JP3676768B2 - 焼却灰の処理方法及び処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼却灰中のダイオキシン類の分解・無毒化及び重金属類(鉛、カドミウム、総水銀、アルキル水銀、砒素、セレン及び六価クロム)の不溶化・無害化により、環境基準を達成できる処理方法に関するものである。また、本発明は、六価クロムによって汚染された土壌等をも、併せて分解・不溶化・無害化できる処理方法に関する。
【0002】
【表1】
【0003】
関連の環境基準は、上記表−1に示した通りである。重金属類の環境基準は、公害対策基本法(昭和42年法律第132号)に基づき、環境庁告示第46号(平成3年8月23日)に土壌の汚染に係る環境基準として定められている。数値は、同じ告示に規定されている方法で試料より抽出した溶出液中の濃度(mg/L)で表示している。分析の検出限界は環境基準の1/10としている。なお、アルキル水銀の検出限界は環境庁告示第59号及び環境庁告示第64号で0.0005mg/Lとされている。
また、ダイオキシン類の環境基準は、ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)に基づき、環境庁告示第68号(平成11年12月27日)に土壌の環境基準として定められているものである。数値は、厚生省告示第234号(平成9年12月1日)に規定されている方法で分析し、算出した、試料1g当りの毒性当量(TEQ)をpg(ピコグラム)で表示している。
【0004】
【従来の技術】
一般廃棄物又は産業廃棄物の焼却灰中のダイオキシン類を分解・無毒化し、重金属類を不溶化・無害化することを目的とした発明として、特許第3108061号がある。この特許では、焼却灰を650℃〜980℃でガス媒体と接触させることにより、ダイオキシン類の分解・無毒化及び重金属類の不溶化・無害化行い、ダイオキシン類及び重金属類を環境基準以下に下げることができるとしている。確かに、ダイオキシン類の分解・無害化は達成される。また、重金属類についても、鉛、カドミウム、全水銀、アルキル水銀、砒素、セレンについては上記環境基準1を達成することが可能である。特に、一般廃棄物の焼却灰として問題となる鉛及びカドミウムについては極めて有効であることが分かった。しかしながら、六価クロムについては、焼却灰によっては、この特許の処理方法で処理することにより、当初原灰に無かった六価クロムが生成し、上記環境基準を達成できない場合があることが分かった。また、この六価クロムは、還元性ガスである一酸化炭素又はアンモニアを含む空気で処理する方法、還元性のヒドラジンを含む水溶液で処理する方法等を試みたが、いずれも環境基準に合格するまでに無害化することが困難であることが判明した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、これらの事実を踏まえ、研究を続けた結果、一般廃棄物又は産業廃棄物の焼却灰を乾燥したり熱処理する場合のように、クロム化合物を含む焼却灰を空気中又は燃焼ガス中(酸素含有率6%前後)で300℃以上に加熱すると六価クロムが生成し、そのような灰は上記環境基準を超える六価クロムを溶出する場合があることが判明した。
また、近時、工場跡地等で六価クロムに汚染された土壌が問題となっている事情も考慮し、本発明者らは環境対策として六価クロムに汚染された土壌中の六価クロムを分解して無害化する技術に対するニーズにも応えるべく、鋭意研究した結果、本発明に到達した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意研究した結果、鉛、カドミウム等の重金属類の不溶化・無害化には焼却灰と接触するガス媒体中の酸素含有率が大きな因子の一つであることを見出した。また、問題となっている六価クロムの生成及び分解にも、ガス媒体中の酸素含有率が大きく影響することが分かった。本発明は、これらの知見に基づくものである。
すなわち、本発明の要旨は、一般廃棄物又は産業廃棄物の焼却灰を、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及びそれらの前駆物質からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ性物質の存在下、第1処理反応域で、酸素含有率1.5%以上のガス媒体と接触させながら600℃〜1000℃の範囲内の処理温度で処理した後に、第2処理反応域で、酸素含有率1.5%未満の雰囲気ガスと接触させながら500℃〜1000℃の範囲内の処理温度で処理することを特徴とする焼却灰の処理方法に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
一般廃棄物又は産業廃棄物の焼却灰
一般廃棄物又は産業廃棄物の焼却灰は、一般に水分を20重量%〜35重量%含み、また、数重量%の未燃物、同じく数重量%の鉄分を含んでいる。まず、鉄分を磁選機で除去し大きな塊を破砕機で粗砕したものを、乾燥機で乾燥して水分を除去すると共に未燃物を焼却する。さらに、粉砕機で粉砕して粒子状とした乾燥焼却灰を、本発明方法の原料とする。
本発明の処理方法では、処理される焼却灰の粒度は細かい方が有効であり、大きな塊を含む焼却灰の場合は、これを粉砕して10mm以下としたものが好ましい。より好ましくは2.5mm以下に、更に好ましくは1mm以下に粉砕したものが良い。
【0008】
本発明の処理方法においては、第1処理反応域でもまた第2処理反応域でも、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及びそれらの前駆物質(例えば、カルシウム及び/又はマグネシウムの水酸化物、炭酸塩等、本発明の処理温度の範囲で酸化カルシウム及び/又は酸化マグネシウムに変換される物質)からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ性物質の存在下での処理が必要である。しかし、一般廃棄物の焼却灰及び一部の産業廃棄物の焼却灰には、酸化カルシウム等のアルカリ性物質が大量に含有されているので、通常、上記粉砕、乾燥等の予備処理後、直接本発明方法の原料とすることができる。一方、産業廃棄物の焼却灰等、上記酸化カルシウム等のアルカリ性物質を含有しないか又はその量が少ない場合には、原料とする焼却灰に、上記アルカリ性物質を添加することが必要になる。
【0009】
