JP2005056589A - 電子放出素子及び電界放出型表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、冷陰極エミッタを備えた電子放出素子及び電界放出型表示装置に関し、冷陰極エミッタから放出された電子ビームを集束させて効率良く蛍光体に照射し、高精細な画像を得ることを目的とする。
【解決手段】基板32上にカソード電極33と、絶縁層34と、ゲート電極35と、負に帯電可能な誘電体層36と、冷陰極エミッタ38とを順次形成し、誘電体層36を負に帯電させて等電位線Mを形成し、電子ビームを集束させて、蛍光体42に照射する。
【選択図】 図8
【解決手段】基板32上にカソード電極33と、絶縁層34と、ゲート電極35と、負に帯電可能な誘電体層36と、冷陰極エミッタ38とを順次形成し、誘電体層36を負に帯電させて等電位線Mを形成し、電子ビームを集束させて、蛍光体42に照射する。
【選択図】 図8
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子放出素子及び電界放出型表示装置に係り、特に冷陰極エミッタを備えた電子放出素子及び電界放出型表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な電界放出型ディスプレイ(FED;Field Emission Display)は、画素に対応した複数の冷陰極エミッタを蛍光体の面と対向するように配置し、冷陰極エミッタから放出された電子を加速して蛍光体に照射することで発光させている。電界放出型ディスプレイには、カソード電極上に先端が先鋭な冷陰極エミッタを形成し、カソード電極上に冷陰極エミッタを取り囲むような絶縁層と、絶縁膜上にゲート電極とを形成して、冷陰極エミッタとゲート電極との間に電圧を印加して、高電界を発生させて冷陰極エミッタの先端から電子の放出を行うSpindt型や、カソード電極とゲート電極との間に形成された絶縁層に電圧を印加して高電界を発生させて、トンネル効果により電子の放出を行うMIM(Metal Insulator Metal)型や、カソード電極とゲート電極との間に形成された薄膜に微小ギャップを形成し、カソード電極とゲート電極との間に電圧を印加して、微小ギャップから電子の放出を行うSCE(Surface Conduction Emitter)型等の方式が検討されている。また、冷陰極エミッタの材料としてDLC(Diamond Like Carbon)やCNT(Carbon Nanotube)等の炭素系材料の研究が行われている。
【0003】
従来のゲート電極を用いた電界放出型ディスプレイにおいては、冷陰極エミッタから放出された電子ビームの照射角度は広がる傾向にあり、解像度の低下や混色の発生等の画質の劣化を引き起こす。この電子ビームの照射角度の広がりは、ゲート電極とカソード電極との間の電界強度と、ゲート電極とアノード電極との間の電界強度との大小関係により決まる。理論上は、カソード電極とゲート電極との間の電界強度と、ゲート電極とアノード電極との間の電界強度を一致させればよいが、現状の電界放出型ディスプレイではゲート電極とアノード電極との間の電界強度が小さいため、カソード電極とゲート電極との間の電界強度と、ゲート電極とアノード電極との間の電界強度とを同じにした場合には、冷陰極エミッタから電子は放出されない。そのため、高精細な画像を得るためにアノード電極に形成された蛍光体面において、電子ビームが集束する電界放出型ディスプレイの構成の検討が行われている。
【0004】
図1乃至2は、従来の電子ビームを集束する電界放出型表示装置の概略図である。なお、図1中に示したB,Cは、ゲート電極15に電圧Vgと、フォーカス電極18に電圧Vfとを印加することにより形成された等電位線(以下、等電位線B,C)を示している。また、図1中に示したDは、冷陰極エミッタ19から放出された電子ビームの軌道(以下、軌道D)を示している。図2中に示したFは、ゲート電極26に電圧Vgを印加することにより形成された等電位線(以下、等電位線F)を示しており、Gは冷陰極エミッタ19から放出した電子ビームの軌道(以下、軌道G)を示している。
【0005】
図1に示すように、電界放出型表示装置10は、大略すると電子放出素子11と、基板21と、アノード電極22と、蛍光体23と、スペーサ24とにより構成されている。電子放出素子11は、基板12と、カソード電極13と、絶縁層14と、ゲート電極15と、誘電体層17と、フォーカス電極18と、冷陰極エミッタ19とにより構成されている。基板12上には、カソード電極13が形成されており、カソード電極13上には、絶縁層14と、ゲート電極15と、誘電体層17と、フォーカス電極18とが順次形成され、カソード電極13を露出する開口部Aが形成されている。
【0006】
開口部Aに露出されたカソード電極13には、電子を放出するための冷陰極エミッタ19が形成されている。フォーカス電極18上には、スペーサ24が形成されており、このスペーサ24によりアノード電極22が形成された基板21が支持されている。アノード電極22の冷陰極エミッタ19と対向する面には、蛍光体23が形成されている。このような構成の電界放出型表示装置10は、ゲート電極15に電圧Vgが印加されると冷陰極エミッタ19から電子ビームが放出され、冷陰極エミッタ19の表面に形成された上に凸の等電位線Bと直交する方向(ゲート電極15に向かう方向)に力を受けて電子ビームは発散するが、フォーカス電極18により形成された等電位線Cにより発散する電子ビームは集束され、電子ビームを蛍光体23に照射することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
図2に示すように、電界放出型表示装置25は、大略すると電子放出素子27と、基板21と、アノード電極22と、蛍光体23と、スペーサ24とにより構成されている。電子放出素子27は、基板12と、カソード電極13と、絶縁層14と、ゲート電極26と、冷陰極エミッタ19とにより構成されている。基板12上には、カソード電極13が形成されており、カソード電極13上には、絶縁層14と、厚さの大きいゲート電極26とが順次形成され、カソード電極13を露出する開口部Eが形成されている。
【0008】
電界放出型ディスプレイ25は、このような電子放出素子27上に、基板21と、アノード電極22と、蛍光体23と、スペーサ24とが形成された構成とされている。このようにゲート電極26の厚さを大きくすることにより、発散する電子ビーム(図中に示した軌道Gに進む電子ビーム)をゲート電極26の側面で遮断することができる(例えば、非特許文献2参照。)。
【0009】
【非特許文献1】
Y.W.Jin,et al,“A Study on the Driving Property of Double Gated Triode−Type Field Emission Display using Carbon Nanotube Emitter”Proc.Euro Display‘02,pp.229−232,2002
【0010】
【非特許文献2】
J.E.Jung,et al,“Development of Triode−Type Carbon Nanotube Field−Emitter Arrays with Suppression of Diode Emission by Forming Electroplated Ni Wall Structure”,J.Vac.Sci.Techno.B,Vol.21(1),pp.375−381,2003
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電界放出型表示装置10の場合には、電子ビームを集束させることは可能であるが、電子ビームを集束させるためのフォーカス電極18を形成する必要があるため、電極の数が増加して構成が複雑になるという問題や、駆動電圧が上昇するという問題があった。
【0012】
電界放出型表示装置25の場合には、ゲート電極26の厚さを大きくすることで発散された電子ビームをゲート電極26の側壁で遮断しているのみであり、電子ビームを集束させることができないという問題があった。また、電子ビームをゲート電極26の側壁で遮断するため、冷陰極エミッタ19から放出された電子が蛍光体23に到達する割合であるエミッション効率が低下するという問題があった。
【0013】
