JP2005046170A - ドラム式洗濯機 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドラムの周方向の洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重が小さくても、軸方向に互いに離れた状態で洗濯物のかたまりが位置していると共振点付近での外槽の振動が異常に大きくなる。
【解決手段】ドラムの100rpmでの回転時に慣性モーメント量と偏心荷重量を測定し、その両者によって判定閾値を定める(S31〜S42)。その後、共振点に相当する回転速度(約250rpm)よりも低い140〜220rpmの範囲で一定加速を行うようにモータを制御した状態で加速度の変動に応じた値Δを測定し(S43〜S47)、Δが判定閾値以上であれば振動が大きいと判断して非常停止する(S48)。洗濯物の2つの塊が軸方向に離れて且つ偏心荷重が小さくなっている場合には、回転に伴って軸受に不均一な負荷が加わり加速度が変動する。但し、慣性モーメント量及び偏心荷重量の加速度変動要因になるため、これを考慮して判定閾値を定めれば正確な判定が行える。
【選択図】 図10

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はドラム式洗濯機に関し、更に詳しくは、主として遠心脱水の際に発生する振動を抑制又は低減する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ドラム式洗濯機では、周囲に多数の脱水穴を有する周面略円筒形状のドラムを水平又は傾斜した軸を中心に高速で回転させ、それによってそのドラム内に収容されている洗浄後の濡れた洗濯物に含まれる水を絞り出して飛散させることで脱水を行う。こうした遠心脱水の際に、洗濯物がドラムの周面内側で周方向に片寄って配置され、それによって軸周りに質量のアンバランス(つまり偏心荷重)があると、ドラムの回転速度を上げたときにドラムが大きく振動し、それに伴ってドラムを内装する外槽が振動して外箱内側に接触したり、外箱自体が振動して異常騒音の原因となったりする。こうした遠心脱水時の振動や騒音を軽減することは、ドラム式洗濯機における大きな課題であり、従来より、様々な対策が講じられ、また提案されている。
【0003】
ドラム式洗濯機における振動の抑制・低減技術としては、大別して、電気的なものと機械的なものとに分けられる。前者は、例えば、ドラムの回転制御等によってドラム内の洗濯物を適切に分散させて洗濯物の片寄りを防止することによって偏心荷重を抑制する偏心荷重の抑制(例えば特許文献1など参照)、ドラム内での洗濯物の片寄りなどに起因する偏心荷重の大きさを正確に検知して異常振動の発生のおそれが高い場合に運転を停止したり或いは洗濯物の分散を再試行したりする偏心荷重検知(例えば特許文献2、3など参照)、さらには洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重と釣り合うような荷重をドラムに付加することで積極的に偏心荷重を小さくする能動的偏心荷重低減(例えば特許文献4など参照)、などを含む。一方、後者は、外槽を支持する振動吸収用のダンパやばねの構造や取付構造などによって、外槽の振動を抑制したり、外槽が大きく振動した場合でも外箱の振動を抑制したりしようとするものである。
【0004】
いずれにしても、完全に振動を抑えることは実質的に不可能であるから、上記のような制御上の手法と機械的な手法とをうまく組み合わせて、できる限り振動を抑制するとともに、脱水の立ち上げに時間を要して脱水時間が異常に長くなることも回避することが必要である。
【0005】
【特許文献1】
特許第3182382号公報
【0006】
【特許文献2】
特許第3188143号公報
【0007】
【特許文献3】
特許第3311668号公報
【0008】
【特許文献4】
特許第3229845号公報
【0009】
【特許文献5】
特開2001−276468号公報
【0010】
【特許文献6】
特開2003−93777号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来、ドラム内での洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重は、ドラムの周方向についてのみ考慮されることが多く、ドラム軸方向の洗濯物の分布状況については殆ど考慮されていなかった。軸方向のサイズが比較的小さいようなドラム形状である場合や軸が傾斜している場合には、上記のような従来の考え方でも問題になることはあまりなかった。ところが、ドラムが軸方向に比較的大きなサイズを有する形状である場合で、しかも軸が水平であるような構造では、軸方向における洗濯物の分布状況が振動に与える影響が無視できない。
【0012】
例えば特許文献5に記載のドラム式洗濯機では、片持支持のドラム構造において、同一の偏心荷重が存在している場合でも軸の取付位置からの距離(つまり軸方向の洗濯物の分布状況)を考慮して偏心荷重の許容値を決めるようにしている。この場合には、洗濯物のかたまりの位置が軸方向のいずれの位置にあるかという比較的、簡単なケースが想定されている。
【0013】
しかしながら、さらに複雑なケース(但し、実際には高い頻度で起こり得るケース)を考えてみると、ドラム周方向でみた場合に偏心荷重が殆どゼロであるにも拘わらず、2つの洗濯物のかたまりが軸方向に離れて且つ軸を挟んで配置されているために、非常に大きな振動を発生するような場合があり得る。こうした状況は従来、想定されておらず、異常振動や異常騒音が発生する可能性がある。
【0014】
また、こうしたドラム軸方向での洗濯物の特殊な分布に起因する振動のほか、実際には洗濯物の様々な分布の仕方によってドラム、外槽、外箱の振動が発生する場合があり、従来の偏心荷重の検知方法では必ずしも的確に検知できないか、或いは検知しようとする以前に大きな振動が発生してしまうことがあった。
【0015】
また、大きな振動が発生するおそれのある状況を漏れなく検知しようとすればするほど、こうした検知のために要する時間が長くなり、本来の高速脱水運転に移行するまでの脱水立ち上げの時間が掛かってしまうというジレンマがあった。
【0016】
また、衣類投入口を開閉するドアが外箱の前面に設けられた従来の一般的なドラム式洗濯機では、ドアの内側に設けられた水封用のパッキンがドア閉鎖時に外槽に密着するようになっており、このパッキンが振動吸収用のダンパなどと共に外槽の姿勢を維持する機能を果たしていた。これに対し、本出願人が製品化しているような、外箱の上面に衣類投入口を開閉する上蓋を設けた構造のドラム式洗濯機(例えば特許文献6など参照)では、外槽に形成された開口を開閉する蓋が外槽自体に設けられており、外箱と外槽とを接続する水封用のパッキンは存在しない。そのため、このパッキンによって外槽の姿勢維持を補助することはできず、振動吸収用のダンパやばねなどのみによって、外槽や外箱の振動をできるだけ抑制しつつ且つ外箱内での外槽の姿勢を適切に維持できる構造が必要である。
【0017】
本発明は上記のような振動抑制に関連する種々の課題を解決するために成されたもので、その主な目的は、脱水行程時のドラム、外槽、外箱などの異常振動やそれに伴う異常騒音を確実に防止しつつ、迅速に脱水を立ち上げることができるドラム式洗濯機を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段、及び効果】
上記課題を解決するために成された第1発明は、洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機において、
a)ドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりも大きくなる回転速度であって且つ共振点に相当する共振回転速度よりも低いような第1の回転速度でドラムを回転させている状態で、ドラム周方向での洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重の大きさを検知する偏心荷重検知手段と、
b)前記第1の回転速度よりも高く且つ前記共振回転速度よりは低い回転速度の範囲内でドラムの回転速度を略一定の加速度で以て上昇させるべく制御を行っている過程で、実際の加速度の変動に基づいてドラム軸方向における洗濯物の分布状況を反映した指標値を求める指標値取得手段と、
c)前記偏心荷重検知手段により検知された偏心荷重の大きさに応じて異なる閾値を定め、前記指標値がその閾値を越える場合に、ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによって異常振動の発生の可能性が高いものと判定する判定手段と、を備えることを特徴としている。
【0019】
上述したように、ドラム内にあってその軸方向に互いに離れた2つの位置(典型的にはドラムの両端面にそれぞれ近接した位置)で且つ軸を挟んで反対側の位置にそれぞれ洗濯物のかたまりが存在するような片寄りがある場合、ドラム周方向でみれば、その2つの洗濯物のかたまりは軸を挟んで対向しており、もし重量が同じであるとすれば両者の釣り合いによって偏心荷重は殆どゼロになる。ところが、軸方向にみて互いに離れた位置にあることによって、ドラムが回転する際に軸の両端部をそれぞれ反対方向に(逆位相で)回転運動させるような力が作用し、これによってドラムやドラムを内装する外槽に大きな振動が発生する。上記のような力が作用する場合、回転に伴って軸受けには不均一な負荷が掛かるから、ドラムの回転速度を略一定の加速度で以て上昇させようとしても実際の加速度には変動が生じ、この変動の程度は基本的に上述した軸方向の洗濯物の片寄りの程度に依存する。
【0020】
但し、加速度の変動はドラム周方向の偏心荷重にも依存しており、この偏心荷重が許容範囲であるが相対的に大きい場合には加速度の変動が大きめに現れる。
そこで、こうしたドラム周方向の偏心荷重の大小の影響を除去して、ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによる異常振動の発生の可能性を正確に把握するために、第1発明に係るドラム式洗濯機では、まず偏心荷重検知手段が、第1の回転速度でドラムを回転させている状態で、ドラム周方向での洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重を検知する。このときには、軸方向の洗濯物の片寄りの要因は反映されない。
【0021】
次いで、指標値取得手段は、第1の回転速度よりも高く且つ共振回転速度よりは低い回転速度の範囲内でドラムの回転速度を略一定の加速度で以て上昇させるべく制御を行っている過程で、実際の加速度の変動に基づいてドラム軸方向における洗濯物の分布状況を反映した指標値を求める。このときに得られた指標値が同一であった場合でも、上記偏心荷重が相対的に大きければ軸方向の洗濯物の片寄りは小さく、逆に偏心荷重が相対的に小さければ軸方向の洗濯物の片寄りが大きいものと判断することができる。後者の場合には前者の場合よりも振動は大きくなる傾向にあるから、その指標値の判定基準である閾値を下げることで、より小さな指標値に対しても異常振動の発生の可能性が高いものと判断を下す。
【0022】
このように第1発明に係るドラム式洗濯機によれば、ドラム軸方向に互いに離れた2つの位置で且つ軸を挟んで反対側の位置にそれぞれ洗濯物のかたまりが存在するような片寄りがあるために、ドラム周方向での偏心荷重が小さくなっているような場合に、こうした洗濯物の分布状況を確実に検知して異常な振動が発生するのを未然に防止することができる。また、こうした検知においてドラム周方向での偏心荷重の大きさの影響を除去しているので、実際には振動がそれほど大きくならないのに誤って異常振動の発生の可能性が高いと判定してしまうことがなくなり、それによって脱水の立ち上げの不要な再試行を防止し、脱水運転の所要時間の短縮化に有効である。
【0023】
上記課題を解決するために成された第2発明は、洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機において、
a)ドラム内に収容されている含水状態での洗濯物の重量を反映したドラム回転時の慣性モーメント量を検知する慣性モーメント量検知手段と、
b)ドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりも大きくなる回転速度であって且つ共振点に相当する共振回転速度よりは低い回転速度の範囲内でドラムの回転速度を略一定の加速度で以て上昇させるべく制御を行っている過程で、実際の加速度の変動に基づいてドラム軸方向における洗濯物の分布状況を反映した指標値を求める指標値取得手段と、
c)前記慣性モーメント量検知手段により検知された慣性モーメント量に応じて異なる閾値を定め、前記指標値がその閾値を越える場合に、ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによって異常振動の発生の可能性が高いものと判定する判定手段と、を備えることを特徴としている。
【0024】
この第2発明に係るドラム式洗濯機では、基本的には第1発明と同様の方法でドラム軸方向における洗濯物の分布状況を反映した指標値を求める。この指標値つまり加速度の変動はドラム回転時の慣性モーメント量にも依存している。すなわち、ドラム軸方向における洗濯物の分布状況が同一であっても、慣性モーメント量が大きいほど加速度の変動は生じにくくなる。そこで、こうした慣性モーメント量の大小の影響を除去して、ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによる異常振動の発生の可能性を正確に把握するために、第2発明に係るドラム式洗濯機では、まず慣性モーメント量検知手段がドラム内に収容されている含水状態での洗濯物の重量を反映したドラム回転時の慣性モーメント量を検知する。ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りが同程度であっても慣性モーメント量が大きいほど指標値は小さくなるから、その指標値の判定基準である閾値を下げることで、より小さな指標値に対しても異常振動の発生の可能性が高いものと判断を下す。
【0025】
