JP2005042095A - インクジェット記録用水系インク - Google Patents

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Abstract

【課題】 高印字濃度を付与し、分散安定性、吐出安定性に優れたインクジェット記録用水系インクを提供すること。
【解決手段】 下記工程1及び2を有するインクジェット記録用水分散体を含有する水系インクを提供する。
(工程1)水系溶媒中に、顔料と水不溶性ビニルポリマー(イ)粒子とを存在させた後、前記溶媒を除去し、水不溶性ビニルポリマー(イ)粒子で処理した顔料を得る工程、
(工程2)前記水不溶性ビニルポリマー(イ)粒子で処理した顔料、有機溶媒、水不溶性ビニルポリマー(ロ)、及び水を含む混合物を分散処理した後、有機溶媒を除去して、顔料を含む水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体を得る工程。
【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット記録用水分散体の製法、前記製法により得られる水分散体、及びインクジェット記録用水系インクに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置が低騒音で操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、広く用いられている。インクジェットプリンターに使用されるインクには、耐水性や耐光性を向上させるため、近年、顔料系インクが使用されている。
しかしながら、顔料系インクは、顔料が媒体に不溶であることから凝集が起こりやすく、インクの分散安定性、吐出安定性が課題になることが多い。
顔料粒子の分散安定性向上について、特許文献1では、顔料と水溶性ポリマーをロールミル装置に充填粉砕して、顔料と水溶性ポリマー分散剤との分散体を得た後、インク液を調製する技術が開示されており、特許文献2では、カルボキシル含有ポリアクリル樹脂を含有する固体顔料調整物が提案され、特許文献3では、水性媒体中に分散したポリマー微粒子の存在下で粉砕された顔料を用いること等が提案されている。
しかしながら、これらの技術では、水系インクの分散安定性、吐出安定性が不充分であり、更なる向上が求められている。
特許第2512861号公報 特許第2919045号公報 特開2002−20656号公報
本発明は、分散安定性、吐出安定性優れ、更に耐水性、耐擦過性が良好で、高印字濃度を付与しうる水系インク用として適した水分散体の製法、それを用いたインクジェット記録用水分散体、及びそれを含有するインクジェット記録用水系インクを提供することを課題とする。
本発明は、課題の解決手段として、下記工程1及び2を有するインクジェット記録用水分散体の製造方法、前記製法により得られるインクジェット記録用水分散体、及び前記水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供する。
(工程1)水系溶媒中に、顔料と水不溶性ビニルポリマー(イ)粒子とを存在させた後、前記溶媒を除去し、水不溶性ビニルポリマー(イ)粒子で処理した顔料を得る工程、
(工程2)工程1で得られた水不溶性ビニルポリマー(イ)粒子で処理した顔料、有機溶媒、水不溶性ビニルポリマー(ロ)、及び水を含む混合物を分散処理した後、有機溶媒を除去して、顔料を含む水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体を得る工程。
本発明において、「インクジェット記録用水系インク」における「水系」とは、水系インクに含まれる溶媒中、水が最大割合を占めていることを意味するものであり、水100質量%でも良いし、前記要件を満たすものであれば、水と1種又は2種以上の有機溶媒との混合物も含まれる。
本発明の水系インクは、高印字濃度を付与し、分散安定性、吐出安定性に優れ、更に耐水性、耐光性、耐擦過性に優れるインクジェット記録用水系インクとして好適に使用することができるものである。
以下、本発明の水系インクに用いる水分散体、前記水分散体を用いたインクジェット記録用水系インクを、その製造方法と共に説明する。また、以下においては製造工程ごとに説明するが、各工程は、それぞれが独立した工程でもよいし、2以上の工程を1つの工程として連続処理してもよく、1つの工程を分離して2以上の工程としてもよく、更に、必要に応じてインクの製造工程として公知の他の工程を付加することができる。
<工程1>
まず、水系溶媒中に、顔料と水不溶性ビニルポリマー(イ)粒子(以下、単に水不溶性ビニルポリマー粒子という)を存在させた後、必要に応じて攪拌する。その後、前記溶媒を除去し、必要に応じて粉砕を行い、水不溶性ビニルポリマー粒子で処理した顔料を得る。水不溶性ビニルポリマー粒子で処理した顔料は、水不溶性ビニルポリマー粒子と顔料の混合物であり、顔料同士の凝集を低下させることができる。
水系溶媒中に、顔料と水不溶性ビニルポリマー粒子を存在させる方法は特に制限されるものではない。顔料の水系溶媒懸濁液と水不溶性ビニルポリマー粒子の水系溶媒分散液を混合すればよい。好ましくは顔料の水系溶媒懸濁液に、水不溶性ビニルポリマー粒子の水系溶媒分散液を添加し、攪拌する方法が適用できる。
顔料の水系溶媒懸濁液は、カップリング反応により得られるアゾ顔料、ジスアゾ顔料等の水系溶媒中、顔料結晶を形成するものを用いることが好ましい。あるいは、水系溶媒中、顔料を粉砕したものを用いてもよい。
顔料の水系溶媒懸濁液は、水不溶性ビニルポリマー粒子と混合する前に、ポリマー粒子の凝集を起さないように公知のpH調整剤を用い、pHを4.5〜10に調整することが好ましい。
なお、ここでいう「水系溶媒」の「水系」とは、前述の意味である。水系溶媒としては、水以外に、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が含有されていてもよい。
水系溶媒中、顔料の含有量は、0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%が更に好ましく、水不溶性ビニルポリマー粒子の含有量は0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜10質量%が更に好ましく、水系溶媒(好ましくは水)の含有量は、60〜99質量%であることが好ましく、70〜98質量%が更に好ましい。
