本発明は、堤防などの盛り土斜面の法面、山肌を保護したり、家屋の屋根が飛んだ場合に被害家屋を保護するための法面保護シートに関する。
堤防などの盛り土斜面の法面、山間部の崖等は、多量の降雨により地盤中に雨水がしみ込み、地盤が軟弱となり崩壊し、地すべり、山崩れ等が発生し、土石流となって下方に滑落する場合がある。
このような土石流による災害の発生を防止するため、従来、法面を複数のハトメが端部に設置された各種の科学繊維シートで覆い、該ハトメに土嚢をぶら下げ重しとしている。
ところで、上述の科学繊維シートは、土嚢をぶら下げ重しとしているが、面積が大きい場合、強風にあおられ、土嚢は固定手段としては力が弱く、安定性に欠ける場合がある。
そのため、該科学繊維シートが強風にあおられた際、地肌が露出してしまい地盤への雨水の浸透を防止することが困難であり、その対策が求められている。
一方、台風に際して家屋の屋根が飛んだり、豪雪による家屋の損壊等の災害に対し、被害を未然に若しくは最小限にくい留める方策に乏しいのが現状である。
本発明は上記実状に鑑み、風雨に対する法面の保護、台風・豪雪に対する家屋の保護等の防災用に使用され、災害を未然に防止することが可能な法面保護シートの提供を目的とする。
上記目的を達成するべく、本発明の請求項1に関わる法面保護シートは、法面を覆い防護する法面保護シートであって、外面の一部に上方に開口を有する固定袋部と、法面または他の法面保護シートに取り付けるための取り付け部と、法面保護シート間を相互に連結するための連結部とを備えることを特徴としている。
また、本発明の請求項2に関わる法面保護シートは、請求項1に記載の法面保護シートにおいて、前記固定袋部は、上部を留める留め部を具え、少なくとも1側端部を空いて配置され、前記取り付け部を上部に、前記連結部を裏面の下部に備えることを特徴としている。
また、本発明の請求項3に関わる法面保護シートは、請求項2に記載の法面保護シートにおいて、前記連結部は、法面保護シート間を連結するための安定棒と該安定棒が挿通する連結挿通部とを具え、前記取り付け部は、安定棒を挿通し得る取り付け挿通部を具え、安定棒を、法面保護シートの前記連結挿通部と他の法面保護シートの前記取り付け挿通部とを挿通させて法面保護シート間を連結することを特徴としている。
また、本発明の請求項4に関わる法面保護シートは、請求項3に記載の法面保護シートにおいて、前記安定棒は、外周面上に雄ねじが形成された第1安定棒と外周面上に雄ねじが形成された第2安定棒と内径面に前記第1安定棒および第2安定棒の雄ねじに螺合する雌ねじが形成された円筒状の安定棒継手とを備え、前記安定棒継手に前記第1安定棒と第2安定棒とが螺着され、前記安定棒継手に対して前記第1安定棒または前記第2安定棒を回動することにより前記安定棒の長さを調整することを特徴としている。
また、本発明の請求項5に関わる法面保護シートは、請求項2に記載の法面保護シートにおいて、前記取り付け部は、孔を具え、前記連結部は、法面保護シートに揺動自在に取り付けられ、前記孔の径寸法より長い連結部材を具え、法面保護シートの前記連結部材を他の法面保護シートの対応する前記孔に入れることにより、法面保護シート間を連結することを特徴としている。
本発明の請求項1に関わる法面保護シートによれば、法面または他の法面保護シートに取り付けるための取り付け部と、法面保護シート間を相互に連結するための連結部とを備えるので、複数の法面保護シートを連結することにより任意の面積を覆い防護することができる。
また、法面保護シートの外面の一部に上方に開口を有する固定袋部を有するので、開口を通して固定袋部内に砂利等を入れ、法面保護シートの重しとすることができる。
また、降雨に際し、雨水が固定袋部の上方の開口を通して固定袋部内に入り、重しとしての作用を発揮することができる。
本発明の請求項2に関わる法面保護シートによれば、固定袋部は、上部を留める留め部を具えるので、固定袋部に砂利等の重しを入れた場合に開口が大きく開き、内部の砂利等の重しが漏出することを防止できる。
また、固定袋部は、少なくとも1側端部を空いて配置され、また、取り付け部を上部に、連結部を裏面の下部に備えるため、法面保護シートの1側端部上に他の法面保護シートを重ねて設置し、且つ、裏面の下部の連結部と他の法面保護シートの上部の取り付け部とを連結して法面保護シートを重ねて設置することができるため、法面を露出部することなく法面保護シートにより完全に覆うことが可能である。