このように第2発明に係るドラム式洗濯機によっても、ドラム軸方向に互いに離れた2つの位置で且つ軸を挟んで反対側の位置にそれぞれ洗濯物のかたまりが存在するような片寄りがあるために、ドラム周方向での偏心荷重が小さくなっているような場合に、こうした状態を確実に検知して異常な振動が発生するのを未然に防止することができる。また、こうした検知において慣性モーメント量、つまり含水した洗濯物の重量の影響を除去しているので、実際には振動がそれほど大きくならないのに誤って異常振動の発生の可能性が高いと判定してしまうことがなくなり、それによって脱水の立ち上げの不要な再試行を防止し、脱水運転の所要時間の短縮化に有効である。
【0026】
上述した慣性モーメント量の影響とドラム周方向での偏心荷重の影響とは独立したものであるから、好ましくは、この両者を共に考慮して指標値の判定基準である閾値を決定するとよい。
【0027】
すなわち、上記課題を解決するために成された第3発明は、洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機において、
a)ドラム内に収容されている含水状態での洗濯物の重量を反映したドラム回転時の慣性モーメント量を検知する慣性モーメント量検知手段と、
b)ドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりも大きくなる回転速度であって且つ共振点に相当する共振回転速度よりも低いような第1の回転速度でドラムを回転させている状態で、ドラム周方向での洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重の大きさを検知する偏心荷重検知手段と、
c)前記第1の回転速度よりも高く且つ前記共振回転速度よりは低い回転速度の範囲内でドラムの回転速度を略一定の加速度で以て上昇させるべく制御を行っている過程で、実際の加速度の変動に基づいてドラム軸方向における洗濯物の分布状況を反映した指標値を求める指標値取得手段と、
d)前記慣性モーメント量検知手段により検知された慣性モーメント量と前記偏心荷重量検知手段により検知された偏心荷重の大きさとに応じて異なる閾値を定め、前記指標値がその閾値を越える場合に、ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによって異常振動の発生の可能性が高いものと判定する判定手段と、を備えることを特徴としている。
【0028】
この第3発明に係るドラム式洗濯機によれば、ドラム軸方向に互いに離れた2つの位置で且つ軸を挟んで反対側の位置にそれぞれ洗濯物のかたまりが存在するような片寄りがあるために、ドラム周方向での偏心荷重が小さくなっているような場合に、こうした状態をより一層確実に検知して異常な振動が発生するのを未然に防止することができる。
【0029】
なお、上記第3発明に係るドラム式洗濯機として具体的には、前記慣性モーメント量検知手段は、前記第1の回転速度でドラムを回転させている状態から減速を行う際に慣性モーメント量を検知する構成とすることができる。
【0030】
この構成によれば、ドラムを第1の回転速度近傍で回転させている状態で偏心荷重の大きさと慣性モーメント量との両方を検知するので、これら検知に要する時間を短縮化することができ、脱水を迅速に立ち上げることができる。
【0031】
また、ドラムやこれを内装する外槽の振動は、ドラムの回転速度が上昇して共振回転速度に近づくほど大きくなってくる。そこで、第1乃至第3発明に係るドラム式洗濯機の一態様として、前記指標値取得手段は前記回転速度の範囲内で繰り返し指標値を求め、その度に前記判定手段はその指標値を前記閾値と比較して、その指標値が閾値を超えるケースが1乃至複数回発生したときにドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによって異常振動の発生の可能性が高いものと判定する構成とすることが好ましい。
【0032】
この構成によれば、ドラムの回転速度を上昇させる過程で、ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによって振動が徐々に大きくなる場合に、振動が異常に大きくなる前に確実にドラムの回転速度を落とすことが可能となる。
【0033】
上記課題を解決するために成された第4発明は、洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機であって、前記ドラムを回転駆動するモータと、PWM駆動信号のデューティ比を制御することによって前記モータの回転速度を制御するモータ駆動手段と、を具備するドラム式洗濯機において、
a)ドラムが停止した状態からドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力を上回る所定の回転速度に達するまではPWM駆動信号のデューティ比を順次変更するデューティ比設定制御を行い、ドラムの回転速度がその所定の回転速度に達した後は目標速度を設定した速度制御に切り替える回転制御手段と、
b)デューティ比設定制御から速度制御に切り替えられた後の実際のドラムの回転速度の変動に基づいて、洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重を検知する偏心荷重検知手段と、を備えることを特徴としている。
【0034】
洗いやすすぎ後の多量の水を含んだ洗濯物は分散しにくく、こうした洗濯物がドラム内で極端にかたまった状態のままドラムの回転速度が上昇されると、ドラムの回転速度が比較的低い場合であっても大きな振動が発生することがある。そこで、こうした状況を検知するために、第4発明に係るドラム式洗濯機において、回転制御手段は、ドラムが停止した状態からドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力を上回る所定の回転速度に達するまではデューティ比設定制御を行い、ドラムの回転速度がその所定の回転速度に達すると速度制御に切り替える。その制御の切替え時点ではモータのトルクはかなり大きいため、速度制御に切り替えてもすぐにはその目標速度に落ち着かず、ドラムの回転速度はオーバシュートする。このときドラム内で洗濯物に極端な片寄りがあって偏心荷重が大きいと、その偏心荷重による回転負荷によって回転速度は急速な上昇から急速な降下に転じる。一方、偏心荷重が小さければ回転速度は下がりにくく、回転速度が相対的に高い状態が続く。このようなことから、偏心荷重検知手段は、制御の切替え後のドラムの回転速度の変動に基づいて、洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重を検知することができる。
【0035】
具体的には、例えば前記偏心荷重検知手段は、実際のドラムの回転速度が前記目標速度又はそれとは異なる閾値速度を所定時間継続して下回った場合に偏心荷重が大きいと判断し、そのときに前記回転制御手段はドラムの回転を停止又はそれに近い速度まで落とすようにモータを制御する構成とすることができる。
【0036】
このように第4発明に係るドラム式洗濯機によれば、ドラムの回転速度の立ち上げの初期に、ドラム内での洗濯物の極端な片寄りに起因する異常振動の発生を未然に防止することができる。
【0037】
上記課題を解決するために成された第5発明は、洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機において、
a)洗濯物に作用する遠心力が重力よりも大きくなる回転速度であって且つ共振点に相当する共振回転速度よりも低い第1の回転速度でドラムを回転させている状態での偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第1の偏心荷重判定手段と、
b)第1の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得る場合にドラムの回転速度を上昇させ、前記共振回転速度よりも高く且つ洗濯物から水が抜けるような第2の回転速度でドラムを回転させている状態での偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第2の偏心荷重判定手段と、
c)脱水行程開始後に始めて脱水の立ち上げ動作を行うに際し、前記第2の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得ないと判定された場合にはドラムの回転速度を落として洗濯物のほぐしから脱水の立ち上げ動作を再試行する一方、偏心荷重の大きさが許容し得ると判定された場合には高速脱水運転に移行するように制御を行い、脱水の立ち上げ動作の再試行による2回目以降の脱水の立ち上げ動作を行うに際しては、前記第2の偏心荷重判定手段による判定動作を省略して高速脱水運転に移行するように制御を行う運転制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0038】
第5発明に係るドラム式洗濯機では、脱水行程開始後に始めて脱水の立ち上げ動作を行う際には、共振回転速度よりも低い第1の回転速度においてまず偏心荷重を判定し、それが許容し得る場合にドラムの回転速度を共振回転速度を通過させて第2の回転速度まで上昇させる。この過程では偏心荷重は小さいので、大きな振動は発生しない。第2の回転速度では洗濯物から一部の水が抜けるが、それによってドラム内の荷重のバランスが崩れて偏心荷重が大きくなる場合がある。
そこで、第2の偏心荷重判定手段は、第2の回転速度において再び偏心荷重が許容し得るか否かを判定し、許容し得ない場合には、運転制御手段による制御の下に、ドラムの回転速度を落として洗濯物のほぐしから脱水の立ち上げ動作を再試行する。こうして2回目の脱水の立ち上げ動作を行う際には、既に洗濯物の脱水が一部行われているため、第1の偏心荷重判定手段と第2の偏心荷重判定手段とで判定結果が相違することは殆どない。したがって、2回目の脱水の立ち上げ動作時には第2の偏心荷重判定手段による判定動作は実質的にあまり意味がないので、これを省略して高速脱水運転へと移行しても構わない。
【0039】
なお、上記のような洗濯物の脱水の進行に伴う偏心荷重の増加は、特に洗濯物の片寄り以外に意図的にドラムに荷重を与えて偏心荷重を小さくした場合に顕著に現れる。何故なら、洗濯物は脱水によって重量が減少するのに対し、ドラムに意図的に付加された荷重の重量は通常は減少しないからである。したがって、第5発明に係るドラム式洗濯機は、ドラム内での洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重を打ち消すような荷重をドラムに発生させるためのバランス調整手段を備えた構成において特に有効である。こうしたバランス調整手段としては、例えば、後述するようにドラムの周方向に複数に分割した区画室に貯留する液体の量とその位置を意図的に調節するようにしたバランサなどが考えられる。
【0040】
このように第5発明に係るドラム式洗濯機によれば、洗濯物から水が抜けることによって増加する偏心荷重に起因する振動を確実に防止することができる。また、こうした偏心荷重の増加のおそれがない状況ではその偏心荷重の判定を省略するので、脱水の立ち上げを迅速化することができ、脱水時間が無駄に長引くことを防止することができる。
【0041】
上記課題を解決するために成された第6発明は、洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機であって、前記ドラムを回転駆動するモータと、PWM駆動信号のデューティ比を制御することによって前記モータの回転速度を制御するモータ駆動手段と、を具備するドラム式洗濯機において、
a)ドラムが停止した状態からドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力を上回る第1の回転速度に達するまではPWM駆動信号のデューティ比を順次変更するデューティ比設定制御を行い、ドラムの回転速度が第1の回転速度に達した後は目標速度を設定した速度制御に切り替える起動時回転制御手段と、
b)デューティ比設定制御から速度制御に切り替えられた後の実際のドラムの回転速度の変動に基づいて、洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第1の偏心荷重判定手段と、
c)第1の回転速度よりも高く且つ共振点に相当する共振回転速度よりも低い第2の回転速度でドラムを回転させている状態での偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第2の偏心荷重判定手段と、
d)第2の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得る場合にドラムの回転速度を上昇させ、前記共振回転速度よりも高く且つ洗濯物から水が抜けるような第3の回転速度でドラムを回転させている状態での偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第3の偏心荷重判定手段と、
e)脱水行程開始後に始めて脱水の立ち上げ動作を行うに際し、前記第3の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得ないと判定された場合にはドラムの回転速度を落として洗濯物のほぐしから脱水の立ち上げ動作を再試行する一方、その第3の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得ると判定された場合には高速脱水運転に移行するように制御を行い、脱水の立ち上げ動作の再試行による2回目以降の脱水の立ち上げ動作を行うに際しては、前記第1の偏心荷重判定手段による判定動作を省略するように制御を行う運転制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0042】
この第6発明に係るドラム式洗濯機では、第4発明と同様の方法により洗濯物の極端な片寄りに起因する偏心荷重を判定するとともに、第5発明と同様の方法により洗濯物から水が抜けることでドラム内の荷重のバランスが崩れることにより生じる偏心荷重を判定している。脱水行程開始後に始めて脱水の立ち上げ動作が行われるときには、第1の偏心荷重判定手段による判定動作が実行されるが、それを通過して洗濯物の一部の脱水まで進んだ状態では、仮にそこで偏心荷重の大きさが許容し得ない状態であると判定されて洗濯物のほぐしから脱水の立ち上げ動作の再試行に進んだ場合であっても、洗濯物の極端な片寄りは生じにくい。
何故なら、第1の偏心荷重判定手段において想定している洗濯物が極端にかたまった状態というのは、洗濯物が充分に水を含んでいて洗濯物の隙間に空気が入る余地がないためにばらけにくいような場合であるからである。また、各洗濯物から或る程度、水が抜けている状態ではもともと洗濯物はかなりばらけ易いので、デューティ比設定制御から速度制御に切り替えたときの回転速度のオーバーシュートが相対的に小さく、第1の偏心荷重判定手段では正確な判定が難しいということもある。そこで、2回目以降の脱水の立ち上げ動作時には、殆ど不要であるような、第1の偏心荷重判定手段による判定動作を省略することで迅速な脱水の立ち上げを行うことができる。