そこで本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、冷陰極エミッタから放出された電子ビームを集束させて効率良く蛍光体に照射し、高精細な画像を得ることのできる電子放出素子及び電界放出型表示装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項1記載の発明では、基板上に形成された第1の電極と、該第1の電極上に形成され、該第1の電極を露出する第1の開口部を有した絶縁層と、該絶縁層上に形成され、前記第1の電極を露出する第2の開口部を有した第2の電極と、前記第1の開口部に露出された前記第1の電極上に形成された電子を放出するための冷陰極エミッタとを備えた電界放出素子において、前記第2の電極上に第3の開口部を有した誘電体層を設けたことを特徴とする電界放出素子により、解決できる。
【0016】
上記発明によれば、誘電体層を設け、例えば誘電体層を負に帯電させることにより、第3の開口部に等電位線が形成され、この等電位線により冷陰極エミッタから放出した電子ビームを集束させることができる。
【0017】
請求項2記載の発明では、前記誘電体層は、前記冷陰極エミッタから放出された前記電子により負に帯電させられることを特徴とする請求項1に記載の電界放出素子により、解決できる。
【0018】
上記発明によれば、冷陰極エミッタから放出された電子により誘電体層を負に帯電させることができる。また、誘電体層を負に帯電させるための構成を別途設ける必要がないため、従来の電極を用いて電子ビームを集束させる場合と比較して構成を簡略化できる。
【0019】
請求項3記載の発明では、前記誘電体層に帯電する前記電子の電荷量は、前記第1及び第2の電極の電圧を可変することにより、所望の電荷量に調整可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の電界放出素子により、解決できる。
【0020】
上記発明によれば、第1及び第2の電極の電圧を可変することにより、冷陰極エミッタから放出される電子の数を調整して、誘電体層に帯電する電荷量を調整することができる。これにより、第3の開口部を通過する電子ビームの集束の具合を調整することができる。
【0021】
請求項4記載の発明では、前記誘電体層は、一定の周期毎に負に帯電させられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子放出素子により、解決できる。
【0022】
上記発明によれば、一定の周期毎に誘電体層を負に帯電させることにより、誘電体層の帯電状態を均一に保つことができる。
【0023】
請求項5記載の発明では、前記誘電体層の第3の開口部の開口径は、前記第2の電極の第2の開口部の開口径の1.5倍〜2.0倍の大きさとなるよう構成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子放出素子により、解決できる。
【0024】
上記発明によれば、冷陰極エミッタの表面に形成される電界強度の低下を防止することができ、冷陰極エミッタから放出される電子の数を減少させることなく、電子ビームを集束させることができる。
【0025】
請求項6記載の発明では、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子放出素子と、前記冷陰極エミッタと対向し、かつ離間した位置に形成された第3の電極と、該第3の電極の前記冷陰極エミッタと対向する面に形成された蛍光体とを備えたことを特徴とする電界放出型表示装置により、解決できる。
【0026】
上記発明によれば、負に帯電した誘電体層により形成される等電位線により、電子ビームは集束し、効率良く電子ビームを蛍光体に照射することができる。これにより、高精細な画像を得ることができる。
【0027】
請求項7記載の発明では、前記第3の電極は、正の電圧と負の電圧とに切り換え可能に構成され、前記電子が放出された際、前記第3の電極に負の電圧を印加することにより、前記誘電体層を負に帯電させることを特徴とする請求項6に記載の電界放出型表示装置により、解決できる。
【0028】
上記発明によれば、電子が放出された際、第3の電極に負の電圧を印加することにより、第2の電極に形成された第2の開口部を通過した電子の進路を誘電体層の方向に曲げることができ、電子を誘電体層に到達させて、誘電体層を負に帯電させることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。始めに、本実施例による電界放出型表示装置30の構成について説明する。図3は、本発明の本実施例による電界放出型表示装置の断面図である。なお、図3に示したH1は絶縁層34の開口部(以下、開口部H1)、H2はゲート電極35の開口部(以下、開口部H2)、H3は誘電体層36の開口部(以下、開口部H3)をそれぞれ示している。また、図3に示したRgはゲート電極35に形成された開口部H2の開口径(以下、開口径Rg)を示しており、Riは誘電体層36に形成された開口部H3の開口径(以下、開口径Ri)を示している。
【0030】
図3に示すように、電界放出型表示装置30は、大略すると電子放出素子31と、基板39と、アノード電極41と、スペーサ43と、蛍光体42とにより構成されている。第3の電極であるアノード電極41は、基板39の下面に形成されており、アノード電極41の下面には、蛍光体42が形成されている。電子放出素子31は、基板32と、カソード電極33と、絶縁層34と、ゲート電極35と、誘電体層36と、冷陰極エミッタ38とにより構成されている。基板32上には、第1の電極であるカソード電極33が形成されている。カソード電極33上には、第1の開口部である開口部H1を有した絶縁層34と、第2の開口部である開口部H2を有した第2の電極であるゲート電極35と、第3の開口部である開口部H3を有した誘電体層36とが順次形成されている。なお、図3に示した電子放出素子31では、開口部H2の開口径Rgと開口部H3の開口径Rとは同じ大きさに形成されている。
【0031】
冷陰極エミッタ38は、ゲート電極35に電圧Vgと、カソード電極33に電圧−Vcとが印加された際、電子を放出するためのものである。誘電体層36は、負に帯電させられることで、後述する下に凸な等電位線Mを形成し、電子ビームを集束させるためのものである。誘電体層36は、負に帯電可能な層であればどのような材料を用いても良い。誘電体層36には、例えば、酸化法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法等により形成されたSiO2膜や、ゲート電極35にAlを適用して、その上面を酸化して形成されるAlの酸化物等を用いることができる。なお、誘電体層36を負に帯電させる具体的な方法については後述する。誘電体層36上には、スペーサ43が設けられており、基板39はアノード電極41を介してスペーサ43に支持されている。また、冷陰極エミッタ38と対向するアノード電極41の面には、蛍光体42が形成されている。アノード電極41に正の電圧Vaが印加されると、冷陰極エミッタ38から放出された電子は加速され、蛍光体42に照射されて発光する。
【0032】
このように、ゲート電極35上に負に帯電可能な誘電体層36を形成し、誘電体層36を負に帯電させることで、後述する下に凸な等電位線Mが形成され、この等電位線Mにより電子ビームを集束することができ、集束された電子ビームを効率良く蛍光体42に照射することができ、高精細な画像を得ることができる。また、誘電体層36を負に帯電させるための構成を別途設ける必要がないため、従来のフォーカス電極18を用いて電子ビームを集束させる場合と比較して構成を簡略化できる。
【0033】
図4は、誘電体層の開口部をゲート電極の開口部よりも大きく形成した電界放出型表示装置の断面図である。なお、図4において、図3と同一構成部分には同一符号を付す。また、図4中のH4は誘電体層44に形成された開口部(以下、開口部H4)を示しており、RIは誘電体層44に形成された開口部H4の開口径RIを示している。図4に示すように、電界放出型表示装置37には、電子放出素子46が設けられており、電子放出素子46の誘電体層44には、ゲート電極35に形成された開口部H2よりも大きな開口部RIが形成されている。このように、誘電体層44に形成された開口部H4の開口径RIをゲート電極35に形成された開口部H2の開口径Rgよりも大きく形成しても良い。
【0034】
好ましくは、開口部H4の開口径RIを開口部H2の開口径Rgの1.5倍〜2.0倍の大きさに形成すると良い。このような大小関係となるような開口径RI,Rgを形成することにより、誘電体層44を負に帯電させた際に生じる冷陰極エミッタ38表面の電界強度の低下を抑制して、冷陰極エミッタ38から放出される電子の数を低下させることなく、電子ビームを集束させることができる。また、冷陰極エミッタ38から放出される電子の数が低下しないことから、アノード電流が低下しないため、蛍光体42を高輝度に発光させることができ、さらに高画質な画像を得ることができる。なお、上記説明した電界放出型表示装置30,37は、従来からある手法により形成することができる。