本発明の請求項3に関わる法面保護シートによれば、安定棒を、法面保護シートの連結挿通部と他の法面保護シートの取り付け挿通部とを挿通させて法面保護シート間を連結するので、安定棒により容易に法面保護シート間を連結することができる。
また、安定棒により法面保護シート間を連結するため、安定棒により法面保護シートが抑えられ確実に法面上に設置することができる。
本発明の請求項4に関わる法面保護シートによれば、安定棒は、外周面上に雄ねじが形成された第1安定棒と外周面上に雄ねじが形成された第2安定棒と内径面に第1安定棒および第2安定棒の雄ねじに螺合する雌ねじが形成された円筒状の安定棒継手とを備えるので、第1安定棒と第2安定棒とに分解することが可能であり、第1安定棒と第2安定棒とを短い状態で取り扱い、または持ち運ぶことができ、取り扱い性、運搬性に優れる。
また、安定棒継手に対して第1安定棒または第2安定棒を回動することにより安定棒の長さを調整することができるため、安定棒の取り付け、取り外しが容易で作業性に優れる。
また、本発明の請求項5に関わる法面保護シートによれば、法面保護シートの連結部材を他の法面保護シートの対応する孔に入れることにより、法面保護シート間を連結するので、法面保護シート間の連結が容易であり、確実に連結できる。
また、法面保護シート間の連結を外すには、他の法面保護シートの孔に入れた法面保護シートの連結部材を、該孔より取り出すことにより容易に法面保護シート間の連結を外すことができる。
以下、実施例1、実施例2を用いて本発明を適用した最良の形態を説明する。
図1に、本発明の実施例1である法面保護シートsij(i、j=1、2、3、…)を河川の堤防Tの防護に用いた例を示す。
堤防Tの斜面(法面)T1は、堤防Tの頂面T2上に固設された複数の固定杭kに取り付られた法面保護シートs11、法面保護シートs11に取り付けられる法面保護シートs12、および法面保護シートs12に取り付けられる法面保護シートs13、…、また、複数の固定杭kに取り付られた法面保護シートs21、法面保護シートs21に取り付けられる法面保護シートs22、および法面保護シートs22に取り付けられる法面保護シートs23、…等により覆われ、雨水から防護されている。
ここで、図1中の手前から1列目の法面保護シートs11、法面保護シートs12、法面保護シートs13、…は、堤防tの下流Kr側に敷設し、また、図1中の手前から2列目の法面保護シートs21、法面保護シートs22、法面保護シートs23、…は、1列目の法面保護シートs11の重ね部(1側端部)s11k、法面保護シートs12の重ね部(1側端部)s12k、法面保護シートs13の重ね部(1側端部)s13k、…上に重ね、堤防tの上流Jr側に敷設されている。
このように、堤防tの上流Jr側に敷設する法面保護シートs21、s22、s23、…を、下流Kr側に敷設する法面保護シートs11、s12、s13、…上に重ねることにより、堤防Tの斜面T1を、複数の法面保護シートにより完全に覆い、また、河川の水流により法面保護シートsijがまくれることが防止されている。
上述の法面保護シートs11、s12、s13、…、s21、s22、s23、…は、同一の形状に構成されているため、法面保護シートs11の構成についてのみ説明を行い、他の法面保護シートの構成についての説明は省略する。
法面保護シートs11は、法面等を風雨から防護するため、化学繊維を素材とし高強度に生産されるシートであり、例えば、作業者が軽く2〜3枚を持ち運べる等より、縦5.4m、横3.6mの大きさおよび3〜4kgの重さを有している。
なお、法面保護シートの大きさ、重さは、上記数値に限定されず、適宜、選択できることは言うまでもない。
法面保護シートs11の外面側の上部には、図1のA部拡大図である図2、シートの外面図である図4(a)に示すように、開口(孔)を有するハトメ(取り付け部)h1が複数、ハトメ補強部hが加熱融着され設置されている。
また、法面保護シートs11の下部には、図3に示すように、シート下部の一部を上側に折返して加熱融着して造られる荷重ポケット(固定袋部)pが、シートの重しとする、砂利、砂、水等を入れるために設けられている。
