JP2005035746A - エレベータのブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 回転体上に分散配置された複数のブレーキライニングごとに、このブレーキライニングを回転体に個別に押圧して制動力を発生させるブレーキばねと、このブレーキばねの押圧力に抗してブレーキライニングを回転体から個別に離脱させて制動力を解く電磁石とを設け、乗客を搬送する通常運転では、電磁石を全数一括して付勢して回転体を全開放させて巻上機を回動させ、ブレーキライニングと回転体とを擦り合せる擦合せ運転では、一部の電磁石を付勢し、回転体を部分開放させて電動機によって擦合せ可能な状態で巻上機を回動させて擦り合せるようにしたものである。
【選択図】 図1
Description
しかしながら、制動トルクを通常運転における使用状態のまま巻上機を回動すると、電動機に過大な負荷がかかり保護装置が作動して擦り合せることができない。
上記状況に対して、従来は、上記特許文献1に開示されているように、巻上機を回動させた後にブレーキを作動させ、そのときの慣性力及び乗りかごと釣合錘の不平衡トルクによって、ブレーキライニングとブレーキホイールを擦り合せるようにしていた。
しかし、摺動面における仕事量は些少であり、制動トルクが安定する迄には長時間を要する。このため、作業負担も増大し、また、エレベータの利用客にも多大な不便を強いる、という問題があった。
この発明に係るエレベータのブレーキ装置は、回転体上に分散配置された複数のブレーキライニング毎に、このブレーキライニングを回転体に個別に押圧して制動力を発生させるブレーキばねと、このブレーキばねの押圧力に抗してブレーキライニングを回転体から個別に離脱させて制動力を解く電磁石とを設け、乗客を搬送する通常運転では、電磁石を全数一括して付勢して回転体を全開放させて巻上機を回動させ、ブレーキライニングと回転体とを擦り合せる擦合せ運転では、一部の電磁石を付勢し、回転体を部分開放させた状態で巻上機を回動させ、電動機の駆動力で擦り合せるようにしたものである。
このため、擦合せ運転では、ブレーキばねの設定を変えることなくブレーキの制動力を軽減させた状態で電動機によってブレーキライニングを擦り合せることができ、巻上機の慣性力によって擦り合せる場合に比べて短時間で擦合せを終了させることができる、という効果を奏する。
図1から図6は、この発明の実施の形態1を示す。
図1は要部を拡大して示す昇降路縦断面で、巻上機1は、機械室2に設置されており、この巻上機1の回転軸4には電動機3と回転体であるブレーキホイール5が取り付けられている。ブレーキホイール5の左側には、左側ブレーキ機構6Lが、右側には、右側ブレーキ機構6Rがそれぞれ装着されている。
なお、右側ブレーキ機構6Rと左側ブレーキ機構6Lは、それぞれ個別に制動及び開放動作をする。図1では、左側ブレーキ機構6Lはブレーキライニング7Lをブレーキホイール5から離脱させ、制動力を解いており、右側ブレーキ機構6Rはブレーキライニング7Rをブレーキホイール5に押圧して制動力を発生させた状態を示す。
以下、左右のブレーキ機構6L及び6Rを総称する場合は、ブレーキ機構6とし、構成部品を総称する場合も同様にL及びRを削除した符号を用いる。
即ち、乗客を搬送する通常運転状態におけるブレーキばね11の設定状態で、時刻t0で左右のブレーキ機構6を一括して開放すると共に電動機3を付勢する。巻上機1は電動機3に駆動されて加速し、定格速度Vrで上昇する。時刻t1で電動機3を消勢して慣性によって昇降を継続させると共に、左右のブレーキ機構6によってブレーキホイール5を拘持して巻上機1を制動させる。巻上機1は時刻t2で停止する。上記速度曲線17cにおいて、時刻t1から時刻t2の間で制動トルクTbが演算され、その演算結果が評価される。
