JP2005058142A - インスタント緑茶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 光酸化による劣化・変質が抑制され長期間商品価値を保持可能なインスタント緑茶を提供する。
【解決手段】 インスタント緑茶は、荒茶を140〜160℃で25〜40分間火入れ乾燥した緑茶葉を用意し、アスコルビン酸1600〜2800ppmを含む水性の抽出溶媒を用いて緑茶葉から茶成分の抽出液を得、抽出液から抽出溶媒を除去することにより製造される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光酸化による劣化や変質臭の発生が抑制されたインスタント緑茶の製造方法に関する。
緑茶、紅茶、中国茶等の茶類は、茶葉から抽出された茶抽出液を濃縮・乾燥して茶のエキスを粉末にすることによってインスタント茶を製造することができる。このような製造方法においては、製造中に茶の香気成分が損なわれ易く、このため、香気成分の安定化や香気の質及び力化の改善を目的として、抽出に際してサイクロデキストリンや澱粉加水分解物などを用い、得られた茶抽出液を濃縮あるいは乾燥することが提案されている(例えば、下記の特許文献1、2など)。
特許第147091号公報 特公平3−36491号公報
しかし、このような従来のインスタント緑茶は、光に晒されると光酸化により急速に劣化・変質を引き起こし、風味を損なうだけでなく変質による不快臭を生じるため、短期間で商品価値が失われる。また、中身が見える透明容器での商品化は不可能である。
本発明は、この様な従来技術の課題を解決するためになされたもので、光酸化による劣化・変質が抑制され、光に晒されても短期間で商品価値が失われることのないインスタント緑茶の提供を目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、抽出を行う茶葉の火入れ乾燥を工夫することによって、調製したインスタント緑茶の光劣化・変質を抑制することが可能であることを見いだし、本発明のインスタント緑茶の製造方法を成すに至った。
本発明の一態様によれば、インスタント緑茶の製造方法は、荒茶を140〜160℃で25〜40分間火入れ乾燥した緑茶葉を用意する工程と、アスコルビン酸1600〜2800ppmを含む水性の抽出溶媒を用いて、前記緑茶葉から茶成分の抽出液を得る工程と、前記抽出液から前記抽出溶媒を除去する工程とを有することを要旨とする。
本発明によれば、光酸化による劣化・変質が抑制され長期間商品価値を保持可能なインスタント緑茶を提供することができ、その工業的価値は極めて大である。
緑茶葉から抽出した抽出液から抽出溶媒つまり水を除去すると、緑茶成分からなるインスタント緑茶が得られる。インスタント緑茶は光劣化し易く、光酸化により不快な変質臭が発生する。これを防止する方法として、酸化防止剤として用いられるアスコルビン酸の添加が考えられるが、十分に光劣化を抑制することは困難である。光劣化について調べると、インスタント緑茶の光酸化により発生する変質臭は、原料茶葉に含まれる脂肪酸やカロチノイド類等の分解によるものであり、これらの分解においては、茶葉の乾燥度が低いほど調製したインスタント緑茶における分解・劣化が激しい傾向が見られる。従って、インスタント緑茶の製造に用いる原料茶葉の火入れ乾燥を強化して茶葉の含水量を減少させることがインスタント緑茶の光劣化を抑制するために重要な事項の1つであることが解った。更に、火入れ乾燥を強化した原料茶葉から抽出する際に抽出溶媒である水(冷水、熱水)に酸化防止剤として機能するアスコルビン酸がある程度以上の濃度で存在すると、インスタント緑茶の耐光性が飛躍的に向上し、緑茶成分の光劣化が十分に抑制可能であることが見出された。つまり、本発明においては、インスタント緑茶の製造に際して、火入れ乾燥を強化した緑茶葉を原料茶葉として用い、アスコルビン酸を高濃度に含有する抽出溶媒を用いて茶葉からの抽出を行う。以下、本発明のインスタント緑茶の製造方法を詳細に説明する。
インスタント茶を調製する原料茶葉は、緑茶、紅茶、中国茶といった狭義の茶だけでなく、穀物茶、ハーブティ等の各種植物を原料とする広義の茶も使用することができるが、タンニン、カフェイン等が多く含まれ経時的な安定性を得るのが難しい狭義の茶である緑茶からのインスタント緑茶の製造において特に有効である。これらの茶葉を、単独あるいは複数種組み合わせて用いることも可能である。