第1処理反応域
第1処理反応域では、アルカリ性物質の存在下、酸素含有率1.5%以上のガス媒体と接触させながら600℃〜1000℃の範囲内の処理温度で処理することにより、焼却灰に含まれるダイオキシン類を分解・無毒化し、同時に、重金属類のうち環境上特に問題となる鉛及びカドミウムを不溶化・無害化する。この分解、不溶化の目標は、前述の土壌の環境基準に適合するよう、厚生省告示第234号に規定されている方法で分析し、算出した、ダイオキシン類の含有量を1000pgTEQ/g以下とし、同時に、環境庁告示第46号で規定する方法で試料から得られた溶出液中の鉛及びカドミウムの濃度を0.01mg/L以下とすることにある。
【0010】
第1処理反応域でのガス媒体の酸素含有率を低くすると、鉛及びカドミウムの不溶化が進まず、これらの溶出量が増加する。すなわち、鉛及びカドミウムの不溶化・無害化を進めるために、酸素含有率1.5%以上が必要であり、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上が選ばれる。なお、酸素含有率が21%の空気も好適に使用される。
第1処理反応域での処理温度は、低すぎると、鉛、カドミウム等重金属類の不溶化が進まず、これらの溶出量が増加するので、また、高すぎると、焼却灰が固結する恐れがあるので、600℃〜1000℃が必要であり、好ましくは610℃〜980℃、より好ましくは610℃〜890℃が選ばれる。
第1処理反応域で使用する酸素含有率1.5%以上のガス媒体は、主成分として、不活性ガス例えば窒素を含むものが有効である。具体的には、空気又は必要量の酸素を含む窒素ガスはこの目的に有効に使用できる。石油やLPGの燃焼ガスも、有効に使用できる。この場合は、ガス媒体は、酸素の他に、炭酸ガス及び水蒸気を含有しており、窒素が主成分である。ガス媒体中の酸素以外のガスが、炭酸ガスのみ、水蒸気のみでもよい。
【0011】
第1処理反応域においては、焼却灰中の鉛及びカドミウムの塩化物の分子がガス媒体中に蒸発し、ガス媒体中を自由に移動して、焼却灰中のアルカリ性物質の粒子に吸着され、反応して、酸化物及び/又は水酸化物に変成され、不溶化・無害化される。ここで塩素は主に塩化カルシウム等として固定される。得られる処理灰中の鉛及びカドミウムの酸化物及び/又は水酸化物は、水に対する溶解度が低く溶出しにくい。さらに、アルカリ性物質の存在量を、処理灰の溶出液のpHが7.5〜12、好ましくは8〜11.8になるように調整すると、鉛等pH12を超えると再可溶化する重金属類の酸化物及び/又は水酸化物もほとんど溶出しないので、鉛及びカドミウムの不溶化・無害化がより確実なものとなる。
【0012】
ここで、pHを測定すべき「処理灰の溶出液」は、前記環境庁告示第46号が定める検液の作成方法に準じて、次のようにして調製される。すなわち、処理反応装置から排出される処理灰を風乾した後、2mmの篩を通過したものを十分混合した試料(単位g)と、溶媒(純水に塩酸を加えpH5.8〜6.3となるようにしたもの)(単位mL)とを、重量体積比10%の割合で混合し、かつ、その混合液が500mL以上となるように調製したものを、常温(おおむね20℃)常圧(おおむね100kPa)で振とう機(あらかじめ振とう回数を毎分約200回に、振とう幅を4cm以上5cm以下に調整したもの)を用いて、6時間連続して振とうする。得られた試料液を、10分から30分程度静置後、毎分約3000回転で20分間遠心分離した後の上澄み液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過して得た液を、「処理灰の溶出液」という。
【0013】
ダイオキシン類は、第1処理反応域の温度範囲で焼却灰よりガス媒体中に蒸発し、ガス媒体中を自由に移動して、焼却灰中のアルカリ性物質に吸着され、アルカリ性物質の触媒作用により、効率的に分解される。ダイオキシン類の分解で生成した塩素分はアルカリ性物質と反応して、塩化カルシウム等となり安定化する。
また、水銀化合物とアルキル水銀が焼却灰に含まれている場合は、これらは第1処理反応域で金属水銀に変成し、金属水銀は蒸発して焼却灰から除かれる。さらに、一般廃棄物の焼却灰には、通常、砒素及びセレンは殆ど含まれていないが、存在した場合には、第1処理反応域でこれらは揮散して灰から取り除かれる。
【0014】
上記のように、アルカリ性物質は、第1処理反応域では、
1)ダイオキシン類の脱塩酸触媒、
2)ダイオキシン類の分解反応で生成した塩酸との反応物質、
3)鉛及びカドミウムの塩化物との反応物質として、
また、焼却灰中のアルカリ性物質が不足して添加する必要がある場合は、
4)処理灰の溶出液のpHの調整剤として作用する。
また、焼却灰によっては、酸化カルシウム、水酸化カルシウム及び/又は炭酸カルシウム等を多量に含み、処理灰の溶出液のpHが、すでに12を超えていることがある。このような場合は、硫酸の添加が有効である。添加量は、処理灰の溶出液のpHが12以下となるように選定される。添加場所は、予備処理以前の焼却灰から第1処理反応域に供給されるまでの、任意の場所、例えば、前処理装置、乾燥装置、粉砕装置等の予備処理装置中、又はこれらの装置への供給前若しくはこれらの装置からの排出後を問わない。硫酸の添加は、処理灰の溶出液のpHの調整による、重金属類の不溶化・無害化を確実にする効果があるだけでなく、溶出液のpHの安定化の効果もあるので、前記の処理灰の溶出液のpHが所定範囲に達している場合にも採用することができる。
【0015】
この第1処理反応域での処理に際し、焼却灰中のクロムが六価クロムに変換され、処理後の焼却灰から、環境基準を超える六価クロムが溶出される場合がある。従って、第1処理反応域と第2処理反応域を分けて、焼却灰を第1処理反応域で処理した後に第2処理反応域で処理して、六価クロムを分解する必要がある。
【0016】
第2処理反応域
第2処理反応域では、アルカリ性物質の存在下、酸素含有率1.5%未満の雰囲気ガスと接触させながら500℃〜1000℃の範囲内の処理温度で処理することにより、乾燥機及び第1処理反応域で生成した、又は、元もと焼却灰に含まれていた、焼却灰中の六価クロムを分解・無害化する。この分解の目標は、前述の土壌の環境基準に適合するよう、環境庁告示第46号で規定する方法で試料から得られた溶出液中の六価クロムの濃度を0.05mg/L以下とすることにある。
