JP2005048847A - ボールねじ一体型直動案内ユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】コンパクト化および軽量化を図ることのできるボールねじ一体型直動案内ユニットを提供する。
【解決手段】ガイドレール11と平行に配設されたボールねじ軸19の端部を支持する二つの軸受22のうち少なくとも一方の軸受を、単列の3点接触玉軸受または4点接触玉軸受から構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】ガイドレール11と平行に配設されたボールねじ軸19の端部を支持する二つの軸受22のうち少なくとも一方の軸受を、単列の3点接触玉軸受または4点接触玉軸受から構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばロボットの作動アームやXYテーブル等に組み込んで好適に使用できるボールねじ一体型直動案内ユニットに係り、特に、急加減速運転や精密な位置決め精度が要求される用途などでカップリングを介してモータ直結での駆動構造を必要とされるボールねじ一体型直動案内ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
産業用ロボットの作動アームやXYテーブル等に組み込まれて使用されるボールねじ一体型直動案内ユニットとして、従来、下記文献1に記載されたものが知られている。このボールねじ一体型直動案内ユニットは、ガイドレールと、このガイドレールの側面に該レールの長手方向に沿って形成された転動体転動溝と対向する転動体転動溝を側面に有するスライダと、ガイドレールと平行に配設されたボールねじ軸と、このボールねじ軸の外周面に形成された螺旋溝と対向する螺旋溝を内周面に有するボールねじナットとを備え、スライダとボールねじナットとを一体化して構成されている。
【0003】
このようなボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸は、その両端部を二つの軸受によって支承されており、これらの軸受のうちボールねじ軸を軸方向に位置決めする側の固定側軸受としては、通常、二列組合せアンギュラ玉軸受が使用されている。また、ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸端部を支持する二つの軸受のうち、回転時の摩擦熱によるボールねじ軸の軸方向膨張を逃がす側の自由側軸受としては、通常、軸受隙間を持った深溝玉軸受が使用されている。
【0004】
アンギュラ玉軸受は、
(1)深溝玉軸受に比べて一列当りの玉数が多く、荷重負荷能力や剛性が大きい。
(2)深溝玉軸受に比べて保持器形状が強固であり、高速回転が可能である。
(3)単列では一方向のアキシアル荷重しか負荷することができないが、二列以上の組合せとすることによって両方向のアキシアル荷重を負荷することができる。
(4)二列組合せアンギュラ玉軸受の端面間に形成されるギャップg(図25参照)を調整することによって軸受の内部隙間を無くし、予め内部荷重を発生させること(いわゆる定位置予圧)が容易である。
などの特徴を持っているため、種々の産業機械の中でも高剛性や高位置決め精度が要求される産業機械に使用されている。
【0005】
たとえば、工場ライン内の組立工程、搬送工程、検査工程などで使用されるロボットの作動アームやXYテーブル等に組み込んで好適に使用できるボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、特に急加減速を伴う機敏な発進停止運転や検査工程等で精密な位置決め特性が要求される用途などでは、小型サーボモータの最高回転数が5000〜6000min−1程度までの増加が可能となった今日、リジッド構造のカップリング等を介してモータ直結での駆動構造が多く採用されている。
これらの用途では、ボールねじ軸の端部を支える固定側軸受として、定位置予圧された二列組合せアンギュラ玉軸受が通常使用されている。
【0006】
【特許文献1】
実用新案登録公報第2582328号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のような条件下でボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸端部を支持する軸受、特にボールねじ軸を軸方向に位置決めする側の固定側軸受としてアンギュラ玉軸受を使用する場合は、軸方向剛性増加と軸方向の正確な位置決めを行うために、アンギュラ玉軸受に定位置予圧を付与する必要がある。しかし、通常のアンギュラ玉軸受で定位置予圧を付与するためには、アンギュラ玉軸受を二列の組合せとすることが条件となる。この場合、二つのアンギュラ玉軸受が組み込まれる軸受ハウジング内のスペースも単体軸受での使用に対して二倍必要となり、サーボモータやカップリングを含む軸方向のスペース増につながる。最近の産業機械は、上記の例のように省資源化や有効活用等のニーズ、あるいは各モジュール部の設計の多様性の観点から、機械を構成する各部品のコンパクト化、軽量化の要求が強く、アンギュラ玉軸受を二列の組合せで使用することによるスペース増は、この点で当然問題になる。特に、電子部品実装装置の電子部品吸着ヘッド等にボールねじ一体型直動案内ユニットを使用する場合は、出来る限りの省スペース化が不可欠であり、また、1台の機械の中で数ヶ所使用される場合、部品同士の干渉が問題となることが予想される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コンパクト化および軽量化を図ることのできるボールねじ一体型直動案内ユニットを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ガイドレールと、このガイドレールの側面に該レールの長手方向に沿って形成された転動体転動溝と対向する転動体転動溝を側面に有するスライダと、前記ガイドレールと平行に配設されたボールねじ軸と、このボールねじ軸の外周面に形成された螺旋溝と対向する螺旋溝を内周面に有するボールねじナットとを備え、前記スライダと前記ボールねじナットとを一体化してなるボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記ボールねじ軸の両端部を支持する二つの軸受のうち少なくとも一方の軸受を単列の3点接触玉軸受または4点接触玉軸受から構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを12.5°<α≦17.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.54≦R/D≦0.555の範囲内に設定したことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを17.5°<α≦22.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.555<R/D≦0.57の範囲内に設定したことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを22.5°<α≦27.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.57<R/D≦0.59としたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを27.5°<α≦32.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.59<R/D≦0.61の範囲内に設定したことを特徴とする。
【0013】
【作用】
一般産業機械の一部に使用されている多点接触玉軸受は、図23に示されるように、軸受の内部すき間Gが残っている状態で製作され、アキシアル荷重を専用で負荷する用途で使用される場合が多い。例えば、多点接触玉軸受をスクリューコンプレッサ等で使用する場合は、ラジアル荷重負荷用円筒ころ軸受と並列に使用され、スクリューローダ軸に作用するアキシアル荷重のみを受ける構造となっている。また、ジェットエンジンやガスタービン等で多点接触玉軸受を使用する場合は、タービン軸推力のみを負荷し、ラジアル荷重がほとんど負荷しない条件での使用となる。つまり、多点接触玉軸受とは呼びつつも実際の使用条件においては、図24に示されるように、軌道輪30,31に形成された軌道溝34,35と玉32とはそれぞれ一点で接触する標準の玉軸受としての使用がほとんどであった。この理由は、玉と軌道溝とが多点で接触することによって、通常の転がり運動と共に発生するスピン滑り等の滑りが標準アンギュラ玉軸受に比べ、玉と軌道溝との接触部間で極端に増加するためである。このため、運転時の発生トルクも大きく、消費動力も高く、さらに発熱も異常に大きくなり、安定した運転は望めない。
【0014】
このような理由から、多点で常時接触する予圧条件下での使用は極めて少なく、インデックステーブルや旋回輪等、軸受のdmn値(転動体ピッチ円直径dm(mm)と回転数n(min−1)との積)が数万程度の回転数が極めて低い用途に限定されていた。
本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットは、ボールねじ軸の端部を支持する軸受として二列組合せアンギュラ玉軸受の代わりに単列の3点接触または4点接触玉軸受を用いたものであり、位置決め精度(軸方向、半径方向、円周方向)を確保するために、単列軸受でありながら予圧をかけられる構造である。また、必要に応じて予圧による多点接触条件下においても玉と軌道溝との接触部のスピン滑り等を抑制し、軸受の発熱や摩耗を抑え、低トルクで円滑に回転できる構造を採用している。
【0015】
本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットでは、軸方向の取付けスペースが従来の2列組合せアンギュラ玉軸受の約半分で済むため、省スペース化が可能となり、部品間の干渉問題が軽減される。また、内輪取付け分のねじ軸端部寸法が短くなる分を含めた可動部分の軽量化を図れる。
【0016】
本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受は、内外輪に形成された軌道溝が単一の曲率ではなく、二種類の円弧(いわゆるゴシックアーチ)で形成されている4点接触玉軸受(図21参照)、または内外輪軌道溝のいずれか一方が単一溝曲率であり、他方の軌道溝が二種類の円弧で形成されている3点接触玉軸受(図22参照)である。外輪または内輪のいずれか一方は、それぞれ玉32と接触する別々の軌道面を構成する一対の軌道輪別体として構成されている。保持器は一例として、冠型で柔軟性のある形状を採用でき、保持器材質は例えばポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材を用いることができる。本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受は、軸受の負荷容量や剛性を上げるために、図6に示されるように、隣り合う玉32間の円周ピッチを極力小さくし、標準のアンギュラ玉軸受に比べ、玉径を同等サイズかやや小さくし、玉数を多くしている。また、負荷容量を上げる等の必要性が生じた場合、保持器のない総玉設計も可能である。この場合、玉同士が接触して玉表面の摩耗が発生することがあり得るが、表面を窒化処理して表面硬度を高めたDSボール(特願2000−368602号)や窒化ケイ素、ジルコニア等のセラミックからなる玉を用いれば、玉の摩耗は解消できる。また、軌道溝の摩耗対策として、軌道輪の軌道面にNV窒化処理(特願2000−356211号)やリン系被膜処理(特開平9−53641号公報)を施してもよい。さらに、転がり疲労寿命を向上させる方策として、従来の軸受鋼に対して材料内部の不純物濃度を少なくした高清浄度EP鋼(特許第3018355号)を軌道輪材料として用いてもよい。