【0035】
次に、図5に示した電界放出型表示パネル54を例に挙げて、誘電体層36を負に帯電させる方法について説明する。図5は、図3に示した電子放出素子を複数配列させて構成された電界放出型表示パネルの電子放出素子アレイを平面視した際の概略図であり、図6は電界放出型表示パネルの駆動波形を示した図である。なお、図6に示したT1は初期状態(以下、初期状態T1)、T2は誘電体層36を負に帯電させる時間(以下、帯電時間T2)、T3は電界放出型表示パネル54の1水平ライン(1ラインのゲート電極)を走査する時間(以下、走査時間T3)をそれぞれ示している。また、図6中に示した(a)はアノード電極41の電圧パルスの波形、(b)はゲート電極35−1の電圧パルスの波形、(c)はゲート電極35−2の電圧パルスの波形、(d)はゲート電極35−3の電圧パルスの波形、(e)はカソード電極33−1の電圧パルスの波形、(f)はカソード電極33−2の電圧パルスの波形をそれぞれ示している。
【0036】
始めに、図5を参照して、複数の電子放出素子31を備えた電界放出型表示パネル54の図示した部分の構成について説明する。図5に示すように、電界放出型表示パネル54は、大略するとゲート電極35−1〜35−3と、カソード電極33,33−1〜33−2と、アノード電極41とにより構成されている。ゲート電極35−1〜35−3は、カソード電極33,33−1〜33−2と交差するように配置されている。ゲート電極35−1〜35−3と、カソード電極33,33−1〜33−2と、アノード電極41とには、制御装置(図示せず)がそれぞれ駆動回路(図示せず)を介して設けられている。制御装置は、駆動回路を制御して、セル51,51A〜51Dを発光させるためのものである。
【0037】
セル51,51A〜51Dには、それぞれ複数の電子放出素子31が配設されている。セル51Aは、ゲート電極35−1とカソード電極33−1とが交差する位置に形成され、セル51Bはゲート電極35−1とカソード電極33−2とが交差する位置に形成されている。また、セル51Cはゲート電極35−2とカソード電極33−1とが交差する位置に形成され、セル51Dは、ゲート電極35−2とカソード電極33aとが交差する位置に形成されている。
【0038】
次に、図5乃至図6を参照して、電界放出型ディスプレイ30に形成された誘電体層36の帯電方法ついて説明する。図6に示すように、誘電体層36を負に帯電させるために、時刻t1において、アノード電極41に電圧−VACを印加し、さらにゲート電極35−1〜35−3に電圧VGとカソード電極33−1〜33−2に電圧−VCCとを印加して、この状態を帯電時間T2の間維持する。
【0039】
図7は、帯電時間T2での電界放出型表示装置の状態を模式的に示した断面図である。なお、図7に示したJは、等電位線(以下、等電位線J)を示しており、Kは冷陰極エミッタ38から放出された電子の軌道(以下、軌道K)を示している。
【0040】
図7に示すように、ゲート電極35―1〜35−3に印加された電圧VGと、カソード電極33−1〜33−2に印加された電圧−VCCとの電位差により、冷陰極エミッタ38から電子が放出される。この放出された電子が持つ電子エネルギーは、VG+VCC(eV)となる。この放出された電子は負の電荷を有しており、この電子の放出方向の先にあるアノード電極41には電圧−VACが印加されているため、開口部H1〜H3を通過後、電子はアノード電極41の電位により、その進路を曲げられて、方向Kに進み誘電体層36に到達する。
【0041】
このように、アノード電極41と、ゲート電極35−1〜35−3と、カソード電極33−1〜33−2とに印加される電圧を制御することにより、誘電体層36を電子で負に帯電させることができる。また、負に帯電した誘電体層36により生成される電位は、帯電時間T2と電子エネルギーとに依存し、長時間経過後にはVG+VCCに収束する。したがって、帯電時間T2又はゲート電極35−1〜35−3に印加する電圧VG、カソード電極33−1〜33−2に印加する電圧−VCCのいずれかを調整することにより、電子の電荷量を所望の値に調整できる。これにより、負に帯電する誘電体層36の電位を制御して、電子ビームの径を所望の大きさに制御することができる。なお、各電圧は、例えば、電圧VAを1500V、電圧−VACを−200V、電圧VGを30V、電圧−VCCを−30Vにそれぞれ設定することができる。
【0042】
次に、誘電体層36を負に帯電させた後に行う、電界放出型表示パネル54のゲート電極の走査方法について、図5に示したゲート電極35−1,35−2を走査する場合を例に挙げて説明する。時刻t2において、ゲート電極35−1に電圧VGを印加させた状態で、アノード電極41に電圧VAと、カソード電極33−1に電圧−VCとを印加し、ゲート電極35−2,35−3とカソード電極33−2との電圧を0にする。これによりゲート電極35−1には電圧VGが印加され、カソード電極33−1には電圧−VCが印加されるため、セル51Aに形成された冷陰極エミッタ38からは電子が放出される。
【0043】
図8は、誘電体層を負に帯電させた後に電子ビームを放出させた電界放出型表示装置の状態を模式的に示した図である。なお、図8に示したL,Mは、ゲート電極35に印加された電圧及び負に帯電した誘電体層36により形成された等電位線(以下、等電位線L,M)を示しており、Nは電子ビームの軌道(以下、軌道N)を示している。
【0044】
図8に示すように、冷陰極エミッタ38から電子が放出されると、電子は冷陰極エミッタ38の表面近傍に形成された上に凸の等電位線Lと直交する方向に力を受けて進む。そのため、大半の電子はゲート電極35の方向(蛍光体42に対して発散する方向)に進む。しかし、開口部H3を有した誘電体層36は、負に帯電されているため、電子ビームが開口部H3を通過する際、下に凸の等電位線Mと直交する方向に力を受ける。これにより、電子ビームは集束されて方向Nに進み、蛍光体41に照射される。
【0045】
このように、ゲート電極35上に負に帯電可能な誘電体層36を形成し、誘電体層36を電子により負に帯電させて、誘電体層36の近傍に下に凸の等電位線Mを形成することにより、電子ビームを集束させて、効率良く蛍光体42に照射することができる。
【0046】
次に、複数の電子放出素子31を備えて構成された電界放出型表示パネル54に画像を表示させる際の駆動方法について説明する。図9は、図5に示した電界放出型表示パネルの全体の概略を示した平面図であり、図10は図9に示した電界放出型表示パネルの駆動波形を示した図である。なお、図10に示した1Hは、1水平ラインを走査する時間を示しており、1Fは1画面を構成するのに要する(1画面を走査する)時間を示している。例えば、表示パネル54に配設された走査線数がn本の場合には、1F=n×1Hとなる。また、図10中に示した(g)はアノード電極41の電圧パルスの波形、(h)はゲート電極35−1の電圧パルスの波形、(i)はゲート電極35−2の電圧パルスの波形、(j)はゲート電極35―nの電圧パルスの波形、(k)はカソード電極33の電圧パルスの波形をそれぞれ示しており、カソード電極33は表示輝度レベルにより電圧−VCが印加される時間が変化するため、電圧パルスは同図中では斜線で示している。
【0047】
始めに、図9に図示した表示パネル54の構成について簡単に説明する。図9に示すように、電界放出型表示パネル54の電子放出素子アレイは、n本のゲート電極35−1〜35−nと、複数のカソード電極33とにより構成されており、ゲート電極35−1〜35−nとカソード電極33とが交差する領域には、それぞれセル51が形成される。
【0048】
次に、図10を参照して、表示パネル54の駆動方法について説明する。図10に示すように、時刻t1において、アノード電極41に電圧−VACと、全てのゲート電極35−1〜35−nに電圧VGと、カソード電極33に電圧−VCCを印加する。全てのゲート電極35−1〜35−nとカソード電極33とに電圧が印加されているため、全ての冷陰極エミッタ38から電子が放出される。この際、アノード電極41には、負の電圧−VACが印加されているため、放出された電子は、ゲート電極35−1〜35−nに形成された開口部H2を通過後、誘電体層36に到達する。これにより、誘電体層36は負に帯電するため、電子ビームを集束するための下に凸な等電位線Mが形成される。