荷重ポケットpは、法面保護シートs11の外面側において、図1に示すように、横方向に隣接する法面保護シートが上側に重ねられる重ね部s11kを除いて一方側の側方に偏奇して設けられており、0.1立方メートル(100kg)位の水が入る容積を有している。
荷重ポケットpは、上方部に砂利、砂、水等の重しを入れる入り口となる開口p1、p1、p1を有しており、下方部を含むその他の部分は、水、砂等を入れた際に漏れることの無きよう封水されている。
また、荷重ポケットpにおける開口p1、p1、p1間には、ポケット仕切り(留め部)p2、p2がシート材を互いに融着して形成され、荷重ポケットpの上部が法面保護シートs11に留められている。
このポケット仕切りp2、p2により、荷重ポケットpの入り口が分割して開口されることになり、荷重ポケットpに水、砂利等の重しが入れられた際に開口p1、p1、p1が広がり、水、砂利等の重しがこぼれることがない。
なお、荷重ポケットpは、法面保護シートs11の素材を折返して造る例を例示したが、別の素材で荷重ポケットpを製造して法面保護シートs11素材上に融着して設けてもよい。
法面保護シートs11の裏面側には、シートの裏面図である図4(b)に示すように、T型連接材(連結部、連結部材)t1が複数個、連接ロープ(連結部)t2に繋がれ設置されており、該連接ロープt2は、シート材に加熱融着された合成樹脂製等の連接ロープ補強固定部t3によりシート材に固定されている。
法面保護シートs11と法面保護シートs12相互間の連結状態を示す図5に示すように、法面保護シートs12の上側に重ねられた法面保護シートs11の裏面側の複数のT型連接材t1が、法面保護シートs12上部の対応するハトメh1内にそれぞれ入れられることにより、法面保護シートs11と法面保護シートs12とが上下方向に連結されている。
ここで、T型連接材t1の長手方向の一側端面と連接ロープt2間寸法を、ハトメh1の開口の径寸法より大きく設定すれば、ハトメh1内に入れられたT型連接材t1が該ハトメh1内から、人手を介さず抜け出ることが防止され、より好適である。
このようにして、図1に示す如く、法面保護シートs11、法面保護シートs12、法面保護シートs13、…が、上下方向に連結されており、同様に、法面保護シートs21、法面保護シートs22、法面保護シートs23、…が、上下方向に連結されており、各法面保護シートは、このようにして上下方向に連結されている。
次に、法面保護シートsijを用いて、図1に示す河川の堤防Tを防護する方法について説明する。
まず、図1に示すように、堤防Tの頂面T2上に、固定杭kを複数本、必要な数固設する。
続いて、図2に示すように、堤防Tの頂面T2上の複数の固定杭kに、T型連接材tbが固着されたシート固定ロープrをそれぞれ取り付け、そして、T型連接材tbを、法面保護シートs11の上部の複数のハトメh1にそれぞれ入れ、複数の固定杭kに法面保護シートs11を取り付け、堤防Tの斜面T1上に載置する。
続いて、図5に示すように、法面保護シートs11の荷重ポケットp裏面の下方に法面保護シートs12の上部を重ね、法面保護シートs11のT型連接材t1、t1、t1、…を、対応する法面保護シートs12のハトメh1、h1、h1、…にそれぞれ傾けつつ挿入して、法面保護シートs11と法面保護シートs12とを上下方向に連結し、法面保護シートs12を堤防Tの斜面T1上に載置する。
そして、法面保護シートs11の荷重ポケットpに土砂を入れる。
続いて、図5と同様に、法面保護シートs12の荷重ポケットp裏面の下方に法面保護シートs13の上部を重ね、法面保護シートs12のT型連接材t1を法面保護シートs13のそれぞれ対応するハトメh1、h1、h1、…内に傾けつつ挿入し、法面保護シートs12と法面保護シートs13とを上下方向に連結する。
そして、法面保護シートs12の荷重ポケットpに土砂を入れる。
以下、同様な方法により、法面保護シートs13、s14、s15、…を連結しつつ、各法面保護シートs1jの荷重ポケットpに土砂を入れる作業を交互に繰り返して、上下方向に連続して連結された一組の法面保護シートs11、s12、s13、…から成る法面保護シート体c1を堤防Tの斜面T1上に組み付ける。
