JP2005052362A - 血液適合性に優れた中空糸型血液浄化器 - Google Patents

血液適合性に優れた中空糸型血液浄化器 Download PDF

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Abstract

【課題】 疎水性高分子と親水性高分子からなる中空糸型血液浄化器において、血液適合性に優れた膜を提供する。
【解決手段】 疎水性高分子と親水性高分子、共通溶媒、非溶媒とからなる紡糸原液をノズルから内液とともに吐出し空走部を経て凝固浴内に導き、凝固浴内で高倍率の延伸を掛けながら中空糸膜を凝固させることにより、内表面の孔の均一性が高く、親水性と疎水性とのバランスが良く、血液適合性に優れた中空糸型血液浄化膜を得ることが可能となることを見出した。
【選択図】 なし

Description

本発明は血液適合性に優れた中空糸型血液浄化器に関する。特に疎水性高分子と親水性高分子からなる中空糸膜を用いた医療用中空糸型血液浄化器に関するものである。
血液浄化などを目的とした医療用中空糸型血液浄化器に用いられる中空糸膜素材には、天然素材であるセルロース、またその誘導体であるセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、合成高分子としてはポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどが広く用いられている。特に最近では合成高分子、中でもポリスルホン系のポリマーを主原料とした中空糸膜が注目されている。ポリスルホンなどの疎水性高分子は単独ではタンパクが吸着し易いなど血液適合性に問題があり、親水性高分子をブレンドし膜の親水性を向上させる方法が開発されている。親水性高分子をブレンドすることにより、膜の親水性が向上して血液中の蛋白が吸着しにくくなり、膜特性の経時的変化は少なく、分画特性に優れた膜となる。
ポリスルホン系の高分子を主成分とした中空糸膜の製造技術は開示されており、その分画分子量は3000〜40000(例えば、特許文献1参照)である。さらに分画特性に優れた膜、特に、高分子量の血液蛋白質を除去する目的で、外表面の開孔率を規定した発明がある(例えば、特許文献2参照)。血液浄化を目的とした中空糸膜において、最近では、より大きな分子量の除去対象成分をいかに効率よく除去できるかが評価され、その指標はアルブミンやβ−2ミクログロブリンなどの除去率などが用いられるが、たとえばサイトカインのようなメディエーターを用いた性能特性の規定は上記文献ではなされていない。
特公平5−54373号公報(第3頁〜第7頁など) 特開平7−289863号公報(第2頁など) サイトカインは免疫担当細胞が抗原に対して応答する際に産生する活性物質の一部であり多くの種類がある。例えば、炎症反応へ関与するもの、細胞性免疫反応の発現の調節、抗体産生機構の調節、アレルギー反応への関与などである。炎症に関与するサイトカインは、インターロイキン−1もしくはインターロイキン−6であり、これらは透析療法中にも産生されるといわれているし、また、透析患者において高値を示す患者の死亡率が高いことも報告されている。このことから、インターロイキン−1や6は血液浄化療法において除去すべき物質と考えられる。また、持続血液療法の分野ではポリアクリロニトリル(PAN)膜、ポリメチルメタクリレート(PMMA)膜がサイトカイン吸着除去に効果を示す膜であることが知られている。一方、ポリスルホン系の膜には吸着性能はないといわれている。 Kimmel PL, et al, Immunological function and survival In hemodialysis patients, Kidney Int, VOL54, PP236-244 (1998) 篠崎、秋澤編集、「急性血液浄化法マニュアル」、南江堂、2002年10月10日発行、P59 また、血液適合性という観点では、血液浄化膜の素材に関連した生体反応、例えば、補体活性化がある。補体活性化は親水性の高い再生セルロース膜で顕著であり、セルロースの水酸基を置換した酢酸セルロース膜や合成膜では軽度であるといわれている。補体活性化が膜素材の親水性に関与しているとすれば、疎水性の合成高分子と親水性高分子とのブレンド体からなる血液浄化膜についても、補体活性化は無視できない問題となる。 飯田他、編集、「血液浄化療法辞典」、メディカル・サイエンス・インターナショナル、1999年7月2日発行、P104 さらに、合成高分子からなる血液浄化膜における血液適合性の問題点として、血液接触面における荷電の影響がある。陰性荷電を持つ膜としてはポリアクリロニトリル膜、陽性荷電を持つ膜としてはヘモファン膜(再生セルロース膜の水酸基をジエチルアミノエチル基でマスキングした膜)が良く知られている。一般に陰性荷電が強いと血中のブラジキニンが産生され、血圧降下を引き起こすといわれている。また、血液浄化療法においては体外循環中に血液の凝固を防ぐために血液に抗凝血剤を添加することがあるが、陰性荷電膜は抗凝血剤であるメシル酸ナファモスタットを、陽性荷電膜は同じく抗凝血剤であるヘパリンを吸着する性質があることなどから、血液浄化膜の血液接触表面の荷電に極端な偏りがあるのは薬剤の使用に制限ができるため臨床上好ましくない。 篠崎、秋澤編集、「急性血液浄化法マニュアル」、南江堂、2002年10月10日発行、P168
本発明は、主として疎水性高分子と親水性高分子とからなる中空糸膜を用いて構成した中空糸型血液浄化器において、血液適合性を向上させた中空糸型血液浄化器を得ることを課題とするものである。
本発明は以下のものである。
