JP2005040664A - フッ素含有廃スラッジの処理方法およびアルカリ廃液の処理方法 - Google Patents

フッ素含有廃スラッジの処理方法およびアルカリ廃液の処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】廃スラッジの資源化、リサイクル化を図ると共に、アルミニウム成形体の表面処理工程においてクロウズドシステムを構築して、経済性、環境保護の点で特に好ましい廃スラッジの処理方法を提供する。
【解決手段】フッ化水素アンモニウムを含有する溶液によってアルミニウム成形体の表面処理を行う際に発生する廃棄物としてのフッ素含有廃スラッジから有用物を回収するための処理方法であって、前記フッ素含有廃スラッジと水酸化ナトリウムとを接触させて、氷晶石及びアンモニアを生成させ、これらを回収することからなる、フッ素含有廃スラッジの処理方法、及び
アルミニウム成形体のアルカリエッチング処理に際して発生するアルカリ廃液の処理方法であって、このアルカリ廃液中の水酸化ナトリウムと、フッ化水素アンモニウムを含有する溶液によってアルミニウム成形体の表面処理を行う際に発生するフッ素含有廃スラッジとを接触させて、氷晶石及びアンモニアを生成させ、これらを回収することからなる、アルカリ廃液の処理方法。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウムの表面処理工程における廃スラッジおよび廃液の資源化に関するものである。
より詳細には、本発明は、アルミニウム成形体の表面処理を行う際に発生する廃棄物としてのフッ素含有廃スラッジから有用物を回収するための処理方法およびアルミニウム成形体のアルカリエッチング処理に際して発生するアルカリ廃液の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムサッシで代表されるアルミニウム成形品の表面処理は、一般に図1のような工程で行われている。通常の製品に関しては苛性ソーダによるアルカリエッチングで処理されるが、特に美観を要求される製品に関しては、フッ化水素アンモニウムを含有する溶液による処理(以下、「フッ化水素アンモニウム溶液処理」と言う)が行われている。
【0003】
このようなアルミニウム成形品の表面処理は、一般に押出し加工で発生する特有の縦筋や移動の際に発生する細かい傷を目立たなくすると同時に、高級感、着書したときの風合いや触感等を向上させる。特にフッ化水素アンモニウム溶液処理では、高級感のある梨地肌状の表面を得ることができる。
【0004】
フッ化水素アンモニウム溶液処理に使用される溶液は、処理すべきアルミニウムの種類、その具体的用途、処理条件等によって異なるが、一般にフッ化水素アンモニウム〔NHHF〕を含む水溶液が広く使用されている。このようなフッ化水素アンモニウム溶液処理により、ヘキサフルオロアルミニウムアンモニウム〔(NHAlF〕を主体とするスラッジが発生する。
【0005】
これまでフッ化水素アンモニウム溶液処理は、光学機器、化粧品の容器、照明器具などの一部の小物品を中心に利用されてきたことから、スラッジの発生量も比較的少なく、その処理の問題はあまり注目されていなかった。
【0006】
近年、フッ化水素アンモニウム溶液処理は、アルミニウムサッシなどの大型材料に使用されるようになってきており、発生するスラッジの量も増大傾向にある。また、環境保護の要請もあって、スラッジの処分には膨大な費用がかかるという問題がでてきた。
【0007】
フッ化水素アンモニウム溶液処理と異なって、従来よりアルミニウム製品に広く行われているアルカリエッチング処理の場合、生成されるスラッジは水酸化アルミニウムであるが、このような水酸化アルミニウムは実質的に人体に無害でありかつ広範な技術分野において有効利用のできる物質であると言える。一方、フッ化水素アンモニウム溶液処理で発生するスラッジは、ヘキサフルオロアルミニウムアンモニウムを主体としているものである。本物質は利用価値がほとんどないことから、従来産業廃棄物として取り扱われているものである。そして、このヘキサフルオロアルミニウムアンモニウムは、この状態では不安定であって、その状態で放置された場合は環境衛生上好ましくないことから、カルシウム処理等によって完全に無害化を行う必要があって、その処分には多額の費用がかかっている。
【0008】