次に、法面保護シートs21を、図1に示すように、法面保護シートs11に対して河川の上流Jr側における法面保護シートs11の重ね部s11k上に重ね、図2と同様に、堤防Tの頂面T2上の複数の固定杭kに取り付けたT型連接材tbを、法面保護シートs21上部の複数のハトメh1内にそれぞれ入れ、固定杭kに法面保護シートs21を取り付け、法面保護シートs11の重ね部s11k上および堤防Tの斜面T1上に載置する。
続いて、法面保護シートs22を、法面保護シートs12の重ね部s12k上に重ねるとともに、その上部を法面保護シートs21の荷重ポケットp裏面の下方に重ね、図5と同様に、法面保護シートs21のT型連接材t1、t1、t1、…を、法面保護シートs22の対応するハトメh1、h1、h1、…内にそれぞれ傾けつつ挿入して、法面保護シートs21と法面保護シートs22とを上下方向に連結し、法面保護シートs22を、法面保護シートs12の重ね部s12k上および堤防Tの斜面T1上に載置する。
次いで、法面保護シートs21の荷重ポケットpに土砂を入れる。
続いて、法面保護シートs23を、法面保護シートs13の重ね部s13k上に重ねるとともに、その上部を法面保護シートs22の荷重ポケットp裏面の下方に重ね、図5と同様に、法面保護シートs22のT型連接材t1、t1、t1、…を、法面保護シートs23の対応するハトメh1、h1、h1、…内にそれぞれ傾けつつ挿入して、法面保護シートs22と法面保護シートs23とを上下方向に連結し、法面保護シートs23を、法面保護シートs13の重ね部s13k上および堤防Tの斜面T1上に載置する。
続いて、法面保護シートs22の荷重ポケットpに土砂を入れる。
以下、同様な方法により、法面保護シートs24、s25、s26、…を、連結しつつ各荷重ポケットpに土砂を入れることを繰り返して、上下方向に連続して連結された一組の法面保護シートs21、s22、s23、…から成る法面保護シート体c2を、法面保護シート体c1における法面保護シートs11の重ね部s11k、法面保護シートs12の重ね部s12k、法面保護シートs13の重ね部s13k上、…および堤防Tの斜面T1上に組み付ける。
以下、同様な方法を用いて、法面保護シートsijの組み付けとそれぞれの荷重ポケットpに土砂を入れることにより、堤防Tの斜面T1上の任意の面積の必要な場所を法面保護シートで覆うことができる。
なお、本実施例では、法面保護シートsijの各荷重ポケットpに重しとして砂利を入れる場合を例示したが、水等のその他の物を用いてもよい。
なお、上述の方法においては、まず、法面保護シートs11を固定杭kに取り付け、その後、法面保護シートs11にs12、s13、…を連結し組付けて法面保護シート体c1を組み上げ、その後、法面保護シートs21を固定杭kに取り付け、その後、法面保護シートs21にs22、s23、…を連結して組付けて法面保護シート体c2を組み上げる方法を例示したが、法面保護シート体c1、c2、…を、まず組み上げ、その後に固定杭kに法面保護シート体c1、c2、…を順次、取り付けてもよい。
上記構成によれば、法面保護シートsijを上下方向に互いに重ねて連結し、且つ、法面保護シートsi+1jを隣接する法面保護シートsijの重ね部sijk上に重ねて載置するため、防護面を露出することなく任意の面積を確実に覆うことが可能である。
また、法面保護シートsijは、上方に開口p1、p1、p1を有する荷重ポケットpを備えるため、容易に砂利、砂、水等の重しとなるものを入れることができ、確実に各法面保護シートsijを法面に設置することができる。
加えて、組み付けた法面保護シートsij上に降雨があった場合、それぞれの荷重ポケットpは上方に開口p1を有するため、雨水が開口p1から荷重ポケットp内に入り、法面保護シートijの重しとしての効果を発揮できる。
また、荷重ポケットpは、その上部がポケット仕切りp2、p2により法面保護シートs11に留められているため、荷重ポケットpに砂利、水等の重しが入れられた場合に開口p1、p1、p1が広がり、砂利、水等の重しが漏出することが防止される。
また、法面保護シートsijのT型連接材t1を、他の法面保護シートsijの対応するハトメh1、…内に入れ連結するので、確実に連結され、また、簡単に取り外すことができる。