【0017】
また、防水性や防塵性を向上させて周辺部から軸受内に異物が侵入しないようにするために、必要に応じて軌道輪の両端面に接触または非接触タイプのシールを付属することもでき、シール材料については金属、または芯金に金属を使用したゴム材等のいずれでもよい。従来のアンギュラ玉軸受にシールを装着する場合、軸方向スペースがさらに増加する問題があったが、本発明では小径玉化と保持器の考案により、単列の幅で可能である。また、従来ではアンギュラ玉軸受にシールを装着できないため、軸受端面に対向する部品側にオイルシールを取り付けていたが、本発明のように軸受にシールを装着することで、軸受スペースをさらに小さくことができる。なお、内輪別体構造において、シールを付属した場合は別体となった内輪の分解防止効果も保持できるので、軸受製造の容易性や軸受の組付け時に誤って内輪を直動案内ユニットの軸受板内に落下させ、軌道溝の表面が損傷したり、ゴミ等が軌道溝の表面に付着したりすることを防止できる。また、分解防止の方法としては、別体となった軌道輪にスナップリングを装着する構造を採用してもよい。
【0018】
仮に、高負荷容量や高剛性がさらに必要とされる用途に本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットを使用する場合、内外輪端面の段差を調整した(通称、差幅調整という)本発明品を2列以上並べて使用することで、各列の玉に外部荷重が均一に加わり、負荷容量や剛性に対応することができる。
別体で構成された内輪または外輪の隣り合う端面間には、幾何的に4点または3点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19及び図20参照)が形成されており、標準組合せアンギュラ玉軸受と同様に、軸受ナットや外輪押えで別体に構成された内輪または外輪端部を軸方向に押付け、端面間を密着固定することで、適正な予圧をかけることができる。なお、予圧荷重の調整は軸受製作時の予圧すき間Δaの大小で行う。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施形態に係るボールねじ一体型直動案内ユニットを図1乃至図6に示す。図1において、符号11は幅方向に沿う断面がほぼコ字状に形成されたガイドレール、12はガイドレール11上に移動可能に設けられたスライダ、13はスライダ12をガイドレール11の長手方向に直線駆動するボールねじ、14及び15はガイドレール11の長手方向両端に取り付けられた軸受板であり、ガイドレール11の相対向する左側内側面と右側内側面には、転動体転動溝16(図4参照)がガイドレール11の長手方向に沿って直線状に形成されている。
【0020】
転動体転動溝16はスライダ12の左側側面と右側側面に形成された転動体転動溝17(図4参照)と対向しており、レール側転動体転動溝16とスライダ側転動体転動溝17との間には、転動体である多数のボール18が設けられている。これらのボール18は、スライダ12がガイドレール11の長手方向に移動すると、これに伴って転動体転動溝16,17を転動した後、スライダ12に形成された転動体循環路(図示せず)を転動して循環するようになっている。
【0021】
スライダ12は、図2に示すように、ブロック状のスライダ本体121と、このスライダ本体121の前後方向両端に取り付けられたエンドキャップ122a,122bとからなり、エンドキャップ122a,122bには、ボール18を方向転換させるための方向転換路(図示せず)が形成されている。
ボールねじ13はガイドレール11の中央部にガイドレール11と平行に配設されたボールねじ軸19(図1参照)を備えており、このボールねじ軸19の一端には小型のサーボモータがカップリングを介して直結されるようになっている。また、ボールねじ13はボールねじ軸19の外周面に形成された螺旋溝20(図1参照)と対向する螺旋溝(図示せず)を内周面に有するボールねじナット21と、このボールねじナット21の螺旋溝とボールねじ軸19の螺旋溝20との間に設けられた多数のボール(図示せず)とを備えており、ボールねじナット21はスライダ12と一体化されている。
【0022】
軸受板14,15の内部には、ボールねじ軸19の端部を支持する二つの軸受22(図1及び図3参照)が組み込まれている。これらの軸受22,22のうち少なくとも一方の軸受は、図2に示すように、軸受ハウジング24と、この軸受ハウジング24内に収容された3点接触または4点接触玉軸受(以下「多点接触玉軸受」という)25と、この多点接触玉軸受25を軸受ハウジング24内に固定する外輪押え26及び軸受ナット27等から構成されている。
【0023】
多点接触玉軸受25は、図5に示されるように、外輪30、内輪31、玉32及び保持器33等から構成されており、外輪30の内周面には、外輪軌道溝34が外輪30の円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝34の溝面は、図21の(a)に示されるように、曲率半径がReの二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は外輪軌道溝34と二点で接触するようになっている。
【0024】
一方、内輪31の外周面には内輪軌道溝35が内輪31の円周方向に沿って形成されている。この内輪軌道溝35の溝面は、図21の(b)に示されるように、曲率半径がRiの二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は内輪軌道溝35と二点で接触するようになっている。
内輪31は一対の軌道輪別体となって構成されており、別体となった内輪の隣り合う端面間には、幾何的に4点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19(a)参照)が形成されている。多点接触玉軸受25は、スペーサ28(図2参照)を介して軸受ナット27で内輪端面間を密着固定することによって予圧すき間Δaに応じた適正な予圧が得られる。
【0025】
保持器33は、図6に示されるように、冠形の形状を有しており、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材から形成されている。
このような構成において、玉32の直径をD、外輪軌道溝34の曲率をRe、内輪軌道溝35の曲率Ri、玉32と軌道溝34,35との接触角をαとすると、多点接触玉軸受25は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝34,35の曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=0.54〜0.61、Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0026】
図7に、多点接触玉軸受の第2実施例を示す。同図において、第2実施例に係る多点接触玉軸受は、外輪30、内輪31、玉32を備えており、外輪30の内周面には、外輪軌道溝34が外輪30の円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝34の溝面は、図21の(a)に示されるように、曲率半径がReの二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は外輪軌道溝34と二点で接触するようになっている。
【0027】
一方、内輪31の外周面には内輪軌道溝35が外輪軌道溝34に対向して形成されている。この内輪軌道溝35は、図21の(b)に示されるように、曲率半径がRiの二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は内輪軌道溝35と二点で接触するようになっている。また、内輪31は一対の軌道輪別体となって構成されており、別体となった内輪の隣り合う端面間には、幾何的に4点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19(a)参照)が形成されている。さらに、内輪31は、図7の(a)に示されるように、一対の環状体36と、これら環状体36の端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリング37とから構成されている。
【0028】
スナップリング37は、図7の(b)に示されるように、外径方向に延出する係止環38を外周面の両縁部に有しており、環状体36の内周面には、上記係止環38に係合する係合溝39がそれぞれ形成されている。また、スナップリング37は治具挿入孔40を複数有しており、この治具挿入孔40に治具を差し込むことによって内輪31の組付けや分解作業を容易に行なえるようになっている。
【0029】
このような構成において、玉32の直径をD、外輪軌道溝34の曲率をRe、内輪軌道溝35の曲率をRi、玉32と軌道溝34,35との接触角をαとすると、第2実施例に係る多点接触玉軸受は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝34,35の曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=0.54〜0.61、Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0030】
図8に、ボールねじ軸19の端部を支持する軸受として用いられる多点接触玉軸受の第3実施例を示す。同図において、第3の実施形態に係る多点接触玉軸受は、外輪30、内輪31、玉32を備えており、外輪30の内周面には、外輪軌道溝34が外輪30の円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝34の溝面は曲率半径がReの二つの円弧で形成されており、これにより、玉32は外輪軌道溝34と二点で接触するようになっている。
【0031】
一方、内輪31の外周面には内輪軌道溝35が外輪軌道溝34に対向して形成されている。この内輪軌道溝35は曲率半径がRiの二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は内輪軌道溝35と二点で接触するようになっている。
