JP2005036818A - 手動変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】変速操作を容易にすることにより、扱い易い手動変速機を提供する。
【解決手段】エンジンと入力軸12との間には入力軸12に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる入力クラッチ15が設けられ、この入力クラッチ15を締結状態と解放状態とに切り換えるクラッチアクチュエータ51が入力クラッチ15に組み付けられる。クラッチペダル54には操作状況を検出するストロークセンサ55が組み付けられる。クラッチ制御ユニット53は、ストロークセンサ55からの操作信号に基づきクラッチアクチュエータ51に対して作動信号を出力する。これにより、入力クラッチ15の機械的構造に捕らわれることなく、入力クラッチ15の切り換えに必要なクラッチペダル54の踏み込みストロークや踏力を自在に設定することができる。
【選択図】 図2
【解決手段】エンジンと入力軸12との間には入力軸12に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる入力クラッチ15が設けられ、この入力クラッチ15を締結状態と解放状態とに切り換えるクラッチアクチュエータ51が入力クラッチ15に組み付けられる。クラッチペダル54には操作状況を検出するストロークセンサ55が組み付けられる。クラッチ制御ユニット53は、ストロークセンサ55からの操作信号に基づきクラッチアクチュエータ51に対して作動信号を出力する。これにより、入力クラッチ15の機械的構造に捕らわれることなく、入力クラッチ15の切り換えに必要なクラッチペダル54の踏み込みストロークや踏力を自在に設定することができる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載される手動変速機に関し、特に、入力クラッチの操作性を向上するために適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載される手動変速機は、エンジンに駆動される入力軸と、これに平行となって駆動輪に連結される出力軸とを備えており、入力軸の駆動歯車と出力軸の従動歯車とはそれぞれに噛み合って複数の変速歯車列つまり変速段を形成する。このような手動変速機は、変速段のいずれかを動力伝達状態に切り換えるシンクロメッシュ機構と、入力軸に対するエンジン動力の伝達と遮断とを切り換える入力クラッチとを備えており、シンクロメッシュ機構はシフトレバーを介して手動操作され、入力クラッチはクラッチペダルを踏み込むことによって操作される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この入力クラッチは、エンジンのフライホイールに組み付けられるクラッチカバーと、入力軸にスプラインを介して軸方向に摺動自在に組み付けられるクラッチディスクとを備えている。クラッチカバーはフライホイールにボルトを介して締結されるカバー本体を備えており、このカバー本体内にはプレッシャプレートとダイヤフラム型のクラッチスプリングとが収容されている。クラッチスプリングに付勢されるプレッシャプレートをクラッチディスクに押し付けることにより、クラッチディスクをフライホイールとプレッシャプレートとの間に挟み込むことができ、入力クラッチは締結状態に切り換えられる。
【0004】
また、入力クラッチを解放状態に切り換えるため、クラッチスプリングの中央部に対面してレリーズベアリングが移動自在に設けられており、ミッションケースにはレリーズベアリングを一端に把持するレリーズフォークが揺動自在に設けられている。このレリーズフォークの他端はミッションケースから突出するようになっており、この突出した端部を押し動かすオペレーティングシリンダがミッションケースに取り付けられる。車室内のクラッチペダルにはマスターシリンダが組み付けられており、クラッチペダルを踏み込むことによってオペレーティングシリンダに油圧を供給することができる。油圧によってオペレーティングシリンダを駆動することにより、レリーズベアリングを介してクラッチスプリングを変形させることができ、入力クラッチは解放状態に切り換えられる。
【0005】
このような手動変速機は、歯車の噛み合いによってエンジン動力を駆動輪に伝達するとともに、変速操作を行う際にもオイルポンプからの油圧を必要としないため、高い効率でエンジン動力を伝達することができ、エンジンの燃費性能を向上させることもできる。また、部品点数が少ないため、自動変速機や無段変速機に比べて小型化や低コスト化を達成し易いという利点もある。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−188658号公報(第4−5頁、図2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、手動変速機を搭載した車両にあっては、発進や変速操作などを行う際に、入力クラッチを手動によって締結状態と解放状態とに切り換える必要があり、運転手によるクラッチペダルの操作が不可欠となっていた。たとえば、滑らかな変速操作を行うためには、入力クラッチを解放してシンクロメッシュ機構を切り換えた後に、入力クラッチを滑らせながら徐々に締結する必要がある。このようなクラッチペダルの操作は慣れを必要とするため、自動変速機や無段変速機を搭載した車両に比べて運転操作が難しいという問題がある。特に、高出力車にあっては、クラッチスプリングのばね力が大きく設定されるため、非力な運転手にとっては、手動変速機を搭載した高出力車の運転操作が非常に難しいという問題があった。また、クラッチペダルを踏み込む際に必要な踏力は、クラッチスプリングの特性に応じて定められることになるが、人間工学の観点から適正とされる踏力とクラッチスプリングの特性とを一致させることは困難であった。
【0008】
また、クラッチペダルと入力クラッチとは油圧系統を介して接続されるため、入力クラッチを滑らせた際に発生することのある振動が、クラッチフルードを経てクラッチペダルに伝達されることがある。このような振動の伝達は車両の品質を低下させる要因となっていた。
【0009】
さらに、手動変速機にあっては、クラッチペダルの操作により直接的に入力クラッチが切り換えられるため、運転手の操作によっては入力クラッチが急激に締結されることがある。入力クラッチが急激に締結された場合には、駆動歯車と従動歯車との噛み合い歯面に衝撃荷重が加えられることになる。この衝撃荷重による歯車の損傷を回避するため、衝撃荷重を考慮して歯車に耐久性を持たせようとすると、駆動歯車や従動歯車を厚く形成する必要があり、手動変速機の大型化や高コスト化を招くことになっていた。
【0010】
本発明の目的は、変速操作を容易にすることにより、扱い易い手動変速機を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、手動変速機の変速品質を向上させるとともに、手動変速機の小型化や低コスト化を達成することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の手動変速機は、複数の駆動歯車を備える入力軸と、前記駆動歯車に噛み合って複数の変速段を形成する複数の従動歯車を備える出力軸と、前記変速段のいずれかを動力伝達状態に切り換える切換機構とを有する手動変速機であって、エンジンと前記入力軸との間に設けられ、前記入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる入力クラッチと、前記入力クラッチに組み付けられ、前記入力クラッチを締結状態と解放状態とに切り換えるクラッチアクチュエータと、運転手によるクラッチペダルの操作状況を検出するクラッチ操作検出手段と、前記クラッチ操作検出手段から入力される操作信号に基づいて、前記クラッチアクチュエータに作動信号を出力するクラッチ制御手段とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の手動変速機は、前記クラッチアクチュエータは電動であることを特徴とする。
【0014】
本発明の手動変速機は、前記クラッチ制御手段は車両状態に基づいて前記クラッチアクチュエータの作動速度を制限することを特徴とする。
【0015】
本発明の手動変速機は、前記クラッチ制御手段は、エンジン回転数、走行速度または変速段に基づいて前記車両状態を判定することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、クラッチ制御手段を介してクラッチアクチュエータを作動させるようにしたので、入力クラッチの機械的構造に捕らわれることなく、入力クラッチの切り換えに必要なクラッチペダルの踏み込みストロークや踏力を自在に設定することができる。これにより、クラッチペダルの操作に必要な踏力を軽減することができるとともに、クラッチペダルのストロークを短く設定することができるため、クラッチペダルの操作性を向上させることができる。
【0017】
また、クラッチ制御手段からの作動信号によってクラッチアクチュエータを作動させるため、入力クラッチの半クラッチ状態に対応するクラッチペダルのストローク範囲を幅広く設定することができる。これにより、入力クラッチを容易に半クラッチ状態に保つことができるため、発進時におけるエンジンストールや低速走行時における締結ショックの発生を回避することができ、操作性や変速品質を向上させることができる。
【0018】
さらに、クラッチペダルと入力クラッチとを機械的に分離することによって、入力クラッチからクラッチペダルに振動が伝達されることがないため、運転手に違和感を与えることなく入力クラッチを締結状態に切り換えることができる。
【0019】