水系溶媒中、顔料の平均粒径は、水不溶性ビニルポリマー粒子との吸着性を高める観点から、1〜50μmが好ましい。粒径測定器は、HORIBA(株)製、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA-920を用いた。また、水系溶媒中の水不溶性ビニルポリマーの平均粒子径は、後述する平均粒径の測定法により、0.03〜10μmが好ましい。
工程1で、水系溶媒中に存在させる顔料と水不溶性ビニルポリマー粒子の割合は、顔料同士の凝集抑制の観点から、顔料100質量部に対して、水不溶性ビニルポリマー粒子を1〜100質量部が好ましく、より好ましくは3〜30質量部である。
溶媒の除去には、減圧、加熱、ろ過等の公知の方法を用いることができる。溶媒は、ほぼ完全に除去されていてもよく、残存していてもよい。溶媒を除去後、水不溶性ポリマー粒子で処理した顔料中、溶媒の残存含有量は5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。溶媒除去後、必要により粉砕を行ってもよい。
工程1で用いられる水不溶性ビニルポリマー粒子の量は、工程1及び工程2の両工程で用いられる水不溶性ビニルポリマー量(即ち、水不溶性ビニルポリマー(イ)と(ロ)の合計量)の5〜90質量%が好ましく、10〜60質量%が更に好ましい。
以下、本発明の製造方法で使用する顔料及び水不溶性ビニルポリマー(イ)及び(ロ)の詳細について説明する。
〔顔料〕
顔料は、耐光性及び耐水性の観点から、有機顔料及び無機顔料のいずれであってもよく、必要に応じて、それらに体質顔料を併用することもできる。体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジスアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。顔料の水系溶媒懸濁液の作り易さから、アゾ、ジスアゾ顔料がより好ましい。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー1,2,3,4,5,6,13,74,83,C.I.ピグメント・レッド1,3,4,6,37,38,41,42,C.I.ピグメント・オレンジ13,34等が挙げられる。
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
〔水不溶性ビニルポリマー〕
水不溶性ビニルポリマー(イ)及び(ロ)は、(A)ノニオン性のモノマー、(B)塩生成基含有モノマー及び(C)疎水性モノマーを含有するモノマー混合物(以下、モノマー混合物という)を重合させることによって製造されるものが好ましい。なお、本発明の課題を解決できる範囲内で他のモノマーを併用することができる。
(A)ノニオン性のモノマー〔モノマー(A)〕を用いることにより、印刷画像の光沢に優れ、低粘度かつ吐出性が優れた水系インクを得ることができるという利点がある。
モノマー(A)としては、下記一般式(I)で示されるものが好ましく、オキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシテトラメチレン単位を構成単位として有するモノマーが好ましく、pは、平均付加モル数を意味し、好ましくは2〜25である。
CH=CRCOO(AO)R(I)
〔式中、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン単位(但し、p個のオキシアルキレン単位は、同一でも異なっていてもよい。)オキシアルキレン単位が異なる場合は、ブロック付加、ランダム付加、及び交互付加のいずれでもよい。Rは水素原子又はメチル基、pは1〜50の数、Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜9のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を示す。〕
モノマー(A)としては、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール・プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール・テトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール・ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
商業的に入手しうるモノマー(A)の具体例としては、新中村化学(株)製のNKエステル M-20G, 40G, 90G, 230G, 日本油脂(株)のブレンマーPEシリーズ、 PME-100, 200, 400, 1000,PP-1000, PP-500, PP-800, AP-150, AP-400, AP-550, AP-800, 50PEP-300, 70PEP-350B, AEP シリーズ,30PPT-800, 50PPT-800, 70PPT-800, APTシリーズ,10PPB-500B, 10APB-500B, 50POEP-800B, 50AOEP-800B, ASEPシリーズ,PNEPシリーズ, PNPEシリーズ, 43ANEP-500, 70ANEP-550等が挙げられる。
(B)塩生成基含有モノマー〔モノマー(B)〕としては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが好ましい。アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アニオン性モノマーとしては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー及び不飽和リン酸モノマーからなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アニオン性モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
カチオン性モノマーとしては、不飽和3級アミン含有ビニルモノマー及び不飽和アンモニウム塩含有ビニルモノマーからなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
