JP2005040674A - 土壌の処理装置及び処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第一の工程において、有機ハロゲン化合物を含有する土壌を間接的に加熱し前記有機ハロゲン化合物を揮発させ、第二の工程において、第一の工程により揮発した前記有機ハロゲン化合物ガスを空気と反応させながら間接的に加熱して、前記有機ハロゲン化合物を分解する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ハロゲン化合物により汚染された土壌の処理装置及び処理方法に係り、特に含有物の少なくとも一部としてPCB類(ポリクロロビフェニル類)もしくはダイオキシン類などのような有機ハロゲン化合物を含有する土壌の処理装置及び処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCB類もしくはダイオキシン類は、難分解性の物質であり、人体に悪影響を及ぼす有害な物質であることから、これまで生産しもしくは副生成物として生成したこれらの有機ハロゲン化合物の処理が急がれている。これらの物質が純粋な形態で保管されている場合には比較的簡単に処理を行うことができるが、これらの物質が低濃度で土壌中に含まれている場合には、このような汚染された土壌を処理することは、極めて困難であった。これまで、PCB類もしくはダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物を含有する汚染土壌の処理装置及び方法としては、最終埋立地に搬送し埋設するか、コンクリートなどで囲い込みをするのが一般的であった。これらはPCB類やダイオキシン類を一般環境から隔離するための緊急手段としては効果があるが、PCB類やダイオキシン類は難分解性物質であるため、長期にわたり分解されずに安定的に存在することになる。そのためこれらの物質が最終埋立地やコンクリートから溶出し、一般環境中へ浸出する危険性がある。
【0003】
有機ハロゲン化合物を処理する他の装置及び方法として、加熱によりPCB類、ダイオキシン類を土壌から分離抽出し処理する装置及び方法が知られている。そして、抽出されたPCB類、ダイオキシン類の分解装置及び方法として、ガス状のPCB類、ダイオキシン類を触媒で分解する方法(特許文献1)、ガス状のPCB類、ダイオキシン類を1000℃前後のアフターバーナーで2次燃焼する分解装置及び方法(特許文献2)、ガス状のPCB類、ダイオキシン類を凝縮回収し、化学的分解法で分解する装置及び方法(特許文献3)が提案されている。
【0004】
ところで、一般に土壌には上記有機ハロゲン化合物以外の有機化合物が数重量%含まれているため、PCB類、ダイオキシン類を抽出する加熱工程で、土壌中に含まれている有機化合物が熱分解し、炭化水素ガスが生成することになる。上記触媒による分解方法においては、上述した炭化水素ガスが触媒を劣化させ、また加熱工程から発生する粉塵、ダスト類が触媒活性面を被覆し触媒の活性を損なうことになる。さらには、PCB類、ダイオキシン類の分解で生成するハロゲン化水素により触媒を被毒し、同様に触媒の活性を損なうなどの問題があった。また、2次燃焼による分解装置及び方法においては、燃焼によって新たにダイオキシン類が生成してしまう問題や、PCB類、ダイオキシン類汚染土壌処理施設から燃焼による多量の排ガスが放出され、その処理に多大な処理施設を必要とする問題があった。また、凝縮回収したPCB類、ダイオキシン類を化学的分解法で分解する装置及び方法は安全で確実であるが、前記土壌から抽出した抽出液には、有機化合物の熱分解生成物が多量に存在するため、PCB類、ダイオキシン類の分解を阻害してしまう問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平07−32895号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平11−148631号公報
【0007】
【特許文献3】