時刻t0からt1までは、電動機3に駆動されるので、図3の(2)式となる。時刻t1からt2までは、Tm=0となり、制動トルクTbによって減速するので、図3の(3)式が成立し、(4)によって制動トルクTbを求めることができる。
なお、図2に示す運転は、乗りかご17が無負荷の状態で行われるので、不平衡トルクTs及び慣性モーメントJは予め知得されている。従って、回転軸4の角減速度(dω/dt)を測定することにより、制動トルクTbを求めることができる。
図4(a)は、擦合せ運転の速度曲線17csを示し、同(b)及び(c)は、ブレーキ機構6の動作状態を示す。
即ち、左右のブレーキ機構6を制動状態にして最下階21で停止している乗りかご17を、時刻t10で右側ブレーキ機構6Rを開放し、左側ブレーキ機構6Lを制動状態にして上昇起動させて擦り合せる。時刻t12で最上階22に到着すると、左右のブレーキ機構6を制動状態にして乗りかご17を停止させる。
なお、擦合せ速度Vcsは、電動機3の出力を軽減させるため、定格速度Vr以下の所定値に設定される。
即ち、擦合せ運転では、左右の電磁石12L、12Rを順次切り替えて付勢してブレーキホイール5を部分開放させた状態で電動機3によって巻上機1を回動させ、ブレーキライニング7L及び7Rを交互に擦り合せるようにしたものである。
左右のブレーキライニング7L及び7Rの擦合せが一巡する毎に、図2及び図3に従って制動トルクTbの測定が行われる。その結果、制動トルクTbが規定値に達しない場合は再度擦合せ運転が行われ、規定に達した場合は通常運転に復帰する。
即ち、乗りかご17を上昇運転させて左側ブレーキライニング7Lを擦り合せているときに、時刻t11で左側温度計14Lが、左側ブレーキライニング7Lの過熱を検出すると、直ちに左側ブレーキ機構6Lを開放して擦合せを停止し、最上階22まで乗りかご17を上昇させる。
図4(c)の場合も同様に、擦合せが一巡する毎に制動トルクTbの測定が行われ、その結果によって再度擦合せ運転が行われる。
即ち、回転軸4には、エンコーダからなる速度計25が取り付けられていて、角速度ωを出力する。電動機3は電源26によって付勢され、電動機制御回路27によって制御されて回動して巻上機1を駆動する。
ブレーキ保守運転スイッチ30は、常時、接点aに接続されていて通常運転回路28が作動している。通常運転回路28は電動機制御回路27へ信号を送って乗客を搬送する運転モードで電動機3を制御させると共に、緊急の場合は、主接点28を開放して電動機3を消勢し、乗りかご17を非常停止させる。
ブレーキライニング7を擦り合せるには、ブレーキ保守運転スイッチ30を接点bに接続する。通常運転回路28は作動を停止し、ブレーキ保守運転回路40が作動する。また、各所のエレベータを一括して監視している監視センタ46からのブレーキ保守運転指令を、電話回線網47及び通信端末48を介して受信し、この指令信号によっても通常運転回路28を停止させ、ブレーキ保守運転回路40を作動させることができる。
入力回路44には、ブレーキ保守運転スイッチ30の操作信号と、速度計25の出力信号である回転軸4の角速度ωと、左右の温度計14からの温度信号θ1及びθ2と、乗りかご17の積載荷重を検出する秤装置18の秤信号と、通信端末48からのブレーキ保守運転指令信号が、入力される。
また、出力回路45からは、制動トルクTbの測定運転と擦合せ運転を行わせるために電動機制御回路27に接続されている。制動トルクTbを計測するために主接点28の回路にも接続されている。左右のブレーキ機構6L、6Rを個別に作動させるために各電磁コイル12bL、12bRにも個別に接続されている。更に、ブレーキの保守運転の結果を監視センタ46へ送信するために、通信端末48にも接続されている。