不飽和3級アミン含有モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアリールアミン、ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−6−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレートとアクリレートの両方を意味する。以下においても同様である。
不飽和アンモニウム塩含有モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート四級化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
カチオン性モノマーの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
(C)疎水性モノマー〔モノマー(C)〕としては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、マクロマー等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの内、印字濃度、耐水性及び耐擦過性の観点から、芳香環含有モノマー及びマクロマーからなる群より選ばれた1種以上が含有されていることが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、上記(イソ又はターシャリー)及び(イソ)は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルを示す。
芳香環含有モノマーは、耐水性の観点から、スチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸及びネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステルからなる群より選ばれた1種以上が好ましい。これらの中では炭素数6〜22の芳香族炭化水素基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びビニルナフタレンからなる群より選ばれた1種以上が、耐水性及び耐擦過性の観点からより好ましい。
マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有し、好ましくは数平均分子量が500〜500,000、より好ましくは1,000〜10,000 であるマクロマーが挙げられる。
マクロマーの具体例としては、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するメチルメタクリレート系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するスチレン・アクリロニトリル系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するブチルアクリレート系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するイソブチルメタクリレート系マクロマー等が挙げられる。これらの中では、ビニルポリマーに顔料を十分に含有させる観点から、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーが好ましい。
片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体及び片末端に重合性官能基を有する、スチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
片末端に重合性官能基を有する、スチレンと他のモノマーとの共重合体において、他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。また、そのスチレンの含有量は、顔料が十分にビニルポリマーに含有されるようにする観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーの中では、片末端に重合性官能基としてアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するスチレン系マクロマーが好ましい。
商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成(株)製のAS-6, AS-6S, AN-6, AN-6S, HS-6,HS-6S等が挙げられる。
シリコーンマクロマーの中では、一般式(II):
X(Y)Si(R3−r(Z) (II)
(式中、Xは重合可能な不飽和基、Yは2価の結合基、Rはそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基、Zは500 以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基、qは0又は1、rは1〜3の整数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが、インクジェットプリンターのヘッドの焦げ付きを防止する観点から好ましい。
一般式(II)で表されるシリコーンマクロマーにおいて、Xは重合可能な不飽和基であるが、その代表例としては、CH=CH−、CH=C(CH3)−等の炭素数2〜6の1価の不飽和炭化水素基が挙げられる。
Yは、2価の結合基であるが、その代表例としては、−COO−、−COO(CH−(aは1〜5の整数を示す)、フェニレン基等の2価の結合基が挙げられる。これらの中では−COOCH−が好ましい。
は、それぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基であるが、その具体例としては、水素原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基;フェニル基等の炭素数6〜20のアリール基;メトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。これらの中では、メチル基が好ましい。