市場に提供される緑茶葉は、一般に、生の茶葉に対して蒸し、炒り、揉捻、乾燥等の処理を茶の種類や等級に応じて適宜施して調製される荒茶(水分量5%程度)を最終的に消費者の好みに合う様再度火入れ乾燥したものである。通常、火入れ乾燥の温度は、茶の等級などに応じて80〜140℃の範囲から選択され、火入れ乾燥によって茶葉の水分量は3%程度となり、緑茶特有の芳香や風味が付与される。本発明においては、この火入れ乾燥を140〜160℃、好ましくは145〜155℃、より好ましくは150℃の加熱温度(火入れ乾燥機の釜の表面温度)で行う。(但し、上記加熱温度及び時間は、回転ドラム型火入れ機を用いた場合であり、熱風型火入れ機の場合は、熱風の対流熱を利用する間接的な加熱のため、熱量が不足し、加熱した鉄板の伝導熱を利用する回転ドラム型火入れ機と同様の強い火入れを行うことは難しい)。加熱温度が低いと、インスタント緑茶の光劣化抑制が十分でなく、高すぎると茶葉の成分が分解する。火入れ乾燥の時間が長くなるに従って、得られるインスタント緑茶の光劣化抑制効果の持続期間が長くなり、乾燥時間が25分以上が好ましく、より好ましくは30分以上とする。但し、火入れ乾燥時間が長過ぎると、得られるインスタント茶の収れん味、酸味又は苦渋味が強くなるので、45分以上の火入れ乾燥は避けるのが望ましく、好ましくは40分以下とする。これにより、茶葉の水分量は3%未満となり、快い火香(香ばしさ)が付与される。茶葉の乾燥度合は、色差計を用いて茶葉表面の色調(褐変度)を測定することによって検知することができる。緑茶の場合、上述の火入れ乾燥が適切に施された茶葉は、a値が上昇し、約−5.0〜−3.3となり、b/−a値が約3.0〜4.5となる。好ましくは、a値が約−4.5〜−3.5、b/−a値が約3.1〜4.3となるように火入れ乾燥を管理し適切に乾燥度合を調節する。
火入れ乾燥を行った茶葉は、茶成分の抽出に用いる。抽出には、酸化防止剤として機能する(つまり抗酸化物質である)アスコルビン酸を含有する抽出溶媒を用いる。抽出溶媒としては水(熱水又は冷水)が用いられる。アスコルビン酸は水溶性で抽出溶媒に易溶であるので、抽出前の茶葉に加えて抽出時に溶媒に溶解させてもよい。抽出溶媒のpH値は、調製したインスタント緑茶の光劣化抑制効果に影響し、pH値が4.8付近において光劣化抑制効果が最も高くなる傾向があるので、中和塩を用いるよりも、遊離酸を用いpH値が約3から7未満の弱酸性域に傾ける方が光劣化抑制効果が高い。アルコルビン酸による光劣化抑制効果は、その抽出溶媒中の濃度がある程度以上になると顕著になり、抽出溶媒中の濃度が1000ppm以上(ppmは質量比率、以下同様)であることが好ましい。但し、3200ppm以上になるとインスタント緑茶の渋みが強くなるなど風味に影響を与えるので、1000ppm以上3200ppm未満、好ましくは1600ppm〜2800ppm、より好ましくは2000〜2400ppmとする。
インスタント緑茶の光酸化を抑制する効果は、アスコルビン酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等との塩やクエン酸を用いた場合にも見られるが、塩及びクエン酸の光劣化抑制効果はアスコルビン酸よりも弱く、満足な効果を得られる量を添加すると茶の風味自体に影響を及ぼす。
抽出は、茶葉を抽出溶媒に浸漬して行う。抽出に用いる水の量は、抽出効率及び製造コスト等の点を考慮して、茶葉に対して質量比で15〜20倍量、好ましくは16〜17倍量とする。抽出温度は、抽出効率及び抽出速度の点を考慮すると、50〜98℃程度、好ましくは70〜80℃とする。抽出時間は、茶葉の種類及び抽出温度にもよるが、概して30秒〜30分程度、好ましくは10〜20分程度とする。
茶抽出液は、濾過、必要に応じて遠心分離処理等により茶葉を除去した後、減圧濃縮あるいは膜濃縮し、必要に応じて加熱殺菌などを施して、噴霧乾燥あるいは凍結乾燥により完全に乾燥することによりインスタント緑茶が得られる。インスタント緑茶には、必要に応じて糖類、甘味料、果汁粉末、香料等を適宜配合してもよい。