ブレーキ保守運転スイッチ30は、通常接点aに接続されて乗客を搬送する通常運転モードになっている。
人為操作によってブレーキ保守運転スイッチ30が接点bに接続されるか、又は、監視センタ46からブレーキ保守運転指令が通信端末48を介して入力回路44及び通常運転回路29に入力されると、通常運転からブレーキ保守運転へ切り替えられる。
手順S1で、乗りかご17が無負荷になったことを秤装置18で確認した後、通常運転モードで最下階21から最上階22へ向けて上昇運転をする(図2の時刻t0からt1の区間)。手順S2で、速度計25による角速度ωから乗りかご17が定格速度Vrに達したことを検知して、手順S3で主接点28を開放して電動機3を消勢する(図2の時刻t1)。ブレーキばね11は、通常運転の状態に設定されており、この設定状態で左右のブレーキ機構の電磁石12を一括して消勢して巻上機1を制動させて乗りかご17を停止させる(図2の時刻t1からt2の区間)。この区間における減速度から(4)式によって制動トルクTbを演算する。
手順S11から手順S16は、左側ブレーキライニング7Lの擦合せである。即ち、手順S11で、乗りかご17を一方の終端階である最下階21へ呼び寄せる(図4の初期状態)。手順S12で、最上階22へ向けて起動指令が発せられ、電動機制御回路27は、擦合せ運転の速度パターンに従って電動機3を付勢し制御する。巻上機1は右側ブレーキ機構6Rを開放し、左側ブレーキ機構6Lを制動状態にして左側ブレーキライニング7Lを擦り合せて回動して乗りかご17を上昇させる(図4の時刻t10)。手順S13で、擦合せが行われている左側温度計14Lの温度θ1を読み取る。その温度θ1が所定値θo以下の場合は手順S14へ移り、乗りかご17が最上階22へ到着したか調べる。
即ち、手順S17で、最上階22から最下階21へ向けて起動指令が発せられ、電動機制御回路27は、擦合せ運転の速度パターンに従って電動機3を付勢し、巻上機1は左側ブレーキ機構6Lを開放し、右側ブレーキ機構6Rを制動状態にして擦り合せて乗りかご17を下降させる(図4の時刻t13)。手順S18で、擦合せが行われている右側ブレーキライニング7Rの温度θ2が所定値θo以下の場合は擦合せを継続する。手順S19で、乗りかご17が最下階21へ到着したか調べる。
手順S11から手順S21によって一巡の擦合せが終了すると、図6の手順S1へ戻り、擦合せ後の制動トルクTbが測定される。その測定結果の処理は、図6について述べたとおりで、図6による制動トルクTbの測定と、図7による擦合せ運転が繰り返される。ブレーキライニング7とブレーキホイール5が馴染むと、制動トルクTbが規定値Toに達する。
更に、エレベータの運転回路の一部として設けられたブレーキ保守運転スイッチ30を操作することによって、また、監視センタ46からの遠隔操作によって擦合せ運転を行うことができるので、容易にブレーキライニング7を擦り合せることができる。
更にまた、擦合せ運転に先立って、また、擦合せ運転後の再擦合せ運転に先立って、制動トルクTbを測定するようにしたので、不必要に擦合せ運転を行ってブレーキライニング7を摩耗させることもない。
更にまた、擦合せ運転中は、温度計14によってブレーキライニング7の温度θ1及びθ2を検出し、その温度が所定値θ0を超えたときは擦合せ運転を停止させるようにしたので、ブレーキライニング7が過熱することはない。
この実施の形態2は、ブレーキばね11を通常運転の設定状態に据え置いたままにして、擦合せ運転では、制動トルクTbを軽減させるようにしたものである。図8及び図9は、実施の形態2を示す。
図8は、左側ブレーキレバー9Lに作用する力を示した巻上機1の正面図で、図中、図1と同符号は、同一部分を示す。押圧力軽減手段50は、ブレーキライニング7がブレーキホイール5から離脱しない所定の電流値で励磁してブレーキばね11による押圧力を軽減させるものである。
