JP2005052116A - 高活性プロモーター及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】アスペルギルス・オリゼを宿主として目的遺伝子を高度に発現させることができるプロモーター、ベクター及び形質転換体、並びに、このプロモーターを用いて目的タンパク質を効率よく生産する方法を提供する。
【解決手段】アスペルギルス・オリゼcatBプロモーターの活性領域である特定の塩基配列を見出した。活性領域は高活性プロモーターとして機能でき、その主活性を担う領域は異種プロモーターとの複合プロモーターとすることによりこの異種プロモーターの活性を向上させることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来のプロモーター配列の中の主活性を示す領域、及びこの領域を利用して目的タンパク質を効率よく生産する方法に関する。
近年の遺伝子組換え技術の発展とともに、ヒトの有用蛋白質を大腸菌や酵母等を用いて生産できるようになってきた。しかし大腸菌を宿主としてヒトなどの真核生物由来の遺伝子を発現させる場合は、正常なプロセッシングが行われない、糖鎖が付着しないなどの難点がある。また酵母に異種タンパク質を分泌生産させる場合は、糖鎖は結合されるものの、その分泌量が非常に少ない。
そこで、高いタンパク分泌能を持つ糸状菌が、真核生物のタンパク質発現の宿主として注目されている。中でも黄麹菌Aspergillus oryzaeは、清酒や味噌など醸造産業において長く使用されてきた実績から、異種遺伝子発現に積極的に利用されている。例えば、ムコール・ミエイ(Mucor miehei)の酸性プロテアーゼなどがアスペルギルス・オリゼを宿主として、工業生産されている。このような麹菌による異種タンパク質の生産には、αアミラーゼ又はグルコアミラーゼなどのアミラーゼのような生産量の多い分泌酵素の遺伝子のプロモーターや、解糖系酵素の遺伝子のようなハウスキーピング遺伝子のプロモーターが用いられることが多い。例えば、麹菌由来のカタラーゼ遺伝子catBのプロモーターが特許文献1に記載されている。
これらのプロモーターは野生型のままで使用されているが、異種タンパク質の生産性を向上させるためには、より強力な発現能を有するプロモーターがあれば好ましい。
特開2001−224381
本発明は、アスペルギルス・オリゼを宿主として目的遺伝子を高度に発現させることができるプロモーター、ベクター及び形質転換体、並びに、このプロモーターを用いて目的タンパク質を効率よく生産する方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、以下の知見を得た。
(i) アスペルギルス・オリゼ由来のカタラーゼ遺伝子(catB)の全プロモーターの中で、配列番号1に示す塩基番号381〜421のいずれかから塩基番号580〜620のいずれかまでの領域が主活性を担う領域である。
(ii) この主活性を担う領域を含む、配列番号1に示す塩基番号351〜451のいずれかから塩基番号1350〜1400のいずれかまでの活性領域と、この活性領域により発現できるように連結された目的遺伝子とを含むベクターを用いて、アスペルギルス・オリゼを始めとする糸状菌を形質転換すれば、糸状菌に目的タンパク質を効率よく生産させることができる。
(iii) この主活性を示す領域を、それとは異なる異種プロモーターに付加又はその内部に挿入することにより、異種プロモーターの活性を向上させることができ、それにより、目的遺伝子を効率的に発現させることができる。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下のDNAなどを提供する。
項1. 以下の(1)又は(2)のDNA。
(1) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号351〜451のいずれかから塩基番号1350〜1400のいずれかまでの塩基配列からなるDNA。
(2) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号351〜451のいずれかから塩基番号1350〜1400のいずれかまでの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を示すDNA。
項2. 項1に記載のDNAを含むベクター。
項3. さらに、前記DNAにより発現可能に連結された目的遺伝子を含む項2に記載のベクター。
項4. 項3に記載のベクターを保持する形質転換体。