Zは、好ましくは500 以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基であるが、好ましいZとしては、数平均分子量500〜5000のジメチルシロキサンポリマーの1価の残基が挙げられる。
qは0又は1であるが、好ましくは1である。rは1〜3の整数であるが、より好ましくは1である。
シリコーンマクロマーの代表例としては、下記の一般式(III)、(IV)、(V)、(VI)で表されるシリコーンマクロマー等が挙げられる。
CH=CR−COOCH−[Si(R)−O]−Si(R) (III)
CH=CR−COO−[Si(R)−O]−Si(R) (IV)
CH=CR−Ph−[Si(R)−O]−Si(R) (V)
CH=CR−COOCH−Si(OE) (VI)
〔式中の各記号の意味は次のとおり;
:水素原子又はメチル基
:それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基
b:5〜60の数
Ph:フェニレン基
E:−[Si(R)−O]−Si(R)基(Rは前記と同じ。cは5〜65の数を示す)〕
これらの中では、一般式(III)で表されるシリコーンマクロマーが好ましく、特に次の一般式(III-1):
CH=C(CH)−COOCH−[Si(CH)−O]−Si(CH) (III-1)
(式中、dは8〜40の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが好ましい。その具体例として、FM-0711〔チッソ(株)製、商品名〕等が挙げられる。
なお、マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/L のドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
モノマー混合物におけるノニオン性のモノマー(A)の含量は、吐出安定性及び印字濃度の観点から、好ましくは5〜45質量%、より好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。
モノマー混合物における塩生成基含有モノマー(B)の含量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは7〜25質量%である。
モノマー混合物における疎水性モノマー(C)の含量は、印字濃度及び分散安定性の観点から、好ましくは15〜87質量%、より好ましくは35〜85質量%、更に好ましくは40〜83質量%である。
モノマー(C)として芳香環含有モノマーを使用する場合、モノマー(C)における芳香環含有モノマーの含有量は、耐水性、耐擦過性、分散安定性を向上させる観点から、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは5〜90質量%、更に好ましくは10〜80質量%である。
モノマー(C)としてマクロマーを使用する場合、モノマー(C)におけるマクロマーの含有量は、耐水性及び耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは1 〜80質量%、より好ましくは2〜60質量%、更に好ましくは5〜40質量%である。
水不溶性ビニルポリマー(イ)、(ロ)の重量平均分子量(後述する製造例1〜4に記載の方法で測定)は、印字濃度と吐出安定性の観点から、好ましくは3,000〜300,000、より好ましくは5,000〜200,000である。
水不溶性ビニルポリマー(イ)、(ロ)は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマーを重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒は、極性有機溶媒であることが好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。
極性有機溶媒としては、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらと水との混合液が好ましい。
重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスブチレート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が好適である。また、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物を使用することもできる。
重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、更に重合連鎖移動剤を添加してもよい。重合連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン等の炭化水素類;アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、タービノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、α−メチルスチレンダイマー、9,10−ジヒドロアントラセン、1,4−ジヒドロナフタレン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;2, 5−ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられる。これらの重合連鎖移動剤は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
モノマーの重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成した水不溶性ビニルポリマーを単離することができる。また、得られた水不溶性ビニルポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
本発明で用いられる水不溶性ビニルポリマーは、塩生成基に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和させた後の水不溶性ビニルポリマーの25℃での水に対する溶解度が、水系インクの低粘度化の観点から10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