【0043】
これにより、第6発明に係るドラム式洗濯機では、脱水の立ち上げを再試行する場合に無駄な制御を行わず、それだけ迅速に高速脱水運転に移行することができる。したがって、脱水運転の所要時間の短縮化を図ることができる。
【0044】
上記課題を解決するために成された第7発明は、洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機において、
a)ドラム内での洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重を打ち消すような荷重をドラムに発生させるためのバランス調整手段と、
b)ドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりも大きくなる回転速度であって且つ共振点に相当する共振回転速度よりも低いような第1の回転速度でドラムを回転させている状態で、洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重を検知し、その偏心荷重が大きい場合に前記バランス調整手段により偏心荷重が小さくなるようにバランス調整を実行するバランス調整実行手段と、
c)第1の回転速度よりも高く且つ共振回転速度よりは低い回転速度の範囲内でドラムの回転速度を略一定の加速度で以て上昇させるべく制御を行っている過程で、実際の加速度の変動に基づいてドラム軸方向における洗濯物の分布状況を反映した指標値を求め、該指標値が所定の閾値を越えるか否かを判定することにより、ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによって異常振動の発生の可能性が高いか否かを判定する第1の偏心荷重判定手段と、
d)バランス調整実行後に前記共振回転速度よりも高く且つ洗濯物から水が抜けるような第2の回転速度でドラムを回転させている状態での偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第2の偏心荷重判定手段と、
e)前記バランス調整の実行により偏心荷重が小さくなったときにドラムの回転速度を第1の回転速度から上昇させ、前記第1の偏心荷重判定手段による判定を実行し、そこで異常振動の発生の可能性が低いと判断したときにドラムの回転速度をさらに第2の回転速度まで上昇させ、前記第2の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得ない場合には、ドラムの回転速度を落として洗濯物のほぐしから脱水の立ち上げ動作を再試行する一方、偏心荷重の大きさが許容し得る場合には高速脱水運転に移行するように制御を行う運転制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0045】
第7発明に係るドラム式洗濯機では、バランス調整を実行してドラム内での洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重を小さくした後に、ドラム軸方向における洗濯物の分布状況による異常振動の発生の可能性が判定され、それが問題ないと判断された後に、今度は、洗濯物から水が抜けることでドラム内の荷重のバランスが崩れて異常振動が発生する可能性があるか否かが判定される。このようにドラムの回転速度が上昇される過程で、異常振動を発生させるおそれのある様々な要素に関連した判定が順次実行されるので、高速脱水運転時には異常振動の発生のおそれが殆どなく、きわめてスムーズに高速脱水を完遂することができる。
【0046】
上記課題を解決するために成された第8発明は、外箱と、該外箱の内部に設けられた外槽と、該外槽の内部に水平又は傾斜した軸を中心に回転自在に設けられたドラムと、該ドラム内に洗濯物を出し入れするために前記外槽に形成された開口部を開閉するために該外槽に設けられた外槽蓋とを具備するドラム式洗濯機において、
前記外槽を支え受けるために、前記外箱の下部に設けられた台座部側に下端部が、外槽側に上端部が固定された2本のダンパを備え、その2本のダンパは、上方から見たときにドラムの軸を挟んでそれぞれ両側に位置し、且つその軸と略直交する位置関係になるように設けられていることを特徴としている。
【0047】
外層の底部を振動吸収用のダンパで支え受ける構造において、ダンパは外槽の振動を吸収して外箱に伝わるのを防止する作用を有するが、ダンパで吸収しきれない振動は台座部を介して外箱へと伝わるから、ダンパは外槽から外箱への振動の伝達部であるとみることもできる。第8発明に係るドラム式洗濯機では、略円筒状の周面を有する外槽の下部を2本のダンパのみで支え受けているので、それだけ振動の伝達部が少なくなっており、例えばドラム内の洗濯物の片寄りに起因して外槽が振動した場合でも、外箱の振動を抑制することができる。なお、具体的な態様として、2本のダンパは略同一垂直平面上に設ける構成とすることができる。また、その2本のダンパを略ハの字状に配設する構成とすることができる。
【0048】
上記のように2本のダンパで外槽を支え受ける場合には、バランスがとりにくいため、外槽の重量バランスを一層考慮する必要がある。そこで、第8発明の一実施態様として、前記ドラムの一方の端面の外側に位置する外槽の外側面に前記軸を駆動するための駆動源を取り付け、前記2本のダンパはドラム軸方向の中心に相当する位置よりも前記駆動源の取付位置側にずらして設けられた構成とすることが好ましい。
【0049】
さらにまた、その場合にはドラムが空である場合には問題ないが、洗濯のために外槽内に所定量の水が注入されると、ダンパの取付位置からみて駆動源の取付位置と反対側の重量が相対的に大きく増加し、それによって沈み込みが大きくなって外槽が傾く可能性がある。
【0050】
そこで、好ましくは、前記外槽にあって前記駆動源の取付位置側と反対側の該外槽上部を上方に牽引するためのばねを備える構成とするとよい。この構成により、外槽内に注水を行った場合でも外槽はほぼ水平状態を維持することができる。
【0051】
さらにまた、前記外槽の姿勢を維持するために前記外槽の上部側と外箱とを接続する複数の弾性係数の小さなばねを備える構成とすることができる。
【0052】
この構成によれば、複数のばねで外槽の上部側を緩く支持しているので、上述のようにダンパが2本であっても姿勢維持が容易である。また、各ばねは弾性係数が小さいため、外槽の振動が外箱に伝搬しにくく、外箱の振動抑制に有利である。但し、複数のばねの取付位置が近いと弾性係数を小さくしたことの効果が薄れるため、例えば外槽の前部側と後部側というように、できるだけ互いに離れた位置で外槽及び外箱に接続することが好ましい。
【0053】
上記課題を解決するために成された第9発明は、外箱と、その内側に回転自在にドラムを備える外槽と、前記外箱の下部に設けられた台座部に下端が固定され前記外槽を支え受ける複数本のダンパと、を具備するドラム式洗濯機において、前記ダンパは、外槽及び外箱にそれぞれ固定される金属製の取付板を挟み込む振動吸収用の弾性部材を介してその上下端部が該取付板に固定され、少なくとも中央部側に向いた弾性部材と取付板との間に、該取付板のエッジが弾性部材に食い込むことを防止するための保護用シート部材を介挿して成ることを特徴としている。
【0054】
特に第8発明に記載のドラム式洗濯機のように、外槽を支え受けるダンパの本数が少ない場合には、外槽が振動した場合に1本のダンパに掛かる力が大きくなり、取付板が弾性部材を圧し潰す力が大きくなるとともにその力の作用方向もより複雑になる。そのため、取付板のエッジが弾性部材に食い込み易くなるが、第9発明に係るドラム式洗濯機によれば、取付板と弾性部材との間に保護用シート部材を介挿したことで、取付板のエッジが直接、弾性部材に接触することを回避することができる。したがって、上記のような食い込みを確実に防止することができ、それによって弾性部材の破損が起こりにくくなり、高い信頼性を達成することができる。
【0055】
なお、少なくとも中央部側に向いた弾性部材と取付板との間に保護用シート部材を介挿したのは、外槽が振動する際により大きな力を受けるのはダンパの中央部側に位置する弾性部材であるからであって、ダンパの端部側に位置する弾性部材と取付板との間に保護用シート部材を介挿してもよいことは当然である。
【0056】
上記課題を解決するために成された第10発明は、外箱と、その内側に回転自在にドラムを備える外槽と、前記外箱の下部に設けられた台座部に下端が固定され前記外槽を支え受ける複数本のダンパと、を具備するドラム式洗濯機において、
前記ダンパの上端部及び下端部はそれぞれ、外槽又は外箱に固定される金属製の取付板と該取付板の上下にあってダンパに対して係止される二枚の座金との間で圧縮状態にある二個の振動吸収用の弾性部材を介して前記取付板に固定され、当該洗濯機の動作時に前記弾性部材が圧縮変形しても前記座金の周縁端よりもはみ出さない程度の寸法的余裕を以て該座金と弾性部材とのサイズが決められていることを特徴としている。
【0057】
上述したように、外槽が振動した場合に1本のダンパに掛かる力が大きくなると、弾性部材の圧縮変形もそれだけ大きくなる。この第10発明に係るドラム式洗濯機では、弾性部材に密着する座金の周縁端よりもはみ出さない程度の寸法的余裕を以てその座金と弾性部材とのサイズが決められているため、弾性部材が最大限圧縮変形しても座金の周縁端のエッジに乗り上げることがない。したがって、弾性部材の破損が起こりにくい。また、弾性部材の一部が座金から外れるとその弾性部材の弾性力が減じて振動吸収の効果を弱めるが、そうした現象が生じないので常に高い振動抑制効果を確保することができる。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例であるドラム式洗濯機について、図1〜図13を参照して説明する。
【0059】
図1は本実施例のドラム式洗濯機の外観斜視図である。このドラム式洗濯機において、外箱1は、その上面前部が緩やかな湾曲形状で以て前下がりに形成されており、その部分に洗濯物投入口3が形成されている。洗濯物投入口3は前後方向にスライド移動可能である上蓋2により開閉自在であって、上蓋2の前縁部に設けられた把手4を把持して図1中の矢印で示すように後方に押すことによって洗濯物投入口3を開放させることができる。このとき、上蓋2は外箱1内部の背面側に収納される。上蓋2の左側には前方に引き出し自在の洗剤容器5が、右側には前後方向に延伸して操作パネル6が設けられている。操作パネル6には、運転コースや予約時間等を設定するためなどの各種の操作キーと、これら設定に応じて点灯したり、洗濯行程の進捗状況を報知したり、或いは予約や運転の残り時間などを表示するための各種の表示器が適宜に分散して配置されている。
【0060】
次に、図2及び図3により、本実施例のドラム式洗濯機の内部構成について説明する。図2は内部要部の正面縦断面図、図3は内部要部の左側面図である。この図2、図3では外形を成す外箱1の記載は省略している。
【0061】
台座部7の上には、周面が略円筒形状で両端面がほぼ閉塞された外槽10が、外箱1の左右側面にそれぞれ端面が対向する状態で、左右上方から吊下げ支持する複数本のばね11と、前後方向に外槽10の下部を支え受ける2本のダンパ12とにより適度に揺動自在に保持される。外槽10の内部には、多数の通水穴が穿孔された略円筒形状の周面の両端面がほぼ閉塞されている横型のドラム13が、左右方向に延伸する水平軸線Cを中心に回転自在に設けられている。
【0062】
ドラム13の左端面中央に固着された主軸14は、外槽10の左端面に固定されているアルミダイカスト製の第1軸受ケース16に保持された軸受17により支承される。他方、ドラム13の右端面中央に固着された補助軸15は、外槽10の右端面に固定されている第2軸受ケース18に保持された軸受19により支承される。この主軸14及び補助軸15により水平軸線Cが形成される。
【0063】
外槽10の左端面から側方へと突出した主軸14の先端には、アウタロータ型の直流モータであるドラムモータ20のロータ20bが固定され、一方、モータ台を兼ねる第1軸受ケース16にはそのドラムモータ20のステータ20aが固定される。後述する制御部からステータ20aに駆動電流が供給されるとそれに応じてロータ20bが回転し、主軸14を介してロータ20bと同一の回転速度でドラム13が回転駆動される。
【0064】
外槽10の周面の上部から斜め前方にかけて、外箱の洗濯物投入口と一致する位置に、洗濯物を出し入れするための外槽開口101が設けられ、外槽開口101は外槽扉102により開閉自在である。また、ドラム13の周面にも洗濯物を出し入れするためのドラム開口131が設けられ、ドラム開口131は前後に観音開き構造を有する二枚の扉体から成るドラム扉132により開閉自在である。ドラム13は回転可能であるため、ドラム開口131が外槽開口101と径方向に一致した位置でドラム13が停止状態を保持するように、ステータ20aの下方にはドラムロック機構部21が設けられており、このドラムロック機構部21から進出する係合ピンがロータ20bの外縁部に形成された係合溝部22に嵌合することにより、ドラム13は所定位置に固定される。
【0065】
さらにまた、ドラム13の両端面には、脱水運転時にドラム13を高速で回転させた際に洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重によるドラム13の振動を抑制するために、円環状のバランス室24が取り付けられている。バランス室24を用いた振動抑制動作については後述する。なお、図2、図3には記載していないが、ドラム13の右側面外側にはドラム13内に乾燥風を送り込むために、ファンモータや乾燥用ヒータを含む加熱・送風装置が配設されている。
【0066】
図4は本実施例のドラム式洗濯機の要部の電気系構成図である。制御部30はCPU、ROM、RAM、タイマなどを含むマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROMに格納されている制御プログラムに基づいて、後述するような洗い、すすぎ、脱水及び乾燥の各行程の運転動作を行うための各種の制御を実行する。
【0067】