特開平06−64917号公報には、アンモニウム氷晶石(ヘキサフルオロアルミニウムアンモニウム)は、半導体製造装置におけるガスクリーニング用ガス等として有用なNFの製造原料に好適な物質である旨が記載されている。しかしながら、一般にフッ化水素アンモニウム溶液処理によって発生する廃スラッジは、粒径が小さく当該ガスの原料としては適さないことが判明した。
【0009】
また、特開昭57−111238号公報に記載の技術は、実験室レベルのものであり、かつ廃スラッジの処理に際しては適用できないことが判明している。
【0010】
【特許文献1】
特開平06−649179号公報
【特許文献2】
特開昭57−111238号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アルミニウム表面処理工程で発生するフッ素とアルミニウムを含有する廃スラッジを処理することにある。本発明は、単にスラッジを廃棄する際にその量の低減あるいは無毒化を図るものではなくて、廃スラッジを利用可能な有用物に変換してその再利用を図るものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このような本発明による廃スラッジの処理方法では、廃スラッジの資源化およびリサイクル化が図れ、利用可能な有用物が製造される。よって、本廃スラッジの処理方法に関する技術は、廃スラッジの資源化方法、リサイクル方法、有用物の製造方法と捉えることもできる。そして、本発明では、前記の有用物の製造の際に、アルミニウム成形体のアルカリエッチング処理に際して発生するアルカリ廃液を利用するものであるから、アルカリ廃液の処理方法と捉えることもできる。
【0013】
したがって、本発明によるフッ素含有廃スラッジの処理方法は、上記の観点に着目してなされたものであり、フッ化水素アンモニウムを含有する溶液によってアルミニウム成形体の表面処理を行う際に発生する廃棄物としてのフッ素含有廃スラッジから有用物を回収するための処理方法であって、前記フッ素含有廃スラッジと水酸化ナトリウムとを接触させて、氷晶石およびアンモニアを生成させ、これらを回収することからなること、を特徴とするものである。
【0014】
このような本発明によるフッ素含有廃スラッジの処理方法は、好ましくは、前記のフッ素含有廃スラッジと、アルミニウム成形体のアルカリエッチング処理に際して発生した廃液中に存在する水酸化ナトリウムとを接触させることができる。
【0015】
また、このような本発明によるフッ素含有廃スラッジの処理方法は、好ましくは、前記のアルカリエッチング処理に際して発生した廃液が、NaOH含量が30〜100g/lであり、かつNaAlO含量が50g/l以下のものとすることができる。
【0016】
このような本発明によるフッ素含有廃スラッジの処理方法は、好ましくは、前記のフッ素含有廃スラッジと反応させる水酸化ナトリウムと当量比が、フッ素含有スラッジの重量(乾燥重量)に対して1.0〜1.3、特に好ましくは1.1〜1.2のものとすることができる。
【0017】
そして、このような本発明によるフッ素含有廃スラッジの処理方法は、好ましくは、前記のフッ素含有廃スラッジと水酸化ナトリウムとを接触させる際に、あるいは接触後に、フッ素含有化合物を共存させることができる。
【0018】
さらに、このような本発明によるフッ素含有廃スラッジの処理方法は、好ましくは、前記のフッ素含有化合物の量を、フッ素含有化合物中のフッ素重量/前記アルカリエッチング処理に際して発生した廃液中のアルミニウム重量=4.2以上とすることができる。
【0019】
また、本発明によるアルカリ廃液の処理方法は、アルミニウム成形体のアルカリエッチング処理に際して発生するアルカリ廃液の処理方法であって、このアルカリ廃液中の水酸化ナトリウムと、フッ化水素アンモニウムを含有する溶液によってアルミニウム成形体の表面処理を行う際に発生するフッ素含有廃スラッジとを接触させて、氷晶石およびアンモニアを生成させ、これらを回収することからなること、を特徴とするものである。
【0020】
また、このような本発明によるアルカリ廃液の処理方法は、好ましくは、前記のアルカリエッチング処理に際して発生した廃液が、NaOH含量が30〜100g/lであり、かつNaAlO含量が50g/l以下のものとすることができる。
【0021】
このような本発明によるアルカリ廃液の処理方法は、好ましくは、前記のフッ素含有廃スラッジと反応させる水酸化ナトリウムと当量比が、フッ素含有スラッジの重量(乾燥重量)に対して1.0〜1.3、特に好ましくは1.1〜1.2のものとすることができる。