特開2001−9409号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、汚染土壌を間接加熱法により分離揮発したPCB類、ダイオキシン類を多量の排ガスを放出することなく、また新たにダイオキシン類を生成することなくPCB類やダイオキシン類を安全かつ確実に分解することができる汚染土壌の処理装置及び方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様に係る土壌の処理装置は、有機ハロゲン化合物を含有する土壌を間接的に加熱して有機ハロゲン化合物を揮発させる第一の間接加熱装置と、前記第一の間接加熱装置より揮発させた有機ハロゲン化合物ガスを間接的に加熱して分解する第二の間接加熱装置と、前記第二の間接加熱装置に空気を供給する空気供給源とを具備する。
【0010】
本発明の他の態様に係る土壌の処理方法は、有機ハロゲン化合物を含有する汚染土壌を浄化処理する方法において、該土壌を間接的に加熱し前記有機ハロゲン化合物を揮発させる第一の工程と、第一の工程により揮発した前記有機ハロゲン化合物ガスを空気と反応させ、前記有機ハロゲン化合物ガスを分解する第二の工程とを有する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、間接加熱とは、加熱源に対して被加熱物が分離された空間で加熱されることであり、例えば加熱源から放射伝熱によって被処理物を加熱することである。この場合、燃焼ガスが処理装置の系内に入り込むことがない。一方、直接加熱とは被処理物の空間内に燃焼及び空気などを送り込み燃焼する形式で、燃焼ガスが処理装置の系内に入り込む。このため、汚染土壌にガスを送り込み汚染土壌に含まれている有機ハロゲン化合物を直接的に燃焼する方法は、排ガス量が多くなることにより、発生した排ガスを後段で処理する装置が大きくなることや、その排ガス処理装置のメンテナンスにも手間がかかるという難点がある。これに対して、間接加熱は直接加熱方式と比較して、発生する排ガス量が少なくなるという利点がある。具体的には、汚染土壌に高カロリー廃棄物を加えて焼却し、さらに直接加熱で有機ハロゲン化合物を処理する場合の排ガス量は、10kgあたり約100Nm3である。これに対して、間接加熱で土壌を加熱し、さらに間接加熱で有機ハロゲン化合物を処理する場合の排ガス量は土壌10kgあたり数Nm3と、直接加熱と比べて1/10以下である。このように本発明に従って間接加熱を行うことにより土壌中に含まれている有機ハロゲン化合物を処理する方法は、排ガス量が少なく後段での排ガス処理も簡便となり優れている。また、間接加熱で土壌を加熱し、直接加熱で有機ハロゲン化合物を処理する方式は、燃焼炉内の温度むらやガスの吹き抜けがあるため、安定した温度制御が難しく、安定した有機ハロゲン化合物の分解が難しい。これに対して、本発明では複数の加熱装置を用いて間接加熱を行うため、安定した温度制御が可能であり、有機ハロゲン化合物を安定して分解することができる。この点は、本発明の有機ハロゲン化合物の処理を目的とした実施形態では重要な部分である。
【0012】
本発明で処理する有機ハロゲン化合物としては、難分解性化合物であるPCB類、ダイオキシン類、及び揮発性化合物であるトリクロロエチレンなど種々の化合物が挙げられる。
【0013】
本発明において、前記土壌を間接的に加熱して前記有機ハロゲン化合物を揮発させる第一の工程の温度は、200〜600℃とすることが好ましい。200℃未満で汚染土壌の処理を行うと、汚染土壌に含まれているPCB類やダイオキシン類が完全に揮発せずに土壌中に残留してしまう恐れがある。また、600℃を越える温度に加熱すると土壌の質が変化してしまうためこの土壌を再利用することが困難になる場合がある。そのため汚染土壌からPCB類やダイオキシン類を揮発させる加熱温度は、200〜600℃で処理を行うことが好ましい。さらに、第一の工程の温度は高いほど短時間で処理することができるが、1時間以内の加熱時間で有機ハロゲン化合物を99%揮発させるには、350〜500℃の温度範囲が望ましい。また第一の工程に空気を添加するとダイオキシン合成の可能性があるため、第一の工程の酸素濃度は10%以下が望ましい。
【0014】