また、河川の堤防において、上流側の法面保護シートを下流側の法面保護シート上に重ねて組付ける構成であるので、河川の水流によって法面保護シートがまくれ上がることが防止できる。
また、法面保護シートsijは、同一の構成を有するため、生産的に有利でコストも低い。
また、固定杭kに取り付けるシート固定ロープrに固着されるT型連接材tbと、法面保護シートsijのT型連接材t1とは、同一の形状に構成でき同一の部材を使用することが可能で、大量生産できコストが低廉である。
なお、上述の実施例では、堤防Tの斜面T1を法面保護シートsijで覆う構成を例示したが、家屋の屋根が台風で飛んだ場合に、屋根が飛んだ箇所に法面保護シートsijを組み付けて覆うこともできる。
例えば、図1に示すように、堤防Tの斜面T1の反対側の斜面(法面)T3に対して、前述と同様な方法により、堤防tの頂面t2上の複数の固定杭kに、法面保護シート体c8の法面保護シートs81を組み付け、また、法面保護シート体c8に重ねて法面保護シート体c9の法面保護シートs91を組み付け、堤防Tの斜面T3を法面保護シート体c8、c9で覆うことができる。
このような堤防Tの斜面T1、T3を法面保護シートsijで覆う方法を適用して、家屋の屋根が飛んだ箇所を法面保護シートsijで覆えるものである。
また、法面保護シートsijの素材にコーティングを施して超撥水性に構成し、豪雪地帯における家屋の屋根を覆えば、雪が超撥水性の法面保護シートsij上を滑走して落下し、降雪による家屋の倒壊等の災害を未然に防止することが可能である。
このように、法面保護シートsijは、台風、積雪による災害の防止に対しても適用可能であり、土木用・養生用・気象災害用等、その他の様々な用途に適用可能である。
図6に、本発明の実施例2である法面保護シート2sij(i、j=1、2、3、…)を河川の堤防T′の斜面(法面)T1′の防護に用いた例を示す。
実施例2の法面保護シート2sij(i、j=1、2、3、…)は、実施例1の法面保護シートsijの上部のハトメh1に代替して、外面図である図9(a)に示すように、複数の上部安定棒ベルト(取り付け部)ubを設け、また、実施例1の法面保護シートsij裏面の連接ロープt2に結ばれたT型連接材t1に代替して、裏面図である図9 (b)に示すように、法面保護シート2sij裏面の下部に複数の一対の下部安定棒ベルト(連結部)sbとその両側端部に安定棒固定袋kf、kfを設けている。
これらの各法面保護シート2sijは、安定棒an(n=1、2、3、…)(後述)を用いて互いに上下方向に連結されている。
上記以外の構成は、実施例1の法面保護シートsijの構成と同様であるので、同一の構成要素にはその符号に′を付して示し説明を省略する。
実施例2の各法面保護シート2sijは、同一の構成を有するため、法面保護シート2s11の構成についてのみ説明を行う。
法面保護シート2s11の外面上部には、図9 (a)、図6のB部拡大図である図7に示すように、シート固定ロープr′または安定棒anが挿通される安定棒挿通部(取り付け挿通部)ub1を有する上部安定棒ベルトubが、融着固定部ub2により融着され複数、直線状に固定されている。
法面保護シート2s11の裏面下部、すなわち荷重ポケット(固定袋部)p′の裏面には、図9(b)に示すように、1対の下部安定棒ベルトsbが、直線状に4箇所、安定棒anが挿通される安定棒挿通部(連結挿通部)sb1を有して融着固定部sb2により融着され固定されている。
また、その両側端部には、該安定棒挿通部sb1を挿通する安定棒anの両端部が挿入される安定棒固定袋kf、kfが、図6のC部、D部の要部破断拡大図である図8に示すように、内方に開口kf1を有して安定棒挿通部sb1と1直線状に融着されている。
ここで、各法面保護シート2sijは、図6に示すように、1の法面保護シートにおける裏面下部の下部安定棒ベルトsbの安定棒挿通部sb1と下側に連結される他の法面保護シートの外面上部の上部安定棒ベルトubの安定棒挿通部ub1とに1本の安定棒anを挿通して上下方向に1列に連結される構成である。
例えば、図6、図8に示すように、法面保護シート2s11と法面保護シート2s12とを連結するに際し、法面保護シート2s11の裏面下部の下部安定棒ベルトsbの安定棒挿通部sb1と下側に連結される法面保護シート2s12の外面上部の上部安定棒ベルトubの安定棒挿通部ub1とに1本の安定棒a1を挿通して上下方向に連結している。