【0049】
時刻t2から時刻t3の間では、1番目のゲート電極35−1のラインの走査が行なわれる。時刻t2では、アノード電極41に電圧VAと、ゲート電極35−1に電圧VGとを印加する。電圧−VCが印加されたカソード電極33とゲート電極36−1とが交差するセル51では、冷陰極エミッタ38から電子が放出される。電子ビームは、誘電体層36に形成された開口部H3を通過する際、下に凸の等電位線Mにより集束され、アノード電極41により加速されて蛍光体42に照射される。これにより、蛍光体42からは、可視光が放出されて発光する。電圧が印加されなかったカソード電極33とゲート電極35−1が交差するセル51では、冷陰極エミッタ38から電子は放出されない。
【0050】
また、ゲート電極35−2〜35−nには電圧VGが印加されていないため、冷陰極エミッタ38から電子は放出されない。時刻t3では、ゲート電極35−2に電圧VGを印加し、ゲート電極36−2以外のゲート電極の電圧は0にする。これにより、電圧−VCが印加されたカソード電極33とゲート電極36−2とが交差したセル51では、冷陰極エミッタ38から電子が放出され、電子ビームは等電位線Mにより集束され、蛍光体42に照射される。この蛍光体42への電子の照射をそれぞれのゲート電極35−1〜35−nに対して順次行い、時刻t5では、ゲート電極35−nに電圧VGが印加され、集束された電子ビームが蛍光体42に照射される。このように、ゲート電極35−1からゲート電極35−nまでの走査を行うことにより電界放出型表示パネル54の一画面が構成される。
【0051】
時刻t6では、ゲート電極35−1に電圧VGを印加し、ゲート電極35−1以外のゲート電極の電圧は0にする。これにより、電圧−VCが印加されたカソード電極33とゲート電極35−1とが交差したセル51では冷陰極エミッタ38から電子が放出され、誘電体層36の開口部H3を通過する際、電子ビームは等電位線Mにより集束され、蛍光体42に照射される。このような走査をゲート電極35−1からゲート電極35−nまで繰り返し行うことで、再度一画面が構成される。
【0052】
上記方法により、3600画面(3600F)を構成した後、時刻t7において、再びアノード電極41に電圧−VACと、ゲート電極35−1〜35−nに電圧VGと、カソード電極33に電圧−VCCとを印加し、誘電体層36を負に帯電させる。時刻t8においてゲート電極35−1に電圧VGを印加してゲート電極35−1の走査を行う。
【0053】
このように、電界放出型表示パネル54を駆動させることにより、高精細な画像を得ることができる。なお、本実施例では、3600F毎に誘電体層36を負に帯電させて帯電状態を均一に維持したが、誘電体層36を負に帯電させる周期は3600Fに限定されない。帯電状態が均一に長時間維持することができる場合には、負に帯電させる周期を3600Fよりも大きくしても良いし、短時間しか均一な帯電状態が維持できない場合には、誘電体層36を負に帯電させる周期を短くしても良い。また、電子放出素子31の代わりに電子放出素子46を適用しても良い。
【0054】
(電界放出型表示装置の評価結果)
次に、本発明者が行った誘電体層36の開口部の開口径を変化させた際の電界放出型表示装置30,37の特性評価を行った結果について説明する。
【0055】
図11は誘電体層に帯電した電子の電荷密度とアノード電流との関係を示した図であり、図12は誘電体層に帯電した電子の電荷密度と電子ビームの径との関係を示した図である。なお、本評価には、図3及び図4に示した電界放出型表示装置30,37を用い、誘電体層36,44には膜厚が1.0μmのSiO2膜を用いた。また、開口部H3の開口径は10μmに形成し、開口部H4の開口径は15μmと20μmとに形成したものを用い、ゲート電極35の開口部H2の開口径は全て10μmに形成したものを用いた。
【0056】
図11に示すように、電荷密度が大きくなるにつれ、誘電体層36,44に形成された開口部H3,H4の開口径に依存することなく、アノード電流は小さくなる。これは、ゲート電極35に印加される電圧により冷陰極エミッタ38表面に形成される電界強度が、誘電体層36に帯電した電荷によって弱められ、冷陰極エミッタ38から放出される電子が減少するためである。また、誘電体層36に帯電した電子の電荷密度が大きい場合には、誘電体層36に帯電した電荷により冷陰極エミッタ38から放出される電子が遮断されるため、電子は誘電体層36,44に形成された開口部H3,H4を通過することができない。そのため、図11に示すように、電荷密度が大きい場合には、アノード電流は0になる。
【0057】
図12に示すように、開口部H3の開口径が10μmの場合には、電荷密度が5×10−4C/m2において電子ビームの径が極小値171μmとなり、開口部H4の開口径が15μmと20μmとの場合には、電荷密度が1×10−3C/m2において電子ビームの径が極小値45μmとなる。なお、電子ビームの径が極小値となる電荷密度よりも小さい電荷密度の領域では、負に帯電した誘電体層36により形成される下に凸な等電位線Mの作用が小さいため、電子ビームの径は大きくなる。また、電子ビームの径が極小値となる電荷密度よりも大きな電荷密度の領域では、等電位線Mの作用が大きすぎるため、ゲート電極35に形成された開口部H2を通過した直後にクロスオーバとなり、電子ビームの径は大きくなる。
【0058】
上記評価結果から、誘電体層36に形成された開口径H4をゲート電極35の開口径H2の1.5〜2.0倍の大きさに形成することにより、ゲート電極35の開口径と誘電体層36の開口径H3とを同じ大きさに形成した場合と比較して、電子ビームをより集束させることができ、さらに高輝度で高精細な画像を得ることができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。なお、本実施例では、電子冷陰極エミッタ38から放出される電子により誘電体層36を負に帯電させたが、誘電体層36を負に帯電させることができれば良く、本実施例の帯電方法に限定されない。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、冷陰極エミッタから放出された電子ビームを集束させ、効率良く蛍光体に照射し、高精細な画像を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の電界放出型表示装置の概略図(その1)である。
【図2】従来の電界放出型表示装置の概略図(その2)である。
【図3】本発明の本実施例による電界放出型表示装置の断面図である。
【図4】誘電体層の開口部をゲート電極の開口部よりも大きく形成した電界放出型表示装置の断面図である。
【図5】図3に示した電子放出素子を複数配列させて構成された電界放出型表示パネルの電子放出素子アレイを平面視した際の概略図である。
【図6】電界放出型表示パネルの駆動波形を示したものである。
【図7】帯電時間T2での電界放出型表示装置の状態を模式的に示した断面図である。
【図8】誘電体層を負に帯電させた後に電子ビームを放出させた際の電界放出型表示装置の状態を模式的に示した図である。
【図9】図5に示した電界放出型表示パネルの全体の概略を示した平面図である。
【図10】図9に示した電界放出型表示パネルの駆動波形を示した図である。
【図11】誘電体層に帯電した電子の電荷密度とアノード電流との関係を示した図である。
【図12】誘電体層に帯電した電子の電荷密度と電子ビームの径との関係を示した図である。
【符号の説明】
10、25、30、37 電界放出型表示装置
11、27、31、46 電子放出素子
12、21、32、39 基板
13、33,33−1〜33−2 カソード電極
14、34 絶縁層
15、26、35、35−1〜35−3、35−n ゲート電極
17、36、44 誘電体層
18 フォーカス電極
19、38 冷陰極エミッタ
22、41 アノード電極
23、42 蛍光体
24、43 スペーサ
51、51A〜51D セル
54 電界放出型表示パネル
A、E、H1〜H4 開口部
B、C、F、J、L、M 等電位線
D、G、K、N 軌道
Rg、Ri、RI 開口径
【発明の属する技術分野】