さらに、車両状態に基づいてクラッチアクチュエータの作動速度を制限するようにしたので、手動変速機に対する大きな衝撃荷重の入力を回避することができる。これにより、手動変速機の小型化や低コスト化を達成することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施の形態である手動変速機10を示すスケルトン図である。図1に示すように、手動変速機10はエンジン11に駆動される入力軸12と、これに平行であって駆動輪に連結される中空の出力軸13とを有している。この手動変速機10は四輪駆動車に適用される手動変速機10であり、車両の進行方向を向いて搭載される縦置き式となっている。
【0022】
エンジン11のクランク軸14と入力軸12との間には、入力軸12にエンジン動力を伝達する締結状態と、エンジン動力を遮断する解放状態とに切り換えられる乾式の入力クラッチ15が設けられている。この入力クラッチ15は、入力軸12の端部に取り付けられるクラッチディスク16と、クランク軸14に固定されるクラッチカバー17とを有している。クラッチカバー17は、クランク軸14に固定されるフライホイール18と、これに組み付けられるカバー本体19とを備えており、カバー本体19内には、ダイヤフラム型のクラッチスプリング20と、環状のプレッシャプレート21とが組み込まれている。クラッチスプリング20によってプレッシャプレート21をフライホイール18に向けて付勢することにより、プレッシャプレート21とフライホイール18との間にクラッチディスク16を挟み込むことができ、入力クラッチ15を締結状態に切り換えることができる。
【0023】
また、入力軸12の径方向外方にはレリーズベアリング22が軸方向に移動自在に組み付けられ、ミッションケース23にはレリーズフォーク24が揺動自在に組み付けられている。レリーズベアリング22はレリーズフォーク24の一端に把持されており、レリーズフォーク24をピン部材25を支点に揺動させることによってレリーズベアリング22を軸方向に移動させることができる。軸方向に移動するレリーズベアリング22はクラッチスプリング20の中央部を押し込むため、クラッチスプリング20を変形させてプレッシャプレート21の押圧状態を解放することができ、入力クラッチ15を解放状態に切り換えることができる。このように、入力クラッチ15の締結状態と解放状態とはレリーズフォーク24を揺動させることによって切り換えられ、このレリーズフォーク24の揺動は後述するクラッチアクチュエータ51によって制御される。
【0024】
入力軸12には第1速、第2速の駆動歯車31a,32aが固定されており、第3速〜第5速の駆動歯車33a〜35aが回転自在に取り付けられている。一方、出力軸13には第1速、第2速の従動歯車31b,32bが回転自在に取り付けられており、第3速〜第5速の従動歯車33b〜35bが固定されている。これらの駆動歯車31a〜35aと従動歯車31b〜35bとはそれぞれに噛み合って前進用の変速歯車列つまり変速段を形成する。
【0025】
出力軸13には、第1速と第2速の変速段を動力伝達状態と中立状態とに切り換える切換機構41が装着されている。また、入力軸12には、第3速と第4速の変速段を動力伝達状態と中立状態とに切り換える切換機構42と、第5速の変速段を動力伝達状態と中立状態とに切り換える切換機構43とが装着されている。これらの切換機構41〜43はシンクロメッシュ機構となっている。
【0026】
切換機構41は、第1速と第2速の2つの従動歯車31b,32bの間に配置されるとともに出力軸13に固定されるシンクロハブ41aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ41bとを有している。このシンクロスリーブ41bを従動歯車31bに一体形成されたスプライン31cに噛み合わせると第1速に設定され、逆に従動歯車32bに一体形成されたスプライン32cに噛み合わせると第2速に設定される。他の切換機構42,43も切換機構41と同様の構造を備えており、入力軸12に固定されるシンクロハブ42a,43aと、シンクロハブ42a,43aのそれぞれに常時噛み合うシンクロスリーブ42b,43bとを有している。これらのシンクロスリーブ42b,43bを駆動歯車33a〜35aのそれぞれに一体形成されたスプライン33c〜35cに噛み合わせることにより、変速段は第3速〜第5速のいずれかに設定される。
【0027】
また、入力軸12には後退用の駆動歯車36aが固定され、切換機構41のシンクロスリーブ41bには後退用の従動歯車36bが固定されている。入力軸12に対して平行に配置されたアイドル軸44には、後退用の駆動歯車36aと従動歯車36bとに噛み合う位置と噛み合いを外す位置とに移動自在となるアイドル歯車45が装着されている。したがって、シンクロスリーブ41bを中立位置に作動させた状態のもとで、アイドル歯車45を図示しない切換機構を介して移動させて駆動歯車36aと従動歯車36bとに噛み合わせると、駆動歯車36a、従動歯車36bおよびアイドル歯車45からなる後退用の変速段を介して入力軸12の回転は逆転されて出力軸13に伝達される。
【0028】
これらの切換機構41〜43を作動させるため、それぞれのシンクロスリーブ41b〜43bは図示しないシフトフォークに把持されており、シフトフォークの移動に伴ってシンクロスリーブ41b〜43bは軸方向に移動することになる。このシフトフォークと車室内のシフトレバーとは、図示しないシフトロッドを介して連結されており、シフトレバーの手動操作に伴うシンクロスリーブ41b〜43bの移動により所望の変速段が動力伝達状態に切り換えられる。
【0029】
このような変速段を介して駆動される中空の出力軸13には前輪出力軸46が組み込まれており、前輪出力軸46はベベルギヤ式のセンタデファレンシャル装置47を介して出力軸13に連結されるとともに、フロントデファレンシャル装置48を介して図示しない前輪用のドライブシャフトに連結される。また、センタデファレンシャル装置47は駆動歯車49aと従動歯車49bとを介して後輪出力軸50に連結されており、後輪出力軸50は図示しないリヤデファレンシャル装置を介して図示しない後輪用のドライブシャフトに連結される。
【0030】
なお、センタデファレンシャル装置47はベベルギヤ式であり、センタデファレンシャル装置47に組み込まれたベベルギヤ47aを介して、前輪出力軸46と後輪出力軸50とに駆動トルクが分配され、前輪と後輪とを共に駆動することができる。また、ベベルギヤ47aの回転により前輪と後輪との回転差は差動吸収されるが、センタデファレンシャル装置47にはビスカスカップリング47bが設けられており、前輪または後輪がスリップして大きな差動回転が生じたときは、ビスカスカップリング47bにより差動回転が抑制される。
【0031】
図2は手動変速機10のクラッチ制御系の一部を示す概略図である。図2に示すように、ミッションケース23にはクラッチアクチュエータ51が固定されており、クラッチアクチュエータ51には伸縮自在となるプッシュロッド52が組み込まれている。このクラッチアクチュエータ51は図示しない電動モータを備えるとともに、電動モータからの駆動力を減速してプッシュロッド52に伝達する図示しないウォーム歯車を備えている。また、ミッションケース23から突出するレリーズフォーク24の端部には凹部24aが形成されており、この凹部24aにプッシュロッド52の先端が入り込むようにクラッチアクチュエータ51がミッションケース23に固定されている。プッシュロッド52を解放位置まで伸ばしてレリーズベアリング22をクラッチスプリング20に押し込むことにより、入力クラッチ15は解放状態に切り換えられる一方、プッシュロッド52を締結位置まで縮めてクラッチスプリング20の変形状態を解放することにより、入力クラッチ15は締結状態に切り換えられる。なお、図2には締結状態に切り換えられた入力クラッチ15が示されている。
【0032】
このように、プッシュロッド52を伸縮させることによって入力クラッチ15は締結状態と解放状態とに切り換えられており、クラッチ制御手段であるクラッチ制御ユニット53は、プッシュロッド52を伸縮させるためクラッチアクチュエータ51の電動モータに対して作動信号を出力する。クラッチ制御ユニット53は図示しないマイクロプロセッサ(CPU)を備えており、このCPUにはバスラインを介してROM、RAMおよびI/Oポートが接続される。ROMは制御プログラムや演算式などを格納しており、RAMはCPUで演算処理したデータを一時的に格納するようになっている。また、I/Oポートを介してCPUには各種センサやスイッチから車両状態を示す各種検出信号が入力される。
【0033】
クラッチ制御ユニット53のCPUに各種検出信号を入力する各種センサやスイッチとしては、運転手によるクラッチペダル54の操作状況を検出するクラッチ操作検出手段としてのストロークセンサ55、車両の動力性能を高めるために設けられ運転手に操作されるスポーツスイッチ56、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ57、運転手によるシフトレバーの操作状況を検出するシフト位置センサ58、車両の走行速度を検出する車速センサ59などが設けられている。
【0034】
続いて、クラッチ制御ユニット53によるクラッチアクチュエータ51の作動制御について説明する。まず、入力クラッチ15を解放状態に切り換えるため、運転手がクラッチペダル54を踏み込むと、クラッチペダル54に組み付けられるストロークセンサ55からクラッチ制御ユニット53に操作信号が入力される。クラッチ制御ユニット53は制御プログラムに従って操作信号より作動信号を演算し、この作動信号をクラッチアクチュエータ51に対して出力する。クラッチアクチュエータ51は作動信号に従ってプッシュロッド52を解放位置まで前進移動させ、入力クラッチ15を解放状態に切り換える。
【0035】
同様に、入力クラッチ15を締結状態に切り換えるために、運転手がクラッチペダル54の踏み込みを解放したときには、クラッチ制御ユニット53は、ストロークセンサ55からの操作信号に基づいてクラッチアクチュエータ51に対して作動信号を出力する。そして、クラッチアクチュエータ51はプッシュロッド52を締結位置まで後退移動させ、入力クラッチ15を締結状態に切り換える。
