JP2005058365A - 血液適合性選択分離膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】 親水性高分子を含有するポリスルホン系選択分離膜において、血液又は血漿接触側からの親水性高分子等の溶出物を実験動物に静脈内投与した場合に、実質的に、生体への影響がみられない生体適合性に優れる血液処理膜を提供する。
【解決手段】 選択分離膜の血液接触側表面における親水性高分子の存在割合の最適化と血液接触側表面の細孔径の最適化を行い、製膜時のエンドトキシンの混入を排除し、かつ、洗浄および乾燥方法の最適化を行うことにより、モジュールの血液接触側からの40vol%エタノール抽出残渣を実験動物に静脈内投与した際に、血中ヒスタミン値の上昇が10ng/ml以下である。
【選択図】 なし

Description

本発明は親水性高分子を含有してなるポリスルホン系選択分離膜において、特に体外循環による血中老廃物の除去を目的とする膜に関するもので、さらには、血液透析、血液濾過、および血液透析濾過等の分野で、生体適合性が優れる血液処理膜に関するものである。
慢性腎不全患者の血液処理方法については、近年、種々の膜性能向上技術が実用化され、不純物を除去するために種々の選択分離膜が開発されている。選択分離膜の素材としてはセルロース、セルロース誘導体などの天然素材と、ポリスルホン系、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール共重合体などの合成高分子素材とが挙げられるが、中でもポリスルホン系高分子は、放射線、加熱、および酸・アルカリ等の化学薬品に対し優れた耐性を示し、かつ補体系活性化が起こりにくいなどの生体適合性に優れることから、医療用分離膜の素材としても注目され、需要が増加している。
ポリスルホン系高分子は比較的疎水性が強いため、血液浄化用膜を作製する際に、血液との親和性を高めるため、ポリスルホン系樹脂にポリビニルピロリドンを混ぜることにより親水性を賦与する方法が一般的に用いられている。
近年急速に普及してきているポリスルホン系血液処理膜において、使用した透析器の一部で、透析中の血圧低下やショック症状などの発現が認められており、親水化処理に使用されたポリビニルピロリドンの溶出など、体外循環路からの溶出物の作用が疑われている。この溶出物の問題に対して、特にポリビニルピロリドンの溶出を抑えるために、ポリスルホン系中空糸膜を熱処理あるいは放射線処理することにより、ポリビニルピロリドンを架橋、不溶化する方法(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。ならびに選択分離層の厚みを適切にすることで溶出を抑える方法(例えば、特許文献5参照。)などが提案されているが、臨床上、ポリビニルピロリドンの溶出を抑制したといわれる透析膜においても、未だ、アナフィラキシー様ショック症例の報告がある(例えば、非特許文献1参照)。
特開昭63-97205号公報(第1頁〜第4頁) 特開昭63-97634号公報(第1頁〜第3頁) 特開平4-300636号公報(第1頁〜第4頁) 特開平10-230148号公報(第1頁〜第3頁) 特開平10-243999号公報(第1頁〜第3頁) 中山ら、O-439 第43回日本透析医学会予稿集、pp620、1998
透析膜の溶出物に関しては、(1)外観、(2)あわだち、(3)pH、(4)亜鉛、(5)銅、(6)UVスペクトルの各基準が示されており(例えば、非特許文献2参照)、ポリビニルピロリドンの溶出はUV(220nm付近にピークがある)で検出可能である。しかし、我々が現在市販されているポリビニルピロリドンを含有するポリスルホン系透析膜を測定したところ、該溶出物試験のUV値は基準値付近であり、臨床での溶出物の問題を反映していない。また透析器の臨床使用前洗浄条件に従って、血液流路を生理食塩液にて洗浄した画分におけるポリビニルピロリドンの溶出量は数mg程度と少なかった。すなわち、水(生理食塩液)あるいは熱水による溶出量を指標とした場合には、現状のポリビニルピロリドンを含有するポリスルホン系透析膜の生体適合性が充分確認されない恐れがあり、血液あるいは血液と同程度の抽出力のあるもので体外循環路からの溶出物を得て、生体への影響の有無を確認する新たな指標が必要とされていると考えられる。
透析型人工腎臓装置承認基準(昭和58年6月20日、薬発第494号)
本発明は、血液接触側からのポリビニルピロリドン等の溶出物が、事実上生体への影響のないレベルであることを確認することにより、生体適合性の向上したポリスルホン系血液処理膜を提供することを目的とする。
本発明は以下の構成を含むものである。
(1)主として疎水性高分子と親水性高分子からなる選択分離膜をハウジングした膜面積1.5m2のモジュールの血液接触側に40vol%エタノール水溶液を灌流したときに得られる抽出物量が15mg/モジュール未満であって、モジュール5本から得られた抽出残渣を注射用生理食塩液に溶解し、実験動物に静脈内投与したとき、投与後2時間までの血中ヒスタミン値の上昇が10ng/mL以下であることを特徴とする血液適合性選択分離膜。
(2)実験動物がイヌ科動物である(1)記載の血液適合性選択分離膜。
(3)血液適合性選択分離膜の血液接触側表面の親水性高分子の存在割合が20〜45質量%である(1)または(2)に記載の血液適合性選択分離膜。
(4)血液適合性選択分離膜の血液接触側表面を走査型電子顕微鏡にて5,000倍の倍率で観察したとき、目視で確認できる孔が存在しないことを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の血液適合性選択分離膜。
(5)血液適合性選択分離膜から抽出されるエンドトキシン量が10EU/モジュール以下である(1)〜(4)いずれかに記載の血液適合性選択分離膜。
(6)血液適合性選択分離膜が中空糸膜である(1)〜(5)いずれかに記載の血液処理膜。
(7)疎水性高分子がポリスルホン系高分子である(1)〜(6)いずれかに記載の血液適合性選択分離膜。
(8)親水性高分子がポリビニルピロリドンである(1)〜(7)いずれか記載の血液適合性選択分離膜。