項5. 項4に記載の形質転換体を培養する工程と、培養産物から目的遺伝子がコードするタンパク質を回収する工程とを含むタンパク質の生産方法。
項6. 以下の(3)又は(4)のDNA。
(3) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号381〜421のいずれかから塩基番号580〜620のいずれかまでの塩基配列からなるDNA。
(4) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号381〜421のいずれかから塩基番号580〜620のいずれかまでの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を示すDNA。
項7. 項6に記載のDNAとそれとは異なるプロモーターとの複合プロモーターを含むベクター。
項8. さらに、複合プロモーターにより発現可能に連結された目的遺伝子を含む項7に記載のベクター。
項9. 項8に記載のベクターを保持する形質転換体。
項10. 項9に記載の形質転換体を培養する工程と、培養産物から目的遺伝子がコードするタンパク質を回収する工程とを含むタンパク質の生産方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)全プロモーターの中で活性を示す領域
活性領域
本発明のプロモーターの活性領域は、以下の(1)又は(2)のDNAからなる。
(1) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号351〜451のいずれかから塩基番号1350〜1400のいずれかまでの塩基配列からなるDNA。
(2) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号351〜451のいずれかから塩基番号1350〜1400のいずれかまでの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を示すDNA。
本発明において、DNAには、特に言及しない限り、その塩基配列を有する1本鎖DNAの他に、それに相補的な1本鎖DNA及び2本鎖DNAが含まれる。
「塩基番号351〜451のいずれかから塩基番号1350〜1400のいずれかまでの塩基配列」については、塩基番号351〜451のいずれかから始まる101種類の配列のそれぞれについて、塩基番号1350〜1400のいずれかで終わる51種類の配列があり、全部で5151(101×51)種類の塩基配列が含まれる。
高プロモーター活性を示す上で、(1)のDNAの中では、配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号371〜421のいずれかから塩基番号1371〜1400のいずれかまでの塩基配列からなるDNAが好ましく、塩基番号381〜411のいずれかから塩基番号1381〜1400のいずれかまでの塩基配列からなるDNAがより好ましい。最も好ましいのは、塩基番号401〜1400の塩基配列からなるDNAである。
また、(1)のDNAは、プロモーター活性を示す限り、任意のヌクレオチドを付加した状態で使用することができる。
本発明において、ストリンジェントな条件としては、例えば、1×SSC(standard saline citrate; 1×SSC=0.15M NaCl,0.015M sodium cirate)中60℃一夜の条件下、又はホルムアミドを含む4×SSC中37℃一夜の条件下においてハイブリダイズし、2×SSC中55℃での30分間の洗浄によりそのDNAから脱離しない条件が挙げられる。
(2)のDNAは、このような条件下で(1)に列記したいずれかのDNAとハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を示すものであればよく、DNAの長さは特に限定されない。
(1)のDNAは、例えば配列番号1に基づき設計したプライマーを用いアスペルギルス・オリゼの染色体DNAを鋳型にしてPCRを行うことにより取得できる。また化学合成によっても取得できる。
(2)の変異したDNAは、化学合成法、遺伝子工学的手法、突然変異誘発法などの公知の方法で作製できる。遺伝子工学的手法としては、(1)のDNAに対して、エキソヌクレアーゼを用いたヌクレオチド欠失導入、リンカー導入、位置指定突然変異導入、変異プライマーを用いたPCRによる塩基配列の改変などの公知の方法が挙げられる。
全プロモーター中の主活性を担う領域
本発明の「全プロモーター中の主活性を担う領域」、即ちエンハンサー領域は以下の(3)又は(4)のDNAからなる。