前記揮発した有機ハロゲン化合物ガスを空気と反応させてハロゲン化水素と二酸化炭素を含む物質に分解する第二の工程の温度は、600〜1300℃とすることが望ましい。また、この工程においても、間接的な加熱を行う。この第二の工程の温度が600℃未満の場合には、第一の工程で汚染土壌から揮発したPCB類やダイオキシン類が空気と完全に反応せず、有機ハロゲン化合物の分解効率が非常に悪い。また、反応温度が1300℃を超える場合には、炉体の寿命低下、間接加熱によるエネルギー投入量の増大、後処理工程(ガス冷却)の負荷増大などの問題が生ずる。また第一の工程で汚染土壌から揮発したPCB類やダイオキシン類に含まれている炭素が炭化してしまい、反応部本体内部に炭素質生成物が蓄積し反応室本体の機能を損なう可能性がある。
【0015】
また、第二の工程における有機ハロゲン化合物ガスの滞留時間は2〜10秒とすることが好ましい。2秒より小さい場合には汚染物質は充分に分解せずに残存してしまう。また、10秒より大きい場合には必要な滞留時間に対して過剰に長時間の処理を行うため、装置が過剰に大きくなり、熱効率も悪い。
【0016】
第二の工程の設定温度は高いほど前記有機ハロゲン化合物ガスの分解率が向上する。温度と分解率の関係は、第二の工程におけるガスの滞留時間に依存するが、滞留時間が5秒の場合、加熱温度600℃では分解率23%、温度700℃では分解率34%、温度800℃では分解率78%、温度900℃では分解率99%、1000℃では分解率99.99%、1100℃では分解率99.999%であった。従って、第二の工程におけるガスの滞留時間を5秒程度とし、前記有機ハロゲン化合物ガスの分解率を99%以上とするには、900〜1200℃の温度範囲が望ましい。
【0017】
さらに、前記揮発した有機ハロゲン化合物ガスを空気と反応させて少なくともハロゲン化水素と二酸化炭素を含む物質に分解する第二の工程において、第二の工程に添加する空気量を、第二の工程において生成する気体成分中の一酸化炭素または水素の濃度により制御することが好ましい。これによって簡便な方法で精度良く反応を制御することができる。
【0018】
以下に本発明の実施の形態を図1を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る土壌の処理装置を示す図である。図1に示す処理装置は、第一の工程を実施する土壌加熱部1と、第二の工程を実施する予備加熱部2及び加熱分解部3とを有する。
【0020】
第一の工程の土壌加熱部1は、有機ハロゲン化合物を含有している土壌を加熱処理して、有機ハロゲン化合物を揮発させるための装置であり、土壌加熱部本体11と、該土壌加熱部本体11に土壌を供給する土壌投入部12と、該土壌加熱部本体11の外部に設けられた間接加熱装置13と、該土壌加熱部本体11の温度を測定する温度測定装置14と、該温度測定装置14から出力される温度情報に基づいて土壌加熱部本体11を加熱するための間接加熱装置13を制御する温度制御装置15と、該土壌加熱部本体11において処理した土壌を排出する土壌排出部16と、該土壌加熱部本体11において加熱された結果生成するガスを排出する生成ガス排出口17とを備えている。
【0021】
前記土壌加熱部本体11は、回転式スクリューフィーダーや回転式キルンなどの装置を用いることができる。これらの装置を用いることにより間接的に加熱を行い、PCB類やダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物を効果的に揮発させることができる。また、前記間接加熱装置13としては、電気抵抗加熱装置、燃焼加熱装置など、周知の加熱装置を用いることができるが、制御が容易なことから電気抵抗加熱装置が適している。さらに、前記温度測定装置14としては、熱電対など、これも周知の装置を用いることができる。
【0022】
第二の工程のための装置である予備加熱部2は、前記第一の工程によって生成した有機ハロゲン化合物ガスを第二の工程における分解反応の温度に予備的に加熱するための装置であり、予備加熱部本体21、生成ガス導入口22を有しており、前記第一の工程において生成した有機ハロゲン化合物ガス、及び第二の工程において添加する空気を導入できるようになっている。また、この予備加熱部においても間接加熱することが好ましく、この予備加熱部本体21の周囲には間接加熱装置23、温度測定装置24、及び温度制御装置25が配置されている。