制御部30には、使用者が各種設定や指示を与えるために操作パネル6に設けられた操作部6aからキー入力信号が与えられるとともに、外槽10内に貯留された水の水位を検知する水位センサ33、外槽10内に貯留された水の温度を検知したり乾燥運転時に乾燥風の温度を検知したりするための温度センサ34、上記ドラムロック機構部21に内蔵され、ドラムロック状態か解除状態かを検知するためのドラムロック検知部21bなどから、それぞれ検出信号が入力される。
【0068】
制御部30にはインバータ駆動部32が接続されており、ドラムモータ20の回転に同期したパルス信号を発生する回転センサ20cからの信号を受けつつ、インバータ駆動部32を介してドラムモータ20の回転を制御する。また制御部30には負荷駆動部31が接続されており、この負荷駆動部31を介して加熱・送風装置に含まれるファンモータ35及び乾燥用ヒータ37、外槽10内に貯留された水を加熱するための水加熱ヒータ36、外槽10内への給水を制御する給水バルブ38、外槽10内からの排水を制御する排水バルブ39、ドラムロック機構部21に内蔵され、ドラムロックとその解除を行う駆動源であるトルクモータ21aなどの動作をそれぞれ制御する。さらにまた、制御部30は操作部6aの操作に応じた表示や運転進行状況を知らせるための表示を行うべく表示部6bに表示信号を送る。
【0069】
次に、本実施例のドラム式洗濯機の特徴の1つである外槽10の支持構造について図5により説明する。図5は外槽の支持構造を概略的に示す正面透視図(A)、上面透視図(B)及び右側面透視図(C)である。上述したように、本ドラム式洗濯機において、外槽10は外箱1の底部を構成する台座部7に対し、1本の前方側ダンパ12aと1本の後方側ダンパ12bとの合計2本のダンパ12で支持され、外槽10の上部は6本のばね11a〜11fで吊支されている。
【0070】
2本のダンパ12a、12bの固着箇所は前後方向に略一直線上にあり、左右方向(つまりドラム13の水平軸線Cの延伸方向=軸方向)では中央から左寄りに設けられている。これは、外槽10の左端面にモータ20が取り付けられており、それによって左右方向での外槽10の重量バランスが左側に片寄っているためである。但し、ドラム13内に洗濯物が収容され、さらに外槽10内に水が貯留されると、ダンパ12a、12bの固着位置が左方に片寄っていることによって、洗濯物と水との重量のために外槽10の右側が左側よりも大きく沈む傾向にある。そのときの外槽10の下がりを防止して外槽10を略水平に維持するために、ばね11fによって外槽10の右上部を引き上げている。また、上記ばね11f以外の5本のばね11a〜11eは、外槽10の姿勢維持のためのものである。
【0071】
この6本のばね11a〜11fのばね定数は、従来、この種のドラム式洗濯機に利用されているものよりも小さく設定されている。これは、ばね定数が大きいと外槽10の振動をそれだけ外箱1に伝え易くなるためである。また、ばね定数が小さくても、ばねの取付位置(特に外箱1側の取付位置)が近接していると、複数のばねのばね定数が合算された1本のばねが存在するのと等価となってしまうから、こうしたことを避けるため、各ばね11a〜11fのの取付位置が互いにできるだけ離れるように配慮されている。
【0072】
後述するように、特に遠心脱水時にドラム13内に収容されている洗濯物の片寄りによって大きな偏心荷重があるとドラム13は振動しようとし、これを両端側から支承する外槽10に大きな振動が伝搬する。ダンパ12a、12bはこの振動を吸収し、外箱1への伝搬を軽減する。ダンパ12a、12bで吸収しきれなかった振動が外箱1へと伝搬して外箱1自体が振動する原因となるから、ダンパの数が少なければそれだけ外箱1への振動の伝搬は少なくなり、外箱1の振動を抑制するのに効果的である。本ドラム式洗濯機は、上記のように外槽10の底部を2本のダンパ12のみで支持しているため、外箱1への振動の伝搬を最小限に抑え、外箱1の振動を小さくすることができる。
【0073】
その反面、ドラム13の回転時に外槽10が振動すると、この振動を吸収する各ダンパ12には従来(ダンパが3本である場合)よりも大きな力が作用する。そのため、こうした大きな力が作用することを想定して、ダンパ12自体に従来よりも一層耐久性を高める構造を採用している。次に、このドラム式洗濯機におけるダンパ12の構造的な特徴について説明する。図6は装着状態のダンパ12の縦断面図である。
【0074】
このダンパ12はいわゆる油圧式のダンパであって、内部に油が封入された円筒状のシリンダ120と、該シリンダ120内部で軸方向に摺動自在である図示しないピストンに連結されたロッド121と、そのロッド121に固定されたばね受け板123とシリンダ120上端との間に挟設されたコイルばね122とを備える。ロッド121の上部にはフランジ124が設けられるとともに上端部にはネジ溝125が形成されており、またシリンダ120からロッド121の突出方向とは反対の下方向へ突設された軸126にも同様にフランジ127とネジ溝128とが形成されている。
【0075】
図6には示していないが、金属製の上部取付板50はネジで外槽10に固定されている。ダンパ12のロッド121の上端部では、フランジ124で係止される皿状座金52と上部取付板50との間にゴム製の円環状のクッション53が介挿され、ネジ溝125に螺合されたナット55で固定される平座金54と上部取付板50との間に他のクッション56が介挿され、これによりダンパ12上部は上部取付板50を介して外槽10に固定される。また、ダンパ12aの軸126の下端も同様に、フランジ127で係止される座金59と下部取付板51との間にクッション60が介挿され、ネジ溝128に螺合されたナット62で固定される座金61と下部取付板51との間に他のクッション63が介挿され、これによりダンパ12下部は下部取付板51を介して台座部7に固定される。なお、この例では、本発明における弾性部材であるクッションはいずれも硬度40度の天然系ゴムを使用している。
【0076】
ここで特徴的な点の1つは、上部取付板50とクッション53との間、及び、下部取付板51とクッション60との間に、それぞれ円環状の保護シート57、64を介挿していることである。この保護シート57、64は例えばポリプロピレン樹脂からなる1mm程度の厚さのものとし、その内径はクッション53、54の突部の外径とほぼ同一としている。上部取付板50及び下部取付板51の開口孔径はクッション53、54の突部の外径よりも一回り大きいため、図示するように、上部取付板50及び下部取付板51の開口孔内面とクッション53、54の突部の外面との間には僅かな隙間58が形成される。
【0077】
これによって、上部取付板50及び下部取付板51の開口孔内面のコーナがクッション53、54に直接接触することを回避することができる。したがって、外槽10が振動してダンパ12を揺動させる力が作用したときでも、上部取付板50及び下部取付板51の開口孔内面のコーナ(及び僅かなバリなど)がクッション53、54に食い込むことを確実に防止することができる。
【0078】
また他の特徴として、皿状座金52、59及び平座金54、61の外径はそれに密着するクッション53、56、60、63の外径よりも大きな寸法としている。ここでの寸法の余裕は、ダンパ12を揺動させる大きな力が作用したときのクッションの変形を予め考慮し、その変形によってもクッションが座金の周縁部から外側にはみ出すことがないように決められる。具体的には、全てのクッションの外径が37.5mmであるのに対し、平座金54、61の外径は42mm、皿状座金52、59の外径は43mmとしている。ここで、皿状座金52、59の外径を平座金54、61より大きくしているのでは、上述したようにダンパ12が揺動を吸収する際に取付板50、51から見てシリンダ120側に殆どの力が加わり、シリンダ121側(中央部側)に位置するクッション53、60の変形のほうが端部側に位置するクッション56、63の変形に比べて格段に大きいためである。
【0079】
このように、本ドラム式洗濯機で採用しているダンパ12は大きな力が作用して、これを吸収すべくクッションが大きく変形した場合でも、取付板がクッションへ食い込むことがなく、またクッションが座金からはみ出ることがないので、クッションの損傷を防止でき、長寿命化を達成できる。また、クッションが座金からはみ出るとそれだけクッションの衝撃吸収力が減じるが、そうしたことがないので外槽10の振動を効果的に吸収して振動を抑制することができる。
【0080】
次に、本ドラム式洗濯機におけるバランス室24を用いた振動抑制について図7を参照して説明する。バランス室24は内部に所定量の液体(塩化カルシウム溶液など)が封入された円環状中空体であって、その内部には外周壁面241からL字形状に延出する隔壁242が所定角度間隔で放射状に設けられている。この隔壁242によって内部に封入された液体の自由な移動が妨げられる。したがって、ドラム13が充分に高い回転速度で回転するとき、隣接する隔壁242の間に形成されている、或る区画室244内では水が遠心力によって外周壁面241側に張り付き、他の区画室244へと移動することがない。
【0081】
バランス室24内に封入されている液体に作用する遠心力が重量に勝るような回転速度でドラム13を回転させると、液体は各区画室244内で外周側に片寄り、それぞれの区画室244内に保持される。つまり、区画室244間での液体の移動は起こらないので、各区画室244はその内部に保持している液体の重量の分だけ、それぞれの位置に重錘を付加したものと看做すことができる。したがって、全ての区画室244に同量の液体が保持されている場合には、バランス室24による偏心荷重は存在しない。
【0082】
これに対し、液体が局部的に片寄った位置の区画室に保持されている場合には、バランス室24によって回転軸周りにアンバランスが生じ、偏心荷重が存在することになる。したがって、洗濯物がドラム13の内周壁面に張り付いた状態で回転するような脱水運転時に、その洗濯物が周方向に片寄って配置されていて偏心荷重が生じている場合に、その洗濯物による偏心荷重と釣り合うような位置にバランス室24の偏心荷重を意図的に生じさせれば、ドラム13全体の偏心荷重は減少し、その偏心量によっては偏心荷重を無視できる程度まで小さくすることができる。
【0083】
そこで、まず、脱水運転の開始時には、バランス室24内の液体に作用する遠心力が重力とほぼ均衡する程度の回転速度でドラム13が回転駆動される。このとき、バランス室24の各区画室244において外周側に存在する液体は遠心力によって張り付き、各区画室244の内周側に存在する液体は重力によって落下して他の区画室244へと移動する。このため、ドラム13を上記回転速度で暫時回転させると、全ての区画室244内に存在する液体の量をほぼ同程度にすることができる。このように液量が平均化された状態では、バランス室24による偏心荷重はほぼゼロとなり、洗濯物の片寄りによる偏心荷重Wのみがドラム13全体の偏心荷重となる(図7(A))。
【0084】
次いで、ドラム13の回転速度を少し上昇させることにより、各区画室244に保持されている液体に加わる遠心力を増加させ、液体の保持状態を安定させる。そして、回転速度を一定に維持するように制御している状態で、実際のドラム13(又はロータ20b)の回転速度の微妙な変動に基づいて、ドラム13全体の偏心荷重の量を位置とを検知し、偏心荷重量が許容値を越えている場合には、検知した偏心荷重位置に応じたタイミングでもってドラム13の回転速度を短時間減速させる。すると、液体に作用する遠心力が減少するから、図7(B)に示すように、ドラム13の上方に持ち上げられつつある区画室244a、244b、244cから液体がこぼれ落ち、落下した液体は他の区画室に流れ込む。
【0085】
なお、減速直前には、図7(A)に示すように、回転上方に位置している区画室からは液体が比較的こぼれ落ち易い状態になっているのに対し、回転上方を通り過ぎて回転下方に進みつつある区画室では、隔壁242の突片部243が液体のこぼれを堰き止めるので、液体はこぼれ難い状態になっている。そのため、上記のように一時的に減速したときに、回転上方に持ち上げられつつある区画室及び既に上方に位置している区画室からは液体がこぼれ落ちるものの、回転下方に進もうとしている区画室内の液体はこぼれ落ちずに保持される。したがって、所望の区画室のみの液体を高い確度で落下させることができる。
【0086】
このような減速動作を1乃至複数回繰り返すことにより、最終的には、図7(C)に示すように、洗濯物の片寄りによる偏心荷重Wが存在する位置近傍の区画室244a、244b、244c内の液体は殆どなくなり、その反対側に位置する区画室244d及びその隣接の区画室内の液量が増加する。これにより、バランス室24の偏心荷重と洗濯物による偏心荷重との釣り合いによってドラム13全体の偏心荷重は小さくなる。
【0087】
本実施例のドラム式洗濯機では、洗剤水を利用した洗い行程や最終すすぎを除くすすぎ行程の後に中間脱水を行い、最終すすぎの後に最終脱水を行う。次に、こうした脱水行程時の振動を抑制するためのドラム回転制御について説明する。
【0088】
まず、脱水行程時に発生する可能性のある振動の原因について述べる。通常、ドラム13が高速で回転する際にその回転軸の周りで質量のアンバランスがある場合、ドラム13の周上でのいずれかの位置に或る重量の負荷があるものと看做すことができる。これが上述した偏心荷重Wである。しかしながら、本ドラム式洗濯機のようにドラム13が軸方向に或る程度長い寸法であり、しかもドラム13が水平置きである場合(傾斜置きであれば傾斜に沿って洗濯物が片寄る)には、ドラム13の周上のみならず、ドラム13内で軸方向にどのように洗濯物が分散している(又はかたまっている)かも考慮する必要がある。
【0089】
いま図8(A−1)、(B−1)のいずれの場合も、ドラム13の周方向に見れば2つの洗濯物のかたまりW1、W2が軸を挟んだ対向位置に存在しており、周上でこの両者に作用する遠心力のみを考えれば両者の釣り合いによりドラム13全体の偏心荷重はほぼゼロである。ところが、ドラム13の軸方向での洗濯物の分散をみた場合、図8(A−2)では、2つの洗濯物のかたまりW1、W2が軸に略直交する面上で対向する位置に存在しているのに対し、図8(B−2)では、2つの洗濯物のかたまりW1、W2はそれぞれドラム13の両端面に離れた位置に存在している。前者の場合、W1、W2に作用する遠心力はほぼ釣り合うが、後者の場合、W1、W2に作用する遠心力は同一面上でないために釣り合わず、それどころか、ドラム13を大きく揺動させるように作用する。ここでは、ドラム周方向での洗濯物の片寄りによる偏心荷重を単に偏心荷重、軸方向に互いに離れた位置での洗濯物の対向配置による偏心を対向偏心と呼ぶこととする。
【0090】