選択分離膜の血液接触側表面における親水性高分子の存在割合の最適化と血液接触側表面の細孔径の最適化を行い、製膜時のエンドトキシンの混入を排除し、かつ、洗浄および乾燥方法の最適化を行うことにより、モジュールの血液接触側からの40vol%エタノール抽出残渣を実験動物に静脈内投与した際に、血中ヒスタミン値が10ng/ml以下であることによって確認される、生体適合性に優れる血液処理膜を提供することが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明によれば、親水性高分子を含むポリスルホン系血液処理膜を、血漿と同等の抽出力が期待される溶媒、好適には40vol%エタノール水溶液を溶媒とし、血液接触側から循環抽出した場合に、得られた親水性高分子等の溶出物は簡単に溶媒を留去し、抽出残渣とすることが出来る。我々が40vol%エタノール水溶液を選択した理由は、PVC製血液回路の可塑剤(フタル酸エステル)の抽出に使用され、水や熱水に比し、より血液に近い抽出力を持つことが報告されており(辻楠雄ほか:人工腎臓用PVC製血液回路からエタノール溶液によるフタル酸エステルの溶出,高分子論文集,1977;34(4):287-290)、また別途我々の以下の確認による。すなわち、市販されているポリビニルピロリドンを含有するポリスルホン系透析膜の40vol%エタノール水溶液での抽出試験によるポリビニルピロリドンの溶出量を測定したところ、モジュールあたり1mg〜数百mgの溶出があることが分かった。一方、同様のモジュールをまず牛血漿で循環抽出した後に、40 vol %エタノール水溶液による抽出試験に供すると、ポリビニルピロリドンの溶出量は、ほぼ検出限界近くに下がった。これらのことから、40 vol %エタノール水溶液による抽出残渣は、臨床血液浄化療法時の溶出の実態に近い溶出物となっていると考えられる。
本発明では、上記抽出残渣を注射用生理食塩液に溶解し、実験動物に静脈内投与することとしているが、投与および動物の状態観察は公知の毒性試験方法(例えば、OECD毒性試験法ガイドライン、厚生労働省医薬品毒性試験法ガイドライン)により実施される。また実験動物、好適にはイヌ科動物を用いるとしたのは、次の理由による。即ち、ポリスルホン系血液処理膜の親水化処理に使用されているポリビニルピロリドンの充分量をイヌに静脈内投与すると、アナフィラキシー様症状が発現することが知られており(Perlmutt, J.H., Parkins, W.M., and Vars,H.M.: Response of dogs to intravenous administration of PVP and its monomer., Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 1953; 83: 146-150.)、該反応が他の実験動物種(ウサギ、ラットなど)に比しイヌで特に感受性が高いと言われている。また別途、ポリスルホン系ではないが、一部の透析器で使用されているポリプロピレングリコール(PPG)の毒性も、ラットに比しイヌで強く発現することが報告されている(Shideman, F.E., and Procita, L.: Some pharmacological actions of polypropylene glycols of average molecular weight 400, 750, 1200 and 2000., J. Pharmacol. Exp. Ther. 1951; 103: 293-305.)。これらのことから、溶出物の生体影響の有無を確認する好適動物種としてイヌを選択した。イヌの性別は問わないが、12ヶ月齢前後で体重10〜15kgくらいのビーグル犬が望ましい。
本発明では、溶出物の生体影響を調べる指標の一つとして、血中ヒスタミン値を選定した。これは上記ポリビニルピロリドンによるアナフィラキシー様反応に相関して、いくつかの動物種で血中ヒスタミン値が上昇することが報告されていることによる(Halpern, B.N.:Histamine release by long chain molecules, CIBA Foundation Symposium on Histamine.1965;pp92-123.)。もう一つの指標として投与後の動物の一般状態の変化、好ましくはアナフィラキシー様症状、があるが、これを選定する意義は、ポリビニルピロリドンを含有するポリスルホン系透析膜の一部において臨床透析中に見られる血圧低下やショック症状と相関する点にある。アナフィラキシー様(症状)反応は、アナフィラキシーとは異なり免疫反応を介さないで起こるアナフィラキシー類似の反応と定義されるが、症状の経過は急性薬物反応の強弱に応じて、軽度なものから循環と呼吸の重篤なものまで幅の広い発現形態をとることが知られている。イヌのアナフィラキシー様症状としては、軽度なもので耳介、眼周囲あるいは腹部〜鼠頸部の色調変化、口唇腫脹、体こすり、頭を振るなど、またやや重度なものとして振戦、丘疹、呼吸頻回、チアノーゼ、粗大呼吸、脱力などが挙げられる。これらの症状は、発現した症状の軽重ならびに発現までの経過時間の遅速に応じてグレード付けを設定し判定することも可能である(鈴田達男:アレルギー実験法(2).蛋白質・核酸・酵素、1969;14(7):666)。
本発明において、実験動物1匹に投与する溶出物の量は、ポリスルホン系血液処理膜をハウジングした容器(例えば透析器)の単位で、1乃至5本分、より好ましくは3乃至5本分から抽出して得られたものである。これは溶出物の生体影響の有無を確認する際の、血液浄化療法を受けている患者とイヌとの体重差が3乃至5倍あるとして、1本分の溶出物で無影響が確認されてもヒトに対して3〜5倍の安全係数が加味され、より好ましくは3乃至5本分、即ち9〜25倍の安全係数を持って無影響が確認されることになる。また抽出するモジュール1本あたりの膜面積は、1.5m2前後の成人用のものが好ましい。本発明においては、前記理由によりモジュール5本分の抽出物を実験動物に投与しても生体反応を刺激しない、より安全性の高い血液浄化用膜を提供することを目的としたものである。さらに溶出物を得る抽出本数(モジュール数)は6本分以上としても良い。但しその際、抽出残渣の濃縮に伴い溶媒あるいは器具からの不純物混入リスクも高まり、実験動物に対する影響にノイズが加わる懸念があることを充分考慮に入れる必要がある。