【0023】
この予備加熱部2は、以下において説明する反応部本体31で、被処理ガスを急速昇温によって所要の温度に昇温することが可能であれば、省略することも可能である。
【0024】
上記予備加熱部2で加熱された生成ガスは、加熱分解部3に供給される。この加熱分解部は前記第一の工程において生成した有機ハロゲン化合物ガスを所定の温度に加熱することによって空気と反応させ、有機ハロゲン化合物ガスを少なくともハロゲン化水素と二酸化炭素を含む物質に分解するための装置であり、この加熱分解部3は、反応部本体31を備えており、この反応部本体31の周囲には間接加熱装置33が配置されている。この間接加熱装置33は、温度測定装置34で測定した反応部本体31内部の温度が所定の温度に達しない場合に温度制御装置35の制御によって反応部本体31を加熱するようになっている。この間接加熱装置33は、前述の第一の工程の間接加熱装置13と同様に、電気抵抗加熱装置や燃焼加熱装置を用いることができる。この反応部本体31において生成した排ガスは、排ガス排出口36を経由して、排ガス処理装置37に導入され、反応部本体31で生成したハロゲン化水素をアルカリ性物質で処理した後、排ガス排出口38を経由して大気中に放散することができる。
【0025】
また、前記反応部本体31には、この反応部本体31での反応の結果生成した物質を分析し、有機ハロゲン化合物ガスの分解反応が予測通り進行しているか否か判断するためのガス検出装置41及びガス分析装置42を備えていることが望ましい。この装置によって検知する物質としては、一酸化炭素と水素を対象とすることが好ましく、従って、前記ガス検出装置41としては、周知の一酸化炭素センサーや水素センサーを用いることができる。また、前記ガス分析装置42は、このガス検出装置41からの出力信号を分析し発生ガス量を判断するための装置であり、ディジタル計算機、あるいは、専用の制御回路によって実現することができる。
【0026】
また、前記ガス分析装置42の出力は、空気量制御装置43に接続され、その出力信号により空気添加装置44を駆動して、空気供給配管45を経由して前記予備加熱部2に供給することができるようになっている。
【0027】
前記反応部本体31を構成する部材の素材としては、PCB類やダイオキシン類が空気と600〜1300℃という高温で反応し、ハロゲン化水素と二酸化炭素を含む物質に分解され、反応部本体31内部はハロゲン化水素の酸性雰囲気となることから、酸性雰囲気にも充分耐えうるように、ニッケル、コバルト、クロム、タングステンを含有した鉄ベースの耐熱合金素材を用いることが好ましい。またSUS310S、SUS316のような汎用品で値段の安い素材を用いて、反応部本体を消耗品として定期的に交換しても良い。
【0028】
前記土壌加熱部本体11、予備加熱部本体21、及び反応部本体31において、ダストなどの加熱分解生成物が、それぞれの装置の壁面に付着して、処理能力が低下した場合に分解反応生成物を掻き落とすための機構を配置しても良い。
【0029】
以下、前記処理装置を用いた本発明の処理方法を説明する。
PCB類やダイオキシン類で汚染された土壌を、処理装置の土壌投入部12に投入し、土壌加熱部本体11に送り込む。土壌投入部12には、加熱により揮発するPCB類、ダイオキシン類が系外に放出することを防止するために、2重ダンパー12aのような気体拡散防止手段を設けることが好ましい。さらに、より効果的にPCB類、ダイオキシン類の放出を防ぐには二重ダンパー間をマイナス5mmAQ程度に減圧することが好ましい。ポンプを用いて減圧排気した空気には、有機ハロゲン化合物が含有されると考えられることから、この空気を第二の工程に送り、含有される有機ハロゲン化合物の分解処理を行うことが好ましい。
【0030】