上述に従って好適に耐光性を付与したインスタント緑茶は、1万ルクスの光照射(通常光に比べて光劣化速度が10倍になるとされる)に対して12日以上、特に濃度が2000〜2400ppmのアスコルビン酸を添加した場合は18日以上、官能評価に耐え得る風味を保持し、変質臭の生成が防止される。従って、通常光に曝されても120日以上、特に濃度が2000〜2400ppmのアスコルビン酸を添加した場合は180日以上、商品価値を保つことができるので、透明容器又は中を見ることができる容器に収容して販売することも可能である。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによってなんら制限されるものではない。
(アスコルビン酸の効果)
最終乾燥の火入れ工程を150℃で30分間行って緑茶葉を調製した。
次に、上記緑茶葉2kgと緑茶葉の16.5倍量(質量)のイオン交換水(80℃)を用意し、イオン交換水に濃度2400ppmとなる量のアスコルビン酸及び60〜70質量%のデキストリンを添加した。このイオン交換水に緑茶葉を投入して80℃で15分間抽出した。緑茶葉を粗分し、Brix値が11の抽出液27kgを得た。この抽出液を遠心分離処理した後Brix値が15となるまで減圧濃縮した。濃縮液は、95℃で10秒間加熱殺菌した後、90℃のチャンバー内で噴霧乾燥して試料1Aのインスタント緑茶を得た。
上記のインスタント緑茶の調製において、濃度2400ppmのアスコルビン酸を濃度1000ppmのアスコルビン酸ナトリウムに代えたこと以外は同様にして操作を繰り返し、試料1Bのインスタント緑茶を得た。
上記試料1A及び試料1Bの各々について、インスタント緑茶を10gづつ透明なサンプルビンに入れ、2つのグループに分けた。一方を25℃でランプにより1万ルクスの光(太陽光波長)を照射し、もう一方は同じ温度で遮光した。3日、6日、9日、12日及び18日経過後にサンプルビンからインスタント緑茶を取り出して官能試験及び香気成分分析を行った。
官能試験では、インスタント緑茶1.5gを180ccの熱湯に溶解し、10人のパネラーにより香味の評価を行った。この際の評価は、光照射しない方の試料をコントロール(ゼロ)とし、これとの比較により変質臭の有無を−5点法により行い、10人の評価の平均をとった。この結果を表1に示す。
香気成分分析では、インスタント緑茶粉末1gに蒸留水を加えて全量が100mlとなるようにサンプル溶液を調製した。サンプル溶液10mlをバイアルビンに取り、塩化ナトリウム3g及び0.1%シクロヘキサノール(内部標準)5μLを添加して、固相マイクロ抽出(SPME)法により香気成分を抽出し、GC/MSにより分析した。検出される香気成分のピーク面積合計に対する1−オクテン−3−オール、E−2−ヘプテナール及びボボライドの3成分のピーク面積合計の比率(%)を算出した。このピーク面積比率と光照射日数との関係を図1に示す。尚、SPME条件は、ファイバーDVB/Carboxen/PDMSによる20分間抽出とした。又、GC/MSは、Agilent社製5973Nにより、DB-WAX(0.25mmI.D.×60m×0.25μm)カラムを用いて、流速:1.0mL/分、オーブン:35℃(3分)〜5℃/分〜240℃(5分)、注入口:−50℃(0.5分)〜12℃/秒〜240℃、スプリットレスの条件で測定した。
(表1)
インスタント緑茶の官能評価
試料 光照射日数
0日 3日 6日 9日 12日 18日
1A 0 0 −0.5 −0.5 −1 −1
1B 0 −0.5 −1 −1.5 −2 −4

2400ppmのアスコルビン酸を用いた試料1Aにおいては、6日目から光劣化臭を僅かに感じるが、その後殆ど強くならならず、火香(香ばしさ)及び甘味のあるコクが強く残った。他方、試料1Bでは、3日目から光劣化臭が強くなり火香及びコクは弱く、12日目から酸味が感じられ渋みが強くなり、18日目では飲用が不可能となった。表1から明らかなように、試料1Aの場合、光酸化による変質が抑制されている。上記の光照射による光酸化の速度は、通常の日照による光酸化の約10倍であるので、試料1Aは通常光に対して少なくとも180日以上の耐光性を有することになる。