【0022】
そして、このような本発明によるアルカリ廃液の処理方法は、好ましくは、前記のフッ素含有廃スラッジと水酸化ナトリウムとを接触させる際に、あるいは接触後に、フッ素含有化合物を共存させることができる。
【0023】
さらに、このような本発明によるアルカリ廃液の処理方法は、好ましくは、前記のフッ素含有化合物の量を、フッ素含有化合物中のフッ素重量/前記アルカリエッチング処理に際して発生した廃液中のアルミニウム重量=4.2以上とすることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明によるフッ素含有廃スラッジの処理方法およびアルカリ廃液の処理方法について、更に詳細に説明する。
【0025】
<フッ素含有スラッジ>
本発明の処理対象は、フッ素含有廃スラッジ、具体的には、フッ化水素アンモニウムを含有する溶液によってアルミニウム成形体の表面処理を行う際に発生するフッ素含有廃スラッジ、である。
【0026】
一般的に、アルミニウム成形体の表面処理には、フッ化水素アンモニウム〔NHHF〕を含む水溶液が使用されており、このフッ化水素アンモニウム溶液処理によって、ヘキサフルオロアルミニウムアンモニウム〔(NHAlF〕を主体とするスラッジが発生する。
【0027】
なお、このスラッジを構成するヘキサフルオロアルミニウムアンモニウムは、通常、平均粒径が約50μmのものであって、固液分離を行うことによってアルミニウム成形体の表面処理に使用された溶液(即ち、フッ化水素アンモニウムを含有する溶液)から容易に分離できるものである。固液分離の方法は任意であるが、本発明では例えばフィルタープレス型濾過機が好ましい。
【0028】
この固液分離によって分離された液体部は、そのまま、あるいは必要に応じて他の処理(例えば、不純物の除去あるいは成分調整等)を行った後に、アルミニウム成形体の処理溶液の少なくとも一部として再利用することができる。そして、この固液分離によって分離された液体部には、必要に応じてフッ化水素アンモニウムを溶解させて、フッ化アンモニウムを含有する溶液としてアルミニウム成形体の表面処理に再使用することができる。
【0029】
一方、固液分離によって得られた固体部は、そのまま水酸化ナトリウムとの反応に付すことができるし、必要に応じて、例えば乾燥処理および(または)粉砕処理に付した後に水酸化ナトリウムとの反応に付すこともできる。
【0030】
<水酸化ナトリウムとの反応>
本発明では、廃スラッジ、特に好ましくは前記の固液分離および乾燥処理に付された廃スラッジ(尚、この廃スラッジは、ヘキサフルオロアルミニウムアンモニウム〔(NHAlF〕を乾燥基準で約97%含有する)と水酸化ナトリウムとを接触させて、氷晶石およびアンモニアを生成させる。
【0031】
この氷晶石およびアンモニアの生成反応は、下記の反応式(1)で表わすことができる。
(NHAlF+3NaOH → NaAlF+3NH↑+3HO …(1)
【0032】
廃スラッジと水酸化ナトリウムとの接触は溶液状態で行なうことが好ましく、本発明では、例えば(イ)廃スラッジに水酸化ナトリウム溶液を添加するか、あるいは水酸化ナトリウム溶液に廃スラッジを添加し、攪拌する方法、(ロ)廃スラッジを溶解なしい分散させた液中に、粉状の水酸化ナトリウムあるいは水酸化ナトリウム溶液を添加し、攪拌する方法、および(ハ)固体状の廃スラッジと粉状の水酸化ナトリウムとを別々に、あるいはこれらの混合物を、水に溶解させて溶液とする方法、などを例示することができる。これらの中では(イ)が特に好ましい。
【0033】
本発明では、工業用原料として一般に流通している水酸化ナトリウムを使用することもできるし、また、アルミニウム成形体のアルカリエッチング処理に際して発生するアルカリ廃液中に存在する水酸化ナトリウムを使用することができる。本発明では、後者の、アルカリエッチング処理に際して発生するアルカリ廃液中に存在する水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。
【0034】
すなわち、本発明では、前記のフッ素含有廃スラッジと、アルミニウム成形体のアルカリエッチング処理に際して発生した廃液中に存在する水酸化ナトリウムとを接触させることが好ましい。特に、前記のフッ素含有廃スラッジと、NaOH含量が30〜100g/lでありかつNaAlO含量が50g/l以下であり、かつNaOH/NaAlOの重量比が1.5以上のアルカリエッチング処理に際して発生した廃液とを接触させることが好ましい。とりわけ、NaOH含量が高い廃液(例えばNaOH含量が50〜100g/lのもの)は、有用物(即ち、氷晶石およびアンモニウム)の生成効率が良好になることから特に好ましい。