六価クロムの分解を促進する物質として、既述の、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及びそれらの前駆物質からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ性物質が有効であり、その存在を必要とする。しかし、第2処理反応域での六価クロムの分解に必要なアルカリ性物質は、第1処理反応域での処理反応に必要とされた量で十分であり、多くの場合、第1処理反応域で消費されてしまうアルカリ性物質の量はそれほど大きくないので、通常、第2処理反応に際して、別途アルカリ性物質の添加を必要とはしない。
【0017】
焼却灰中の六価クロムの分解・無害化は、主に、第2処理反応域で焼却灰粒子と接触する雰囲気ガスの酸素含有率と処理温度に支配される。
すなわち、第2処理反応域での雰囲気ガスの酸素含有率が3%以上では六価クロムが生成する速度が、分解する速度より勝り、全体として、六価クロムの量は増大する。一方、酸素含有率が2.5%以下では六価クロムの生成する速度よりも分解する速度が勝り、確かに六価クロムの量は減少する。しかし、六価クロムの量を、環境庁告示第46号で規定する環境基準に適合する、十分低いレベルに保つためには、雰囲気ガスの酸素含有率は、1.5%未満が必要であり、0.6%以下が好ましい。
一方、第2処理反応域での処理温度が450℃以下では、雰囲気ガスの酸素含有率が0.2%以下であっても、六価クロムの分解無害化は進まない。六価クロムの分解・無害化は500℃以上、好ましくは550℃以上、更に好ましくは610℃以上で処理することにより好適に進行する。一方、一般に一般廃棄物又は産業廃棄物の焼却灰は1000℃を超えると固結するので、本発明を工業的に適用する場合の処理温度の上限は1000℃であり、より好ましくは980℃以下である。従って、第2処理反応域での処理温度は、500℃〜1000℃の範囲内、好ましくは550℃〜980℃の範囲内であり、さらに好ましくは610℃〜980℃の範囲内である。
【0018】
第2処理反応域で使用する酸素含有率1.5%未満の雰囲気ガスは、主成分として、不活性ガス例えば窒素を含むものが有効である。具体的には、工業用窒素ガスはこの目的に有効に使用できる。石油やLPGの燃焼ガスも有効に使用できる。この場合は、雰囲気ガスは、窒素の他に、炭酸ガス及び水蒸気を含有しており、そのいずれかを主成分としている。雰囲気ガス中の酸素以外のガスが、炭酸ガスのみ、水蒸気のみでもよい。更に、上記雰囲気ガスが還元性のガスを少量含有していると更に有効である。還元性のガスとしては、アンモニア、水素及び一酸化炭素からなる群から選ばれた少なくとも1種が有効であり、これらの混合ガスも有効である。
【0019】
六価クロムに汚染された土壌の処理
本発明方法の別の応用は、上記第2処理反応域における六価クロムの分解・無害化機能と、一般廃棄物の焼却灰及び一部の産業廃棄物の焼却灰に含有されている大量の酸化カルシウム等のアルカリ性物質の利用から派生する。すなわち、本発明方法又は装置を活用することにより、該焼却灰及び六価クロムに汚染された工場跡地等の土壌を、並行的に分解・無毒化できることにある。この並行処理の場合、一般廃棄物の焼却灰及び一部の産業廃棄物の焼却灰中に含まれるアルカリ性物質の量が十分であれば、六価クロムに汚染された土壌の量にもよるが、本発明方法によって処理されている第1処理反応域又は第2処理反応域の焼却灰中に、六価クロムに汚染された土壌を単に混入させるだけで、容易に環境基準を満足する処理を行うことも可能である。もちろん、前記焼却灰中に含まれるアルカリ性物質の量が六価クロムの分解・無害化に不十分の場合は、必要量のアルカリ性物質を添加すれば、既述の焼却灰の単独処理の場合と全く同様に処理することができる。
なお、本明細書において、「六価クロムに汚染された」とは、対象物中の六価クロムの含有量が、環境基準値を超えることを意味し、具体的には、環境庁告示第46号で規定する方法で試料から得られた溶出液中の六価クロムの濃度が0.05mg/Lを超えることを意味する。
【0020】
焼却灰を処理する装置
以下、図1として添付のブロックフローシート図を参照しながら、焼却灰を処理する装置について説明する。
まず、焼却灰は、「前処理」工程に供給されるが、ここで用いられる装置は、磁選機、破砕機、篩分機等があり、磁選機で鉄分を取り除いた後に篩分機で大きな塊を分離し、20mm以下の粒子状焼却灰を得、これに助剤を添加し前処理済み焼却灰を得る。大きな塊は破砕機で破砕し、再度篩分機にかける。
次の「乾燥」工程では、乾燥機が用いられ、ここで前処理済み焼却灰を熱風で乾燥するとともに、焼却灰中の未燃物を充分に焼却する。乾燥排ガスは処理反応工程の第1処理反応域へ送りダイオキシン類を分解し無害化される。乾燥を終わった乾燥原灰は、「粉砕」工程に送る。ここでも、磁選機、粉砕機等が用いられ、磁選機で再度細かい鉄分を取り除いた後に粉砕機で1mm以下の粒子に粉砕する。
【0021】
粉砕後の乾燥焼却灰は「処理反応」工程に送られ、本発明に基づく2段階の処理反応を受ける。処理する装置としては、第1処理反応域の処理を行う処理反応装置がロータリキルン型反応装置であり、第2処理反応域の処理を行う処理反応装置としてロータリキルン型反応装置、移動床型反応装置又は流動床型反応装置が好適に使用できる。
本発明による処理方法で焼却灰を処理する場合、第1処理反応域の処理反応装置としてはロータリキルンが好適である。その理由は、第1に、焼却灰の粒子とガス媒体の接触を良くする必要があることである。この場合、接触効果を向上させるためにリフターを設けることが好ましい。第2に、第1処理反応域の600℃〜1000℃の範囲内の処理温度では焼却灰は腐食性が高く、鉄鋼又はステンレス鋼等通常の金属材料は好ましくないこと。従って、内部ガス加熱によるロータリキルンに、キャスター、耐熱煉瓦等のセラミック性材料を使用することにより、金属材料が高温の焼却灰に直接触れない構造とすることが容易であり優れている。第3に、灰とガス媒体を並流で流すことにより、灰中のダイオキシン類の分解及び重金属類の不溶化と共にガス媒体中のダイオキシン類の分解も反応率を高めることができる。
【0022】
第2処理反応域の処理反応装置としてもロータリキルンが好適である。第2処理反応域では雰囲気ガスの酸素含有率が低いので焼却灰による金属材料の腐食は緩和されるが、焼却灰の粒子と雰囲気ガスの接触を良くする必要があるのでロータリキルンは好ましい。そのためにここでもリフターを設けることが好ましい。また、第2処理反応域では、金属材料を使用できるので、媒体ガスと焼却灰の粒子の接触を良くしながら焼却灰の滞留時間を長くすることが容易な移動床型反応装置及び流動床型反応装置も好適に使用できる。