すなわち、ドラム13、外槽10、及び外箱1での振動をできるだけ抑制するには、洗濯物の片寄りによって生じる偏心荷重を小さくするのみならず、対向偏心も考慮する必要がある。
【0091】
さらにまた、脱水の進行に伴って洗濯物から水が抜けたときの重量変化も考慮する必要がある。すなわち、脱水開始当初、各洗濯物は充分に水を含んでおり、後述するように、この水が殆ど洗濯物から吐出される前の状態で偏心荷重が小さくなるようにバランス室24内の液体移動が行われるわけであるが、脱水が進行して洗濯物から水が抜けると、洗濯物の重量は大きく減少する一方、バランス室24内の重量バランスは変化しないため、場合によっては偏心荷重が増加することがあり得る。特に吸水率や脱水率が大きく異なる洗濯物が混合され、しかもそれが片寄っている場合には、脱水の進行に伴って偏心荷重が増加するおそれが高い。
【0092】
そこで、本実施例のドラム式洗濯機では、上記のような脱水行程において振動発生要因となり得る様々な状態を考慮した上で、できるだけ振動を抑制し、例えば運転途中で外槽10が異常に揺れて外箱1内壁に衝突したり、外箱1自体が大きく振動して異常騒音を発生したりすることを防止している。
【0093】
図9〜図11は脱水立ち上げ時の制御手順を示すフローチャートである。また、図13は脱水立ち上げ時のドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフである。
【0094】
まず、脱水行程が開始されると、制御部30は停止状態にあるドラム13を回転駆動するために、インバータ駆動部32に指示するPWMデューティ比を初期値として18/255に設定する。これにより、このPWMデューティ比に応じた駆動電流がモータ20のステータ20aに供給される(ステップS10)。このときにロータ20bに発生するトルクは、ごく小さな負荷量である場合にドラム13の回転を開始させるのに必要な程度のものである。
【0095】
その後、制御部30はロータ20bの回転に伴って出力される回転パルス信号を回転センサ20cによりモニタし、回転パルス信号が得られない場合にはモータ20がロックしていると判断し(ステップS11でYES)、PWMデューティ比を4/255だけ増加させる。そして、その状態で0.15秒が経過するまで待機し(ステップS12)、ステップS11へと戻る。したがって、ドラム13が回転し始めるまでは、ステップS11、S12、S13の処理の繰り返しにより0.15秒毎に4/255ずつPWMデューティ比は増加され、それによってモータ20のトルクは段階的に増加する。
【0096】
ステップS11でモータ20がロックしていないと判定されると、制御部30はドラム13の回転速度が60rpmに到達したか否かを判定し(ステップS14)、未だ60rpmに到達していなければPWMデューティ比を1/255だけ増加させる(ステップS15)。そして、その状態で0.3秒が経過するまで待機し(ステップS16)、ステップS14へと戻る。したがって、ドラム13が回転し始めてからその回転速度が60rpmに到達するまでは、ステップS14、S15、S16の処理の繰り返しにより0.3秒毎に1/255ずつPWMデューティ比は増加され、それによってモータ20のトルクは徐々に増加する。
【0097】
ドラム13内に収容されている洗濯物に作用する遠心力は外周側、つまりドラム13内周壁面に近い位置であるほど大きくなる。ここでは、洗濯物に作用する遠心力が重力を越えてドラム13内周壁面に張り付いてその回転と共に回転し始める回転速度は55〜65rpmであるが、上記のようにモータ20のトルクを徐々に増加させていってドラム13の回転速度を上昇させてゆくと、相対的にドラム13内周壁面に位置する洗濯物がまず遠心力によってドラム13内周壁面に張り付き、その内側に位置する洗濯物に作用する遠心力は未だ重力よりも小さいためにドラム13内で移動し、ドラム13内周壁面で洗濯物が未だ張り付いていない部位まで移動するとそこでより大きな遠心力を付与されてドラム13内周壁面に張り付く。また、例えばシーツ類のような広い面積を有する洗濯物の場合には、ドラム13回転当初にかたまっていたものが、ドラム13の回転速度の上昇に伴って広がり、ドラム13の内周壁面を覆うように張り付く。このようにしてドラム13内に収容されている洗濯物を適宜に分散させて、或いは、適宜にばらけさせて遠心力によってドラム13内周壁面に押し付けて回転させ易くなる。これによって、偏心荷重量を小さくできる可能性が高くなる。
【0098】
ステップS14でドラム13の回転速度が60rpmに到達したと判定されると、制御部30は脱水時偏心荷重検知実行済みフラグF1が有るか否かを判定する(ステップS17)。後で説明するが、フラグF1は各脱水行程の開始時にリセットされるため、脱水行程開始後に始めてこのステップS17に達した場合にフラグF1はリセット状態であるのでステップS18へと進む。
【0099】
そして、PWMデューティ比の値を固定した制御から、ドラム13の回転速度が70rpmになるように適宜PWMデューティ比を変化させる速度制御に切り替える(ステップS18)。しかしながら、通常、この時点でのPWMデューティ比は70rpmの回転速度を維持するためのPWMデューティ比よりも大きくなってしまっている。そのため、PWMデューティ比を変更しても回転速度はすぐには落ち着かず、図12に示すように70rpmを越えたオーバシュート状態となる。上述したようなドラム13の回転速度の立ち上げ時にも洗濯物があまりばらけずに極端な片寄りによって大きな偏心荷重が存在している場合、ドラム13の回転速度が70rpmを越えたくらいから大きな回転負荷が掛かるため、回転速度は急速に降下に転じる。一方、偏心荷重が相対的に小さい場合には偏心荷重による回転負荷は小さいため、オーバシュートしたドラム13の回転速度が降下するのに時間を要する。
【0100】
そこで制御部30は、速度制御に切り替えてから2秒が経過するまで待機し(ステップS19)、2秒が経過したならば回転速度が70rpm未満になったか否かを判定する(ステップS20)。そして、70rpm以上であればステップS22へと進むが、70rpm未満であればその状態が0.15秒以上継続するか否かを判定する(ステップS21)。一時的に70rpm未満になってもその状態が0.15秒以上継続しない場合にはステップS22へ進み、上記ステップS19で2秒が経過した時点からさらに3秒が経過したか否かを判定し(ステップS22)、3秒が経過していなければステップS20へと戻る。
【0101】
上述したようにドラム13内で極端な洗濯物の片寄りによって大きな偏心荷重がある場合にはステップS18で速度制御に切り替えてからの減速が大きいから、その切替えから5秒が経過する以前に、0.15秒以上継続して回転速度が70rpmを下回る可能性が高い(図12参照)。そこで、ステップS21でYESである場合には、この時点で偏心荷重が大きすぎるものと判断し、ドラム13を一旦大きく減速して(又は一旦停止させて)洗濯物を分散させるためのほぐし運転に移行する。
【0102】
ステップS22で3秒が経過した場合には、ステップS18〜S22の処理により実行される第1段階の偏心チェック(図13中の偏心チェック1)はクリアしたことになる。そこで、制御部30は速度制御の目標値を70rpmから80rpmに変更し(ステップS23)、実際の回転速度が80rpmになったか否かを判定する(ステップS24)。回転速度が80rpmに到達したならばその回転速度を維持し偏心荷重を検知する(ステップS25)。このときにはドラム13内の洗濯物の殆ど全てが遠心力によってドラム13の内周壁面に完全に押し付けられた状態になっており、偏心荷重量をかなり正確に求めることができる。
【0103】
なお、ここでの偏心荷重量の求め方は、ドラム13の回転速度を80rpmに維持するように制御しているときの実際の回転速度の変動に基づく。すなわち、ドラム13内に偏心荷重が存在している場合、ドラム13の回転に伴って偏心荷重がドラム上方から下方に向かうときにはその偏心荷重はドラム13を加速するように作用し、逆に偏心荷重がドラム下方から上方に向かうときにはドラム13を減速させるように作用する。その加速及び減速作用によってドラム13が1回転する間に回転速度は微妙に変動するため、ドラム13(又はロータ20b)の1回転期間の等回転角度毎に回転センサ20cから得られるパルス信号の時間間隔を計測することによって検知される速度変化に応じて、偏心荷重量を推算することができる。
【0104】
こうして偏心荷重量を検知したならばそれが所定値以下であるか否かを判定し(ステップS26)、所定値を越えていれば異常振動の発生のおそれがあると判断して、ほぐし運転へと移行する。ステップS26で偏心荷重量が所定値以下であると判定された場合には、制御部30は速度制御の目標値を80rpmから100rpmに変更し(ステップS27)、実際の回転速度が100rpmになったか否かを判定する(ステップS28)。回転速度が100rpmに到達したならば、その回転速度を維持し偏心荷重量との位置を検知し、必要があれば既に説明したような方法によってバランス室24内での液体移動を行うことにより、積極的にバランス調整を実行する(ステップS29)。但し、バランス調整可能な偏心荷重量には限界があるから、例えばもともと偏心荷重量が或る値を越えている場合、或いは、所定回数バランス調整を試みても偏心荷重量が或る値以下にならない場合には、バランス調整が失敗したと判断して(ステップS30でNO)、ほぐし運転へと移行する。
【0105】
ドラム13の回転速度が80rpm及び100rpmであるときに偏心荷重量が小さいと判定された場合、或いはバランス調整の結果、偏心荷重量が小さくなった場合には、第2段階の偏心チェック(図13中の偏心チェック2)をクリアしたこととなり、ステップS30からS31へと進む。
【0106】
制御部30は、100rpmの回転速度において偏心荷重量Pと慣性モーメント量Qとを測定する(ステップS31)。慣性モーメント量は実質的にドラム13の質量(濡れた洗濯物の重量を含む)を測定するのと同じことであるから、ドラム13を100rpmで回転させている状態からモータ20への通電を遮断し、慣性力によって回転するドラム13の回転速度が所定値(例えば90rpm)まで落ちるのに要する時間を計測し、その計測時間に応じて慣性モーメント量を求めるようにするとよい。
【0107】
その後、測定した慣性モーメント量Q及び偏心荷重量Pに応じて後述の判定閾値Hを決定する処理を行う。すなわち、Qが30以下であって(ステップS32でYES)Pが1000以下であれば(ステップS33でYES)判定閾値Hを180に設定し(ステップS37)、Qが30以下であってPが1000を越えていれば(ステップS33でNO)判定閾値Hを190に設定する(ステップS38)。Qが30を越えているが60以下であって(ステップS34でYES)Pが700以下であれば(ステップS35でYES)判定閾値Hを165に設定し(ステップS39)、Qが30を越えているが60以下であってPが700を越えていれば(ステップS35でNO)判定閾値Hを175に設定する(ステップS40)。Qが60を越えていて(ステップS34でNO)Pが550以下であれば(ステップS36でYES)判定閾値Hを150に設定し(ステップS41)、Qが60を越えていてPが550を越えていれば(ステップS36でNO)判定閾値Hを160に設定する(ステップS42)。
【0108】
制御部30はこうして判定閾値Hを決定した後又はそれと並行して、ドラム13の回転速度を一定の加速度で以て上昇させるべくインバータ駆動部32を制御する(ステップS43)。そして、回転速度が140rpmに到達したならば(ステップS44でYES)、対向偏心の程度を推定する指標値として、モータ回転の加速度成分の最大値−最小値の差分Δ(以下、加速度変動指標値Δという)を算出する(ステップS45)。
【0109】
具体的には、まず、モータ20のロータ20bが1回転する間に速度一定であれば等間隔に発生する72個のパルス信号の発生時間間隔を120回取得する。これによりドラム13が約1.7回転する期間中の速度変化に関する情報が得られる。この120個のデータに対し、時間的に隣接する15個のデータの移動平均を計算する。これにより105個の移動平均値が得られる。さらにその105個のデータに対して時間的に隣接する15個のデータの移動平均を計算する。これにより90個の2回目の移動平均値が得られる。そして、この90個の移動平均データで時間的に隣接するものの差分をそれぞれ計算し、その差分の中で最大値と最小値とを見つけ、この最大値と最小値との差を加速度変動指標値Δと定める。なお、次の加速度変動指標値Δを定める場合には、新たに取得するデータは90個とし、これに前回取得したデータの最後から30個のデータを加えて120個にする。そして、上記と同様、15個のデータの移動平均を計算する。こうすることにより、差分データが抜けてしまう期間が生じない。もちろん、これは一例であって、或る一定の加速度でドラム13の回転速度が上昇するように制御している期間中の実際のドラム13の加速度の変動に応じた他の値を利用してもよい。
【0110】
この洗濯機におけるドラム13や外槽10を含む揺動機構部の共振点に相当する回転速度は約250rpmである。そのため、回転速度が250rpmに近づくほど振動が大きくなる傾向にあるが、特にドラム13の回転速度が140rpmを越えるくらいになると対向偏心の影響が顕著に出始めて、偏心荷重が小さい場合であっても対向偏心に起因する振動が大きくなり始める。対向偏心が存在するとドラム13の回転に伴って軸受17、19には不均一な負荷が加わり、その摩擦などによってドラム13の回転は拘束を受ける。したがって、対向偏心が大きいほどモータ20の回転はスムーズに上昇しにくくなり、1回転の中での加速度の変動つまり加速度変動指標値Δが大きくなる。したがって、加速度変動指標値Δを利用して偏心対向の程度を推定することが可能である。
【0111】
但し、加速度変動指標値Δは対向偏心のみならず他の要因の影響を受ける。すなわち、洗濯物を含むドラム13全体の重量が大きい場合、つまり慣性モーメント量Qが大きい場合にはドラム13回転時の慣性力の作用が相対的に大きく現れるために加速度の変動は小さくなり、逆に洗濯物を含むドラム13全体の重量が小さい場合、つまり慣性モーメント量Qが小さい場合には上記慣性力の作用が相対的に小さくなるため加速度の変動は顕著に現れる傾向にある。一方、偏心荷重が大きい場合にはこの偏心荷重による加速度変動要因がさらに加わるため、たとえ同一の慣性モーメント量であって対向偏心が同程度であったとしても偏心荷重量Pが大きいほうが加速度の変動は顕著に現れる傾向にある。そこで、上述のように加速度変動指標値Δが偏心荷重量P及び慣性モーメント量Qに依存することを考慮して、この加速度変動指標値Δが許容できる範囲であるか否かを判定する基準である判定閾値Hを上記のようにして決めているわけである。