(1)疎水性高分子と親水性高分子とからなる中空糸膜を含む中空糸型血液浄化器において、
(a)サイトカイン吸着除去性能
(b)補体活性化抑制性能
(c)ブラジキニン産生抑制性能
これらのすべての性能を併せ持つことを特徴とする中空糸型血液浄化器。
(2)主として疎水性高分子と親水性高分子とからなる中空糸膜を含む中空糸型血液浄化器において、
(a)サイトカイン吸着除去性能が、血液循環試験の循環1時間後において50%以上である
(b)補体活性化産物C3aの変化率が、血液循環試験の循環10分後において120%以下である
(c)ブラジキニンの変化率が、血液循環試験の循環30分後において120%以下である
これらのすべての性能を併せ持つことを特徴とする中空糸型血液浄化器。
(3)中空糸膜の血液接触表面の親水性高分子の質量割合が15〜28質量%である(1)または(2)に記載の中空糸型血液浄化器。
(4)中空糸膜へのメチレンブルーの吸着率が80%以下である(1)〜(3)いずれかに記載の中空糸型血液浄化器。
(5)該中空糸膜の血液接触部である内表面は孔径の均一性が高い微細構造からなり、一方、膜表面には緻密層の形成が抑制されていることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の中空糸型血液浄化器。
(6)該疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の中空糸型血液浄化器。
(7)該親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の中空糸型血液浄化器。
(8)該中空糸膜が、疎水性高分子と親水性高分子、共通溶媒、非溶媒などからなる紡糸原液をノズルから吐出することにより凝固浴内に導き、凝固浴内で1〜80%の延伸を掛けながら中空糸膜を凝固させることにより製造されたことを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の中空糸型血液浄化器。
疎水性高分子と親水性高分子とからなる中空糸を含む中空糸型血液浄化器において、サイトカインの吸着除去性能および補体活性抑制性能およびブラジキニン産生抑制性能を有する血液適合性に優れた中空糸型血液浄化器が得られる。
本発明の中空糸型血液浄化器に用いる中空糸膜の素材は、主として疎水性高分子と親水性高分子である。疎水性高分子には、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミドなどが挙げられる。一般的に、ポリアクリロニトリルやポリメチルメタクリレートから作製された膜にはインターロイキンが吸着し易いことや、ポリアクリロニトリル製の膜は陰性荷電が強く、ブラジキニンが産生されやすいことが知られているが、本発明においては、物理的特性の優れたポリスルホン系樹脂が好ましい。ポリスルホン系樹脂は陰性荷電を有するため単独ではキニン産生能を発現する可能性があるが、後述する親水性高分子とブレンドしポリマーアロイ化することにより親疎水バランスを調整しやすく、また補体を活性化しやすいOH基を含まず、さらに親水性高分子との混合状態でも細孔の制御がし易いため好ましい。ポリスルホン系樹脂とは、スルホン結合を有する高分子化合物の総称であり、特に規定はしないが、化1式または化2式で示す化学構造を持つポリスルホンが入手容易なため好ましく、中でも化2式のポリエーテルスルホン(PES)がガラス転移温度が高く加工性に優れており好ましい。
Figure 2005052362
Figure 2005052362
親水性高分子にはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デンプン、酢酸セルロースなどが使用できる。特にポリビニルピロリドン(PVP)がポリスルホン系樹脂と相溶性が良く血液接触面の親水性−疎水性のバランスをコントロールし易く好ましい。
親水性高分子の重量平均分子量は、中空糸膜の孔径や、架橋反応に影響するので、その目的に応じて任意に選定しなければならないが、通常は500〜1,200,000程度のものが使用できる。親水性高分子の選択は、第一に、使用する疎水性高分子との相溶性が良いもの、第二に、製膜後の膜表面への親水性ポリマーの存在率、すなわち、膜表面へどれだけ留まる性質をもつか、簡単に溶出してしまわないかなどを検討した上で判断する。これらの検討項目は親水性高分子の分子量に依存している場合が多いが、条件が許す範囲内で、より高分子量のものを使用する方が、紡糸工程中の熱履歴による低分子量化の心配がなく好ましい。ポリエチレングリコールとしては、重量平均分子量300〜100,000程度のものが好適に使用できる。例えば、疎水性高分子がポリエーテルスルホンである場合、親水性高分子は相溶性のよいポリビニルピロリドンが好ましく、さらにその分子量については、前記したように、高分子量のものが好ましく、例えば、BASF社製の分子量10,000(K−15)から分子量1,200,000(K−90)が好ましい。より好ましくは100,000〜1,200,000、さらに好ましくは250,000〜1,200,000である。特にポリビニルピロリドンは適切な条件下で、蛋白質との水素結合が予測され、本発明のサイトカイン吸着除去効果に有利に作用すると考えられるので好ましい。このような高分子量の親水性高分子を用いると、製膜後の親水性高分子の膜表面への固定化のコントロールが容易であり、親水性高分子の溶出を抑制することができる。本発明の中空糸膜を構成する疎水性高分子は、親水性高分子により親水化されており、特に膜表面は15〜28質量%程度の親水性高分子が存在するのが好ましい。