そのため、図8に示すように、各法面保護シート2sij外面上部の各上部安定棒ベルトub(図9(a)参照)は、上側に重ねて連結される他の法面保護シートの裏面下部の1対の下部安定棒ベルトsbに挟まれる位置関係に配置されており、また、各法面保護シート2sij裏面下部に設置される各1対の下部安定棒ベルトsb(図9(b)参照)は、その下側に重ねて連結される他の法面保護シートの外面上部の上部安定棒ベルトubを挟むような位置関係に配置されている。
なお、上部安定棒ベルトub、下部安定棒ベルトsb、および安定棒固定袋kfを、法面保護シート2s11に融着して取り付ける例を例示したが、融着する代わりに縫い込んで取り付けてもよい。
安定棒an(n=1、2、3、…)は、図6に示すように、2つの法面保護シート2sijを上下方向に互いに連結する部材であり、例えば、安定棒a1により法面保護シート2s11と法面保護シート2s12とを連結し、安定棒a2により法面保護シート2s12と法面保護シート2s13とを連結し、安定棒a21により法面保護シート2s21と法面保護シート2s22とを連結している。
安定棒anは、図10に示すように、第1安定棒an1と第2安定棒an2、および第1安定棒an1、第2安定棒an2間を連結する安定棒継手an3とから構成されている。
第1安定棒an1と第2安定棒an2は、例えば、φ13の異形鉄筋で構成され、その外周面に雄ねじである台形ネジが形成された棒状の部材であり、また、安定棒継手an3は、これらの台形ネジに螺合する雌ねじである台形ネジが内径面に形成された円筒状の部材である。
安定棒anは、第1安定棒an1と第2安定棒an2とが安定棒継手an3を介して連結され、安定棒継手an3に対して第1安定棒an1または第2安定棒an2を回動させることにより安定棒an全体の長さを調整することができるように構成されている。
また、安定棒anは、第1安定棒an1または第2安定棒an2を安定棒継手an3から取り外し分解できる構成であり、第1安定棒an1と第2安定棒an2とを同じ長さに設定すれば、組み付け前の運搬時においては、第1安定棒an1、第2安定棒an2を分解して持ち運べば、その長さが短く持ち運びし易い。
例えば、安定棒anが、全体で約350mmの長さを有する場合、第1安定棒an1と第2安定棒an2とを2等分するような長さに構成すれば、分解状態では、第1安定棒an1、第2安定棒an2は175mm程度の長さで短く、持ち運びに便利である。
安定棒anの使用に際しては、安定棒継手an3に対して第1安定棒an1または第2安定棒an2を回動させて安定棒anの全体長さを、図9(b)に示す安定棒固定袋kfの開口kf1間距離l1より短く調整し、安定棒anの取り付け状態の概念図である図11、図8に示すように、下部安定棒ベルトsbの安定棒挿通部sb1と上部安定棒ベルトubの安定棒挿通部ub1とを挿通させつつ安定棒anの長さを伸張して、最後に、安定棒anの長さを安定棒固定袋kfの開口kf1間距離l1より長くして取り付けを終了する。
次に、法面保護シート2sijを用いて、図6に示す河川の堤防T′の斜面T1′を防護する方法について説明する。
まず、図6に示すように、堤防T′の頂面T2′上に、固定杭k′を複数本、必要な数、固設する。
続いて、図7に示すように、シート固定ロープr′を、法面保護シート2s11の各上部安定棒ベルトubの安定棒挿通部ub1に挿通させて、それぞれ対応する固定杭k′にゆわぎ、法面保護シート2s11を、所定の固定杭k′に組み付け堤防T′の斜面T1′上に載置する。
続いて、図6に示すように、法面保護シート2s11の荷重ポケットp′裏面の下方に法面保護シート2s12の外面上部を重ね、図8に示すように、法面保護シート2s11裏面(図9(b)参照)の各1対の下部安定棒ベルトsbが対応する法面保護シート2s12外面の上部安定棒ベルトubをそれぞれ挟み込むように配置する。