(3) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号381〜421のいずれかから塩基番号580〜620のいずれかまでの塩基配列からなるDNA。
(4) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号381〜421のいずれかから塩基番号580〜620のいずれかまでの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を示すDNA。
「塩基番号381〜421のいずれかから塩基番号580〜620のいずれかまでの塩基配列」については、塩基番号381〜421のいずれかから始まる41種類の配列のそれぞれについて、塩基番号580〜620のいずれかで終わる41種類の配列があり、全部で1681(41×41)種類の塩基配列が含まれる。
高プロモーター活性を示す上で、(3)のDNAの中では、配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号391〜411のいずれかから塩基番号590〜610のいずれかまでの塩基配列からなるDNAが好ましく、塩基番号396〜406のいずれかから塩基番号595〜605のいずれかまでの塩基配列からなるDNAがより好ましい。最も好ましいのは、塩基番号401〜600の塩基配列からなるDNAである。
また、(3)のDNAは、プロモーター活性を示す限り、任意のヌクレオチドを付加した状態で使用することができる。
(4)のDNAは、ストリンジェントな条件下で(3)に列記したいずれかのDNAとハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を示すものであればよく、DNAの長さは特に限定されない。
(3)及び(4)のDNAの取得方法は前述した通りである。
(II)ベクター
第1のベクター
本発明の第1のベクターは、上記説明した本発明の(1)又は(2)のDNAをプロモーターとして含むベクターである。このベクターは、糸状菌を宿主とする場合に外来遺伝子を発現できる。
このベクターにおいて、本発明の(1)又は(2)のDNAは、目的遺伝子をクローニングするサイトの上流に存在していればよい。
本発明のベクターは、その他、通常ベクターが備える形質転換用マーカー遺伝子、制限酵素切断部位、ターミネーターなどを備えていればよい。
形質転換用マーカーは宿主糸状菌内で発現できるものであればよい。例えばアスペルギルス属糸状菌由来のniaD(Biosci.Biotechnol.Biochem.,59,1795-1797(1995))、argB (Enzyme Microbiol Technol, 6, 386-389, (1984)), sC (Gene, 84, 329-334, (1989))、ptrA (Biosci Biotechnol Biochem, 64, 1416-1421, (2000))、pyrG (Biochem Biophys Res Commun, 112, 284-289, (1983)), amdS (Gene, 26, 205-221, (1983))、オーレオバシジン耐性遺伝子 (Mol Gen Genet, 261, 290-296, (1999))、ベノミル耐性遺伝子 (Proc Natl Acad Sci USA, 83, 4869-4873, (1986))及びハイグロマイシン耐性遺伝子 (Gene, 57, 21-26, (1987))等を使用できる。中でも、niaDが好ましい。
また、ターミネーターも、糸状菌由来のものであればよいが、特にアスペルギルス属糸状菌由来のものが好ましく、アスペルギルス・オリゼ由来のものがより好ましい。
ベクターのサイズは、通常のベクターと同様であればよく、例えば3〜15kb程度であればよい。
本発明の第1のベクターは、例えばMolecular cloning CSHL PRESSに記載の方法で作製することができる。
本発明のベクターを使用するに当たっては、目的タンパク質をコードする遺伝子を本発明のDNAにより発現可能な位置に組み込めばよい。
目的遺伝子の由来は特に限定されない。糸状菌由来の遺伝子は勿論のこと、ヒトなどの哺乳動物由来の遺伝子も使用できる。高い発現量が得られる点で、糸状菌由来の遺伝子、特にアスペルギルス属糸状菌由来の遺伝子、さらに特にアスペルギルス・オリゼ由来の遺伝子が好ましい。