本発明は電子放出素子及び電界放出型表示装置に係り、特に冷陰極エミッタを備えた電子放出素子及び電界放出型表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な電界放出型ディスプレイ(FED;Field Emission Display)は、画素に対応した複数の冷陰極エミッタを蛍光体の面と対向するように配置し、冷陰極エミッタから放出された電子を加速して蛍光体に照射することで発光させている。電界放出型ディスプレイには、カソード電極上に先端が先鋭な冷陰極エミッタを形成し、カソード電極上に冷陰極エミッタを取り囲むような絶縁層と、絶縁膜上にゲート電極とを形成して、冷陰極エミッタとゲート電極との間に電圧を印加して、高電界を発生させて冷陰極エミッタの先端から電子の放出を行うSpindt型や、カソード電極とゲート電極との間に形成された絶縁層に電圧を印加して高電界を発生させて、トンネル効果により電子の放出を行うMIM(Metal Insulator Metal)型や、カソード電極とゲート電極との間に形成された薄膜に微小ギャップを形成し、カソード電極とゲート電極との間に電圧を印加して、微小ギャップから電子の放出を行うSCE(Surface Conduction Emitter)型等の方式が検討されている。また、冷陰極エミッタの材料としてDLC(Diamond Like Carbon)やCNT(Carbon Nanotube)等の炭素系材料の研究が行われている。
【0003】
従来のゲート電極を用いた電界放出型ディスプレイにおいては、冷陰極エミッタから放出された電子ビームの照射角度は広がる傾向にあり、解像度の低下や混色の発生等の画質の劣化を引き起こす。この電子ビームの照射角度の広がりは、ゲート電極とカソード電極との間の電界強度と、ゲート電極とアノード電極との間の電界強度との大小関係により決まる。理論上は、カソード電極とゲート電極との間の電界強度と、ゲート電極とアノード電極との間の電界強度を一致させればよいが、現状の電界放出型ディスプレイではゲート電極とアノード電極との間の電界強度が小さいため、カソード電極とゲート電極との間の電界強度と、ゲート電極とアノード電極との間の電界強度とを同じにした場合には、冷陰極エミッタから電子は放出されない。そのため、高精細な画像を得るためにアノード電極に形成された蛍光体面において、電子ビームが集束する電界放出型ディスプレイの構成の検討が行われている。
【0004】
図1乃至2は、従来の電子ビームを集束する電界放出型表示装置の概略図である。なお、図1中に示したB,Cは、ゲート電極15に電圧Vgと、フォーカス電極18に電圧Vfとを印加することにより形成された等電位線(以下、等電位線B,C)を示している。また、図1中に示したDは、冷陰極エミッタ19から放出された電子ビームの軌道(以下、軌道D)を示している。図2中に示したFは、ゲート電極26に電圧Vgを印加することにより形成された等電位線(以下、等電位線F)を示しており、Gは冷陰極エミッタ19から放出した電子ビームの軌道(以下、軌道G)を示している。
【0005】
図1に示すように、電界放出型表示装置10は、大略すると電子放出素子11と、基板21と、アノード電極22と、蛍光体23と、スペーサ24とにより構成されている。電子放出素子11は、基板12と、カソード電極13と、絶縁層14と、ゲート電極15と、誘電体層17と、フォーカス電極18と、冷陰極エミッタ19とにより構成されている。基板12上には、カソード電極13が形成されており、カソード電極13上には、絶縁層14と、ゲート電極15と、誘電体層17と、フォーカス電極18とが順次形成され、カソード電極13を露出する開口部Aが形成されている。
【0006】
開口部Aに露出されたカソード電極13には、電子を放出するための冷陰極エミッタ19が形成されている。フォーカス電極18上には、スペーサ24が形成されており、このスペーサ24によりアノード電極22が形成された基板21が支持されている。アノード電極22の冷陰極エミッタ19と対向する面には、蛍光体23が形成されている。このような構成の電界放出型表示装置10は、ゲート電極15に電圧Vgが印加されると冷陰極エミッタ19から電子ビームが放出され、冷陰極エミッタ19の表面に形成された上に凸の等電位線Bと直交する方向(ゲート電極15に向かう方向)に力を受けて電子ビームは発散するが、フォーカス電極18により形成された等電位線Cにより発散する電子ビームは集束され、電子ビームを蛍光体23に照射することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
図2に示すように、電界放出型表示装置25は、大略すると電子放出素子27と、基板21と、アノード電極22と、蛍光体23と、スペーサ24とにより構成されている。電子放出素子27は、基板12と、カソード電極13と、絶縁層14と、ゲート電極26と、冷陰極エミッタ19とにより構成されている。基板12上には、カソード電極13が形成されており、カソード電極13上には、絶縁層14と、厚さの大きいゲート電極26とが順次形成され、カソード電極13を露出する開口部Eが形成されている。
【0008】
電界放出型ディスプレイ25は、このような電子放出素子27上に、基板21と、アノード電極22と、蛍光体23と、スペーサ24とが形成された構成とされている。このようにゲート電極26の厚さを大きくすることにより、発散する電子ビーム(図中に示した軌道Gに進む電子ビーム)をゲート電極26の側面で遮断することができる(例えば、非特許文献2参照。)。
【0009】
【非特許文献1】
Y.W.Jin,et al,“A Study on the Driving Property of Double Gated Triode−Type Field Emission Display using Carbon Nanotube Emitter”Proc.Euro Display‘02,pp.229−232,2002
【0010】
【非特許文献2】
J.E.Jung,et al,“Development of Triode−Type Carbon Nanotube Field−Emitter Arrays with Suppression of Diode Emission by Forming Electroplated Ni Wall Structure”,J.Vac.Sci.Techno.B,Vol.21(1),pp.375−381,2003
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電界放出型表示装置10の場合には、電子ビームを集束させることは可能であるが、電子ビームを集束させるためのフォーカス電極18を形成する必要があるため、電極の数が増加して構成が複雑になるという問題や、駆動電圧が上昇するという問題があった。
【0012】
電界放出型表示装置25の場合には、ゲート電極26の厚さを大きくすることで発散された電子ビームをゲート電極26の側壁で遮断しているのみであり、電子ビームを集束させることができないという問題があった。また、電子ビームをゲート電極26の側壁で遮断するため、冷陰極エミッタ19から放出された電子が蛍光体23に到達する割合であるエミッション効率が低下するという問題があった。
【0013】
そこで本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、冷陰極エミッタから放出された電子ビームを集束させて効率良く蛍光体に照射し、高精細な画像を得ることのできる電子放出素子及び電界放出型表示装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項1記載の発明では、基板上に形成された第1の電極と、該第1の電極上に形成され、該第1の電極を露出する第1の開口部を有した絶縁層と、該絶縁層上に形成され、前記第1の電極を露出する第2の開口部を有した第2の電極と、前記第1の開口部に露出された前記第1の電極上に形成された電子を放出するための冷陰極エミッタとを備えた電界放出素子において、前記第2の電極上に第3の開口部を有した誘電体層を設けたことを特徴とする電界放出素子により、解決できる。
【0016】
上記発明によれば、誘電体層を設け、例えば誘電体層を負に帯電させることにより、第3の開口部に等電位線が形成され、この等電位線により冷陰極エミッタから放出した電子ビームを集束させることができる。
【0017】
請求項2記載の発明では、前記誘電体層は、前記冷陰極エミッタから放出された前記電子により負に帯電させられることを特徴とする請求項1に記載の電界放出素子により、解決できる。
【0018】
上記発明によれば、冷陰極エミッタから放出された電子により誘電体層を負に帯電させることができる。また、誘電体層を負に帯電させるための構成を別途設ける必要がないため、従来の電極を用いて電子ビームを集束させる場合と比較して構成を簡略化できる。
【0019】
請求項3記載の発明では、前記誘電体層に帯電する前記電子の電荷量は、前記第1及び第2の電極の電圧を可変することにより、所望の電荷量に調整可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の電界放出素子により、解決できる。