本発明における中空糸膜としては、内径が100〜300μm、膜厚が10〜70μmであることが好ましい。内径が100〜300μmであれば、通常の血液透析での血液流量100〜300mL/minにおいて血液剪断速度が適切であり、タンパク吸着や血液に与えるダメージを最小限に抑えることができるため好ましい。より好ましい内径は130〜280μm、さらに好ましくは150〜250μmである。また、膜厚が薄すぎると血液処理に必要な耐圧性が損なわれる可能性がある。また膜厚が厚すぎると溶質透過性が低下することがある。したがって、膜厚は12〜60μmがより好ましく、13〜50μmがさらに好ましい。
サイトカインには炎症反応に関係したものがあり、これらは透析療法を受けることで増加し患者への悪影響(炎症、発熱など)が予測されるため、血液中から除去することが望まれる物質である。特に透析と関係するサイトカインとしては、インターロイキン1、2、6、TNF(腫瘍壊死因子)が挙げられる。サイトカイン吸着性能は、血液を用いた循環試験にて炎症性サイトカインであるIL−6の量について、循環前後の割合で評価する。具体的には循環1時間後の吸着率が50%以上100%以下であるのが好ましい。さらには60%以上が好ましい。サイトカインは透析療法中でも、膜の種類によっては産生されるものである。よってin vitroでの循環試験で吸着率50%以上である場合には、吸着除去率が産生量を上まわり、血液中のIL−6量が増加しないため好ましい。in vitroでの循環試験では、試験血液中でのサイトカインの濃度は増加しない、また、炎症性サイトカインIL−6は全てを除去しても生体に影響ないものであるため、全てのサイトカインを吸着できた場合には吸着率100%となる。
本発明において、サイトカインを効率よく膜に吸着させるための手段としては、中空糸膜の血液接触面である内表面の親水性高分子と疎水性高分子のバランスをコントロールすることである。親水性と疎水性のバランスは、紡糸原液中の親水性高分子と疎水性高分子の割合、また、紡糸工程では、ドープを二重紡糸口金の外側から、内液を二重紡糸口金の内側から吐出する際の、エアーギャップ長、そして凝固条件(組成、濃度、温度)でコントロールするのが好ましい。
例えば、疎水性高分子がPES、親水性高分子がPVPの場合、ドープの各々の組成は、PESが30質量部から50質量部の範囲、PVPが1質量部から10質量部の範囲、溶媒はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、非溶媒にトリエチレングリコール(TEG)とし、それぞれを混合し加熱して均一状態とする。PESとPVPを前記範囲にすることが、中空糸膜内表面の親疎水バランスを適正化する第一のポイントとなる。PESのより好ましい範囲は33〜48質量部、さらに好ましい範囲は35〜45質量部である。PVPのより好ましい範囲は2〜9質量部、さらに好ましい範囲は2〜8質量部である。疎水性高分子に対して親水性高分子が多すぎると、製膜後の洗浄においても過剰の親水性高分子を洗い落とすことが困難となることがある。また、親水性高分子の添加量が少なすぎると疎水性の強い膜になり、サイトカインの吸着量を増大することはできるが、他の有用なタンパクの吸着が多くなったり、吸着タンパクの影響により溶質透過性が低下することがある。したがって、紡糸原液中の疎水性高分子に対する親水性高分子の質量割合は、4〜27質量%が好ましい。4〜23質量%がより好ましい。この範囲であれば、中空糸膜の親疎水バランスをコントロールしやすいため好ましい。
エアーギャップ長は10〜50mmが好ましく、15〜45mmがより好ましい。エアギャップ長が長すぎると、糸切れ、糸揺れに融着が発生しやすくなり紡糸安定性が低下することがある。また、エアギャップ長が短すぎると、相分離の進行が不十分になるため均一な細孔径が得られなくなることがある。またドラフト比は10〜50が好ましい。より好ましくは15〜45、さらに好ましくは20〜40である。ドラフト比が10より小さいと孔径の制御が難しくなったり、またドラフト比が50以上になると糸切れが発生しやすく紡糸安定性が低下することがある。凝固浴での凝固反応の前のエアギャップ部分での凝固や物理的強度の負荷は、膜の孔形状に大きく影響を及ぼすので過度に負荷をかけない上記範囲の条件が望ましい。凝固浴の組成は5〜70質量%のNMP水溶液が好ましい。7〜65質量%がより好ましい。また、凝固浴中で、1〜80%の延伸を行うことが好ましい。2〜60%の延伸を行うことがより好ましい。3〜50%がさらに好ましい。ここで言う延伸とは、第二凝固浴入口ローラー速度と第二凝固浴出口ローラー速度との比である。延伸は一般に細孔形状の変形や配向をもたらす。極端な延伸は細孔の変形、つぶれ、過度の配向につながり、このような内表面を持つ中空糸膜は血液と接触した際に血小板粘着および血中蛋白の吸着、積層化により、膜性能が経時的に低下することがある。一方、PESのような結晶化しにくいポリマーを非凝固性の内液を用いて紡糸する場合は、凝固反応がゆるやかであり、凝固浴中における延伸効果はマイルドである。したがって、このような条件の延伸工程を経た中空糸膜は膜のスポンジ構造の変形が微視的であり、また血液接触部である内表面の状態は、細孔形状の変形が大きくなりすぎず、孔の分布が均一な状態となる。このような凝固条件を使用することで膜表面の緻密化が抑制され、余剰の親水性高分子が洗い流され易くなり、使用時の溶出物量を低減できる。また、凝固液の温度は室温以下であることが好ましい。具体的には0〜30℃、さらに好ましくは5〜25℃である。この条件にすることにより膜表面の緻密化を抑制できるので好ましい。