【0036】
このように、クラッチペダル54に組み付けられるストロークセンサ55と、入力クラッチ15を切り換えるクラッチアクチュエータ51との間にクラッチ制御ユニット53を設け、このクラッチ制御ユニット53を介してクラッチアクチュエータ51を作動させるようにしたので、入力クラッチ15を切り換えるために必要なクラッチペダル54の踏み込みストロークや踏力を自在に設定することができる。つまり、入力クラッチ15の機械的構造に捕らわれることなく、クラッチ制御ユニット53内に格納される制御プラグラム等を変更することによって、クラッチペダル54の踏み込みストロークや踏力を設定することができる。
【0037】
これにより、クラッチスプリング20のばね力が大きく設定される高出力車に手動変速機10を搭載した場合であっても、クラッチペダル54の操作に必要な踏力を軽減することができ、クラッチペダル54の操作が極めて容易となる。また、クラッチペダル54のストローク量を自由に設定することができるため、たとえば、ストロークを短く設定することによって、運転手が踵をフロアに接触させた状態のまま入力クラッチ15を操作することができ、クラッチ操作時に運転手の体を安定させるとともに、クラッチペダル54の操作性を向上させることができる。しかも、ストローク量を減らした場合であっても、クラッチペダル54の踏力が増大することはない。
【0038】
また、プッシュロッド52の作動速度をクラッチ制御ユニット53によって制御することができるため、入力クラッチ15の滑り状態つまり半クラッチ状態に対応するクラッチペダル54の踏み込み位置を幅広く設定することができる。これにより、入力クラッチ15を容易に半クラッチ状態に保つことができるため、発進時におけるエンジンストールや低速走行時における締結ショックの発生を回避することができ、手動変速機10の操作性や変速品質を向上させることができる。
【0039】
さらに、クラッチペダル54と入力クラッチ15とを機械的に分離することができるため、入力クラッチ15を滑らせた際に発生することのある振動が、クラッチフルードやケーブル等を介してクラッチペダル54に伝達されることもない。これにより、手動変速機10の変速品質や静粛性を向上させることができる。
【0040】
さらに、クラッチアクチュエータ51を電動モータによって駆動することにより、クラッチアクチュエータ51の構造を簡素化することができ、手動変速機10の大型化や高コスト化を抑制することができる。
【0041】
次いで、入力クラッチ15を締結する際のクラッチ制御ユニット53による作動速度制御について説明する。まず、運転手の操作により入力クラッチ15を急激に締結状態に切り換えた場合には、エンジン回転数が高い等の車両状態によっては手動変速機10内に衝撃荷重が伝達されることになる。この衝撃荷重は締結ショック等を発生させるため、このような状況下においては、クラッチアクチュエータ51の作動速度つまり入力クラッチ15の締結速度を制御することにより、手動変速機10内における衝撃荷重の伝達を回避する必要がある。このため、本発明の手動変速機10は、車両状態に基づいてクラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定するとともに、この上限値に従ってクラッチアクチュエータ51の作動速度を制御する。以下、クラッチ制御ユニット53による作動速度制御について説明する。
【0042】
図3はクラッチ制御ユニット53による作動速度制御の一例を示すフローチャートであり、このフローチャートに従ってクラッチ制御ユニット53からクラッチアクチュエータ51に対して作動信号が出力される。まず、ステップS1では、車室内に設けられるスポーツスイッチ56が操作されているか否かが判定される。ここで、スポーツスイッチ56とは、これをON側に切り換えることによって作動速度を規制することなくクラッチアクチュエータ51を作動させて車両の動力性能を高めるためのスイッチである。
【0043】
ステップS1において、スポーツスイッチ56がOFF側に切り換えられていると判定された場合には、ステップS2に進み、エンジン回転数センサ57からクラッチ制御ユニット53に入力されたエンジン回転数が、許容回転数を上回るか否かが判定される。ここで、許容回転数とは入力クラッチ15を最大速度で締結状態に切り換えた場合であっても許容されるエンジン回転数であり、この許容回転数は手動変速機10などに組み込まれる駆動系部品の強度や、入力クラッチ15の締結時に発生する締結ショックなどを考慮して予め設定されるものである。ステップS2において、エンジン回転数が許容回転数を上回ると判定された場合には、続くステップS3において、クラッチアクチュエータ51の作動速度に所定の上限値が設定される。
【0044】
続くステップS4において、クラッチ制御ユニット53は、ストロークセンサ55からの操作信号に基づいてクラッチアクチュエータ51に対する作動信号を演算するとともに、クラッチアクチュエータ51に作動信号を出力して入力クラッチ15を締結状態に切り換える。このとき、クラッチアクチュエータ51の作動速度には上限値が設定されているため、クラッチアクチュエータ51に対する作動信号もこの上限値を超えることのないように演算される。
【0045】
一方、ステップS1において、スポーツスイッチ56がON側に切り換えられていると判定された場合や、ステップS2において、エンジン回転数が許容回転数を下回ると判定された場合には、ステップS5に進み、クラッチアクチュエータ51の作動速度の上限値が解除される。そして、続くステップS4においては、前述したように、クラッチペダル54の操作状況に応じて入力クラッチ15が締結状態に切り換えられることになる。
【0046】
このように、エンジン回転数が高いために大きなエンジン動力が発生する車両状態のもとで、入力クラッチ15が最大速度で締結されることにより、駆動系の部品に大きな衝撃荷重が加えられる場合や、大きな締結ショックが発生する場合には、ステップS3に進むことでクラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値が設定される。従って、運転手が素早くクラッチペダル54を解放した場合であっても、入力クラッチ15の急激な締結を回避することができるため、駆動歯車や従動歯車の薄型化を達成することができるとともに、手動変速機10の変速品質を向上させることができる。
【0047】
また、スポーツスイッチ56がON側に切り換えられる場合や、エンジン回転数が低いために衝撃荷重や締結ショックを考慮する必要がない場合には、ステップS5に進むことでクラッチアクチュエータ51の作動速度の上限値が解除されることになる。従って、運転手によるクラッチペダル54の操作状況に応じて入力クラッチ15を締結状態に切り換えることができるため、車両の動力性能を高めることができるとともに、運転手に違和感を与えることもない。
【0048】
図4はクラッチ制御ユニット53による作動速度制御の他の例を示すフローチャートであり、図5はエンジン回転数をパラメータとした上限値テーブルを示す線図である。なお、図3に示すフローチャートと同一のステップには同一の符号を付して、その説明を省略する。まず、ステップS1において、スポーツスイッチ56がOFF側に切り換えられていると判定された場合には、続くステップS11に進み、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値が設定される。ここで、ステップS11において設定される上限値は、図5に示すように、エンジン回転数をパラメータとした上限値テーブルから選択されるものであり、この上限値テーブルはエンジン回転数の増加に伴って上限値が減少するように設定されている。
【0049】
続くステップS4において、クラッチ制御ユニット53は、ストロークセンサ55からの操作信号に基づいてクラッチアクチュエータ51に対する作動信号を演算するとともに、クラッチアクチュエータ51に作動信号を出力して入力クラッチ15を締結状態に切り換える。このとき、クラッチアクチュエータ51の作動速度には上限値が設定されているため、クラッチアクチュエータ51に対する作動信号もこの上限値を超えることのないように設定される。一方、ステップS1において、スポーツスイッチ56がON側に切り換えられていると判定された場合には、ステップS5において上限値が解除された後に、ステップS4において入力クラッチ15が締結状態に切り換えられることになる。
【0050】
このように、クラッチアクチュエータ51の作動速度に対する上限値を、エンジン回転数をパラメータとした上限値テーブルから選択するようにすると、発生するエンジン動力の大きさに応じて入力クラッチ15の締結速度をより適切に制御することができる。また、エンジン回転数の増加に伴って上限値を低下させるように設定したので、エンジン動力が小さく締結ショックなどを発生させることのない低回転側においては、クラッチペダル54の操作状況に応じて入力クラッチ15の締結速度を決定することができ、運転手に違和感を与えることなく入力クラッチ15を締結状態に切り換えることができる。一方、エンジン動力が大きく締結ショックなどを発生させ得る高回転側においては、入力クラッチ15の締結速度を抑制することにより、手動変速機10に対する大きな衝撃荷重の入力や、変速ショックの発生を確実に回避することができる。
【0051】
図6はクラッチ制御ユニット53による作動速度制御の他の例を示すフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートと同一のステップには同一の符号を付して、その説明を省略する。まず、ステップS1において、スポーツスイッチ56がOFF側に切り換えられていると判定された場合には、続くステップS21に進み、シフト位置センサ58からクラッチ制御ユニット53に入力される検出信号により、動力伝達状態に切り換えられた変速段が所定の許容変速段(たとえば、第2速)よりも低速側に設定されているか否かが判定される。
【0052】