外輪30は一対の軌道輪別体となって構成されており、別体となった外輪30の隣り合う端面間には、幾何的に4点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19(b)参照)が形成されている。また、外輪30は、図8の(a)に示されるように、一対の環状体41と、これら環状体41の端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリング42とから構成されている。
【0032】
スナップリング42は、図8の(b)に示されるように、内径方向に延出する係止環43を外周面の両縁部に有しており、環状体41の外周面には、上記係止環43に係合する係合溝44がそれぞれ形成されている。
また、スナップリング42は治具挿入孔45を複数有しており、この治具挿入孔45に治具を差し込むことによって外輪30の組付けや分解作業を容易に行なえるようになっている。
【0033】
このような構成において、玉32の直径をD、軌道溝34,35の曲率をRe,Ri、玉32と軌道溝34,35との接触角をαとすると、第3実施例に係る多点接触玉軸受は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝34,35の曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=0.54〜0.61、Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0034】
図9に、多点接触玉軸受の第4実施例を示す。同図において、第4実施例に係る多点接触玉軸受は、外輪30、内輪31、玉32、保持器33を備えており、外輪30の内周面には、外輪軌道溝34が外輪30の円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝34の溝面は、図21の(a)に示されるように、Reの曲率半径を有する二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は外輪軌道溝34と二点で接触するようになっている。
【0035】
一方、内輪31の外周面には内輪軌道溝35が内輪31の円周方向に沿って形成されている。この内輪軌道溝35の溝面は、図21の(b)に示されるように、Riの曲率半径を有する二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は内輪軌道溝35と二点で接触するようになっている。
内輪31は一対の軌道輪別体となって構成されており、別体となった内輪の隣り合う端面間には、幾何的に4点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19(a)参照)が形成されている。
【0036】
図9に示す多点接触玉軸受は、外輪30と内輪31との間に形成された環状間隙をシールする一対の接触型環状シール体46を備えている。これらの環状シール体46は円環状に形成されており、各環状シール体46の外周縁部には、外輪30の内周面に形成されたシール取付け溝47に着脱自在に係合する係合部46aが形成されている。また、環状シール体46は金属からなる芯金46bと、この芯金46bに加硫接着されたゴム材46cとから構成されており、各環状シール体46の内周縁部には、図9の(b)に示されるように、内輪31の外周面に形成されたシール溝48に弾性接触するラビンスシール部46dが形成されている。上述のような構成とすることで、内輪31が2分割された場合は、防水性及び防塵性の向上と共に内輪の分解を防止することができる。
【0037】
このような構成において、玉32の直径をD、外輪軌道溝34の曲率をRe、内輪軌道溝35の曲率Ri、玉32と軌道溝34,35との接触角をαとすると、第4実施例の多点接触玉軸受は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝34,35の曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=0.54〜0.61、Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0038】
図10に、ボールねじ軸19の端部を支持する軸受として用いられる多点接触玉軸受の第5実施例を示す。同図において、第5実施例に係る多点接触玉軸受は、外輪30、内輪31、玉32、保持器33を備えており、外輪30の内周面には、外輪軌道溝34が外輪30の円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝34の溝面は、図21の(a)に示されるように、Reの曲率半径を有する二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は外輪軌道溝34と二点で接触するようになっている。
【0039】
一方、内輪31の外周面には内輪軌道溝35が内輪31の円周方向に沿って形成されている。この内輪軌道溝35の溝面は、図21の(b)に示されるように、Riの曲率半径を有する二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は内輪軌道溝35と二点で接触するようになっている。
内輪31は一対の軌道輪別体となって構成されており、別体となった内輪の隣り合う端面間には、幾何的に4点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19(a)参照)が形成されている。
【0040】
図10の多点接触玉軸受は、外輪30と内輪31との間に形成された環状間隙をシールする一対の非接触型環状シール体49を備えており、これらの環状シール体49は金属薄板を円環状に成形して構成されており、各環状シール体49の外周縁部には、外輪30の内周面に形成されたシール取付け溝50に着脱自在に係合する係合部49aが形成されている。
【0041】
このような構成において、玉32の直径をD、外輪軌道溝34の曲率をRe、内輪軌道溝35の曲率をRi、玉32と軌道溝34,35との接触角をαとすると、第5実施例の多点接触玉軸受は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝34,35の曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=0.54〜0.61、Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0042】
ところで、多点接触玉軸受をボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受として使用する場合、多点接触玉軸受に要求される点は動トルクをある範囲内に抑え、かつスムーズな回転立上り性と回転立下り性を得られる点である。このような要求を満たすために、本発明者らは、種々の組合せ条件についてコンピュータによる解析を行い、その解析結果から表1に示すような仕様の実施例A〜Dを見出した。
【0043】
【表1】
【0044】
表1において、実施例Aは接触角αを12.5°<α≦17.5°とし、かつ玉32の直径Dに対する軌道溝34,35の曲率比(以下、「溝曲率比」という)fi,feを0.54≦fi≦0.555、0.54≦fe≦0.555とした4点接触玉軸受であり、実施例Bは接触角αを17.5°<α≦22.5°とし、かつ溝曲率比fi,feを0.555<fi≦0.57、0.555<fe≦0.57とした4点接触玉軸受である。また、実施例Cは接触角αを22.5°<α≦27.5°とし、かつ溝曲率比fi,feを0.57<fi≦0.59、0.57<fe≦0.59とした4点接触玉軸受であり、実施例Dは接触角αを27.5°<α≦32.5°とし、かつ溝曲率比fi,feを0.59<fi≦0.61、0.59<fe≦0.61とした4点接触玉軸受である。
表1に示した実施例A〜Dと従来例(二列組合せアンギュラ玉軸受(7010A、軸受内径:50mm)の玉径、玉数、玉PCD及び予圧すき間の選定値を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示される従来例E(従来軸受で製造範囲内で最も動トルクが大きくなる条件)及び実施例A〜Dの接触角αをαE=30°、αA=17.5°、αB=22.5°、αC=27.5°、αD=32.5°とし、溝曲率比fe及びfiをfeE=fiE=0.52、feA=fiA=0.54、feB=fiB=0.556、feC=fiC=0.571、feD=fiD=0.591とした場合における動トルクを表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3の結果から、接触角αを17.5°≦α≦32.5°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.54〜0.591とすると、動トルクTrがTr=0.28〜0.282N・mとなり、従来例Eの動トルクと同一かそれより低い値となることがわかる。
次に、実施例A〜Dの接触角αをαA=15°、αB=20°、αC=25°、αD=30°とし、溝曲率比fe及びfiをfeA=fiA=0.55、feB=fiB=0.56、feC=fiC=0.58、feD=fiD=0.60とした場合における動トルクを表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
表4の結果から、接触角αを15°≦α≦30°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.55〜0.60とすると、動トルクTrがTr=0.24〜0.255N・mとなり、表2に示す従来例Eの動トルクより低い値となることがわかる。
次に、従来例E(従来軸受の製造範囲内で最も動トルクが小さくなる条件)及び実施例A〜Dの接触角αをαE=29°、αA=12.6°、αB=17.6°、αC=22.6°、αD=27.6°とし、溝曲率比fe及びfiをfeE=fiE=0.53、feA=fiA=0.555、feB=fiB=0.57、feC=fiC=0.59、feD=fiD=0.61とした場合における動トルクを表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
表5の結果から、接触角αを12.6°≦α≦27.6°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.555〜0.61とすると、動トルクTrがTr=0.215〜0.222N・mとなり、表2に示す従来例Eの動トルク下限値より大きい値となることがわかる。つまり、表1に示す実施例A〜Dを採用することで、従来例の(製造)実績範囲内の動トルク内に抑えることが可能となる。
【0053】