本発明の選択分離膜のとりうる形態としては、平膜、管状膜、中空糸膜等が挙げられるが、単位体積あたりの膜面積を大きくとれる中空糸膜が好ましい。
本発明における疎水性高分子とは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレートなどの合成高分子やセルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロース系素材であり、特に限定されるものではないが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン系素材は、血液浄化に用いた際、生体適合性に優れ、尿毒症物質の高い除去性能が得られるので好ましい。またこれらは単独で用いても2種以上を混合して用いても良い。
本発明における親水性高分子とはポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレングリコール、グリセリン、デンプンおよびその誘導体などの素材であるが、ポリスルホン系樹脂との相溶性を有することから好ましいのはポリビニルピロリドンである。ポリビニルピロリドンの分子量としては重量平均分子量10,000〜1,500,000のものを用いることができる。具体的にはBASF社より市販されている分子量9,000のもの(K17)、以下同様に45,000(K30)、450,000(K60)、900,000(K80)、1,200,000(K90)を用いるのが好ましく、目的とする用途、特性、構造を得るために、それぞれ単独で用いてもよく、適宜2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明において、膜面積1.5m2のモジュールの血液接触側に40vol%エタノール水溶液を灌流したときに得られる抽出物が15mg/モジュール未満であることが好ましい。膜面積の異なるモジュールにあっては、必ずしも膜面積に比例して抽出物量が増減するわけではない。充填中空糸本数に比例する抽出物に加え、ウレタン等の樹脂やケース部材、ならびに回路素材からの抽出物も関係するため、膜面積と抽出残渣量および組成との間には線形的な相関性に乏しい。そのため、本発明では抽出物量を単位膜面積で規定せず、抽出するモジュール1本あたりの膜面積を1.5m2前後の成人用のものを使用するとした。
40vol%エタノール水溶液によって抽出される物質としては、モジュールの選択分離膜の主構成成分である疎水性高分子や親水性高分子、接着樹脂として使用されたウレタン等のオリゴマー成分、また循環回路の素材に含まれる可塑剤等が抽出物として得られるものと考えられる。得られる抽出物個々の毒性については、現在明らかになっていないものもあるが、本発明ではそれらを全て含めた絶対量として15mg/モジュール未満の抽出量に抑えることを目的とする。より好ましくは10mg/モジュール未満、さらに好ましくは7mg/モジュール未満、よりさらに好ましくは5mg/モジュール未満である。
本発明において、上記モジュール5本分の40vol%エタノール水溶液による抽出物を実験動物に投与したとき、投与後2時間までの血中ヒスタミン値は10ng/mL以下であることが好ましい。血中ヒスタミン値が10ng/mL以下であれば、臨床で時折見られるアナフィラキシー様症状を発症する度合いが低いこと、及び血液浄化用モジュールから血液中に溶出する親水性高分子等の量が少ないことを示し、より安全性の高い血液浄化治療を行うことができることを意味する。より好ましい血中ヒスタミン値は7ng/mL以下、さらに好ましくは5ng/mL以下である。
本発明において、血液接触側表面における親水性高分子の存在割合は20〜45質量%であるのが好ましい。25〜40質量%がより好ましく、28〜37質量%がさらに好ましい。血液接触側表面の親水性高分子の存在割合が20質量%未満では膜全体の親水性高分子の存在割合が低くなりすぎ、血液適合性や透過性能の低下が起こる可能性がある。また乾燥膜の場合プライミング性が悪化することがある。逆に、45質量%を超えると膜中の親水性高分子の溶出を抑えきれないことがあり、そのような膜を血液浄化療法に使用した場合、生体異物反応をひき起こす原因につながる可能性がある。また、透析液に含まれるエンドトキシン(内毒素)が血液側へ浸入する可能性が高まり、発熱等の副作用を引き起こすことに繋がるとか、膜を乾燥させた時に膜表面に存在する親水性高分子が介在し膜同士がくっつき(固着し)、モジュール組み立て性が悪化する等の課題を引き起こす可能性がある。
本発明の血液適合性選択分離膜の血液接触側表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で5,000倍の倍率で観察したとき、目視で確認できる孔が存在しないことが好ましい。血液浄化用膜の細孔径を定量的に測定する方法は現在の科学技術において見出されておらず、本発明ではSEMによる観察において孔が観察されないと表現した。5,000倍の倍率で孔が観察されないとは、血液適合性選択分離膜の血液接触側表面に500Å以上の開孔が存在しないことを意味する。血液接触側の細孔径が500Å以下であれば、親水性高分子が血液側に浸出してこないため好ましい。より好ましい細孔径は300Å以下、さらに好ましくは100Å以下である。細孔径が小さすぎると、血液中の尿毒素物質の除去性が低下するので、細孔径は10Å以上が好ましい。より好ましくは20Å以上、さらに好ましくは30Å以上である。
本発明の血液適合性選択分離膜から抽出されるエンドトキシン量は10EU/モジュール以下であることが好ましい。エンドトキシンが血液浄化治療中に血中に混入すると、インターロイキン(IL)−1に代表されるようなサイトカイン産生亢進による発熱などの急性毒性や、慢性毒性としてアミロイド症発症を誘引する危険性が指摘されている。膜から抽出されるエンドトキシン量が10EU/モジュール以下であれば、このような危険性を低減できるため好ましい。より好ましいエンドトキシン抽出量は5EU/モジュール以下、さらに好ましくは3EU/モジュール以下である。ここで言うモジュールとは、膜面積1.5m2のモジュールを指す。