電磁石12Lの吸引力をfg、励磁電流をi、鉄心12Laと可動鉄片13Lとの空隙をg、比例定数をαとする。磁気飽和はないものとして、吸引力fgは図8の(5)式によって表される。右側ブレーキレバー9Rについても同様である。
また、ブレーキばね11Lによるばね反力をfs、開放(圧縮)時のばね反波力をγ、撓み(空隙)をg、比例定数をβとすると、ばね反力fsは図8の(6)式によって表される。右側ブレーキレバー9Rについても同様である。
通常運転で巻上機1を開放する場合は、吸引力fg1の特性を示す励磁電流iで電磁石12を付勢して、制動gc時のばね反力fscを上回る吸引力fg1cで吸引しブレーキライニング7を開放する。途中ブレーキスイッチ(図示しない。)で切り替えられて吸引力fg1oで開放go状態を維持する。巻上機1を制動する場合は、電磁石12を消勢し、ばね反力fscでブレーキライニング7をブレーキホイール5に押圧して制動させる。
擦合せをする側は、吸引力fg2の特性を示す励磁電流i、即ち、押圧力軽減手段50によって制限された電流値で電磁石12を付勢する。従って、制動gc時の吸引力fg2cは、ばね反力fscよりも小さいので、開放には至らないが、ブレーキライニング7は、ばね反力fscよりも小さい押圧力(=fsc−fg2c)でブレーキホイール5を押圧する。この押圧状態で巻上機1を回動させてブレーキライニング7を擦り合せる。終端階に到着すると、通常運転時と同様に、電磁石12を消勢し、ばね反力fscでブレーキライニング7をブレーキホイール5に押圧して巻上機1を制止させる。
このため、ブレーキライニング7を過熱させることなく、適度な押圧力で擦合せ運転を行うことができる。
Claims (4)
- 電動機によって駆動されてエレベータの乗りかごを昇降させる巻上機の回転軸に取り付けられた回転体に複数のブレーキライニングを押圧して上記巻上機を制動させるエレベータのブレーキ装置において、上記ブレーキライニングごとに設けられて上記ブレーキライニングを上記回転体に個別に押圧して制動力を発生させる複数のブレーキばねと、上記ブレーキライニングごとに設けられて付勢によって上記ブレーキばねの押圧力に抗して上記ブレーキライニングを上記回転体から個別に離脱させて上記制動力を解く複数の電磁石と、乗客を搬送する通常運転では、上記電磁石を全数一括して付勢して上記回転体を全開放させて上記電動機によって上記巻上機を回動させ、上記ブレーキライニングと上記回転体とを擦り合せる擦合せ運転では、一部の上記電磁石を付勢し、順次切り替えて付勢して上記回転体を部分開放させた状態で上記電動機によって上記巻上機を回動させ、上記回転体を押圧している上記ブレーキライニングを擦り合せるように制御する運転回路とを備えたエレベータのブレーキ装置。
- 運転回路を、監視センタからの遠隔操作による指令に基いて巻上機を回動させた状態で電動機を消勢させると共に、電磁石を全数一括して消勢して上記回転体を制動させたときの減速度から制動トルクを求め、この制動トルクが規定値に達しない場合に擦合せ運転を開始させ、上記制動トルクが上記規定値に達したときに終了させるものとした請求項1に記載のエレベータのブレーキ装置。
- 擦合せ運転中ブレーキライニングの温度を検出し、その温度が所定値を超えたときに上記擦合せ運転を停止させる温度検出手段を備えた請求項1に記載のエレベータのブレーキ装置。
- 擦合せ運転で回転体を押圧しているブレーキライニングの電磁石を、上記ブレーキライニングが上記回転体から離脱しない所定の電流値で励磁してブレーキばねによる上記押圧力を軽減させる押圧力軽減手段を備えた請求項1に記載のエレベータのブレーキ装置。
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