また、図1のグラフによれば、試料1Aにおいては、1−オクテン−3−オール、E−2−ヘプテナール及びボボライドの3成分の合計は18日を通して著しい変化はないのに対し、試料1Bにおいては光照射日数が増加するにつれて明らかに増加している。上記3成分は、光照射により増加する成分として報告されていることから、試料1Aの光酸化が抑制されていることが理解される。
(火入れ乾燥による効果)
最終乾燥の火入れ工程を150℃で0分間(試料2A)、20分間(試料2B)、30分間(試料2C)、38分間(試料2D)及び45分間(試料2E)行って緑茶葉を調製した。
上記試料2A〜2Eの各々について、緑茶葉を米国UDY社製粉砕機サイクロンサンプルミルで粉砕した後に、日本電色社製の色差計Spectro Color Meter SE2000を用いて粉砕緑茶葉の色調を分析した(表2)。
更に、各試料について、緑茶葉2kgと緑茶葉の16.5倍量(質量)のイオン交換水(80℃)を用意し、イオン交換水に1000ppm量のアスコルビン酸ナトリウム及び60〜70質量%のデキストリンを添加した。このイオン交換水に緑茶葉を投入して80℃で15分間抽出した。緑茶葉を粗分し、Brix値が11の抽出液27kgを得た。この抽出液を遠心分離処理した後Brix値が15となるまで減圧濃縮した。濃縮液は、95℃で10秒間加熱殺菌した後、90℃のチャンバー内で噴霧乾燥して試料2A〜2Eのインスタント緑茶を得た。
上記試料2A〜2Eの各々について、インスタント緑茶を10gづつ透明なサンプルビンに入れ、2つのグループに分けた。一方を25℃でランプにより1万ルクスの光(太陽光波長)を照射し、もう一方は同じ温度で遮光した。3日、6日、9日、12日及び18日経過後にサンプルビンからインスタント緑茶を取り出して実施例1と同様に官能試験及び香気成分分析を行った。粉砕緑茶葉の色調及び官能試験の結果を表2に、香気成分分析の結果から得られたピーク面積比率[香気成分のピーク面積合計に対する1−オクテン−3−オール、E−2−ヘプテナール及びボボライドの3成分のピーク面積合計の比率(%)]と光照射日数との関係を図2に示す。
(表2)
色調及びインスタント緑茶の官能評価
試料 色調
a値 b値 b/−a値
2A −6.69 16.25 2.43
2B −5.29 15.82 2.99
2C −4.34 15.24 3.51
2D −4.01 15.97 3.98
2E −3.07 14.83 4.83
試料 光照射日数における官能評価
0日 3日 6日 9日 12日 18日
2A 0 −3 −4 −5 −5 −5
2B 0 −2 −3 −5 −5 −5
2C 0 −0.5 −1 −1.5 −2 −4
2D 0 −0.5 −1 −2 −3 −4
2E 0 −0.5 −1 −2 −3 −4

火入れ乾燥時間により茶葉の色調が変化し、この測定結果によって火入れ乾燥の度合を評価することができることが明らかである。
表2の官能評価において、試料2Aのインスタント緑茶は、3日目から光劣化臭が強く、6日目でエグみが強くコク及び旨味が弱くなり飲用限界に至った。試料2Bでは、3日目から光劣化臭及び渋みが強くなり、6日目から火入れのコク及び火香が弱くなり、9日目で飲用限界に至った。試料2Cでは、9日目から旨味が少なく渋みが強くなり、12日目から光劣化臭が強くなり、18日目で飲用限界に至った。試料2Dでは、6日目から収れん味及び酸味が強くなり、9日目で光劣化臭が強くなり、18日目で飲用限界に至った。試料2Eでは、3日目から酸味及び苦み、収れん味が強くなり、9日目から光劣化臭が強くなり、18日目で飲用限界に至った。従って、試料2C〜2Eは試料2A及び2Bに比べて光劣化臭の発生が抑制されている。但し、試料2D及び2Eでは、苦み、渋み、酸味等が感じられたことから、試料2Cの火入れが最も適切であることが理解される。
又、図2の結果から、試料2A及び2Bは光照射日数が増加するにつれて、光照射で生じる前記3成分の比率が上昇するのに比べて、試料2C〜2Eではあまり変化がないことから、試料2C〜2Eにおいて光劣化が抑制されていることが理解される。
実施例1の試料1Aのインスタント緑茶の調製におけるアスコルビン酸量を、800ppm(試料3A)、1600ppm(試料3B)、2000ppm(試料3C)、2800ppm(試料3D)、3200ppm(試料3E)に変えたこと以外は同様の操作を繰り返して試料3A〜3Eのインスタント緑茶を得た。