そして、法面保護シート2s11の安定棒固定袋kf、kfの開口kf1、kf1間距離l1(図9(b)参照)より短く調整した安定棒a1を、図11、図8に示すように、法面保護シート2s11裏面の1対の下部安定棒ベルトsbの安定棒挿通部sb1と法面保護シート2s12外面の上部安定棒ベルトubの安定棒挿通部ub1とを挿通させつつ、安定棒継手a13に対して第1安定棒a11または第2安定棒a12を回動させて伸張し、安定棒a1の両端部を法面保護シート2s11裏面の両側端部の安定棒固定袋kf、kf内にその開口kf1から挿入し、法面保護シート2s11と法面保護シート2s12とを安定棒a1を介して連結する。
続いて、法面保護シート2s11の荷重ポケットp′に開口p1′、p1′、p1′から法面保護シート2s11、2s12の重しとする砂利を入れ、法面保護シート2s11の組み付けを完了する。
続いて、法面保護シート2s12の荷重ポケットp′裏面の下方に法面保護シート2s13の外面上部を重ね、図8と同様に、法面保護シート2s12裏面の各1対の下部安定棒ベルトsbが対応する法面保護シート2s13外面の上部安定棒ベルトubをそれぞれ挟み込むように配置する。
続いて、法面保護シート2s12の安定棒固定袋kf、kfの開口kf1、kf1間距離l1より短く調整した安定棒a2を、図11に示すように、法面保護シート2s12裏面の1対の下部安定棒ベルトsbの安定棒挿通部sb1と法面保護シート2s13外面の上部安定棒ベルトubの安定棒挿通部ub1とを挿通させつつ、安定棒継手a23に対して第1安定棒a21または第2安定棒a22を回動させて伸張し、図8と同様に、安定棒a2の両端部を法面保護シート2s12裏面(図9(b)参照)の両側端部の安定棒固定袋kf、kf内にその開口kf1から挿入し、法面保護シート2s12と法面保護シート2s13とを安定棒a2を介して連結する。
続いて、法面保護シート2s12の荷重ポケットp′に開口p1′、p1′、p1′から法面保護シート2s12、2s13の重しとする砂利を入れ、法面保護シート2s12の組み付けを完了する。
続いて、法面保護シート2s13の荷重ポケットp′裏面の下方に法面保護シート2s14の外面上部を重ね、法面保護シート2s13裏面の各1対の下部安定棒ベルトsbが対応する法面保護シート2s14外面の上部安定棒ベルトubをそれぞれ挟み込むように配置する。
以下、同様にして、法面保護シート2s14、2s15、2s16、…を連結しつつ、その荷重ポケットp′に砂利等の重しを入れることを交互に繰り返し、堤防T′の斜面T1′上への上下方向に1列の法面保護シート2s11、2s12、2s13、2s14、2s15、…から成る法面保護シート体c1′の組付けを完了する。
次に、図6に示すように、縦方向に1列の法面保護シート2s11、2s12、2s13、2s14、2s15、…の法面保護シート体c1′の上流側に、法面保護シート体c1′の重ね部(1側端部)s1jk′上に重ねて縦方向に1列に法面保護シート2s21、2s22、2s23、2s24、2s25、…から成る法面保護シート体c2′の組付けを行う。
まず、法面保護シート2s21を、固定杭k′に組み付けた法面保護シート2s11の重ね部s11k′上に重ねて堤防T′の斜面T1′上に置き、シート固定ロープr′を法面保護シート2s21の各上部安定棒ベルトubの安定棒挿通部ub1に挿通させ、それぞれ対応する固定杭k′にゆわいで、法面保護シート2s21を所定の固定杭k′に組み付ける。
続いて、法面保護シート2s22を、法面保護シート2s12の重ね部s12k′上に重ね、法面保護シート2s21の荷重ポケットp′裏面の下方に法面保護シート2s22の外面上部を重ね、図8と同様に、法面保護シート2s21裏面(図9(b)参照)の各1対の下部安定棒ベルトsbが対応する法面保護シート2s22外面の上部安定棒ベルトubをそれぞれ挟み込むように配置する。
そして、法面保護シート2s21の安定棒固定袋kf、kfの開口kf1、kf1間距離l1(図9(b)参照)より短く調整した安定棒a21を、図11に示すように、法面保護シート2s21裏面の1対の下部安定棒ベルトsbの安定棒挿通部sb1と法面保護シート2s22外面の上部安定棒ベルトubの安定棒挿通部ub1とを挿通させつつ、安定棒継手a213に対して第1安定棒a211または第2安定棒a212を回動させて伸張し、図8と同様に、安定棒a21の両端部を法面保護シート2s21裏面の両側端部の安定棒固定袋kf、kf内にその開口kf1から挿入し、法面保護シート2s21と法面保護シート2s22とを安定棒a21を介して連結する。
