JP2009254349A - 糸状菌由来プロモーターのエンハンサーおよびその利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンハンサーとして、配列番号1〜4に記載する塩基配列からなる群から選択される少なくとも1つの塩基配列を使用する。
【選択図】なし
Description
(1-1)配列番号1〜4に記載する塩基配列からなる群から選択される少なくとも1つの
塩基配列を含有する糸状菌由来プロモーターのエンハンサー。
(1-2)糸状菌が麹菌である(1-1)記載のエンハンサー。
(2-1)配列番号1〜4に記載する塩基配列からなる群から選択される少なくとも1つの
塩基配列が、糸状菌で機能するプロモーター領域に導入されてなる改良プロモーター。
(2-2)配列番号1〜4に記載する塩基配列をタンデム結合してなる塩基配列が、糸状菌
で機能するプロモーター領域に導入されてなる(2-1)に記載する改良プロモーター。
(2-3)上記の糸状菌で機能するプロモーター領域が、α−アミラーゼ遺伝子、グルコア
ミラーゼ遺伝子またはスーパーオキサイド・ディスムターゼ遺伝子のいずれかのプロモーター領域である、(2-1)または(2-2)に記載する改良プロモーター。
(3-1)(2-1)〜(2-3)のいずれかに記載する改良プロモーター、宿主糸状菌の形質転
換体の選択に好適なマーカー遺伝子、およびターミネーターを有し、大腸菌で複製可能な
DNA領域を有する、糸状菌におけるポリペプチド発現用プラスミド。
(3-2)マーカー遺伝子が、糸状菌由来のβ−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺
伝子である(3-1)に記載するポリペプチド発現用プラスミド。
(3-3)ターミネーターが、糸状菌由来のグルコアミラーゼ遺伝子のターミネーターであ
る(3-1)または(3-2)に記載するポリペプチド発現用プラスミド。
(3-4)ポリペプチドをコードするDNAを、(2-1)〜(2-3)のいずれかに記載する改
良プロモーターとターミネーターとの間に、宿主糸状菌内で発現可能なように有する(3-1)乃至(3-3)のいずれかに記載するポリペプチド発現用プラスミド。
(4-1)(3-4)に記載するポリペプチド発現用プラスミドを宿主糸状菌に導入し、得られた形質転換体を培養する工程を有するポリペプチドの製造法。
本発明において「エンハンサー」とは、糸状菌、好ましくは麹菌に由来するプロモーターのプロモーター活性、すなわち遺伝子の転写活性を高めることができる機能を少なくとも有するヌクレオチドを意味する。
学的に合成することができる。
・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ア
スペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・
ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terrus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)である。より好ましくは、麹菌であるアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)を挙げることができる。
塩基配列からなる改良プロモーターを用いた場合のGUS活性(プロモーター活性)と、未
改良のプロモーター(α―アミラーゼ遺伝子のプロモーター、グルコアミラーゼ遺伝子のプロモーターおよびスーパーオキサイド・ディスムターゼ遺伝子のプロモーター)を用いた場合のGUS活性(プロモーター活性)とを対比し、改良プロモーターのGUS活性が未改良プロモーターのGUS活性よりも高い場合に、当該改良プロモーター上流に挿入した塩基配
列にエンハンサー機能があると判断することができる。
ロモーターのそれらに比して、それぞれ約2.6倍、約1.5倍および約1.9倍増加することが
確認された(図1中「クローンA」、図2中「pGA-A」、図3中「pSM-A」で示す)。また同様に下記のことが確認された。
ロモーター、グルコアミラーゼ遺伝子のプロモーターおよびスーパーオキサイド・ディスムターゼ遺伝子のプロモーター(改良プロモーター)のGUS活性は、未改良プロモーター
のそれらに比して、それぞれ約2.0倍、約1.7倍および約1.7倍増加する(図1中「クロー
ンB」、図2中「pGA-B」、図3中「pSM-B」で示す)。
ロモーター、グルコアミラーゼ遺伝子のプロモーターおよびスーパーオキサイド・ディスムターゼ遺伝子のプロモーター(改良プロモーター)のGUS活性は、未改良プロモーター
のそれらに比して、それぞれ約2.5倍、約2.0倍および約2.2倍増加する(図1中「クロー
ンC」、図2中「pGA-C」、図3中「pSM-C」で示す)。