また、紡糸工程で親水性、疎水性バランスをある程度整えた後、洗浄工程で中空糸膜の親水性、疎水性バランスを最適化するのが好ましい。さらに、乾燥条件を適正化することにより中空糸膜中の親水性高分子を固定化することが好ましい。洗浄工程では、凝固工程で固定化しきれなかった過剰の親水性高分子を洗い落とすとともに、膜表面に存在する親水性高分子の表面への局在化と膨潤を促す。一方、乾燥工程では、疎水性高分子と親水性高分子の物理的な相互作用、すなわち疎水性高分子鎖と親水性高分子鎖の絡み合いの程度を強くし、親疎水バランスを整えることができる。
洗浄方法としては、凝固浴から引き上げた中空糸膜を、RO水からなる水洗槽に導き30℃以上で60秒以上かけて通過させるのが好ましい。温度が低すぎると、過剰の親水性高分子を洗浄しきれず、水洗槽を長くしたり、紡糸速度を遅くしたりする必要があるなどコストアップに繋がることがある。また、温度が高すぎると水が沸騰してしまい中空糸膜が安定して走行しなくなることがある。水洗槽の温度は90℃以下が好ましい。
また、乾燥時に絶乾しないことが好ましい。具体的には、疎水性高分子の平衡水分率以上の含水率で乾燥を止めることが好ましい。例えば、ポリエーテルスルホンでは2.1質量%以上の含水率であることが好ましい。含水率が2.1質量%以上であれば、前述したように、疎水性高分子と親水性高分子の絡み合いの程度が適切となり血液浄化使用時の親水性高分子の溶出が少なくなるため好ましい。含水率が多すぎると、中空糸膜保存中に雑菌が増殖したりすることがあるので、含水率は15質量%以下が好ましい。より好ましくは12質量%以下である。さらに好ましくは10質量%以下である。乾燥温度は50℃〜100℃が好ましく、さらには60℃〜90℃が好ましい。乾燥温度が高すぎると親水性高分子が熱劣化・分解し、溶出物量が増える可能性がある。また乾燥温度が低すぎると、乾燥時間が延びるため中空糸膜の製造コストが上がることがある。また、過乾燥防止対策として、後述するようなグリセリン水溶液に浸漬してもよい。
サイトカインを効率よく膜に吸着させるための第二の手段としては、孔の均一性、整列性の適正化が挙げられる。本発明のサイトカインの血液浄化器への吸着機構は明らかではないが、以下のように考えられる。本発明の血液浄化器の中空糸膜は膜内表面が孔径の均一性が高い微細構造からなるのが特徴である。すなわち、膜内表面には多数の孔が存在する。一方で、サイトカイン、例えば、IL−6は分子量約26,000のアミノ酸からなる糖蛋白質である。この糖蛋白質は、マクロに解釈して、血液中では親水性基を外側に向けた球状構造をとっていると予測され、その球のサイズは常に一定であると考えられる。本発明の血液浄化器の中空糸内面に存在する孔は一定のサイズであることが特徴であり、ここに、IL−6がフィットすると考えられる。膜表面に存在する孔内の表面にも親水性高分子は適度なバランスで保持されており、そこに存在する親水性高分子とIL−6が相互作用して膜内表面および膜内部の孔に吸着すると考えられる。ここで、親水性高分子がポリビニルピロリドンである場合には、糖蛋白質と水素結合することができるので、より強固な結合となる。膜内表面の孔の均一性、整列性を達成する手段としては、上記したようにエアギャップ長を最適化すること、および凝固条件と延伸条件の組合せの最適化が効果的である。詳細な理由は不明だが、エアギャップ長を前記範囲に設定することで相分離における核を多数発生させ、つぎに前記範囲に設定された凝固浴中で適正な延伸をかけることにより発生した核がバラツキ無く成長し、結果として均一な径の細孔が整列した状態となりやすくなるものと考える。
補体は親水性高分子と接触することで活性化されるといわれている。補体活性化により一過性の白血球減少や低酸素血症をきたす。疎水性高分子と親水性高分子をブレンドした血液浄化膜においても、血液と接触する親水性高分子の割合で補体活性化がみられることがある。このようなブレンド膜においては、補体活性化を抑制させるために、血液接触面の親水性高分子の量をコントロールすることや親水性高分子の溶出量を抑制することが重要である。補体活性化の指標は、血液を用いた循環試験にて、補体活性化産物C3aの量を測定し、循環前後の割合で評価する。具体的には循環初期を100%とした場合、循環10分後のC3a値が70%以上120%以下であるのが好ましく、さらには110%以下が好ましい。120%以上の値を示す場合は、測定値の誤差範囲を考慮しても有意に上昇したと解釈でき、値が上昇することはすなわち血液浄化膜により免疫系が活性化したことを意味する。補体活性化産物C3a値は循環試験中に減少しないものであり、測定誤差を考慮しても70%以下である場合には、適切な評価が行われていない可能性がある。
補体活性を抑制する最も有効な方法は、補体活性を抑制するといわれている水酸基を持つ素材を使用しないことである。その他、有効であると思われる方法して、免疫系を活性化させないために、膜からの溶出物量を減らすことである。膜からの溶出物量を抑制する手段としては、先に記したような分子量範囲の親水性高分子を使用することや、膜表面の緻密層形成の抑制がある。特定の分子量の親水性高分子を使用することは、ポリマーの分解によるオリゴマー溶出の問題を軽減させるし、膜表面の緻密層形成が抑制されていることは、製膜後の洗浄効率が良いということである。
ブラジキニンは陰性荷電を持つ血液透析膜にて血液透析した際に産生される。血液透析膜の陰性荷電の定量は一般にはゼータ電位を測定することで評価する。例えば、ポリアクリロニトリルでは−100mVであり、またポリスルホンでは−20mVである。本発明の中空糸型血液浄化器に用いる疎水性高分子は単体では陰性荷電を示すものであり、単体で膜に加工した場合には、血液と接触した際の血液への影響は無視できなくなる。