【0035】
アルミニウム成形体の表面処理で発生する一般的なアルカリエッチング廃液の大部分は、NaOH含量およびNaAlO含量のいずれも上記条件を満たしているので、本発明ではそのようなアルカリエッチング廃液をそのまま反応に使用することができる。なお、NaOH含量および(または)NaAlO含量が、上記範囲外であっても目的物質である氷晶石およびアンモニウムを生成させることが出来るが、NaOH含量が低い場合は氷晶石およびアンモニウムの生成効率が悪くなり、またNaAlO含量が多い場合には廃液中のNaOH分を消費して氷晶石化するために有効NaOH分が少なくなるので、NaOH含量およびNaAlO含量は上記範囲内が好ましい。
【0036】
水酸化ナトリウムの使用量は、前記の式(1)で示されるように、フッ素含有スラッジ中のヘキサフルオロアルミニウムアンモニウムの量から理論量が容易に算出できる。また、フッ素含有スラッジ中のヘキサフルオロアルミニウムアンモニウムの量はほぼ一定であることから、以後フッ素含有スラッジ中のヘキサフルオロアルミニウムアンモニウムの量を単にフッ素含有スラッジの重量(乾燥重量)と記し、また該化合物を氷晶石に変えるための水酸化ナトリウムの理論量を1当量と記す。
【0037】
そこで、水酸化ナトリウムの使用量は、フッ素含有スラッジの重量(乾燥重量)に対して1.0〜1.3当量が好ましく、特に1.1〜1.2当量となるようにすることが好ましい。
【0038】
フッ素含有スラッジの重量(乾燥重量)に対する水酸化ナトリウムが1.0当量以下の場合は、水酸化ナトリウム量が不足して未反応の(NHAlFが残存し、同時に氷晶石およびアンモニウムの生成量が低下する場合がある。一方、水酸化ナトリウム量がフッ素含有スラッジに対して多いときには、場合により、一旦生成した氷晶石の一部が過剰の水酸化ナトリウムと反応してNaFになることから、最終的に得られる氷晶石の量が低下することがある。このNaF化反応は水酸化ナトリウムの量が1.5当量を越えると急速に進むことが確認されている。よって、水酸化ナトリウムの使用量は、フッ素含有スラッジの重量(乾燥重量)に対する水酸化ナトリウムの量は、1.0〜1.3当量が好ましく、特に1.1〜1.2当量とすることが好ましい。
【0039】
<フッ素含有化合物>
本発明においては、前記のフッ素含有廃スラッジとアルカリエッチング処理に際して発生したアルカリ廃液中に存在する水酸化ナトリウムとを接触させる際、あるいは接触後に、必要に応じて、フッ素含有化合物を共存させることができる。
【0040】
このようにフッ素含有化合物を加えることにより、アルカリ廃液中に存在するアルミン酸ソーダを下記(2)式に示す反応式の通り氷晶石として回収することができる。
NaAlO+2NaOH+6NHF → NaAlF+6NH↑+4HO …(2)
【0041】
本発明において特に好ましいフッ素含有化合物としては、フッ化アンモニウムおよびフッ化ナトリウム等を挙げることができる。
このようなフッ素含有化合物を用いることによって、アルカリ廃液中のアルミニウムを氷晶石に変えることにより高純度の氷晶石を得ることができる。
【0042】
フッ素含有化合物の使用量は、(2)式で明らかなように、フッ素含有化合物中のフッ素重量/アルカリエッチング廃液中のアルミニウム重量=4.2以上、特に4.2〜4.6というように、ややフッ素分が過剰になるようにすることが好ましい。フッ素含有化合物のフッ素重量/アルカリエッチング廃液中のアルミニウムが4.2未満の場合は、フッ素含有化合物の量が不足して、アルミン酸ソーダが未反応で残存し、加水分解により水酸化アルミニウムとなる場合がある。一方、フッ素含有化合物の使用量が多いときには、例えば氷晶石の洗浄等の後工程においてフッ素含有化合物濃度が高い廃棄物が発生し、その処理設備の負担が増大することがある。よって、フッ素含有化合物の使用量は、フッ素含有化合物中のフッ素/アルカリエッチング廃液中のアルミニウムが4.2〜4.6となるようにすることが好ましい。
【0043】
<氷晶石およびアンモニアの回収およびその利用>