工程1で得られた水不溶性ビニルポリマーで処理した顔料は、公知の技術により、ろ過、洗浄を行った後のウェットケーキ状態のものでもよく、公知の技術により、ろ過、洗浄後、乾燥、粉砕を行った粉末状態のものでもよい。
<工程2>
次に、前記水不溶性ビニルポリマー粒子で処理した顔料、有機溶媒、水不溶性ビニルポリマー(ロ)、水及び必要に応じて中和剤、を含む混合物を分散処理した後、有機溶媒を除去して、顔料を含む水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体を得る。
水不溶性ビニルポリマー(イ)及び(ロ)は、前記モノマー(A)、(B)及び(C)を含有するモノマー混合物を重合させて得られるものが好ましいが、優れた分散安定性、吐出安定性を有するインクジェット記録用水系インクを得るために、更に、前記モノマー(A)、(B)及び(C)の質量割合が同一であることが更に好ましく、同一モノマー組成(各モノマーの種類とその質量割合が同一)であることが特に好ましい。
この工程の処理方法としては、水不溶性ビニルポリマー(ロ)を有機溶媒に溶解させ、前工程で得られた水不溶性ビニルポリマー粒子で処理した顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤を加えた混合物を混練した後、必要に応じて水で希釈し、有機溶媒を留去して水系にし、顔料を含む水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体にする方法が好ましい。
混合物中、水不溶性ビニルポリマー粒子で処理した顔料は5〜50質量%が好ましく、有機溶媒は5〜50質量%が好ましく、水不溶性ビニルポリマー(ロ)は2〜40質量%が好ましく、水は10〜70質量%が好ましい。
混合物を分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼(株)製、商品名〕、エバラマイルダー〔荏原製作所(株)製、商品名〕、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス〔以上、特殊機化工業(株)製、商品名〕、クリアミックス〔エム・テクニック(株)製、商品名〕、ケイディーミル〔キネティック・ディスパージョン社製、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
なお、さらに剪断応力を加えて二次分散を行い、所望の粒径となるまで微粒化を行うことが好ましい。
二次分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔(株)イズミフードマシナリ製、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社製、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社製、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー(株)製、商品名〕、アルティマイザー〔スギノマシン(株)製、商品名〕、ジーナスPY〔白水化学(株)製、商品名〕、DeBEE2000 〔日本ビーイーイー(株)製、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中では、混合物に含まれている顔料の小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
なお、混合物を分散させる際の温度は、特に限定がないが、通常、5〜50℃であることが好ましい。
また、混合物の分散は、分散後における着色剤を含有する水不溶性ポリマーの平均粒径が、分散安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.20μm、より好ましくは0.03〜0.15μmとなるまで行うことが望ましい。
次に、顔料を含む水不溶性ポリマー粒子の分散体に含まれる有機溶媒を減圧蒸留等による一般的な溶媒除去法により、除去することにより、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体が得られる。
ここで顔料を含む水不溶性ポリマー粒子としては、顔料と水不溶性ポリマーにより粒子が形成されていれば、その粒子形態は特に限定されるものではなく、例えば、水不溶性ポリマーに顔料が内包された粒子形態、水不溶性ポリマーに顔料が均一に分散した粒子形態、水不溶性ポリマーに顔料の一部が包含されてはいるが、粒子表面に顔料が露出された粒子形態等が挙げられる。また、顔料を含む水不溶性ポリマー粒子の水分散体とは、顔料を含む水不溶性ポリマー粒子の固体分が水を主溶媒とする中に分散しているものである。
工程2で用いられる水不溶性ビニルポリマー(ロ)の量は、工程1及び工程2の両工程で用いられる水不溶性ビニルポリマー量(即ち、水不溶性ビニルポリマー(イ)と(ロ)の合計量)の10〜95質量%が好ましく、40〜90質量%が更に好ましい。
水不溶性ビニルポリマー粒子で処理した顔料100質量部(水不溶性ビニルポリマー(イ)と顔料の合計量)に対して、工程2で用いる、水不溶性ビニルポリマー(ロ)の量は、分散安定性、吐出安定性の観点から5〜100質量部であることが好ましい。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられ、水に対する溶解度が20℃において、50質量%以下が好ましい。
アルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトン及びメチルエチルケトンが好ましい。
また、必要により、有機溶媒と高沸点親水性有機溶媒とを併用してもよい。高沸点親水性有機溶媒としては、フェノキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
中和剤として、塩生成基の種類に応じて酸又は塩基を使用することができる。酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の有機酸が挙げられる。塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。