メチレンブルーはプラスの荷電を持つ染料で、例えばマイナス荷電を持つ中空糸膜に、水溶液を循環させた場合、イオン結合により染料が膜に吸着するので、膜のマイナス荷電を評価するのに用いることができる。血液浄化器に用いる中空糸膜は、生体適合性や薬剤の吸着などの観点から、極端に荷電を持つことは望ましくない。そのため、メチレンブルーの吸着率は30%以上80%以下が好ましい。30%以下である場合は、陽性荷電を持つ傾向にあり抗凝血剤であるヘパリンを吸着することがある。また80%以上である場合は陰性荷電が強く抗凝血剤であるメシル酸ナファモスタットを吸着することがある。
本発明の中空糸型血液浄化器に用いる中空糸膜は疎水性高分子と親水性高分子をブレンドすることが特徴であり、さらに、親水性高分子を血液接触面に一定濃度局在化させることが特徴であり、疎水性高分子の荷電の影響を少なくできる。ブラジキニン産生量は、血液を用いた循環試験にて、ブラジキニンの濃度を測定し、循環前後の割合で評価する。具体的には循環初期を100%とした場合、循環30分後のブラジキニン値が70%以上、120%以下であるのが好ましく、115%以下がより好ましく、110%以下がさらに好ましい。120%以上の値を示す場合は、測定値の誤差範囲を考慮しても有意に上昇したと解釈でき、血液浄化膜によりブラジキニンの産生反応が起こったことを意味する。ブラジキニンは循環試験中に減少しないものであり、測定誤差を考慮しても70%以下である場合には、適切な評価が行われていない可能性がある。
ブラジキニン産生を抑制するための、陰性荷電除去対策としては、紡糸工程全てにおいてRO水を用いることが効果的である。例えば、中空糸膜の洗浄工程において、RO水を使用することで、膜に付着している帯電性物質を効率よく除去することができるし、膜そのものの荷電を弱めることができる。当然のことながら、RO水にはイオン性物質は含有されていないので、イオンが膜に吸着することもない。使用するRO水は比抵抗が0.3〜2MΩcmのものが好ましく、さらには0.4〜1.9MΩcmのものが好ましい。
膜表面の荷電を除去する第二の手段としては、静電気を抑えることである。静電気は主に乾燥や摩擦により発生する。中空糸膜の乾燥を防ぐ方法として、前記したように、乾燥工程で絶乾しないことやグリセリン処理をすることが挙げられる。グリセリン処理に用いるグリセリン水溶液の濃度は15〜70質量%が好ましく、さらには20〜60質量%が好ましい。また、別の手段として、乾燥時のエアーを除電することが有効である。除電処理はプラスとマイナスを発生する除電機器を用いて、膜の帯電量に応じた中空糸膜の耐電極性とは反対極性のイオンを与えることによって膜の静電気を中和することによって行われる。帯電量に応じた反対極性のイオンを供給する方法としては、Ion Current Control方式を取り入れた除電機器を用いた方法を用いて中空糸膜を直接除電することができる。Ion Current Control方式とは、帯電物と除電機器のアース電極との電位差によって生じるイオン電流をセンシングすることで、帯電物の帯電状況を把握し、その帯電量に応じた反対極性のイオンを供給するように、プラス、マイナスそれぞれの電極針に高電圧をかける時間(パルス幅)を制御するものである。
さらに摩擦を防ぐ方法として、紡糸機のローラーやガイドの素材を適正化することも効果的である。ローラーやガイドの素材としては、テフロン(R)、ベークライト、ステンレス、プラスチックなどがあるが、中空糸膜との摩擦を最小限にするステンレスが適している。またそれらの形状は中空糸との摩擦を最小限にするために、接触部が滑らかな曲線になっていることが好ましい。また、アースをつけることも好ましい。
また、膜表面の親水性高分子と疎水性高分子とのバランスもブラジキニンの産生に影響する。親水性高分子と疎水性高分子とのバランスを調製する手段は前記した通りであるが、ブラジキニンの産生については、膜表面に存在する親水性高分子量を限定することが好ましい。中空糸膜の内表面に存在する親水性高分子の割合を10質量%以上28質量%以下、さらには15質量%以上27質量%以下にすることが好ましい。10質量%未満では親水性に乏しく蛋白や血小板の吸着、粘着が顕著であるとともに、疎水性高分子の影響を受けてブラジキニンの産生が加速されることがある。また28質量%以上では、中空糸膜からの親水性高分子の溶出抑制のコントロールが困難である上に、膜表面の親水性が強すぎて補体の活性化が著しくなることがある。内表面近傍の親水性高分子の存在比をこのように10質量%以上28質量%以下の存在比にコントロールすることで、血液浄化膜として適切な性能を発揮できるとともに、ブラジキニンの産生を抑制できる。
本発明の中空糸膜を製造する典型的な方法の一つは、後述する実施例などにおいてみるとおり、疎水性高分子と親水性高分子、共通溶媒、非溶媒などからなる紡糸原液を、ノズルから内液とともに吐出し空中走行部を経て凝固浴内に導き、凝固浴内で高倍率の延伸を掛けながら中空糸膜を凝固させる手法により入手することができるものである。この延伸速度、延伸倍率を適度に制御しないと、延伸方向に配向することによるフィブリル化のような、いわゆる孔が繊維方向につぶれるという現象が発生する。孔のつぶれは、血中ダンパク質のリークや、タンパク質の過剰吸着の原因になることがある。本発明ではこのような障害を克服している。