【0112】
すなわち、上記ステップS34〜S44の処理によれば、全般的な傾向として、慣性モーメント量Qが大きいほど加速度変動指標値Δは小さくなることを考慮して判定閾値Hを相対的に小さくし、偏心荷重量Pが大きいほど加速度変動指標値Δは大きくなることを考慮して判定閾値Hを相対的に大きくしている。これにより、慣性モーメント量Qや偏心荷重量Pの影響を軽減して加速度変動指標値Δから対向偏心の程度が振動として許容できる範囲であるか否かを正確に判定することができる。
【0113】
図10のフローチャートに戻ると、ステップS45で加速度変動指標値Δを算出した後、ドラム13の回転速度が220rpmに到達したか否かを判定する(ステップS46)。220rpmに到達していなければ、制御部30では加速度変動指標値Δが判定閾値H以上であるか否かを判定し(ステップS47)、加速度変動指標値Δが判定閾値H以上であると判断される場合には対向偏心の程度が大きく、このまま共振点に至ると異常振動が発生する可能性が高いと結論付ける。その場合には、モータ20の回転速度を急速に落としてほぐし運転に移行する。
【0114】
一方、ステップS47で加速度変動指標値Δが判定閾値H未満であると判定された場合にはステップS45へと戻り、先の測定時よりも高い回転速度において加速度変動指標値Δを測定する。そして、回転速度が未だ220rpmに達していなければ、この加速度変動指標値Δを再び判定閾値Hと比較する。したがって、ステップS44〜S47の処理により、回転速度が共振点よりも低い140rpm〜220rpmの範囲において繰り返し加速度変動指標値Δが測定され、その中で1回でも加速度変動指標値Δが判定閾値H以上となったら、それ以上回転速度を上げるのを諦めてドラム13の回転速度を急速に落とす。通常、140rpm〜220rpmの範囲で10回程度、ステップS44〜S47の処理を繰り返す機会を得る。そして、加速度変動指標値Δが判定閾値H未満のまま回転速度が220rpmに至ると、対向偏心があったとしてもその程度は許容範囲内であると推測できるから、第3段階の偏心チェック(図13中の偏心チェック3)をクリアしたこととなり、さらに回転速度を上昇させて高速脱水へ移行する。
【0115】
こうして高速脱水へと移行した場合、外槽10にそれほど大きな振動を生じることなく、ドラム13の回転速度は共振点に相当する速度範囲を通過する。その後、制御部30は回転速度が500rpmに到達したか否かを判定し(ステップS51)、回転速度が500rpmに到達した場合には、脱水時偏心荷重検知実行済みフラグF1が有るか否かを判定する(ステップS52)。前述のようにフラグF1は脱水行程の開始時にリセットされるため、脱水行程開始後に始めてこのステップS52に達した場合にはフラグF1はリセット状態であってステップS53へと進む。
【0116】
制御部30はドラム13の回転速度を500rpm近傍に維持するようにインバータ駆動部32を制御する。このときの回転速度は脱水時の最高回転速度である800rpmよりは低いものの、洗濯物に含まれる水をかなりの程度、絞り出すことが可能であるような回転速度である。そのため、ドラム13内の洗濯物に対して軽い絞りを行った状態となり、これによって洗濯物の重量は上記ステップS25、S26の偏心荷重検知及びバランス調整時とは変化する。
【0117】
一方、バランス室24内での液体の偏在による偏心荷重は変化しないから、洗濯物を軽く絞ったことによって重量のバランスが崩れ、偏心荷重が増加している可能性がある。そこで、ドラム13を500rpmで回転させている状態で偏心荷重量P2を検知し、この偏心荷重量P2が所定値未満であるか否かを判定し(ステップS55、S56)、所定値未満であればそのまま回転速度をさらに上昇させて脱水を続行しても異常振動の可能性はないものと判断する。その場合には、第4段階の偏心チェック(図13中の偏心チェック4)をクリアしたこととなり、制御部30はドラム13の回転速度を800rpmまで上昇させ(ステップS57)、その回転速度を所定の脱水時間だけ維持することで充分な高速脱水を実行(ステップS58)した後に運転を終了する。
【0118】
一方、ステップS56で偏心荷重量P2が所定値以上であると判定された場合に、洗濯物の重量変化によって偏心荷重の状態が大きく変化しており異常振動の発生の可能性が高いと判断する。その場合には、制御部30は脱水時偏心荷重検知実行済みフラグF1をセットした(ステップS59)後に、ドラム13の回転速度を停止近傍まで落としてほぐし運転に移行する。上記説明の中でいずれの時点でほぐし運転に移行した場合には、洗濯物を撹拌するような回転速度(40〜50rpm程度)でドラム13を回転させた後にステップS11から始まる手順で再度脱水立ち上げを試みる。
【0119】
すなわち、軽い脱水後の偏心荷重判定によって偏心荷重量が大きすぎると判定された場合に、ステップS59で脱水時偏心荷重検知実行済みフラグF1はセットされる。したがって、500rpmまでの回転速度による軽い脱水まで終了した後に再び脱水立ち上げから再試行する場合には、フラグF1はセット状態となっており、上記ステップS17ではフラグF1が有りと判定されてステップS18〜S22の処理がパスされて直接的にステップS23へと進む。すなわち、回転速度70rpm近傍での第1段階の偏心チェックは省略される。これは、既に軽い脱水までの処理に一旦進んだ場合には、洗濯物に含まれる水の量が比較的少なく且つ洗濯物同士や布の間に空気が入り込んでいてかなりばらけ易く、洗濯物がドラム13内で極端にかたまってしまって分散しない、という状況は殆どあり得ず、ステップS18〜S22の処理による第1段階の偏心チェックは殆ど無意味であるからである。この省略によって、2回目移行の脱水立ち上げの試行を迅速化することができる。
【0120】
さらにまた、500rpmまでの回転速度による軽い脱水まで終了した後に再び脱水立ち上げから再試行する場合、上記ステップS52ではフラグF1が有りと判定されてステップS53〜S56の処理がパスされて直接的にステップS57へと進む。すなわち、回転速度500rpm近傍での第4段階の偏心チェックも省略される。これは、既に軽い脱水を1回実行しているため、第4段階の偏心チェックも実質的に意味を持たないためである。
【0121】
このように本実施例のドラム式洗濯機では、洗濯物の脱水を行う際に、その脱水の過程で生じる様々な態様の偏心荷重の発生状況を考慮しているので、異常振動やそれに伴う異常騒音を回避することができ、且つできる限り迅速に高速脱水回転までの立ち上げを行って良好な脱水を実行することができる。
【0122】
さて、このドラム式洗濯機においては、上述のように、共振点よりも小さいドラム(モータ)の所定の回転速度(例えば、80rpmや100pm)、および最終的な脱水回転速度よりは小さいが、共振点よりも大きく、洗濯物からある程度脱水された後での所定の回転速度(例えば、500rpm)とにおいて、ドラム内の偏心荷重を検知し、偏心荷重が所定値(閾値)よりも大きいと判定したときには、ドラムを一旦停止させ、給水をしないほぐし動作(例えば、低速で正逆のタンブリング回転)を行った後、再び、脱水を立ち上げるようにしている。そして、この動作は、偏心荷重が所定値以下になるまで、繰り返し行われる。しかし、ドラム内の洗濯物の状態によっては、ドラムを立ち上げ直しただけでは偏心が解消しない場合がある。このため、さらに、このドラム式洗濯機では、上記の繰り返し動作をあきらめて他の処理へ移行するための制限時間を設けており、この制御動作について、以下に説明する。
【0123】
図14は、洗い行程や最終のすすぎ行程を除くすすぎ行程の後に行なわれる中間脱水行程における制御動作を示すフローチャートである。
【0124】
まず、モータ20(ドラム13)を始動して脱水の立ち上げを開始する(ステップS1)。次に、立ち上げに要する時間(T1)のカウントを開始する(ステップS2)。やがて回転速度が上昇し、共振点より低い時点で偏心荷重量を検知する所定の回転速度、例えば、100rpmに達すると、この回転速度において、先に説明した回転速度の変化量に基づく方法で、偏心荷重量を検知する(ステップS3)。そして、このときの偏心荷重量が規定値以下であれば(ステップS4)、回転速度を上昇させる。
【0125】
一方、偏心荷重量が規定値よりも大きければ、立ち上げ開始から、第1の制限時間、例えば6分が経過しているかを判定する(ステップS5)。そして、第1の制限時間を越えていなければ、モータ20を一旦停止させた後、ほぐし運転を行う(ステップS6)。このほぐし運転は、例えば、洗濯物がドラム13内面に張り付かないような低速の回転速度で、ドラム13を正逆回転させ、洗濯物をタンブリングするものである。ほぐし運転が終わると、次に、再び脱水の立ち上げを行う(ステップS7)。
【0126】
さて、このようなほぐし運転と立ち上げを複数回繰り返しても、偏心荷重が解消されない場合には、やがて第1の制限時間に達する。こうして、ステップS5で、立ち上げ開始から第1の制限時間を経過していると判定すると、もはや今までの立ち上げ動作を繰り返しても、偏心荷重が解消される見込みがないと判断して、次に、アンバランス修正運転を行う(ステップS8)。アンバランス修正運転では、所定水位まで外槽10内に給水し、外槽10内に水を溜めた状態でドラム13を低速で正逆回転させ、洗濯物をタンブリングする。これにより、ドラム13内の洗濯物を分散させる。このアンバランス修正運転は、上述したほぐし運転よりも洗濯物の分散効果が高く、ほぐし運転を行っても解消できなかった偏心荷重を解消させることが可能となる。アンバランス修正運転が終わると、立ち上げ所要時間のカウントをリセットして、ステップS1に戻り、最初から脱水を開始する。なお、アンバランス修正運転を行っても偏心荷重が解消せず、脱水が立ち上がらないまま、再び第1の制限時間が経過した場合は、アンバランス修正運転を行うことなく、次の行程へ移行する(ステップS9、S10)。即ち、洗い行程の後の中間脱水であれば、1回目のすすぎ行程へ移行し、すすぎ行程の後の中間脱水であれば、次のすすぎ工程へ移行する。
【0127】
さて、ステップS4で偏心荷重量が規定値以下であると判定され、その後、共振点よりも高い所定の回転速度、例えば500rpmまで回転速度が上昇されると、この500rpmの回転速度において、偏心荷重量が検知される(ステップS11、S12)。そして、偏心荷重量が規定値以下であると判定すると(ステップS13)、最終的に高速脱水を行うために維持される脱水回転速度、例えば800rpmまで回転速度を上昇させる(ステップS14)。
【0128】
一方、偏心荷重量が規定値より大きければ、モータ20を一旦停止させる(ステップS15)。その後、再びモータ20を始動し、脱水を立ち上げる(ステップS16)。次に、立ち上げに要する時間(T2)のカウントを開始する(ステップS17)。そして、回転速度が100rpmに達すると、この回転速度において、偏心荷重量を検知し、偏心荷重量が規定値以下であれば、回転速度を800rpmまで上昇させる(ステップS18、S19、S14)。
【0129】
一方、偏心荷重量が規定値よりも大きければ、立ち上げ開始から、第2の制限時間(第1の制限時間よりも短い)、例えば3分が経過しているかを判定する(ステップS20)。そして、第2の制限時間を越えていなければ、ステップS6と同様に、モータ20を一旦停止させ、ほぐし運転を行った後、再び脱水の立ち上げを行う(ステップS21、S22)。一方、ステップS20において、立ち上げ開始から第2の制限時間を経過していると判定すると、ステップS8とは異なり、アンバランス修正運転を行うことなく、次の行程へと移行する(ステップS23)。
【0130】
上記の制御動作においては、共振点よりも小さい回転速度の領域内で、偏心荷重の解消を試みる場合の制限時間を、第1制限時間および第2制限時間として設けているが、共振点よりも高い回転速度まで立ち上げた後、500rpm(所定の回転速度)で偏心荷重量が大きいと判定されて、脱水を立ち上げ直した後の第2の制限時間は相対的に短くし、500rpmで偏心荷重量が検知される前の第1の制限時間は相対的に長くしている。これは、共振点より低いような回転速度では、ほとんど脱水効果か期待できないので、制限時間を長めにして、できる限り脱水効果が期待できるような回転速度まで立ち上げるようにする必要があり、一方、脱水効果が期待できる500rpmまで立ち上げられれば、ドラム13内の洗濯物がある程度脱水されることで、洗濯物中の洗剤分がある程度除去される(ある程度すすがれる)から、制限時間を短めにして、無駄に運転時間を長引かせないようにする必要があるからである。このような構成とすることで、必要なすすぎ性能を確保しつつ、脱水の立ち上げに要する時間を短くすることができる。
【0131】
また、上記制御動作においては、第1の制限時間が経過したときには、アンバランス修正運転を行い、最終的に脱水を立ち上げられなくても、洗濯物をある程度すすいだ状態で次のすすぎ行程に移行するようにし、一方、第2の制限時間が経過したときには、既に洗濯物がある程度脱水され、すすがれていることを考慮して、アンバランス修正を行うことなく、次のすすぎ行程に移行するようにしている。よって、さらに、必要なすすぎ性能を確保しつつ、脱水の立ち上げに要する時間を短くすることができる。
【0132】
なお、上記の制御動作では、説明を簡略化するため、共振点より下の回転速度領域での偏心検知は100rpmのみとしたが、先に説明したような方法で、複数の時点(80rpm、100rpm、140rpmから220rpm)で行うようにしてもよい。
【0133】
また、2回目以降の中間脱水において、第1の制限時間が経過したときに、それより前の中間脱水において、800rpmでの高速脱水が行われていれば、アンバランス修正運転を行わず、直ちに次のすすぎ行程に移行するような制御動作としてもよい。
【0134】
図15は、最終のすすぎ行程の後に行なわれる最終脱水行程における制御動作を示すフローチャートである。
【0135】
最終脱水行程での制御動作(ステップS101からS123)は、中間脱水行程での制御動作と同様であるが、以下の点が異なっている。まず、第1の制限時間および第2の制限時間に代えて、これらの時間よりも長い第3の制限時間、例えば8分を設定している。即ち、最終脱水行程における制限時間は中間脱水行程における制限時間よりも長くなるようにしている。また、一度500rpmまで立ち上がった否かに係わらず、第3の制限時間が経過すると、アンバランス修正運転を行って脱水を立ち上げ直し、複数回、例えば2回のアンバランス修正運転を行っても偏心荷重が解消されず、次に第3の制限時間が経過した場合には、運転を停止してエラー報知を行うようにしている。