【0020】
上記発明によれば、第1及び第2の電極の電圧を可変することにより、冷陰極エミッタから放出される電子の数を調整して、誘電体層に帯電する電荷量を調整することができる。これにより、第3の開口部を通過する電子ビームの集束の具合を調整することができる。
【0021】
請求項4記載の発明では、前記誘電体層は、一定の周期毎に負に帯電させられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子放出素子により、解決できる。
【0022】
上記発明によれば、一定の周期毎に誘電体層を負に帯電させることにより、誘電体層の帯電状態を均一に保つことができる。
【0023】
請求項5記載の発明では、前記誘電体層の第3の開口部の開口径は、前記第2の電極の第2の開口部の開口径の1.5倍〜2.0倍の大きさとなるよう構成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子放出素子により、解決できる。
【0024】
上記発明によれば、冷陰極エミッタの表面に形成される電界強度の低下を防止することができ、冷陰極エミッタから放出される電子の数を減少させることなく、電子ビームを集束させることができる。
【0025】
請求項6記載の発明では、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子放出素子と、前記冷陰極エミッタと対向し、かつ離間した位置に形成された第3の電極と、該第3の電極の前記冷陰極エミッタと対向する面に形成された蛍光体とを備えたことを特徴とする電界放出型表示装置により、解決できる。
【0026】
上記発明によれば、負に帯電した誘電体層により形成される等電位線により、電子ビームは集束し、効率良く電子ビームを蛍光体に照射することができる。これにより、高精細な画像を得ることができる。
【0027】
請求項7記載の発明では、前記第3の電極は、正の電圧と負の電圧とに切り換え可能に構成され、前記電子が放出された際、前記第3の電極に負の電圧を印加することにより、前記誘電体層を負に帯電させることを特徴とする請求項6に記載の電界放出型表示装置により、解決できる。
【0028】
上記発明によれば、電子が放出された際、第3の電極に負の電圧を印加することにより、第2の電極に形成された第2の開口部を通過した電子の進路を誘電体層の方向に曲げることができ、電子を誘電体層に到達させて、誘電体層を負に帯電させることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。始めに、本実施例による電界放出型表示装置30の構成について説明する。図3は、本発明の本実施例による電界放出型表示装置の断面図である。なお、図3に示したH1は絶縁層34の開口部(以下、開口部H1)、H2はゲート電極35の開口部(以下、開口部H2)、H3は誘電体層36の開口部(以下、開口部H3)をそれぞれ示している。また、図3に示したRgはゲート電極35に形成された開口部H2の開口径(以下、開口径Rg)を示しており、Riは誘電体層36に形成された開口部H3の開口径(以下、開口径Ri)を示している。
【0030】
図3に示すように、電界放出型表示装置30は、大略すると電子放出素子31と、基板39と、アノード電極41と、スペーサ43と、蛍光体42とにより構成されている。第3の電極であるアノード電極41は、基板39の下面に形成されており、アノード電極41の下面には、蛍光体42が形成されている。電子放出素子31は、基板32と、カソード電極33と、絶縁層34と、ゲート電極35と、誘電体層36と、冷陰極エミッタ38とにより構成されている。基板32上には、第1の電極であるカソード電極33が形成されている。カソード電極33上には、第1の開口部である開口部H1を有した絶縁層34と、第2の開口部である開口部H2を有した第2の電極であるゲート電極35と、第3の開口部である開口部H3を有した誘電体層36とが順次形成されている。なお、図3に示した電子放出素子31では、開口部H2の開口径Rgと開口部H3の開口径Rとは同じ大きさに形成されている。
【0031】
冷陰極エミッタ38は、ゲート電極35に電圧Vgと、カソード電極33に電圧−Vcとが印加された際、電子を放出するためのものである。誘電体層36は、負に帯電させられることで、後述する下に凸な等電位線Mを形成し、電子ビームを集束させるためのものである。誘電体層36は、負に帯電可能な層であればどのような材料を用いても良い。誘電体層36には、例えば、酸化法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法等により形成されたSiO2膜や、ゲート電極35にAlを適用して、その上面を酸化して形成されるAlの酸化物等を用いることができる。なお、誘電体層36を負に帯電させる具体的な方法については後述する。誘電体層36上には、スペーサ43が設けられており、基板39はアノード電極41を介してスペーサ43に支持されている。また、冷陰極エミッタ38と対向するアノード電極41の面には、蛍光体42が形成されている。アノード電極41に正の電圧Vaが印加されると、冷陰極エミッタ38から放出された電子は加速され、蛍光体42に照射されて発光する。
【0032】
このように、ゲート電極35上に負に帯電可能な誘電体層36を形成し、誘電体層36を負に帯電させることで、後述する下に凸な等電位線Mが形成され、この等電位線Mにより電子ビームを集束することができ、集束された電子ビームを効率良く蛍光体42に照射することができ、高精細な画像を得ることができる。また、誘電体層36を負に帯電させるための構成を別途設ける必要がないため、従来のフォーカス電極18を用いて電子ビームを集束させる場合と比較して構成を簡略化できる。
【0033】
図4は、誘電体層の開口部をゲート電極の開口部よりも大きく形成した電界放出型表示装置の断面図である。なお、図4において、図3と同一構成部分には同一符号を付す。また、図4中のH4は誘電体層44に形成された開口部(以下、開口部H4)を示しており、RIは誘電体層44に形成された開口部H4の開口径RIを示している。図4に示すように、電界放出型表示装置37には、電子放出素子46が設けられており、電子放出素子46の誘電体層44には、ゲート電極35に形成された開口部H2よりも大きな開口部RIが形成されている。このように、誘電体層44に形成された開口部H4の開口径RIをゲート電極35に形成された開口部H2の開口径Rgよりも大きく形成しても良い。
【0034】
好ましくは、開口部H4の開口径RIを開口部H2の開口径Rgの1.5倍〜2.0倍の大きさに形成すると良い。このような大小関係となるような開口径RI,Rgを形成することにより、誘電体層44を負に帯電させた際に生じる冷陰極エミッタ38表面の電界強度の低下を抑制して、冷陰極エミッタ38から放出される電子の数を低下させることなく、電子ビームを集束させることができる。また、冷陰極エミッタ38から放出される電子の数が低下しないことから、アノード電流が低下しないため、蛍光体42を高輝度に発光させることができ、さらに高画質な画像を得ることができる。なお、上記説明した電界放出型表示装置30,37は、従来からある手法により形成することができる。
【0035】
次に、図5に示した電界放出型表示パネル54を例に挙げて、誘電体層36を負に帯電させる方法について説明する。図5は、図3に示した電子放出素子を複数配列させて構成された電界放出型表示パネルの電子放出素子アレイを平面視した際の概略図であり、図6は電界放出型表示パネルの駆動波形を示した図である。なお、図6に示したT1は初期状態(以下、初期状態T1)、T2は誘電体層36を負に帯電させる時間(以下、帯電時間T2)、T3は電界放出型表示パネル54の1水平ライン(1ラインのゲート電極)を走査する時間(以下、走査時間T3)をそれぞれ示している。また、図6中に示した(a)はアノード電極41の電圧パルスの波形、(b)はゲート電極35−1の電圧パルスの波形、(c)はゲート電極35−2の電圧パルスの波形、(d)はゲート電極35−3の電圧パルスの波形、(e)はカソード電極33−1の電圧パルスの波形、(f)はカソード電極33−2の電圧パルスの波形をそれぞれ示している。
【0036】