本発明の内表面の細孔形状が均一が高い微細構造であるということは、スポンジ構造の変形がないということであり、このような変形を防止する為に、延伸倍率、延伸速度などの延伸条件を微妙に制御することにより達成できる。さらに、孔径の均一性が高いということは、孔径のばらつきが少なく、ボイドのような孔も少ないということである。そして、本発明の中空糸膜の孔は不均一に形成されているわけではなく、多くの孔が整然と整列されたように配置されているということである。
このような構造の中空糸膜を製造する場合に、疎水性高分子、親水性高分子の種類、紡糸原液の仕様、凝固条件などの違いが構造にも微妙に影響するが、本発明は、従来公知の凝固条件からは予想できない、制御された製造条件と工程、特に中空糸膜の凝固速度にあわせて延伸を付与することによって達成できたものである。
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(溶出物(UV値)の測定)
中空糸膜1.0gを水100mlに浸漬し70℃水浴中1時間加温し試験液を調整する。試験液の吸光度を波長220〜350nmの範囲で測定する。なお人工腎臓装置承認基準では、本条件での規格を0.1以下としている。
(中空糸膜内表面の親水性高分子量の測定)
中空糸膜を両面テープの上に並べた後、カッターで繊維軸方向に切開し、中空糸膜の内側が表になるように押し広げたものを試料とし、X線光電子分光(ESCA)光電子脱出角度45度にて測定する。ポリビニルピロリドンの場合、C1s、O1s、N1s、S2pスペクトルの面積強度より、装置付属の相対感度係数を用いて窒素の表面濃度(N)と硫黄の表面濃度(S)を求め、
表面PVP濃度=N×100/(N×111+S×442)
より表面PVP濃度を算出する。
(血液循環試験 インターロイキン−6の吸着評価)
膜面積1.5mのモジュールの透析液側を生理食塩水で満たし、人ヘパリン加血200mlを血液バッグに詰め、血液バッグとモジュールをチューブで連結し、37℃で血液流速100ml/min、1時間循環する。循環開始前と循環60分との血液をサンプリングし、IL−6濃度を測定する。測定した値はヘマトクリットの値で補正する。
補正値=測定値(60分)×((Ht(0)×100/Ht(60))−Ht(0))/(100− Ht(0))
Ht(0):ヘマトクリット(0分)
Ht(60):ヘマトクリット(60分)
補正値から吸着率を算出する。
吸着率(%)=100−補正値(60分)/循環開始前値×100
(血液循環試験 補体活性化産物C3aの変化率)
膜面積1.5mのモジュールの透析液側を生理食塩水で満たし、人ヘパリン加血200mlを血液バッグに詰め、血液バッグとモジュールをチューブで連結し、37℃で血液流速100ml/min、10分間循環する。循環開始前と循環10分後との血液をサンプリングし、C3a濃度を測定する。測定した値はヘマトクリットの値で補正する。
補正値=測定値(10分)×((Ht(0)×100/Ht(10))−Ht(0))/(100−Ht(0))
Ht(0):ヘマトクリット(0分)
Ht(10):ヘマトクリット(10分)
補正値から変化率を算出する。
変化率(%)=補正値(10分)/循環開始前値×100
(血液循環試験 ブラジキニンの変化率)
膜面積1.5mのモジュールの透析液側を生理食塩水で満たし、人ヘパリン加血200mlを血液バッグに詰め、血液バッグとモジュールをチューブで連結し、37℃で血液流速100ml/min、30分間循環する。循環開始前と循環30分との血液をサンプリングし、ブラジキニン濃度を測定する。測定した値はヘマトクリットの値で補正する。
補正値=測定値(30分)×((Ht(0)×100/Ht(30))−Ht(0))/(100−Ht(0))
Ht(0):ヘマトクリット(0分)
Ht(30):ヘマトクリット(30分)
補正値から変化率を算出する。
変化率(%)=補正値(30分)/循環開始前値×100
(中空糸膜内面の荷電評価)
膜面積1.5mのモジュールの透析液側を生理食塩水で満たし、血液側に5ppmに調製したメチレンブルーを100ml/minの流速で1時間循環し、循環前後のメチレンブルーの濃度を吸光度490nmから算出し、膜へのメチレンブルーの吸着率を測定する。吸着率が大きいほど、陰性荷電が強いことを意味する。
吸着率(%)=(循環前の濃度−循環後の濃度)/循環前の濃度×100
実施例1(血液浄化器の製造と評価)
PES(住化ケムテックス社4800P)およびBASF社製PVP(K−90)をNMPとTEGの混合液(重量比でNMP:TEG=8:2)にそれぞれ42質量%、5質量%になるよう混合し150℃で10時間撹拌し溶解、均一な溶液とした。紡糸原液中の疎水性高分子に対する親水性高分子の質量割合は11.9質量%であった。この溶液を十分減圧脱泡した後、孔径40μmの焼結フィルターで濾過し、不純物を除いて紡糸原液とし120℃でキープした。この紡糸原液を120℃に加熱した二重環状スリット口金から吐出すると同時に、紡糸原液に対して非凝固性である流動パラフィンを内液として吐出した。口金から凝固層までの40mmの乾式部分を経て25℃にコントロールした凝固層内に紡糸原液/内液を落とし込み凝固させた。このときのドラフト比は25であった。凝固浴は15質量%NMP水溶液を用いた。凝固浴中で45%延伸をかけて中空糸膜として成形した。凝固浴へは、ステンレス製のガイドとローラーによって液面方向に進路を整えた。さらに凝固液中もステンレス製のガイドによって中空糸膜の進路を整えた。凝固浴から引き上げた中空糸膜は、50℃のRO水からなる水洗浴に導き90秒間浸漬通過させ、過剰のPVPと溶媒を除去した。30質量%のグリセリン水溶液浴を経ることで表面へのグリセリン塗布を行った後、70℃の熱風乾燥機中に導き乾燥処理を行った。乾燥後の中空糸膜は、除電ブロワー(キーエンス社製 梗塞除電ブロワーSJ−F020)により静電気を除去しながらワインダーにて75m/minの速度でボビン芯に巻取った。実施例1の紡糸工程で用いた水は全てRO水であり、比抵抗は1.1MΩcmであった。得られた中空糸膜の内径は200.5μm、膜厚は14.8μm、含水率は2.1質量%であった。