【0136】
中間脱水の目的は、主として洗濯物中の洗剤分を除去することにあり、洗濯物中に水分自身が残っていても問題はない。一方、最終脱水行程の目的は、次に続く乾燥のために洗濯物から水分自身を除去することにあり、洗濯物の水分をできる限り除去する必要がある。上記の制御動作においては、最終脱水行程における制限時間を中間脱水行程における制御時間よりも長くするようにしているので、偏心荷重が生じても高速脱水の回転速度(800rpm)に立ち上がる頻度を多くすることができ、運転時間をできるだけ長引かせることなく、脱水性能を確保できる。
【0137】
ところで、このドラム式洗濯機においては、共振点より小さい回転速度で偏心検知をした結果、偏心荷重量が小さかったとしても、共振点を通過するときにはある程度振動が大きくなるため、この共振点付近ではできるだけ加速を大きくし、なるべく素早く通過するようにしている。ところが、このような構成とした場合、ドラム13内の洗濯物が多くの水を含んでいると、共振点付近を通過させたあたりから、この水が一気に外槽10内に放出されてしまい、このまま回転速度を上昇させ続けると、外槽10からの排水が追いつかず、回転するドラム13に当たるくらいに外槽10内に水が溜まってくる虞が出てくる。このなると、回転するドラム13で溜まった水がかき上げられ、この水が外槽扉101に強く当たって外槽扉101と外槽10との間のシール部分から水が漏れ出す虞がある。
【0138】
そこで、このドラム式洗濯機では、以下のような脱水の立ち上げ動作を行うことで、このような水漏れを防止することができる。
【0139】
図16は、外槽10からの水漏れを防止するための脱水立ち上げ制御動作における、ドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフである。
【0140】
このグラフに従って説明するに、脱水を立ち上げた後、ドラム13が所定の回転速度、例えば100rpmに到達すると、偏心検知を行い、偏心荷重量が小さいと、さらに回転速度を上昇させる。そして、回転速度が共振点(このドラム式洗濯機では、約250rpm)より大きい所定の回転速度(共振点を越えて間もない回転速度が好ましい)、例えば260rpmに達すると、洗濯物からの脱水効果がほとんど期待できない回転速度、例えば100rpmまで減速する。これによって、回転速度が上昇して共振点付近を通過する過程において、洗濯物から多くの水が放出されても、この減速によって水の放出がほとんど止まる。この間に排水が進行し、外槽10内に溜まりかけた水が排出される。こうして、100rpmに達すると、直ちに(あるいは、所定時間だけこの回転速度に維持された後に)、回転速度を再び上昇させる。このようにして、このドラム式洗濯機では、洗濯物に含まれる水が多いような場合であっても、外槽10からの水漏れを防止できる。
【0141】
図17は、外槽10からの水漏れを防止するための他の脱水立ち上げ制御動作における、ドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフである。
【0142】
このグラフに従って説明するに、脱水を立ち上げた後、ドラム13が所定の回転速度、例えば100rpmに到達すると、偏心検知を行い、偏心荷重量が小さいと、さらに回転速度を上昇させる。また、偏心荷重量がある程度大きくても、前述のバランス室24を用いたバランス調整で偏心荷重を十分に小さくできる場合には、バランス調整をした後に、回転速度を上昇させる。このとき、バランス調整に要する時間は長くなったり短くなったりするが、バランス調整が早く終了したとしても、この回転速度を所定の維持時間Aだけ維持するようにしている。
【0143】
この維持時間Aは、外槽10からの排水能力に応じて設定される。排水能力は、この脱水の前の排水において測定した、ある所定水位間における排水時間から判断できる。図18は、排水時間に対応する100rpmでの維持時間A、260rpmでの維持時間B(後述する)を示す表である。維持時間Aは、排水時間が長いほど、即ち、排水能力が低いほど長い時間に設定される。
【0144】
こうして、維持時間Aが経過すると、回転速度を上昇させ、回転速度が共振点(このドラム式洗濯機では、約250rpm)より大きい所定の回転速度(共振点を越えて間もない回転速度が好ましい)、例えば260rpmに達すると、今度は、この回転速度を維持時間Bだけ維持させる。図18に示すように、維持時間Bも排水時間が長いほど、長い時間に設定される。そして、維持時間Bが経過すると、回転速度をさらに上昇させる。この制御動作によれば、ドラム13の回転速度が、維持時間Aだけ100rpmに維持されている間に、わずかではあるが洗濯物に含まれた水が排出されるので、結果、共振点付近を通過するときに放出される水を少なくできる。さらに、260rpmで維持時間Bだけ維持することで、そのまま立ち上げるよりも水の放出量が抑えられ、この間に排水を進行させることで外槽10内の水を減らすことができる。よって、洗濯物に含まれる水が多いような場合であっても、外槽10からの水漏れを防止できる。
【0145】
なお、上記の制御動作では、維持時間Aだけ維持する回転速度を100rpmにしている。この回転速度を大きくすれば、洗濯物が脱水されやすくなるが、反面、共振点に近付くことになるので、外槽10の振動が大きくなる。よって、振動の面から許されるのであれば、この回転速度を大きくしてもよい。また、外槽10のから排水するための排水口部を、外槽10の底部から外槽10の外周の接線方向(脱水時のドラム13の回転方向と同じ接線方向)に設けると、ドラム13が回転したときに外槽10から水が排出されやすくなり、より好ましい。
【0146】
さて、このドラム式洗濯機においては、最終脱水行程で、最終的に高速脱水を行う回転速度、例えば800rpmまで連続的に回転速度を立ち上げていくと、洗濯物によってはドラム13周面の脱水孔(図示せず)に挟まり込み、次の乾燥行程で洗濯物を攪拌しようとしても、ドラム13の周面にへばりついたままになってうまく攪拌できず、乾燥性能を著しく低下させてしまう虞がある。このため、このドラム式洗濯機では、以下のような脱水の立ち上げ制御動作を行うことで、ドラム13周面への洗濯物のへばりつきを防止している。
【0147】
図19は、ドラム13周面への洗濯物のへばりつきを防止するための脱水立ち上げ制御動作における、ドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフである。
【0148】
このグラフに示すように、まず、ドラム13の回転速度を、所定の低回転速度、例えば400rpmまで上昇させ、この低回転速度に達すると、一旦停止させる。そして次に、低回転速度よりも高い中回転速度、例えば700rpmまで上昇させ、この中回転速度に達すると、さらに一旦停止させ、最後に、最終的な脱水を行う高回転速度、例えば、800rpmまで上昇させ、この回転速度で、所定時間の脱水を行う。
【0149】
このように、停止を設けて徐々に高い回転数で脱水を行うようにすることで、洗濯物のドラム13周面へのへばりつきを抑えることができる。しかしながら、このような立ち上げ動作とした場合には、どうしても長い時間がかかってしまう。そこで、このドラム式洗濯機においては、毛布については、その材質から上記のようにドラム13周面にへばりつく虞が少なく、しかも、専用の洗濯コースを有することに着目し、標準コースや毛布コースを含む洗濯運転コースのうち、毛布コースを除くコースにおいては、上述のような、断続的な脱水の立ち上げを行うが、毛布コースにおいては、最終脱水行程において、最終的に脱水を行う高回転速度、例えば800rpmまで、連続的に回転速度を上昇させるようにしている。
【0150】
図20は、毛布コースの脱水立ち上げ制御動作における、ドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフである。図20に示すように、この毛布コースでは、途中、偏心検知のために、共振点よりも小さい所定の回転速度、例えば100rpmと、共振点よりも大きい所定の回転速度、例えば500rpmにおいて少しの間回転速度を維持されつつ、高回転速度までドラム13が連続的に立ち上げられる。このようにすることにより、無駄に脱水時間が長引くのを極力防止することができる。
【0151】
さて、上述のように、このドラム式洗濯機は、バランス室24を用いた振動抑制を行っており、バランス室24内に封入されている液体に作用する遠心力が重量に勝る回転速度まで回転速度を上昇させていく過程で、バランス室24を構成する各区画室244内に均等に液体が分散されることになる。このとき、回転速度をゆっくりと上昇させることによって、液体の分散が促進する回転速度での回転時間が長くなるほど、液体は均等に分散する。反面、脱水の立ち上がりに時間がかかる。
【0152】
区画室244内への液体の分散状況が多少悪くて、これによってドラム13内に多少の偏心荷重が生じるとしても、通常の洗濯運転では、ドラム13内に洗濯物が入っている状態で脱水が起動され、この場合には、洗濯物による偏心荷重のほうがはるかに大きいため、これによる実質な影響はない。しかしながら、ドラム13内に洗濯物が入っていない無負荷の場合には、液体の分散がより均等に行われていないと、バランス室24内での偏心により、振動を発生してしまう虞が出てくる。そして、このように無負荷で運転されるコースとしては、脱水行程だけを実行する脱水のみコースが考えられる。即ち、店頭などで脱水のデモ運転をするときには、脱水のみコースを用いて、無負荷で運転する場合がある。
【0153】
図21は、脱水のみコースの脱水立ち上げ制御動作における、ドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフである。図21に示すように、このドラム式洗濯機では、脱水のみコースの場合には、洗いから脱水(乾燥)まで一連の行程を行う通常の洗濯コースに比べて、バランス室24内の液体の分散が行われるような回転速度での回転時間を長くするようにしている。より具体的には、回転速度が65rpmに達すると15秒間この回転速度を維持し、次に67rpmに達すると15秒間この回転速度を維持し、その後回転速度を上昇させる。この65rpmや67rpmの回転速度は、区画室244内の液体のうち、外周側の液体は遠心力で保持されるが、内周側の液体は重力の影響で移動するような回転速度である。
【0154】
このように、脱水のみコースにおいては、バランス室24内の液体の分散が十分に行われるようにしたので、この脱水のみコースがデモ運転に使われ、無負荷で脱水されても、バランス室24の影響で振動が発生するのを防止できる。
なお、上記実施例は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で、適宜に変更、修正又は追加を行えることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例によるドラム式洗濯機の外観斜視図。
【図2】本実施例によるドラム式洗濯機の内部要部の正面縦断面図。
【図3】本実施例によるドラム式洗濯機の内部要部の左側面図。
【図4】本実施例によるドラム式洗濯機の要部の電気系構成図。
【図5】本実施例によるドラム式洗濯機における外槽の支持構造を概略的に示す正面透視図(A)、上面透視図(B)、及び右側面透視図(C)。
【図6】本実施例によるドラム式洗濯機における装着状態のダンパの縦断面図。
【図7】本実施例によるドラム式洗濯機におけるバランス室を用いた振動抑制の概略説明図。
【図8】偏心状態の一例の説明図。
【図9】本実施例によるドラム式洗濯機における脱水立ち上げ時の制御手順を示すフローチャート。
【図10】本実施例によるドラム式洗濯機における脱水立ち上げ時の制御手順を示すフローチャート。
【図11】本実施例によるドラム式洗濯機における脱水立ち上げ時の制御手順を示すフローチャート。
【図12】第1段階の偏心チェックの際のドラムの回転速度の変化状態の一例を示すグラフ。
【図13】脱水立ち上げ時のドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフ。
【図14】洗い行程や最終のすすぎ行程を除くすすぎ行程の後に行なわれる中間脱水行程における制御動作を示すフローチャート。
【図15】最終のすすぎ行程の後に行なわれる最終脱水行程における制御動作を示すフローチャート。
【図16】外槽からの水漏れを防止するための脱水立ち上げ制御動作における、ドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフ。
【図17】外槽からの水漏れを防止するための他の脱水立ち上げ制御動作における、ドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフ。
【図18】排水時間に対応する100rpmでの維持時間A、260rpmでの維持時間B(後述する)を示す表。
【図19】ドラム周面への洗濯物のへばりつきを防止するための脱水立ち上げ制御動作における、ドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフ。
【図20】毛布コースの脱水立ち上げ制御動作における、ドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフ。
【図21】脱水のみコースの脱水立ち上げ制御動作における、ドラム回転速度の概略的変化状況を示すグラフ。
【符号の説明】
1…外箱
2…上蓋
3…洗濯物投入口
7…台座部
10…外槽
12、12a、12b…ダンパ
120…シリンダ
121…ロッド
123…ばね受け板
124、127…フランジ
125、128…ネジ溝
126…軸
13…ドラム
14…主軸
15…補助軸
16、18…軸受ケース
17、19…軸受
20…ドラムモータ
20a…ステータ
20b…ロータ
20c…回転センサ
24…バランス室
30…制御部
31…負荷駆動部
32…インバータ駆動部
50…上部取付板
51…下部取付板
52、59…皿状座金
54、61…平座金
55、62…ナット
57…保護シート
58…隙間
53、56、60、63…クッション

Claims (15)

  1. 洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機において、