処理反応排ガスは、温度を下げてから「排ガス処理」工程を経て大気に放出するが、ここではバグフィルタ、水銀除去装置等が用いられ、これらを通して粉塵、水銀等を除去した後、放出される。処理反応排ガスは、第1処理反応域の処理温度に近い600℃〜1000℃の高温であるので、そのまま大気に放出することは危険であり許されない。また、集塵装置の耐熱温度が200℃前後であることからも、処理反応排ガスの冷却装置が必要である。
【0023】
また、上述の焼却灰の処理装置の細部について、さらに、添付の図2−12を参照しながら、説明を補充する。
灰の移送
まず、第1処理反応装置から第2処理反応装置に灰を移送する手段としては、重力の利用が好ましい。図5−6、11−12にその具体的態様を示すが、いずれの場合でも、第1処理反応装置を第2処理反応装置の上に配置し、第1処理反応装置の灰が重力で第2処理反応装置に落下するように灰の移送経路を設置し、かつ、この灰の移送経路に少なくとも一つの雰囲気縁切装置を設置することが好ましい。すなわち、第1処理反応装置からの灰の、600℃〜1000℃という高温に耐える、コンベアのような移送手段は、経済的に実現が難しいことから、灰が重力で第2処理反応装置に落下するように第1処理反応装置を配置し、移送経路を設置することが好ましい。また、灰の移送経路を、直接、第2処理反応装置に繋げようとすると、第1処理反応装置の酸素濃度の高いガス媒体が、第2処理反応装置に流れ込んで、第2処理反応域の雰囲気ガスの酸素濃度を低く維持することができないので、この灰の移送経路には、図示の「ロータリバルブ」のような雰囲気縁切装置の設置が好ましい。
また、図12に示すように、「雰囲気縁切装置」の設置は、灰の移送経路に1つだけで十分な場合もあるが、より好ましくは図6に示すように、複数個とするのがよい。雰囲気縁切装置としては、第1処理反応装置の酸素濃度の高いガス媒体が第2処理反応装置に流れ込まないように、縁切できるものであれば制限はなく、単一ロータリバルブ、ダブルロータリバルブ、二段ダンパ、三段ダンパ等が有効に使用できる。
【0024】
窒素の節減
次に、第1処理反応装置の灰の移送経路には、図5−6に示す「灰減酸素装置」を設置することが好ましい。すなわち、灰の移送経路に雰囲気縁切装置が設置されてはいても、第1処理反応装置の灰が同伴する高濃度の酸素は、第2処理反応装置の雰囲気ガスの酸素濃度を所定の濃度(1.5%未満、好ましくは0.6%以下、より好ましくは0.2%以下)に保つためには、酸素濃度0.1%以下又は0.01%以下の工業用窒素が大量に必要となり、本発明処理方法又は装置の経済性を損ねる。この問題を解決する手段として、図示の灰減酸素装置の設置が有効である。この装置の設置により、灰が同伴して第2処理反応装置に持ち込む酸素の量を80〜90%削減することができ、工業用窒素の使用量を1/5〜1/10に節約できる。
図5−6に示す灰減酸素装置は、第1処理反応装置から第2処理反応装置への灰の移送経路に設置され、第1処理反応装置より落下する灰と第2処理反応装置雰囲気ガスの排ガスとを向流接触させる機能を有することが特徴である。図6に示される態様では、第1の雰囲気縁切装置である上部の「ロータリバルブ」を通って、第1処理反応装置より連続的に供給される灰は、「灰減酸素器」において、第2処理反応装置より連続的に供給される「排窒素ガス」と向流接触した後、第2の雰囲気縁切装置である下部の「ロータリバルブ」を通って第2処理反応装置に移送される。一方、灰減酸素器から排出される「排窒素ガス」は、第1処理反応装置からの「処理反応排ガス」と合流する。また、図示の「灰減酸素器」は、外部に灰の流れをよくするためのバイブレータを備え、内部に灰の向流接触を効率的に行うための分散板を備えている。さらに、図示の「灰減酸素器」は、灰が第1処理反応装置から第2処理反応装置へ重力で移送される場合を想定しているが、その他の場合にも適用することができる。
【0025】
排ガスの冷却
次に、前記の処理反応排ガスの「排ガス処理」工程に先だって行うべき冷却手段として、図9−10に示す「冷空気混合冷却装置」及び「ガスクーラ」を用いた、二段冷却方式が好ましい。
この冷却手段を、一段冷却方式とする試みは成功していない。すなわち、多管式ガスクーラによる一段冷却では、処理反応排ガスが、金属が赤熱状態になる600℃〜1000℃の高温であること、灰を同伴していること、その灰がアルカリ物質を含み金属に対し腐食性があること、さらに、そのアルカリ物質が600℃〜1000℃の高温ではクロム化合物を有害な六価クロムに変成する触媒として働くこと等の技術的課題を有し、さらに、冷却管の材質として使用する耐熱鋼が、クロム化合物を含むため、有害な六価クロムを生成し、これが集塵装置で回収する灰に混入する問題を派生する。また、内面をキャスタ(セラミック)で内張りした冷却塔を使用し、水を噴霧して高温のガスを急冷する一段冷却では、噴霧した水滴を完全に蒸発させるためには大きな冷却塔が必要でその建設費は非常に高いだけでなく、残った水滴が、集塵装置がバグフィルタの場合、その操業性を著しく損なうこと等の技術的課題がある。これらの問題を解決する冷却手段として、図9−10に示す「冷空気混合冷却装置」及び「ガスクーラ」を用いた、二段冷却が有効であることを見出した。
図9−10に示す冷却手段は、第1処理反応装置から排出される処理反応排ガスを、冷空気と混合して、600℃以下の温度まで直接冷却する冷空気混合冷却装置、及び、冷媒によりさらに低い所定の温度まで間接冷却するガスクーラを用いた、二段冷却方式であることが特徴である。ここで、直接冷却すべき温度を、600℃以下と定めたのは、600℃以下では、より好ましくは550℃以下では、たとえ処理反応排ガス同伴粉塵が酸化カルシウム又は酸化マグネシウム等のアルカリ物質を含有していても、六価クロムの生成、分解速度は著しく低下するという、既述の本発明者らの知見に基づくものである。もちろん、個々の装置は図示のもののみに限られるものではなく、直接冷却には、冷空気を円周方向に流し込むサイクロン型等も、また、間接冷却には、プレート式ガスクーラ等も好適に使用される。