表3〜表5の結果を基に動トルクTrと接触角αおよび溝曲率比fi,feとの関係を三次元的に解析した結果を図11に、また動トルクTrと溝曲率比fi,feとの関係を解析した結果を図12に示す。図11及び図12の結果からも明らかなように、動トルクを抑えるためには、接触角αと溝曲率比fi,feを適正な値で組合せる必要があることがわかる。また、接触角αを12.6°≦α≦27.6°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.555〜0.61とすると、動トルクが小さくなっていくが、動トルクが小さ過ぎると、ボールねじ軸19の回転停止時における減速イナーシャにより、速やかな停止ができず、指示位置に対してオーバーシュートする可能性がある。また、軸受のアキシアル剛性が小さくなり、やはり、オーバーシュートが発生し易くなる。さらに、アキシアル負荷容量も小さくなるので、転がり疲労寿命も短くなる不具合が生じる。このことから、動トルクを従来例のバラツキ範囲内に抑え、スムーズな回転立ち上がり性と回転立下り性を得るためには、接触角αと溝曲率比fe,fiを表1に示す範囲内で組合せる必要があることがわかる。
【0054】
次に、実施例A〜Dの接触角αをαA=15°、αB=20°、αC=25°、αD=30°とし、溝曲率比fe及びfiをfeA=fiA=0.55、feB=fiB=0.56、feC=fiC=0.58、feD=fiD=0.60とした場合における各軸受のPV値を表6に示す。
【0055】
【表6】
【0056】
表6の結果から、接触角αを15°≦α≦30°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.55〜0.60とすることによって、内輪と玉とのPV値PViがPVi=47〜80MPa・m/sになると共に外輪と玉とのPV値PVeがPVe=32〜58MPa・m/sとなり、いずれも従来例のそれより高い値を示すことがわかる。
【0057】
図13は表6の結果を基に内輪PV値と溝曲率比及び接触角との関係を示す図で、図14は同じく表6の結果を基に内輪PV値と溝曲率比との関係を示す図である。また、図15は表6の結果を基に外輪PV値と溝曲率比及び接触角との関係を示す図で、図16は同じく表6の結果を基に外輪PV値と溝曲率比との関係を示す図である。
【0058】
PV値の大小は動トルク、軸受温度上昇以外に接触部の耐摩耗特性にも影響する。急加減速時の不安定な滑り条件での耐摩耗特性を満足させるためには、PV値をより小さくする必要がある。従来例E及び実施例A〜DにおけるPV値をまとめると、表6の通りとなる。動トルク値を一定にした場合、接触角が小さく、かつ溝曲率比の小さいほうがPV値は小さくなる(実施例Aの方)。いずれの仕様も過去の軸受の実績から判断される限界PV値以下であるので、摩耗の問題は極めて少ない。必要とされる寿命要求値及び軸受温度上昇特性に応じ、いずれの実施例を選定してもよい。
【0059】
次に、実施例A〜Dの接触角αをαA=15°、αB=20°、αC=25°、αD=30°とし、溝曲率比fe及びfiをfeA=fiA=0.55、feB=fiB=0.56、feC=fiC=0.58、feD=fiD=0.60とした場合における各軸受のアキシアル変位ad(μm/1000N:1000Nのアキシアル荷重を負荷した時のアキシアル変位を表す)を表7に示す。
【0060】
【表7】
【0061】
表7の結果から、接触角αを15°≦α≦30°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.55〜0.60とすることによって、各軸受のアキシアル変位adがad=4〜14となり、いずれの場合も従来例のアキシアル変位と同一かそれより大きい値を示すことがわかる。
表7の結果から、接触角が大きく、かつ溝曲率比が大きいほう(実施例D)がアキシアル剛性やモーメント剛性は大きくなる。以上のように、前述のPV値の要求も考慮し、必要とされる剛性要求に応じて、いずれの実施例を選定してもよい。
【0062】
次に、表8に示される仕様の試験軸受A〜E(軸受内径:12mm、軸受外径:28mm、玉ピッチ円径:20mm)を使用して、玉軸受の動トルク特性を回転数:10〜5000min−1(5000min−1は軸受のdmn値として10万に相当)、潤滑:グリース(基油粘度;15×10−6m2/s)の条件で試験した結果を図17に、また玉軸受の温度上昇特性を上記と同じ条件で試験した結果を図18に示す。
【0063】
【表8】
【0064】
図17及び図18に示される試験結果から、表8の実施例A〜Dは回転数が5000min−1(ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受として使用した場合に想定される最高回転数領域)のときに、その動トルクと軸受温度上昇(軸受温度−室温)が従来のアンギュラ玉軸受(従来例E)のそれらとほぼ同じ値を示すことがわかる。
【0065】
また、図17に示される試験結果から、表8の実施例A〜Dは回転数が低速域から高速域に移行したときに、その動トルクの変化が従来例Eに比べて小さいことがわかる。したがって、表8の実施例A〜Dでは急加減速したときの動トルク変動によるイナーシャ変動を抑えることができ、その結果、ボールねじ軸が急停止したときのオーバーシュート等をより効果的に防止することができる。
以上のことから、本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットは、ボールねじ軸の端部を支持する軸受として単列の多点接触玉軸受を採用したことにより、アンギュラ玉軸受と同等レベル若しくはそれ以上の動トルク特性と温度上昇特性を保持しつつ省スペース化を得ることができる。
【0066】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。たとえば、上述した実施形態ではボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸端部を支持する軸受として4点接触玉軸受を用いた場合を例示したが、ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸端部を支持する軸受として3点接触玉軸受を用いてもよい(図20及び図22参照)。また、数十〜数百回転程度の低速で、省スペースを要求される用途では、特に接触角や溝曲率を限定しない仕様でもよい。さらに、上述した実施形態ではガイドレール11の幅方向の断面をほぼコ字状に形成し、その相対向する内側面にレール側転動体転動溝16を形成したが、幅方向の断面がほぼ凸状に形成されたガイドレールを用い、このガイドレールの左側外側面と右側外側面にレール側転動体転動溝を形成してもよい。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るボールねじ一体側直動案内ユニットによれば、ボールねじ軸の端部を支持する軸受として、2列組合せアンギュラ玉軸受と同等の機能を単列多点接触玉軸受で置き換えることが可能となる。これにより、省資源化を促進し、従来のものに比べて取付けスペースが半減するので、機械の省スペース化による構造設計の多様性確保や構造簡素化によるコストダウンを図れるとともに、可動部の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るボールねじ一体型直動案内ユニットの斜視図である。
【図2】図1に示すボールねじ一体型直動案内ユニットの側面図である。
【図3】図1に示すボールねじ一体型直動案内ユニットの背面図である。
【図4】図1に示すボールねじ一体型直動案内ユニットの横断面図である。
【図5】ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受と用いられる多点接触玉軸受の断面図である。
【図6】図5に示す保持器の一部を示す斜視図である。
【図7】ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受と用いられる多点接触玉軸受の第2実施例を示す図である。
【図8】ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受と用いられる多点接触玉軸受の第3実施例を示す図である。
【図9】ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受と用いられる多点接触玉軸受の第4実施例を示す図である。
【図10】ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受と用いられる多点接触玉軸受の第5実施例を示す図である。
【図11】表3〜表5の結果を基に動トルクと接触角及び溝曲率比との関係を三次元的に示す図である。
【図12】表3〜表5の結果を基に動トルクと溝曲率比との関係を示す線図である。
【図13】表6の結果を基に内輪PV値と接触角と溝曲率比との関係を三次元的に示す図である。
【図14】表6の結果を基に内輪PV値と溝曲率比との関係を示す線図である。
【図15】表6の結果を基に外輪PV値と接触角と溝曲率比との関係を三次元的に示す図である。
【図16】表6の結果を基に外輪PV値と溝曲率比との関係を示す線図である。
【図17】玉軸受の動トルクと回転数との関係を示す図である。
【図18】玉軸受の軸受温度上昇(軸受温度−室温)と回転数との関係を示す図である。
【図19】4点接触玉軸受の断面図である。
【図20】3点接触玉軸受の断面図である。
【図21】4点接触玉軸受の軌道輪に形成される軌道溝の断面形状を示す図である。
【図22】3点接触玉軸受の軌道輪に形成される軌道溝の断面形状を示す図である。
【図23】4点接触玉軸受の断面図である。
【図24】2点接触玉軸受の断面図である。
【図25】2列組合せアンギュラ玉軸受の断面図である。
【符号の説明】
11 ガイドレール
12 スライダ
13 ボールねじ
14,15 軸受板
16,17 転動体転動溝
18 ボール
121 スライダ本体
122a,122b エンドキャップ
19 ボールねじ軸
20 螺旋溝
21 ボールねじナット
22 軸受
24 軸受ハウジング
25 3点接触または4点接触玉軸受
26 外輪押え
27 軸受ナット
28 スペーサ
30 外輪
31 内輪
32 玉
33 保持器
34 外輪側軌道溝
35 内輪側軌道溝
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばロボットの作動アームやXYテーブル等に組み込んで好適に使用できるボールねじ一体型直動案内ユニットに係り、特に、急加減速運転や精密な位置決め精度が要求される用途などでカップリングを介してモータ直結での駆動構造を必要とされるボールねじ一体型直動案内ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
産業用ロボットの作動アームやXYテーブル等に組み込まれて使用されるボールねじ一体型直動案内ユニットとして、従来、下記文献1に記載されたものが知られている。このボールねじ一体型直動案内ユニットは、ガイドレールと、このガイドレールの側面に該レールの長手方向に沿って形成された転動体転動溝と対向する転動体転動溝を側面に有するスライダと、ガイドレールと平行に配設されたボールねじ軸と、このボールねじ軸の外周面に形成された螺旋溝と対向する螺旋溝を内周面に有するボールねじナットとを備え、スライダとボールねじナットとを一体化して構成されている。