目的遺伝子の種類は特に限定されないが、有用なタンパク質をコードする遺伝子としては、例えばフィターゼ、リアーゼ、ペクチナーゼのようなペクチン分解酵素、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、マンノシダーゼ、イソメラーゼ、インベルターゼ、トランスフェラーゼ、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、キチナーゼ、カタラーゼ、ラッカーゼ、フェノールオキシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、ヒドロラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、プロテアーゼのようなタンパク質分解酵素、アミノペプチダーゼ又はカルボキシペプチダーゼなどのタンパク質の構造遺伝子が挙げられる。
これらの構造遺伝子は、麹菌ESTデータベース(http://www.nrib.go.jp/ken/EST/db/blast.html)を検索する方法で容易に入手できる。なお本発明者は、麹菌アスペルギルス・オリゼ由来のグルコアミラーゼ遺伝子glaB (Gene, 207, 127-134, (1998)及びglaA (Gene, 108, 145-150, (1992))、フコースレクチン遺伝子fleA(特開2002-112786号)などをクローニングしている。
第2のベクター
本発明の第2のベクターは、プロモーターとして、本発明の(3)又は(4)のDNAとこれとは異なるプロモーターとの複合プロモーターを含むベクターである。
複合プロモーターに含まれる異種プロモーターは、糸状菌由来のプロモーターであればよく特に限定されないが、異種プロモーターの活性増大効果が高い点で、特にアスペルギルス属糸状菌由来のプロモーターであることが好ましく、アスペルギルス・オリゼ由来のプロモーターであることがより好ましい。なおアスペルギルス・オリゼのcatBのプロモーターも、本発明の(3)又は(4)のDNAとは異なるため、異種プロモーターに含まれる。
異種プロモーターとしては、例えばα-アミラーゼ遺伝子エンハンサーamyB (Biosci Biotechnol Biochem, 56, 1849-1853, (1992)), グルコアミラーゼ遺伝子エンハンサーglaA(Gene, 108, 145-150, (1992))、α-グルコシダーゼ遺伝子エンハンサーagdA(Curr Genet, 30, 432-438, (1996))、マンガンSOD遺伝子エンハンサーsodM(特開2001-224381)、チロシナーゼ遺伝子エンハンサーmelO(特開2001-046078)、グルコアミラーゼ遺伝子エンハンサーglaB(特開2000-245465、特開平11-243965)等が挙げられる。
複合プロモーターにおいて、本発明の(3)又は(4)のDNAと異種プロモーターとは隣接していてもよく、それらの間に1000塩基以下、特に100塩基以下の範囲でヌクレオチドが存在していてもよい。
また複合プロモーターにおいて、本発明の(3)又は(4)のDNAと異種プロモーターとの位置関係は特に限定されない。本発明の(3)又は(4)のDNAが異種プロモーターの上流に存在していてもよく、本発明の(3)又は(4)のDNAが異種プロモーターの下流に存在していてもよく、異種プロモーター内に本発明のDNAが挿入されていてもよく、又は、本発明のDNA若しくは/及び異種プロモーターを複数使用する場合はそれらが混在してもよい。中でも、本発明のDNAが異種プロモーターより上流側に位置すること、本発明のDNAが異種プロモーター内に挿入されていること、又は、本発明のDNA又は/及び異種プロモーターを複数使用する場合はそれらが混在していることが好ましく、本発明のDNAが異種プロモーターより上流側に位置することがより好ましい。
異種プロモーター内部に本発明の(3)又は(4)のDNAが挿入されている場合は、異種プロモーターの活性を向上させる上で、異種プロモーターのtataa boxより上流に本発明のDNAが挿入されていることが好ましい。
複合プロモーター中に含まれる本発明の(3)又は(4)のDNAの数は特に限定されないが、通常1〜12個程度とすればよい。異種プロモーターの活性を高める上では、特に3〜9個程度とすることが好ましい。
本発明の第2のベクターは、第1のベクターと同様にして作製できるが、既にプロモーターを備える公知のベクターに本発明のDNAを挿入することによっても得ることができる。このような公知の糸状菌用のベクターとしては、例えば、アスペルギルス・オリゼの形質転換用プラスミドであるpPTRIDNA等がTAKARA社から市販されている。
また、本発明の第2のベクターを使用するに当たっては、複合プロモーターにより発現可能な位置に目的タンパク質をコードする遺伝子を組み込めばよい。