中和度には、特に限定がない。通常、得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。
以上の製造方法により、本発明のインクジェット記録用水分散体が得られる。顔料を含む水不溶性ビニルポリマー粒子の平均粒径は、ノズルの目詰まり防止及び分散安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.50μm、より好ましくは0.02〜0.30μm、更に好ましくは0.05〜0.20μmである。平均粒径は実施例に示す「保存前の平均粒径」に相当し、実施例に示す方法で測定される。
本発明では、本発明の顔料を含む水不溶性ポリマー粒子のインクジェット記録用水分散体に、必要により、水溶性有機溶媒、湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤等の添加剤を含有させ、インクジェット記録用水系インクとすることできる。
水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1 −ブタノール、2−ブタノール、2 −メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1 −ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2 −ブタノール及び3−メチル−2−ブタノール等のモノアルコール化合物、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリトリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン及び1,2,6−ヘキサントリオール等の多価アルコール化合物、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は1種類を使用しても良く、2種類以上の水溶性有機溶媒を併用しても良い。これらの水溶性有機溶媒の添加量は、顔料分散物から持ち込まれる量も含めて、水系インク中、1〜50質量%が好ましい。
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリセリンモノn−ブチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等の含窒素化合物を使用することができる。水系インク中における湿潤剤の量は、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.1〜30質量%である。
分散剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性界面活性剤を用いることができる。
本発明のインクジェット記録用水分散体及び水系インクにおける顔料を含む水不溶性ビニルポリマー粒子(固形分)の量は、通常、印字濃度及び吐出安定性の観点から、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、更に好ましくは2〜15質量%となるように調整することが望ましい。また、前記水分散体中及び水系インク中、水の含量は、40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%が更に好ましい。
本発明のインクジェット記録用水系インクは、水不溶性ビニルポリマー粒子で処理した顔料を用いることで、分散安定性、吐出安定性に優れたインクジェット記録用水系インクとなる。これは、水不溶性ビニルポリマー粒子と顔料の間での疎水性相互作用に基づき、水不溶性ビニルポリマー粒子が顔料に対して吸着性を発現し、顔料の凝集を防ぐことで、水系インク中の粗大粒子を低減できることに基づくと考えられる。
また、不溶性ビニルポリマー(イ)及び(ロ)が、共に前記モノマー(A)、(B)及び(C)を含有するモノマー混合物を重合させて得られたものを用いることで、得られる水系インクは、更に優れた分散安定性、吐出安定性を有するインクジェット記録用水系インクを得ることができる。これは、顔料を処理する水不溶性ビニルポリマー粒子と、顔料を含む水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体を製造するために用いる水不溶性ビニルポリマー(ロ)との相溶性が良いことに基づくものと考えられる。
本発明のインクジェット記録用水系インクは、付与された高い疎水性により、親水性表面をもつ紙への浸透が抑制されるので、顔料を紙表面に効果的に残留させることができるため、高い印字濃度を得ることができる。
製造例1〜5及び比較製造例1
反応容器内に、メチルエチルケトン3質量部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03質量部、及び表1に示す各モノマー(質量部表示)のそれぞれの10質量%の量ずつを入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロート中に、表1に示す各モノマー(質量部表示)の残りの90質量%の量を仕込み、次いで重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.27質量部、メチルエチルケトン40質量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2 質量部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、その混合溶液の液温を65℃で2時間維持した後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3 質量部をメチルエチルケトン5質量部に溶解した溶液を該混合溶液に加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の一部を、減圧下、105℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによって単離した。標準物質としてポリスチレン、溶媒として60mmol/Lのリン酸及び50mmol/L のリチウムブロマイド含有ジメチルホルムアミドを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定した。