また、実施例1の試料1Bのインスタント緑茶の調製においてアスコルビン酸ナトリウムの濃度を1000ppm(試料3a)、2000ppm(試料3b)、2500ppm(試料3c)、3000ppm(試料3d)、4000ppm(試料3e)としたこと以外は同様の操作を繰り返して試料3a〜3eのインスタント緑茶を得た。
上記試料3A〜3E、3a〜3eの各々について、インスタント緑茶を10gづつ透明なサンプルビンに入れ、2つのグループに分けた。一方を25℃でランプにより1万ルクスの光(太陽光波長)を照射し、もう一方は同じ温度で遮光した。3日、6日、9日、12日及び18日経過後にサンプルビンからインスタント緑茶を取り出して実施例1と同様に官能試験を行った。試料1Aと共に試料3A〜3E、3a〜3eの官能試験の結果を抽出溶媒のpH値と共に表3に示す。また、実施例1と同様に試料3A〜3Eの香気成分分析を行い、香気成分分析の結果から得られる光照射日数18日におけるピーク面積比率[香気成分のピーク面積合計に対する1−オクテン−3−オール、E−2−ヘプテナール及びボボライドの3成分のピーク面積合計の比率(%)]とアスコルビン酸量との関係を図3に示す。
(表3)
インスタント緑茶の官能評価
試料 溶媒 光照射日数
pH 0日 3日 6日 9日 12日 18日
3A 3.50 0 -1.5 -2 -3 -4 -4.5
3B 3.25 0 -1 -1 -1.5 -2 -2.5
3C 3.20 0 -0.5 -1 -1 -1 -2
1A 3.15 0 0 -0.5 -0.5 -1 -1
3D 3.09 0 -0.5 -0.5 -1 -2 -2.5
3E 3.08 0 -0.5 -0.5 -1 -1.5 -2
3a 7.63 0 -0.5 -1 -1.5 -2 -4
3b 7.65 0 -1.5 -2 -3 -3.5 -4
3c 7.62 0 -0.5 -1 -2 -2.5 -3
3d 7.59 0 -0.5 -0.5 -0.5 -1.5 -2
3e 7.98 0 -2 -2.5 -3 -3.5 -4

試料3Aは、光照射3日目から光劣化臭が強く火香及びコクが弱くなり、6日目から酸味及び渋みが次第に強くなり、12日目で飲用限界となった。試料3Bは、3日目から光劣化臭が徐々に強くなり、12日目から渋みが強く火香及びコクが徐々に弱くなった。この試料の光照射を更に継続すると、27日目で飲用限界に達した。試料3Cは、光劣化臭が3日目から僅かに感じられ、6日目から少し強く、18日目で更に強くなり、18日目で渋みが強くなるが、火香及びコクは残っていた。試料3Dは、光劣化臭が3日目から僅かにあり、9日目から徐々に強くなり、火香及びコクは残るが渋みが次第に強くなった。試料3Eは、光劣化臭が3日目から僅かにあり、9日目から徐々に強くなり、火香及びコクは残るが渋みが非常に強くなった。
表3の結果から、光劣化臭は、アスコルビン酸が1600ppm以上の場合に抑制されることが解る。但し、2800ppmを越えると、茶の渋みが強くなるため、アスコルビン酸量は1600〜2800ppmの範囲が適量となる。
図3のグラフでは、アスコルビン酸量が少ない試料3A及び3Bでは、光照射で生じる前記3成分の香気成分に対する比率が高いのに比べて、試料3C〜3Eではあまり変化がない。光照射を行わなわず経時劣化のみが示されるコントロール試料においてはアスコルビン酸量の違いによる差が少ないことから、アスコルビン酸量の多い試料3C〜3Eにおいて光劣化が抑制されていることが明らかである。
他方、アスコルビン酸ナトリウムを用いた場合、試料3aでは光照射3日目から光劣化臭が強くコクが弱くなり、12日目から酸味及び渋みが強くなり、18日目で飲用不可となった。試料3bは、3日目から光劣化臭が強く火香及びコクが弱くなり、12日目から渋みが強く、18日目で飲用限界となった。試料3cは、光劣化臭が3日目から僅かに感じられ、6日目から少し強くなり火香及びコクは弱まり、12日目で渋みが強くなった(尚、27日目に飲用限界に達した)。試料3dは、光劣化臭が3日目から僅かにあり、12日目から徐々に強くなり、火香及びコクが弱く渋みが強くなった(36日目に飲用限界に達した)。試料3eは、光劣化臭が3日目から強くなり、火香及びコクが弱くなり、12日目から酸味がでて渋みが強くなり、18日目で飲用限界に達した。これらの結果を試料1A及び3A〜3Eと比較すると、アスコルビン酸を用いた方が、アスコルビン酸ナトリウムより強い光劣化抑制効果が得られることが解る。アスコルビン酸ナトリウムを用いる場合には、試料3c及び3dの2500〜3000ppm程度の使用量が適量となる。