また、図10に示す「冷空気混合冷却装置」を用いた態様では、高温で腐食性の「処理反応排ガス」は、セラミック製の「キャスター」で保護された入口から導入され、これを囲繞するように、その外周部の通路を通って導入される「冷空気」と接触して、所定温度まで冷却され、「空気混合排ガス」として排出される。この空気混合排ガスは、図9に示す態様では、多管式「ガスクーラ」の管壁を通して、「冷媒」として導入される冷却空気又は冷却水(図示せず)と熱交換し、目標の200℃前後まで間接冷却される。「冷却空気」としては、大気中の常温の空気を使用することが好適である。しかし、常温のままでは、冷却空気の所要量が少なすぎる場合は、熱バランス上、予め常温よりも高い温度に加熱した空気を、冷却空気として使用し、その所要量を増大させることが有効な場合もある。
なお、本発明処理方法又は装置全体の熱経済の観点からは、「ガスクーラ」で昇温された冷媒である、「熱空気」又は熱水から熱回収することも好ましい。例えば、この「熱空気」は、乾燥装置、第1処理反応装置及び第2処理反応装置の外部加熱の燃料燃焼用空気として使用することにより、本発明処理方法又は装置全体の熱効率を大幅に改善することもできる。
【0026】
さらに、本発明の2つの処理反応装置に対する熱供給の方式は、それぞれの処理反応装置の型式、雰囲気ガスの酸素濃度及び温度並びに導入される灰の温度等によっても相違する。
すなわち、第1処理反応装置では、通常ロータリキルンが用いられ、雰囲気ガスは1.5%以上の高酸素濃度で600〜1000℃であり、しかも灰は粉砕のために通常約200℃に冷却された「乾燥焼却灰」が導入される(図2参照)ので、大量の熱供給が必要である。従って、第1処理反応域を600〜1000℃の範囲内の処理温度に保持するためには、図2−4、7−8に示されるような、燃料を燃焼して発生した高温の燃焼ガスによる熱供給(内熱式加熱)が好適である。燃焼ガスの発生は、ロータリキルンの前に別に設けた燃焼室で行ってもよいし、ロータリキルン内部で灰の入口側に設けたバーナーで行ってもよい。いずれにしても、発生した高温の燃焼ガスが、灰と並流で、ロータリキルン内を通過する間に、その顕熱がロータリキルン本体や灰等を加熱する。
「燃料」としては、都市ガス、LPGガス等の気体燃料でも、A重油、灯油等の液体燃料でも、好適に使用される。燃焼に必要な酸素源としては、「空気」や「乾燥排ガス」等が使用される。装置全体の熱経済の観点からは、乾燥排ガス等の利用は好ましい。
一方、第2処理反応装置では、雰囲気ガスが低酸素濃度であることから、ロータリキルン型、移動床型、流動床型等種々の型式の反応装置が使用可能であるが、処理反応域又は灰の温度は、第1処理反応装置と大差ないので、定常運転時においては、放熱による熱損失を補うための、比較的少量の熱供給で十分である。従って、第2処理反応域を500〜1000℃の範囲内の処理温度に保持するためには、
▲1▼図2−4に示すように、第2処理反応装置の雰囲気ガス外部循環経路に、ガス加熱装置「加熱器」を備えること、その際、外部循環には「循環ブロワ」を設置し、ガス加熱装置には電熱式加熱、又は、燃料を燃焼して得られる高温燃焼ガスによる間接加熱を採用するのが好ましく、
▲2▼図7−8に示すように、第2処理反応装置が外部加熱装置を備えること、その際、外部加熱には電熱式加熱(図示せず)、又は、「燃料」を燃焼して得られる高温燃焼ガスによる間接加熱による、ロータリキルン型又は移動床型反応装置本体の加熱が好ましく、
▲3▼図示はないが、第2処理反応装置内部の灰と接触する部分に電熱式加熱装置を備えること、
による熱供給が好適である。
なお、本発明処理方法又は装置全体の熱経済の観点からは、第2処理反応装置の処理灰から熱回収することも好ましい。例えば、第2処理反応装置から排出される灰と第2処理反応装置に供給される酸素濃度の低い雰囲気ガス(窒素ガス)を向流で接触させる装置を備えて、冷たい窒素ガスを熱い処理灰で加熱することにより、第2処理反応装置の加熱負荷を減少させることができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、特に断りがない限り、部は重量部であり、%は容積%である。
焼却灰原灰
一般廃棄物の焼却灰から磁石で鉄分を取り除き、120℃で3時間乾燥したものを試験用振動ミルで粉砕し、本試験用の焼却灰原灰を得た。原灰の粒度は0.4mm以下であった。
この原灰について、環境庁告示第46号に従って重金属類の溶出試験を行った結果、鉛の溶出は14mg/Lであり、同告示が規定する土壌に関する基準値(以下、単に「環境基準」という。)0.01mg/L以下のレベルを大幅に超えていた。しかし、六価クロムの溶出は0.015mg/Lであり、この段階では環境基準0.05mg/L以下に合格していた。その他、カドミウム、総水銀、アルキル水銀、砒素、セレンの溶出も、環境基準に合格していた(後記表3参照)。なお、焼却灰原灰中のカルシウム(CaO換算)の含有率は22.8重量%であった。
また、この原灰について、厚生省告示第234号に従ってダイオキシン類の分析を行った結果、ダイオキシン類の含有量は9900pgTEQ/gであり、環境庁告示第68号が規定する土壌に関する基準値(以下、これも単に「環境基準」という。)1000pgTEQ/g以下のレベルを大幅に超えていた。
【0028】
本試験(共通事項)
本試験は、SUS310製の回分式回転式電気炉の中にセラミック製の内筒を挿入し、一端よりガスを供給し、他端より排出する構造の試験装置(回分式回転式試験装置とよぶ)を用いた。この装置に焼却灰原灰を所定量仕込み、所定組成のガス媒体又は雰囲気ガスを所定量供給して、所定温度に昇温し、所定時間処理する。所定の処理を終了した後、降温してから、灰を取り出した。
この処理灰についても、前記原灰と同様に、環境庁告示第46号に従って重金属類の溶出試験を行い、その結果のうち鉛及び六価クロムの分析結果のみを表2に示した。同表には、また、各処理反応の処理条件及びガス組成並びに処理灰の溶出液のpHも、併せ示した。なお、同表では、各処理反応の処理条件及びガス組成の欄は、1)及び2)の2段に分け、それぞれ、第1処理反応域及び第2処理反応域の値を示した。
【0029】
実施例1: 予め焼却灰原灰100部に対して0.6部の硫酸を添加した、焼却灰原灰500gを回分式回転式試験装置に供給し、先ず、第1処理反応として、酸素、炭酸ガス、水蒸気及び窒素の混合ガス(O2:6%、CO2:8%、水蒸気:5%及び残り窒素)のガス媒体を300L/hで供給して、850℃で60分処理した後に、第2処理反応として、窒素ガス(酸素含有率0.01%)の雰囲気ガスを300L/hで供給して、850℃で60分処理し処理灰を得た。処理灰の溶出液のpHは11.3であった。