始めに、図5を参照して、複数の電子放出素子31を備えた電界放出型表示パネル54の図示した部分の構成について説明する。図5に示すように、電界放出型表示パネル54は、大略するとゲート電極35−1〜35−3と、カソード電極33,33−1〜33−2と、アノード電極41とにより構成されている。ゲート電極35−1〜35−3は、カソード電極33,33−1〜33−2と交差するように配置されている。ゲート電極35−1〜35−3と、カソード電極33,33−1〜33−2と、アノード電極41とには、制御装置(図示せず)がそれぞれ駆動回路(図示せず)を介して設けられている。制御装置は、駆動回路を制御して、セル51,51A〜51Dを発光させるためのものである。
【0037】
セル51,51A〜51Dには、それぞれ複数の電子放出素子31が配設されている。セル51Aは、ゲート電極35−1とカソード電極33−1とが交差する位置に形成され、セル51Bはゲート電極35−1とカソード電極33−2とが交差する位置に形成されている。また、セル51Cはゲート電極35−2とカソード電極33−1とが交差する位置に形成され、セル51Dは、ゲート電極35−2とカソード電極33aとが交差する位置に形成されている。
【0038】
次に、図5乃至図6を参照して、電界放出型ディスプレイ30に形成された誘電体層36の帯電方法ついて説明する。図6に示すように、誘電体層36を負に帯電させるために、時刻t1において、アノード電極41に電圧−VACを印加し、さらにゲート電極35−1〜35−3に電圧VGとカソード電極33−1〜33−2に電圧−VCCとを印加して、この状態を帯電時間T2の間維持する。
【0039】
図7は、帯電時間T2での電界放出型表示装置の状態を模式的に示した断面図である。なお、図7に示したJは、等電位線(以下、等電位線J)を示しており、Kは冷陰極エミッタ38から放出された電子の軌道(以下、軌道K)を示している。
【0040】
図7に示すように、ゲート電極35―1〜35−3に印加された電圧VGと、カソード電極33−1〜33−2に印加された電圧−VCCとの電位差により、冷陰極エミッタ38から電子が放出される。この放出された電子が持つ電子エネルギーは、VG+VCC(eV)となる。この放出された電子は負の電荷を有しており、この電子の放出方向の先にあるアノード電極41には電圧−VACが印加されているため、開口部H1〜H3を通過後、電子はアノード電極41の電位により、その進路を曲げられて、方向Kに進み誘電体層36に到達する。
【0041】
このように、アノード電極41と、ゲート電極35−1〜35−3と、カソード電極33−1〜33−2とに印加される電圧を制御することにより、誘電体層36を電子で負に帯電させることができる。また、負に帯電した誘電体層36により生成される電位は、帯電時間T2と電子エネルギーとに依存し、長時間経過後にはVG+VCCに収束する。したがって、帯電時間T2又はゲート電極35−1〜35−3に印加する電圧VG、カソード電極33−1〜33−2に印加する電圧−VCCのいずれかを調整することにより、電子の電荷量を所望の値に調整できる。これにより、負に帯電する誘電体層36の電位を制御して、電子ビームの径を所望の大きさに制御することができる。なお、各電圧は、例えば、電圧VAを1500V、電圧−VACを−200V、電圧VGを30V、電圧−VCCを−30Vにそれぞれ設定することができる。
【0042】
次に、誘電体層36を負に帯電させた後に行う、電界放出型表示パネル54のゲート電極の走査方法について、図5に示したゲート電極35−1,35−2を走査する場合を例に挙げて説明する。時刻t2において、ゲート電極35−1に電圧VGを印加させた状態で、アノード電極41に電圧VAと、カソード電極33−1に電圧−VCとを印加し、ゲート電極35−2,35−3とカソード電極33−2との電圧を0にする。これによりゲート電極35−1には電圧VGが印加され、カソード電極33−1には電圧−VCが印加されるため、セル51Aに形成された冷陰極エミッタ38からは電子が放出される。
【0043】
図8は、誘電体層を負に帯電させた後に電子ビームを放出させた電界放出型表示装置の状態を模式的に示した図である。なお、図8に示したL,Mは、ゲート電極35に印加された電圧及び負に帯電した誘電体層36により形成された等電位線(以下、等電位線L,M)を示しており、Nは電子ビームの軌道(以下、軌道N)を示している。
【0044】
図8に示すように、冷陰極エミッタ38から電子が放出されると、電子は冷陰極エミッタ38の表面近傍に形成された上に凸の等電位線Lと直交する方向に力を受けて進む。そのため、大半の電子はゲート電極35の方向(蛍光体42に対して発散する方向)に進む。しかし、開口部H3を有した誘電体層36は、負に帯電されているため、電子ビームが開口部H3を通過する際、下に凸の等電位線Mと直交する方向に力を受ける。これにより、電子ビームは集束されて方向Nに進み、蛍光体41に照射される。
【0045】
このように、ゲート電極35上に負に帯電可能な誘電体層36を形成し、誘電体層36を電子により負に帯電させて、誘電体層36の近傍に下に凸の等電位線Mを形成することにより、電子ビームを集束させて、効率良く蛍光体42に照射することができる。
【0046】
次に、複数の電子放出素子31を備えて構成された電界放出型表示パネル54に画像を表示させる際の駆動方法について説明する。図9は、図5に示した電界放出型表示パネルの全体の概略を示した平面図であり、図10は図9に示した電界放出型表示パネルの駆動波形を示した図である。なお、図10に示した1Hは、1水平ラインを走査する時間を示しており、1Fは1画面を構成するのに要する(1画面を走査する)時間を示している。例えば、表示パネル54に配設された走査線数がn本の場合には、1F=n×1Hとなる。また、図10中に示した(g)はアノード電極41の電圧パルスの波形、(h)はゲート電極35−1の電圧パルスの波形、(i)はゲート電極35−2の電圧パルスの波形、(j)はゲート電極35―nの電圧パルスの波形、(k)はカソード電極33の電圧パルスの波形をそれぞれ示しており、カソード電極33は表示輝度レベルにより電圧−VCが印加される時間が変化するため、電圧パルスは同図中では斜線で示している。
【0047】
始めに、図9に図示した表示パネル54の構成について簡単に説明する。図9に示すように、電界放出型表示パネル54の電子放出素子アレイは、n本のゲート電極35−1〜35−nと、複数のカソード電極33とにより構成されており、ゲート電極35−1〜35−nとカソード電極33とが交差する領域には、それぞれセル51が形成される。
【0048】
次に、図10を参照して、表示パネル54の駆動方法について説明する。図10に示すように、時刻t1において、アノード電極41に電圧−VACと、全てのゲート電極35−1〜35−nに電圧VGと、カソード電極33に電圧−VCCを印加する。全てのゲート電極35−1〜35−nとカソード電極33とに電圧が印加されているため、全ての冷陰極エミッタ38から電子が放出される。この際、アノード電極41には、負の電圧−VACが印加されているため、放出された電子は、ゲート電極35−1〜35−nに形成された開口部H2を通過後、誘電体層36に到達する。これにより、誘電体層36は負に帯電するため、電子ビームを集束するための下に凸な等電位線Mが形成される。
【0049】
時刻t2から時刻t3の間では、1番目のゲート電極35−1のラインの走査が行なわれる。時刻t2では、アノード電極41に電圧VAと、ゲート電極35−1に電圧VGとを印加する。電圧−VCが印加されたカソード電極33とゲート電極36−1とが交差するセル51では、冷陰極エミッタ38から電子が放出される。電子ビームは、誘電体層36に形成された開口部H3を通過する際、下に凸の等電位線Mにより集束され、アノード電極41により加速されて蛍光体42に照射される。これにより、蛍光体42からは、可視光が放出されて発光する。電圧が印加されなかったカソード電極33とゲート電極35−1が交差するセル51では、冷陰極エミッタ38から電子は放出されない。
【0050】
また、ゲート電極35−2〜35−nには電圧VGが印加されていないため、冷陰極エミッタ38から電子は放出されない。時刻t3では、ゲート電極35−2に電圧VGを印加し、ゲート電極36−2以外のゲート電極の電圧は0にする。これにより、電圧−VCが印加されたカソード電極33とゲート電極36−2とが交差したセル51では、冷陰極エミッタ38から電子が放出され、電子ビームは等電位線Mにより集束され、蛍光体42に照射される。この蛍光体42への電子の照射をそれぞれのゲート電極35−1〜35−nに対して順次行い、時刻t5では、ゲート電極35−nに電圧VGが印加され、集束された電子ビームが蛍光体42に照射される。このように、ゲート電極35−1からゲート電極35−nまでの走査を行うことにより電界放出型表示パネル54の一画面が構成される。