なお、表1に示す各化合物の詳細は、以下のとおりである。
・メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(一般式(I)において、p=4):新中村化学(株)製、商品名:NKエステルM-40G
・メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(一般式(I)において、p=23):新中村化学(株)製、商品名:NKエステルM230G
・ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(一般式(I)において、p=9):日本油脂(株)製、商 品名:ブレンマーPP-500
・オクトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノメタクリレート(EO平均付加モル数8モル,PO平均付加モル数6モル、一般式(I)において、p=14):日本油脂(株)製、商品名:ブレンマー50POEP-800B
・スチレンマクロマー:東亜合成(株)製、商品名:AS-6S、数平均分子量:6000 、重合性官能基:メタクロイルオキシ基
Figure 2005042095
実施例1〜5
2−メトキシ−4−ニトロ−アニリン182.7質量部と2−ニトロ−4−メチルアニリン5.1質量部とを、水1300質量部及び35%塩酸290質量部の混合物中に加えて攪拌し、それから0℃に冷却し、亜硝酸ソーダ80質量部を加えてジアゾ化し、ジアゾ溶液を得た。
別に2−メトキシアセトアセトアニライド241.8質量部を水5000質量部中に加え、水酸化ナトリウム48質量部と共に溶かし、次いで酢酸196質量部と水196質量部との混合液を添加することによって析出させ、カップリング成分の懸濁液を得た。前記ジアゾ溶液をよく撹拌しながら、15℃において、1時間30分〜2時間以内に、上記のカップリング成分の酢酸酸性懸濁液に流下して、顔料を得た。顔料水系溶媒懸濁液中、顔料の含有量は、5.7質量%であり、顔料の平均粒径は、10μmであった。
次に、製造例1〜5で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー45部をメチルエチルケトン405質量部に溶かし、その中に中和剤(20 %水酸化ナトリウム水溶液)を所定量加えて塩生成基の70モル%を中和し、イオン交換水1080質量部を加え、攪拌した。その後、減圧下でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより得られた固形分濃度が20質量%の水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体を得た。水不溶性ビニルポリマー粒子の平均粒径は、表1に記載する。
前記顔料水系溶媒懸濁液を水酸化ナトリウムでアルカリ性(pH9)に調整した前記顔料水系溶媒懸濁液7539.6質量部と、上記水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体225質量部とを混合し、攪拌した後得られたポリマー処理顔料を濾過、水洗、乾燥、粉砕し、463質量部の黄色の水不溶性ビニルポリマー粒子で処理した顔料(以下、ポリマー処理顔料という)を得た。顔料と水不溶性ビニルポリマー粒子の混合割合は、顔料100質量部に対して水不溶性ビニルポリマー粒子は、10.5質量部である。
上記ポリマー処理顔料の製造時に使用した水不溶性ビニルポリマーと全く同一組成のポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー5.1質量部をメチルエチルケトン45質量部に溶かし、その中に中和剤(20%水酸化ナトリウム水溶液)を所定量加えて塩生成基の70モル%を中和し、更に上記で得られたポリマー処理顔料24.9質量部を添加した後、ビーズミルで2時間混練した。
得られた混練物に、イオン交換水120質量部を加え、攪拌した後、減圧下で60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、固形分濃度が20質量%の顔料を含む水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体を得た。顔料を含む水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体の平均粒径は、表2に記載する。
得られた水分散体を用いて水系インクを調整した。インク組成を以下に示す。
顔料分散体 30質量%
グリセリン 10質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 7質量%
サーフィノール465(エアプロダクツ社製) 1質量%
Ploxel XL2(S)(ZENECA社製) 0.08質量%
イオン交換水 51.92質量%
これらの成分を混合し、得られた混合液を0.5μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm 、富士写真フイルム(株)製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ(株)製〕で濾過し、粗大粒子を除去し、表2に示す組成の水系インクを得た。
実施例6
実施例1において、ポリマー処理顔料の製造時に製造例1のビニルポリマーを用い、水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体を製造する際に製造例4のビニルポリマーを用いた以外は、実施例1同様に処理し表2に示す水系インクを得た。
比較例1
顔料乾燥工程前に水不溶性ビニルポリマーを添加しない以外は製造例4のビニルポリマーを用い実施例1と同様に処理し表2に示す水系インクを得た。
比較例2
比較製造例1の水溶性ビニルポリマーを用いた以外は実施例1と同様に処理し表2に示す水系インクを得た。
次に、得られた水系インクの物性を下記方法に基づいて評価した。その結果を表2に示す。
(1)平均粒径及び分散安定性