ここで、許容変速段とは入力クラッチ15を最大速度で締結状態に切り換えた場合であっても許容される変速段であり、この許容変速段は手動変速機10などに組み込まれる駆動系部品の強度や、入力クラッチ15の締結時に発生する締結ショックなどを考慮して予め設定されるものである。ステップS21において、変速段が許容変速段を下回ると判定された場合には、続くステップS3において、クラッチアクチュエータ51の作動速度に所定の上限値が設定される。続くステップS4において、クラッチ制御ユニット53は、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定した状態のもとで、クラッチペダル54の操作に従って入力クラッチ15を締結状態に切り換える。一方、ステップS1においてスポーツスイッチ56がON側に切り換えられていると判定された場合や、ステップS21において変速段が許容変速段を上回っていると判定された場合には、ステップS5において上限値が解除された後に、ステップS4において入力クラッチ15が締結状態に切り換えられることになる。
【0053】
このように、クラッチアクチュエータ51の作動速度に対する上限値を、変速段に応じて設定するようにしたので、手動変速機10内を伝わる駆動トルクの大きさに応じて入力クラッチ15の締結速度を抑制することができる。つまり、大きな駆動トルクを伝達することのできる低速側の変速段が動力伝達状態に切り換えられた場合には、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定して、入力クラッチ15の急激な締結を回避することができる。これにより、手動変速機10に対する大きな衝撃荷重の入力を避けることができ、締結ショックの発生を回避することができる。
【0054】
また、低速側の変速段に比べて小さな駆動トルクを伝達する高速側の変速段が動力伝達状態に切り換えられた場合には、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定することがないため、クラッチペダル54の操作状況に応じて入力クラッチ15の締結速度を決定することができ、運転手に違和感を与えることなく入力クラッチ15を締結状態に切り換えることができる。
【0055】
図7はクラッチ制御ユニット53による作動速度制御の他の例を示すフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートと同一のステップには同一の符号を付して、その説明を省略する。まず、ステップS1において、スポーツスイッチ56がOFF側に切り換えられていると判定された場合には、続くステップS31に進み、車速センサ59からクラッチ制御ユニット53に入力される検出信号により、車両の走行速度つまり車速が許容車速を下回るか否かが判定される。ここで、許容車速とは入力クラッチ15を最大速度で締結状態に切り換えた場合であっても許容される車速であり、この許容車速は手動変速機10などに組み込まれる駆動系部品の強度や、入力クラッチ15の締結時に発生する締結ショックなどを考慮して予め設定される車速である。ステップS31において、車速が許容車速を下回ると判定された場合には、続くステップS3において、クラッチアクチュエータ51の作動速度に所定の上限値が設定される。続くステップS4において、クラッチ制御ユニット53は、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定した状態のもとで、クラッチペダル54の操作に従って入力クラッチ15を締結状態に切り換える。
【0056】
一方、ステップS1においてスポーツスイッチ56がON側に切り換えられていると判定された場合や、ステップS31において車速が許容車速を上回っていると判定された場合には、ステップS5において上限値が解除された後に、ステップS4において入力クラッチ15が締結状態に切り換えられることになる。
【0057】
このように、クラッチアクチュエータ51の作動速度に対する上限値を、車速に応じて設定するようにしたので、手動変速機10内を伝わる駆動トルクの大きさに応じて入力クラッチ15の締結速度を抑制することができる。つまり、低速走行時には低速側の変速段が動力伝達状態に切り換えられるため、高速側の変速段に切り換えられる高速走行時に比べて大きな駆動トルクが伝達される。このような低速走行時には、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定して、入力クラッチ15の急激な締結を回避することにより、手動変速機10に対する大きな衝撃荷重の入力を避けることができ、締結ショックの発生を回避することができる。
【0058】
また、低速走行時に比べて小さな駆動トルクが伝達される高速走行時には、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定することがないため、クラッチペダル54の操作状況に応じて入力クラッチ15の締結速度を決定することができ、運転手に違和感を与えることなく入力クラッチ15を締結状態に切り換えることができる。
【0059】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。図示するクラッチアクチュエータ51は、電動モータからの駆動力によってプッシュロッド52を押し出すようにしているが、プッシュロッドを作動させる動力源としては電動モータに限られることはない。たとえば、クラッチアクチュエータとして、ミッションケース23にレリーズフォーク24を作動させるためのオペレーティングシリンダを設けるとともに、オペレーティングシリンダに供給する油圧を発生させるアクチュエータを設けるようにしても良い。このように入力クラッチ15の切り換えを油圧によって行うようにすると、クラッチスプリング20のばね力が大きな手動変速機10であっても、レリーズベアリング22に十分な推力を付与することができる。
【0060】
また、図示する入力クラッチ15は、レリーズベアリング22をクラッチスプリング20に押し込んで解放状態に切り換えるプッシュタイプであるが、レリーズベアリング22を引き抜くことによって解放状態に切り換えるプルタイプであっても良い。さらに、図示する入力クラッチ15は、乾式単板クラッチであるが、この形式に限られることはなく、湿式であっても良く多板式であっても良い。
【0061】
さらに、図示するクラッチスプリング20はダイヤフラム型であるが、これに限られることはなく、コイル型のクラッチスプリング20であっても良いことはいうまでもない。
【0062】
なお、図示する手動変速機10は、前進5段に限られることはなく、前進2段以上の変速段を有する手動変速機10にも適用することができる。また、図示する手動変速機10は四輪駆動車用であるが、後輪駆動車用または前輪駆動車用の手動変速機10に適用しても良い。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、クラッチ制御手段を介してクラッチアクチュエータを作動させるようにしたので、入力クラッチの機械的構造に捕らわれることなく、入力クラッチの切り換えに必要なクラッチペダルの踏み込みストロークや踏力を自在に設定することができる。これにより、クラッチペダルの操作に必要な踏力を軽減することができるとともに、クラッチペダルのストロークを短く設定することができるため、クラッチペダルの操作性を向上させることができる。
【0064】
また、クラッチ制御手段からの作動信号によってクラッチアクチュエータを作動させるため、入力クラッチの半クラッチ状態に対応するクラッチペダルのストローク範囲を幅広く設定することができる。これにより、入力クラッチを容易に半クラッチ状態に保つことができるため、発進時におけるエンジンストールや低速走行時における締結ショックの発生を回避することができ、操作性や変速品質を向上させることができる。
【0065】
さらに、クラッチペダルと入力クラッチとを機械的に分離することによって、入力クラッチからクラッチペダルに振動が伝達されることがないため、運転手に違和感を与えることなく入力クラッチを締結状態に切り換えることができる。
【0066】
さらに、車両状態に基づいてクラッチアクチュエータの作動速度を制限するようにしたので、手動変速機に対する大きな衝撃荷重の入力を回避することができる。これにより、手動変速機の小型化や低コスト化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である手動変速機を示すスケルトン図である。
【図2】手動変速機のクラッチ制御系の一部を示す概略図である。
【図3】クラッチ制御ユニットによる作動速度制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】クラッチ制御ユニットによる作動速度制御の他の例を示すフローチャートである。
【図5】エンジン回転数をパラメータとした上限値テーブルを示す線図である。
【図6】クラッチ制御ユニットによる作動速度制御の他の例を示すフローチャートである。
【図7】クラッチ制御ユニットによる作動速度制御の他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 手動変速機
11 エンジン
12 入力軸
13 出力軸
15 入力クラッチ
31a〜36a 駆動歯車
31b〜36b 従動歯車
41〜43 切換機構
51 クラッチアクチュエータ
53 クラッチ制御ユニット(クラッチ制御手段)