この処理灰について、前記焼却灰原灰と全く同様に、重金属類の溶出試験及びダイオキシン類の分析を行い、その結果を下記表3に示した。
【0030】
【表3】
【0031】
処理灰についての、鉛及び六価クロムの溶出液分析結果は、それぞれ、0.001mg/L以下及び0.005mg/L以下で、また、ダイオキシン類の含有量は、0.4pgTEQ/gで、すべて、環境基準に合格している。これら「処理灰」の結果を、「焼却灰原灰」のそれと比較してみると、ダイオキシン類及び鉛の値が大幅に改善されていることがわかる。
【0032】
比較例1: 実施例1において、第2処理反応を行わなかった以外は、実施例1と同様にして処理灰を得た。処理灰の溶出液のpHは11.2であった。
処理灰についての、鉛及び六価クロムの溶出分析結果は、表2に示すように、それぞれ、0.001mg/L以下及び2.4mg/Lで、鉛は環境基準に合格しているが、六価クロムは環境基準に合格していない。
【0033】
比較例2: 実施例1において、第1処理反応を行わず、かつ、第2処理反応の条件を、850℃で60分に代えて、850℃で90分とした以外は、実施例1と同様にして処理灰を得た。処理灰の溶出液のpHは10.9であった。
処理灰についての、鉛及び六価クロムの溶出分析結果は、表2に示すように、それぞれ、0.25mg/L及び0.005mg/L以下で、六価クロムは環境基準に合格しているが、鉛は環境基準に合格していない。
【0034】
実施例2、3及び比較例3: 実施例1において、第2処理反応の雰囲気ガスの酸素含有率0.01%に代えて、それぞれ、0.2%、0.6%及び2%とした以外は、実施例1と同様にして処理灰を得た。処理灰の溶出液のpHは、それぞれ、11.3、11.4及び11.5であった。
処理灰についての、鉛の溶出分析結果は、表2に示すように、いずれも、0.001mg/L以下で環境基準に合格している。しかし、六価クロムの溶出分析結果は、表2に示すように、それぞれ、0.005mg/L以下、0.007mg/L及び0.36mg/Lで、酸素含有率1.5%未満の両実施例は環境基準に合格しているが、比較例3は、比較例1との比較では、酸素含有率2%の雰囲気ガスとの接触により六価クロムの分解が進んではいるものの、環境基準に合格するには不十分であった。
【0035】
実施例4: 実施例1において、第1処理反応の条件を、850℃で60分に代えて、850℃で90分とし、かつ、ガス媒体の酸素含有率を、6%に代えて2%とした以外は、実施例1と同様にして処理灰を得た。処理灰の溶出液のpHは10.9であった。
処理灰についての、鉛及び六価クロムの溶出分析結果は、表2に示すように、0.004mg/L及び0.005mg/L以下で、環境基準に合格している。
【0036】
実施例5: 実施例1において、第2処理反応の条件を、850℃で60分に代えて、750℃で90分とし、かつ、雰囲気ガスを、窒素ガス(酸素含有率0.01%)に代えて酸素、炭酸ガス、水蒸気及び窒素の混合ガス(O2:0.6%、CO2:8%、水蒸気:5%及び残り窒素)とした以外は、実施例1と同様にして処理灰を得た。処理灰の溶出液のpHは11.2であった。
処理灰についての、鉛及び六価クロムの溶出分析結果は、表2に示すように、0.001mg/L以下及び0.009mg/Lで、環境基準に合格している。
【0037】
実施例6: 実施例1において、第1処理反応及び第2処理反応の条件を、いずれも、850℃で60分に代えて、750℃で90分とした以外は、実施例1と同様にして処理灰を得た。処理灰の溶出液のpHは11.1であった。
処理灰についての、鉛及び六価クロムの溶出分析結果は、表2に示すように、それぞれ、0.002mg/L及び0.005mg/L以下で、いずれも環境基準に合格している。
【0038】
実施例7、8及び比較例4: 実施例1において、第1処理反応の条件を、850℃で60分に代えて、それぞれ、950℃で30分、650℃で90分及び550℃で90分とした以外は、実施例1と同様にして処理灰を得た。処理灰の溶出液のpHは、それぞれ、11.7、10.8及び10.4であった。
処理灰についての、六価クロムの溶出分析結果は、表2に示すように、いずれも、0.005mg/L以下で環境基準に合格している。しかし、鉛の溶出分析結果は、反応温度が所定範囲内の両実施例は、0.001mg/L以下及び0.004mg/Lで、環境基準に合格しているが、反応温度の低い比較例6は、14mg/Lで、環境基準に合格していない。
【0039】
実施例9、10及び比較例5: 実施例1において、第2処理反応の条件を、850℃で60分に代えて、それぞれ、650℃で90分、550℃で90分及び450℃で60分とした以外は、実施例1と同様にして処理灰を得た。処理灰の溶出液のpHは、それぞれ、11.2、11.2及び11.1であった。
処理灰についての、鉛の溶出分析結果は、表2に示すように、いずれも、0.001mg/L以下で環境基準に合格している。しかし、六価クロムの溶出分析結果は、反応温度が所定範囲内の両実施例は、0.005mg/L以下及び0.042mg/Lで、環境基準に合格しているが、反応温度の低い比較例7は、2.2mg/Lで、環境基準に合格していない。
【0040】
実施例11及び比較例6、7: 実施例1において、予め添加する硫酸0.6部に代えて、それぞれ、硫酸2部、硫酸2部さらに塩酸3部、及び、硫酸無添加とした以外は、実施例1と同様にして処理灰を得た。処理灰の溶出液のpHは、それぞれ、9.1、5.5及び12.4であった。
処理灰についての、六価クロムの溶出分析結果は、表2に示すように、いずれも、0.005mg/L以下で環境基準に合格している。しかし、鉛の溶出分析結果は、pHが所定範囲内の実施例は、0.004mg/Lで、環境基準に合格しているが、pHが所定範囲外の両比較例は、15mg/L及び20mg/Lで、環境基準に合格していない。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例12:
本発明に基づく、30t/d規模の焼却灰の処理プラントの実施例を、図2に従って説明する。
前処理