(III)形質転換体
本発明の形質転換体は、上記説明した本発明の第1のベクター又は第2のベクターであって目的とする遺伝子が組み込まれたもので宿主を形質転換することにより得られる。
すなわち、本発明の第1の形質転換体は、本発明の(1)又は(2)のDNAからなるプロモーターとそれにより発現可能に連結された目的遺伝子とを含む本発明の第1のベクターを保持する形質転換体である。また本発明の第2の形質転換体は、本発明の(3)又は(4)のDNAを含む複合プロモーターとそれにより発現可能に連結された目的遺伝子とを含む本発明の第2のベクターを保持する形質転換体である。
宿主は糸状菌であれば使用できる。高いプロモーター活性を発現させるためには、特に、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)等のアスペルギルス属糸状菌が好ましい。これらの中では、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・ウサミ、アスペルギルス・ソーヤなどが食品産業において有用な菌種である。高いタンパク質生産能及び醸造微生物としての安全性の点で、特にアスペルギルス・オリゼを宿主とすることが好ましい。
形質転換方法は、特に限定されず、PEG−カルシウム法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法等の公知の方法を使用できる。
(IV)タンパク質の生産方法
本発明のタンパク質の生産方法は、上記説明した本発明の形質転換体を培養する工程と、培養産物から目的遺伝子がコードするタンパク質を回収する工程とを含む方法である。
形質転換体を培養する培地は、宿主である糸状菌の培養に適した培地とすればよい。例えば、ポテトデキストロース培地(ニッスイ社)または最少培地(2%グルコース(又はスターチ)、0.3%NaNO3、0.2%KCl、0.1%KH2PO4,0.05%MgSO4、0.002%FeSO4、pH6.0)等を使用できる。培地は、固体培地でも液体培地でもよいが、本発明のDNAは液体培地でのプロモーター活性が強いため、液体培地の方が、目的タンパク質の生産量を高める上では好ましい。なお、固体培地にする場合は、1.5%程度の寒天を添加した培地を用いればよい。
培養温度は、形質転換体の生育可能温度範囲であればよく、例えば25〜42℃程度が挙げられる。培養時間は、その他の条件によって異なるが、通常2〜7日間程度、特に3〜5日間程度とすればよい。
培養終了後、目的遺伝子が分泌タンパク質の遺伝子である場合は、培養上清を回収すればよい。寒天培地の場合も培養上清としての寒天培地を回収すればよい。また、目的遺伝子が細胞内にタンパク質を生産するものである場合は、濾紙、ガラスフィルターなどで集菌し、通常は、液体窒素で凍結し粉砕したり、海砂Bですり潰したりすればよい。また、別法としてポリトロンやホモジナイザーなども菌体の破砕に利用できる。得られた破砕液を5000〜12000g程度で5〜20分間程度遠心分離し、上清を回収すればよい。
さらに、これらの上清を、公知のタンパク質精製方法、例えばイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティなどの各種クロマトグラフィーに供することにより目的タンパク質を回収することができる。
これにより得られるタンパク質には、単純タンパク質の他に、糖タンパク質、リポタンパク質、リンタンパク質のような複合タンパク質も含まれる。
本発明により、アスペルギルス・オリゼを始めとする糸状菌を宿主として目的遺伝子を高度に発現させることができるプロモーター、ベクター及び形質転換体、並びに、このプロモーターを用いて目的タンパク質を効率よく生産する方法が提供された。
以下、実施例及び試験例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。
全プロモーター中の主活性を示す領域の探索
<解析用プロモーターの構築>
形質転換用マーカーとして、A. oryzaeの硝酸還元酵素欠損変異株(独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P-13034として寄託済み)のniaD遺伝子(S. Unkles et.al.,Mol. Gen. Genet., 218,p.99-104, 1989)及びAmpを含み、レポーター遺伝子として大腸菌のβ−グルクロニダーゼ(GUS)をコードするuidA遺伝子を含み、ターミネーターとしてglaBターミネーターを含むベクターpNGS1(Ishida H et.al.,Curr Genet. 2000 Jun;37(6):373-9.)を用意した。pNGS1の構成を図1に示す。