ロモーター、グルコアミラーゼ遺伝子のプロモーターおよびスーパーオキサイド・ディスムターゼプロモーター(改良プロモーター)のGUS活性は、未改良プロモーターのそれら
に比して、それぞれ約2.7倍、約1.8倍および約2.7倍増加する(図1中「クローンD」、
図2中「pGA-D」、図3中「pSM-D」で示す)。
ーのそれに比して、約5.5倍増加することが確認された(図4中「クpAA-S」で示す)。このことから、配列番号1〜4で示す塩基配列を2以上、好ましくは4つ組み合わせて結合してなる塩基配列もまたエンハンサーとして機能し、エンハンサーとして利用できると判断される。
本発明の改良プロモーターは、上記する本発明のエンハンサーの少なくとも1つが糸状菌で機能するプロモーター領域に導入されてなることを特徴とする。
・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ア
スペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・
ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・フミガタス(Asper
gillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terrus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)である。より好ましくは、麹菌であるアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)を挙げることができる。
まず、導入したいプロモーター領域を適当な2種類の制限酵素(説明の便宜上、制限酵素の1つを「制限酵素a」、もう一つを「制限酵素b」と称する)で消化する。ただし、そのうち一つ、例えば制限酵素aは平滑末端を生じる酵素を用いることが好ましい。そうでない場合は、制限酵素aで処理して生成した末端をDNAブランチングキット(タカラバイオ社製)等を用いて平滑末端化することが好ましい。次に、5’末端から制限酵素サイトを、制限酵素bの認識サイト・制限酵素aの認識サイトの順で付加したプライマーと制限酵素サイトを付加しないプライマーを用いて、エンハンサーの塩基配列を含む断片をPCR法により増幅する。このようにして増幅した断片を上記で消化したプロモーターに挿入することにより、平滑末端サイトと制限酵素bサイトでそれぞれ結合される。
さらに、本発明のポリペプチド発現用プラスミドは、上述する改良プロモーターと、同じく糸状菌で機能するターミネーター、ならびに宿主の形質転換体の選択に好適なマーカー遺伝子を有し、更に大腸菌で複製可能なDNA領域を有するものである。
る。
ニチンカルバモイルトランスフェラーゼをコードする遺伝子argB (Enzyme Microbiol Technol, 6, 386-389, (1984))、sC (Gene, 84, 329-334, (1989))、ptrA (Biosci Biotechnol Biochem, 64, 1416-1421, (2000))、pyrG (Biochem Biophys Res Commun, 112, 284-289, (1983)), アセトアミダーゼをコードする遺伝子amdS (Gene, 26, 205-221, (1983))、オーレオバシジン耐性遺伝子(Mol Gen Genet, 261, 290-296, (1999))、ベノミル耐性
遺伝子(Proc Natl Acad Sci USA, 83, 4869-4873, (1986))、及びハイグロマイシン耐性
遺伝子(Gene, 57, 21-26, (1987))からなる群より選ばれるいずれかのマーカー遺伝子、
ロイシン要求性相補遺伝子などが挙げられる。なお、この場合、宿主糸状菌は、選定された選択マーカーについての機能的遺伝子を有しない株を用いる必要がある。
β-グルクロニダーゼをコードする遺伝子)とグルコアミラーゼ遺伝子のターミネーターの融合遺伝子をサブクローニングする。更にこのプラスミドを鋳型としてPCRを行いベクターとする。続いて本発明のエンハンサーの塩基配列を導入した改良プロモーターをPCR法で増幅してインサートし、ベクターとライゲーションさせる。
はウイルスタンパク質(Production and product quality assessment of human hepatitis B virus pre-S2 antigen in submerged and solid-state cultures of Aspergillus oryzae. Maruyamaら、J Biosci Bioeng. 2000;90(1):118-20.参照)、各種酵素タンパク質