55 ストロークセンサ(クラッチ操作検出手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載される手動変速機に関し、特に、入力クラッチの操作性を向上するために適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載される手動変速機は、エンジンに駆動される入力軸と、これに平行となって駆動輪に連結される出力軸とを備えており、入力軸の駆動歯車と出力軸の従動歯車とはそれぞれに噛み合って複数の変速歯車列つまり変速段を形成する。このような手動変速機は、変速段のいずれかを動力伝達状態に切り換えるシンクロメッシュ機構と、入力軸に対するエンジン動力の伝達と遮断とを切り換える入力クラッチとを備えており、シンクロメッシュ機構はシフトレバーを介して手動操作され、入力クラッチはクラッチペダルを踏み込むことによって操作される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この入力クラッチは、エンジンのフライホイールに組み付けられるクラッチカバーと、入力軸にスプラインを介して軸方向に摺動自在に組み付けられるクラッチディスクとを備えている。クラッチカバーはフライホイールにボルトを介して締結されるカバー本体を備えており、このカバー本体内にはプレッシャプレートとダイヤフラム型のクラッチスプリングとが収容されている。クラッチスプリングに付勢されるプレッシャプレートをクラッチディスクに押し付けることにより、クラッチディスクをフライホイールとプレッシャプレートとの間に挟み込むことができ、入力クラッチは締結状態に切り換えられる。
【0004】
また、入力クラッチを解放状態に切り換えるため、クラッチスプリングの中央部に対面してレリーズベアリングが移動自在に設けられており、ミッションケースにはレリーズベアリングを一端に把持するレリーズフォークが揺動自在に設けられている。このレリーズフォークの他端はミッションケースから突出するようになっており、この突出した端部を押し動かすオペレーティングシリンダがミッションケースに取り付けられる。車室内のクラッチペダルにはマスターシリンダが組み付けられており、クラッチペダルを踏み込むことによってオペレーティングシリンダに油圧を供給することができる。油圧によってオペレーティングシリンダを駆動することにより、レリーズベアリングを介してクラッチスプリングを変形させることができ、入力クラッチは解放状態に切り換えられる。
【0005】
このような手動変速機は、歯車の噛み合いによってエンジン動力を駆動輪に伝達するとともに、変速操作を行う際にもオイルポンプからの油圧を必要としないため、高い効率でエンジン動力を伝達することができ、エンジンの燃費性能を向上させることもできる。また、部品点数が少ないため、自動変速機や無段変速機に比べて小型化や低コスト化を達成し易いという利点もある。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−188658号公報(第4−5頁、図2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、手動変速機を搭載した車両にあっては、発進や変速操作などを行う際に、入力クラッチを手動によって締結状態と解放状態とに切り換える必要があり、運転手によるクラッチペダルの操作が不可欠となっていた。たとえば、滑らかな変速操作を行うためには、入力クラッチを解放してシンクロメッシュ機構を切り換えた後に、入力クラッチを滑らせながら徐々に締結する必要がある。このようなクラッチペダルの操作は慣れを必要とするため、自動変速機や無段変速機を搭載した車両に比べて運転操作が難しいという問題がある。特に、高出力車にあっては、クラッチスプリングのばね力が大きく設定されるため、非力な運転手にとっては、手動変速機を搭載した高出力車の運転操作が非常に難しいという問題があった。また、クラッチペダルを踏み込む際に必要な踏力は、クラッチスプリングの特性に応じて定められることになるが、人間工学の観点から適正とされる踏力とクラッチスプリングの特性とを一致させることは困難であった。
【0008】
また、クラッチペダルと入力クラッチとは油圧系統を介して接続されるため、入力クラッチを滑らせた際に発生することのある振動が、クラッチフルードを経てクラッチペダルに伝達されることがある。このような振動の伝達は車両の品質を低下させる要因となっていた。
【0009】
さらに、手動変速機にあっては、クラッチペダルの操作により直接的に入力クラッチが切り換えられるため、運転手の操作によっては入力クラッチが急激に締結されることがある。入力クラッチが急激に締結された場合には、駆動歯車と従動歯車との噛み合い歯面に衝撃荷重が加えられることになる。この衝撃荷重による歯車の損傷を回避するため、衝撃荷重を考慮して歯車に耐久性を持たせようとすると、駆動歯車や従動歯車を厚く形成する必要があり、手動変速機の大型化や高コスト化を招くことになっていた。
【0010】
本発明の目的は、変速操作を容易にすることにより、扱い易い手動変速機を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、手動変速機の変速品質を向上させるとともに、手動変速機の小型化や低コスト化を達成することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の手動変速機は、複数の駆動歯車を備える入力軸と、前記駆動歯車に噛み合って複数の変速段を形成する複数の従動歯車を備える出力軸と、前記変速段のいずれかを動力伝達状態に切り換える切換機構とを有する手動変速機であって、エンジンと前記入力軸との間に設けられ、前記入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる入力クラッチと、前記入力クラッチに組み付けられ、前記入力クラッチを締結状態と解放状態とに切り換えるクラッチアクチュエータと、運転手によるクラッチペダルの操作状況を検出するクラッチ操作検出手段と、前記クラッチ操作検出手段から入力される操作信号に基づいて、前記クラッチアクチュエータに作動信号を出力するクラッチ制御手段とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の手動変速機は、前記クラッチアクチュエータは電動であることを特徴とする。
【0014】
本発明の手動変速機は、前記クラッチ制御手段は車両状態に基づいて前記クラッチアクチュエータの作動速度を制限することを特徴とする。
【0015】
本発明の手動変速機は、前記クラッチ制御手段は、エンジン回転数、走行速度または変速段に基づいて前記車両状態を判定することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、クラッチ制御手段を介してクラッチアクチュエータを作動させるようにしたので、入力クラッチの機械的構造に捕らわれることなく、入力クラッチの切り換えに必要なクラッチペダルの踏み込みストロークや踏力を自在に設定することができる。これにより、クラッチペダルの操作に必要な踏力を軽減することができるとともに、クラッチペダルのストロークを短く設定することができるため、クラッチペダルの操作性を向上させることができる。
【0017】
また、クラッチ制御手段からの作動信号によってクラッチアクチュエータを作動させるため、入力クラッチの半クラッチ状態に対応するクラッチペダルのストローク範囲を幅広く設定することができる。これにより、入力クラッチを容易に半クラッチ状態に保つことができるため、発進時におけるエンジンストールや低速走行時における締結ショックの発生を回避することができ、操作性や変速品質を向上させることができる。
【0018】
さらに、クラッチペダルと入力クラッチとを機械的に分離することによって、入力クラッチからクラッチペダルに振動が伝達されることがないため、運転手に違和感を与えることなく入力クラッチを締結状態に切り換えることができる。
【0019】
さらに、車両状態に基づいてクラッチアクチュエータの作動速度を制限するようにしたので、手動変速機に対する大きな衝撃荷重の入力を回避することができる。これにより、手動変速機の小型化や低コスト化を達成することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施の形態である手動変速機10を示すスケルトン図である。図1に示すように、手動変速機10はエンジン11に駆動される入力軸12と、これに平行であって駆動輪に連結される中空の出力軸13とを有している。この手動変速機10は四輪駆動車に適用される手動変速機10であり、車両の進行方向を向いて搭載される縦置き式となっている。
【0022】
エンジン11のクランク軸14と入力軸12との間には、入力軸12にエンジン動力を伝達する締結状態と、エンジン動力を遮断する解放状態とに切り換えられる乾式の入力クラッチ15が設けられている。この入力クラッチ15は、入力軸12の端部に取り付けられるクラッチディスク16と、クランク軸14に固定されるクラッチカバー17とを有している。クラッチカバー17は、クランク軸14に固定されるフライホイール18と、これに組み付けられるカバー本体19とを備えており、カバー本体19内には、ダイヤフラム型のクラッチスプリング20と、環状のプレッシャプレート21とが組み込まれている。クラッチスプリング20によってプレッシャプレート21をフライホイール18に向けて付勢することにより、プレッシャプレート21とフライホイール18との間にクラッチディスク16を挟み込むことができ、入力クラッチ15を締結状態に切り換えることができる。
【0023】
また、入力軸12の径方向外方にはレリーズベアリング22が軸方向に移動自在に組み付けられ、ミッションケース23にはレリーズフォーク24が揺動自在に組み付けられている。レリーズベアリング22はレリーズフォーク24の一端に把持されており、レリーズフォーク24をピン部材25を支点に揺動させることによってレリーズベアリング22を軸方向に移動させることができる。軸方向に移動するレリーズベアリング22はクラッチスプリング20の中央部を押し込むため、クラッチスプリング20を変形させてプレッシャプレート21の押圧状態を解放することができ、入力クラッチ15を解放状態に切り換えることができる。このように、入力クラッチ15の締結状態と解放状態とはレリーズフォーク24を揺動させることによって切り換えられ、このレリーズフォーク24の揺動は後述するクラッチアクチュエータ51によって制御される。