上記特性を有する血液適合性選択分離膜を製造する方法を具体的に例示する。血液適合性選択分離膜の血液接触表面の親水性高分子の存在割合を上記した範囲にする方法、及び血液接触側表面の細孔径をコントロールする方法として、例えば、紡糸原液中の疎水性高分子に対する親水性高分子の構成割合を65:35〜90:10にしたり、血液適合性選択分離膜の製膜条件を最適化することにより達成できる。また、製膜された血液適合性選択分離膜をモジュール化した後、洗浄することも有効な方法である。血液適合性選択分離膜が中空糸膜である場合の製膜条件としては、紡糸原液中の疎水性高分子と親水性高分子の比率、内部凝固液の組成、外部凝固液の組成および温度、延伸、乾燥条件等の最適化が、また洗浄方法として、熱水洗浄、アルコール洗浄等との組合せの最適化を行うことにより本発明の血液適合性選択分離膜を得ることが可能となる。
紡糸原液中の疎水性高分子と親水性高分子の比率は、65:35〜90:10が好ましい。比率をこの範囲にすることにより、製膜後の選択分離膜の血液接触側表面の親水性高分子の存在割合をコントロールし易くなる。紡糸原液中の親水性高分子の比率が多すぎると、中空糸膜の血液接触側表面の親水性高分子の存在割合が多くなるため、製膜後の洗浄処理のコストが増大することがある。また紡糸原液中の親水性高分子の比率が少なすぎると、中空糸膜の血液接触側表面の親水性高分子の存在割合が少なくなり、膜中に含まれるエンドトキシンを後述する洗浄で落とすのが難しくなったり、血液適合性や透析性能が低下することがある。紡糸原液中の疎水性高分子と親水性高分子の比率は、より好ましくは70:30〜90:10、さらに好ましくは75:25〜90:10である。
内部凝固液としては、0〜80wt%のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはジメチルアセトアミド(DMAc)水溶液が好ましい。より好ましくは、20〜70wt%、さらに好ましくは35〜50wt%である。内部凝固液濃度をこの範囲で制御することにより、溶質透過性と親水性高分子およびエンドトキシンカット性を両立する細孔径を得ることが可能となる。また、詳細な理由はわからないが、ジメチルアセトアミドと水との混合溶液を用いることにより、疎水性高分子と親水性高分子のモビリティに変化が生じ、製膜後の中空糸膜の血液接触側表面の親疎水比が適度にバランスするものと考えられる。内部凝固液濃度が低すぎると、血液接触面の緻密層が厚くなるため、溶質透過性が低下する可能性がある。また内部凝固液濃度が高すぎると、緻密層の形成が不完全になりやすく親水性高分子や膜中に含まれるエンドトキシン(フラグメント)が血液側に溶出しやすくなり、生体(血液)適合性が低下することがある。
外部凝固液は、10〜80℃、0〜40wt%のNMPまたはDMAc水溶液を使用するのが好ましい。外部凝固液の温度、濃度が高すぎる場合は、透析液側表面開孔率および透析液側表面平均孔面積が大きくなりすぎ、透析使用時エンドトキシン(フラグメント)の血液側への逆流入が増大する可能性がある。また、外部凝固液の温度、濃度が低すぎる場合には、紡糸原液から持ち込まれる溶媒を希釈するために大量の水を使用する必要があり、また廃液処理のためのコストが増大する。そのため、外部凝固液の温度、濃度はより好ましくは20〜80℃、0〜35wt%、さらに好ましくは30〜80℃、0〜30wt%、よりさらに好ましくは40〜80℃、5〜30wt%、特に好ましくは50〜80℃、10〜30wt%である。
本発明の中空糸膜の製造において、完全に中空糸膜構造が固定された後に実質的に延伸をかけないことが好ましい。実質的に延伸を掛けないとは、外部凝固液から引き出した中空糸膜をその後の工程において走行する中空糸膜に弛みが生じない程度の張力のみを与えて走らせ、最終的に綛に巻き取ることを意味する。完全に膜構造が固定された中空糸膜に延伸をかけると、孔の変形や、潰れ、裂け、配向が起こり、親水性高分子の溶出が増加したり、エンドトキシンが血液側に浸出しやすくなることがある。製膜工程中の接触部材との摩擦や液抵抗により、走行中の中空糸膜には伸びが発生するため全てのローラー速度を等速にして製膜することは困難である。弛みが生じない程度の張力とは、具体的にはノズルから吐出された紡糸原液に弛みや過度の緊張が生じないように紡糸工程中のローラー速度をコントロールすることを意味する。ここで言う延伸比とはローラー間の速度比である。ローラー間の延伸比の好ましい範囲は、0.01〜1.5%である。より好ましい範囲は、0.05〜1%、さらに好ましい範囲は0.1〜0.7%である。
外部凝固液より引き上げた中空糸膜は、湿潤状態のまま綛に巻き取り、3,000〜20,000本の束にする。ついで、得られた中空糸膜束を洗浄し、過剰の溶媒、親水性高分子を除去する。中空糸膜束の洗浄方法として、本発明では、100〜140℃の熱水、または室温〜50℃、10〜40vol%のエタノールまたはイソプロパノール水溶液に中空糸膜束を浸漬して処理するのが好ましい。
(1)0〜140℃の熱水で洗浄するとは、加圧容器内の過剰のRO水に浸漬した中空糸膜束を121℃で30分〜2時間程度処理するのが好ましい。
(2)エタノールまたはイソプロパノール水溶液を使用する場合には、中空糸膜に対して過剰のエタノールまたはイソプロパノールの10〜40vol%水溶液に浸漬した中空糸膜束を室温〜50℃で15分〜4時間程度処理するのが好ましい。より好ましくは、1回15〜30分浸漬処理を洗浄液を交換しながら数回繰り返す。
前記洗浄方法を2つ組み合わせて行ってもよい。いずれの方法においても、処理温度が低すぎる場合には、洗浄回数を増やす等が必要になりコストアップに繋がることがある。また、処理温度が高すぎると親水性高分子の分解が加速し、逆に洗浄効率が低下することがある。上記洗浄を行うことにより、血液接触側表面の親水性高分子の存在率の適正化を行い、親水性高分子やエンドトキシンの溶出量を減ずることが可能となる。
洗浄終了後の中空糸膜束は、不活性ガス中で30〜100℃で乾燥するか、またはマイクロ波を照射して乾燥するのが好ましい。不活性ガス中で乾燥するとは、乾燥機内に湿潤中空糸膜を入れた後、例えば、窒素、アルゴンなどの雰囲気中で乾燥することである。このような乾燥方法により系内の酸素濃度を下げることができ、親水性高分子の酸化分解・劣化を抑制することが可能となり、ひいては40vol%エタノールによる抽出量を減ずるものと考える。不活性ガスを送風、排出できる機構を備えた乾燥機を用いることにより、より乾燥時間を短縮できるため、親水性高分子の熱劣化抑制や製造コストを下げる意味で好ましい。乾燥温度は、より好ましくは40〜80℃である。