焼却灰を1250kg/hで、前処理装置に供給し、まず、鉄分を磁選機で除き、次いで、目開き50mmの篩装置にかけて、篩分された粗大物は、鉄分を磁選機で除き、破砕して再度篩装置に戻す。篩下の焼却灰に助剤として灰分100部に対して0.6部の硫酸を添加して前処理済み焼却灰を得る。この前処理済み焼却灰は、灰分100部に対して未燃物5.4部と水分39.8部を含んでいる。また、この焼却灰についての、ダイオキシン類の含有量は9900pgTEQ/gであり、重金属類の溶出試験の結果は、次のとおりである。
鉛 14mg/L
カドミウム 0.5mg/L
総水銀 0.0005mg/L以下
アルキル水銀 検出されず
六価クロム 0.015mg/L
砒素 0.001mg/L以下
セレン 0.003mg/L
鉛及びカドミウムは、環境基準の0.01mg/L以下を超えているが、総水銀、アルキル水銀、砒素及びセレンは、環境基準以下であり問題がない。六価クロムは、この段階では環境基準以下である。
【0043】
乾燥・粉砕
次いで、前処理済み焼却灰を、乾燥装置に供給する。乾燥装置には内径1300mm、長さ7mのロータリキルンを使用する。このとき、ロータリキルン内の圧力はマイナス5mm水柱(101.275kPa)に保持する。焼却灰の加熱は、空気により燃料を燃焼したガスを、ロータリキルンの長さ方向に焼却灰と向流させることによって行い、焼却灰中の未燃物は十分に燃焼されまた水分が除去され、焼却灰の温度は約500℃となる。また、乾燥装置排ガスの酸素濃度は約6%となる。
乾燥装置から排出される焼却灰は、灰クーラーで200℃前後まで冷却してから、粉砕装置で0.4mm以下の粒度まで粉砕し、乾燥焼却灰を得る。乾燥焼却灰の溶出液の六価クロムは、この段階で0.5mg/Lとなる。
【0044】
第1処理反応装置
乾燥焼却灰を第1処理反応装置のロータリキルンに供給する。第1処理反応装置としては、密閉型の内径1000mm、長さ10mのロータリキルンを使用する。ロータリキルン内の圧力はマイナス約20mm水柱(101.125kPa)に保持する。第1処理反応装置には、空気により燃料を燃焼した加熱用のガスと乾燥装置からの乾燥排ガスの混合ガスがガス媒体として供給される。ガス媒体の組成は、水蒸気濃度約20%、炭酸ガス濃度約8%、酸素濃度約6%となる。ガス媒体は、ロータリキルンの長さ方向に灰と並流して流す。第1処理反応装置の処理条件は、処理温度800℃、灰の処理時間約60分間とする。処理した灰は、ロータリバルブを経由して、第2処理反応装置に送られる。この時、この灰の溶出液の鉛、カドミウム及び六価クロムの分析値は、それぞれ0.001mg/L以下、0.001mg/L以下及び2.3mg/Lであり、鉛及びカドミウムは環境基準を下まわっているが、六価クロムは環境基準を大幅に上まわっている。
処理反応排ガスは冷却してから排ガス処理装置に送られる。冷却には、図9−10に示す冷空気混合冷却装置における直接冷却及び多管式ガスクーラによる間接冷却を併用し、約800℃の処理反応排ガスを200℃前後まで冷却した。一方、ガスクーラに冷却空気として導入した常温の空気は、加熱されて約300℃の熱空気が得られる。この熱空気は、乾燥装置及び第1処理反応装置において、燃料を燃焼させるための空気として使用すると共に、第2処理反応装置の雰囲気ガスの外部循環ラインのガス加熱器において、燃料を燃焼させるための空気としても使用する。
排ガス処理装置では、排ガスはガスフィルターで粉塵を除去した後に吸引ブロワで煙突に排出される。排ガス中のダイオキシン類の濃度は、0.02ngTEQ/Nm3 以下であり、大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)に基づき、環境庁告示第26号(平成9年8月26日)が規定する排ガスについての排出基準0.1ngTEQ/Nm3 以下を大幅に下まわっている。なお、この排ガス処理装置に排出される、後記第2処理反応装置の排ガス中のダイオキシン類の濃度は、検出限界以下である。
【0045】
第2処理反応装置
第1処理反応装置で処理した灰の移送には、図5−6に示す灰減酸素装置を使用する。すなわち、上下に位置する第1処理反応装置と第2処理反応装置との間に設置した灰減酸素装置では、入口のロータリバルブを通過して、第1処理反応装置から自重落下する灰を、第2処理反応装置の排窒素ガス(酸素含有率0.2%以下)と向流接触させて、脱酸素を行った後、出口のロータリバルブを通過して、灰を自重落下させ、第2処理反応装置へ移送する。
このようにして移送された灰は、酸素含有率0.2%以下の窒素ガスの雰囲気ガスで満たされた、第2処理反応装置で処理される。第2処理反応装置としては、密閉型の内径1200mm、長さ6mのロータリキルンを使用する。ロータリキルン内の圧力はプラス5mm水柱(101.375kPa)に保持し、外部からの酸素の混入を防止する。また、ロータリキルンの加熱方式は、雰囲気ガスの外部循環経路に設けたガス加熱器による間接加熱を採用した。窒素ガスはこのガス循環経路に供給し、第2処理反応装置のロータリキルン内の雰囲気ガスの酸素含有率を0.2%以下に保持する。なお、第2処理反応装置の排ガス(酸素含有率0.2%以下)は、上記の通り灰減酸素装置で使用し、圧力調整弁を通して、排ガス処理装置に排出する。
第2処理反応装置の処理条件は、処理温度750℃、灰の処理時間約60分とする。処理の終わった処理灰は、冷却して処理灰タンクに気力輸送で送られる。処理灰の溶出液のpHは、11.1となる。処理灰についての、ダイオキシン類の含有量は0.1pgTEQ/gであり、重金属類の溶出試験の結果は、次のとおりである。
鉛 0.002mg/L
カドミウム 0.001mg/L以下
総水銀 0.0005mg/L以下
アルキル水銀 検出されず
六価クロム 0.005mg/L以下
砒素 0.001mg/L以下
セレン 0.001mg/L
ダイオキシン類は土壌の環境基準に比べて極めて低い値であり、また、鉛、カドミウム、総水銀、アルキル水銀、六価クロム、砒素、セレンは、いずれも、環境基準以下である。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、経済的にも有利な方法で、一般廃棄物等の焼却灰中のダイオキシン類の分解・無毒化及び重金属類(鉛、カドミウム、総水銀、アルキル水銀、砒素、セレン及び六価クロム)の不溶化・無害化により、土壌汚染に関わる環境基準を達成でき、特に、処理工程内で発生する恐れのある六価クロムの万全な分解・無毒化をはかることができる利点がある。さらに、六価クロムに汚染された土壌等を無害化するニーズには、本発明において、上記焼却灰の一部を六価クロムに汚染された土壌等で置き替え、焼却灰とともに六価クロムに汚染された土壌等を処理することにより、経済的に有利に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 全体フローシート図。