土壌投入部12から投入された土壌は、土壌加熱部本体11である回転式スクリューフィーダー、もしくは回転式キルンなど、土壌を間接加熱することのできる装置に搬送する。この回転式スクリューフィーダーは、例えば、シリンダーとその内部に配置される二軸のスクリュー、及びこれを回転駆動するためのモータから構成される。そして、その外部には、外部加熱用の電気ヒーターもしくは外部からの燃焼バーナーが配置される。また、回転式キルンは、キルンを構成する容器全体が回転できるようになっており、その容器内部に形成された板状突起部によって土壌が均一に攪拌されながら土壌投入部12から土壌排出部16に搬送されるようになっている。
【0031】
この回転式スクリューフィーダーや回転式キルンなどの装置中で、汚染土壌は、200〜600℃に加熱されるように温度制御装置14によって温度管理される。
【0032】
汚染土壌からPCB類やダイオキシン類を間接的に加熱し揮発する第一の工程において、前記回転式スクリューフィーダーや回転式キルン中の汚染土壌の滞留時間は、汚染土壌に含まれているPCB類やダイオキシン類の含有量や含水率により、また回転式キルンを用いるか、回転式スクリューフィーダーを用いるかにより異なるが、一般的には30〜60分くらいの間で処理が行われるのが好ましい。
【0033】
また、加熱部本体11として回転式キルンを用いた場合、このキルン内の汚染土壌の充填率としては、30体積%前後程度が望ましい。充填率が低い場合には、土壌の昇温を短時間で行うことが可能であるが、処理の容積効率が低下して好ましくない。一方、充填率が高い場合には、汚染土壌全体を均一に加熱することが困難になり、加熱時間がかかることや、また土壌が昇温してもPCB類やダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物汚染土壌から揮発することなく、これらの有機ハロゲン化合物が土壌中に残留してしまう恐れがあり好ましくない。
【0034】
また、汚染土壌からPCB類やダイオキシン類を間接的に加熱し揮発する第一の工程においては、バッチ式でも連続式でも処理することが可能であるが、連続式であるほうが、所定の時間連続的に大量に汚染土壌を処理することが可能であり効率的であるため好ましい。
【0035】
土壌加熱部本体11で処理され、PCB類やダイオキシン類など有機ハロゲン化合物が揮発した後の土壌は、土壌排出部16より排出されるが、土壌中のPCB類やダイオキシン類の残留濃度の確認を行い、PCB類やダイオキシン類が土壌から充分に除去されていない場合には、再び土壌投入部12からこの汚染土壌を投入し、再度間接加熱処理することが好ましい。または、第一の工程の加熱温度を高く設定し、あるいは土壌加熱部本体11における土壌の滞留時間を長くすることでPCB類やダイオキシン類の除去効率を上げることができる。
【0036】
土壌加熱部本体11で揮発したPCB類、ダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物ガスと土壌中に含まれている有機化合物、及び水分は、生成ガス排出口17、配管18を経由して第二の工程の予備加熱部2に導入される。前記生成ガス排出口17は、前記土壌加熱部本体11が、回転式キルンの加熱装置の場合は、キルン両側固定部面の複数箇所に形成することができる。また、前記土壌加熱部本体11が回転式スクリューフィーダーの加熱装置の場合は、シリンダーの軸方向の複数箇所から、例えば土壌投入口部12付近、土壌投入部12と土壌排出部16の中間付近、土壌排出部16付近など、望ましくは3箇所以上に生成ガス排出口17を形成して第二の工程に供給することにより、効果的にPCB類、ダイオキシン類を抽出することができる。生成ガス排出口17に接続された配管18も、揮発したPCB類やダイオキシン類の再凝縮を防ぐため、300〜600℃で間接的に加熱しておくことが好ましい。
【0037】