湿潤状態の中空糸膜束をマイクロ波乾燥機に入れ、20kPa以下の減圧下で出力0.1〜20kWのマイクロ波を照射して乾燥する方法も好ましい実施態様である。乾燥時間短縮を考慮するとマイクロ波の出力は高いほうが好ましいが、例えば親水性高分子を含有する中空糸膜では過乾燥や過過熱による親水性高分子の劣化、分解が起こったり、使用時の濡れ性低下が起こるなどの問題があるため、出力はあまり上げないのが好ましい。また0.1kW未満の出力でも中空糸膜束を乾燥することは可能であるが、乾燥時間が伸びることによる処理量低下の問題が起こる可能性がある。前記出力に組み合わせる減圧度としては、乾燥前の中空糸膜束の含水率にもよるが、15kPa以下がより好ましく、10kPa以下がさらに好ましい。減圧度は低い方が、乾燥速度が速まるため好ましいが、系の密閉度を上げるためのコストアップを考慮すると0.1kPaを下限とするのが好ましい。より好ましくは0.25kPa以上、さらに好ましくは0.4kPa以上である。マイクロ波出力および減圧度の組合せの最適値は、中空糸膜束の含水率および中空糸膜束の処理本数により異なるので、実験により適宜設定値を求めるのが好ましい。
例えば、中空糸膜束1本当たり50gの水分を有する中空糸膜束を20本乾燥した場合、総水分含量は50g×20本=1,000gとなり、この時のマイクロ波の出力は1.5kW、減圧度は5kPaが適当である。
マイクロ波の照射周波数は、中空糸膜束への照射斑の抑制や、細孔内の水を細孔より押出す効果などを考慮すると1,000〜5,000MHzが好ましい。より好ましくは1,500〜4,000MHz、さらに好ましくは2,000〜3,000MHzである。
中空糸膜の製造中にエンドトキシンが膜に付着することを抑制するために、製造工程中で使用する水は限外濾過膜を通過させ、生菌を除去したものを使用するのが好ましい。また、空気中に浮遊する菌体を除去する目的でクラス10万以上のクリーン度を有するクリーンルーム内で中空糸膜を製造することが好ましい。
本発明においては、親水性高分子の選択分離膜の血液接触側表面における存在割合の最適化と血液接触側表面の細孔径を最適化、製膜時のエンドトキシンの混入を排除することにより、前記したような課題を解決し、本発明に至った。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
(40vol%エタノール抽出法)
ポリスルホン系血液透析器モジュールのうち、内部に保存液が充填されてあるウェットタイプについては、まず内部保存液を血液流路側および透析液側のいずれの側からも排出させる。
ポリスルホン系血液透析器モジュール(ドライタイプ、ウェットタイプ;ウェットタイプは前記保存液廃棄処理を行ったもの)の血液接触側からの40vol%エタノール水溶液による抽出操作は以下のような手順で行った。透析器モジュールの透析液側を閉じ、血液流路側出入口にチューブをつないで500mLの蒸留水を流して洗浄を行った後、モジュール内の蒸留水を40vol%エタノール水溶液で置換した。透析液側からも40vol%エタノール水溶液を注入しモジュール内部を満たして封止した。次に40vol%エタノール水溶液300mLを40℃に保温しながらペリスタポンプ(流速150mL/min)で1時間、中空糸内側に循環させた後、該循環液を回収し抽出液を得た。モジュール1本分だけでなく2本分以上の抽出を行う際には、上記抽出操作を繰り返し行うことにより相当分の抽出液を得ることが出来る。得られた抽出液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、さらに凍結乾燥を行い抽出残渣(溶出物)を得た。なお、ガラス器具類は乾熱滅菌し、抽出溶媒調製に用いるエタノールは再蒸留したものを、また蒸留水は注射用蒸留水を用いた。さらにチューブ類はシリコーン製チューブをオートクレーブ滅菌して用いた。抽出残渣量の測定は、凍結乾燥前後の容器重量の増加分として算出した。
(エンドトキシン測定方法)
測定にあたって用いる容器等は、すべて洗浄後、乾熱滅菌(210℃×60分)した容器、あるいは市販の滅菌済み個別包装容器を用いて測定を実施した。
・サンプル調製
クリーンベンチ内で滅菌済み三角フラスコに510mLの日本薬局方注射用水(大塚製薬製)を注ぎ、中空糸膜束17gをその注射用水に浸し、軽く攪拌し25℃で90分間抽出する。水温は18±3℃。このサンプル調整に一連の操作から測定終了までの間、試験系外の菌のコンタミに注意する。抽出後の上澄み液を試験液として使用した。
・測定
和光純薬製リムルスES-IIテストワコーを使用して抽出液中のエンドトキシン濃度を測定した。試薬に添付されている操作方法に準拠し実施した。測定の検出は和光純薬製トキシノメーターET-201を使用してゲル化時間を測定し、コントロールスタンダードの希釈にて得られた検量線より抽出液中のエンドトキシン濃度を算出した。得られたエンドトキシン濃度より、モジュールあたりの量に換算した。
(血液接触側表面の親水性高分子量の測定)
親水性高分子の疎水性高分子に対する存在割合は、X線光電子分光法(ESCA法)で求めた。疎水性高分子としてポリスルホン系高分子を、親水性高分子としてポリビニルピロリドンを用いた場合の測定法を例示する。
中空糸膜1本を試料台にはりつけてESCAでの測定を行った。測定条件は次に示す通りである。
測定装置:アルバック・ファイ ESCA5800
励起X線:MgKα線
X線出力:14kV,25mA
光電子脱出角度:45°
分析径:400μmφ
パスエネルギー:29.35eV
分解能:0.125eV/step
真空度:約10−7Pa以下
窒素の測定値(N)と硫黄の測定値(S)から、次の式により表面でのPVP含有比率を算出した。
<PVP添加PES膜の場合>
PVP含有比率(Hpvp)[%]
=100×(N×111)/(N×111+S×232)
<PVP添加PSf膜の場合>
PVP含有比率(Hpvp)[%]
=100×(N×111)/(N×111+S×442)
(走査型電子顕微鏡による膜表面の観察)
中空糸膜内表面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察するために、中空糸の内側を露出させた試料を作成し、以下の条件で観察を行った。