次いで、pNGS1のuidA遺伝子の上流域のPstI−SalIサイトに、catB遺伝子のプロモーター領域(特開2001−224381)を構成する1400塩基のDNA(配列番号1の塩基番号1〜1400の塩基配列からなる)を挿入することにより、解析用プラスミドp1400を得た。
また、上記1400 bpの配列の5'末端側から200bp欠失させた1200bpのDNA(配列番号1の塩基番号201〜1400)、400 bp欠失させた1000bpのDNA(配列番号1の塩基番号401〜1400)、600bp欠失させた800bpのDNA(配列番号1の塩基番号601〜1400)、800bp欠失させた600bpのDNA(配列番号1の塩基番号801〜1400)、1000bp欠失させた400bpのDNA(配列番号1の塩基番号1001〜1400)、1200bp欠失させた200bpのDNA(配列番号1の塩基番号1201〜1400)を、それぞれpNGS1のuidA遺伝子の上流域のPstI−SalIサイトに挿入することにより、解析用プラスミドp1200、p1000、p800、p600、p400及びp200を得た。
これらのプラスミドによりAspergillus oryzae GLB-01 (独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P-15826として寄託済み)のniaD変異株(亜硝酸を資化できない変異株:Nitrate Reductase欠損株)を形質転換し、これらのプラスミドが宿主染色体のniaD locusにlコピーだけ導入された各形質転換体を選択した。
<プロモーター活性の検討>
得られた各形質転換体をDPY培地及び最小培地であるCz-Dox培地でそれぞれ液体培養し、GUS活性をProc. Natl. Acad. Schi. P8447-8451(1986)(R.A.Jeffersonら)に記載の方法で測定することにより、プロモーター活性を評価した。
結果を以下の表1に示す。
Figure 2005052116
表1から明らかなように、1400bpの全長プロモーター(配列番号1の塩基番号1〜1400の領域)及び5'末端側から200 bp欠失させた1200bpのプロモーター領域(塩基番号201〜1400の領域)では活性が低いが、400 bp欠失させた1000 bpのプロモーター領域(塩基番号401〜1400の領域)では活性が著しく高かった。また600 bp欠失させると急激に活性が低下し、それ以上欠失させても活性は回復しなかった。
この結果、catBプロモーターは上記の1400bpの上流側から201番目の塩基付近〜400番目の塩基付近の領域(配列番号1の塩基番号201付近〜400付近の領域)がプロモーター活性の抑制領域であり、上流側から401番目の塩基付近〜600番目の塩基付近の領域(配列番号1の塩基番号401付近〜600付近の領域)が主活性を担う領域、即ちエンハンサー領域であることが判明した。
また、上記主活性を担う領域を含む配列番号1の塩基番号401〜1400の配列からなるDNAをプロモーターとして用いることにより、各種タンパク質を高発現させ得ることが判明した。
実施例1で使用したpNGS1のPstI−SalIサイトに、主活性を担うエンハンサー領域(配列番号1の塩基番号401〜600のDNA)を4つ連続して連結したもの及びそれに隣接してその下流に塩基番号401〜1400の配列からなるDNAを挿入した。得られたベクターには、エンハンサー領域が全部で5個含まれる。
このプラスミドによりAspergillus oryzae GLB-01のniaD変異株を形質転換し、このプラスミドが宿主染色体のniaD locusにlコピーだけ導入された形質転換体を選択した。
得られた形質転換体をDPY培地で液体培養し、実施例1と同様の方法でGUS活性を測定した。GUS比活性は18250unit/mgであった。このように、主活性を担う領域を4個付加することにより、GUS活性が2倍以上に向上した。
このことから、主活性を担う領域を、由来は同じであるが長さの異なる異種プロモーターに付加することにより、異種プロモーターの活性を向上させ得ることが判明した。
図2に示すプロモーター解析用プラスミドとして、図2に示すプラスミドpNGUSを用意した。pNGUSは、形質転換用マーカーとしてniaDを含み、レポーター遺伝子としてGUSをコードするuidA遺伝子を含み、ターミネーターとしてglaBを含む。