第一の工程で揮発したPCB類やダイオキシン類が配管18を通過し、予備加熱部2へ送り込まれる。第二の工程においては、有機ハロゲン化合物ガスの分解反応は、有機ハロゲン化合物ガスと空気との反応によって行われるが、この時使用される空気は、空気添加装置44から添加される。添加される空気量が少ないほど第二の工程の滞留時間が長くなる。すなわちPCB類の分解効率を向上させることができる。さらに添加される空気量が少ないほど、昇温に要する第二の工程のエネルギー投入量を抑えることができる。しかし添加される空気量が少なすぎると不完全な酸化反応のために、一酸化炭素や水素が第二の工程で生成する。一酸化炭素や水素は可燃性ガスで安全面からも生成させないことが望ましい。よって一酸化酸素や水素が生成しない最低の空気量を制御しながら、空気添加装置44から空気供給配管45を通過して予備加熱部2へ送り込まれる。この予備加熱部2は、空気添加装置44から供給される空気と前記第一の工程で蒸発生成したPCB類やダイオキシン類を第二工程に供給するためにあらかじめ加熱しておくための装置であり、600〜1100℃に加熱しておくことが好ましい。そのためこの予備加熱部本体21の周囲に加熱装置23が配置され、熱電対のような温度測定装置24、及び温度制御装置25により温度制御されている。
【0038】
前記予備加熱部2であらかじめ加熱された空気と、第一の工程で汚染土壌から揮発したPCB類やダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物ガスを含有するガスは、第二の工程の反応部本体31に送られ、所要の時間及び温度において加熱処理され、PCB類やダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物ガスは、空気と化学量論的に反応し、少なくともハロゲン化炭化水素と二酸化炭素を含む物質に分解される。
【0039】
前記ガス検出装置41及びガス分析装置42によって、一酸化炭素または水素が一定量以上検出され、前記反応部本体31において有機ハロゲン化合物ガスの分解が不十分であると判断される原因としては、添加する空気量が不十分であるか、熱処理温度が低下しているか、あるいは熱処理時間が短いことが考えられる。熱処理温度については、温度測定装置34、温度制御装置35及び間接加熱装置33によって制御される。熱処理時間については、反応部本体31に接続している排ガス排出口38を流通する流量を図示しないバルブ等を用いて滞留時間を制御するか、あるいは、排出ガスを前記予備加熱部2に環流させ再度熱処理を行うことによって制御することができる。また、空気量の制御は、空気量制御装置43により、空気添加装置44を駆動して空気供給配管45を経由して、前記予備加熱部2に供給することによって制御することができる。
【0040】
第二の工程に添加する空気量は、汚染土壌中の含水率、また汚染土壌に含まれるPCB類、ダイオキシン類、有機化合物の含有率により調整される。第二の工程でのPCB類、ダイオキシン類、有機化合物と空気との反応は、第一の工程で発生するPCB類、ダイオキシン類、有機化合物などが揮発したガス中の炭素量に依存し、化学量論的にはこの炭素のモル量に対して2倍以上の酸素を含有する空気を添加する必要がある。しかし第一の工程で汚染土壌より揮発したPCB類やダイオキシン類、有機化合物の濃度は土壌の汚染具合及び土壌の種類により大きく異なっているため、空気量を可変制御する必要がある。そのため、第二の工程には反応部内部の一酸化炭素や水素、さらには二酸化炭素や塩化水素を測定するためのガス濃度センサーのようなガス検出装置41、ガス組成を分析決定するガス分析装置42を備えることにより、第一の工程で揮発したPCB類やダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物ガスが空気によりハロゲン化水素と二酸化炭素を含む物質に分解されているか確認を行う。この場合、PCB類やダイオキシン類が適量の空気と反応が進行している場合にはハロゲン化水素と二酸化炭素に分解する。第二の工程において空気に含まれる酸素のモル量が、揮発したガス中の炭素のモル量に対して2倍以上存在しない場合は、水素や一酸化炭素が生成する。一酸化炭素や水素が生成している条件でも有機ハロゲン化合物ガスを分解することはできるが、一酸化炭素が過剰に生成することは、明らかに炭素のモル数に対して空気のモル数が不足することを意味する。また一酸化炭素が過剰に生成している場合は、PCB類やダイオキシン類の分解率が低下している場合が多い。一酸化炭素の生成量が一定量を超えた場合には、添加する空気量が不足しているものとみなし、空気量制御装置43により空気量を増加させる。この場合、一酸化炭素濃度が50ppm以上になったときに、空気量を増加させることが好ましい。