1)試料の作成
サンプル中空糸を1本取り、真っ直ぐにしてカミソリで斜めに切る。カーボン用両面テープを貼った試料台にサンプルを乗せ内表面観察試料とする。
2)SEM観察
装置:日立 S-2500型 SEM
加速電圧:15 kV
倍率:5,000倍
写真撮影:ポラロイドフィルム FP-500B45使用
(血中ヒスタミン値の測定法)
市販のポリビニルピロリドン(ポビドン K-30;BASF社製)を注射用生理食塩液で、5mg/10mL、20mg/10mLおよび200mg/10mLの各濃度に溶解し、体重10kg前後のイヌの前肢静脈(橈側皮静脈)内に10mL/匹の容量で単回投与した。イヌは各濃度2〜3匹を用い、投与の前に各投与液は0.45μmのメンブランフィルター(Millex-HV;Millipore社製)にて濾過したものを使用した。比較対照には注射用生理食塩液を10mL/匹の容量で投与した。投与前と投与後5、15、30、および120分にイヌから採血して、各サンプル血液のヘマトクリット(Hct)値を測定するとともに、各サンプル血漿のヒスタミン値をHistamine-ELISAキット(ICN Pharmaceuticals Inc.)を用いて測定した。さらに投与後2時間までのイヌの症状観察を行い、アナフィラキシー様症状発現の有無を調べた。結果を表1に示す。
PVPの5mgあるいは20mgをイヌに投与しても何ら症状発現はみられなかったが、PVPの200mgでは、投与後、腹部から鼠頸部にかけての色調変化(紅潮)、眼結膜充血、体こすりなどの明らかなアナフィラキシー様症状が認められた。またPVP 200mgの投与後5分から15分には血中ヒスタミン値が顕著に上昇し、ヘマトクリット値も30%前後上昇した。
(実施例1)
ポリエーテルスルホン(4800P;住友化学社製)20wt%、ポリビニルピロリドン(ポビドン K-90;BASF社製)3.5wt%をジメチルアセトアミド73.5wt%および水3wt%と混合し60℃で均一溶解した。紡糸原液中のポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンの比は85:15であった。溶解タンク内で減圧脱泡した紡糸原液を、35wt%ジメチルアセトアミド水溶液を内部凝固液として使用し、これらを二重管オリフィスより同時に吐出し、65cmの空走部を経て、75℃、15wt%ジメチルアセトアミド水溶液からなる外部凝固液中に導き中空糸膜を形成した。このとき、紡糸工程中の各ローラー間の延伸倍率は0.3%であり、工程全体での延伸倍率は4%であった。外部凝固液から引き上げた中空糸膜を軽く水洗した後、綛に10,500本の束に捲き取った。得られた中空糸膜束を20LのRO水に浸漬し、121℃で30min間の洗浄処理を都度RO水を更新しながら3回繰り返し、過剰の親水性高分子と溶媒、膜中に含まれるエンドトキシン(フラグメント)を除去した。洗浄後の中空糸膜束を窒素気流中で60℃で8hrかけて乾燥した。得られた中空糸膜の内径は200.5μm、膜厚は28.8μmであった。実施例1において、紡糸工程中で用いた水は、全て限外濾過膜を通した水を用いた。また、中空糸膜の製造はクラス100,000のクリーンルーム内で行った。
中空糸膜血液接触側表面の親水性高分子の存在割合を、ESCAにて測定したところ、32質量%であった。
この中空糸膜の血液接触側表面を走査型電子顕微鏡にて倍率5,000倍で観察したところ、目視で確認される孔は存在しなかった。結果を図1に示す。
この中空糸膜束をハウジングケースに挿入し、端部をウレタン樹脂にて接着した後、端部を切断し中空糸膜端部を開口し、中空糸内径基準で膜面積1.5m2のモジュールを作成した。作成したモジュールに20kGyのγ線を照射して滅菌処理を行った。以下、このモジュールを用いて評価を行った。
滅菌後のモジュールより、無菌状態で中空糸膜を取り出し、膜中に含まれるエンドトキシン量を測定したところ、モジュール1本当り4EUのエンドトキシンが抽出された。
40vol%エタノール水溶液を用いて40℃で1時間中空糸膜内側を循環させ、抽出液を得た。モジュール5本分の抽出液を濃縮、凍結乾燥したもの(抽出残渣)を注射用生理食塩液10mLに溶解し、体重約10kgのビーグル犬に静脈内投与した。また比較対照として、抽出溶媒である40vol%エタノール水溶液1500mLを濃縮して得た残渣を、注射用生理食塩液10mLに溶解させ上記溶出物と同様、ビーグル犬に静脈内投与した。なお、モジュール1本当たりの40vol%エタノール水溶液による抽出残渣量は、11.1mg であった。結果を表2、3に示す。
(比較例1)
実施例1と同じ紡糸原液を調製し、同様の紡糸工程を経て、湿潤中空糸膜束を得た。得られた中空糸膜束を洗浄処理を行わずに、空気中で60℃で15hr乾燥した。得られた中空糸膜の内径は201.2μm、膜厚は29.3μmであった。比較例1において、紡糸工程中で用いた水は、全て限外濾過膜を通した水を用いた。また、中空糸膜の製造はクラス100,000のクリーンルーム内で行った。
中空糸膜血液接触側表面の親水性高分子の存在割合を、ESCAにて測定したところ、48質量%であった。
この中空糸膜の血液接触側表面を走査型電子顕微鏡にて倍率5,000倍で観察したところ、目視で確認できる孔は存在しなかった。
この中空糸膜束をハウジングケースに挿入し、端部をウレタン樹脂にて接着した後、端部を切断し中空糸膜端部を開口し、中空糸内径基準で膜面積1.5m2のモジュールを作成した。作成したモジュールに20kGyのγ線を照射して滅菌処理を行った。以下、このモジュールを用いて評価を行った。
滅菌後のモジュールより、無菌状態で中空糸膜を取り出し、膜中に含まれるエンドトキシン量を測定したところ、モジュール1本当り35EUのエンドトキシンが抽出された。
40vol%エタノール水溶液を用いて40℃、1時間中空糸膜内側を循環させ、抽出液を得た。また、モジュール5本分の抽出残渣を注射用生理食塩液10mLに溶解し、体重約10kgのビーグル犬に静脈内投与した。また比較対照として、抽出溶媒である40vol%エタノール水溶液1500mLを濃縮して得た残渣を、注射用生理食塩液10mLに溶解させ上記溶出物と同様、ビーグル犬に静脈内投与した。なお、モジュール1本当たりの40vol%エタノール水溶液による溶出物量は、28mgであった。結果を表2、3に示す。