なども含まれる。酵素タンパク質としては、グルコース酸化酵素、セルロース分解酵素(セルラーゼ、エンドグルカナーゼなど)、デンプン分解酵素(グルコアミラーゼ、α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼなど)、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ、ペプチダー
ゼ)などが挙げられるが、これらに特に限定はされない。
本発明は、さらに、目的とするポリペプチドを、糸状菌を宿主として製造する方法を提供する。
)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アス
ペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terrus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)等のアスペルギルス属に属する糸状菌である。これらの中では、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・タマリ、アスペルギルス・グラウカスなどが食品産業において有用な菌種である。高いタンパク質生産能及び醸造微生物としての安全性の点で、特にアスペルギルス・オリゼを宿主とすることが好ましい。
)、抗生物質(例えば、アンピシリン、カナマイシン)など]を培地中に添加してもよい。
目的ポリペプチドは、培養上清から回収することができる。固体培地の場合も適切な緩衝液、例えば10mM燐酸緩衝液pH7等を加え、適宜攪拌した後、その上清を固体培地の抽出液として回収すればよい。さらに、これらの上清を、公知のタンパク質精製方法、例えばイオン交換、疎水、ゲルろ過、アフィニティなどの各種クロマトグラフィーに供することにより目的ポリペプチドを精製してもよい。
(1)麹菌宿主
遺伝子を形質転換する宿主として、麹菌Aspergillus oryzae O-1013(FERM P-16528と
して独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている(寄託日:平成9年11月20日))から公知の紫外線照射変異導入法を用いて取得した、ロイシン要求
性変異麹菌株Aspergillus oryzae leu-5を使用した。当該変異麹菌株は、上記寄託センターにFERM P-20079として寄託されている(寄託日:平成16年6月7日)。
選択マーカーとして、上記ロイシン要求性変異麹菌株Aspergillus oryzae leu-5のロイシン要求性変異を相補できる、β−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードするAspergillus nidulans由来の遺伝子ANleu2(配列番号6)を利用した。ANleu2は、370アミ
ノ酸残基からなるβ−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子であり、イントロンを2つ含んでいる。配列番号6中の塩基番号1〜319はプロモーター領域、塩基番号320〜1549はオープンリーディング領域、塩基番号1550〜3560はターミネーター領
域である。またオープンリーディング領域(配列番号6の320〜1549領域)のうち、2つ
のイントロン領域は塩基番号795〜851と1273〜1332の領域である。当該遺伝子ANleu2がコードするアミノ酸配列を配列番号7に示す。
使用した。
・94℃(1分),1サイクル
・98℃(10秒),60℃(30秒),72℃(5分),30サイクル
・72℃(7分),1サイクル。
した。切り出したANleu2の遺伝子断片は、LA-Taqの増幅産物よりその末端にアデニンが突
出しており、TベクターであるpGEM-T(プロメガ社)へ、T4 DNAリガーゼ(プロメガ社)
を用いて4℃で20時間処理することによりライゲーションさせた。その後、ライゲーショ
ン液を大腸菌JM109コンピテントセル(タカラバイオ社)へ形質転換した。形質転換体は
アンピシリン、IPTG及び X-galを添加したLB培地を用いて白色コロニーとして単離された。
麹菌ロイシン要求性変異麹菌株Aspergillus oryzae leu-5を、上記で調製したプラスミドpANLAにより形質転換する手法として、常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた(Mol. Gen. Genet., 218, 99-104,(1989))。プロトプラストは、GPY液体培地
(2% グルコース、1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス)で30℃、1日間培養したAspergillus oryzae leu-5をガラスフィルター11GP250(柴田科学社)で集菌し、0.8M NaClを含むプロトプラスト化溶液(5mg/mlヤタラーゼ(タカラバイオ社)、5mg/mlセルラーゼ(和光純薬)、5mg/ml lysing enzyme(sigma)も含む)中で、30℃で3時間反応させた。ガラスフィルター11GP160(柴田科学社)でろ過したろ液をプロトプラスト液として用いた。プロ