【0041】
第二の工程において、第一の工程で汚染土壌から揮発させたPCB類、ダイオキシン類を空気により二酸化炭素とハロゲン化水素を含む物質に確実に分解するには、最低でも2〜3秒の滞留時間が必要である。望ましくは5秒程度である。しかし、第二工程の滞留時間はこれ以上であっても特に問題はない。ただし、滞留時間が短い場合には第一工程で揮発したPCB類やダイオキシン類が反応部で完全にハロゲン化炭化水素と二酸化炭素を含む物質に分解されない可能性があるため望ましくは5秒程度である。また、10秒を超えて滞留させる場合、装置が過剰に大きくなり、熱効率も悪いため、滞留時間は10秒以下とする。
【0042】
第二工程でPCB類やダイオキシン類は空気と反応し、ハロゲン化水素や二酸化炭素を含む物質に分解され、処理ガス排出口36を経由し、第二の工程で発生したハロゲン水素を中和処理するための装置である排ガス処理装置37へ送られ、排ガス排出口38を経由し大気に放出される。この排ガス処理装置37としては、アルカリ水シャワーのスクラバー装置、水酸化カルシウムなどのアルカリをスラリー状で噴霧する乾式排ガス処理装置などを用いてもよい。
【0043】
【実施例】
以下本発明を実施例及び比較例によってさらに説明する。
【0044】
(実施例1)
PCB濃度が8000mg/kgで含水率が20%である土壌を対象とし、土壌加熱部本体11として回転式キルンを採用した処理容量が400kg/hrである図1に示す処理装置を用いて処理を行った例を示す。
【0045】
図1の土壌加熱部1において土壌温度として500℃となるよう温度制御装置15により土壌加熱部本体11の温度をコントロールし、土壌加熱部本体11における土壌の滞留時間が40分程度となるよう土壌を熱処理した。第一の工程の加熱温度を500℃とした場合、第一の工程から発生するガス量は120Nm3/hr程度で水蒸気が主な組成であった。
【0046】
浄化済みの土壌は、土壌搬出部16を介して系外に排出した。処理した土壌について、含有するPCBの濃度を測定した結果、PCB濃度は0.05mg/kgとなり、99.99%以上のPCBを土壌から揮発させることができた。
【0047】
前記工程で生成したガスを、図1の予備加熱部2で加熱した。前記第一の工程から発生するガス温度を500℃、第二の工程の反応部本体31の温度を1100℃とし、予備加熱部本体21において第一の工程から発生するガスを600℃分昇温した。昇温に要する投入熱量は本来約55kwhであるが、余力を持たせるため2倍の外部加熱ヒーターを使用した。予備加熱部本体21として、内径60mm、長さ2.5mの配管を6本使用し、間接加熱装置23として外形12mm、長さ450mmの炭化ケイ素(SiC)質の発熱体を予備加熱部本体21の周囲を取り囲むように長手方向に直交させて約120本配置した。予備加熱部本体21のガス線速度は8m/secであるが、投入熱量を約110kwhとすることにより、予備加熱部本体21の後段部分では1100℃まで達した。
【0048】
次いで、予備加熱したガスを反応部本体31に導入し1100℃に加熱した。この温度において、空気との反応でPCB類を二酸化炭素とハロゲン化水素を含む物質に確実に分解するには、2〜3秒の滞留時間が必要であり、本実施例では、滞留時間を5秒と設定した。そこで反応部本体31は、内径1000mm、長さ1.8mの筒状配管を1本使用し、予備加熱部2と同様に炭化ケイ素(SiC)質の発熱体を間接加熱装置33として反応部本体31の周辺に配置した。この予備加熱部本体21と反応部本体31の周辺には図示しない断熱材を配置し放熱を防止した。その結果、反応部本体31においては、加熱量としては、反応部本体31からの熱散逸分だけを電気ヒーターで投入すれば良いこととなり、投入電力量を低減化することができた。
【0049】
