【図12】表6の結果を基に外輪PV値と接触角と溝曲率比との関係を三次元的に示す図である。
【図13】表6の結果を基に外輪PV値と溝曲率比との関係を示す線図である。
【図14】外部からアキシャル荷重を負荷した時の動トルクを解析した結果を示す図である。
【図15】玉軸受の動トルクと回転数との関係を示す図である。
【図16】玉軸受の軸受温度上昇(軸受温度−室温)と回転数との関係を示す図である。
【図17】4点接触玉軸受の構造を示す図で、(a)は内輪が分割された4点接触玉軸受の軸方向断面図、(b)は外輪が分割された4点接触玉軸受の軸方向断面図である。
【図18】3点接触玉軸受の構造を示す図で、(a)は内輪が分割された3点接触玉軸受の軸方向断面図、(b)は外輪が分割された3点接触玉軸受の軸方向断面図である。
【図19】4点接触玉軸受の軌道輪に形成された軌道溝の断面形状を示す図である。
【図20】3点接触玉軸受の軌道輪に形成された軌道溝の断面形状を示す図である。
【図21】従来のボールねじ支持用軸受を示す断面図である。
【図22】図21に示される二列組合せ玉軸受の軸方向断面図である。
【符号の説明】
2 軸受ハウジング
3 オイルシール
5 ボールねじ軸
6 押えリング
7 軸受ナット
10 4点接触玉軸受
10a 外輪
10b 内輪
10c 玉
10d 保持器
10e 外輪軌道溝
10f 内輪軌道溝
11 予圧すき間
12a,12b 円筒部材
13 軌道溝分断面
14 スナップリング
15a,15b 係合片部
16a,16b スナップリング溝
16a,16b スナップリング溝の肩部
16a,16b スナップリング溝の溝底部
17 治具挿入孔
18a,18b 円筒部材
19 軌道溝分断面
20 スナップリング
21a,21b 係合片部
22a,22b スナップリング溝
22a,22b スナップリング溝の肩部
22a,22b スナップリング溝の溝底部
23 治具挿入孔

Claims (7)

  1. 外輪の内周面に形成された外輪軌道溝および/又は内輪の外周面に形成された内輪軌道溝を前記外輪と前記内輪との間に設けられた多数の玉に対して2点で接触する形状に形成し、前記外輪軌道溝及び内輪軌道溝と前記玉との接触点を3点以上とした多点接触玉軸受であって、
    前記外輪及び内輪のうち何れか一方の軌道輪を、前記外輪軌道溝または前記内輪軌道溝の中央部を軌道輪のラジアル方向に分断する軌道溝分断面を軸方向の一端に有する二つの円筒部材と、これら円筒部材の外周面または内周面に形成されたスナップリング溝に係合して前記円筒部材の端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリングとから構成するとともに、前記スナップリングを合成樹脂で形成したことを特徴とする多点接触玉軸受。
  2. 請求項1記載の多点接触玉軸受において、前記スナップリング溝底部と、前記円筒部材の突き合わせ面と離れた側のスナップリング溝肩部との交点が前記軌道溝に所定の角度で接触する玉の接触角線の延長線より前記円筒部材の突き合わせ面側に位置することを特徴とする多点接触玉軸受。
  3. 請求項1又は2記載の多点接触玉軸受において、前記玉の直径をD、前記軌道溝の曲率をR、前記玉と軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを12.5°<α≦17.5°とし、かつ前記玉の直径に対する前記軌道溝の曲率比R/DをR/D=0.54〜0.555としたことを特徴とする多点接触玉軸受。
  4. 請求項1又は2記載の多点接触玉軸受において、前記玉の直径をD、前記軌道溝の曲率をR、前記玉と軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを17.5°<α≦22.5°とし、かつ前記玉の直径に対する前記軌道溝の曲率比R/Dを0.555<R/D≦0.57としたことを特徴とする多点接触玉軸受。
  5. 請求項1又は2記載の多点接触玉軸受において、前記玉の直径をD、前記軌道溝の曲率をR、前記玉と軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを22.5°<α≦27.5°とし、かつ前記玉の直径に対する前記軌道溝の曲率比R/Dを0.57<R/D≦0.59としたことを特徴とする多点接触玉軸受。
  6. 請求項1又は2記載の多点接触玉軸受において、前記玉の直径をD、前記軌道溝の曲率をR、前記玉と軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを27.5°<α≦32.5°とし、かつ前記玉の直径に対する前記軌道溝の曲率比R/Dを0.59<R/D≦0.61としたことを特徴とする多点接触玉軸受。
  7. 前記多点接触玉軸受は、ボールねじのボールねじ軸を支承するボールねじ支持用軸受であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1記載の多点接触玉軸受。
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