これらの中空糸膜10098本をポリエチレン製パイプに挿入し、30cmの長さに切断しバンドルとした。
バンドルを充填率60vol%でケースに充填し、端部をウレタン樹脂で接着し、樹脂を切り出し中空糸膜端部が開口したモジュールとした。このモジュールを20kGyでガンマ線照射して滅菌済み完成品とした。
完成したモジュールの中空糸膜について溶出物(UV値)の測定、膜内表面のPVPの量を測定した。結果を表1に示した。
完成したモジュールについて、血液循環試験を行い、IL−6の吸着率、C3a変化率、ブラジキニン変化率、メチレンブルー吸着率を求めた。結果を表1に示した。
実施例2(血液浄化器の製造と評価)
PES(住化ケムテックス社4800P)およびBASF社製PVP(K−90)をNMPとTEGの混合液(重量比でNMP:TEG=8:2)にそれぞれ41質量%、7質量%になるよう混合し150℃で10時間撹拌し溶解、均一な溶液とした。紡糸原液中の疎水性高分子に対する親水性高分子の質量割合は17.1質量%であった。この溶液を十分減圧脱泡した後、孔径40μmの焼結フィルターで濾過し、不純物を除いて紡糸原液とし120℃でキープした。この紡糸原液を120℃に加熱した二重環状スリット口金から吐出すると同時に、紡糸原液に対して非凝固性である流動パラフィンを内液として吐出した。口金から凝固層までの20mmの乾式部分を経て25℃にコントロールした凝固層内に紡糸原液/内液を落とし込み凝固させた。このときのドラフト比は30であった。凝固浴は15%NMP水溶液を用いた。凝固浴中での25%延伸工程を経て中空糸膜として成形した。凝固浴へは、ステンレス製のガイドとローラによって液面方向に進路を整えた。さらに凝固液中もステンレス製のガイドによって進路を整えた。凝固浴から引き上げた中空糸膜は、40℃のRO水からなる水洗浴に導き90秒間浸漬通過させ、過剰のPVPと溶媒を除去した。30質量%のグリセリン水溶液浴を経ることで表面へのグリセリン塗布を行った後、70℃の熱風乾燥機中に導き乾燥処理を行った。乾燥後の中空糸膜は、除電ブロワー(キーエンス社製 梗塞除電ブロワーSJ−F020)により静電気を除去しながらワインダーにて75m/minの速度でボビン芯に巻取った。実施例2の紡糸工程で用いた水は全てRO水であり、比抵抗は1.0MΩcmであった。得られた中空糸膜の内径は199.6μm、膜厚は14.7μm、含水率は2.2質量%であった。
モジュール化および評価は実施例1と同様に行い、結果を表1に示した。
比較例1(血液浄化器の製造と評価)
実施例1と同様の紡糸原液を調製した。この溶液を十分減圧脱泡した後、孔径40μmの焼結フィルターで濾過し、不純物を除いて紡糸原液とし120℃でキープした。この紡糸原液を120℃に加熱した二重環状スリット口金から吐出すると同時に、紡糸原液に対して非凝固性である流動パラフィンを内液として吐出した。口金から凝固層までの5mmの乾式部分を経て25℃にコントロールした凝固層内に紡糸原液/内液を落とし込み凝固させた。このときのドラフト比は8であった。凝固浴は15%NMP水溶液を用いた。凝固浴中での延伸は実施せず、中空糸膜として成形した。凝固浴へは、テフロン(R)製のガイドとローラによって液面方向に進路を整えた。さらに凝固液中もテフロン(R)製のガイドによって進路を整えた。中空糸膜巻き取りの過程において、30℃の水道水水洗浴を経た後、70℃熱風乾燥にて絶乾した。その後30質量%のグリセリン水溶液浴を経て、表面へのグリセリン塗布を行い、75m/minの速度でボビン芯に巻取った。比較例1の紡糸工程で用いた水は全て水道水であった。得られた中空糸膜の内径は199.8μm、膜厚は20.1μm、含水率は1.2質量%であった。
モジュール化および評価は実施例1と同様に行い、結果を表1に示した。
IL−6の吸着がほとんどみられなかったことから、孔径の制御が十分に行われていないことが予想される。このことは、ドラフト比が小さいことと、延伸を実施しなかったことによると考えられる。補体活性が高かったのは、乾燥工程で絶乾したため、中空糸膜の内表面にPVPが多量に局在化し、溶出物量が増え、循環試験中にも溶出物として抽出されていたためと考えられる。ブラジキニンの変化率が高く、メチレンブルーの吸着率も高かったことから、荷電の影響が考えられた。紡糸工程におけるローラーやガイドの素材、また水道水による洗浄により陰性荷電の影響が顕著になったと予測される。また静電気の影響でボビン芯への巻取性が大きく低下し、工業的に実施することは困難と思われた。
比較例2(血液浄化器の製造と評価)
実施例1と同様の紡糸原液を調製した。この溶液を十分減圧脱泡した後、孔径40μmの焼結フィルターで濾過し、不純物を除いて紡糸原液とし120℃でキープした。この紡糸原液を120℃に加熱した二重環状スリット口金から吐出すると同時に、紡糸原液に対して非凝固性である流動パラフィンを内液として吐出した。口金から凝固層までの200mmの乾式部分を経て25℃にコントロールした凝固層内に紡糸原液/内液を落とし込み凝固させた。このときのドラフト比は18であった。凝固浴は15%NMPである。凝固浴中での150%延伸工程を経て、中空糸膜として成形した。凝固浴へは、テフロン(R)製のガイドとローラーによって液面方向に進路を整えた。さらに凝固液中もテフロン(R)製のガイドによって進路を整えた。中空糸膜巻き取りの過程において、30℃の水道水水洗浴を経ることで洗浄、さらに70℃熱風乾燥し、75m/minの速度でボビン芯に巻取った。比較例2の紡糸工程で用いた水は全て水道水であった。得られた中空糸膜の内径は199.8μm、膜厚は15.1μm、含水率は1.1質量%であった。