【0051】
時刻t6では、ゲート電極35−1に電圧VGを印加し、ゲート電極35−1以外のゲート電極の電圧は0にする。これにより、電圧−VCが印加されたカソード電極33とゲート電極35−1とが交差したセル51では冷陰極エミッタ38から電子が放出され、誘電体層36の開口部H3を通過する際、電子ビームは等電位線Mにより集束され、蛍光体42に照射される。このような走査をゲート電極35−1からゲート電極35−nまで繰り返し行うことで、再度一画面が構成される。
【0052】
上記方法により、3600画面(3600F)を構成した後、時刻t7において、再びアノード電極41に電圧−VACと、ゲート電極35−1〜35−nに電圧VGと、カソード電極33に電圧−VCCとを印加し、誘電体層36を負に帯電させる。時刻t8においてゲート電極35−1に電圧VGを印加してゲート電極35−1の走査を行う。
【0053】
このように、電界放出型表示パネル54を駆動させることにより、高精細な画像を得ることができる。なお、本実施例では、3600F毎に誘電体層36を負に帯電させて帯電状態を均一に維持したが、誘電体層36を負に帯電させる周期は3600Fに限定されない。帯電状態が均一に長時間維持することができる場合には、負に帯電させる周期を3600Fよりも大きくしても良いし、短時間しか均一な帯電状態が維持できない場合には、誘電体層36を負に帯電させる周期を短くしても良い。また、電子放出素子31の代わりに電子放出素子46を適用しても良い。
【0054】
(電界放出型表示装置の評価結果)
次に、本発明者が行った誘電体層36の開口部の開口径を変化させた際の電界放出型表示装置30,37の特性評価を行った結果について説明する。
【0055】
図11は誘電体層に帯電した電子の電荷密度とアノード電流との関係を示した図であり、図12は誘電体層に帯電した電子の電荷密度と電子ビームの径との関係を示した図である。なお、本評価には、図3及び図4に示した電界放出型表示装置30,37を用い、誘電体層36,44には膜厚が1.0μmのSiO2膜を用いた。また、開口部H3の開口径は10μmに形成し、開口部H4の開口径は15μmと20μmとに形成したものを用い、ゲート電極35の開口部H2の開口径は全て10μmに形成したものを用いた。
【0056】
図11に示すように、電荷密度が大きくなるにつれ、誘電体層36,44に形成された開口部H3,H4の開口径に依存することなく、アノード電流は小さくなる。これは、ゲート電極35に印加される電圧により冷陰極エミッタ38表面に形成される電界強度が、誘電体層36に帯電した電荷によって弱められ、冷陰極エミッタ38から放出される電子が減少するためである。また、誘電体層36に帯電した電子の電荷密度が大きい場合には、誘電体層36に帯電した電荷により冷陰極エミッタ38から放出される電子が遮断されるため、電子は誘電体層36,44に形成された開口部H3,H4を通過することができない。そのため、図11に示すように、電荷密度が大きい場合には、アノード電流は0になる。
【0057】
図12に示すように、開口部H3の開口径が10μmの場合には、電荷密度が5×10−4C/m2において電子ビームの径が極小値171μmとなり、開口部H4の開口径が15μmと20μmとの場合には、電荷密度が1×10−3C/m2において電子ビームの径が極小値45μmとなる。なお、電子ビームの径が極小値となる電荷密度よりも小さい電荷密度の領域では、負に帯電した誘電体層36により形成される下に凸な等電位線Mの作用が小さいため、電子ビームの径は大きくなる。また、電子ビームの径が極小値となる電荷密度よりも大きな電荷密度の領域では、等電位線Mの作用が大きすぎるため、ゲート電極35に形成された開口部H2を通過した直後にクロスオーバとなり、電子ビームの径は大きくなる。
【0058】
上記評価結果から、誘電体層36に形成された開口径H4をゲート電極35の開口径H2の1.5〜2.0倍の大きさに形成することにより、ゲート電極35の開口径と誘電体層36の開口径H3とを同じ大きさに形成した場合と比較して、電子ビームをより集束させることができ、さらに高輝度で高精細な画像を得ることができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。なお、本実施例では、電子冷陰極エミッタ38から放出される電子により誘電体層36を負に帯電させたが、誘電体層36を負に帯電させることができれば良く、本実施例の帯電方法に限定されない。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、冷陰極エミッタから放出された電子ビームを集束させ、効率良く蛍光体に照射し、高精細な画像を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の電界放出型表示装置の概略図(その1)である。
【図2】従来の電界放出型表示装置の概略図(その2)である。
【図3】本発明の本実施例による電界放出型表示装置の断面図である。
【図4】誘電体層の開口部をゲート電極の開口部よりも大きく形成した電界放出型表示装置の断面図である。
【図5】図3に示した電子放出素子を複数配列させて構成された電界放出型表示パネルの電子放出素子アレイを平面視した際の概略図である。
【図6】電界放出型表示パネルの駆動波形を示したものである。
【図7】帯電時間T2での電界放出型表示装置の状態を模式的に示した断面図である。
【図8】誘電体層を負に帯電させた後に電子ビームを放出させた際の電界放出型表示装置の状態を模式的に示した図である。
【図9】図5に示した電界放出型表示パネルの全体の概略を示した平面図である。
【図10】図9に示した電界放出型表示パネルの駆動波形を示した図である。
【図11】誘電体層に帯電した電子の電荷密度とアノード電流との関係を示した図である。
【図12】誘電体層に帯電した電子の電荷密度と電子ビームの径との関係を示した図である。
【符号の説明】
10、25、30、37 電界放出型表示装置
11、27、31、46 電子放出素子
12、21、32、39 基板
13、33,33−1〜33−2 カソード電極
14、34 絶縁層
15、26、35、35−1〜35−3、35−n ゲート電極
17、36、44 誘電体層
18 フォーカス電極
19、38 冷陰極エミッタ
22、41 アノード電極
23、42 蛍光体
24、43 スペーサ
51、51A〜51D セル
54 電界放出型表示パネル
A、E、H1〜H4 開口部
B、C、F、J、L、M 等電位線
D、G、K、N 軌道
Rg、Ri、RI 開口径
Claims (7)
- 基板上に形成された第1の電極と、
該第1の電極上に形成され、該第1の電極を露出する第1の開口部を有した絶縁層と、
該絶縁層上に形成され、前記第1の電極を露出する第2の開口部を有した第2の電極と、
前記第1の開口部に露出された前記第1の電極上に形成された電子を放出するための冷陰極エミッタとを備えた電界放出素子において、
前記第2の電極上に第3の開口部を有した誘電体層を設けたことを特徴とする電界放出素子。 - 前記誘電体層は、前記冷陰極エミッタから放出された前記電子により負に帯電させられることを特徴とする請求項1に記載の電界放出素子。
- 前記誘電体層に帯電する前記電子の電荷量は、前記第1及び第2の電極の電圧を可変することにより、所望の電荷量に調整可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の電界放出素子。
- 前記誘電体層は、一定の周期毎に負に帯電させられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子放出素子。
- 前記誘電体層の第3の開口部の開口径は、前記第2の電極の第2の開口部の開口径の1.5倍〜2.0倍の大きさとなるよう構成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子放出素子。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子放出素子と、
前記冷陰極エミッタと対向し、かつ離間した位置に形成された第3の電極と、
該第3の電極の前記冷陰極エミッタと対向する面に形成された蛍光体とを備えたことを特徴とする電界放出型表示装置。 - 前記第3の電極は、正の電圧と負の電圧とに切り換え可能に構成され、前記電子が放出された際、前記第3の電極に負の電圧を印加することにより、前記誘電体層を負に帯電させることを特徴とする請求項6に記載の電界放出型表示装置。
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