トプラスト-PEG-カルシウム法におけるプラスミドなどの添加段階において、pANLAなどの選択マーカーを含むプラスミドと、これとは異なる選択マーカーを含まない任意のプラスミドを任意の割合で添加することにより、最小培地で選択した形質転換体の染色体に両プラスミド断片を挿入することができる(コトランスフォーメーション(co-transformation))。形質転換体の選択培地としては、Czapek-Dox最少培地(グルコース3%、硫酸マグネシウム0.1%、リン酸水素2カリウム0.1%、塩化カリウム0.05%、硝酸ナトリウム0.3
%、硫酸鉄0.00001M、0.8M NaCl、1.5%寒天、pH6.3)を用いた。30℃で7日間培養した後
、複数の形質転換体が得られた。
はじめに、麹菌でのプロモーターの転写活性を測定するために、レポーター遺伝子(uidA、β-グルクロニダーゼをコードする遺伝子)を含むレポーター解析プラスミドの構築を
試みた。まず、uidA遺伝子の下流にグルコアミラーゼ遺伝子のターミネーター遺伝子が融合した遺伝子断片を含むプラスミドpNGS1(文献:Biosci Biotechnol Biochem., 72, 48-53, (2008)))を鋳型として、プライマーuidA(5’-ATGTTACGTCCTGTAGAAACCCCAACCCGT-3
’:配列番号10)とプライマーTglaB(5’-ATGTATACTTAGTTTGATTGCAGTGGACGT-3’:配
列番号11)、およびLA-Taq(タカラバイオ社)を用いて下記の条件でPCR増幅を行った
。
・94℃(1分),1サイクル
・98℃(10秒),60℃(30秒),72℃(3分),30サイクル
・72℃(4分),1サイクル。
ル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN社)で抽出した。本PCR産物はその末端にアデニンが突出しており、TベクターであるpGEM-T(プロメガ社)へ、T4 DNAリガーゼ(プロメガ社)を用いて4℃で20時間処理することによりライゲーションさせた。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(タカラバイオ社)へ形
質転換した。形質転換体はアンピシリン、IPTG及び X-galを添加したLB培地を用いて白色コロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。uidA遺伝子とグルコアミラーゼ遺伝子のターミネーターが融合した遺伝子断片の下流3’末端
がM13P8配列側に向いて挿入されているプラスミドを、レポーターアッセイ用プラスミドpuidAとした。
はプライマーP4(5’-GAGTATGCAAGGAGATTGCGAGACCGGACC-3’: 配列番号17)とプライ
マー(5’-CTTGCTTCGACTTCGTTTGCTGATGTGAAA-3’: 配列番号18);スーパーオキサイ
ド・ディスムターゼ遺伝子のプロモーター領域の増幅はプライマーP5(5’-AGTCACATCCCGCCAACATGATTGGTAAAA-3’: 配列番号19)とプライマー(5’-TTTGGGTGGTTTGGTTGGTATTCTGGTTGA-3’: 配列番号20)を用い、それぞれPrimeSTAR HS(タカラバイオ社)を用いて下記条件でPCR反応することにより行った。
・98℃(20秒),1サイクル
・98℃(10秒),55℃(15秒),72℃(1分),30サイクル
・72℃(2分),1サイクル。
ーM13P7-Rev(5’-GTCGTGACTGGGAAAACCCTGGCGTTACCC-3’:配列番号21)とプライマーuidA(5’-ATGTTACGTCCTGTAGAAACCCCAACCCGT-3’:配列番号22)、PrimeSTAR HS(タカ
ラバイオ社)を用いて下記条件でPCR増幅を行った。
・98℃(20秒),1サイクル
・98℃(10秒),55℃(15秒),72℃(5分30秒),30サイクル
・72℃(6分),1サイクル。
とした。このようにして得られた3種類のインサートとベクターをそれぞれ平滑末端処理後にリン酸化と脱リン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(タカラバイオ社)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(タカラバイオ社)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを
添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。プラスミドの中から、各プロモーターDNA断片(α-アミラーゼ遺伝子、グルコアミラーゼ遺伝子、スーパーオキサイド・ディスムターゼ遺伝子のそれぞれのプロモーター)の下流側にuidA遺伝子が接続されているプラスミドをそれぞれ選抜し、それぞれプラスミドpAA、pGA、pSMと命名した。
麹菌Aspergillus oryzae O-1013のゲノムDNAを超音波破砕装置にて断片化し、インサートライブラリーとした。次に上記で調製したプラスミドpAAを鋳型にして、プライマーM13
P7-Rev(配列番号21) とプライマーP3(配列番号15)、およびPrimeSTAR HS(タカ
ラバイオ社)を用いて下記条件でPCR増幅を行った。
・98℃(20秒),1サイクル
・98℃(10秒),55℃(15秒),72℃(6分),30サイクル
・72℃(6分),1サイクル
その結果、適正なライブラリー構築用ベクター断片が増幅した。得られたPCR増幅産物
をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN社)で抽
出し、ベクター(i)とした。このようにして得られたインサートライブラリーとベクター(i)をそれぞれ平滑末端処理後にリン酸化と脱リン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(タカラバイオ社)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(タカラバイオ社)へ形質転換した。形
質転換体はアンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。α―アミラーゼ遺伝子のプロモーターDNA
断片の上流側にインサートが挿入されているものを1000クローン単離し、エンハンサーライブラリープラスミドとした。
麹菌ロイシン要求性変異麹菌株Aspergillus oryzae leu-5を、プラスミドpANLAとpAAあるいはエンハンサーライブラリープラスミドのいずれか1クローンを組み合わせてコトラ
ンスフォーメーションを行った。麹菌を形質転換する手法は常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた。得られた形質転換体の導入遺伝子(uidA遺伝子1コピー導入体)は、uidA遺伝子をプローブとしたゲノムサザン及びその有無をPCRにより確認した。その結果、プラスミドpAAあるいはエンハンサーライブラリープラスミドが1コピー導入された形質転換体のライブラリーを得ることが出来た。
化カリウム0.05%、硝酸ナトリウム0.3%、硫酸鉄0.00001M pH6.3)に各形質転換体(1000クローン)を植菌し、pAAが導入された形質転換体よりも濃い青色のハロを形成した形質転換体(12クローン)を選抜した。
トリウム0.3%、硫酸鉄0.00001M pH6.3)30mLに植菌し、30℃3日間振とう培養後、菌体
を回収した。回収した菌体を海砂B(ナカライテスク)と混和した後、乳鉢と乳棒を用い
てペースト状になるまで磨り潰し、適量のリン酸緩衝液(10mM、pH7.0)を加え懸濁した
。懸濁液をマイクロチューブに移し、遠心ろ過を行い、その上清を回収しサンプルとした。
調製された各サンプルのβ-グルクロニダーゼ活性(GUS活性)をJefferson 等の方法によって測定した (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 8447-8451 (1986)) 。プラスミドpAAが導入された形質転換体と比較して、β-グルクロニダーゼ活性(GUS活性)が約2倍以
上向上している形質転換体を形質転換ライブラリーから4クローン(クローンA〜D)選抜することができた(図1参照)。
上記で選抜したクローンA、B、CおよびDの各インサートの塩基配列をDNAシーケン
サーで決定した。その結果、クローンAのインサート配列は配列番号1に示す塩基配列、クローンBのインサート配列は配列番号2に示す塩基配列、クローンCのインサート配列は配列番号3に示す塩基配列、クローンDのインサート配列は配列番号4に示す塩基配列であることが明らかとなった。
(1)麹菌(Aspergillus oryzae)由来プロモーター(グルコアミラーゼプロモーター、スーパーオキサイド・ディスムターゼプロモーター)の改良
麹菌Aspergillus oryzae O-1013のゲノムDNAを鋳型にして、配列番号1に示す塩基配列(以下「配列1」という)をプライマー(5’-CCCAATGACACTCCTCTATTGAATATCATT-3’:配列番号23)とプライマー(5’-TAGGGTTGTTCCTGAACCCTTGACTTTTGG-3’: 配列番号24