モジュール化および評価は実施例1と同様に行い、結果を表1に示した。
IL−6の吸着がほとんどみられなかったことから、孔径の制御が十分に行われていないことが予想される。このことは、エアーギャップ長が長いことと、極端な延伸を実施したため、孔径を均一にすることが出来なかったと考えられる。その半面、中空糸膜の洗浄性は向上し、親水性高分子の大半が洗浄工程で洗い流されたと考えられ、表面のPVP量は少なく、溶出物試験結果も基準値以下であり、補体活性も比較的低かった。ブラジキニンの変化率が高く、メチレンブルーの吸着率も高かったことから、荷電の影響が考えられた。紡糸工程におけるローラーやガイドの素材、また水道水による洗浄により陰性荷電の影響が顕著になったと予測される。またグリセリン処理を行わなかったことから、静電気が発生しボビン芯への巻取性が大きく低下し、工業的に実施することは困難と思われた。
参考例1(血液浄化器の評価)
市販のポリスルホン膜血液透析器について血液循環試験およびメチレンブルー循環試験を実施した。測定したインターロイキン−6の吸着率、C3a変化率、ブラジキニン変化率、メチレンブルー吸着率を表1に示した。
参考例2(血液浄化器の評価)
市販のポリアクリロニトリル膜血液透析器について血液循環試験およびメチレンブルー循環試験を実施した。測定したIL−6の吸着率、C3a変化率、ブラジキニン変化率、メチレンブルー吸着率を表1に示した。
参考例3(血液浄化器の評価)
市販のヘモファン膜(再生セルロース膜の水酸基をジエチルアミノエチル基でマスキングした膜(陽性荷電を持つ))血液透析器についてメチレンブルー循環試験を実施した。測定したメチレンブルー吸着率を表1に示した。
Figure 2005052362

実施例1、2ではIL−6の吸着率が大きく吸着除去性能が発現された。また、C3a変化率も小さく補体活性化が起こりにくいことが示された。さらにブラジキニン変化率も小さく、メチレンブルーの吸着率が高くないことから陰性荷電の影響も小さいことがわかる。比較例1、2では延伸工程の違いによりインターロイキンの吸着サイトのサイズが微妙に変化したためか、IL−6吸着率が低くなった。比較例1、2、参考例1は一般的なポリスルホン系の膜の特徴を示した。参考例2のIL−6吸着が報告されているポリアクリロニトリル膜ではIL−6の高い吸着率が示されたが、陰性荷電の影響がブラジキニン変化率で顕著となり、報告通りの結果が得られ、血液循環試験における評価系の正当性を証明している。一方陽性荷電膜である参考例3ではメチレンブルーの吸着率が顕著に低く、陰性荷電評価についても正当性を証明している。
疎水性高分子と親水性高分子とからなる中空糸を含む中空糸型血液浄化器において、サイトカインの吸着除去性能および補体活性抑制性能およびブラジキニン産生抑制性能を有する血液適合性に優れた中空糸型血液浄化器が得られる。この中空糸型血液浄化器慢性の腎臓疾患の治療法である定期的な短時間の血液浄化療法および急性疾患や重症疾患に対する持続的血液浄化療法に適応できる。

Claims (8)

  1. 主として疎水性高分子と親水性高分子とからなる中空糸膜を含む中空糸型血液浄化器において、
    (a)サイトカイン吸着除去性能
    (b)補体活性化抑制性能
    (c)ブラジキニン産生抑制性能
    これらのすべての性能を併せ持つことを特徴とする中空糸型血液浄化器。
  2. 主として疎水性高分子と親水性高分子とからなる中空糸膜を含む中空糸型血液浄化器において、
    (a)サイトカイン吸着除去性能が、血液循環試験の循環1時間後において50%以上である
    (b)補体活性化産物C3aの変化率が、血液循環試験の循環10分後において120%以下である
    (c)ブラジキニンの変化率が、血液循環試験の循環30分後において120%以下である
    これらのすべての性能を併せ持つことを特徴とする中空糸型血液浄化器。
  3. 中空糸膜の血液接触表面の親水性高分子の質量割合が15〜28質量%である請求項1または2に記載の中空糸型血液浄化器。
  4. 中空糸膜へのメチレンブルーの吸着率が80%以下である請求項1〜3いずれかに記載の中空糸型血液浄化器。
  5. 該中空糸膜の血液接触部である内表面は孔径の均一性が高い微細構造からなり、一方、膜表面には緻密層の形成が抑制されていることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の中空糸型血液浄化器。
  6. 該疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の中空糸型血液浄化器。
  7. 該親水性高分子がポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸型血液浄化器。
  8. 該中空糸膜が、疎水性高分子と親水性高分子、共通溶媒、非溶媒などからなる紡糸原液をノズルから吐出することにより凝固浴内に導き、凝固浴内で1〜80%の延伸を掛けながら中空糸膜を凝固させることにより製造されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の中空糸型血液浄化器。
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