続いて、法面保護シート2s21の荷重ポケットp′に開口p1′、p1′、p1′から法面保護シート2s21、2s22の重しとする砂利を入れ、法面保護シート2s21の組み付けを完了する。
続いて、法面保護シート2s23を、図6に示すように、法面保護シート2s13の重ね部s13k′上に重ね、法面保護シート2s22の荷重ポケットp′裏面の下方に法面保護シート2s23の外面上部を重ね、法面保護シート2s22裏面の各1対の下部安定棒ベルトsbが対応する法面保護シート2s23外面の上部安定棒ベルトubをそれぞれ挟み込むように配置する。
そして、上述と同様に、安定棒a22を介して法面保護シート2s22と法面保護シート2s23とを連結する。
続いて、法面保護シート2s22の荷重ポケットp′に開口p1′、p1′、p1′から法面保護シート2s22、2s23の重しとする砂利を入れ、法面保護シート2s22の組み付けを完了する。
以下、同様に、法面保護シート2s24、2s25、2s26、…を、法面保護シート2s14、2s15、2s16、…のそれぞれの重ね部s1jk′上に重ねて互いに連結しつつ、荷重ポケットp′に砂利を入れることを交互繰り返し、堤防T′の斜面T1′上への、上下方向に1列の法面保護シート2s21、2s22、2s23、2s24、2s25、…から成る法面保護シート体c2′の組付けを完了する。
以下、上述と同様な方法により法面保護シート2sijを組み付け、堤防T′の斜面T1′上の必要な面積を法面保護シート2sijにより覆うことができる。
上記構成によれば、伸縮調整自在な安定棒anを、一の法面保護シートの裏面側の1対の下部安定棒ベルトsbの安定棒挿通部sb1と、他の法面保護シートの外面側の上部安定棒ベルトubの安定棒挿通部ub1とを挿通させて、互いに連結する構成であるので、法面保護シート2sijが安定棒anにより確実に組み付けられ、強風が吹いても法面保護シートがまくれることが防止され、安定した設置ができる。
また、安定棒anを伸縮調整することにより、法面保護シート2sij間の連結、および取り外しが容易かつ簡便に行え、作業性に優れる。
また、安定棒anは、第1安定棒an1と第2安定棒an2とに分解することより短くすることが可能で、持ち運びおよび取り扱いに便利であり持ち運び性、取り扱い性に優れる。
その他、実施例1と同様な構成からは、前述の実施例1と同様な作用効果が得られる。
なお、上述の例では、最上部の法面保護シート2s11、2s21、…における各上部安定棒ベルトubには安定棒anを挿通しない場合を例示したが、安定棒anを挿通させて構成してもよい。
また、実施例1と同様に、法面保護シート2sijは、上述の堤防T′以外のその他の様々な用途に適用可能である。
本発明の活用例として、堤防、山肌等の防護、その他の台風、積雪による家屋の損壊等の災害の防止にも適用でき、土木用、養生用、積雪・台風等の気象災害用等、様々な用途に適用可能である。
実施例1の法面保護シートを河川の堤防の防護に用いた例を示す斜視図。
図1のA部拡大図。
実施例1の法面保護シートの荷重ポケットを示す斜視図。
(a)および(b)は、実施例1の法面保護シートを示す外面図および裏面図。
実施例1の法面保護シートを相互に連結する方法を示す一部切欠き斜視図。
実施例2の法面保護シートを河川の堤防の防護に用いた例を示す斜視図。
図6のB部拡大図。
図6のC部、D部の要部破断拡大図。
(a)および(b)は、実施例2の法面保護シートを示す外面図および裏面図。
実施例2の安定棒を示す正面図。
実施例2における安定棒の法面保護シートへの取り付け状態を示す概念図。
符号の説明
an…安定棒、
an1…第1安定棒、
an2…第2安定棒、
an3…安定棒継手、
h1…ハトメ(取り付け部)、
p、p′…荷重ポケット(固定袋部)、
p1、p1′…開口、
p2、p2′…ポケット仕切り(留め部)、
sb…下部安定棒ベルト(連結部)、
sb1…安定棒挿通部(連結挿通部)、
sij、2sij…法面保護シート、
sijk、sijk′…重ね部(1側端部)、
T1、T3、T1′…斜面(法面)、
t1…T型連接材(連結部、連結部材)、
t2…連接ロープ(連結部)、
ub…上部安定棒ベルト(取り付け部)、
ub1…安定棒挿通部(取り付け挿通部)。