(実施例2)
親水性高分子を1wt%、ジメチルアセトアミドを76wt%とした以外は、実施例1と同じ紡糸原液を調製した。紡糸原液中のポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンの比は95:5であった。ついで、内部凝固液の濃度を55wt%ジメチルアセトアミド水溶液とした以外は、実施例1と同様の紡糸工程を経て、湿潤中空糸膜束を得た。得られた中空糸膜束を実施例1と同様の洗浄処理および乾燥処理を行った。得られた中空糸膜の内径は196.6μm、膜厚は27.5μmであった。実施例2において、紡糸工程中で用いた水は、全て限外濾過膜を通した水を用いた。また、中空糸膜の製造はクラス100,000のクリーンルーム内で行った。
中空糸膜血液接触側表面の親水性高分子の存在割合を、ESCAにて測定したところ、17質量%であった。血液浄化使用時に経時的に透過性能が低下する問題があり、血液接触側表面の親水性高分子の存在割合が少ないため、血漿タンパクの膜面への吸着があったものと考えられた。
この中空糸膜の血液接触側表面を走査型電子顕微鏡にて倍率5,000倍で観察したところ、目視で確認できる孔は存在しなかった。
この中空糸膜束を使用して中空糸内径基準で膜面積1.5m2のモジュールを作成した。40vol%エタノール水溶液を用いて40℃、1時間中空糸膜内側を循環させ、抽出液を得た。また、モジュール5本分の抽出残渣を注射用生理食塩液10mLに溶解し、体重約10kgのビーグル犬に静脈内投与した。また比較対照として、抽出溶媒である40vol%エタノール水溶液1500mLを濃縮して得た残渣を、注射用生理食塩液10mLに溶解させ上記溶出物と同様、ビーグル犬に静脈内投与した。なお、モジュール1本当たりの40vol%エタノール水溶液による抽出残渣量は、10.6mgであった。結果を表2、3に示す。
(実施例3)
ポリエーテルスルホン(4800P;住友化学社製)17wt%、ポリビニルピロリドン(ポビドン K-90;BASF社製)5wt%をジメチルアセトアミド73wt%および水5wt%と混合し60℃で均一溶解した。紡糸原液中のポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンの比は77:23であった。溶解タンク内で減圧脱泡した紡糸原液を、45wt%ジメチルアセトアミド水溶液を内部凝固液として使用し、これらを二重管オリフィスより同時に吐出し、30cmの空走部を経て、55℃、20wt%ジメチルアセトアミド水溶液からなる外部凝固液中に導き中空糸膜を形成した。このとき、紡糸工程中の各ローラー間の延伸倍率は0.5%であり、工程全体での延伸倍率は6%であった。外部凝固液から引き上げた中空糸膜を軽く水洗した後、綛に10,500本の束に捲き取った。得られた中空糸膜束を20Lの40vol%エタノール水溶液に浸漬し、液を対流させながら室温で30min間行った。この洗浄処理を都度40vol%エタノール水溶液を更新しながら2回繰り返し、過剰の親水性高分子と溶媒、膜中に含まれるエンドトキシンを除去した。洗浄後の中空糸膜束20本を出力1.5kW、減圧度5kPa、周波数2,000MHzでマイクロ波乾燥した。得られた中空糸膜の内径は199.0μm、膜厚は27.3μmであった。実施例3において、紡糸工程中で用いた水は、全て限外濾過膜を通した水を用いた。また、中空糸膜の製造はクラス100,000のクリーンルーム内で行った。
中空糸膜血液接触側表面の親水性高分子の存在割合を、ESCAにて測定したところ、35質量%であった。
この中空糸膜の血液接触側表面を走査型電子顕微鏡にて倍率5,000倍で観察したところ、目視で確認できる孔は存在しなかった。
この中空糸膜束をハウジングケースに挿入し、端部をウレタン樹脂にて接着した後、端部を切断し中空糸膜端部を開口し、中空糸内径基準で膜面積1.5m2のモジュールを作成した。作成したモジュールに20kGyのγ線を照射して滅菌処理を行った。以下、このモジュールを用いて評価を行った。
滅菌後のモジュールより、無菌状態で中空糸膜を取り出し、膜中に含まれるエンドトキシン量を測定したところ、モジュール1本当り4EUのエンドトキシンが抽出された。
40vol%エタノール水溶液を用いて40℃で1時間中空糸膜内側を循環させ、抽出液を得た。また、モジュール5本分の抽出残渣を注射用生理食塩液10mLに溶解させ、体重約10kgのビーグル犬に静脈内投与した。また比較対照として、抽出溶媒である40vol%エタノール水溶液1500mLを濃縮して得た残渣を、注射用生理食塩液10mLに溶解させ上記溶出物と同様、ビーグル犬に静脈内投与した。なお、モジュール1本当たりの40vol%エタノール水溶液による抽出残渣量は、8.0mgであった。結果を表2、3に示す。
(比較例2)
実施例2と同様の紡糸原液を調製した。溶解タンク内で減圧脱泡した紡糸原液を、35wt%ジメチルアセトアミド水溶液を内部凝固液として使用し、これらを二重管オリフィスより同時に吐出し、30cmの空走部を経て、55℃、50wt%ジメチルアセトアミド水溶液からなる外部凝固液中に導き中空糸膜を形成した。このとき、紡糸工程中の各ローラー間の延伸倍率は1.7%であり、工程全体での延伸倍率は21%であった。外部凝固液から引き上げた中空糸膜を軽く水洗した後、綛に10,500本の束に捲き取った。得られた中空糸膜束は、洗浄処理を行わずに実施例3と同様の方法で乾燥処理を行った。得られた中空糸膜の内径は199.7μm、膜厚は30.9μmであった。比較例2において、中空糸膜の製造に用いた水はすべて水道水を用い、製造環境はクラス100,000のクリーンルーム内で行った。
中空糸膜血液接触側表面の親水性高分子の存在割合を、ESCAにて測定したところ、56質量%であった。
この中空糸膜の血液接触側表面を走査型電子顕微鏡にて倍率5,000倍で観察したところ、SEM写真に目視で孔が確認された。結果を図2に示す。
この中空糸膜束をハウジングケースに挿入し、端部をウレタン樹脂にて接着した後、端部を切断し中空糸膜端部を開口し、中空糸内径基準で膜面積1.5m2のモジュールを作成した。作成したモジュールに20kGyのγ線を照射して滅菌処理を行った。以下、このモジュールを用いて評価を行った。