【0003】
このようなボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸は、その両端部を二つの軸受によって支承されており、これらの軸受のうちボールねじ軸を軸方向に位置決めする側の固定側軸受としては、通常、二列組合せアンギュラ玉軸受が使用されている。また、ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸端部を支持する二つの軸受のうち、回転時の摩擦熱によるボールねじ軸の軸方向膨張を逃がす側の自由側軸受としては、通常、軸受隙間を持った深溝玉軸受が使用されている。
【0004】
アンギュラ玉軸受は、
(1)深溝玉軸受に比べて一列当りの玉数が多く、荷重負荷能力や剛性が大きい。
(2)深溝玉軸受に比べて保持器形状が強固であり、高速回転が可能である。
(3)単列では一方向のアキシアル荷重しか負荷することができないが、二列以上の組合せとすることによって両方向のアキシアル荷重を負荷することができる。
(4)二列組合せアンギュラ玉軸受の端面間に形成されるギャップg(図25参照)を調整することによって軸受の内部隙間を無くし、予め内部荷重を発生させること(いわゆる定位置予圧)が容易である。
などの特徴を持っているため、種々の産業機械の中でも高剛性や高位置決め精度が要求される産業機械に使用されている。
【0005】
たとえば、工場ライン内の組立工程、搬送工程、検査工程などで使用されるロボットの作動アームやXYテーブル等に組み込んで好適に使用できるボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、特に急加減速を伴う機敏な発進停止運転や検査工程等で精密な位置決め特性が要求される用途などでは、小型サーボモータの最高回転数が5000〜6000min−1程度までの増加が可能となった今日、リジッド構造のカップリング等を介してモータ直結での駆動構造が多く採用されている。
これらの用途では、ボールねじ軸の端部を支える固定側軸受として、定位置予圧された二列組合せアンギュラ玉軸受が通常使用されている。
【0006】
【特許文献1】
実用新案登録公報第2582328号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のような条件下でボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸端部を支持する軸受、特にボールねじ軸を軸方向に位置決めする側の固定側軸受としてアンギュラ玉軸受を使用する場合は、軸方向剛性増加と軸方向の正確な位置決めを行うために、アンギュラ玉軸受に定位置予圧を付与する必要がある。しかし、通常のアンギュラ玉軸受で定位置予圧を付与するためには、アンギュラ玉軸受を二列の組合せとすることが条件となる。この場合、二つのアンギュラ玉軸受が組み込まれる軸受ハウジング内のスペースも単体軸受での使用に対して二倍必要となり、サーボモータやカップリングを含む軸方向のスペース増につながる。最近の産業機械は、上記の例のように省資源化や有効活用等のニーズ、あるいは各モジュール部の設計の多様性の観点から、機械を構成する各部品のコンパクト化、軽量化の要求が強く、アンギュラ玉軸受を二列の組合せで使用することによるスペース増は、この点で当然問題になる。特に、電子部品実装装置の電子部品吸着ヘッド等にボールねじ一体型直動案内ユニットを使用する場合は、出来る限りの省スペース化が不可欠であり、また、1台の機械の中で数ヶ所使用される場合、部品同士の干渉が問題となることが予想される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コンパクト化および軽量化を図ることのできるボールねじ一体型直動案内ユニットを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ガイドレールと、このガイドレールの側面に該レールの長手方向に沿って形成された転動体転動溝と対向する転動体転動溝を側面に有するスライダと、前記ガイドレールと平行に配設されたボールねじ軸と、このボールねじ軸の外周面に形成された螺旋溝と対向する螺旋溝を内周面に有するボールねじナットとを備え、前記スライダと前記ボールねじナットとを一体化してなるボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記ボールねじ軸の両端部を支持する二つの軸受のうち少なくとも一方の軸受を単列の3点接触玉軸受または4点接触玉軸受から構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを12.5°<α≦17.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.54≦R/D≦0.555の範囲内に設定したことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを17.5°<α≦22.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.555<R/D≦0.57の範囲内に設定したことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを22.5°<α≦27.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.57<R/D≦0.59としたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを27.5°<α≦32.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.59<R/D≦0.61の範囲内に設定したことを特徴とする。
【0013】
【作用】
一般産業機械の一部に使用されている多点接触玉軸受は、図23に示されるように、軸受の内部すき間Gが残っている状態で製作され、アキシアル荷重を専用で負荷する用途で使用される場合が多い。例えば、多点接触玉軸受をスクリューコンプレッサ等で使用する場合は、ラジアル荷重負荷用円筒ころ軸受と並列に使用され、スクリューローダ軸に作用するアキシアル荷重のみを受ける構造となっている。また、ジェットエンジンやガスタービン等で多点接触玉軸受を使用する場合は、タービン軸推力のみを負荷し、ラジアル荷重がほとんど負荷しない条件での使用となる。つまり、多点接触玉軸受とは呼びつつも実際の使用条件においては、図24に示されるように、軌道輪30,31に形成された軌道溝34,35と玉32とはそれぞれ一点で接触する標準の玉軸受としての使用がほとんどであった。この理由は、玉と軌道溝とが多点で接触することによって、通常の転がり運動と共に発生するスピン滑り等の滑りが標準アンギュラ玉軸受に比べ、玉と軌道溝との接触部間で極端に増加するためである。このため、運転時の発生トルクも大きく、消費動力も高く、さらに発熱も異常に大きくなり、安定した運転は望めない。
【0014】
このような理由から、多点で常時接触する予圧条件下での使用は極めて少なく、インデックステーブルや旋回輪等、軸受のdmn値(転動体ピッチ円直径dm(mm)と回転数n(min−1)との積)が数万程度の回転数が極めて低い用途に限定されていた。
本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットは、ボールねじ軸の端部を支持する軸受として二列組合せアンギュラ玉軸受の代わりに単列の3点接触または4点接触玉軸受を用いたものであり、位置決め精度(軸方向、半径方向、円周方向)を確保するために、単列軸受でありながら予圧をかけられる構造である。また、必要に応じて予圧による多点接触条件下においても玉と軌道溝との接触部のスピン滑り等を抑制し、軸受の発熱や摩耗を抑え、低トルクで円滑に回転できる構造を採用している。
【0015】
本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットでは、軸方向の取付けスペースが従来の2列組合せアンギュラ玉軸受の約半分で済むため、省スペース化が可能となり、部品間の干渉問題が軽減される。また、内輪取付け分のねじ軸端部寸法が短くなる分を含めた可動部分の軽量化を図れる。
【0016】
本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受は、内外輪に形成された軌道溝が単一の曲率ではなく、二種類の円弧(いわゆるゴシックアーチ)で形成されている4点接触玉軸受(図21参照)、または内外輪軌道溝のいずれか一方が単一溝曲率であり、他方の軌道溝が二種類の円弧で形成されている3点接触玉軸受(図22参照)である。外輪または内輪のいずれか一方は、それぞれ玉32と接触する別々の軌道面を構成する一対の軌道輪別体として構成されている。保持器は一例として、冠型で柔軟性のある形状を採用でき、保持器材質は例えばポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材を用いることができる。本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受は、軸受の負荷容量や剛性を上げるために、図6に示されるように、隣り合う玉32間の円周ピッチを極力小さくし、標準のアンギュラ玉軸受に比べ、玉径を同等サイズかやや小さくし、玉数を多くしている。また、負荷容量を上げる等の必要性が生じた場合、保持器のない総玉設計も可能である。この場合、玉同士が接触して玉表面の摩耗が発生することがあり得るが、表面を窒化処理して表面硬度を高めたDSボール(特願2000−368602号)や窒化ケイ素、ジルコニア等のセラミックからなる玉を用いれば、玉の摩耗は解消できる。また、軌道溝の摩耗対策として、軌道輪の軌道面にNV窒化処理(特願2000−356211号)やリン系被膜処理(特開平9−53641号公報)を施してもよい。さらに、転がり疲労寿命を向上させる方策として、従来の軸受鋼に対して材料内部の不純物濃度を少なくした高清浄度EP鋼(特許第3018355号)を軌道輪材料として用いてもよい。
【0017】
また、防水性や防塵性を向上させて周辺部から軸受内に異物が侵入しないようにするために、必要に応じて軌道輪の両端面に接触または非接触タイプのシールを付属することもでき、シール材料については金属、または芯金に金属を使用したゴム材等のいずれでもよい。従来のアンギュラ玉軸受にシールを装着する場合、軸方向スペースがさらに増加する問題があったが、本発明では小径玉化と保持器の考案により、単列の幅で可能である。また、従来ではアンギュラ玉軸受にシールを装着できないため、軸受端面に対向する部品側にオイルシールを取り付けていたが、本発明のように軸受にシールを装着することで、軸受スペースをさらに小さくことができる。なお、内輪別体構造において、シールを付属した場合は別体となった内輪の分解防止効果も保持できるので、軸受製造の容易性や軸受の組付け時に誤って内輪を直動案内ユニットの軸受板内に落下させ、軌道溝の表面が損傷したり、ゴミ等が軌道溝の表面に付着したりすることを防止できる。また、分解防止の方法としては、別体となった軌道輪にスナップリングを装着する構造を採用してもよい。