【0024】
入力軸12には第1速、第2速の駆動歯車31a,32aが固定されており、第3速〜第5速の駆動歯車33a〜35aが回転自在に取り付けられている。一方、出力軸13には第1速、第2速の従動歯車31b,32bが回転自在に取り付けられており、第3速〜第5速の従動歯車33b〜35bが固定されている。これらの駆動歯車31a〜35aと従動歯車31b〜35bとはそれぞれに噛み合って前進用の変速歯車列つまり変速段を形成する。
【0025】
出力軸13には、第1速と第2速の変速段を動力伝達状態と中立状態とに切り換える切換機構41が装着されている。また、入力軸12には、第3速と第4速の変速段を動力伝達状態と中立状態とに切り換える切換機構42と、第5速の変速段を動力伝達状態と中立状態とに切り換える切換機構43とが装着されている。これらの切換機構41〜43はシンクロメッシュ機構となっている。
【0026】
切換機構41は、第1速と第2速の2つの従動歯車31b,32bの間に配置されるとともに出力軸13に固定されるシンクロハブ41aと、これに常時噛み合うシンクロスリーブ41bとを有している。このシンクロスリーブ41bを従動歯車31bに一体形成されたスプライン31cに噛み合わせると第1速に設定され、逆に従動歯車32bに一体形成されたスプライン32cに噛み合わせると第2速に設定される。他の切換機構42,43も切換機構41と同様の構造を備えており、入力軸12に固定されるシンクロハブ42a,43aと、シンクロハブ42a,43aのそれぞれに常時噛み合うシンクロスリーブ42b,43bとを有している。これらのシンクロスリーブ42b,43bを駆動歯車33a〜35aのそれぞれに一体形成されたスプライン33c〜35cに噛み合わせることにより、変速段は第3速〜第5速のいずれかに設定される。
【0027】
また、入力軸12には後退用の駆動歯車36aが固定され、切換機構41のシンクロスリーブ41bには後退用の従動歯車36bが固定されている。入力軸12に対して平行に配置されたアイドル軸44には、後退用の駆動歯車36aと従動歯車36bとに噛み合う位置と噛み合いを外す位置とに移動自在となるアイドル歯車45が装着されている。したがって、シンクロスリーブ41bを中立位置に作動させた状態のもとで、アイドル歯車45を図示しない切換機構を介して移動させて駆動歯車36aと従動歯車36bとに噛み合わせると、駆動歯車36a、従動歯車36bおよびアイドル歯車45からなる後退用の変速段を介して入力軸12の回転は逆転されて出力軸13に伝達される。
【0028】
これらの切換機構41〜43を作動させるため、それぞれのシンクロスリーブ41b〜43bは図示しないシフトフォークに把持されており、シフトフォークの移動に伴ってシンクロスリーブ41b〜43bは軸方向に移動することになる。このシフトフォークと車室内のシフトレバーとは、図示しないシフトロッドを介して連結されており、シフトレバーの手動操作に伴うシンクロスリーブ41b〜43bの移動により所望の変速段が動力伝達状態に切り換えられる。
【0029】
このような変速段を介して駆動される中空の出力軸13には前輪出力軸46が組み込まれており、前輪出力軸46はベベルギヤ式のセンタデファレンシャル装置47を介して出力軸13に連結されるとともに、フロントデファレンシャル装置48を介して図示しない前輪用のドライブシャフトに連結される。また、センタデファレンシャル装置47は駆動歯車49aと従動歯車49bとを介して後輪出力軸50に連結されており、後輪出力軸50は図示しないリヤデファレンシャル装置を介して図示しない後輪用のドライブシャフトに連結される。
【0030】
なお、センタデファレンシャル装置47はベベルギヤ式であり、センタデファレンシャル装置47に組み込まれたベベルギヤ47aを介して、前輪出力軸46と後輪出力軸50とに駆動トルクが分配され、前輪と後輪とを共に駆動することができる。また、ベベルギヤ47aの回転により前輪と後輪との回転差は差動吸収されるが、センタデファレンシャル装置47にはビスカスカップリング47bが設けられており、前輪または後輪がスリップして大きな差動回転が生じたときは、ビスカスカップリング47bにより差動回転が抑制される。
【0031】
図2は手動変速機10のクラッチ制御系の一部を示す概略図である。図2に示すように、ミッションケース23にはクラッチアクチュエータ51が固定されており、クラッチアクチュエータ51には伸縮自在となるプッシュロッド52が組み込まれている。このクラッチアクチュエータ51は図示しない電動モータを備えるとともに、電動モータからの駆動力を減速してプッシュロッド52に伝達する図示しないウォーム歯車を備えている。また、ミッションケース23から突出するレリーズフォーク24の端部には凹部24aが形成されており、この凹部24aにプッシュロッド52の先端が入り込むようにクラッチアクチュエータ51がミッションケース23に固定されている。プッシュロッド52を解放位置まで伸ばしてレリーズベアリング22をクラッチスプリング20に押し込むことにより、入力クラッチ15は解放状態に切り換えられる一方、プッシュロッド52を締結位置まで縮めてクラッチスプリング20の変形状態を解放することにより、入力クラッチ15は締結状態に切り換えられる。なお、図2には締結状態に切り換えられた入力クラッチ15が示されている。
【0032】
このように、プッシュロッド52を伸縮させることによって入力クラッチ15は締結状態と解放状態とに切り換えられており、クラッチ制御手段であるクラッチ制御ユニット53は、プッシュロッド52を伸縮させるためクラッチアクチュエータ51の電動モータに対して作動信号を出力する。クラッチ制御ユニット53は図示しないマイクロプロセッサ(CPU)を備えており、このCPUにはバスラインを介してROM、RAMおよびI/Oポートが接続される。ROMは制御プログラムや演算式などを格納しており、RAMはCPUで演算処理したデータを一時的に格納するようになっている。また、I/Oポートを介してCPUには各種センサやスイッチから車両状態を示す各種検出信号が入力される。
【0033】
クラッチ制御ユニット53のCPUに各種検出信号を入力する各種センサやスイッチとしては、運転手によるクラッチペダル54の操作状況を検出するクラッチ操作検出手段としてのストロークセンサ55、車両の動力性能を高めるために設けられ運転手に操作されるスポーツスイッチ56、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ57、運転手によるシフトレバーの操作状況を検出するシフト位置センサ58、車両の走行速度を検出する車速センサ59などが設けられている。
【0034】
続いて、クラッチ制御ユニット53によるクラッチアクチュエータ51の作動制御について説明する。まず、入力クラッチ15を解放状態に切り換えるため、運転手がクラッチペダル54を踏み込むと、クラッチペダル54に組み付けられるストロークセンサ55からクラッチ制御ユニット53に操作信号が入力される。クラッチ制御ユニット53は制御プログラムに従って操作信号より作動信号を演算し、この作動信号をクラッチアクチュエータ51に対して出力する。クラッチアクチュエータ51は作動信号に従ってプッシュロッド52を解放位置まで前進移動させ、入力クラッチ15を解放状態に切り換える。
【0035】
同様に、入力クラッチ15を締結状態に切り換えるために、運転手がクラッチペダル54の踏み込みを解放したときには、クラッチ制御ユニット53は、ストロークセンサ55からの操作信号に基づいてクラッチアクチュエータ51に対して作動信号を出力する。そして、クラッチアクチュエータ51はプッシュロッド52を締結位置まで後退移動させ、入力クラッチ15を締結状態に切り換える。
【0036】
このように、クラッチペダル54に組み付けられるストロークセンサ55と、入力クラッチ15を切り換えるクラッチアクチュエータ51との間にクラッチ制御ユニット53を設け、このクラッチ制御ユニット53を介してクラッチアクチュエータ51を作動させるようにしたので、入力クラッチ15を切り換えるために必要なクラッチペダル54の踏み込みストロークや踏力を自在に設定することができる。つまり、入力クラッチ15の機械的構造に捕らわれることなく、クラッチ制御ユニット53内に格納される制御プラグラム等を変更することによって、クラッチペダル54の踏み込みストロークや踏力を設定することができる。
【0037】
これにより、クラッチスプリング20のばね力が大きく設定される高出力車に手動変速機10を搭載した場合であっても、クラッチペダル54の操作に必要な踏力を軽減することができ、クラッチペダル54の操作が極めて容易となる。また、クラッチペダル54のストローク量を自由に設定することができるため、たとえば、ストロークを短く設定することによって、運転手が踵をフロアに接触させた状態のまま入力クラッチ15を操作することができ、クラッチ操作時に運転手の体を安定させるとともに、クラッチペダル54の操作性を向上させることができる。しかも、ストローク量を減らした場合であっても、クラッチペダル54の踏力が増大することはない。
【0038】
また、プッシュロッド52の作動速度をクラッチ制御ユニット53によって制御することができるため、入力クラッチ15の滑り状態つまり半クラッチ状態に対応するクラッチペダル54の踏み込み位置を幅広く設定することができる。これにより、入力クラッチ15を容易に半クラッチ状態に保つことができるため、発進時におけるエンジンストールや低速走行時における締結ショックの発生を回避することができ、手動変速機10の操作性や変速品質を向上させることができる。
【0039】
さらに、クラッチペダル54と入力クラッチ15とを機械的に分離することができるため、入力クラッチ15を滑らせた際に発生することのある振動が、クラッチフルードやケーブル等を介してクラッチペダル54に伝達されることもない。これにより、手動変速機10の変速品質や静粛性を向上させることができる。
【0040】