)で、配列番号2に示す塩基配列(以下、「配列2」という)をプライマー(5’-ACCGTATTTGGAACAATACCACAACAACTA-3’: 配列番号25)とプライマー(5’-ACGACGCGGTGAGGGTGACGTTGGGCCGCC-3’: 配列番号26)で、配列番号3に示す塩基配列(以下、「配列3」という)をプライマー(5’-AATTACGTGGCACCAAAACAAAACAAACCA-3’: 配列番号27)と
プライマー(5’-AGTGATGTCTAGCTGGTTGGAAAGCTCCTG-3’:配列番号28)で、配列番号4に示す塩基配列(以下、「配列4」という)をプライマー(5’-TCAAAATATGAGATGCTTCCAAACCAAGCA-3’:配列番号29)とプライマー(5’-ATCGCGAGGTGGGGCGTCGGTACCTGGATT-3’:配列番号30)で、それぞれをPrimeSTAR HS(タカラバイオ社)を用いて下記条件でPCR増幅を行った。
・98℃(20秒),1サイクル
・98℃(10秒),55℃(15秒),72℃(30秒),30サイクル
・72℃(1分),1サイクル。
た。
・98℃(20秒),1サイクル
・98℃(10秒),55℃(15秒),72℃(6分),30サイクル
・72℃(6分),1サイクル。
た。このようにして得られた4種類のインサートと2種類ベクターをそれぞれ平滑末端処理後にリン酸化と脱リン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(タカラバイオ社)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(タカラバイオ社)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリンを
添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。プラスミドpGAのプロモーターの塩基配列(配列番号13)の上流に
配列1の3’末端が接続したプラスミドをpGA-A、プラスミドpGAのプロモーターの塩基配列(配列番号13)の上流に配列2の3’末端が接続したプラスミドをpGA-B、プラスミドpGAのプロモーターの塩基配列(配列番号13)の上流に配列3の3’末端が接続したプラス
ミドをpGA-C、プラスミドpGAのプロモーターの塩基配列(配列番号13)の上流に配列4の3’末端が接続したプラスミドをpGA-Dとした。
モーターの塩基配列(配列番号14)の上流に配列1の3’末端が接続したプラスミドをpSM-A、プラスミドpSMのプロモーターの塩基配列(配列番号14)の上流に配列2の3’末端が接続したプラスミドをpSM-B、プラスミドpSMのプロモーターの塩基配列(配列番号14)の上流に配列3の3’末端が接続したプラスミドをpSM-C、プラスミドpSMのプロモー
ターの塩基配列(配列番号14)の上流に配列4の3’末端が接続したプラスミドをpSM-Dとした。
麹菌ロイシン要求性変異麹菌株Aspergillus oryzae leu-5をpANLAとpGAあるいはpSM、pGA-A、pGA-B、pGA-C、pGA-D、pSM-A、pSM-B、pSM-C、pSM-Dのいずれか1種類のプラスミドを組み合わせてコトランスフォーメーションにより行った。麹菌を形質転換する手法は常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた。得られた形質転換体の導入遺伝子
(uidA遺伝子1コピー導入体)は、uidA遺伝子をプローブとしたゲノムサザン及びその有
無をPCRにより確認し、pGAあるいはpSM、pGA-A、pGA-B、pGA-C、pGA-D、pSM-A、pSM-B、pSM-C、pSM-Dが1コピー導入された形質転換体を得ることが出来た。
トリウム0.3%、硫酸鉄0.00001M pH6.3)30mLに植菌し、30℃3日間振とう培養後、菌体
を回収した。回収した菌体を海砂B(ナカライテスク)と混和した後、乳鉢と乳棒を用い
てペースト状になるまで磨り潰し、適量のリン酸緩衝液(10mM、pH7.0)を加え懸濁した
。懸濁液をマイクロチューブに移し、遠心ろ過を行い、その上清を回収しサンプルとした。
調製された各サンプルのβ-グルクロニダーゼ活性(GUS活性)をJefferson 等の方法によって測定した (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 8447-8451 (1986)) 。pGAが導入さ
れた形質転換体と比較して、pGA-A、pGA-B、pGA-C、pGA-Dが導入された形質転換体はいずれもβ-グルクロニダーゼ活性(GUS活性)が1.5倍以上向上していた(図2参照)。
た株はいずれもβ-グルクロニダーゼ活性(GUS活性)が1.7倍以上向上していた(図3参
照)。