【0018】
仮に、高負荷容量や高剛性がさらに必要とされる用途に本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットを使用する場合、内外輪端面の段差を調整した(通称、差幅調整という)本発明品を2列以上並べて使用することで、各列の玉に外部荷重が均一に加わり、負荷容量や剛性に対応することができる。
別体で構成された内輪または外輪の隣り合う端面間には、幾何的に4点または3点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19及び図20参照)が形成されており、標準組合せアンギュラ玉軸受と同様に、軸受ナットや外輪押えで別体に構成された内輪または外輪端部を軸方向に押付け、端面間を密着固定することで、適正な予圧をかけることができる。なお、予圧荷重の調整は軸受製作時の予圧すき間Δaの大小で行う。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施形態に係るボールねじ一体型直動案内ユニットを図1乃至図6に示す。図1において、符号11は幅方向に沿う断面がほぼコ字状に形成されたガイドレール、12はガイドレール11上に移動可能に設けられたスライダ、13はスライダ12をガイドレール11の長手方向に直線駆動するボールねじ、14及び15はガイドレール11の長手方向両端に取り付けられた軸受板であり、ガイドレール11の相対向する左側内側面と右側内側面には、転動体転動溝16(図4参照)がガイドレール11の長手方向に沿って直線状に形成されている。
【0020】
転動体転動溝16はスライダ12の左側側面と右側側面に形成された転動体転動溝17(図4参照)と対向しており、レール側転動体転動溝16とスライダ側転動体転動溝17との間には、転動体である多数のボール18が設けられている。これらのボール18は、スライダ12がガイドレール11の長手方向に移動すると、これに伴って転動体転動溝16,17を転動した後、スライダ12に形成された転動体循環路(図示せず)を転動して循環するようになっている。
【0021】
スライダ12は、図2に示すように、ブロック状のスライダ本体121と、このスライダ本体121の前後方向両端に取り付けられたエンドキャップ122a,122bとからなり、エンドキャップ122a,122bには、ボール18を方向転換させるための方向転換路(図示せず)が形成されている。
ボールねじ13はガイドレール11の中央部にガイドレール11と平行に配設されたボールねじ軸19(図1参照)を備えており、このボールねじ軸19の一端には小型のサーボモータがカップリングを介して直結されるようになっている。また、ボールねじ13はボールねじ軸19の外周面に形成された螺旋溝20(図1参照)と対向する螺旋溝(図示せず)を内周面に有するボールねじナット21と、このボールねじナット21の螺旋溝とボールねじ軸19の螺旋溝20との間に設けられた多数のボール(図示せず)とを備えており、ボールねじナット21はスライダ12と一体化されている。
【0022】
軸受板14,15の内部には、ボールねじ軸19の端部を支持する二つの軸受22(図1及び図3参照)が組み込まれている。これらの軸受22,22のうち少なくとも一方の軸受は、図2に示すように、軸受ハウジング24と、この軸受ハウジング24内に収容された3点接触または4点接触玉軸受(以下「多点接触玉軸受」という)25と、この多点接触玉軸受25を軸受ハウジング24内に固定する外輪押え26及び軸受ナット27等から構成されている。
【0023】
多点接触玉軸受25は、図5に示されるように、外輪30、内輪31、玉32及び保持器33等から構成されており、外輪30の内周面には、外輪軌道溝34が外輪30の円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝34の溝面は、図21の(a)に示されるように、曲率半径がReの二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は外輪軌道溝34と二点で接触するようになっている。
【0024】
一方、内輪31の外周面には内輪軌道溝35が内輪31の円周方向に沿って形成されている。この内輪軌道溝35の溝面は、図21の(b)に示されるように、曲率半径がRiの二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は内輪軌道溝35と二点で接触するようになっている。
内輪31は一対の軌道輪別体となって構成されており、別体となった内輪の隣り合う端面間には、幾何的に4点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19(a)参照)が形成されている。多点接触玉軸受25は、スペーサ28(図2参照)を介して軸受ナット27で内輪端面間を密着固定することによって予圧すき間Δaに応じた適正な予圧が得られる。
【0025】
保持器33は、図6に示されるように、冠形の形状を有しており、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材から形成されている。
このような構成において、玉32の直径をD、外輪軌道溝34の曲率をRe、内輪軌道溝35の曲率Ri、玉32と軌道溝34,35との接触角をαとすると、多点接触玉軸受25は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝34,35の曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=0.54〜0.61、Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0026】
図7に、多点接触玉軸受の第2実施例を示す。同図において、第2実施例に係る多点接触玉軸受は、外輪30、内輪31、玉32を備えており、外輪30の内周面には、外輪軌道溝34が外輪30の円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝34の溝面は、図21の(a)に示されるように、曲率半径がReの二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は外輪軌道溝34と二点で接触するようになっている。
【0027】
一方、内輪31の外周面には内輪軌道溝35が外輪軌道溝34に対向して形成されている。この内輪軌道溝35は、図21の(b)に示されるように、曲率半径がRiの二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は内輪軌道溝35と二点で接触するようになっている。また、内輪31は一対の軌道輪別体となって構成されており、別体となった内輪の隣り合う端面間には、幾何的に4点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19(a)参照)が形成されている。さらに、内輪31は、図7の(a)に示されるように、一対の環状体36と、これら環状体36の端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリング37とから構成されている。
【0028】
スナップリング37は、図7の(b)に示されるように、外径方向に延出する係止環38を外周面の両縁部に有しており、環状体36の内周面には、上記係止環38に係合する係合溝39がそれぞれ形成されている。また、スナップリング37は治具挿入孔40を複数有しており、この治具挿入孔40に治具を差し込むことによって内輪31の組付けや分解作業を容易に行なえるようになっている。
【0029】
このような構成において、玉32の直径をD、外輪軌道溝34の曲率をRe、内輪軌道溝35の曲率をRi、玉32と軌道溝34,35との接触角をαとすると、第2実施例に係る多点接触玉軸受は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝34,35の曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=0.54〜0.61、Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0030】
図8に、ボールねじ軸19の端部を支持する軸受として用いられる多点接触玉軸受の第3実施例を示す。同図において、第3の実施形態に係る多点接触玉軸受は、外輪30、内輪31、玉32を備えており、外輪30の内周面には、外輪軌道溝34が外輪30の円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝34の溝面は曲率半径がReの二つの円弧で形成されており、これにより、玉32は外輪軌道溝34と二点で接触するようになっている。
【0031】
一方、内輪31の外周面には内輪軌道溝35が外輪軌道溝34に対向して形成されている。この内輪軌道溝35は曲率半径がRiの二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は内輪軌道溝35と二点で接触するようになっている。
外輪30は一対の軌道輪別体となって構成されており、別体となった外輪30の隣り合う端面間には、幾何的に4点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19(b)参照)が形成されている。また、外輪30は、図8の(a)に示されるように、一対の環状体41と、これら環状体41の端面同士を突き合わせた状態に保持するスナップリング42とから構成されている。
【0032】
スナップリング42は、図8の(b)に示されるように、内径方向に延出する係止環43を外周面の両縁部に有しており、環状体41の外周面には、上記係止環43に係合する係合溝44がそれぞれ形成されている。
また、スナップリング42は治具挿入孔45を複数有しており、この治具挿入孔45に治具を差し込むことによって外輪30の組付けや分解作業を容易に行なえるようになっている。
【0033】
このような構成において、玉32の直径をD、軌道溝34,35の曲率をRe,Ri、玉32と軌道溝34,35との接触角をαとすると、第3実施例に係る多点接触玉軸受は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝34,35の曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=0.54〜0.61、Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0034】