【図2】 全体フローシート図。
【図3】 部分フローシート図。
【図4】 部分フローシート図。
【図5】 全体フローシート図。
【図6】 装置構成図。
【図7】 部分フローシート図。
【図8】 部分フローシート図。
【図9】 部分フローシート図。
【図10】装置構造図。
【図11】全体フローシート図。
【図12】部分フローシート図
Claims (22)
- 一般廃棄物又は産業廃棄物の焼却灰を、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及びそれらの前駆物質からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルカリ性物質の存在下、第1処理反応域で、酸素含有率1.5%以上のガス媒体と接触させながら600℃〜1000℃の範囲内の処理温度で処理した後に、第2処理反応域で、酸素含有率1.5%未満の雰囲気ガスと接触させながら500℃〜1000℃の範囲内の処理温度で処理することを特徴とする焼却灰の処理方法。
- 上記第1処理反応域のガス媒体の酸素含有率が3%以上であることを特徴とする請求項1に記載の焼却灰の処理方法。
- 上記第2処理反応域の雰囲気ガスの酸素含有率が0.6%以下であることを特徴とする請求項2に記載の焼却灰の処理方法。
- 上記第1処理反応域の処理温度が610℃〜980℃の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼却灰の処理方法。
- 上記第2処理反応域の処理温度が550℃〜980℃の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼却灰の処理方法。
- 上記第2処理反応域の処理温度が610℃〜980℃の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の焼却灰の処理方法。
- 上記第2処理反応域の雰囲気ガスの主成分が、水蒸気、炭酸ガス及び窒素からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の焼却灰の処理方法。
- 上記第2処理反応域の雰囲気ガスの主成分が、窒素であることを特徴とする請求項7に記載の焼却灰の処理方法。
- 上記第2処理反応域の雰囲気ガスが還元性ガスを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の焼却灰の処理方法。
- 還元性ガスが、アンモニア、水素及び一酸化炭素からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の焼却灰の処理方法。
- 処理灰の溶出液のpHが7.5〜12になるように、アルカリ性物質の存在量を調整することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の焼却灰の処理方法。
- 上記第1処理反応域で処理する焼却灰に予め硫酸を添加して、処理灰の溶出液のpHが7.5〜12になるように調整することを特徴とする請求項11に記載の焼却灰の処理方法。
- 処理灰の溶出液のpHが8〜11.8になるように調整することを特徴とする請求項11又は12に記載の焼却灰の処理方法。
- 焼却灰の一部を、六価クロムに汚染された土壌で置き換えて、焼却灰と共に六価クロムに汚染された土壌を処理することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の焼却灰の処理方法。
- 第1処理反応域において、焼却灰とガス媒体とを、並流接触させることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の焼却灰の処理方法。
- 請求項1〜15のいずれか1項に記載の処理方法を実施するための装置であって、第1処理反応域の処理を行う処理反応装置(以下、「第1処理反応装置」という。)がロータリキルン型反応装置であり、第2処理反応域の処理を行う処理反応装置(以下、「第2処理反応装置」という。)がロータリキルン型反応装置、移動床型反応装置又は流動床型反応装置であることを特徴とする焼却灰の処理装置。
- 第1処理反応装置を第2処理反応装置の上に配置し、第1処理反応装置の灰が重力で第2処理反応装置に落下するように灰の移送経路を設置し、かつ、この灰の移送経路に少なくとも1つの雰囲気縁切装置を設置してなる請求項16に記載の焼却灰の処理装置。
- 第1処理反応装置から第2処理反応装置への灰の移送経路に、第1処理反応装置より落下する灰と、第2処理反応装置雰囲気ガスの排ガスとを向流接触させる、灰減酸素装置を設置することを特徴とする請求項16又は17に記載の焼却灰の処理装置。
- 第1処理反応装置から排出される処理反応排ガスを、冷空気と混合して、600℃以下の温度まで冷却する冷空気混合冷却装置、及び、冷媒によりさらに低い所定の温度まで間接冷却するガスクーラを用いて、二段冷却することを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の焼却灰の処理装置。
- 第2処理反応域を500〜1000℃の範囲内の処理温度に保持するために、第2処理反応装置の雰囲気ガス循環経路にガス加熱装置を備えることを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項に記載の処理装置。
- 第2処理反応域を500〜1000℃の範囲内の処理温度に保持するために、第2処理反応装置が外部加熱装置を備えることを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項に記載の処理装置。
- 第2処理反応域を500〜1000℃の範囲内の処理温度に保持するために、第2処理反応装置内部の灰と接触する部分に電熱式加熱装置を備えることを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項に記載の処理装置。
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