廃スラッジと水酸化ナトリウムから生成されたアンモニア(NH)は主としてガス状および液状(即ち、アンモニア水として)で回収することができ、また、生成された氷晶石(NaAlF)は、固液分離の後、必要に応じて、洗浄処理(例えば、水による洗浄)および乾燥処理(特に好ましくは熱風乾燥)を行うことによって、固体状で回収することができる。
【0044】
本発明によって回収された氷晶石は、一般的に流通している他の氷晶石と同様に、各種の用途、例えは金属アルミニウム電解精錬の際の融剤として利用できるものである。
【0045】
一方、回収されたアンモニアは、適当な精製方法(例えば蒸留等)によって精製することができ、一般的に流通している他のアンモニアと同様に、各種の用途に利用できるものである。
【0046】
また、回収されたアンモニアとフッ化水素とを反応させることによって、フッ化水素アンモニウムを生成させることができ、さらにこのフッ化水素アンモニウムはアルミニウム成形体の表面処理に利用することができる。
【0047】
<廃スラッジ処理工程の概要>
一般に、アルミニウムサッシで代表されるアルミニウム成形体の表面加工は、例えば図1に示されるように、アルミニウム成形体を「脱脂」→「水洗」の後、「アルカリエッチング処理(イ)」または「フッ化水素アンモニウム溶液処理(ロ)」を経て、「水洗」→「スマット除去」→「水洗」→「陽極酸化」→「電解着色」→「電着塗装」を行うことによって行われている。
【0048】
「フッ化水素アンモニウム溶液処理(ロ)」で発生した廃スラッジ(1)は、「固液分離」され、固体部(2)は無害化処理をして産業廃棄物として廃棄する。液体部(3)は、そのままあるいは消費されたフッ化水素アンモニウム補給液と共に「フッ化水素アンモニウム溶液処理(ロ)」に戻される。
【0049】
本発明による廃スラッジの処理方法は、フッ素含有廃スラッジの処理方法に関するものであって、図1および図2または図3に示されるような「フッ化水素アンモニウム溶液処理(ロ)」からの廃スラッジをその処理対象とするものである。なお、図1および図2または図3は、アルミニウムサッシの表面加工工程で行われる好ましい処理工程の概要を示すものである。従って、本発明はこれらの図に具体的に開示された工程の全てを必須とするもののみに限定されないこと、ならびに図に記載のない他の工程を含んでなるものをも対象とすることは言うまでもない。
【0050】
図2に示される本発明による好ましい廃スラッジの処理方法では、先ず「フッ化水素アンモニウム溶液処理(ロ)」で発生した廃スラッジ(1)が「固液分離」される。この「固液分離」によって分離された固体部(2)は、「乾燥」工程に付され、一方「固液分離」によって分離された液体部(3)は、そのままあるいは副生されたフッ化水素アンモニウム(12)と共に「フッ化水素アンモニウム溶液処理」に再利用される。
【0051】
そして、前記「乾燥」されたスラッジ(4)は、「攪拌反応」に付され、そこで所定量の水酸化ナトリウムを含む水溶液と接触する。この接触によって氷晶石およびアンモニア(7)が生成する。
【0052】
この「攪拌反応」による接触生成物(主として氷晶石からなる)(8)は「固液分離」される。この「固液分離」によって分離された液体部(9)は「攪拌反応」において再利用され、一方、前記「固液分離」によって分離された固体部(10)は「洗浄」および「乾燥」されて、「氷晶石」として回収される。
【0053】
「攪拌反応」において生成し、アンモニアガスおよび(または)アンモニア水として回収されたアンモニア(7)は、必要に応じて精製(図示せず)した後、「フッ化水素」(11)と反応させて、フッ化水素アンモニウム(12)とした後に、「フッ化アンモニウム溶液処理(ロ)」に利用することができる。なお、回収されたアンモニア(7)は、フッ化水素(10)と反応させることなく他の用途に利用することもできる。
【0054】
図3は、図2における、水酸化ナトリウムに変えて「アルカリエッチング処理(イ)」からの廃液(5)中の水酸化ナトリウムに接触させる場合について記している。当該廃液(5)にはエッチングの際に生じるアルミン酸ソーダが含まれているため、それに見合った量のフッ素含有化合物を加えることにより、氷晶石に変換させて、残った水酸化ナトリウムとスラッジ(4)中のヘキサフロオロアルミニウムアンモニウムとの接触によって、氷晶石およびアンモニウム(7)が生成する。その後の工程は、図2の例と同様である。
【0055】
【実施例】
以下の実施例は、本発明の好ましい一具体例を更に詳細に示すものである。