さらに、クラッチアクチュエータ51を電動モータによって駆動することにより、クラッチアクチュエータ51の構造を簡素化することができ、手動変速機10の大型化や高コスト化を抑制することができる。
【0041】
次いで、入力クラッチ15を締結する際のクラッチ制御ユニット53による作動速度制御について説明する。まず、運転手の操作により入力クラッチ15を急激に締結状態に切り換えた場合には、エンジン回転数が高い等の車両状態によっては手動変速機10内に衝撃荷重が伝達されることになる。この衝撃荷重は締結ショック等を発生させるため、このような状況下においては、クラッチアクチュエータ51の作動速度つまり入力クラッチ15の締結速度を制御することにより、手動変速機10内における衝撃荷重の伝達を回避する必要がある。このため、本発明の手動変速機10は、車両状態に基づいてクラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定するとともに、この上限値に従ってクラッチアクチュエータ51の作動速度を制御する。以下、クラッチ制御ユニット53による作動速度制御について説明する。
【0042】
図3はクラッチ制御ユニット53による作動速度制御の一例を示すフローチャートであり、このフローチャートに従ってクラッチ制御ユニット53からクラッチアクチュエータ51に対して作動信号が出力される。まず、ステップS1では、車室内に設けられるスポーツスイッチ56が操作されているか否かが判定される。ここで、スポーツスイッチ56とは、これをON側に切り換えることによって作動速度を規制することなくクラッチアクチュエータ51を作動させて車両の動力性能を高めるためのスイッチである。
【0043】
ステップS1において、スポーツスイッチ56がOFF側に切り換えられていると判定された場合には、ステップS2に進み、エンジン回転数センサ57からクラッチ制御ユニット53に入力されたエンジン回転数が、許容回転数を上回るか否かが判定される。ここで、許容回転数とは入力クラッチ15を最大速度で締結状態に切り換えた場合であっても許容されるエンジン回転数であり、この許容回転数は手動変速機10などに組み込まれる駆動系部品の強度や、入力クラッチ15の締結時に発生する締結ショックなどを考慮して予め設定されるものである。ステップS2において、エンジン回転数が許容回転数を上回ると判定された場合には、続くステップS3において、クラッチアクチュエータ51の作動速度に所定の上限値が設定される。
【0044】
続くステップS4において、クラッチ制御ユニット53は、ストロークセンサ55からの操作信号に基づいてクラッチアクチュエータ51に対する作動信号を演算するとともに、クラッチアクチュエータ51に作動信号を出力して入力クラッチ15を締結状態に切り換える。このとき、クラッチアクチュエータ51の作動速度には上限値が設定されているため、クラッチアクチュエータ51に対する作動信号もこの上限値を超えることのないように演算される。
【0045】
一方、ステップS1において、スポーツスイッチ56がON側に切り換えられていると判定された場合や、ステップS2において、エンジン回転数が許容回転数を下回ると判定された場合には、ステップS5に進み、クラッチアクチュエータ51の作動速度の上限値が解除される。そして、続くステップS4においては、前述したように、クラッチペダル54の操作状況に応じて入力クラッチ15が締結状態に切り換えられることになる。
【0046】
このように、エンジン回転数が高いために大きなエンジン動力が発生する車両状態のもとで、入力クラッチ15が最大速度で締結されることにより、駆動系の部品に大きな衝撃荷重が加えられる場合や、大きな締結ショックが発生する場合には、ステップS3に進むことでクラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値が設定される。従って、運転手が素早くクラッチペダル54を解放した場合であっても、入力クラッチ15の急激な締結を回避することができるため、駆動歯車や従動歯車の薄型化を達成することができるとともに、手動変速機10の変速品質を向上させることができる。
【0047】
また、スポーツスイッチ56がON側に切り換えられる場合や、エンジン回転数が低いために衝撃荷重や締結ショックを考慮する必要がない場合には、ステップS5に進むことでクラッチアクチュエータ51の作動速度の上限値が解除されることになる。従って、運転手によるクラッチペダル54の操作状況に応じて入力クラッチ15を締結状態に切り換えることができるため、車両の動力性能を高めることができるとともに、運転手に違和感を与えることもない。
【0048】
図4はクラッチ制御ユニット53による作動速度制御の他の例を示すフローチャートであり、図5はエンジン回転数をパラメータとした上限値テーブルを示す線図である。なお、図3に示すフローチャートと同一のステップには同一の符号を付して、その説明を省略する。まず、ステップS1において、スポーツスイッチ56がOFF側に切り換えられていると判定された場合には、続くステップS11に進み、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値が設定される。ここで、ステップS11において設定される上限値は、図5に示すように、エンジン回転数をパラメータとした上限値テーブルから選択されるものであり、この上限値テーブルはエンジン回転数の増加に伴って上限値が減少するように設定されている。
【0049】
続くステップS4において、クラッチ制御ユニット53は、ストロークセンサ55からの操作信号に基づいてクラッチアクチュエータ51に対する作動信号を演算するとともに、クラッチアクチュエータ51に作動信号を出力して入力クラッチ15を締結状態に切り換える。このとき、クラッチアクチュエータ51の作動速度には上限値が設定されているため、クラッチアクチュエータ51に対する作動信号もこの上限値を超えることのないように設定される。一方、ステップS1において、スポーツスイッチ56がON側に切り換えられていると判定された場合には、ステップS5において上限値が解除された後に、ステップS4において入力クラッチ15が締結状態に切り換えられることになる。
【0050】
このように、クラッチアクチュエータ51の作動速度に対する上限値を、エンジン回転数をパラメータとした上限値テーブルから選択するようにすると、発生するエンジン動力の大きさに応じて入力クラッチ15の締結速度をより適切に制御することができる。また、エンジン回転数の増加に伴って上限値を低下させるように設定したので、エンジン動力が小さく締結ショックなどを発生させることのない低回転側においては、クラッチペダル54の操作状況に応じて入力クラッチ15の締結速度を決定することができ、運転手に違和感を与えることなく入力クラッチ15を締結状態に切り換えることができる。一方、エンジン動力が大きく締結ショックなどを発生させ得る高回転側においては、入力クラッチ15の締結速度を抑制することにより、手動変速機10に対する大きな衝撃荷重の入力や、変速ショックの発生を確実に回避することができる。
【0051】
図6はクラッチ制御ユニット53による作動速度制御の他の例を示すフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートと同一のステップには同一の符号を付して、その説明を省略する。まず、ステップS1において、スポーツスイッチ56がOFF側に切り換えられていると判定された場合には、続くステップS21に進み、シフト位置センサ58からクラッチ制御ユニット53に入力される検出信号により、動力伝達状態に切り換えられた変速段が所定の許容変速段(たとえば、第2速)よりも低速側に設定されているか否かが判定される。
【0052】
ここで、許容変速段とは入力クラッチ15を最大速度で締結状態に切り換えた場合であっても許容される変速段であり、この許容変速段は手動変速機10などに組み込まれる駆動系部品の強度や、入力クラッチ15の締結時に発生する締結ショックなどを考慮して予め設定されるものである。ステップS21において、変速段が許容変速段を下回ると判定された場合には、続くステップS3において、クラッチアクチュエータ51の作動速度に所定の上限値が設定される。続くステップS4において、クラッチ制御ユニット53は、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定した状態のもとで、クラッチペダル54の操作に従って入力クラッチ15を締結状態に切り換える。一方、ステップS1においてスポーツスイッチ56がON側に切り換えられていると判定された場合や、ステップS21において変速段が許容変速段を上回っていると判定された場合には、ステップS5において上限値が解除された後に、ステップS4において入力クラッチ15が締結状態に切り換えられることになる。
【0053】
このように、クラッチアクチュエータ51の作動速度に対する上限値を、変速段に応じて設定するようにしたので、手動変速機10内を伝わる駆動トルクの大きさに応じて入力クラッチ15の締結速度を抑制することができる。つまり、大きな駆動トルクを伝達することのできる低速側の変速段が動力伝達状態に切り換えられた場合には、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定して、入力クラッチ15の急激な締結を回避することができる。これにより、手動変速機10に対する大きな衝撃荷重の入力を避けることができ、締結ショックの発生を回避することができる。
【0054】
また、低速側の変速段に比べて小さな駆動トルクを伝達する高速側の変速段が動力伝達状態に切り換えられた場合には、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定することがないため、クラッチペダル54の操作状況に応じて入力クラッチ15の締結速度を決定することができ、運転手に違和感を与えることなく入力クラッチ15を締結状態に切り換えることができる。
【0055】