次いで、pNGUSのuidA遺伝子の上流のPstI-SalIサイトに、主活性を担うエンハンサー領域(配列番号1の塩基番号401〜600のDNA)及び液体培養では発現が微弱なA.oryzae由来glaAプロモーター(ACCESSION D10698 D0110、 http://www.ncbi.nlm.nih.gov:80/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=nucleotide&list#uids=1160312&dopt=GenBan)を上流からこの順に挿入した組み換えベクターを調製した。このキメラプロモーターの構成を図3に示す。
このプラスミドによりAspergillus oryzae GLB-01のniaD変異株を形質転換し、このプラスミドが宿主染色体のniaD locusにlコピーだけ導入された形質転換体を選択した。得られた形質転換体をDPY培地で液体培養し、実施例1と同様の方法でGUS活性を測定した。対照として、glaAプロモーターのみpNGUSのPstI−SalIサイトに挿入した組み換えベクターを用いて同様にして形質転換体のGUS活性を測定した。
その結果、glaAプロモーターを用いた場合は酵素比活性が1423unit/mgであったのに対して、複合プロモーター(キメラプロモーター)を用いた場合は、酵素比活性が4322unit/mgであった。catBプロモーターの主活性を担う領域は、低発現の異種プロモーターであるglaAプロモーターとのキメラプロモーターにした場合にそのプロモーター活性を約3倍に向上させた。
このことから、主活性を担う領域を異種プロモーターに付加することにより異種プロモーターの活性を向上させ得ることが判明した。
本発明のDNAは糸状菌を宿主とした場合に高いプロモーター活性を示すため、本発明のDNAをプロモーターとして含むベクターは、高いタンパク分泌能を持つ糸状菌を用いた有用タンパク質の生産に好適に使用できる。
図1は、実施例1及び2において使用した、プロモーター挿入前のベクターpNGS1の構成を示す図である。 図2は、実施例3で使用した、プロモーター挿入前のベクターpNGUSの構成を示す図である。 図3は、実施例3で使用したプロモーターの構成を示す図である。図3中、native glaA promotorは対照プロモーターを示し、native glaA promotor plus 401-600は本発明の複合プロモーターを示す。

Claims (10)

  1. 以下の(1)又は(2)のDNA。
    (1) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号351〜451のいずれかから塩基番号1350〜1400のいずれかまでの塩基配列からなるDNA。
    (2) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号351〜451のいずれかから塩基番号1350〜1400のいずれかまでの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を示すDNA。
  2. 請求項1に記載のDNAを含むベクター。
  3. さらに、前記DNAにより発現可能に連結された目的遺伝子を含む請求項2に記載のベクター。
  4. 請求項3に記載のベクターを保持する形質転換体。
  5. 請求項4に記載の形質転換体を培養する工程と、培養産物から目的遺伝子がコードするタンパク質を回収する工程とを含むタンパク質の生産方法。
  6. 以下の(3)又は(4)のDNA。
    (3) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号381〜421のいずれかから塩基番号580〜620のいずれかまでの塩基配列からなるDNA。
    (4) 配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号381〜421のいずれかから塩基番号580〜620のいずれかまでの塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を示すDNA。
  7. 請求項6に記載のDNAとそれとは異なるプロモーターとの複合プロモーターを含むベクター。
  8. さらに、複合プロモーターにより発現可能に連結された目的遺伝子を含む請求項7に記載のベクター。
  9. 請求項8に記載のベクターを保持する形質転換体。
  10. 請求項9に記載の形質転換体を培養する工程と、培養産物から目的遺伝子がコードするタンパク質を回収する工程とを含むタンパク質の生産方法。
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