(1)麹菌(Aspergillus oryzae)由来プロモーターの改良
配列番号2、3、4および1に記載する塩基配列を、タンデムに結合させたDNA断片(
配列番号5、タカラバイオ社で受託合成)と実施例1で得られたベクター(i)をそれぞれ平滑末端処理後にリン酸化と脱リン酸化をそれぞれ行い、ライゲーションさせた。これら一連の操作は、TaKaRa BKL Kit(タカラバイオ社)を使用した。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(タカラバイオ社)へ形質転換した。形質転換体はア
ンピシリンを添加したLB培地を用いてコロニーとして単離された。各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。プラスミドpAAのプロモーターの塩基配列(配列番号1
2)の上流に、配列番号5に示す塩基配列の3’末端が接続したプラスミドをpAA-Sとした。
麹菌ロイシン要求性変異麹菌株Aspergillus oryzae leu-5を、プラスミドpANLA、pAAあるいはpAA-Sのいずれか1種類のプラスミドを組み合わせてコトランスフォーメーションにより行った。麹菌を形質転換する手法は常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を
用いた。得られた形質転換体の導入遺伝子(uidA遺伝子1コピー導入体)は、uidA遺伝子
をプローブとしたゲノムサザン及びその有無をPCRにより確認し、プラスミドpAAあるいはプラスミドpAA-Sが1コピー導入された形質転換体を得ることが出来た。
トリウム0.3%、硫酸鉄0.00001M pH6.3)30mLに植菌し、30℃3日間振とう培養後、菌体
を回収した。回収した菌体を海砂B(ナカライテスク社)と混和した後、乳鉢と乳棒を用
いてペースト状になるまで磨り潰し、適量のリン酸緩衝液(10mM、pH7.0)を加え懸濁し
た。懸濁液をマイクロチューブに移し、遠心ろ過を行い、その上清を回収しサンプルとした。
調製された各サンプルのβ-グルクロニダーゼ活性(GUS活性)をJefferson 等の方法によって測定した (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 8447-8451 (1986)) 。
比較して、プラスミドpAA-Sが導入された形質転換体は、β-グルクロニダーゼ活性(GUS
活性)が約5.5倍向上していた(図4参照)。このことから、実施例1と2でエンハンサ
ーとして機能することが確認された配列1〜4は、これらを互いに結合しても、エンハンサーとして機能すること、しかも一層エンハンサー活性を向上させることができることが確認された。
配列番号8〜11および配列番号15〜30は、実施例においてPCR増幅に使用したプラーマーの塩基配列を示す。
Claims (10)
- 配列番号1〜4に記載する塩基配列からなる群から選択される少なくとも1つの塩基配列を含有する糸状菌由来プロモーターのエンハンサー。
- 糸状菌が麹菌である請求項1記載のエンハンサー。
- 配列番号1〜4に記載する塩基配列からなる群から選択される少なくとも1つの塩基配列が、糸状菌で機能するプロモーター領域に導入されてなる改良プロモーター。
- 配列番号1〜4に記載する塩基配列がタンデム結合してなる塩基配列が、糸状菌で機能するプロモーター領域に導入されてなる請求項3に記載する改良プロモーター。
- 糸状菌で機能するプロモーター領域が、α−アミラーゼ遺伝子、グルコアミラーゼ遺伝子またはスーパーオキサイド・ディスムターゼ遺伝子のいずれかのプロモーター領域である、請求項3または4に記載する改良プロモーター。
- 請求項3乃至5のいずれかに記載する改良プロモーター、宿主糸状菌の形質転換体の選択に好適なマーカー遺伝子、およびターミネーターを有し、大腸菌で複製可能なDNA領域を有する、糸状菌におけるポリペプチド発現用プラスミド。
- マーカー遺伝子が、糸状菌由来のβ−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子である請求項6に記載するポリペプチド発現用プラスミド。
- ターミネーターが、糸状菌由来のグルコアミラーゼ遺伝子のターミネーターである請求項6または7に記載するポリペプチド発現用プラスミド。
- ポリペプチドをコードするDNAを、請求項3乃至5のいずれかに記載する改良プロモーターとターミネーターとの間に、宿主糸状菌内で発現可能なように有する請求項6乃至8のいずれかに記載するポリペプチド発現用プラスミド。
- 請求項9に記載するポリペプチド発現用プラスミドを糸状菌に導入し、得られた形質転換体を培養する工程を有するポリペプチドの製造法。
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