    a)ドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりも大きくなる回転速度であって且つ共振点に相当する共振回転速度よりも低いような第1の回転速度でドラムを回転させている状態で、ドラム周方向での洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重の大きさを検知する偏心荷重検知手段と、
    b)前記第1の回転速度よりも高く且つ前記共振回転速度よりは低い回転速度の範囲内でドラムの回転速度を略一定の加速度で以て上昇させるべく制御を行っている過程で、実際の加速度の変動に基づいてドラム軸方向における洗濯物の分布状況を反映した指標値を求める指標値取得手段と、
    c)前記偏心荷重検知手段により検知された偏心荷重の大きさに応じて異なる閾値を定め、前記指標値がその閾値を越える場合に、ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによって異常振動の発生の可能性が高いものと判定する判定手段と、を備えることを特徴とするドラム式洗濯機。
  2. 洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機において、
    a)ドラム内に収容されている含水状態での洗濯物の重量を反映したドラム回転時の慣性モーメント量を検知する慣性モーメント量検知手段と、
    b)ドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりも大きくなる回転速度であって且つ共振点に相当する共振回転速度よりは低い回転速度の範囲内でドラムの回転速度を略一定の加速度で以て上昇させるべく制御を行っている過程で、実際の加速度の変動に基づいてドラム軸方向における洗濯物の分布状況を反映した指標値を求める指標値取得手段と、
    c)前記慣性モーメント量検知手段により検知された慣性モーメント量に応じて異なる閾値を定め、前記指標値がその閾値を越える場合に、ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによって異常振動の発生の可能性が高いものと判定する判定手段と、を備えることを特徴とするドラム式洗濯機。
  3. 洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機において、
    a)ドラム内に収容されている含水状態での洗濯物の重量を反映したドラム回転時の慣性モーメント量を検知する慣性モーメント量検知手段と、
    b)ドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりも大きくなる回転速度であって且つ共振点に相当する共振回転速度よりも低いような第1の回転速度でドラムを回転させている状態で、ドラム周方向での洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重の大きさを検知する偏心荷重検知手段と、
    c)前記第1の回転速度よりも高く且つ前記共振回転速度よりは低い回転速度の範囲内でドラムの回転速度を略一定の加速度で以て上昇させるべく制御を行っている過程で、実際の加速度の変動に基づいてドラム軸方向における洗濯物の分布状況を反映した指標値を求める指標値取得手段と、
    d)前記慣性モーメント量検知手段により検知された慣性モーメント量と前記偏心荷重検知手段により検知された偏心荷重の大きさとに応じて異なる閾値を定め、前記指標値がその閾値を越える場合に、ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによって異常振動の発生の可能性が高いものと判定する判定手段と、を備えることを特徴とするドラム式洗濯機。
  4. 前記指標値取得手段は前記回転速度の範囲内で繰り返し指標値を求め、その度に前記判定手段はその指標値を前記閾値と比較して、その指標値が閾値を越えるケースが1乃至複数回発生したときに軸方向における洗濯物の分布の片寄りによって異常振動の発生の可能性が高いものと判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
  5. 洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機であって、前記ドラムを回転駆動するモータと、PWM駆動信号のデューティ比を制御することによって前記モータの回転速度を制御するモータ駆動手段と、を具備するドラム式洗濯機において、
    a)ドラムが停止した状態からドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力を上回る所定の回転速度に達するまではPWM駆動信号のデューティ比を順次変更するデューティ比設定制御を行い、ドラムの回転速度がその所定の回転速度に達した後は目標速度を設定した速度制御に切り替える回転制御手段と、
    b)デューティ比設定制御から速度制御に切り替えられた後の実際のドラムの回転速度の変動に基づいて、洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重を検知する偏心荷重検知手段と、を備えることを特徴とするドラム式洗濯機。
  6. 前記偏心荷重検知手段は実際のドラムの回転速度が前記目標速度又はそれとは異なる閾値速度を所定時間継続して下回った場合に偏心荷重が大きいと判断し、そのときに前記回転制御手段はドラムの回転を停止又はそれに近い速度まで落とすようにモータを制御することを特徴とする請求項5に記載のドラム式洗濯機。
  7. 洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機において、
    a)洗濯物に作用する遠心力が重力よりも大きくなる回転速度であって且つ共振点に相当する共振回転速度よりも低い第1の回転速度でドラムを回転させている状態での偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第1の偏心荷重判定手段と、
    b)第1の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得る場合にドラムの回転速度を上昇させ、前記共振回転速度よりも高く且つ洗濯物から水が抜けるような第2の回転速度でドラムを回転させている状態での偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第2の偏心荷重判定手段と、
    c)脱水行程開始後に始めて脱水の立ち上げ動作を行うに際し、前記第2の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得ないと判定された場合にはドラムの回転速度を落として洗濯物のほぐしから脱水の立ち上げ動作を再試行する一方、偏心荷重の大きさが許容し得ると判定された場合には高速脱水運転に移行するように制御を行い、脱水の立ち上げ動作の再試行による2回目以降の脱水の立ち上げ動作を行うに際しては、前記第2の偏心荷重判定手段による判定動作を省略して高速脱水運転に移行するように制御を行う運転制御手段と、を備えることを特徴とするドラム式洗濯機。
  8. 洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機であって、前記ドラムを回転駆動するモータと、PWM駆動信号のデューティ比を制御することによって前記モータの回転速度を制御するモータ駆動手段と、を具備するドラム式洗濯機において、
    a)ドラムが停止した状態からドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力を上回る第1の回転速度に達するまではPWM駆動信号のデューティ比を順次変更するデューティ比設定制御を行い、ドラムの回転速度が第1の回転速度に達した後は目標速度を設定した速度制御に切り替える起動時回転制御手段と、
    b)デューティ比設定制御から速度制御に切り替えられた後の実際のドラムの回転速度の変動に基づいて、洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第1の偏心荷重判定手段と、
    c)第1の回転速度よりも高く且つ共振点に相当する共振回転速度よりも低い第2の回転速度でドラムを回転させている状態での偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第2の偏心荷重判定手段と、
    d)第2の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得る場合にドラムの回転速度を上昇させ、前記共振回転速度よりも高く且つ洗濯物から水が抜けるような第3の回転速度でドラムを回転させている状態での偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第3の偏心荷重判定手段と、
    e)脱水行程開始後に始めて脱水の立ち上げ動作を行うに際し、前記第3の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得ないと判定された場合にはドラムの回転速度を落として洗濯物のほぐしから脱水の立ち上げ動作を再試行する一方、その第3の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得ると判定された場合には高速脱水運転に移行するように制御を行い、脱水の立ち上げ動作の再試行による2回目以降の脱水の立ち上げ動作を行うに際しては、前記第1の偏心荷重判定手段による判定動作を省略するように制御を行う運転制御手段と、を備えることを特徴とするドラム式洗濯機。
  9. 洗濯物を収容したドラムを水平な又は傾斜した軸を中心に高速回転させることで該洗濯物の脱水を行うドラム式洗濯機において、
    a)ドラム内での洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重を打ち消すような荷重をドラムに発生させるためのバランス調整手段と、
    b)ドラム内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりも大きくなる回転速度であって且つ共振点に相当する共振回転速度よりも低いような第1の回転速度でドラムを回転させている状態で、洗濯物の片寄りに起因する偏心荷重を検知し、その偏心荷重が大きい場合に前記バランス調整手段により偏心荷重が小さくなるようにバランス調整を実行するバランス調整実行手段と、
    c)第1の回転速度よりも高く且つ共振回転速度よりは低い回転速度の範囲内でドラムの回転速度を略一定の加速度で以て上昇させるべく制御を行っている過程で、実際の加速度の変動に基づいてドラム軸方向における洗濯物の分布状況を反映した指標値を求め、該指標値が所定の閾値を越えるか否かを判定することにより、ドラム軸方向における洗濯物の分布の片寄りによって異常振動の発生の可能性が高いか否かを判定する第1の偏心荷重判定手段と、
    d)バランス調整実行後に前記共振回転速度よりも高く且つ洗濯物から水が抜けるような第2の回転速度でドラムを回転させている状態での偏心荷重の大きさが許容し得るか否かを判定する第2の偏心荷重判定手段と、
    e)前記バランス調整の実行により偏心荷重が小さくなったときにドラムの回転速度を第1の回転速度から上昇させ、前記第1の偏心荷重判定手段による判定を実行し、そこで異常振動の発生の可能性が低いと判断したときにドラムの回転速度をさらに第2の回転速度まで上昇させ、前記第2の偏心荷重判定手段により偏心荷重の大きさが許容し得ない場合には、ドラムの回転速度を落として洗濯物のほぐしから脱水の立ち上げ動作を再試行する一方、偏心荷重の大きさが許容し得る場合には高速脱水運転に移行するように制御を行う運転制御手段と、を備えることを特徴とするドラム式洗濯機。
  10. 外箱と、該外箱の内部に設けられた外槽と、該外槽の内部に水平又は傾斜した軸を中心に回転自在に設けられたドラムと、該ドラム内に洗濯物を出し入れするために前記外槽に形成された開口部を開閉するために該外槽に設けられた外槽蓋と、を具備するドラム式洗濯機において、
    前記外槽を支え受けるために、前記外箱の下部に設けられた台座部側に下端部が、外槽側に上端部が固定された2本のダンパを備え、その2本のダンパは、上方から見たときにドラムの軸を挟んでそれぞれ両側に位置し、且つその軸と略直交する位置関係になるように設けられていることを特徴とするドラム式洗濯機。
  11. 前記ドラムの一方の端面の外側に位置する外槽の外側面に前記軸を駆動するための駆動源を取り付け、前記2本のダンパはドラム軸方向の中心に相当する位置よりも前記駆動源の取付位置側にずらして設けられたことを特徴とする請求項10に記載のドラム式洗濯機。
  12. 前記外槽にあって前記駆動源の取付位置側と反対側の該外槽上部を上方に牽引するためのばねを備えることを特徴とする請求項11に記載のドラム式洗濯機。
  13. 前記外槽の姿勢を維持するために前記外槽の上部側と外箱とを接続する複数の弱いばねを備えることを特徴とする請求項12に記載のドラム式洗濯機。
  14. 外箱と、その内側に回転自在にドラムを備える外槽と、前記外箱の下部に設けられた台座部に下端が固定され前記外槽を支え受ける複数本のダンパと、を具備するドラム式洗濯機において、
    前記ダンパは、外槽及び外箱にそれぞれ固定される金属製の取付板を挟み込む振動吸収用の弾性部材を介してその上下端部が該取付板に固定され、少なくとも中央部側に向いた弾性部材と取付板との間に、該取付板のエッジが弾性部材に食い込むことを防止するための保護用シート部材を介挿して成ることを特徴とするドラム式洗濯機。
  15. 外箱と、その内側に回転自在にドラムを備える外槽と、前記外箱の下部に設けられた台座部に下端が固定され前記外槽を支え受ける複数本のダンパと、を具備するドラム式洗濯機において、
    前記ダンパの上端部及び下端部はそれぞれ、外槽又は外箱に固定される金属製の取付板と該取付板の上下にあってダンパに対して係止される二枚の座金との間で圧縮状態にある二個の振動吸収用の弾性部材を介して前記取付板に固定され、当該洗濯機の動作時に前記弾性部材が圧縮変形しても前記座金の周縁端よりもはみ出さない程度の寸法的余裕を以て該座金と弾性部材とのサイズが決められていることを特徴とするドラム式洗濯機。
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