実施例3における試料3a及び3dのインスタント緑茶について、前述と同様の操作に従って光照射用及び遮光用の2組に分け、18日間の光照射後に香気成分分析を行った。香気成分分析の結果から得られる光照射日数18日におけるピーク面積比率[香気成分のピーク面積合計に対する1−オクテン−3−オール、E−2−ヘプテナール及びボボライドの3成分のピーク面積合計の比率(%)]とアスコルビン酸量との関係を図4(a)に示す。
また、実施例1の試料1Aのインスタント緑茶の調製におけるアスコルビン酸の量を500ppm(試料4A)、2000ppm(試料4B)に変更し、緑茶葉から抽出され濃縮した抽出液の乾燥方法を噴霧乾燥(SD)から凍結乾燥(FD)に変更したこと以外は同様の操作を繰り返して試料4A及び4Bのインスタント緑茶を得た。これらの試料について前述と同様に2組に分けて20日間の光照射を施した後に香気成分分析を行った。香気成分分析の結果から得られる光照射日数20日におけるピーク面積比率[香気成分のピーク面積合計に対する1−オクテン−3−オール、E−2−ヘプテナール及びボボライドの3成分のピーク面積合計の比率(%)]とアスコルビン酸量との関係を図4(b)に示す。
更に、アスコルビン酸に代えてクエン酸を用いたこと以外は試料4A及び4Bと同様の操作を行って試料4C(クエン酸500ppm)及び試料4D(クエン酸2000ppm)のインスタント緑茶を得た。これらの試料について前述と同様に2組に分けて光照射を20日間施し、香気成分分析を行った。香気成分分析の結果から得られる光照射日数20日におけるピーク面積比率[香気成分のピーク面積合計に対する1−オクテン−3−オール、E−2−ヘプテナール及びボボライドの3成分のピーク面積合計の比率(%)]とアスコルビン酸量との関係を図4(c)に示す。
図4(a)のグラフは、アスコルビン酸に比べて効果は小さいけれどもアスコルビン酸ナトリウムの添加により光劣化を抑制できることを示す。又、図4(b)及び前述の実施例3との比較から、インスタント緑茶を抽出液の凍結乾燥によって得た場合においても同様にアスコルビン酸の添加により光劣化を抑制できることが明らかである。更に、図4(c)から、クエン酸によっても光劣化を抑制できることが解る。
アスコルビン酸を用いたインスタント緑茶に対する光照射日数と香気成分のピーク面積比率との関係を示すグラフである。 緑茶葉の火入れ度合が異なる場合のインスタント緑茶に対する光照射日数と香気成分のピーク面積比率との関係を示すグラフである。 アスコルビン酸濃度とインスタント緑茶の香気成分のピーク面積比率との関係を示すグラフである。 有機酸濃度とインスタント緑茶の香気成分のピーク面積比率との関係を各々示すグラフで、(a)は有機酸がアスコルビン酸ナトリウム、(b)はアスコルビン酸、(c)はクエン酸である。

Claims (3)

  1. 荒茶を140〜160℃で25〜40分間火入れ乾燥した緑茶葉を用意する工程と、アスコルビン酸1600〜2800ppmを含む水性の抽出溶媒を用いて、前記緑茶葉から茶成分の抽出液を得る工程と、前記抽出液から前記抽出溶媒を除去する工程とを有することを特徴とするインスタント緑茶の製造方法。
  2. 前記緑茶葉は、a値が−5.0〜−3.3、b/−a値が3.0〜4.5の色調を有する請求項1記載のインスタント緑茶の製造方法。
  3. 前記アスコルビン酸の前記抽出溶媒中の濃度が2000〜2400ppmである請求項1又は2記載のインスタント緑茶の製造方法。
JP2003294923A 2003-08-19 2003-08-19 インスタント緑茶の製造方法 Expired - Lifetime JP4128925B2 (ja)

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