また、第二の工程において、添加する空気量は、汚染土壌中の含水率、PCB類・ダイオキシン類含有率、有機化合物含有率により調整した。添加する空気量は、第一の工程で発生するガス中の炭素量に依存し、化学量論的には、炭素のモル比に対して2倍以上の空気を添加する必要がある。反応部本体31の内部ガスをモニタリングするガス組成を分析するガス分析装置42において、検知する一酸化炭素濃度および水素濃度に応じて、空気添加装置44の空気量を制御することが望ましい。すなわち一酸化炭素が二酸化炭素濃度以上に生成することは、炭素のモル数に対して空気のモル数が不足することを意味する。したがって本実施例では、ガス分析装置42の一酸化炭素濃度と水素濃度を信号として外部出力し、空気添加装置44の制御に用いた。
【0050】
上記第二の工程で生成した塩化水素ガスを主成分とするハロゲン化水素ガスは、処理ガス排出口36を経由して、排ガス処理装置37で除去したのち大気へ放出した。排ガス処理装置37としては、アルカリ水シャワーのスクラバー装置を用いた。
【0051】
上記条件によって、汚染土壌を24時間で、約10トン処理した結果、本実施例におけるPCB類の分解率は、PCBの分解率が99.99%以上、ダイオキシン類の分解率も99.99%以上であった。
【0052】
また、本実施例では、大気へ放出する排ガス中のPCB濃度は0.0083mg/Nm3、ダイオキシン濃度は0.01ng−TEQ/Nm3、塩化水素濃度は0.15mg/Nm3で何れも大気汚染防止法の排ガス基準を満たしていた。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、汚染土壌からPCB類、ダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物を効率よく揮発させることができると共に、空気を用いることにより有機ハロゲン化合物ガスをハロゲン化水素と二酸化炭素に安定的に分解し無害化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理方法を実施するための装置の概略構成図。
【符号の説明】
1…土壌加熱部,2…予備加熱部,3…加熱分解部,11…土壌加熱部本体,12…土壌投入部,12a…2重ダンパー,13,23,33…間接加熱装置,14,24,34…温度測定装置,15,25,35…温度制御装置,16…土壌排出部,17…生成ガス排出口,18…配管,21…予備加熱部本体,22…生成ガス導入口,31…反応部本体,32…生成ガス導入口,36…処理ガス排出口,37…排ガス処理装置,38…排ガス排出口,41…ガス検出装置,42…ガス分析装置,43…空気量制御装置,44…空気添加装置,45…空気供給配管
Claims (6)
- 有機ハロゲン化合物を含有する土壌を間接的に加熱して有機ハロゲン化合物を揮発させる第一の間接加熱装置と、前記第一の間接加熱装置より揮発させた有機ハロゲン化合物ガスを間接的に加熱して分解する第二の間接加熱装置と、前記第二の間接加熱装置に空気を供給する空気供給源とを具備することを特徴とする土壌処理装置。
- 有機ハロゲン化合物を含有する土壌を処理する方法において、該土壌を間接的に加熱し前記有機ハロゲン化合物を揮発させる第一の工程と、第一の工程により揮発した前記有機ハロゲン化合物ガスを空気と反応させながら間接的に加熱して、前記有機ハロゲン化合物を分解する第二の工程を有することを特徴とする土壌の処理方法。
- 前記第一の工程における土壌の加熱温度が200〜600℃であることを特徴とする請求項2に記載の土壌の処理方法。
- 前記第二の工程における有機ハロゲン化合物ガスの加熱温度が600〜1300℃であることを特徴とする請求項2に記載の土壌の処理方法。
- 前記第二の工程における有機ハロゲン化合物ガスの滞留時間が2〜10秒であることを特徴とする請求項2に記載の土壌の処理方法。
- 前記第二の工程において、第二の工程を経た分解ガス中の一酸化炭素濃度または水素濃度に応じて空気の添加量を制御することを特徴とする請求項5に記載の土壌の処理方法。
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