滅菌後のモジュールより、無菌状態で中空糸膜を取り出し、膜中に含まれるエンドトキシン量を測定したところ、モジュール1本当り100EUのエンドトキシンが抽出された。
40vol%エタノール水溶液を用いて40℃で1時間中空糸膜内側を循環させ、抽出液を得た。また、モジュール5本分の溶出物(抽出残渣)を注射用生理食塩液10mLに溶解させ、体重約10kgのビーグル犬に静脈内投与した。また比較対照として、抽出溶媒である40vol%エタノール水溶液1500mLを濃縮して得た残渣を、注射用生理食塩液10mLに溶解させ上記溶出物と同様、ビーグル犬に静脈内投与した。なお、モジュール1本当たりの40vol%エタノール水溶液による抽出残渣量は、42mgであった。結果を表2、3に示す。
(比較例3)
ポリエーテルスルホン(4800P;住友化学社製)17wt%、ポリビニルピロリドン(ポビドン K-90;BASF社製)10wt%をジメチルアセトアミド68wt%および水5wt%と混合し60℃で均一溶解した。紡糸原液中のポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンの比は63:37であった。溶解タンク内で減圧脱泡した紡糸原液を、30wt%ジメチルアセトアミド水溶液を内部凝固液として使用し、これらを二重管オリフィスより同時に吐出し、50cmの空走部を経て、60℃、10wt%ジメチルアセトアミド水溶液からなる外部凝固液中に導き中空糸膜を形成した。このとき、紡糸工程中の各ローラー間の延伸倍率は0.8%であり、工程全体での延伸倍率は10%であった。外部凝固液から引き上げた中空糸膜を軽く水洗した後、綛に10,500本の束に捲き取った。得られた中空糸膜束を20LのRO水に浸漬し、121℃で20min間洗浄処理を行い洗浄処理を行った。洗浄処理は1回行ったののみである。洗浄後の中空糸膜束を空気雰囲気中100℃で12hr乾燥した。得られた中空糸膜の内径は201.3μm、膜厚は28.8μmであった。比較例3において、紡糸工程中で用いた水は、全て限外濾過膜を通した水を用いた。また、中空糸膜の製造はクラス100,000のクリーンルーム内で行った。
中空糸膜血液接触側表面の親水性高分子の存在割合を、ESCAにて測定したところ、50質量%であった。
この中空糸膜の血液接触側表面を走査型電子顕微鏡にて倍率5,000倍で観察したところ、目視で確認できる孔は存在しなかった。
この中空糸膜束をハウジングケースに挿入し、端部をウレタン樹脂にて接着した後、端部を切断し中空糸膜端部を開口し、中空糸内径基準で膜面積1.5m2のモジュールを作成した。作成したモジュールに20kGyのγ線を照射して滅菌処理を行った。以下、このモジュールを用いて評価を行った。
滅菌後のモジュールより、無菌状態で中空糸膜を取り出し、膜中に含まれるエンドトキシン量を測定したところ、モジュール1本当り9EUのエンドトキシンが抽出された。
40vol%エタノール水溶液を用いて40℃で1時間中空糸膜内側を循環させ、抽出液を得た。また、モジュール5本分の溶出物(抽出残渣)を注射用生理食塩液10mLに溶解させ、体重約10kgのビーグル犬に静脈内投与した。また比較対照として、抽出溶媒である40vol%エタノール水溶液1500mLを濃縮して得た残渣を、注射用生理食塩液10mLに溶解させ上記溶出物と同様、ビーグル犬に静脈内投与した。なお、モジュール1本当たりの40vol%エタノール水溶液による抽出残渣量は、25mgであった。結果を表2、3に示す。
投与前ヒスタミン値はいずれもND(<1ng/mL)〜3ng/mLの範囲
ND;検出限界(1ng/mL)未満.
アナフィラキシーgradeは以下の基準に従って判定した。
−:症状発現なし
±:軽度な色調変化(耳介、眼周囲、腹部〜鼠頸部など)、
軽度な口唇腫脹、
体こすり、
頭を振る(少数回)
+:色調変化、口唇腫脹、
頻繁な体こすり、
頭を振る(頻繁)、
眼結膜充血
++:振戦、丘疹、呼吸頻回、
チアノーゼ、粗大呼吸、脱力
本発明の選択分離膜は、血液接触側表面における親水性高分子の存在割合の最適化と血液接触側表面の細孔径の最適化を行い、製膜時のエンドトキシンの混入を排除し、かつ、洗浄および乾燥方法の最適化を行うことにより、モジュールの血液接触側からの40vol%エタノール抽出残渣を実験動物に静脈内投与した際に、血中ヒスタミン値が10ng/ml以下であるため、血液透析、血液濾過、および血液透析濾過等の分野に利用することができ、産業界に寄与することが大である。
実施例1の中空糸膜内表面の走査型電子顕微鏡(SEM)による5,000倍の倍率で観察した結果を示す。 比較例2の中空糸膜内表面の走査型電子顕微鏡(SEM)による5,000倍の倍率で観察した結果を示す。

Claims (8)

  1. 主として疎水性高分子と親水性高分子からなる選択分離膜をハウジングした膜面積1.5m2のモジュールの血液接触側に40vol%エタノール水溶液を灌流したときに得られる抽出物量が15mg/モジュール未満であって、モジュール5本から得られた抽出残渣を注射用生理食塩液に溶解し、実験動物に静脈内投与したとき、投与後2時間までの血中ヒスタミン値の上昇が10ng/mL以下であることを特徴とする血液適合性選択分離膜。
  2. 実験動物がイヌ科動物である請求項1記載の血液適合性選択分離膜。
  3. 血液適合性選択分離膜の血液接触側表面の親水性高分子の存在割合が20〜45質量%である請求項1または2に記載の血液適合性選択分離膜。
  4. 血液適合性選択分離膜の血液接触側表面を走査型電子顕微鏡にて5,000倍の倍率で観察したとき、目視で確認できる孔が存在しないことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の血液適合性選択分離膜。
  5. 血液適合性選択分離膜から抽出されるエンドトキシン量が10EU/モジュール以下である請求項1〜4いずれかに記載の血液適合性選択分離膜。
  6. 血液適合性選択分離膜が中空糸膜である請求項1〜5いずれかに記載の血液適合性選択分離膜。
  7. 疎水性高分子がポリスルホン系高分子である請求項1〜6いずれかに記載の血液適合性選択分離膜。
  8. 親水性高分子がポリビニルピロリドンである請求項1〜7いずれかに記載の血液適合性選択分離膜。
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