なお、本実施例における分析法は、蛍光X線分析を採用し、湿式法としてフッ素分は蒸留分離後にトリウム滴定法で、アンモニウムに関しては蒸留分離後中和滴定法で求めた。また、アルミニウムに関してはEDTA滴定で、ナトリウムに関しては炎光光度法で実施し、各目的物質により、適宜組み合わせて分析をして、それぞれの成分比から目的の組成を算出した。
【0056】
<実施例1>
フッ化水素アンモニウムにアルミニウム材料を浸漬させた後、処理槽底部に沈降したスラッジを固液分離した後、乾燥した。この物質を分析した。その結果、平均して97.5%がヘキサフルオロアルミニウムアンモニウムであることが確認された。この物質を、以後物質Aと称す。
【0057】
物質Aを一定量採り、相当量の80g/lの水酸化ナトリウム溶液を加えて70℃にて1時間攪拌し、冷却後に濾過乾燥した。その反応生成物の成分分析の結果は表1に記した通りである。この時発生するガスはアンモニウムであり、反応液中からもアンモニア水が検出された。なお。反応物の収率は、生成した固形分にて判断した。
【0058】
【表1】
Figure 2005040664
【0059】
フッ素含有廃スラッジから氷晶石およびアンモニアが回収されることが確認された。また、氷晶石およびアンモニア以外の成分は、(NHAlFおよびNaFである。この実験結果から、水酸化ナトリウムの添加量は、スラッジ中のヘキサフルオロアルミニウムアンモニウムの当量から1.3当量、特に1.1〜1.2当量が好ましいことが判った。
【0060】
<実施例2>
実施例1の水酸化ナトリウムに代えてアルカリエッチング廃液を使用する。該廃液(NaOH 100.0g/l NaAlO 50g/l含有)を前記反応式(2)の反応を行わせる目的で攪拌液中にフッ化アンモニウムを、液中のアルミニウム重量に対してフッ素重量が4.6倍(理論量は4.22倍でやや過剰に加えた)になるように加えて、その液中の残りの水酸化ナトリウム分に対して前記反応式(1)から算出される、所定量の物質Aを加えて70℃で1時間攪拌し、冷却後に濾過乾燥した。その反応生成物の成分分析の結果は表2に記した通りである。
【0061】
【表2】
Figure 2005040664
【0062】
この実験結果から、反応状態は実施例1と変わらず、反応液にやや着色が見られたが、濾過・乾燥した結果、きれいな結晶が得られた。水酸化ナトリウムの添加量は、スラッジ中のヘキサフルオロアルミニウムアンモニウムの当量〜1.3当量、特に1.1〜1.2当量が好ましいことが判った。
【0063】
<実施例3>
実施例2と同じアルカリエッチング廃液を使用して、フッ化アンモニウムの添加量を3.8〜4.6に変えて、同様の実験を行った結果は表3に記した通りである。
【0064】
【表3】
Figure 2005040664
【0065】
この実験結果から、フッ化アンモニウムの添加量が当量以下では、生成物中の不純物として水酸化アルミニウムが生成されていることが確認された。その理由は、廃液中のNaAlOがフッ素不足で氷晶石にならず、加水分解して、Al(OH)になったと考えられる。そこで、廃液中のアルミニウム重量に対して4.2倍以上のフッ素分を添加することが好ましいことが判った。
【0066】
<実施例4>
次に、アルカリエッチング廃液中の水酸化ナトリウムの濃度を変化させ、フッ素化合物の添加量は4.6に固定して、物質Aに対する水酸化ナトリウムの添加量も1.2当量に固定して、反応生成物の影響を確認する実験を行った。
【0067】
【表4】
Figure 2005040664
【0068】
この結果から、製品純度に大差は無かったが、物質Aを同じ量処理しようとすると水酸化ナトリウムの濃度が低いほど反応液の体積が増大して、加熱に必要な熱量も多くなり、副生アンモニアの回収も大変になり、経済的に不利になることが明らかである。
【0069】
その場合は、必要に応じて、水酸化ナトリウムを添加すればその欠点は容易に解消される。
【0070】
【発明の効果】
このような本発明によるフッ素含有廃スラッジの処理方法は、従来は廃棄物として処分されていたフッ素含有スラッジを、有用物(即ち、氷晶石およびアンモニア等)を生成/回収するための原料として、有効に利用するものである。従って、本発明では、フッ素含有スラッジの廃棄処分コストが不要になると同時に、有用物の取得による製造上および経済的利益を得ることができる。
【0071】