図9に、多点接触玉軸受の第4実施例を示す。同図において、第4実施例に係る多点接触玉軸受は、外輪30、内輪31、玉32、保持器33を備えており、外輪30の内周面には、外輪軌道溝34が外輪30の円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝34の溝面は、図21の(a)に示されるように、Reの曲率半径を有する二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は外輪軌道溝34と二点で接触するようになっている。
【0035】
一方、内輪31の外周面には内輪軌道溝35が内輪31の円周方向に沿って形成されている。この内輪軌道溝35の溝面は、図21の(b)に示されるように、Riの曲率半径を有する二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は内輪軌道溝35と二点で接触するようになっている。
内輪31は一対の軌道輪別体となって構成されており、別体となった内輪の隣り合う端面間には、幾何的に4点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19(a)参照)が形成されている。
【0036】
図9に示す多点接触玉軸受は、外輪30と内輪31との間に形成された環状間隙をシールする一対の接触型環状シール体46を備えている。これらの環状シール体46は円環状に形成されており、各環状シール体46の外周縁部には、外輪30の内周面に形成されたシール取付け溝47に着脱自在に係合する係合部46aが形成されている。また、環状シール体46は金属からなる芯金46bと、この芯金46bに加硫接着されたゴム材46cとから構成されており、各環状シール体46の内周縁部には、図9の(b)に示されるように、内輪31の外周面に形成されたシール溝48に弾性接触するラビンスシール部46dが形成されている。上述のような構成とすることで、内輪31が2分割された場合は、防水性及び防塵性の向上と共に内輪の分解を防止することができる。
【0037】
このような構成において、玉32の直径をD、外輪軌道溝34の曲率をRe、内輪軌道溝35の曲率Ri、玉32と軌道溝34,35との接触角をαとすると、第4実施例の多点接触玉軸受は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝34,35の曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=0.54〜0.61、Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0038】
図10に、ボールねじ軸19の端部を支持する軸受として用いられる多点接触玉軸受の第5実施例を示す。同図において、第5実施例に係る多点接触玉軸受は、外輪30、内輪31、玉32、保持器33を備えており、外輪30の内周面には、外輪軌道溝34が外輪30の円周方向に沿って形成されている。この外輪軌道溝34の溝面は、図21の(a)に示されるように、Reの曲率半径を有する二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は外輪軌道溝34と二点で接触するようになっている。
【0039】
一方、内輪31の外周面には内輪軌道溝35が内輪31の円周方向に沿って形成されている。この内輪軌道溝35の溝面は、図21の(b)に示されるように、Riの曲率半径を有する二つの円弧でゴシックアーチ状に形成されており、これにより、玉32は内輪軌道溝35と二点で接触するようになっている。
内輪31は一対の軌道輪別体となって構成されており、別体となった内輪の隣り合う端面間には、幾何的に4点接触した状態(軸受接触角α)で適度な予圧すき間Δa(図19(a)参照)が形成されている。
【0040】
図10の多点接触玉軸受は、外輪30と内輪31との間に形成された環状間隙をシールする一対の非接触型環状シール体49を備えており、これらの環状シール体49は金属薄板を円環状に成形して構成されており、各環状シール体49の外周縁部には、外輪30の内周面に形成されたシール取付け溝50に着脱自在に係合する係合部49aが形成されている。
【0041】
このような構成において、玉32の直径をD、外輪軌道溝34の曲率をRe、内輪軌道溝35の曲率をRi、玉32と軌道溝34,35との接触角をαとすると、第5実施例の多点接触玉軸受は、接触角αが12.5°<α≦32.5°の範囲内にあり、かつ玉の直径に対する軌道溝34,35の曲率比Re/D,Ri/DがRe/D=0.54〜0.61、Ri/D=0.54〜0.61の範囲内にある。
【0042】
ところで、多点接触玉軸受をボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受として使用する場合、多点接触玉軸受に要求される点は動トルクをある範囲内に抑え、かつスムーズな回転立上り性と回転立下り性を得られる点である。このような要求を満たすために、本発明者らは、種々の組合せ条件についてコンピュータによる解析を行い、その解析結果から表1に示すような仕様の実施例A〜Dを見出した。
【0043】
【表1】
【0044】
表1において、実施例Aは接触角αを12.5°<α≦17.5°とし、かつ玉32の直径Dに対する軌道溝34,35の曲率比(以下、「溝曲率比」という)fi,feを0.54≦fi≦0.555、0.54≦fe≦0.555とした4点接触玉軸受であり、実施例Bは接触角αを17.5°<α≦22.5°とし、かつ溝曲率比fi,feを0.555<fi≦0.57、0.555<fe≦0.57とした4点接触玉軸受である。また、実施例Cは接触角αを22.5°<α≦27.5°とし、かつ溝曲率比fi,feを0.57<fi≦0.59、0.57<fe≦0.59とした4点接触玉軸受であり、実施例Dは接触角αを27.5°<α≦32.5°とし、かつ溝曲率比fi,feを0.59<fi≦0.61、0.59<fe≦0.61とした4点接触玉軸受である。
表1に示した実施例A〜Dと従来例(二列組合せアンギュラ玉軸受(7010A、軸受内径:50mm)の玉径、玉数、玉PCD及び予圧すき間の選定値を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示される従来例E(従来軸受で製造範囲内で最も動トルクが大きくなる条件)及び実施例A〜Dの接触角αをαE=30°、αA=17.5°、αB=22.5°、αC=27.5°、αD=32.5°とし、溝曲率比fe及びfiをfeE=fiE=0.52、feA=fiA=0.54、feB=fiB=0.556、feC=fiC=0.571、feD=fiD=0.591とした場合における動トルクを表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3の結果から、接触角αを17.5°≦α≦32.5°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.54〜0.591とすると、動トルクTrがTr=0.28〜0.282N・mとなり、従来例Eの動トルクと同一かそれより低い値となることがわかる。
次に、実施例A〜Dの接触角αをαA=15°、αB=20°、αC=25°、αD=30°とし、溝曲率比fe及びfiをfeA=fiA=0.55、feB=fiB=0.56、feC=fiC=0.58、feD=fiD=0.60とした場合における動トルクを表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
表4の結果から、接触角αを15°≦α≦30°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.55〜0.60とすると、動トルクTrがTr=0.24〜0.255N・mとなり、表2に示す従来例Eの動トルクより低い値となることがわかる。
次に、従来例E(従来軸受の製造範囲内で最も動トルクが小さくなる条件)及び実施例A〜Dの接触角αをαE=29°、αA=12.6°、αB=17.6°、αC=22.6°、αD=27.6°とし、溝曲率比fe及びfiをfeE=fiE=0.53、feA=fiA=0.555、feB=fiB=0.57、feC=fiC=0.59、feD=fiD=0.61とした場合における動トルクを表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
表5の結果から、接触角αを12.6°≦α≦27.6°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.555〜0.61とすると、動トルクTrがTr=0.215〜0.222N・mとなり、表2に示す従来例Eの動トルク下限値より大きい値となることがわかる。つまり、表1に示す実施例A〜Dを採用することで、従来例の(製造)実績範囲内の動トルク内に抑えることが可能となる。
【0053】
表3〜表5の結果を基に動トルクTrと接触角αおよび溝曲率比fi,feとの関係を三次元的に解析した結果を図11に、また動トルクTrと溝曲率比fi,feとの関係を解析した結果を図12に示す。図11及び図12の結果からも明らかなように、動トルクを抑えるためには、接触角αと溝曲率比fi,feを適正な値で組合せる必要があることがわかる。また、接触角αを12.6°≦α≦27.6°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.555〜0.61とすると、動トルクが小さくなっていくが、動トルクが小さ過ぎると、ボールねじ軸19の回転停止時における減速イナーシャにより、速やかな停止ができず、指示位置に対してオーバーシュートする可能性がある。また、軸受のアキシアル剛性が小さくなり、やはり、オーバーシュートが発生し易くなる。さらに、アキシアル負荷容量も小さくなるので、転がり疲労寿命も短くなる不具合が生じる。このことから、動トルクを従来例のバラツキ範囲内に抑え、スムーズな回転立ち上がり性と回転立下り性を得るためには、接触角αと溝曲率比fe,fiを表1に示す範囲内で組合せる必要があることがわかる。
【0054】
次に、実施例A〜Dの接触角αをαA=15°、αB=20°、αC=25°、αD=30°とし、溝曲率比fe及びfiをfeA=fiA=0.55、feB=fiB=0.56、feC=fiC=0.58、feD=fiD=0.60とした場合における各軸受のPV値を表6に示す。
【0055】
【表6】
【0056】
表6の結果から、接触角αを15°≦α≦30°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.55〜0.60とすることによって、内輪と玉とのPV値PViがPVi=47〜80MPa・m/sになると共に外輪と玉とのPV値PVeがPVe=32〜58MPa・m/sとなり、いずれも従来例のそれより高い値を示すことがわかる。
【0057】
図13は表6の結果を基に内輪PV値と溝曲率比及び接触角との関係を示す図で、図14は同じく表6の結果を基に内輪PV値と溝曲率比との関係を示す図である。また、図15は表6の結果を基に外輪PV値と溝曲率比及び接触角との関係を示す図で、図16は同じく表6の結果を基に外輪PV値と溝曲率比との関係を示す図である。
【0058】