大塚電子(株)製、レーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント法)を用い、インクに含まれている着色剤を含有するポリマー粒子の平均粒径(以下、「保存前の平均粒径」という)を測定した。インクを密閉容器に入れ、60℃の恒温槽に1ヵ月保存後、同様の方法にて平均粒径(以下、「保存後の平均粒径」という)を測定した。分散安定性の指標として、分散安定度を次式:
分散安定度(%)=(〔保存後の平均粒径〕/〔保存前の平均粒径〕)×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:分散安定度が95%以上105%未満。
○:分散安定度が90%以上95%未満、又は105%以上110%未満。
△:分散安定度が70%以上90%未満、又は110%以上130%未満。
×:分散安定度が70%未満又は130%以上。
(2)吐出安定性
市販のエプソン社製のインクジェットプリンター(型番:EM900C)を用い、インクの吐出性を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
○:全ノズルで吐出良好。
△:一部のノズルで吐出不良あり。
×:吐出不良。
(4)印字濃度
前記プリンターを用い、市販のコピー用紙にベタ印字し、25℃で1時間放置後、印字濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、品番:RD914) で測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:印字濃度が1.2以上。
○:印字濃度が1.1以上1.2未満。
△:印字濃度が1.0以上1.1未満。
×:印字濃度が1.0未満。
(5) 耐光性
前記印字濃度を測定したベタ印字物に、キセノンフェードメーター(ATLAS 社製、商品名)で10000カウント照射し続けた後、再びマクベス濃度計RD914で照射前における測定と同じ印字箇所の印字濃度を測定した。照射前の印字濃度に対する照射後の印字濃度の残存率を次式:
残存率(%)=(〔照射後の印字濃度〕/〔照射前の印字濃度〕)×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて耐光性を評価した。
〔評価基準〕
◎:残存率が95%以上。
○:残存率が80%以上95%未満。
△:残存率が60%以上80%未満。
×:残存率が60%未満。
(6)耐水性
前記プリンターを用い、市販のコピー用紙にベタ印字し、25℃で1時間乾燥させた試料の特定の印字箇所の印字濃度を測定後、静水中に垂直に10秒間浸漬し、そのまま垂直に引き上げた。25℃で24時間自然乾燥させた後、浸漬前と同じ箇所の印字濃度を測定し、浸漬前の印字濃度に対する浸漬後の印字濃度の残存率を次式:
残存率(%)=(〔浸漬後の印字濃度〕/〔浸漬前の印字濃度〕)×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
〔評価基準〕
◎:残存率が95%以上。
○:残存率が80%以上95%未満。
△:残存率が60%以上80%未満。
×:残存率が60%未満。
(7)耐擦過性
前記プリンターを用い、市販のコピー用紙にベタ印字し、25℃で24時間乾燥させた後、指で強く印字面を擦った。その印字のとれ具合を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:印字は全くとれない。
○:ほとんど印字はとれず、周りが汚れない。
△:少し印字が擦りとられ、周りが少し汚れ、指も少し汚れる。
×:かなり印字が擦りとられ、周りがかなりひどく汚れ、指も相当汚れる。
Figure 2005042095
表2に示された結果から、各実施例で得られた水系インクは、いずれも、分散安定性、吐出安定性に優れ、コピー用紙に高印字濃度の印刷物が得られ、耐光性、耐水性、耐擦過性にも優れたものであることがわかる。

Claims (9)

  1. 下記工程1及び2を有するインクジェット記録用水分散体の製造方法。
    (工程1)水系溶媒中に、顔料と水不溶性ビニルポリマー(イ)粒子とを存在させた後、前記溶媒を除去し、水不溶性ビニルポリマー(イ)粒子で処理した顔料を得る工程、
    (工程2)工程1で得られた水不溶性ビニルポリマー(イ)粒子で処理した顔料、有機溶媒、水不溶性ビニルポリマー(ロ)、及び水を含む混合物を分散処理した後、有機溶媒を除去して、顔料を含む水不溶性ビニルポリマー粒子の水分散体を得る工程。
  2. 工程1で、顔料100質量部に対して、水不溶性ビニルポリマー(イ)粒子を1〜100質量部用いる、請求項1記載の水分散体の製造方法。
  3. 水不溶性ビニルポリマー(イ)及び(ロ)が、(A)ノニオン性のモノマー、(B)塩生成基含有モノマー、及び(C)疎水性モノマーを含有するモノマー混合物を重合させてなるものである、請求項1又は2記載の水分散体の製造方法。
  4. 水不溶性ビニルポリマー(イ)及び(ロ)が、同一モノマー組成である、請求項3記載の水分散体の製造方法。
  5. (C)疎水性モノマーが、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー及びマクロマーから選ばれた1種以上を含有する請求項3又は4記載の水分散体の製造方法。
  6. マクロマーが、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーである請求項5記載の水分散体の製造方法。
  7. 顔料が、アゾ及び/又はジスアゾ顔料である、請求項1〜6いずれかの項記載の水分散体の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法により得られるインクジェット記録用水分散体。
  9. 請求項8記載の水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。


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WO2005123843A1 (ja) * 2004-06-22 2005-12-29 Canon Kabushiki Kaisha 分散性色材とその製造方法、それを用いた水性インク、インクタンク、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録画像
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