特に、本発明で生成/回収されたアンモニアは、フッ化水素との反応によって容易にフッ化水素アンモニウムにすることができるものであり、そしてこのフッ化水素アンモニウムは、アルミニウム成形体のフッ化水素アンモニウム溶液処理にそのまま利用できるものである。
【0072】
このように、本発明では、本発明の処理対象物(即ち、フッ素含有廃スラッジ)が発生するフッ化水素アンモニウム溶液処理の現場において、その廃スラッジの処理自体ができるとともに、その廃スラッジ処理から取得された有用物(即ち、アンモニア)の利用ができ、かつこのアンモニアを利用して得られたフッ化水素アンモニウム自体も、アルミニウム成形体に対する当該フッ化水素アンモニウム溶液処理の成分として利用することができる。
【0073】
そして、本発明によって使用/消費される水酸化ナトリウムは、アルミニウム成形体の表面処理として汎用されているアルカリエッチング処理で不可避的に発生するアルカリ廃液から容易に取得可能なものである(多くの場合、アルカリ廃液を何等特別な処理をすることなしに、この廃液中の水酸化ナトリウムをそのまま本発明に利用することができる)。その上、濾過液中のアルミニウムも同時に氷晶石として回収可能になる。
【0074】
このアルカリ廃液は、本発明を工業的規模で実施する者ならば、その者自身がアルカリ廃液の廃棄者であることが多いので、実質的に無償ないし極めて低コストで入手できることできるものである。因みに、このような場合、本発明の実施者は単に水酸化ナトリウムの取得費用だけでなく、アルカリ廃液の廃棄費用も不要になる。
【0075】
また、本発明における他の回収成分である氷晶石も、本発明と近接ないし関連する技術分野におけるアルミニウムの電解精錬用融剤等として利用することできるものである。
【0076】
以上の通り、本発明では廃スラッジの処理およびこの処理による有用物の利用が容易であることから、クロウズドシステムを構築しやすく、環境保護への寄与が大きく、かつ経済的メリットも極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム表面処理の概要を示すフローチャート図。
【図2】本発明による廃スラッジの処理方法の第一実施例の概要を示すフローチャート図。
【図3】本発明による廃スラッジの処理方法において、アルカリ廃液を使用したときの第二実施例の概要を示すフローチャート図。

Claims (7)

  1. フッ化水素アンモニウムを含有する溶液によってアルミニウム成形体の表面処理を行う際に発生する廃棄物としてのフッ素含有廃スラッジから有用物を回収するための処理方法であって、前記フッ素含有廃スラッジと水酸化ナトリウムとを接触させて、氷晶石およびアンモニアを生成させ、これらを回収することからなることを特徴とする、フッ素含有廃スラッジの処理方法。
  2. 前記のフッ素含有廃スラッジと、アルミニウム成形体のアルカリエッチング処理に際して発生した廃液中に存在する水酸化ナトリウムとを接触させる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記のアルカリエッチング処理に際して発生した廃液が、NaOH含量が30〜100g/lであり、かつNaAlO含量が50g/l以下のものである、請求項2に記載の方法。
  4. 前記のフッ素含有廃スラッジと反応させる水酸化ナトリウムとの当量比が、フッ素含有スラッジの重量(乾燥重量)に対して1.0〜1.3、特に好ましくは1.1〜1.2である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記のフッ素含有廃スラッジと水酸化ナトリウムとを接触させる際に、あるいは接触後に、フッ素含有化合物を共存させる、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記のフッ素含有化合物の量が、フッ素含有化合物中のフッ素重量/前記アルカリエッチング処理に際して発生した廃液中のアルミニウム重量=4.2以上である、請求項5に記載の方法。
  7. アルミニウム成形体のアルカリエッチング処理に際して発生するアルカリ廃液の処理方法であって、このアルカリ廃液中に存在する水酸化ナトリウムと、フッ化水素アンモニウムを含有する溶液によってアルミニウム成形体の表面処理を行う際に発生するフッ素含有廃スラッジとを接触させて、氷晶石およびアンモニアを生成させ、これらを回収することからなることを特徴とする、アルカリ廃液の処理方法。
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