図7はクラッチ制御ユニット53による作動速度制御の他の例を示すフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートと同一のステップには同一の符号を付して、その説明を省略する。まず、ステップS1において、スポーツスイッチ56がOFF側に切り換えられていると判定された場合には、続くステップS31に進み、車速センサ59からクラッチ制御ユニット53に入力される検出信号により、車両の走行速度つまり車速が許容車速を下回るか否かが判定される。ここで、許容車速とは入力クラッチ15を最大速度で締結状態に切り換えた場合であっても許容される車速であり、この許容車速は手動変速機10などに組み込まれる駆動系部品の強度や、入力クラッチ15の締結時に発生する締結ショックなどを考慮して予め設定される車速である。ステップS31において、車速が許容車速を下回ると判定された場合には、続くステップS3において、クラッチアクチュエータ51の作動速度に所定の上限値が設定される。続くステップS4において、クラッチ制御ユニット53は、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定した状態のもとで、クラッチペダル54の操作に従って入力クラッチ15を締結状態に切り換える。
【0056】
一方、ステップS1においてスポーツスイッチ56がON側に切り換えられていると判定された場合や、ステップS31において車速が許容車速を上回っていると判定された場合には、ステップS5において上限値が解除された後に、ステップS4において入力クラッチ15が締結状態に切り換えられることになる。
【0057】
このように、クラッチアクチュエータ51の作動速度に対する上限値を、車速に応じて設定するようにしたので、手動変速機10内を伝わる駆動トルクの大きさに応じて入力クラッチ15の締結速度を抑制することができる。つまり、低速走行時には低速側の変速段が動力伝達状態に切り換えられるため、高速側の変速段に切り換えられる高速走行時に比べて大きな駆動トルクが伝達される。このような低速走行時には、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定して、入力クラッチ15の急激な締結を回避することにより、手動変速機10に対する大きな衝撃荷重の入力を避けることができ、締結ショックの発生を回避することができる。
【0058】
また、低速走行時に比べて小さな駆動トルクが伝達される高速走行時には、クラッチアクチュエータ51の作動速度に上限値を設定することがないため、クラッチペダル54の操作状況に応じて入力クラッチ15の締結速度を決定することができ、運転手に違和感を与えることなく入力クラッチ15を締結状態に切り換えることができる。
【0059】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。図示するクラッチアクチュエータ51は、電動モータからの駆動力によってプッシュロッド52を押し出すようにしているが、プッシュロッドを作動させる動力源としては電動モータに限られることはない。たとえば、クラッチアクチュエータとして、ミッションケース23にレリーズフォーク24を作動させるためのオペレーティングシリンダを設けるとともに、オペレーティングシリンダに供給する油圧を発生させるアクチュエータを設けるようにしても良い。このように入力クラッチ15の切り換えを油圧によって行うようにすると、クラッチスプリング20のばね力が大きな手動変速機10であっても、レリーズベアリング22に十分な推力を付与することができる。
【0060】
また、図示する入力クラッチ15は、レリーズベアリング22をクラッチスプリング20に押し込んで解放状態に切り換えるプッシュタイプであるが、レリーズベアリング22を引き抜くことによって解放状態に切り換えるプルタイプであっても良い。さらに、図示する入力クラッチ15は、乾式単板クラッチであるが、この形式に限られることはなく、湿式であっても良く多板式であっても良い。
【0061】
さらに、図示するクラッチスプリング20はダイヤフラム型であるが、これに限られることはなく、コイル型のクラッチスプリング20であっても良いことはいうまでもない。
【0062】
なお、図示する手動変速機10は、前進5段に限られることはなく、前進2段以上の変速段を有する手動変速機10にも適用することができる。また、図示する手動変速機10は四輪駆動車用であるが、後輪駆動車用または前輪駆動車用の手動変速機10に適用しても良い。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、クラッチ制御手段を介してクラッチアクチュエータを作動させるようにしたので、入力クラッチの機械的構造に捕らわれることなく、入力クラッチの切り換えに必要なクラッチペダルの踏み込みストロークや踏力を自在に設定することができる。これにより、クラッチペダルの操作に必要な踏力を軽減することができるとともに、クラッチペダルのストロークを短く設定することができるため、クラッチペダルの操作性を向上させることができる。
【0064】
また、クラッチ制御手段からの作動信号によってクラッチアクチュエータを作動させるため、入力クラッチの半クラッチ状態に対応するクラッチペダルのストローク範囲を幅広く設定することができる。これにより、入力クラッチを容易に半クラッチ状態に保つことができるため、発進時におけるエンジンストールや低速走行時における締結ショックの発生を回避することができ、操作性や変速品質を向上させることができる。
【0065】
さらに、クラッチペダルと入力クラッチとを機械的に分離することによって、入力クラッチからクラッチペダルに振動が伝達されることがないため、運転手に違和感を与えることなく入力クラッチを締結状態に切り換えることができる。
【0066】
さらに、車両状態に基づいてクラッチアクチュエータの作動速度を制限するようにしたので、手動変速機に対する大きな衝撃荷重の入力を回避することができる。これにより、手動変速機の小型化や低コスト化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である手動変速機を示すスケルトン図である。
【図2】手動変速機のクラッチ制御系の一部を示す概略図である。
【図3】クラッチ制御ユニットによる作動速度制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】クラッチ制御ユニットによる作動速度制御の他の例を示すフローチャートである。
【図5】エンジン回転数をパラメータとした上限値テーブルを示す線図である。
【図6】クラッチ制御ユニットによる作動速度制御の他の例を示すフローチャートである。
【図7】クラッチ制御ユニットによる作動速度制御の他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 手動変速機
11 エンジン
12 入力軸
13 出力軸
15 入力クラッチ
31a〜36a 駆動歯車
31b〜36b 従動歯車
41〜43 切換機構
51 クラッチアクチュエータ
53 クラッチ制御ユニット(クラッチ制御手段)
55 ストロークセンサ(クラッチ操作検出手段)
Claims (4)
- 複数の駆動歯車を備える入力軸と、前記駆動歯車に噛み合って複数の変速段を形成する複数の従動歯車を備える出力軸と、前記変速段のいずれかを動力伝達状態に切り換える切換機構とを有する手動変速機であって、
エンジンと前記入力軸との間に設けられ、前記入力軸に動力を伝達する締結状態と遮断する解放状態とに切り換えられる入力クラッチと、
前記入力クラッチに組み付けられ、前記入力クラッチを締結状態と解放状態とに切り換えるクラッチアクチュエータと、
運転手によるクラッチペダルの操作状況を検出するクラッチ操作検出手段と、
前記クラッチ操作検出手段から入力される操作信号に基づいて、前記クラッチアクチュエータに作動信号を出力するクラッチ制御手段とを有することを特徴とする手動変速機。 - 請求項1記載の手動変速機において、前記クラッチアクチュエータは電動であることを特徴とする手動変速機。
- 請求項1または2記載の手動変速機において、前記クラッチ制御手段は車両状態に基づいて前記クラッチアクチュエータの作動速度を制限することを特徴とする手動変速機。
- 請求項3記載の手動変速機において、前記クラッチ制御手段は、エンジン回転数、走行速度または変速段に基づいて前記車両状態を判定することを特徴とする手動変速機。
Priority Applications (1)
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JP2003196914A JP2005036818A (ja) | 2003-07-15 | 2003-07-15 | 手動変速機 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003196914A JP2005036818A (ja) | 2003-07-15 | 2003-07-15 | 手動変速機 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US7559386B2 (en) | 2005-12-19 | 2009-07-14 | Industrial Technology Research Institute | Vehicle hybrid propulsion system |
-
2003
- 2003-07-15 JP JP2003196914A patent/JP2005036818A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US7559386B2 (en) | 2005-12-19 | 2009-07-14 | Industrial Technology Research Institute | Vehicle hybrid propulsion system |
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