PV値の大小は動トルク、軸受温度上昇以外に接触部の耐摩耗特性にも影響する。急加減速時の不安定な滑り条件での耐摩耗特性を満足させるためには、PV値をより小さくする必要がある。従来例E及び実施例A〜DにおけるPV値をまとめると、表6の通りとなる。動トルク値を一定にした場合、接触角が小さく、かつ溝曲率比の小さいほうがPV値は小さくなる(実施例Aの方)。いずれの仕様も過去の軸受の実績から判断される限界PV値以下であるので、摩耗の問題は極めて少ない。必要とされる寿命要求値及び軸受温度上昇特性に応じ、いずれの実施例を選定してもよい。
【0059】
次に、実施例A〜Dの接触角αをαA=15°、αB=20°、αC=25°、αD=30°とし、溝曲率比fe及びfiをfeA=fiA=0.55、feB=fiB=0.56、feC=fiC=0.58、feD=fiD=0.60とした場合における各軸受のアキシアル変位ad(μm/1000N:1000Nのアキシアル荷重を負荷した時のアキシアル変位を表す)を表7に示す。
【0060】
【表7】
【0061】
表7の結果から、接触角αを15°≦α≦30°とし、溝曲率比fe,fiをfe=fi=0.55〜0.60とすることによって、各軸受のアキシアル変位adがad=4〜14となり、いずれの場合も従来例のアキシアル変位と同一かそれより大きい値を示すことがわかる。
表7の結果から、接触角が大きく、かつ溝曲率比が大きいほう(実施例D)がアキシアル剛性やモーメント剛性は大きくなる。以上のように、前述のPV値の要求も考慮し、必要とされる剛性要求に応じて、いずれの実施例を選定してもよい。
【0062】
次に、表8に示される仕様の試験軸受A〜E(軸受内径:12mm、軸受外径:28mm、玉ピッチ円径:20mm)を使用して、玉軸受の動トルク特性を回転数:10〜5000min−1(5000min−1は軸受のdmn値として10万に相当)、潤滑:グリース(基油粘度;15×10−6m2/s)の条件で試験した結果を図17に、また玉軸受の温度上昇特性を上記と同じ条件で試験した結果を図18に示す。
【0063】
【表8】
【0064】
図17及び図18に示される試験結果から、表8の実施例A〜Dは回転数が5000min−1(ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受として使用した場合に想定される最高回転数領域)のときに、その動トルクと軸受温度上昇(軸受温度−室温)が従来のアンギュラ玉軸受(従来例E)のそれらとほぼ同じ値を示すことがわかる。
【0065】
また、図17に示される試験結果から、表8の実施例A〜Dは回転数が低速域から高速域に移行したときに、その動トルクの変化が従来例Eに比べて小さいことがわかる。したがって、表8の実施例A〜Dでは急加減速したときの動トルク変動によるイナーシャ変動を抑えることができ、その結果、ボールねじ軸が急停止したときのオーバーシュート等をより効果的に防止することができる。
以上のことから、本発明に係るボールねじ一体型直動案内ユニットは、ボールねじ軸の端部を支持する軸受として単列の多点接触玉軸受を採用したことにより、アンギュラ玉軸受と同等レベル若しくはそれ以上の動トルク特性と温度上昇特性を保持しつつ省スペース化を得ることができる。
【0066】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。たとえば、上述した実施形態ではボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸端部を支持する軸受として4点接触玉軸受を用いた場合を例示したが、ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸端部を支持する軸受として3点接触玉軸受を用いてもよい(図20及び図22参照)。また、数十〜数百回転程度の低速で、省スペースを要求される用途では、特に接触角や溝曲率を限定しない仕様でもよい。さらに、上述した実施形態ではガイドレール11の幅方向の断面をほぼコ字状に形成し、その相対向する内側面にレール側転動体転動溝16を形成したが、幅方向の断面がほぼ凸状に形成されたガイドレールを用い、このガイドレールの左側外側面と右側外側面にレール側転動体転動溝を形成してもよい。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るボールねじ一体側直動案内ユニットによれば、ボールねじ軸の端部を支持する軸受として、2列組合せアンギュラ玉軸受と同等の機能を単列多点接触玉軸受で置き換えることが可能となる。これにより、省資源化を促進し、従来のものに比べて取付けスペースが半減するので、機械の省スペース化による構造設計の多様性確保や構造簡素化によるコストダウンを図れるとともに、可動部の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るボールねじ一体型直動案内ユニットの斜視図である。
【図2】図1に示すボールねじ一体型直動案内ユニットの側面図である。
【図3】図1に示すボールねじ一体型直動案内ユニットの背面図である。
【図4】図1に示すボールねじ一体型直動案内ユニットの横断面図である。
【図5】ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受と用いられる多点接触玉軸受の断面図である。
【図6】図5に示す保持器の一部を示す斜視図である。
【図7】ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受と用いられる多点接触玉軸受の第2実施例を示す図である。
【図8】ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受と用いられる多点接触玉軸受の第3実施例を示す図である。
【図9】ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受と用いられる多点接触玉軸受の第4実施例を示す図である。
【図10】ボールねじ一体型直動案内ユニットのボールねじ軸支持用軸受と用いられる多点接触玉軸受の第5実施例を示す図である。
【図11】表3〜表5の結果を基に動トルクと接触角及び溝曲率比との関係を三次元的に示す図である。
【図12】表3〜表5の結果を基に動トルクと溝曲率比との関係を示す線図である。
【図13】表6の結果を基に内輪PV値と接触角と溝曲率比との関係を三次元的に示す図である。
【図14】表6の結果を基に内輪PV値と溝曲率比との関係を示す線図である。
【図15】表6の結果を基に外輪PV値と接触角と溝曲率比との関係を三次元的に示す図である。
【図16】表6の結果を基に外輪PV値と溝曲率比との関係を示す線図である。
【図17】玉軸受の動トルクと回転数との関係を示す図である。
【図18】玉軸受の軸受温度上昇(軸受温度−室温)と回転数との関係を示す図である。
【図19】4点接触玉軸受の断面図である。
【図20】3点接触玉軸受の断面図である。
【図21】4点接触玉軸受の軌道輪に形成される軌道溝の断面形状を示す図である。
【図22】3点接触玉軸受の軌道輪に形成される軌道溝の断面形状を示す図である。
【図23】4点接触玉軸受の断面図である。
【図24】2点接触玉軸受の断面図である。
【図25】2列組合せアンギュラ玉軸受の断面図である。
【符号の説明】
11 ガイドレール
12 スライダ
13 ボールねじ
14,15 軸受板
16,17 転動体転動溝
18 ボール
121 スライダ本体
122a,122b エンドキャップ
19 ボールねじ軸
20 螺旋溝
21 ボールねじナット
22 軸受
24 軸受ハウジング
25 3点接触または4点接触玉軸受
26 外輪押え
27 軸受ナット
28 スペーサ
30 外輪
31 内輪
32 玉
33 保持器
34 外輪側軌道溝
35 内輪側軌道溝
Claims (5)
- ガイドレールと、このガイドレールの側面に該レールの長手方向に沿って形成された転動体転動溝と対向する転動体転動溝を側面に有するスライダと、前記ガイドレールと平行に配設されたボールねじ軸と、このボールねじ軸の外周面に形成された螺旋溝と対向する螺旋溝を内周面に有するボールねじナットとを備え、前記スライダと前記ボールねじナットとを一体化してなるボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、
前記ボールねじ軸の端部を支持する二つの軸受のうち少なくとも一方の軸受を単列の3点接触玉軸受または4点接触玉軸受から構成したことを特徴とするボールねじ一体型直動案内ユニット。 - 請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを12.5°<α≦17.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.54≦R/D≦0.555の範囲内に設定したことを特徴とするボールねじ一体型直動案内ユニット。
- 請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを17.5°<α≦22.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.555<R/D≦0.57の範囲内に設定したことを特徴とするボールねじ一体型直動案内ユニット。
- 請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを22.5°<α≦27.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.57<R/D≦0.59としたことを特徴とするボールねじ一体型直動案内ユニット。
- 請求項1記載のボールねじ一体型直動案内ユニットにおいて、前記玉軸受の玉の直径をD、前記玉軸受の外輪軌道溝および/又は内輪軌道溝の曲率をR、前記玉と前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝との接触角をαとしたとき、前記接触角αを27.5°<α≦32.5°の範囲内に設定し、かつ前記玉の直径に対する前記外輪軌道溝および/又は前記内輪軌道溝の曲率比R/Dを0.59<R/D≦0.61の範囲内に設定したことを特徴とするボールねじ一体型直動案内ユニット。
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JP2009068650A (ja) * | 2007-09-14 | 2009-04-02 | Nsk Ltd | 直動装置 |
KR20140140028A (ko) * | 2012-03-09 | 2014-12-08 | 세노 메디컬 인스투르먼츠 인코포레이티드 | 광음향 이미징 시스템에서의 통계적 매핑 |
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-
2003
- 2003-07-31 JP JP2003205047A patent/JP2005048847A/ja active Pending
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